説明

防眩性フィルムおよびその製造方法

【課題】環状オレフィン系ポリマーフィルムに対する密着性が高く、ハードコート層として機能する防眩層性を備えた防眩性フィルム防眩性フィルム及びその製造方法を提供する。
【解決手段】環状オレフィン系ポリマーで構成された基材フィルム上に、橋架環式炭化水素環を有する(メタ)アクリレートを硬化性成分として含む硬化性組成物を塗布し、相分離可能な複数の成分を含み、かつ少なくとも1つの成分が硬化性成分である硬化性組成物(例えば、多官能性(メタ)アクリレートと、セルロース誘導体と、(メタ)アクリロイル基を有するポリマー成分とを含む組成物)を均一に溶解した溶液を塗布する。この塗布層から溶媒を蒸発させて相分離構造を形成させ、前記硬化性成分を硬化することにより、密着層を介して基材フィルムに表面に凹凸構造を有する防眩層が形成された防眩性フィルムを得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータ、ワードプロセッサ、テレビ、携帯電話、モバイル電子機器などの各種ディスプレイ(液晶ディスプレイなど)に好適に使用できる防眩性フィルムおよびその製造方法、ならびに前記防眩性フィルムを備えた表示装置に関する。より詳細には環状オレフィン系ポリマーで構成された透明な基材フィルムに防眩層が形成されたフィルムおよびその製造方法、ならびに前記防眩性フィルムを備えた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、無機ELディスプレイ、FED(フィールドエミッションディスプレイ)などの各種ディスプレイの開発が進んでいる。特に、液晶ディスプレイは、薄型化が進み、据え置き型テレビ(TV)用途やモバイル用途の表示装置としてめざましい進歩を遂げ、急速に普及が進んでいる。例えば、動画表示性能としては、高速応答性を有する液晶材料の開発や、オーバードライブなどの駆動方式の改良により、従来、液晶が苦手としていた動画表示を克服するとともに、表示の大型化、薄型化に対応した技術革新も進んでいる。
【0003】
これらのディスプレイにおいて、画質を重視するテレビやモニタなどの用途、外光の強い屋外で使用される携帯電話、デジタルカメラ、ビデオカメラ、カーナビゲーションシステムなどのモバイル用途では、外光の映り込みを防止する処理が表面に施されるのが通例である。その手法の一つに防眩処理(アンチグレア処理)があり、例えば、液晶ディスプレイの表面には防眩処理がなされている場合が多く見られる。防眩処理は、表面に微細な凹凸構造を形成することにより、表面反射光を散乱し、映り込み像をぼかす効果を有する。従って、防眩層では、クリアな反射防止膜とは異なり、鑑賞者、背景の形が映り込むといったことがないため、反射光が映像の邪魔をしにくい。 例えば、特開平11−337734号公報(特許文献1)には、偏光膜表面に直接または少なくとも一つの表面処理層を介して透明導電層が設けられ、該透明導電層の表面抵抗値が、10Ω/□〜10Ω/□である導電性偏光板が開示され、前記表面処理層が、表面保護層及び/又は防眩処理層であることも記載されている。さらに、樹脂液中に屈折率の高い微粒子を分散させた分散体をスピンコートで塗布して形成するか、あるいはアクリル樹脂だけをスピンコートで塗布した後に直接表面に機械的又は化学的に凹凸を付けて前記防眩処理層を形成することも記載されている。特開2001−215307号公報(特許文献2)には、平均粒径15μm以下の透明微粒子が、前記平均粒径の2倍以上の厚さの被膜中で空気と接触する片側に偏在して表面に微細な凹凸構造を形成したアンチグレア層が開示されている。
【0004】
