説明

防災情報提供システム及び防災情報配信サーバ

【課題】狭いエリアに存在するユーザに対して、適格な防災情報をリアルタイムで提供することが可能な防災情報提供システム及び防災情報配信サーバを提供する。
【解決手段】配信サーバ10において、情報管理サーバ20からの災害情報に基づいた第1のARタグを、災害が発生する度に随時作成する。そして、配信サーバ10と通信接続を行う通信端末30へ、作成した第1のARタグを送信する。通信端末30は、配信サーバからの第1のARタグを自端末で撮影された実写映像に重畳させて表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実写映像にコンピュータグラフィックスを合成する拡張現実(Augmented Reality)技術を利用する防災情報提供システム及び防災情報配信サーバに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、災害が発生した場合、テレビ、インターネット及び防災無線等を通じ、その災害に関する防災情報が提供される。このように、テレビ、インターネット及び防災無線等を用いることにより、防災情報を多数の利用者に同時に提供することが可能である。
【0003】
しかしながら、上述の方法では、昨今のゲリラ豪雨又はアンダーパスの冠水のような災害については、十分な防災情報が提供できない。テレビ、インターネット及び防災無線等では、狭いエリアで短時間に状況が変化する災害に対処することは難しいからである。
【0004】
ところで、拡張現実(AR: Augmented Reality)という技術が提案されている。拡張現実とは、現実の環境に付加情報としてバーチャルな物体を電子情報として合成表示する技術及び、バーチャルな物体が電子情報として付加提示された環境そのものを示す(例えば、特許文献1参照)。例えば、頭部に装着するディスプレイ又は携帯電話等のカメラ機能を用いて、リアルタイムの映像に付随情報を付加する形態が一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−33397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上のように、従来のように、テレビ、インターネット及び防災無線等を利用して防災情報を提供しようとする場合、狭いエリアで短時間に状況が変化する災害については十分な防災情報を提供することが難しい。そのため、狭いエリアに存在するユーザに対して、適格な防災情報をリアルタイムで提供することが可能な防災情報提供システムが要求されている。
【0007】
この発明は上記事情によりなされたもので、その目的は、狭いエリアに存在するユーザに対して、適格な防災情報をリアルタイムで提供することが可能な防災情報提供システム及び防災情報配信サーバを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る防災情報提供システムは、災害についての災害情報を蓄積する情報管理サーバと、前記災害情報を前記情報管理サーバから受信する配信サーバと、前記配信サーバに対して接続要求信号を送信することで前記配信サーバと通信接続し、前記通信接続をしている間、自機の現在位置情報を前記配信サーバに対して送信する通信端末とを具備し、前記配信サーバは、前記情報管理サーバからの前記災害情報を記憶する第1のメモリと、前記第1のメモリに記憶される前記災害情報に基づいて、複数の地点における現実環境にそれぞれ対応する防災情報を、前記通信端末による実写映像に重畳して表示する複数の第1の拡張現実タグを作成するARタグ作成部と、前記複数の第1の拡張現実タグを記録する第2のメモリと、前記通信端末から現在位置情報を受信した場合、前記第2のメモリに記憶される複数の第1の拡張現実タグのうち、前記現在位置情報に対応する第1の拡張現実タグを読み出す制御部と、前記第2のメモリから読み出された第1の拡張現実タグを、前記通信端末へ送信する通信部とを備え、前記通信端末は、前記配信サーバから送信された第1の拡張現実タグを実写映像に重畳して表示することを特徴とする。
【0009】
上記構成による防災情報提供システムでは、配信サーバにおいて、情報管理サーバからの災害情報に基づいた第1のARタグを、災害が発生する度に随時作成する。そして、配信サーバは、配信サーバと通信接続を行う通信端末に対し、作成した第1のARタグを送信する。通信端末は、配信サーバからの第1のARタグを自端末で撮影された実写映像に重畳させて表示する。これにより、通信端末のユーザは、リアルタイムかつ必要なタイミングで防災情報を取得することが可能となる。
