説明

防眩フィルム

【課題】防眩性に優れ、コントラストが高いという表示特性を有し、かつ、擦傷などの衝撃を受けた際にも外観変化のない、耐擦傷性に優れた防眩フィルムを提供する。
【解決手段】 透明基板上に、表面に凹凸を有する防眩層を形成してなる防眩フィルムであって、防眩層は、表面弾性率が2.0GPa以下である有機微粒子、およびエチレン性不飽和二重結合を有する化合物を含む電離放射線硬化型組成物を硬化させたものである防眩フィルム。
透明基板上に、表面に凹凸を有する防眩層を形成してなる防眩フィルムであって、防眩層は、ナイロン、ポリウレタン、ポリシロキサンのうちの少なくとも1種類のポリマーからなる有機微粒子、およびエチレン性不飽和二重結合を有する化合物を含む電離放射線硬化型組成物を硬化させたものである防眩フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テレビ、コンピューター、カーナビゲーションシステム、車載用計器盤、携帯電話等の画像表示装置として用いられる、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、ELディスプレイ、リアプロジェクションディスプレイ、CRTディスプレイ等各種ディスプレイにおいて、ディスプレイ最表面に、画像の映り込みや、光の反射を防止するために設ける防眩フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、CRT、PDP、LCD、ELD等の画像表示装置、特にPDP、LCD、ELDなどの表面がフラットな画像表示装置には、室内照明や、太陽光の入射等による、表示画面への操作者等の影の映り込みが、画像の視認性を著しく妨げるという問題があった。
この映り込みを抑えるために、シリカ等のフィラーを含む樹脂をディスプレイの最表面に塗工し、表面に凸凹を形成することにより、表面に防眩効果を付与するという手法が特許文献1に記載されている(特許文献1:特開平7−294740号公報参照)。
しかし、シリカ粒子を利用して防眩効果を得るためには、多量のシリカを混入しなければならず、そうすると表面が白っぽく見えコントラストが低い、透明性の落ちた画面(以下白ぼけという)となってしまう。更には、透明基材にトリアセチルセルロースフィルムを使用した場合では、シリカを含む塗膜に接着性改善の目的でアルカリ浸漬による鹸化処理を行うと、得られたトリアセチルセルロースフィルムのヘイズ値が大きくなり、コントラスト、透明性の落ちたフィルムとなる。この原因としては、樹脂組成物と無機フィラーの接着性が低く、界面がアルカリに侵されることが考えられる。
【0003】
また、表面に有機ポリマー微粒子を混入したハードコート層を形成するという方法で、表面に防眩効果を付与するという手法が特許文献2に記載されており(特許文献2:特開平6−18706号公報参照)、シリカ粒子を使用した場合と比較して比較的少ない使用量にて防眩性が発現されるため、白ぼけが少ないという利点がある。更には、有機ポリマー微粒子はシリカ微粒子等の無機フィラーと比較し、樹脂組成物と有機ポリマー微粒子の接着性が良く、鹸化処理においても界面がアルカリに侵されにくい。
しかしながら、一般に、有機ポリマー微粒子を用いた場合、特に、ハードコート性を重視した硬い有機微粒子を使用した場合、擦傷などの衝撃を受けた際に、防眩性を発現させるために形成される表面の突出部が削り取られ、外観が著しく変化し、また防眩性の一つの指標となるヘイズ値が減少してしまうという問題があった。
【0004】
【特許文献1】特開平7−294740号広報
【特許文献2】特開平6−18706号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、防眩性に優れ、コントラストが高いという表示特性を有し、かつ、擦傷などの衝撃を受けた際にも外観変化のない、耐擦傷性に優れた防眩フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、透明基板上に、擦傷などの衝撃を受けた際に、突出部が削り取られ欠損することを防ぐために、柔軟で強靱な有機微粒子、およびエチレン性不飽和二重結合を有する化合物を含む電離放射線硬化型組成物を硬化させてなる表面が微細な凹凸を有する防眩層を有する防眩フィルムが、これらの欠点を解消し得ることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は、透明基板上に、表面に凹凸を有する防眩層を形成してなる防眩フィルムであって、
防眩層は、表面弾性率が2.0GPa以下である有機微粒子、およびエチレン性不飽和二重結合を有する化合物を含む電離放射線硬化型組成物を硬化させたものであることを特徴とする防眩フィルムに関する。
【0007】
