説明

防眩ハードコートフィルム

【課題】本発明は、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイに代表される各種ディスプレイの表面に用いられる視認性の低下を防止するために好適な防眩ハードコートフィルムを提供する。
【解決手段】本発明の防眩ハ−ドコートフィルム10は、透明支持体1上に、微粒子3および樹脂を含有する第1樹脂層2及び該第1樹脂層2上に形成された樹脂を含有する第2樹脂層4からなる防眩ハードコート層5を設けたものであり、該防眩ハードコート層5の表面の平均傾斜角が0.5〜1.0度の範囲である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノートパソコン、パソコン用モニタ、テレビ等の各種ディスプレイの表面に用いる防眩ハードコートフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ノートパソコン、液晶モニタなどのディスプレイは、その表面の表面保護基材を通して画像を認識するようになっている。それらのディスプレイは本体内部にバックライトを用いるか、又は外部の光を利用して視認性を向上させている。これらのディスプレイは内部から発する光や外光の映り込みを軽減し、画像の視認性を向上するため、屈折率の異なる薄膜を形成して光学的に反射を防止するか、又は表面保護基材に防眩処理を施すことが行われている。光学的に反射を防止する方法は、フィルム又はハードコート処理されたフィルム表面に酸化チタンや酸化ジルコニウムなどの高屈折率材料とフッ化マグネシウム、有機フッ素化合物、酸化珪素などの低屈折率材料の薄膜を交互に形成して多層薄膜とし、光の干渉により反射を防止する方法(特許文献1)が知られている。防眩処理は、二酸化珪素等の微粒子を含む樹脂塗膜をフィルム表面に形成し、塗膜表面の凹凸により反射光を拡散させる方法(特許文献2)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−180611号公報
【特許文献2】特開平6−18706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、光学的に反射を防止する方法は、高価な材料を用いた多層膜を利用するため、コストが高くなってしまうという問題がある。また、塗膜表面の凹凸により反射光の散乱を利用する防眩処理タイプの液晶ディスプレイの場合、ディスプレイの解像度が高いと、バックライト等からカラーフィルター画素を通過した光が、防眩層での表面散乱により混合するため、画面がギラツキ、著しく視認性を低下させるという問題がある。
【0005】
塗膜表面の凹凸により反射光の散乱を利用する防眩処理タイプの液晶テレビにおいて、従来技術では、画像のギラツキを防止するために微粒子添加量を多量にして、ヘイズ度を高めなければならず、液晶パネルに装着し、画像を表示すると画面が白っぽくなり、特に、黒表示で画像品位が低下する問題があった。
【0006】
そこで、本発明は以上のような従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、ヘイズ値が低く透明性に優れ、画像のギラツキを抑制し、塗膜の白っぽさ(白ぼけ)を低減した防眩ハードコートフィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、透明フィルム上に、微粒子および樹脂を含有する第1樹脂層及び第1樹脂層上に樹脂を含有する第2樹脂層を設けてなる防眩ハードコートフィルムであって、防眩ハードコートフィルムの表面の平均傾斜角を0.5〜1.0度とすることで上記課題を解決できることを見出し、以下の本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、第1の発明は、透明支持体上に、微粒子および樹脂を含有する第1樹脂層及び該第1樹脂層上に形成された樹脂を含有する第2樹脂層からなる防眩ハードコート層を設けてなり、該防眩ハードコート層の表面の平均傾斜角が0.5〜1.0度の範囲であることを特徴とする防眩ハードコートフィルムである。
【0009】