【0010】
また、本発明に係る防災情報配信サーバは、災害についての災害情報を記憶する第1のメモリと、前記第1のメモリに記憶される前記災害情報に基づいて、複数の地点における現実環境にそれぞれ対応する防災情報を、実写映像に重畳して表示する複数の第1の拡張現実タグを作成するARタグ作成部と、前記複数の第1の拡張現実タグを記録する第2のメモリと、通信端末から現在位置情報を受信した場合、前記第2のメモリに記憶される複数の第1の拡張現実タグのうち、前記現在位置情報に対応する第1の拡張現実タグを読み出す制御部と、前記第2のメモリから読み出された第1の拡張現実タグを、前記通信端末へ送信する通信部とを備える。
【0011】
上記構成による防災情報配信サーバでは、情報管理サーバからの災害情報に基づいた第1のARタグを、災害が発生する度に随時作成する。そして、防災情報配信サーバは、通信接続を行う通信端末に対し、作成した第1のARタグを送信する。通信端末は、防災情報配信サーバからの第1のARタグを自端末で撮影された実写映像に重畳させて表示する。これにより、防災情報配信サーバは、通信端末のユーザに対して、リアルタイムかつ必要なタイミングで防災情報を提供することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、狭いエリアに存在するユーザに対して、適格な防災情報をリアルタイムで提供することが可能な防災情報提供システム及び防災情報配信サーバを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る防災情報提供システムの機能構成を示すブロック図である。
【図2】図1の制御部の機能構成を示すブロック図である。
【図3】図1の配信サーバにおいて、第1のARタグが作成される際の制御部の動作のフローチャートを示す図である。
【図4】図2の地図テーブルの具体例を示す図である。
【図5】図1のARタグ作成部により作成される第1のARタグの例を示す図である。
【図6】図1の配信サーバにおいて、第2のARタグを作成される際の制御部の動作のフローチャートを示す図である。
【図7】図1の避難経路作成部により作成される第2のARタグの例を示す図である。
【図8】図1の制御部が通信端末へ第1又は第2のARタグを送信する際のフローチャートを示す図である。
【図9】図1の通信端末の表示画面における表示例を示す模式図である。
【図10】図1の通信端末の表示画面における表示例を示す模式図である。
【図11】図1のARタグ作成部により作成される第1のARタグの例を示す図である。
【図12】図1の通信端末の表示画面の表示例を示す模式図である。
【図13】図1の配信サーバにおいて、第3のARタグが作成され、通信端末へ送信される際の制御部の動作のフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明に係る防災情報提供システム及び防災情報配信サーバ(以下、配信サーバと称する。)の実施の形態について詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る防災情報提供システムの機能構成を示すブロック図である。図1における防災情報提供システムは、配信サーバ10、情報管理サーバ20及び通信端末30を具備する。配信サーバ10は、ネットワークNWを介して、情報管理サーバ20及び通信端末30と通信接続する。なお、本実施形態では、ネットワークNWにより配信サーバ10、情報管理サーバ20及び通信端末30が通信接続する例について説明するが、配信サーバ10及び通信端末30は、携帯電話網により通信接続する場合であっても同様に実施可能である。
【0016】
情報管理サーバ20は、例えば、国土交通省、気象庁及び市町村等に設置されるサーバである。情報管理サーバ20は、例えば、災害に関する災害情報と、二次災害を引き起こし得る事象に関する事象情報等とを記録している。ここで、災害情報には、災害の発生場所等を示す第1の位置情報が含まれている。また、事象情報には、この事象に関する第2の位置情報が含まれている。
【0017】
災害情報は、国土交通省、気象庁及び市町村等の管轄地域内で新たな災害が発生する度に情報管理サーバ20に追加記録される。情報管理サーバ20は、災害情報を新たに記録する度に、災害情報を配信サーバ10へ送信する。