また、本発明は、透明基板上に、表面に凹凸を有する防眩層を形成してなる防眩フィルムであって、
防眩層は、ナイロン、ポリウレタン、ポリシロキサンのうちの少なくとも1種類のポリマーからなる有機微粒子、およびエチレン性不飽和二重結合を有する化合物を含む電離放射線硬化型組成物を硬化させたものであることを特徴とする防眩フィルムに関する。
【0008】
また、本発明は、透明基板上に、表面に凹凸を有する防眩層を形成してなる防眩フィルムであって、
防眩層は、ナイロン、ポリウレタン、ポリシロキサンのうちの少なくとも1種類のポリマーからなり、かつ、
表面弾性率が2.0GPa以下である有機微粒子、およびエチレン性不飽和二重結合を有する化合物を含む電離放射線硬化型組成物を硬化させたものであることを特徴とする防眩フィルムに関する。
【0009】
また、本発明は、全光線透過率85%以上、ヘイズ値3.0〜35.0%の光学特性を有することを特徴とする上記防眩フィルムに関する。
【0010】
また、本発明は、防眩層表面の耐スチールウール試験(#0000のスチールウールに250gf/cm2の荷重をかけて、ストローク25mm、速度30mm/secで10往復摩擦する)前後のヘイズ値の変化率が、0.8≦(試験後のヘイズ値/試験前のヘイズ値)≦1.2であることを特徴とする上記防眩フィルムに関する。
【0011】
また、本発明は、防眩層の表面の凹凸の中心線平均粗さが、0.3μm以上であることを特徴とする上記防眩フィルムに関する。
【0012】
また、本発明は、有機微粒子とエチレン性不飽和二重結合を有する化合物との屈折率差が、0.02以下であり、且つ、防眩層の内部拡散による内部ヘイズ値が1未満である上記防眩フィルムに関する。
【0013】
また、本発明は、有機微粒子の粒径が、3〜10μmであることを特徴とする上記防眩フィルムに関する。
【0014】
また、本発明は、電離放射線硬化型樹脂組成物中の有機微粒子の含有率が、組成物中の不揮発分全体に対して3〜30重量%であることを特徴とする上記防眩フィルムに関する。
【0015】
また、本発明は、さらに、防眩層上に、反射防止層が形成されていることを特徴とする上記防眩フィルムに関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の防眩フィルムは、防眩性に優れ、コントラストが高いという表示特性を有し、かつ、耐擦傷性に優れている。このような特性に優れた防眩性フィルムを用いた画像表示装置は、従来両立し難かった防眩性、高コントラスト性及び画像鮮明性に優れ、且つ、擦傷の衝撃による外観変化が少なく、耐久性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に本発明の好ましい実施形態を説明する。
本発明中の透明基板としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー等の透明ポリマーからなるフィルムが挙げられる。また、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体等のスチレン系ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ないしノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体等のオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー等の透明ポリマーからなるフィルムも挙げられる。更にイミド系ポリマー、サルホン系ポリマー、ポリエーテルサルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニルスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマーや前記ポリマーのブレンド物等の透明ポリマーからなるフィルム等も挙げられる。特に複屈折率の少ないものが好適に用いられる。また、これらフィルムに更にアクリル系樹脂、共重合ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、スチレン−マレイン酸グラフトポリエステル樹脂、アクリルグラフトポリエステル樹脂等の樹脂層を設けたいわゆる易接着タイプのフィルムも用いることができる。
【0018】
透明基板の厚さは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取り扱い等の作業性、薄層性等の点より10〜500μm程度である。特に20〜300μmが好ましく、30〜200μmがより好ましい。
【0019】
表面に凸凹を有する防眩層は、表面弾性率が2.0GPa以下である有機微粒子、およびエチレン性不飽和二重結合を有する化合物を含む電離放射線硬化型組成物、あるいは、ナイロン、ポリウレタン、ポリシロキサンのうちの少なくとも1種類のポリマーからなる有機微粒子、およびエチレン性不飽和二重結合を有する化合物を含む電離放射線硬化型組成物を硬化させて形成される。