特開2007−206499号公報(特許文献3)には、環状オレフィン系樹脂の透明フィルム表面に、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物および50〜600nmの平均粒径を有する凝集粒子を含む保護層形成用組成物を光硬化させた粒子含有保護層が積層された防眩フィルムであって、その表面において1.0〜3.2μmの最大高さ粗さRyを有し、かつ18%以上の写像性を有し、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が、(A)表面張力が37mN/m以下であってアクリロイル基を3以上有する多官能モノマー40〜60重量%と、(B)グリシジル(メタ)アクリレート系重合物にアクリル酸を付加反応させてなるポリマー10〜60重量%と、(C)任意にその他のアクリルオリゴマー0〜50重量%とを含有することが開示され、(A)成分の多官能モノマーが、トリメチロールプロパントリアクリレート及び/又はジトリメチロールプロパンテトラアクリレートであることも記載され、実施例1では(A)〜(C)成分全体に対してトリメチロールプロパントリアクリレートを50重量%の割合で含む硬化性樹脂組成物が記載されている。また、保護層は、1300nm以上の粒径を有する粒子を全粒子中の1.5〜7%含有して形成されていることも記載されている。
【0005】
しかし、これらの防眩層は、防眩性付与のためのフィルム表面の凹凸によって表面での光の散乱が大きくなり、本来黒色に見える部分に散乱光が混入して白っぽくなる。また、アンチグレア層内に存在する屈折率の異なる微粒子による散乱に起因してヘーズ(内部ヘーズ)が発生し、フィルムとしての全体ヘーズが上がり、表示が全体的に白味を帯び、コントラストの低下を招く。さらに、微粒子が凝集し易いため、表面の凹凸構造を制御することが困難であるとともに、表面の凹凸構造の設計の自由度が制約される。また、微粒子の凝集によりムラなどが生じ、外観不良となりやすい。
【0006】
一方、光学用透明フィルムとして、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムや特に液晶用偏光板保護フィルムとして酢酸セルロースフィルム(TACフィルム)が多く用いられているが、近年、透明性、耐熱性、耐湿性、複屈折性に優れた材料として環状オレフィン系ポリマーを用いた光学用透明フィルムの用途が広がっている。しかし、環状オレフィン系ポリマーの成形品は、一般的に表面の濡れ性が悪く、他の部材との接着性や表面に別の機能を与えるためのコート剤との密着性が劣るという課題がある。
【0007】
環状オレフィン系ポリマーフィルムに対する密着性の改良について、例えば、特開平5−306378号公報(特許文献4)には、熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂で形成された成形品の表面に、単官能アクリレートモノマー、2または3官能アクリレートモノマー、4官能以上のアクリレートモノマー、及び光重合開始剤から成る紫外線硬化性組成物を塗布し、紫外線照射し、コート層(ハードコート層)を形成することが記載され、長鎖脂肪族単官能アクリレートモノマー、脂環式単官能アクリレートモノマー及び脂環式2官能アクリレートモノマーから選択されたモノマーを40重量%以上含有する紫外線硬化性組成物も記載されている。この文献の実施例1には、トリメチロールプロパントリアクリレートを約30重量%の割合で含む紫外線硬化性組成物を用い、鉛筆硬度3H、碁盤目剥離96%のコート層を形成したことが記載されている。特開平8−12787号公報(特許文献5)には、(A)1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能性単量体(a−1)20〜100重量%と、1分子中に1〜2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する1〜2官能性単量体(a−2)80〜0重量%とからなる単量体混合物10〜90重量部、(B)(メタ)アクリル酸エステル類より選ばれた少なくとも1種の単量体を10重量%以上含有するビニル系単量体の単独重合体または共重合体からなる塗料用樹脂5〜80重量部、及び(C)光重合開始剤0.1〜15重量部からなる紫外線硬化性組成物を硬化させたハードコート層を有する熱可塑性ノルボルネン系樹脂成形品が開示されている。この文献には、多官能性単量体(a−1)の例として、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートが例示され、実施例では単量体混合物(A)中、トリメチロールプロパントリアクリレートを約30重量%の割合で含む紫外線硬化性組成物が記載されている。特開平3−223341号公報(特許文献6)には、熱可塑性飽和ノルボルネン系ポリマー成形品の表面に、芳香族炭化水素系溶剤および/または脂環族炭化水素系溶剤を含む紫外線硬化型ハードコート剤を塗布し、乾燥後、紫外線照射し、碁盤目テストによる接着強度が90%以上であって、かつ、表面硬度(鉛筆硬度)が3H以上のハードコート層(シリコーン系ハードコート層を除く)を形成することが開示されている。しかし、これらのハードコート剤では防眩性を付与できない。