【0018】
事象情報は、国土交通省、気象庁及び市町村等の管轄地域内で、二次災害を引き起こしうる事象が発生する度に情報管理サーバ20に追加記録される。情報管理サーバ20は、事象情報を新たに記録する度に、事象情報を配信サーバ10へ送信する。
【0019】
通信端末30は、例えば、携帯電話及びヘッドマウントディスプレイ等であり、映像を撮影する機能を有する。また、通信端末30は、配信サーバ10に対し、接続要求信号を送信する。また、通信端末30は、配信サーバ10との通信接続が確立されている間は、自端末が現在存在する現在位置情報をあらかじめ設定された周期で配信サーバ10へ送信する。ここで、現在位置情報とは、通信端末30が存在する場所の経度及び緯度と、通信端末30が向く方角等とを含む。
【0020】
配信サーバ10は、通信部11、記録部12、AR(Augmented Reality)タグ作成部13、避難経路作成部14及び制御部15を備える。
【0021】
通信部11は、ネットワークNWを介して情報管理サーバ20から災害情報を受信し、情報管理サーバ20から災害情報を受信した旨を、後述する制御部15へ通知する。また、通信部11は、情報管理サーバ20からの災害情報を記憶部12の第1の記憶領域121へ出力する。
【0022】
また、通信部11は、ネットワークNWを介して情報管理サーバ20から事象情報を受信し、情報管理サーバ20から事象情報を受信した旨を制御部15へ通知する。また、通信部11は、情報管理サーバ20からの事象情報を記憶部12の第1の記憶領域121へ出力する。
【0023】
また、通信部11は、ネットワークNWを介して、通信端末30から接続要求信号と現在位置情報とを受信し、接続要求信号と現在位置情報とを制御部15へ出力する。
【0024】
記憶部12は、第1の記憶領域121、第2の記憶領域122及び第3の記憶領域123を含む。第1の記憶領域121は、通信部11からの災害情報及び事象情報を記憶する。第2の記憶領域122は、後述するARタグ作成部13で作成される複数の第1のARタグ、及び、後述する避難経路作成部14で作成される複数の第2のARタグを記憶する。ここで、ARタグとは、災害情報又は事象情報に基づいて作成された防災情報を、通信端末30により撮影された実写映像に重畳して表示させるためのバーチャルなタグのことである。第3の記憶領域123には、避難場所等の地域情報が予め記憶されている。
【0025】
制御部15は、例えばマイクロプロセッサからなるCPU(Central Processing Unit)を備えたもので、以下の制御を行う。すなわち、制御部15は、図2に示すように、第1の通信制御151、第2の通信制御152、ARタグ作成制御153、第2の避難経路作成制御154及び避難経路割当制御155を行う。また、制御部15は、災害情報の第1の位置情報と、実際の経度及び緯度とを関連付ける地図テーブル156を備える。また、地図テーブル156では、事象情報の第2の位置情報と、実際の経度及び緯度とも関連付けられている。
【0026】
制御部15は、第1の通信制御151により、通信部11に情報管理サーバ20との通信を行わせる。制御部15は、通信部11から災害情報及び事象情報を受信した旨の通知を受けた場合、災害情報及び事象情報を第1の記憶領域121へ出力するように通信部11を制御する。
【0027】
また、制御部15は、災害情報が第1の記憶領域121に記憶された場合、ARタグ作成制御153により、ARタグ作成部13に複数の第1のARタグを作成させる。このとき、制御部15は、第1の記憶領域121から災害情報を読み出し、ARタグ作成部13へ出力する。また、制御部15は、地図テーブル156を参照し、災害情報の第1の位置情報に基づいた位置座標(経度,緯度)を取得し、ARタグ作成部13へ出力する。
【0028】
ARタグ作成部13は、第1の記憶領域121に記憶された災害情報と、第1の位置情報についての位置座標(経度,緯度)と、第3の記憶領域123に記憶される地域情報とを用いて、複数の第1のARタグを作成する。ARタグ作成部13は、通信端末30が様々な地点に位置する可能性があることを想定し、これらの地点における現実環境にそれぞれ対応した防災情報を通信端末30に表示させるように複数の第1のARタグを作成する。ここで、第1のARタグは、地震、洪水及び火災等の災害が発生した場合の第1の避難経路と、災害の現況情報と、冠水多発地域、アンダーパス及び河川沿いで過去に洪水の被害があった場所等の危険区域と、過去の災害事例等とのうちいずれかの防災情報を示す。ARタグ作成部13は、作成した複数の第1のARタグを第2の記憶領域122へ出力する。