【0020】
本発明における有機微粒子は、防眩層の表面に微細な凹凸を形成し、防眩性を発現させるために用いられる。有機微粒子は、表面に突出するため、突出部としての耐擦傷性が必要となる。ただし、表面の凹凸の中心線平均粗さが0.3μm以上であることが好ましい。0.3μmに満たない場合、高いコントラストを維持し、かつ充分な防眩性を得ることが出来ないおそれがある。なお、表面の凹凸の中心線平均粗さは、JIS B 0601により規定された方法で求めることができる。
突出部は、擦傷などで衝撃を受けた際に、削りとれてしまうことにより外観が変化する。そのため、堅くて脆い突出部よりも、柔軟で強靱な突出物である方が、衝撃を吸収することが可能となり、擦傷による外観変化を防ぐことが出来る。
そこで、具体的には、表面弾性率が2.0GPa以下である柔軟で強靱な有機微粒子を用いることで、擦傷による外観変化を防ぐことが可能となる。
表面弾性率は、微小表面硬度計を用いて求めることができる。具体的には、例えば、微小表面硬度計((株)フィッシャー・インスツルメンツ社製:フィッシャースコープH100VP-HCU)を用い、微粒子表面にビッカース圧子を接触させた後、10秒間に加重を1mNにまで増加させ、この状態で5秒保持する。この時のビッカース圧子の侵入深さをDv0とする。この後、加重を0mNとした時にビッカース圧子を押し戻す力(Fv)と侵入深さ(Dv)を測定し、その傾きを表面弾性率とする。即ちDvを横軸にとり、縦軸にFvをとったとき、DvがDv0から0.9×Dv0の間の傾きの絶対値を表面弾性率とする。即ちDvを横軸にとり、縦軸にFvをとったとき、DvがDv0から0.9×Dv0の間の傾きの絶対値を表面弾性率とした。
【0021】
また、材質として、ナイロン、ポリウレタン、ポリシロキサンのような、素材として柔軟で強靱なポリマーからなる有機微粒子を用いることでも、擦傷による外観変化を防ぐことが可能となる。
その他、有機微粒子としては、表面弾性率が2.0GPa以下である微粒子であれば特に制限するものではないが、例えば、アクリルビーズ、スチレン−アクリルビーズ、ポリ塩化ビニルビーズ、メラミンビーズ、ベンゾグアナミンビーズ、ポリカーボネートビーズ、ポリエチレンビーズ、ポリプロピレンビーズ、ポリビニルアルコールビーズ、ポリテトラフルオロエチレンビーズ、フッ化ビニリデンビーズ、エポキシビーズ、フェノールビーズ等で、表面弾性率が2.0GPa以下である有機微粒子を用いることが出来る。この中で、好ましくは、ナイロン、ポリウレタン、ポリシロキサンが挙げられる。
これらの有機微粒子は、水及び有機溶剤に不溶のものが好ましく、粒子は架橋されていることが好ましい。形状は不定形でも球状でもよく、単独または2種類以上を混合して使用することができる。
【0022】
防眩層には、膜厚の2分の1よりも大きい粒径の粒子が、該粒子全体の30〜100%を占める有機微粒子を用いることが好ましく、そのため、これらの有機微粒子は、平均粒径が3〜10μmであることが好ましく、3〜6μmであることがより好ましい。平均粒径が3μm未満では光を散乱する効果が不足するため、得られる防眩性が不十分であり、10μmを超えると防眩層内部での光の散乱効果が減少するため、映像のギラツキを生じやすい。
なお、平均粒径は、例えば、電気抵抗法で測定できる。
【0023】
有機微粒子の添加量は、電離放射線硬化型組成物中の不揮発分全体に対して3〜30重量%が好ましく、5〜20重量%がさらに好ましい。3重量%未満では十分な防眩性が得られず、30重量%を超えると防眩性は良好だが白ぼけが出やすくなり好ましくはない。
【0024】
本発明におけるエチレン性不飽和二重結合を有する化合物は、電離放射線により重合硬化させることで防眩層を形成するバインダーとして働き、画像表示装置の表面に用いるため耐擦傷性、及び表面硬度が必要であり、該防眩層にハードコート性を付与するものが好ましい。
これらエチレン性不飽和二重結合を有する化合物としては、例えばヘキサンジオール(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ジシクロヘキサンジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラ(メタ)アクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート等の多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化合物;