また、第2の発明は、前記防眩ハードコート層の表面に突出する微粒子数が100個/mm2以下であることを特徴とする第1の発明に記載の防眩ハードコートフィルムである。
また、第3の発明は、前記第1樹脂層に含有される微粒子の平均粒径(a)、前記第1樹脂層の厚さ(b)および前記第2樹脂層の厚さ(c)との関係が、a≧bかつa≦b+cであることを特徴とする第1の発明又は第2の発明に記載の防眩ハードコートフィルムである。
【0010】
また、第4の発明は、前記防眩ハードコート層表面の十点平均粗さが0.3μm以上0.8μm以下、且つ中心線平均粗さが0.1μm未満であることを特徴とする第1の発明乃至第3の発明のいずれかに記載の防眩ハードコートフィルムである。
また、第5の発明は、前記第1樹脂層に含まれる微粒子と樹脂との屈折率差が0.005〜0.010の範囲であることを特徴とする第1の発明乃至第4の発明のいずれかに記載の防眩ハードコートフィルムである。
【0011】
また、第6の発明は、前記第1樹脂層に含まれる微粒子の含有量が該第1樹脂層に含まれる樹脂100重量部に対して5〜35重量部であることを特徴とする第1の発明乃至第5の発明のいずれかに記載の防眩ハードコートフィルムである。
また、第7の発明は、前記第1樹脂層及び前記第2樹脂層に含まれる樹脂が電離放射線硬化型樹脂であることを特徴とする第1の発明乃至第6の発明のいずれかに記載の防眩ハードコートフィルムである。
【0012】
また、第8の発明は、前記透明支持体が、トリアセチルセルロースフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、又はノルボルネンフィルムであることを特徴とする第1の発明乃至第7の発明のいずれかに記載の防眩ハードコートフィルムである。
また、第9の発明は、ヘイズ値が3.0%以下で、内部ヘイズが1.0%以下であり、かつ全光線透過率が80%以上であることを特徴とする第1の発明乃至第8の発明のいずれかに記載の防眩ハードコートフィルムである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ヘイズ値が低く透明性に優れ、画像のギラツキを抑制し、かつ塗膜の白っぽさ(白ぼけ)を低減し、視認性、画像品位を著しく向上させた防眩ハードコートフィルムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の防眩ハードコートフィルムの一実施の形態を示す断面図である。
【図2】従来の防眩ハードコートフィルムの一例を示す断面図である。
【図3】フィルム表面の平均傾斜角の求め方を説明するための参考図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の防眩ハードコートフィルムは、前記第1の発明のとおり、透明支持体上に、微粒子および樹脂を含有する第1樹脂層及び該第1樹脂層上に形成された樹脂を含有する第2樹脂層からなる防眩ハードコート層を設けてなり、該防眩ハードコート層の表面の平均傾斜角が0.5〜1.0度の範囲であることを特徴としている。
ここで、「平均傾斜角」とは、測定対象であるフィルム表面の断面曲線(測定曲線)を一定間隔ΔXで横方向に区切り、各区間内における断面曲線の終始点を結ぶ線分の傾き(傾斜角:傾斜角は、tan-1(ΔYi/ΔX)で求められる。)の絶対値を求め、その値を平均したもの(θa)をいう(図3参照)。すなわち、平均傾斜角(θa)は、下記式で定義される値である。
【0016】
【数1】

【0017】
図1は、本発明の防眩ハードコートフィルムの一実施の形態を示す断面図である。
図1に示す本発明の防眩ハ−ドコートフィルム10は、透明支持体1上に、微粒子3および樹脂を含有する第1樹脂層2及び該第1樹脂層2上に形成された樹脂を含有する第2樹脂層4からなる防眩ハードコート層5を設けたものであり、該防眩ハードコート層5の表面の平均傾斜角が0.5〜1.0度の範囲である。
【0018】
このような本発明の防眩ハードコートフィルムによれば、ヘイズ値が低く透明性に優れ、画像のギラツキを抑制し、白っぽさ(白ぼけ)を低減できる理由は次のように推測される。