【0029】
また、制御部15は、事象情報が第1の記憶領域121に記憶された場合、第2の避難経路作成制御154により、避難経路作成部14に第2のARタグを作成させる。このとき、制御部15は、第1の記憶領域121から事象情報を読み出し、避難経路作成部14へ出力する。制御部15は、地図テーブル156を参照し、事象情報の第2の位置情報に基づいた位置座標(経度,緯度)を取得し、避難経路作成部14へ出力する。
【0030】
避難経路作成部14は、第1の記憶領域121に記憶された災害情報及び事象情報と、第1及び第2の位置情報についての位置座標(経度,緯度)と、第3の記憶領域に記憶される地域情報とを用いて、複数の第2のARタグを作成する。避難経路作成部14は、通信端末30が様々な地点に位置する可能性があることを想定し、これらの地点における現実環境にそれぞれ対応した防災情報を通信端末30に表示させるように複数の第2のARタグを作成する。ここで、第2のARタグは、二次災害を発生させ得る土砂崩れ及び通行止め等の事象が発生した場合の第2の避難経路と、この事象の現況情報等とのうちいずれかの防災情報を表示する。第2の避難経路は、ARタグ作成部13で作成された第1の避難経路と異なる経路で同一の目的地へ誘導するもの、又は、第1の避難経路と異なる目的地へ誘導するものがある。避難経路作成部14は、作成した複数の第2のARタグを第2の記憶領域122へ出力する。
【0031】
また、制御部15は、第2の通信制御152により、通信部11に通信端末30との通信を行わせる。制御部15は、通信部11から接続要求信号を受けた場合、配信サーバ10と通信端末30との通信接続を確立する。また、制御部15は、通信部11から現在位置情報を受けた場合、現在位置情報に対応するARタグを、第2の記憶領域122に記録されている複数の第1のARタグ及び複数の第2のARタグから検索する。
【0032】
制御部15は、避難経路割当制御155により、通信接続をしている通信端末30へ第1又は第2の避難経路を割り当てる。制御部15は、第2の記憶領域122に第1の避難経路を示す複数の第1のARタグが記憶されている場合は、通信端末30に対して現在位置情報に対応する第1のARタグを送信する。一方、制御部15は、第2の記憶領域122に、現在位置情報に対応する第1のARタグ及び現在位置情報に対応する第2のARタグの両方が記憶されている場合は、通信端末30に対して現在位置情報に対応する第2のARタグを送信する。
【0033】
通信端末30は、配信サーバ10からの第1又は第2のARタグを自端末で撮影した実写映像に重畳し、自端末の画面に表示する。
【0034】
次に、以上のように構成された防災情報提供システムの動作を詳細に説明する。
【0035】
図3は、本発明の一実施形態に係る配信サーバ10において、第1のARタグが作成される際の制御部15の動作のフローチャートを示す図である。ここでは、例えば、○○年○○月○○日○○時44分に地点Aで地震が発生した場合を想定する。
【0036】
まず、情報管理サーバ20は、○○年○○月○○日○○時44分に地点Aで地震が発生した旨を災害情報として記録する。ここで、地点Aが第1の位置情報である。情報管理サーバ20は、災害情報を配信サーバ10へ送信する。
【0037】
制御部15は、第1の通信制御151により、情報管理サーバ20からの災害情報を第1の記憶領域121に記憶させる(ステップS31)。制御部15は、図4に示す地図テーブル156を参照し、地点Aの位置座標(経度,緯度)=(a1,a2)を取得する(ステップS32)。
【0038】
続いて、制御部15は、ARタグ作成部13に、第1の記憶領域121に記憶された災害情報と、位置座標(a1,a2)と、第3の記憶領域123に記憶される地域情報とを用いて、複数の第1のARタグを作成させる(ステップS33)。このとき、第3の記憶領域123には、地図情報、及び、周囲に存在する避難場所の名称(××小学校、△△小学校等)及び位置座標等が予め記録されている。制御部15は、作成した第1のARタグを、第2の記憶領域122に記憶させる(ステップS34)。
【0039】