ポリウレタンポリ(メタ)アクリレート、ポリエステルポリ(メタ)アクリレート、ポリエーテルポリ(メタ)アクリレート、ポリアクリルポリ(メタ)アクリレート、ポリアルキッドポリ(メタ)アクリレート、ポリエポキシポリ(メタ)アクリレート、ポリスピロアセタールポリ(メタ)アクリレート、ポリブタジエンポリ(メタ)アクリレート、ポリチオールポリエンポリ(メタ)アクリレート、ポリシリコンポリ(メタ)アクリレート等の多官能化合物の(メタ)アクリレート化合物;
1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサン等のビニルベンゼン及びその誘導体;
ジビニルスルホン等のビニルスルホン化合物;
メチルビスアクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド化合物;
ビス(4−メタクリロイルチオフェニル)スルフィド、ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート、ビニルナフタレン、ビニルフェニルスルフィド、4−メタクリオキシフェニル−4’−メトキシフェニルチオエーテル、テトラビロモビスフェノールAジエポキアクリレート等のいわゆる高屈折率モノマー等が挙げられる。
【0025】
これらエチレン性不飽和二重結合を有する化合物のうち、塗膜強度、耐擦傷性の観点より、少なくとも3つの官能基を有するポリウレタンポリ(メタ)アクリレート、ポリエポキシポリ(メタ)アクリレート等のポリ(メタ)アクリレート類、分子内に3個以上のアクリロイル基を有する多官能のアクリレート類を好適に使用することができる。
【0026】
ポリエポキシポリ(メタ)アクリレートは、エポキシ樹脂のエポキシ基を(メタ)アクリル酸でエステル化し官能基を(メタ)アクリロイル基としたものであり、ビスフェノールA型エポキシ樹脂への(メタ)アクリル酸付加物、ノボラック型エポキシ樹脂への(メタ)アクリル酸付加物等がある。
【0027】
ポリウレタンポリ(メタ)アクリレートは、例えば、ジイソシアネートと水酸基を有する(メタ)アクリレート類と反応させて得られるもの、ポリオールとポリイソシアネートとをイソシアネート基過剰の条件下に反応させてなるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを、水酸基を有する(メタ)アクリレート類と反応させて得られるものがある。あるいは、ポリオールとポリイソシアネートとを水酸基過剰の条件下に反応させてなる水酸基含有ウレタンプレポリマーを、イソシアネート基を有する(メタ)アクリレート類と反応させて得ることもできる。
ポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサントリオール、トリメリロールプロパン、ポリテトラメチレングリコール、アジピン酸とエチレングリコールとの縮重合物等が挙げられる。
ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
水酸基をもつ(メタ)アクリレート類としては、2−ヒドロキシエチルアクリレート,2−ヒドロキシプロピルアクリテート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート等が挙げられる。
イソシアネート基を有する(メタ)アクリレート類としては、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、メタクリロイルイソシアネート等が挙げられる。
【0028】
分子内に3個以上のアクリロイル基を有する多官能としては、具体的には前記した多価アルコールとアクリル酸のエステル化合物が挙げられ、単独または2種以上の混合物が好ましい。
これらエチレン性不飽和二重結合を有する化合物としては、特に、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、少なくとも5つの官能基を有するポリウレタンポリ(メタ)アクリレートが好ましい。
これらエチレン性不飽和二重結合を有する化合物の含有率は、電離放射線硬化型組成物中の不揮発分全体に対して10〜97重量%が好ましく、30〜90重量%がさらに好ましい。10重量%未満では耐擦傷性等の十分な塗膜強度が得られず、97重量%を超えと有機微粒子の含有率が少なくなり、十分な防眩性が得られない。
【0029】
また、防眩層の内部拡散を少なくするという為に、前記有機微粒子とエチレン性不飽和二重結合を有する化合物の屈折率の差は0.02以下であり、且つこれらを電離放射線にて硬化させてなる防眩層の内部ヘイズ値が1未満であることが好ましい。屈折率の差が0.02を超えて、また内部ヘイズ値が1以上であると、防眩層の白ぼけが出やすくなるため好ましくはない。