防眩ハードコートフィルムのヘイズ値は、防眩ハードコート層表面の凹凸に起因し、光が屈折、散乱することで発生する表面ヘイズが大きな要因である。この表面ヘイズは、防眩ハードコートフィルムの表面の平均傾斜角を1.0度以下に調整することで、表面の凹凸に起因する光の屈折・散乱が抑制されるため、透明性が優れるとともに、塗膜の白っぽさが低減される。一方、防眩ハードコートフィルムの表面の平均傾斜角を0.5度以上に調整することで、防眩ハードコート層表面のなだらかな凹凸に起因する光の屈折・散乱により、ぎらつきが抑制される。なお、防眩ハードコートフィルムの表面の平均傾斜角が0.5度よりも小さいと、フィルム表面に凹凸がほとんど形成されていない状態であるため、良好な防眩性が得られない。
【0019】
つまり、本発明において重要なことは、フィルムの表面の平均傾斜角が0.5〜1.0度の範囲で、フィルム表面になだらかな(緩やかな)凹凸が形成されていることであり、これによって「透明性」、「ぎらつき」、「白っぽさ」のバランスが良好に調節され、本発明の優れた効果が発現される。これに対し、平均傾斜角が0.5度よりも小さく、フィルム表面に凹凸がほとんど形成されていない状態、反対に、平均傾斜角が1.0度よりも大きく、フィルム表面に凹凸が形成されているが、なだらかな凹凸表面となっていない状態では、「透明性」、「ぎらつき」、「白っぽさ」のバランスを良好に調節することはできない。
【0020】
また、本発明において、防眩ハードコートフィルムの表面に突出する微粒子数を100個/mm2以下にすることにより、優れた効果が発現する。すなわち、突出する微粒子数を100個/mm2以下にすることにより、表面の凹凸に起因する光の屈折・散乱を抑制できるため、透明性が優れるとともに、塗膜の白っぽさが低減される。
なお、本発明では、防眩ハードコートフィルムの表面に突出する微粒子数とは、電子顕微鏡(SEM、倍率:2000倍)による防眩ハードコートフィルムの表面写真(画像)から、防眩ハードコートフィルム1mm×1mmの範囲で樹脂層から突出した微粒子の面積が0.75μm2以上であるものの個数をいう。
【0021】
また、本発明において、第1樹脂層に含有される微粒子の平均粒径(a)、第1樹脂層の厚さ(b)および第2樹脂層の厚さ(c)とした場合(図1を参照)、a≧bかつa≦b+cに調整することにより、優れた効果が発現する。
つまり、a<bであると、防眩ハードコートフィルム表面の凹凸が形成されにくくなり、十分な防眩性を得ることができない。一方、a>b+cであると、防眩ハードコートフィルムの表面に突出する微粒子の数が増加し、十分な透明性が得られない可能性がある。
【0022】
また、本発明においては、b≧0.3×aあるいは1.3×a−b≧cであることが望ましい。
つまり、b<0.3×aであると微粒子が透明基材上に固定されないため、第2樹脂層に微粒子がマイグレーションし、防眩ハードコートフィルムの表面に突出する微粒子の数が増加し、十分な透明性が得られなくなる可能性がある。一方、1.3×a−b<cであると、防眩ハードコートフィルム表面の凹凸が形成されにくくなり、十分な防眩性が得られない可能性がある。
【0023】
また、本発明は、微粒子および樹脂を含有した第1樹脂層及び樹脂を含有した第2樹脂層の2層の構成にすることを特徴としており、微粒子が第1樹脂層に固定されるため、微粒子が第2樹脂層へマイグレーションするのが抑制される。このため、防眩ハードコートフィルム表面に緩やかな凹凸が形成されることによって十分な防眩性が得られると同時に、高い透明性を得ることができる。また、微粒子が第1樹脂層に固定されることにより、第2樹脂層を薄くした場合においても、防眩ハードコートフィルムの表面に突出する微粒子の数を抑制することができるため、優れた透明性が発現する。
【0024】
なお、図2は、従来の防眩ハードコートフィルムの一例を示す断面図であり、透明支持体11上に、微粒子13および樹脂を含有する単層の樹脂層(防眩ハードコート層)12を設けたものである。このような従来の防眩層が単層構成では、フィルム表面になだらかな凹凸が形成され難く、フィルム表面の平均傾斜角は1.0度よりも大きくなる。
【0025】