図5は、本発明の一実施形態に係る配信サーバ10のARタグ作成部13により作成される第1のARタグの例を示す図である。図5における第1のARタグ131は、第1の避難経路を示すものであり、避難場所である××小学校への道順及び××小学校までの距離を表示する。ここで、ARタグ作成部13は、避難場所である××小学校への最短経路を第1の避難経路として作成し、この第1の避難経路に基づいて第1のARタグ131を作成している。また、ARタグ作成部13は、通信端末30が様々な地点に存在することを想定し、複数のパターンの第1のARタグ131を作成する。また、図5における第1のARタグ132は、発生した地震の現況情報を示すものである。
【0040】
図6は、本発明の一実施形態に係る配信サーバ10において、第2のARタグを作成される際の制御部15の動作のフローチャートを示す図である。ここでは、例えば、地点Aでの地震が発生し、地点Bで通行止めが発生した場合を想定する。
【0041】
まず、情報管理サーバ20は、地点Bで通行止めが発生した旨を事象情報として記録する。ここで、地点Bが第2の位置情報である。情報管理サーバ20は、事象情報を配信サーバ10へ送信する。
【0042】
制御部15は、第1の通信制御151により、情報管理サーバ20からの事象情報を第1の記憶領域121に記憶させる(ステップS61)。制御部15は、図4に示す地図テーブル156を参照し、地点Bの位置座標(経度,緯度)=(b1,b2)を取得する(ステップS62)。
【0043】
続いて、制御部15は、避難経路作成部14に、第1の記憶領域121に記憶された災害情報及び事象情報と、位置座標(a1,a2)及び(b1,b2)と、第3の記憶領域123に記憶される地域情報とを用いて、複数の第2のARタグを作成させる(ステップS63)。制御部15は、作成した第2のARタグを、第2の記憶領域122に記憶させる(ステップS64)。
【0044】
図7は、本発明の一実施形態に係る配信サーバ10の避難経路作成部14により作成される第2のARタグの例を示す図である。図7における第2のARタグ141は、第2の避難経路を示すものであり、避難場所である△△小学校への道順及び△△小学校までの距離を表示する。ここで、避難経路作成部14は、第2の避難場所である△△小学校への最短経路を第2の避難経路として作成し、この第2の避難経路に基づいて第2のARタグ141を作成している。また、避難経路作成部14は、通信端末30が様々な地点に存在することを想定し、複数のパターンの第2のARタグ141を作成する。なお、避難経路作成部14は、第2の避難経路として、通行止め地域を避けて××小学校へ避難するための避難経路を作成しても構わない。また、図7における第2のARタグ142は、通行止めの現況情報を示すものである。
【0045】
図8は、本発明の一実施形態に係る配信サーバ10の制御部15が通信端末30へ第1又は第2のARタグを送信する際のフローチャートを示す図である。
【0046】
まず、通信端末30は、接続要求信号を配信サーバ10へ送信する。これにより、配信サーバ10と通信端末30との間に通信接続が確立される。通信端末30は、配信サーバ10との通信接続を行っている間、配信サーバ10へ自端末の現在位置情報を所定周期で送信する。
【0047】
制御部15は、通信端末30からの現在位置情報を受信すると、通信端末30の位置及び通信端末30が向いている方角を把握する(ステップS81)。制御部15は、第2の記憶領域122に記憶された複数の第1のARタグ及び複数の第2のARタグから、現在位置情報に対応するARタグを検索する(ステップS82)。そして、制御部15は、現在位置情報に対応する第1のARタグ及び現在位置情報に対応する第2のARタグがあるか否かを判断する(ステップS83)。制御部15は、現在位置情報に対応する第1のARタグのみがある場合(ステップS83のNo)、第2の記憶領域122に記憶された複数の第1のARタグから現在位置情報に対応するARタグを読み出し(ステップS84)、通信部11から通信端末30へ送信する(ステップS85)。
【0048】
また、制御部15は、現在位置情報に対応する第1のARタグ及び現在位置情報に対応する第2のARタグがある場合(ステップS83のYes)、第2の記憶領域122に記憶された複数の第2のARタグから現在位置情報に対応するARタグを読み出し(ステップS86)、処理をステップS85へ移行する。
【0049】