【0008】
内部ヘーズが少ない防眩性フィルムとして、特開2006−106290号公報(特許文献7)には、防眩層と、この防眩層の少なくとも一方の面に形成された低屈折率の樹脂層とで構成された防眩性フィルムであって、前記防眩層が、表面に凹凸構造を有しており、全ヘーズが1〜30%、内部ヘーズが0〜1%である防眩性フィルム、および透明支持体上に、防眩層及び低屈折率の樹脂層が順次形成された防眩性フィルムが開示されている。この文献には、少なくとも1つのポリマーと少なくとも一つの硬化性樹脂前駆体とを含む塗布液を塗布し、塗膜から溶媒が蒸発する過程で、スピノーダル分解により相分離させ、樹脂前駆体を硬化させることにより、規則性を有する相分離構造及びその相分離構造に対応した表面凹凸構造を有する防眩層を形成できること、このような防眩性フィルムを表示装置に装着すると、文字ボケが生じないクリアな画質が得られると同時に、白っぽさや白浮き(白滲み)のない良好な防眩効果が得られることが記載されている。特許文献7には、透明支持体の樹脂として、環状ポリオレフィン系樹脂が例示されている。実施例では、側鎖に重合性不飽和基を有するアクリル樹脂と、セルロースアセテートプロピオネートと、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)又は芳香族ウレタンアクリレート(EB220)と、光開始剤とを溶媒に溶解し、得られた塗布液を用いて防眩層を形成したことも記載されている。しかし、環状オレフィン系ポリマーの透明フィルムに対する防眩層の密着性については記載がない。
【0009】
【特許文献1】特開平11−337734号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2001−215307号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開2007−206499号公報(特許請求の範囲、実施例1)
【特許文献4】特開平5−306378号公報(特許請求の範囲、実施例1)
【特許文献5】特開平8−12787号公報(特許請求の範囲、段落[0018]、実施例)
【特許文献6】特開平3−223341号公報(特許請求の範囲)
【特許文献7】特開2006−106290号公報(特許請求の範囲、段落[0018][0087]、[発明の効果]、実施例)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の目的は、環状オレフィン系ポリマーフィルムに対する密着性の高い防眩層を備えた防眩性フィルム、およびその製造方法、並びに前記防眩性フィルムを備えた表示装置を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、環状オレフィン系ポリマーの特色である高い透明性を維持しつつ、基材フィルムに対して高い密着性を有するとともにハードコート層として機能する防眩層が形成された防眩性フィルム、およびその製造方法、並びに前記防眩性フィルムを備えた表示装置を提供することにある。
【0012】
本発明のさらに他の目的は、外光の映り込みやぎらつきが抑制された黒味のある鮮明な画像を表示できる防眩性フィルム、およびその製造方法、並びに前記防眩性フィルムを備えた表示装置を提供することにある。
【0013】
