説明

防犯照明用の調光システム

【課題】防犯目的の異なる複数の検知エリアを有する場合に、十分な防犯効果をもつとともに、小型化かつ低コスト化が実現可能な防犯照明用の調光システムを提供する。
【解決手段】照明による防犯目的を有する通常検知エリアAおよび威嚇による防犯目的を有する威嚇検知エリアBを含む複数の相異なる検知エリア内で、それぞれ人体を検知する検知センサ1、2と、通常検知エリアAに向けて発光する発光体3と、発光体3を点灯制御して複数の調光パターンに切り換える制御部5とを備え、制御部5は、通常検知エリアAに向けられた発光体3を点灯制御して、通常検知エリアA内で人体が検知されたときに通常照明用調光パターンに切り換え、威嚇検知エリアB内で人体が検知されたときに威嚇用調光パターンに切り換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体が検知された検知エリア内において、防犯目的から複数の調光パターンで照明を行う防犯照明用の調光システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から防犯を目的として、検知センサにより人体が検知された検知エリア内で、発光体を点灯制御して複数の調光パターンで照明を行う照明装置が知られている。この照明装置の例として、照明用と威嚇用のモードを有し、検知センサによる人体検知後の時間と回数に基づき不法侵入者と判断できた時点で発光体を威嚇用のモードに切り換えて点灯制御する防犯用照明装置が挙げられる(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、検知エリア内で検知センサにより人体が検知されたときに発光体を点灯させるセンサライトと、この検知エリアと異なる範囲の場所に別に設置された外部センサとを設けて、広範囲のエリアで侵入者を検知して照明を行う照明装置も知られている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−243824号公報
【特許文献2】特開2009−076252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、複数の検知エリアについて、それぞれ照明用や威嚇用などのように防犯目的を異ならせる場合がある。この場合、特許文献1の照明装置では、人体検知後直ちに威嚇したいとき、検知センサによる人体検知後の時間と回数に基づき威嚇のモードに切り換えるので、十分な防犯効果を得られない。また複数の検知エリアごとにそれぞれ検知センサと発光体を設けるので、設備が大型化し、高コスト化する。
【0006】
また、特許文献2の照明装置では、外部センサの人体検知により発光体を点灯させるが、外部センサの人体検知時に、単に発光体を点灯させるにすぎないので防犯効果が十分とはいえない。
【0007】
本発明は、前記の問題点を解決して、防犯目的の異なる複数の検知エリアを有する場合に、十分な防犯効果をもつとともに、小型化かつ低コスト化が実現可能な防犯照明用の調光システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明の一構成にかかる防犯照明用の調光システムは、照明による防犯目的を有する通常検知エリアおよび威嚇による防犯目的を有する威嚇検知エリアを含む複数の相異なる検知エリア内で、それぞれ人体を検知する検知センサと、前記通常検知エリアに向けて発光する発光体と、前記発光体を点灯制御して複数の調光パターンに切り換える制御部とを備え、前記制御部は、前記通常検知エリアに向けられた前記発光体を点灯制御して、前記通常検知エリア内で人体が検知されたときに通常照明用調光パターンに切り換え、前記威嚇検知エリア内で人体が検知されたときに威嚇用調光パターンに切り換えるものである。
ここで、照明による防犯目的とは、特定の検知エリア内で人体を検知すると発光体を例えば所定の照度で連続点灯させて検知エリアを照らすことにより、当該検知エリア内の善意の一般人に対して利便性や安心感を与えて通常の防犯を図る目的をいい、威嚇による防犯目的とは、特定の検知エリア内で人体を検知すると発光体を例えばフラッシングさせたり照度を変えて連続点灯させることにより、当該検知エリア内の不法侵入者に対して、不安感を与える威嚇を行い、速やかな退去を促す目的をいう。