図9及び図10は、本発明の一実施形態に係る通信端末30の表示画面における表示例を示す模式図である。図9は実写映像に第1の避難経路を示す第1のARタグを重畳した場合の表示例であり、図10は実写映像に第2の避難経路を示す第2のARタグを重畳した場合の表示例である。
【0050】
以上のように、上記一実施形態では、配信サーバ10において、災害情報に基づいた第1のARタグを、災害が発生する度に随時作成する。そして、配信サーバ10と通信接続を行う通信端末30に対し、作成した第1のARタグを送信するようにしている。これにより、通信端末30のユーザは、リアルタイムかつ必要なタイミングで防災情報を取得することが可能となる。
【0051】
また、上記一実施形態では、二次災害を引き起こし得る事象が発生している場合は、第2の避難経路を作成し、第2の避難経路を示す第2のARタグを作成する。そして、配信サーバ10と通信接続する通信端末30に対し、第1のARタグよりも第2のARタグを優先して送信するようにしている。これにより、二次災害を未然に防止することが可能となる。
【0052】
また、上記一実施形態において、配信サーバ10は、通信端末30が様々な地点に存在することを想定し、複数のパターンの第1及び第2のARタグを作成する。そして、通信端末30に対して、現在位置情報に対応する第1又は第2のARタグを送信するようにしている。これにより、通信端末30のユーザは、現在位置する狭い範囲の防災情報を個々に取得することが可能となる。
【0053】
したがって、本実施形態に係る防災情報提供システムは、狭いエリアに存在するユーザに対して、適格な防災情報をリアルタイムで提供することができる。
【0054】
なお、本実施形態は、上記説明に限定される訳ではない。例えば、ARタグ作成部13は、環境情報に基づいて第1のARタグを作成しても構わない。ここで、環境情報とは、海及び川等の水位に関する情報、降水量に関する情報、積雪量に関する情報及び風向、風速に関する情報等のことを指す。また、環境情報には、この環境情報に対応する第3の位置情報が含まれている。
【0055】
情報管理サーバ20は、環境情報を記録している。環境情報は、上記の情報の測定結果に基づいて更新される。情報管理サーバ20は、更新された環境情報を配信サーバ10へ送信する。
【0056】
通信部11は、ネットワークNWを介して情報管理サーバ20から環境情報を受信し、情報管理サーバ20から環境情報を受信した旨を、制御部15へ通知する。制御部15は、情報管理サーバ20からの環境情報を第1の記憶領域121に記憶させる。制御部15は、地図テーブル156を参照し、環境情報の第3の位置情報に基づく位置座標(経度,緯度)を取得する。
【0057】
制御部15は、ARタグ作成部13に、第1の記憶領域121に記憶された環境情報と、第3の位置情報に基づく位置座標(経度,緯度)と、第3の記憶領域123に記憶される地域情報とを用いて、第1のARタグを作成させる。このとき、第3の記憶領域123には、湾及び河川の名称(□□川等)及び位置座標等が予め記録されている。制御部15は、作成した第1のARタグを、第2の記憶領域122に記憶させる。
【0058】
図11は、本発明の一実施形態に係る配信サーバ10のARタグ作成部13により作成される第1のARタグの例を示す図である。図11における第1のARタグ133は、□□川の水位を示すものであり、現水位と、平常水位、警戒水位及び危険水位とを比較表示している。
【0059】
制御部15は、通信端末30の現在位置情報に基づいて、第1のARタグを通信端末30へ送信する。
【0060】
図12は、本発明の一実施形態に係る通信端末30の表示画面の表示例を示す模式図である。図12は実写映像に図11に示す第1のARタグを重畳した場合の表示例である。
【0061】
これにより、警戒水位、危険水位と比較して現状の水位がどの程度か把握することが可能である。つまり、通信端末30のユーザは、現在の状態が危険であるか否かを判断することが容易である。なお、降水量等から今後の水位を予測し、その予測水位をARタグとして表示することも可能である。
【0062】
また、上記一実施形態では、制御部15は、二次災害を引き起こし得る事象が発生した場合、第2の避難経路作成制御154により、避難経路作成部14に第2の避難経路を作成させるようにしている。しかし、本実施形態は、これに限定される訳ではない。例えば、制御部15は、通信接続を行う通信端末30からの現在位置情報を受信した場合、第2の避難経路作成制御154により、現在位置情報に基づいて第2の避難経路を作成するようにしても構わない。以下では、この第2の避難経路を示すように作成されたARタグを第3のARタグと称する。