また、本発明においては、防眩ハードコート層表面の十点平均粗さが0.3μm以上0.8μm以下かつ、中心線平均粗さが0.1μm未満であることが好ましい。十点平均粗さが0.3μm未満であると、防眩ハードコート層表面が平滑すぎるため、防眩性を得ることができない。また、中心線平均粗さが0.1μm以上、十点平均粗さが0.8μmより大きいと、防眩ハードコート層表面が粗くなり防眩性が強くなるため、外光の写り込みによる画面の白ボケを抑制できない。
【0026】
また、本発明においては、ヘイズ値が3.0%以下で、内部ヘイズが1.0%以下であり、かつ全光線透過率が80%以上であることが好ましい。とりわけ、内部ヘイズが1.0%以下であることにより、塗膜の白っぽくなるのを抑制することができる。
【0027】
本発明に用いることのできる上記透明支持体は、特に限定はないが、たとえば、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET;屈折率1.665)、ポリカーボネートフィルム(PC;屈折率1.582)、トリアセチルセルロースフィルム(TAC;屈折率1.485)、ノルボルネンフィルム(NB;屈折率1.525)などが使用でき、フィルム厚さも特に制限はないが、25μm〜250μm程度が汎用的に使用されている。一般的な、電離放射線硬化樹脂の屈折率は、1.52程度であるので、視認性を高くするためには前記樹脂の屈折率に近いTACフィルム、NBフィルムが好ましく、また、価格的にはPETフィルムが好ましい。
【0028】
本発明の第1樹脂層及び第2樹脂層(以下、単に「樹脂層」ということもある。)に用いる樹脂は、被膜を形成する樹脂であれば特に制限なく用いることができるが、ハード性(鉛筆硬度、耐擦傷性)を付与し、多量の熱を必要としないという点で、電離放射線硬化型樹脂が好ましい。
電離放射線硬化型樹脂は、電子線または紫外線等を照射することによって硬化する透明な樹脂であれば、特に限定されるものではなく、例えば、ウレタンアクリレート系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂、及びエポキシアクリレート系樹脂等の中から適宜選択することができる。電離放射線硬化型樹脂として好ましいものは、分子内に2 個以上の(メタ)アクリロイル基を有する紫外線硬化可能な多官能アクリレートからなるものが挙げられる。分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する紫外線硬化可能な多官能アクリレートの具体例としては、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のポリオールポリアクリレート、ビスフェノールA ジグリシジルエーテルのジアクリレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルのジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルのジ(メタ)アクリレートなどのエポキシ(メタ)アクリレート、多価アルコールと多価カルボン酸及び/またはその無水物とアクリル酸とをエステル化することによって得ることができるポリエステル(メタ)アクリレート、多価アルコール、多価イソシアネート及び水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させることによって得られるウレタン(メタ)アクリレート、ポリシロキサンポリ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0029】
前記の紫外線硬化可能な多官能アクリレートは単独または2種以上混合して用いてもよく、その含有量は第1樹脂層、第2樹脂層用塗料の樹脂固形分に対して、好ましくは50〜95重量%である。なお、上記の多官能(メタ)アクリレートの他に、第1層、第2層用塗料の樹脂固形分に対して、好ましくは10重量%以下の2−ヒドロキシ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等の単官能アクリレートを添加することもできる。
【0030】