本発明の別の目的は、微粒子による表面凹凸形状を利用しなくても、表面に微細で規則的な凹凸構造を形成でき、防眩性に優れた防眩性フィルム及びその製造方法、並びに前記防眩性フィルムを備えた表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、環状オレフィン系ポリマーで構成された基材フィルム上に、脂環式炭化水素環又は橋架環式炭化水素環を有する(メタ)アクリレートを硬化性成分として含む硬化性組成物を塗布し、相分離可能な複数の成分を含み、かつ少なくとも1つの成分が硬化性成分である硬化性組成物(例えば、少なくとも1つのポリマー成分と少なくとも1つの硬化性樹脂前駆体とを含む組成物)を均一に溶解した溶液を塗布し、この塗布層から溶媒を蒸発させて相分離させ、その後前記硬化性成分を硬化すると、基材フィルムに規則性を有する相分離構造及びその相構造に対応した表面凹凸構造を有する防眩層を高い密着力で形成できることを見いだし、本発明を完成した。
【0015】
すなわち、本発明の防眩性フィルムは、環状オレフィン系ポリマーで構成された基材フィルムと、密着層を介して、この基材フィルムに形成された防眩層とを有する防眩性フィルムであって、前記密着層が、脂環式炭化水素環を有するモノ又はジ(メタ)アクリレート及び橋架環式炭化水素環を有するモノ又はジ(メタ)アクリレートから選択された少なくとも一種の硬化性成分を含む硬化性組成物の硬化層で形成され、前記防眩層が、相分離可能な複数の成分を含み、かつ少なくとも1つの成分が硬化性成分である硬化性樹脂組成物の硬化層で形成され、かつ相分離構造を有するとともに、表面に凹凸構造を有する。
【0016】
密着層を形成する硬化性組成物は、前記硬化性成分として橋架環式炭化水素環を有するジ(メタ)アクリレート(トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートなど)を含んでいてもよい。上記硬化性成分(例えば、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート)の割合は、密着層を形成する硬化性組成物の硬化性成分(光重合性基を有する活性エネルギー線硬化性樹脂前駆体など)全体に対して30重量%以上の割合であってもよい。さらに、密着層を形成する硬化性組成物は、さらにセルロース誘導体を含んでいてもよい。例えば、密着層は、脂環式炭化水素環又は橋架環式炭化水素環を有する(メタ)アクリレート(トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートなど)と、セルロースエステル類とで形成されていてもよい。
【0017】
防眩層は、硬化性成分としての複数の光重合性基を有する活性エネルギー線硬化性樹脂前駆体と、少なくとも1つのポリマー成分とで構成してもよく、前記硬化性樹脂前駆体及びポリマー成分のうち少なくとも2つの成分が液相からの相分離による相分離構造を有しているとともに、前記硬化性樹脂前駆体が硬化していてもよい。硬化性樹脂前駆体は、複数の(メタ)アクリロイル基を有する多官能性(メタ)アクリレートを含み、ポリマー成分が、セルロース誘導体と、(メタ)アクリロイル基を有するポリマー成分とを含んでいてもよい。また、ポリマー成分は、複数のポリマー(例えば、セルロース誘導体と、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂など)で構成でき、通常、セルロース誘導体と、(メタ)アクリロイル基を有するポリマー成分とを含んでいてもよい。複数のポリマー成分のうち、少なくとも1つのポリマー成分は、硬化性樹脂前駆体の硬化反応に関与する官能基(例えば、(メタ)アクリロイル基などの重合性基)を有していてもよい。例えば、防眩層は、多官能性(メタ)アクリレートと、セルロースエステル類と、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有するポリマー成分とで形成されていてもよい。
【0018】