なお、内部ヘイズ値は、ヘイズ値のうち、表面凸凹の影響を除いたものであり、具体的には、表面の凹凸の無くなるように、有機微粒子を含有した溶液を塗布、紫外線硬化して得られた塗膜の上に、有機微粒子を含有しない溶液(樹脂は同じもの)を塗布、紫外線硬化して表面凸凹の無い塗膜を作成し、ヘイズを測定する方法で測定できる。
【0030】
本発明の電離放射線硬化型組成物には、有機微粒子、およびエチレン性不飽和二重結合を有する化合物の他に、更に、光重合開始剤、光増感剤、有機溶剤、レベリング剤、チキソトロピー剤等を含有する事ができる。
光重合開始剤としては、例えばアセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類等が挙げられる。具体的には、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、ゲンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾインジフェニルホスフィンオキシド、ミヒラーズケトン、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等が挙げられ、これらの光重合開始剤は2種以上を適宜併用することもできる。光増感剤としては、例えばn−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ポリ−n−ブリルホスフィン等が挙げられ、これらの光増感剤は2種以上を適宜併用することもできる。
【0031】
有機溶剤としては、例えばトルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、iso−ブチルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート等のエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキエタノール、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル等のグリコールエーテル類;2−メトキシエチルアセタート、2−エトキシエチルアセタート、2−ブトキシエチルアセタート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のグリコールエーテルエステル類;クロロホルム、ジクロロメタン、トリクロロメタン、塩化メチレン等の塩素系溶媒;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン等のエーテル系溶媒;N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド等の1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0032】
本発明の電離放射線硬化型組成物は、有機微粒子、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物、及び必要に応じて、光重合開始剤、光増感剤、有機溶剤、レベリング剤、チキソトロピー剤等を混合し、攪拌機、分散機などを用いて、充分に攪拌することにより作成することができる。
【0033】
本発明の防眩層は、上述の透明基板上に、上述の電離放射線硬化型組成物を、バーコーティング、ブレードコーティング、スピンコーティング、リバースコーティング、ダイティング、スプレーコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、マイクログラビアコーティング、リップコーティング、エアーナイフコーティング、ディッピング法等の塗工方法で透明基材に塗工した後、必要に応じ溶剤を乾燥させ、更に電離放射線を照射して、架橋硬化させることによって形成することができる。
前記電離放射線としては、キセノンランプ、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク灯、タングステンランプ等の光源から発せられる紫外線あるいは、通常20〜2000KeVのコックロフワルトン型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の電子線加速器から取り出される電子線、α線、β線、γ線等を用いることができる。
このようにして形成される防眩層の膜厚は特に限定されず、使用させる有機微粒子の粒径により適宜決定されるが、通常1〜10μm、好ましくは2〜5μmである。
【0034】
また、前記表面に微細な凹凸を有する防眩層の表面には、画面表示のコントラストや白ぼけを更に改善する方法として、前記防眩層の屈折率よりも低い屈折率の反射防止層を設けることもできる。これら反射防止層には例えばポリシロキサン構造を有するものが用いられ、好ましくはフッ素含有ポリシロキサン構造を有するものである。このような低屈折率層は、たとえばフッ素含有アルコキシシランにより形成することができる。低屈折率層の厚さは0.05〜0.15μmとするのが好ましい。低屈折率層は適宜な方法にて防眩層2表面に形成することができる。形成方法としては、防眩層の形成と同様の方法を使用できる。