【0063】
図13は、本発明の一実施形態に係る配信サーバ10において、第3のARタグが作成され、通信端末30へ送信される際の制御部15の動作のフローチャートを示す図である。このとき、図3に従い、第1のARタグが第2の記憶領域122に記憶されているとする。
【0064】
まず、通信端末30は、接続要求信号を配信サーバ10へ送信する。これにより、配信サーバ10と通信端末30との間に通信接続が確立される。通信端末30は、配信サーバ10との通信接続を行っている間、配信サーバ10へ自端末の現在位置情報を所定周期で送信する。
【0065】
制御部15は、通信端末30からの現在位置情報を受信すると、現在位置情報から通信端末30の位置及び通信端末30が向いている方角を把握する(ステップS131)。制御部15は、地図テーブル156を参照し、災害情報の第1の位置情報に基づいた位置座標を取得する(ステップS132)。
【0066】
制御部15は、避難経路作成部14に、第1の記憶領域121に記憶された災害情報と、第1の位置情報に基づいた位置座標及び通信端末30の現在位置情報と、第3の記憶領域123に記憶される地域情報とを用いて、第2の避難経路を作成させ、この第2の避難経路を示す第3のARタグを作成させる(ステップS133)。制御部15は、作成した第3のARタグを、第2の記憶領域122に記憶させる(ステップS134)。
【0067】
続いて、制御部15は、第2の記憶領域122に記憶された複数の第1のARタグ及び第3のARタグから通信端末30の現在位置情報に対応したARタグを検索する(ステップS135)。制御部15は、避難経路割当制御155により、現在位置情報に対応する第1及び第3のARタグのうちいずれかのARタグを読み出し(ステップS136)、通信部11から通信端末30へ出力する(ステップS137)。
【0068】
制御部15は、ステップS136において、避難経路割当制御155により、予め設定された台数の通信端末毎に第1のARタグ又は第3のARタグを交互に切り替え、通信端末30へ送信するようにしても良い。また、制御部15は、避難経路割当制御155により、第1及び第3のARタグのいずれか一方を予め設定された上限台数の通信端末に送信した後、他方のARタグを通信端末に送信するようにしても良い。
【0069】
これにより、単一の避難経路にユーザが集中することを避けることが可能となる。また、一箇所の避難場所にユーザが集中することを避けることが可能となる。すなわち、災害による二次災害を防止することができる。
【0070】
また、上記一実施形態では、配信サーバ10と、情報管理サーバ20とがネットワークNWを介して接続されている場合を例に説明したが、これに限定される訳ではない。例えば、配信サーバ10と情報管理サーバ20とは、接続インタフェースを介して、直接接続されている場合であっても同様に実施可能である。
【0071】
また、本実施形態に係る配信サーバ10は、情報管理サーバ20から所定の避難場所への避難人数が上限数を超えた旨の事象情報を受信した場合、その避難場所以外の避難場所への避難経路を新たに作成することも可能である。
【0072】
さらに、この発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0073】
10…配信サーバ
11…通信部
12…記憶部
121…第1の記憶領域
122…第2の記憶領域
123…第3の記憶領域
13…ARタグ作成部
131,132,133…第1のARタグ
14…避難経路作成部
141,142…第2のARタグ
15…制御部
151…第1の通信制御
152…第2の通信制御
153…ARタグ作成制御
154…第2の避難経路作成制御
155…避難経路割当制御
156…地図テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
災害についての災害情報を蓄積する情報管理サーバと、
前記災害情報を前記情報管理サーバから受信する配信サーバと、
前記配信サーバに対して接続要求信号を送信することで前記配信サーバと通信接続し、前記通信接続をしている間、自機の現在位置情報を前記配信サーバに対して送信する通信端末と
を具備し、
前記配信サーバは、
前記情報管理サーバからの前記災害情報を記憶する第1のメモリと、