また、樹脂層には硬度を調整する目的で使用される重合性オリゴマーを添加することができる。このようなオリゴマーとしては、末端(メタ)アクリレートポリメチル(メタ)アクリレート、末端スチリルポリ(メタ)アクリレート、末端(メタ)アクリレートポリスチレン、末端(メタ)アクリレートポリエチレングリコール、末端(メタ)アクリレートアクリロニトリル−スチレン共重合体、末端(メタ)アクリレートスチレン−メチルメタクリレート共重合体などのマクロモノマーを挙げることができ、その含有量は塗料中の樹脂固形分に対して、好ましくは5〜50重量%である。
【0031】
本発明に用いる微粒子を形成する材料は、特に限定はないが、例えば、塩化ビニル樹脂(屈折率1.53)、アクリル樹脂(屈折率1.49)、(メタ)アクリル樹脂(屈折率1.52〜1.53)ポリスチレン樹脂(屈折率1.59)、メラミン樹脂(屈折率1.57)、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル−スチレン共重合樹脂(屈折率1.53〜1.59)等の樹脂材料(有機材料)が挙げられる。また、平均粒径は2〜6μmの微粒子を用いることが防眩性の点から望ましい。
【0032】
本発明に用いる微粒子は、第1樹脂層を構成する樹脂の屈折率(硬化後の屈折率)に対し、屈折率の差が0.001〜0.020である有機微粒子を用いることが好ましく、0.005〜0.010である有機微粒子を用いることがより好ましい。つまり、一般的な電離放射線硬化樹脂の屈折率は、1.52程度であるので、屈折率が1.50〜1.54の有機微粒子を使用すること好ましい。例えば、防眩ハードコート層を構成する樹脂が電離放射線硬化型樹脂の(メタ)アクリル樹脂、ウレタンアクリレート(屈折率=1.52)の場合、前記防眩ハードコート層に用いる微粒子は(メタ)アクリル樹脂(屈折率1.52〜1.53)を使用することが好ましい。
【0033】
第1樹脂層を構成する樹脂と微粒子の屈折率差が0.020を超えると、透過率を低下させないためヘイズ値を0.1〜5.0%となるように調整した場合、前記樹脂100重量部に対する添加部数が少なくなるため、十分な防眩性が得られず、また、防眩性が得られる添加部数ではヘイズ値が5.0%を超え、透過率、コントラストが低下する。
【0034】
また、前記微粒子は第1樹脂層に用いられる樹脂の屈折率よりも0.001〜0.020高いことが好ましい。樹脂との屈折率差が0.001〜0.020低い微粒子を用いる場合でも得られる効果に大差はないが、第1樹脂層を構成する樹脂には汎用性の高い電離放射線硬化型樹脂の(メタ)アクリル樹脂、ウレタンアクリレート(屈折率=1.52)を用いることが大量に安価に製造するには好ましく、微粒子の入手性を考慮すると前記樹脂の屈折率よりも0.001〜0.020高い微粒子の方が好ましい。また、微粒子は単独で、あるいは2種以上を併用することが可能である。なお、微粒子を併用する場合にも、併用する微粒子は、平均粒径が2〜6μm、第1樹脂層を構成する樹脂との屈折率差が0.001〜0.020の範囲であることが好ましい。さらに、本発明の効果を損なわない範囲で無機微粒子、または樹脂との屈折率差が0.001未満、あるいは0.010を超える無機微粒子あるいは有機微粒子を配合しても良い。
【0035】
本発明において前記微粒子は、第1樹脂層中の樹脂100重量部に対して5〜35重量部配合することが望ましく、10〜25重量部配合することがより好ましい。
【0036】
また、本発明において、樹脂層にレベリング剤、消泡剤、滑剤、紫外線吸収剤、光安定剤、重合禁止剤、湿潤分散剤、レオロジーコントロール剤、酸化防止剤、防汚剤、帯電防止剤、導電剤などを必要に応じて含有することが可能である。
【0037】
本発明の第1樹脂層は、前記樹脂と微粒子等を溶剤に溶解、分散した塗料を透明フィルム上に塗工乾燥し、硬化させて形成することができる。溶媒としては、前記樹脂の溶解性に応じて適宜選択でき、少なくとも固形分( 樹脂、微粒子、触媒、硬化剤、その他添加剤) を均一に溶解あるいは分散できる溶媒であればよい。