【0009】
この構成によれば、威嚇検知エリアで人体が検知されたとき、通常検知エリアにおいて威嚇用調光パターンで発光体を点灯制御するので、通常検知エリアにおける威嚇照明により、周囲に何らかの異変があったことを知らせるとともに、不法侵入者にも警告を与えることができる。また、検知センサを検知エリアごとに設けているので、各検知センサの人体検知により各検知エリアを容易に判別することができる。これにより、複数の検知エリアを有する場合に、十分な防犯効果をもつとともに、簡単な構成で小型化かつ低コスト化が実現可能となる。
【0010】
好ましくは、前記通常検知エリアと前記威嚇検知エリアとがそれぞれ隣接している。したがって、通常検知エリアにおける威嚇照明により、これに隣接した威嚇検知エリアの防犯効果がより高くすることができる。
【0011】
好ましくは、前記制御部は、前記通常検知エリアおよび前記威嚇検知エリアでの別々の人体検知が同じ時間帯に重なったとき、前記威嚇検知エリアでの人体検知を優先して、当該威嚇調光パターンで点灯制御する。したがって、威嚇検知エリアでの人体検知により直ちに通常検知エリアで威嚇照明するとともに、通常検知エリア内の一般人にも何らかの異変があったことを知らせるので、威嚇検知エリアの防犯効果をより高くすることができる。
【0012】
好ましくは、前記制御部は、前記通常検知エリアおよび前記威嚇検知エリアでの別々の人体検知が同じ時間帯に重なったとき、各検知エリアでの人体検知ごとに、それぞれに応じた各調光パターンで点灯制御する。したがって、各検知エリアでの人体検知があると、その都度前回の調光パターンをリセットして新たな調光パターンにやり直すので、検知タイミングに応じた適切な照明をすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、威嚇検知エリアで人体が検知されたとき、通常検知エリアにおいて威嚇用調光パターンで発光体を点灯制御して調光するので、通常検知エリアにおける威嚇照明により、周囲に何らかの異変があったことを知らせるとともに、不法侵入者にも警告を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る防犯照明用の調光システムを示す平面配置図である。
【図2】防犯照明用の調光システムを示す側面図である。
【図3】防犯照明用の調光システムを示すブロック図である。
【図4】防犯照明用の調光システムの動作の一例を示すタイムチャートである。
【図5】防犯照明用の調光システムの動作の他例を示すタイムチャートである。
【図6】防犯照明用の調光システムの動作のさらに他例を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。図1は本発明に係る防犯照明用の調光システムを示す平面配置図である。この調光システムは、例えば駐車場の敷地のような複数の相異なる平面視で矩形の検知エリアA、Bを有し、照明による防犯目的を有する通常検知エリアA内で人体を検知する検知センサ1と、威嚇による防犯目的を有する威嚇検知エリアB内で人体を検知する検知センサ2とを備えている。
【0016】
通常検知エリアAは例えばフェンスFで囲まれた駐車用の比較的広いエリアであり、検知センサ1は、この通常検知エリアA内で善意に車両を移動させる一般人を検知する。威嚇検知エリアBは、例えば建物Tの陰で死角になりやすく人が通常出入りしないような比較的狭いエリアであり、検知センサ2は、この威嚇検知エリアB内に立ち小便やゴミ放棄など(迷惑行為)のような軽度の違反行為のために不法に侵入した者を検知する。両検知エリアA、BはフェンスFを介して隣接している。この例では、通常検知エリアAの相対向する端部に2つのセンサライトユニットLU、威嚇検知エリアBの端部に1つのセンサユニットUが設けられている。
【0017】
図2は、調光システムの一部側面図である。センサライトユニットLUは、取付けポールPに取り付けられて、通常検知エリアA内で人体を検知して人体検知信号を出力する前記検知センサ1と、この通常検知エリアAに向けて発光するLED(発光ダイオード)のような発光体3と、LED3に電力を供給する電源部4と、制御部(コントローラ)5と、図3に示す検知センサ2からの人体検知信号を無線で受信する受信器7とを備えている。図2の発光体3の発光エリアは、図1の検知センサ1の通常検知エリアAよりも若干広い角度のエリアに設定することができる。