【0035】
このようにして、透明基材上に表面に微細な凹凸を有する防眩層を形成することにより作成された本発明の防眩フィルムは、全光線透過率85%以上、かつ、ヘイズ値3.0〜35.0%の光学特性を有していることが好ましく、また、全光線透過率90%以上、ヘイズ値4.0〜20.0%の光学特性を有していることが更に好ましい。全光線透過率は85%を下回ると、コントラストの高い画像表示が出来なくなる。ヘイズ値は3.0%未満となると、充分な防眩性が得られず、また35.0%を超えると、白ぼけが出やすくなるため好ましくない。
【0036】
また、上述の防眩フィルムの防眩層表面の耐擦傷性を確認するために試験として、防眩層の表面を、#0000のスチールウールにて、250gf/cm2の荷重をかけて、ストローク25mm、速度30mm/secで10往復摩擦する、耐スチールウール試験という試験があり、この試験前後のヘイズ値の変化率で、耐擦傷性の強さを示すことができる。一般的な防眩フィルムの場合、防眩性を得るために表面に突起物を形成させるため、上記の擦傷試験後、その突起部が削りとれヘイズ値が減少する。
本発明の防眩フィルムは、上記のスチールウール試験前後のヘイズ値の変化率が、0.8≦(試験後のヘイズ値/試験前のヘイズ値)≦1.2、であることが好ましく、0.9≦(試験後のヘイズ値/試験前のヘイズ値)≦1.1、であることが更に好ましい。0.8に満たない場合、擦傷等の衝撃により突出部が削りとれ、外観が変化するおそれがある。また、1.2を超えた場合、擦傷などの衝撃により、突出部以外の部分が傷つき、外観が変化するおそれがある。
【0037】
また、前記防眩性フィルムの透明基材には、光学素子を接着することができる。光学素子としては、偏光板、位相差板、楕円偏光板、光学補償付き偏光板等が挙げられ、これらは積層体として用いることができる。光学素子の接着は、接着に応じてアクリル系、ゴム系、シリコーン系等の粘着剤やホットメルト系接着剤などの透明性や耐候性等に優れる適宜な接着層を用いることができる。
【0038】
偏光板としては、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムにヨウ素や染料等を吸着させて延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等の偏向フィルムが挙げられる。位相差板としては、前記透明基板で例示したポリマーフィルムの一軸または二軸延伸フィルムや液晶ポリマーフィルム等が挙げられる。位相差板は、2層以上の延伸フィルムから形成されていてもよい。楕円偏光板、光学補償付き偏光板は、偏光板と位相差板を積層することにより形成しうる。楕円偏光板、光学補償付き偏光板は、偏光板側の面に防眩層を形成している。
【実施例】
【0039】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら具体例のみに限定されるものではない。
(実施例1〜13、比較例1〜2)
表1に示す有機微粒子、及びエチレン性不飽和二重結合を有する化合物各重量部を、ジオキソラン/トルエン=50/50重量%の混合溶媒100重量部に溶解し、光重合開始剤(イルガキュア184,チバガイギー社製)を5重量部加え、電離放射線硬化型組成物を作成した。得られた組成部物を、厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム(富士写真フィルム社製)上に、バーコーターを用いて塗布し、100℃の電気オーブン中で1分間乾燥させた。その後、窒素パージによって0.3%以下酸素濃度雰囲気にて、高圧水銀ランプを用いて紫外線を照射量400mJ/cm2で照射して塗布層を硬化させ、防眩層を形成した。得られた防眩フィルムについて、膜厚を測定し、以下の各試験を行った。各評価結果を表2に示す。
【0040】
(1)全光線透過率:ヘイズメーター300A(東京電色社製)を用いて全光透
過率を測定した。
(2)ヘイズ:ヘイズメーター300A(東京電色社製)を用いてヘイズ値を測定した。
(3)内部ヘイズ:防眩層上に、有機微粒子を含有しない樹脂組成物溶液(防眩
層を作成する際に使用した樹脂組成物から有機微粒子を除いた溶液)を、バーコーター#10を用いて塗布し、100℃の電気オーブン中で1分間乾燥させた。その後、窒素パージによって0.3%以下酸素濃度雰囲気にて、高圧水銀ランプを用いて紫外線を照射量400mJ/cm2で照射して塗布層を硬化させ、表面凸凹の無い塗膜を作成し、その塗膜のヘイズを、(2)と同様の方法で測定した。