そのような溶媒としては、例えば、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフラン等)、脂肪族炭化水素類(ヘキサン等)、脂環式炭化水素類(シクロヘキサン等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン等)、ハロゲン化炭素類( ジクロロメタン、ジクロロエタン等) 、エステル類( 酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール等)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等)、セロソルブアセテート類、スルホキシド類、アミド類などが例示できる。また、溶媒は単独で使用しても混合して使用してもよい。また、本発明の第2樹脂層は、前記樹脂等を溶剤に溶解した塗料を第1樹脂層上に塗工乾燥し、硬化させて形成することができる。なお、第2樹脂層は、先に形成した第1樹脂層が第2樹脂層の樹脂と混合しない程度に硬化してから塗工するのが望ましい。
【0038】
本発明において、樹脂層の塗工方法については特に限定しないが、グラビア塗工、マイクログラビア塗工、バー塗工、スライドダイ塗工、スロットダイ塗工、デイップコートなど、塗膜厚さの調整が容易な方式で塗工が可能である。
なお、本発明において、各樹脂層の膜厚は、防眩フィルム断面写真を顕微鏡等で観察し、塗膜界面から表面までを実測することにより測定できる。
【実施例】
【0039】
以下、本発明の具体的な実施例及び比較例を挙げて本発明の効果を例証する。
[実施例1]
<第1樹脂層塗料の調製>
トルエン18.3gにアクリル粒子(綜研化学(株)社製、平均粒径4.0μm、屈折率:1.525)1.80gを添加し十分攪拌した。この液にアクリル系紫外線硬化樹脂(日本合成化学工業(株)社製、屈折率:1.52)9.76gとイルガキュア184(光重合開始剤、(株)チバスペシャリティーケミカル社製)1.5g、BYK381(レベリング剤、ビックケミー(株)社製)0.5gを添加し十分攪拌し塗料を調製した。
<第1樹脂層の形成>
Fuji TAC(トリアセチルセルロースフィルム、富士フィルム(株)社製)に上記第1層塗料をマイヤーバー#3(RDS社製)で塗工し、80℃で1分間乾燥後、350mJ/cm2の紫外線(光源:Fusion Japan社製UVランプ)を照射し硬化した。得られた塗膜の厚さは1.7μmであった。
【0040】
<第2樹脂層塗料の調製>
酢酸エチル50.0gにアクリル系紫外線硬化樹脂ペンタエリスリトールトリアクリレート(共栄社化学(株)社製)を50.0g、イルガキュア184(光重合開始剤、(株)チバスペシャリティーケミカル社製)1.5g、BYK340(レベリング剤、ビックケミー(株)社製)0.5gを添加し十分に攪拌し塗料を調製した。
<第2樹脂層の形成>
第1層に上記ハードコート塗料をマイヤーバー#3(RDS社製)で塗工し、80℃で1分間乾燥後、350mJ/cm2の紫外線(光源:Fusion Japan社製UVランプ)を照射し硬化した。得られた塗膜の厚さは2.4μmであった。
【0041】
[実施例2]
<第1樹脂層>
トルエンの量を14.67に変更した以外は実施例1と同様にして、第1樹脂層を形成した。得られた第1樹脂層の厚さは1.8μmであった。
<第2樹脂層>
実施例1と同様にして、第2樹脂層を形成した。得られた塗膜の厚さは2.7μmであった。
【0042】
[実施例3]
<第1樹脂層>
アクリル粒子を屈折率1.530のアクリル粒子(綜研化学(株)社製、平均粒径4.8μm)に変更した以外は実施例2と同様にの方法で塗料を用いて、マイヤーバーを#4(RDS社製)に変更した以外は実施例1と同様にして第1樹脂層を形成させた。得られた塗膜の厚さは2.3μmであった。
<第2樹脂層>
実施例1と同様にして、第2樹脂層を形成した。得られた塗膜の厚さは2.7μmであった。
【0043】
[実施例4]
<第1樹脂層>
アクリル粒子の量を2.40gに変更した以外は、実施例1と同様にして、第1樹脂層を形成させた。得られた塗膜の厚さは1.8μmであった。
<第2樹脂層>
実施例1と同様にして、第2樹脂層を形成した。得られた塗膜の厚さは2.7μmであった。
【0044】
[実施例5]
<第1樹脂層>
実施例1と同様にして、第1樹脂層を形成した。得られた塗膜の厚さは1.7μmであった。
<第2樹脂層>
マイヤーバーを#4に変更した以外は実施例1と同様にして、第2樹脂層を形成した。得られた塗膜の厚さは3.7μmであった。