【0018】
一方、図2のセンサユニットUは、威嚇検知エリアBの端部で例えば建物Tの外壁Wに取り付けられて、威嚇検知エリアB内で人体Hを検知して人体検知信号を出力する検知センサ2と、図3に示すこの人体検知信号を無線で送信する送信器6とを備えている。
【0019】
この例では、検知センサ1、2は、検知エリアA、B内で人体Hから発する赤外線を検知する受光ユニットのみからなるPIR(受動型赤外線)型の検知センサを使用しているが、投光器から検知エリアA、B内で赤外線が投光され、受光器で受光するAIR(能動型赤外線)センサなどを使用してもよい。また、検知センサ2は、威嚇検知エリアBが狭くて細長いエリアである場合、ナロー型センサを使用することもできる。
【0020】
図3は防犯照明用の調光システムを示すブロック図である。この防犯照明用の調光システムは、前記した検知センサ1、2、発光体(LED)3、電源部4、制御部(コントローラ)5、送信器6および受信器7を備えている。図2のセンサユニットU内の送信器6は検知センサ2からの人体検知信号を無線で送信し、図2のセンサライトユニットLU内の受信器7は、送信器6から送信された検知センサ2の人体検知信号を受信する。この伝送された人体検知信号は制御部5に入力される。なお、検知センサ2からの人体検知信号を無線に代えて有線で制御部5へ伝送させてもよい。
【0021】
図3の制御部5は、システム全体を制御するとともに、通常検知エリアAに向けて発光する発光体3を点灯制御して複数の調光パターンに切り換えるものであり、通常検知エリアA内で検知センサ1により人体が検知されたときに通常照明用調光パターンに切り換え、威嚇検知エリアB内で検知センサ2により人体Hが検知されたときに威嚇用調光パターンに切り換える。この制御部5は、例えばPWM(Pulse Width Modulation)制御方式で、電源部4からの供給電圧のオンオフパルス幅および該パルス幅間隔を可変させることによりLED3に供給する電圧を調整して、種々の調光パターンに切り換える制御を行う。
【0022】
図4は、調光システムの動作の一例を示すタイムチャートである。図4(A)は通常照明用調光パターンの一例を示すもので、発光体3を所定の照度で連続点灯させている。通常検知エリアA内で人体が検知されたときに、制御部5により、通常検知エリアAがこの通常照明用調光パターンで照らされることにより、駐車場における通常検知エリアA内で善意に車両を移動させる一般人に対して利便性や安心感を与えることができ、通常の防犯効果が得られる。
【0023】
図4(B)は威嚇用調光パターンの一例を示すもので、発光体3をフラッシングさせている。威嚇用調光パターンとしては、その他に速いフラッシングと遅いフラッシングを繰り返したり、照度を変えて連続点灯させたりする。威嚇検知エリアB内で人体Hが検知されたときに、制御部5により、通常検知エリアBがこの威嚇用調光パターンで照らされることにより、駐車場の回りの人の目を引いて何らかの異変があったことを知らせるとともに、威嚇検知エリアB内への不法侵入者に対しても、不安感をもたらす威嚇による警告を与えて、速やかな退去を促すことができるので、十分な防犯効果が得られる。
【0024】
このように、本発明では、威嚇検知エリアBで検知センサ2により人体が検知されたとき、通常検知エリアAにおいて威嚇用調光パターンで発光体3を点灯制御するので、通常検知エリアAにおける威嚇照明により、周囲に何らかの異変があったことを知らせるとともに、不法侵入者にも警告を与えることができる。また、検知センサ1、2を検知エリアA、Bごとに設けているので、各検知センサ1、2の人体検知により各検知エリアA、Bを容易に判別することができる。これにより、複数の検知エリアを有する場合に、十分な防犯効果をもつとともに、簡単な構成で小型化かつ低コスト化が実現可能となる。しかも、重大な犯罪行為を対象とした設備で相応の設備コストがかかる場合と比べて、迷惑行為のような軽度の違反行為を対象とした設備で、設備の低コスト化が要請される場合に有効である。
【0025】