(4)耐擦傷性:防眩層の表面を、#0000のスチールウールを用い、250gf/cm2の荷重をかけて、ストローク25mm、速度30mm/secで10往復摩擦した後のヘイズ値を、(2)と同様の方法で測定。摩擦前後のヘイズ値の変化率(=試験後のヘイズ値/試験前のヘイズ値)を求めた。
(5)中心線平均粗さ:JIS B 0601に準拠した方法で測定した。
(6)防眩性:作成した防眩フィルムにルーバーなしのむき出しの蛍光灯を写し、その反射像のボケの程度を目視判定した。
◎:蛍光灯の輪郭が全くわからない
○:蛍光灯の輪郭がわずかにわかる
△:蛍光灯はぼやけているが輪郭は識別できる
×:蛍光灯が殆どぼやけない(防眩性無し)
(7)白ぼけ:防眩フィルムを、液晶ディスプレイの表面に、透明粘着剤を用いて貼り合わせ、黒表示にして黒さを目視判定した。
○:白ぼけが抑えられ、黒さがある
△:やや白ぼけがある
×:白ぼけがあり、画面が白化する
【0041】
(実施例14)
実施例1で作成した防眩フィルムの防眩層上に、固形分1%のフッ素含有メチルトリメトキシシランよりなる塗布液を、乾燥・硬化時に、0.1μmの厚みとなるよう塗布し、140℃電気オーブン中で10分間乾燥・硬化させ、反射防止層を形成した。得られた防眩フィルムについて、膜厚を測定し、実施例1と同様の各試験を行った。各評価結果を表2に示す。
【0042】
【表1】

【0043】
【表2】

【0044】
実施例と、比較例とを比較して明らかなように、耐擦傷性において、本願の防眩フィルムは、格段の効果を有する。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の防眩フィルムよりなる画像表示装置は、外光の写り込みが少なくかつコントラストが良好な、より鮮明で見やすい画像が得られ、更に、擦傷などの衝撃を受けた際にも外観の変化が少なく、耐久性の高い表示装置となる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板上に、表面に凹凸を有する防眩層を形成してなる防眩フィルムであって、
防眩層は、表面弾性率が2.0GPa以下である有機微粒子、およびエチレン性不飽和二重結合を有する化合物を含む電離放射線硬化型組成物を硬化させたものであることを特徴とする防眩フィルム。
【請求項2】
透明基板上に、表面に凹凸を有する防眩層を形成してなる防眩フィルムであって、
防眩層は、ナイロン、ポリウレタン、ポリシロキサンのうちの少なくとも1種類のポリマーからなる有機微粒子、およびエチレン性不飽和二重結合を有する化合物を含む電離放射線硬化型組成物を硬化させたものであることを特徴とする防眩フィルム。
【請求項3】
透明基板上に、表面に凹凸を有する防眩層を形成してなる防眩フィルムであって、
防眩層は、ナイロン、ポリウレタン、ポリシロキサンのうちの少なくとも1種類のポリマーからなり、かつ、
表面弾性率が2.0GPa以下である有機微粒子、およびエチレン性不飽和二重結合を有する化合物を含む電離放射線硬化型組成物を硬化させたものであることを特徴とする防眩フィルム。
【請求項4】
全光線透過率85%以上、ヘイズ値3.0〜35.0%の光学特性を有することを特徴とする請求項1ないし3いずれか記載の防眩フィルム。
【請求項5】
防眩層表面の耐スチールウール試験(#0000のスチールウールに250gf/cm2の荷重をかけて、ストローク25mm、速度30mm/secで10往復摩擦する)前後のヘイズ値の変化率が、0.8≦(試験後のヘイズ値/試験前のヘイズ値)≦1.2であることを特徴とする請求項1ないし4いずれか記載の防眩フィルム。
【請求項6】
防眩層の表面の凹凸の中心線平均粗さが、0.3μm以上であることを特徴とする請求項1ないし5いずれか記載の防眩フィルム。
【請求項7】
有機微粒子とエチレン性不飽和二重結合を有する化合物との屈折率差が、0.02以下であり、且つ、防眩層の内部拡散による内部ヘイズ値が1未満である請求項1ないし6いずれか記載の防眩フィルム。
【請求項8】
有機微粒子の粒径が、3〜10μmであることを特徴とする請求項1ないし7いずれか記載の防眩フィルム。
【請求項9】
電離放射線硬化型樹脂組成物中の有機微粒子の含有率が、組成物中の不揮発分全体に対して3〜30重量%であることを特徴とする請求項1ないし9いずれか記載の防眩フィルム。
【請求項10】
さらに、防眩層上に、反射防止層が形成されていることを特徴とする請求項1ないし10いずれか記載の防眩フィルム。



【公開番号】特開2007−8073(P2007−8073A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−193455(P2005−193455)
【出願日】平成17年7月1日(2005.7.1)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】