前記第1のメモリに記憶される前記災害情報に基づいて、複数の地点における現実環境にそれぞれ対応する防災情報を、前記通信端末による実写映像に重畳して表示する複数の第1の拡張現実タグを作成するARタグ作成部と、
前記複数の第1の拡張現実タグを記録する第2のメモリと、
前記通信端末から現在位置情報を受信した場合、前記第2のメモリに記憶される複数の第1の拡張現実タグのうち、前記現在位置情報に対応する第1の拡張現実タグを読み出す制御部と、
前記第2のメモリから読み出された第1の拡張現実タグを、前記通信端末へ送信する通信部と
を備え、
前記通信端末は、前記配信サーバから送信された第1の拡張現実タグを実写映像に重畳して表示することを特徴とする防災情報提供システム。
【請求項2】
前記複数の第1の拡張現実タグは、避難場所までの第1の避難経路を示すことを特徴とする請求項1記載の防災情報提供システム。
【請求項3】
前記情報管理サーバは、二次災害を引き起こし得る事象の事象情報をさらに蓄積し、
前記第1のメモリは、前記情報管理サーバからの前記事象情報をさらに記憶し、
前記配信サーバは、
前記第1のメモリに記憶される前記災害情報及び前記事象情報に基づいて、複数の地点における現実環境にそれぞれ対応する防災情報を、前記通信端末による実写映像に重畳して表示する複数の第2の拡張現実タグであって、前記第1の避難経路とは異なる第2の避難経路を示す複数の第2の拡張現実タグを作成する避難経路作成部をさらに備え、
前記制御部は、前記通信端末から現在位置情報を受信した場合、前記第2のメモリに記憶される前記複数の第1の拡張現実タグ及び複数の第2の拡張現実タグのうち、前記現在位置情報に対応した第2の拡張現実タグを読み出し、
前記通信部は、前記第2のメモリから読み出された第2の拡張現実タグを、前記通信端末へ送信することを特徴とする請求項2記載の防災情報提供システム。
【請求項4】
前記配信サーバは、前記通信端末から現在位置情報を受信した場合、前記第1のメモリに記憶される前記災害情報及び前記現在位置情報に基づき、前記現在位置情報における現実環境に対応する防災情報を、前記通信端末による実写映像に重畳して表示する第2の拡張現実タグであって、前記第1の避難経路とは異なる第2の避難経路を示す第2の拡張現実タグを作成する避難経路作成部をさらに備え、
前記制御部は、前記第2のメモリに記憶される前記複数の第1の拡張現実タグのうち前記現在位置情報に対応した第1の拡張現実タグ又は、前記第2の拡張現実タグを読み出し、
前記通信部は、前記第2のメモリから読み出された第1又は第2の拡張現実タグを、前記通信端末へ送信することを特徴とする請求項2記載の防災情報提供システム。
【請求項5】
前記制御部は、予め設定された台数の通信端末毎に前記第1又は第2の拡張現実タグが交互に送信されるように、前記第2のメモリから前記第1又は第2の拡張現実タグを切り替えて読み出すことを特徴とする請求項4記載の防災情報提供システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記第1又は第2の拡張現実タグの一方が予め設定された上限台数の通信端末へ送信された後、他方の拡張現実タグが通信端末へ送信されるように、前記第2のメモリから前記第1又は第2の拡張現実タグを読み出すことを特徴とする請求項4記載の防災情報提供システム。
【請求項7】
災害についての災害情報を記憶する第1のメモリと、
前記第1のメモリに記憶される前記災害情報に基づいて、複数の地点における現実環境にそれぞれ対応する防災情報を、実写映像に重畳して表示する複数の第1の拡張現実タグを作成するARタグ作成部と、
前記複数の第1の拡張現実タグを記録する第2のメモリと、
通信端末から現在位置情報を受信した場合、前記第2のメモリに記憶される複数の第1の拡張現実タグのうち、前記現在位置情報に対応する第1の拡張現実タグを読み出す制御部と、
前記第2のメモリから読み出された第1の拡張現実タグを、前記通信端末へ送信する通信部と
を備えることを特徴とする防災情報配信サーバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−186681(P2011−186681A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−49911(P2010−49911)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】