図5は、防犯照明用の調光システムの動作の他例を示すタイムチャートである。制御部5は、通常検知エリアAおよび威嚇検知エリアBでの別々の人体検知が同じ時間帯に重なったとき、威嚇検知エリアBでの検知センサ2による人体検知を優先し、この人体検知信号(アラート)に基づいて当該威嚇調光パターンで点灯制御する。このため、威嚇検知エリアBにおいて検知センサ2で人体検知されて威嚇照明しているときに、通常検知エリアAにおいて検知センサ1により人体検知されても無視される。その他の構成は上記実施形態と同様である。
【0026】
上記例では、威嚇検知エリアBでの人体検知により直ちに通常検知エリアAで威嚇照明するとともに、周囲だけでなく駐車場の通常検知エリアA内の一般人にも何らかの異変があったことを知らせるので、威嚇検知エリアBの防犯効果をより高くすることができる。
【0027】
図6は、防犯照明用の調光システムの動作のさらに他例を示すタイムチャートである。制御部5は、通常検知エリアAおよび威嚇検知エリアBでの別々の人体検知が同じ時間帯に重なったとき、各検知エリアA、Bでの人体検知ごとに、それぞれに応じた各調光パターンで点灯制御する。その他の構成は上記実施形態と同様である。この例では、各検知エリアA、Bでの検知センサ1、2による人体検知があると、その都度前回の調光パターンをリセットして新たな調光パターンにやり直すので、検知タイミングに応じた適切な照明をすることができる。
【0028】
なお、上記実施形態では、通常検知エリアAに威嚇検知エリアBを1つ隣接させているが、2以上の威嚇検知エリアBを通常検知エリアAにそれぞれ隣接させてもよい。
【0029】
なお、上記実施形態では、威嚇検知エリアBを建物の陰のような狭いエリアに適用しているが、工場敷地のような広いエリアに適用してもよい。
【0030】
なお、上記実施形態では、威嚇検知エリアBで軽度の違反行為の不法侵入者を検知しているが、重大な犯罪行為の不法侵入者を検知するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0031】
1:検知センサ
2:検知センサ
3:発光体(LED)
4:電源部
5:制御部(コントローラ)
A:通常検知エリア
B:威嚇検知エリア
H:人
LU:センサライトユニット
U:センサユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明による防犯目的を有する通常検知エリアおよび威嚇による防犯目的を有する威嚇検知エリアを含む複数の相異なる検知エリア内で、それぞれ人体を検知する検知センサと、前記通常検知エリアに向けて発光する発光体と、前記発光体を点灯制御して複数の調光パターンに切り換える制御部とを備え、
前記制御部は、前記通常検知エリアに向けられた前記発光体を点灯制御して、前記通常検知エリア内で人体が検知されたときに通常照明用調光パターンに切り換え、前記威嚇検知エリア内で人体が検知されたときに威嚇用調光パターンに切り換える、
防犯照明用の調光システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記通常検知エリアと前記威嚇検知エリアとがそれぞれ隣接している、防犯照明用の調光システム。
【請求項3】
請求項1において、
前記制御部は、前記通常検知エリアおよび前記威嚇検知エリアでの別々の人体検知が同じ時間帯に重なったとき、前記威嚇検知エリアでの人体検知を優先して、当該威嚇調光パターンで点灯制御する、防犯照明用の調光システム。
【請求項4】
請求項1において、
前記制御部は、前記通常検知エリアおよび前記威嚇検知エリアでの別々の人体検知が同じ時間帯に重なったとき、各検知エリアでの人体検知ごとに、それぞれに応じた各調光パターンで点灯制御する、防犯照明用の調光システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−168617(P2012−168617A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27220(P2011−27220)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000103736)オプテックス株式会社 (116)
【Fターム(参考)】