【0045】
[実施例6]
<第1樹脂層>
トルエンの量を12.9gに変更した以外は、実施例1と同様にして、第1樹脂層を形成した。得られた塗膜の厚さは1.2μmであった。
<第2樹脂層>
マイヤーバーを#5に変更した以外は実施例1と同様にして、第2樹脂層を形成した。得られた塗膜の厚さは4.3μmであった。
【0046】
[実施例7]
<第1樹脂層>
マイヤーバーを#5変更した以外は、実施例1と同様にして、第1樹脂層を形成した。得られた塗膜の厚さは3.0μmであった。
<第2樹脂層>
実施例1と同様にして、第2樹脂層を形成した。得られた塗膜の厚さは2.4μmであった。
【0047】
[実施例8]
<第1樹脂層>
マイヤーバーを#7変更した以外は、実施例1と同様にして、第1樹脂層を形成した。得られた塗膜の厚さは4.2μmであった。
<第2樹脂層>
酢酸エチルの量を100.0gに変更した以外は実施例1と同様にして、第2樹脂層を形成した。得られた塗膜の厚さは1.2μmであった。
【0048】
[比較例1]
<第1樹脂層>
実施例1と同様にして、第1樹脂層を形成した。得られた塗膜の厚さは6.3μmであった。
<第2樹脂層>
形成しなかった。
【0049】
[比較例2]
<第1樹脂層>
トルエンの量を36.6gに変更した以外は実施例1と同様にして、第1樹脂層を形成した。得られた塗膜の厚さは1.1μmであった。
<第2樹脂層>
酢酸エチルの量を100gに変更した以外は実施例1と同様にして、第2樹脂層を形成した。得られた塗膜の厚さは1.3μmであった。
【0050】
[比較例3]
<第1樹脂層>
実施例1と同様にして、第1樹脂層を形成した。得られた塗膜の厚さは5.4μmであった。
<第2樹脂層>
形成しなかった。
【0051】
以上のようにして作製された実施例及び比較例の各防眩ハードコートフィルムを次の項目について評価し、その結果を纏めて後記表1に示した。
(1)全光線透過率(表1中で「T.t.」と表記)
村上色彩技術研究所製ヘイズメーター「HM150」を用いて測定した。
(2)ヘイズ値
村上色彩技術研究所製ヘイズメーター「HM150」を用いて測定した。
(3)防眩性
防眩ハードコートフィルムの防眩層において蛍光灯からの反射光を目視で評価した。反射光が眩しくないものを「○」、少し眩しいものを「△」、眩しいものを「×」とした。
(4)白っぽさ
透過光による塗膜の白っぽさは、塗工面を観測者側にして防眩ハードコートフィルムを介して、白色蛍光灯を見たときの、内部ヘイズによりフィルム中で光が拡散し塗膜が白っぽくなる状態を目視で評価した。塗工膜が白っぽくないものを「○」、白っぽいものを「△」、著しく白いものを「×」とした。
(5)十点平均粗さ、中心線平均粗さ
小坂研究所社製接触式表面粗さ計(SE−30K)を使用し、十点平均粗さ(Rz)、中心線平均粗さ(Ra)を測定した。
(6)突出する微粒子の数
電子顕微鏡(SEM、倍率:2000倍)による防眩ハードコートフィルムの表面写真(画像)から、防眩ハードコートフィルム1mm×1mmの範囲で樹脂層から突出した微粒子の面積が0.75μm2以上である個数を算出した。なお、電子顕微鏡(SEM、倍率:2000倍)では0.03μm2程度以上であれば画像から突出した微粒子を認識することができる。
(7)平均傾斜角
光干渉顕微鏡(菱化システム社製非接触表面形状計測器VertScan)を使用し、フィルム表面の凹凸部の平均傾斜角(θa)を測定した。
【0052】
【表1】

【0053】
上記表1に示したように、防眩ハードコ−トフィルムの表面(上記実施例では防眩ハードコート層の表面)の平均傾斜角(θa)が0.5〜1.0度の範囲である本発明の実施例においては、ヘイズ値が低く透明性に優れ、画像のギラツキを抑制でき、かつ、塗膜の白っぽさを低減することができ、視認性、画像品位を著しく向上できることが分かる。つまり、本発明によれば、フィルム表面の平均傾斜角(θa)を0.5〜1.0度の範囲に調整することで、フィルム表面になだらかな凹凸が形成され、「透明性」、「画像のギラツキ」、「塗膜の白っぽさ」のバランスが良好となり、視認性や画像品位が著しく向上する。
【0054】
これに対し、フィルム表面の平均傾斜角(θa)が1.0度よりも大きい比較例においては、フィルム表面になだらかな凹凸が形成され難いので、「透明性」、「画像のギラツキ」、「塗膜の白っぽさ」のバランスが良好に調整されず、その結果、視認性や画像品位が低下してしまう。比較例1及び比較例3はいずれも防眩ハードコート層が単一層で形成されているが、樹脂層に含有される微粒子の平均粒径(a)が樹脂層の厚さ(b)よりも小さいため、フィルム表面に突出する微粒子数は少ないものの、内部ヘイズにより塗膜が白っぽくなり、また良好な防眩性が得られない。また、比較例2は防眩ハードコート層が第1樹脂層と第2樹脂層の2層で形成されているが、第1樹脂層に含有される微粒子の平均粒径(a)、第1樹脂層の厚さ(b)および第2樹脂層の厚さ(c)との関係が、a>b+cとなっており、フィルム表面に突出する微粒子数が増加し、しかもなだらかな凹凸表面が形成されていないため、防眩性は良いものの、ヘイズ値が大きく、透明性が劣化し、塗膜が著しく白っぽくなってしまう。
【符号の説明】
【0055】
1 透明支持体
2 第1樹脂層
3 微粒子
4 第2樹脂層
5 防眩ハードコート層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明支持体上に、微粒子および樹脂を含有する第1樹脂層及び該第1樹脂層上に形成された樹脂を含有する第2樹脂層からなる防眩ハードコート層を設けてなり、該防眩ハードコート層の表面の平均傾斜角が0.5〜1.0度の範囲であることを特徴とする防眩ハードコートフィルム。
【請求項2】
前記防眩ハードコート層の表面に突出する微粒子数が100個/mm2以下であることを特徴とする請求項1に記載の防眩ハードコートフィルム。
【請求項3】
前記第1樹脂層に含有される微粒子の平均粒径(a)、前記第1樹脂層の厚さ(b)および前記第2樹脂層の厚さ(c)との関係が、a≧bかつa≦b+cであることを特徴とする請求項1又は2に記載の防眩ハードコートフィルム。
【請求項4】
前記防眩ハードコート層表面の十点平均粗さが0.3μm以上0.8μm以下、且つ中心線平均粗さが0.1μm未満であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の防眩ハードコートフィルム。
【請求項5】
前記第1樹脂層に含まれる微粒子と樹脂との屈折率差が0.005〜0.010の範囲であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の防眩ハードコートフィルム。
【請求項6】
前記第1樹脂層に含まれる微粒子の含有量が該第1樹脂層に含まれる樹脂100重量部に対して5〜35重量部であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の防眩ハードコートフィルム。
【請求項7】
前記第1樹脂層及び前記第2樹脂層に含まれる樹脂が電離放射線硬化型樹脂であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の防眩ハードコートフィルム。
【請求項8】
前記透明支持体が、トリアセチルセルロースフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、又はノルボルネンフィルムであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の防眩ハードコートフィルム。
【請求項9】
ヘイズ値が3.0%以下で、内部ヘイズが1.0%以下であり、かつ全光線透過率が80%以上であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の防眩ハードコートフィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−209717(P2011−209717A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51070(P2011−51070)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(502368059)日本製紙ケミカル株式会社 (86)
【Fターム(参考)】