防眩性フィルムは、入射光を等方的に透過して散乱し、かつ散乱光強度の極大値を示す散乱角が0.1〜10°であり、全光線透過率が80〜100%であってもよい。また、防眩性フィルムは、全ヘーズが1〜25%、内部ヘーズが0〜1%、0.5mm幅の光学櫛を用いた写像性測定器で測定した透過像鮮明度が25〜75%であってもよい。このような防眩性フィルムにおいて、防眩層は高い硬度を有し、ハードコート性(又は耐擦傷性)を備えているとともに、高い密着力で基材フィルムに密着している。例えば、防眩層は、碁盤目剥離試験による碁盤目の残存率90%以上であってもよく、鉛筆硬度H以上であってもよい。なお、防眩層では、硬化性樹脂前駆体の硬化により、規則的又は周期的な相分離構造を固定化してもよい。また、前記防眩層は、例えば、活性エネルギー線(紫外線、電子線など)、熱などにより硬化していてもよい。
【0019】
本発明の防眩性フィルムは、環状オレフィン系ポリマーで構成された基材フィルム上に、脂環式炭化水素環を有するモノ又はジ(メタ)アクリレート及び橋架環式炭化水素環を有するモノ又はジ(メタ)アクリレートから選択された少なくとも一種の硬化性成分を含む硬化性組成物の第1の塗布液を塗布する工程と、相分離可能な複数の成分を含み、かつ少なくとも1つの成分が硬化性成分である硬化性樹脂組成物と溶媒とを含む第2の塗布液を塗布する工程と、前記溶媒の蒸発に伴う相分離により相分離構造を形成させる工程と、前記組成物中の硬化性成分を硬化させる工程とを経ることにより製造でき、前記硬化により相分離構造を有するとともに、表面に凹凸構造を有する防眩層を形成できる。なお、基材フィルムには、硬化した密着層を形成した後、相分離構造を有する防眩層を形成してもよく、第1の塗布液と第2の塗布液とを順次塗布し、第2の塗布液による相分離構造を形成した後、塗膜を硬化させて密着層及び防眩層を形成してもよい。
【0020】
前記製造方法において、橋架環式炭化水素環を有するジ(メタ)アクリレート(トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートなど)と、セルロース誘導体と、光重合開始剤と、これらの成分を可溶な溶媒とを含む第1の塗布液を塗布し、複数の(メタ)アクリロイル基を有する多官能性(メタ)アクリレートと、セルロース誘導体と、(メタ)アクリロイル基を有するポリマー成分と、光重合開始剤と、これらの成分を可溶な溶媒とを含む第2の塗布液を塗布し、相分離により相分離構造を形成し、光照射して密着層及び防眩層を形成してもよい。なお、必要であれば、基材フィルムをコロナ放電処理し、塗布液を塗布してもよいが、本発明では、基材フィルムを表面処理しなくても高い密着力で防眩層を形成できる。このため、基材フィルムを表面処理することなく第1の塗布液及び第2の塗布液を塗布し、硬化層(密着層及び防眩層)を形成することにより防眩性フィルムを製造できる。
【0021】
前記防眩性フィルムは単一のフィルムの形態で表示面への外光の映り込みを有効に防止できる。そのため、本発明は、前記防眩性フィルムを備えた表示装置、例えば、液晶表示装置、陰極管表示装置、プラズマディスプレイ、及びタッチパネル式入力装置から選択された表示装置なども包含する。
【0022】
なお、本明細書において、メタクリル酸系単量体及びアクリル酸系単量体を総称して「(メタ)アクリル酸」「(メタ)アクリレート」という場合がある。また、「硬化性成分」「硬化性樹脂前駆体」は単量体又はオリゴマーを意味し、分子量の大きな「ポリマー成分」と区別される。
【発明の効果】
【0023】
本発明では、所定の密着層を介して基材フィルムに防眩層を形成するため、環状オレフィン系ポリマーで構成された基材フィルムに対して密着性の高い防眩層を形成でき、防眩層の構成成分の選択の幅を拡げることができる。また、環状オレフィン系ポリマーの特色である高い透明性を維持しつつ、基材フィルムに対して高い密着性で防眩層を形成できる。しかも、硬化した防眩層が相分離構造と表面の凹凸構造とを有するため、ハードコート性、反射防止性および防眩性を単一の塗膜で両立できる。また、防眩性に優れているため、外光の映り込みやぎらつきを抑制でき、かつ外光下でも黒味のある鮮明な画像(明室コントラストの高い画像)を表示できる。さらに、微粒子による表面凹凸形状を利用しなくても、表面に微細で規則的な凹凸構造を形成でき、防眩性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
[防眩性フィルム]
防眩性フィルムは、環状オレフィン系ポリマーで構成された基材フィルムと、この基材フィルムの少なくとも一方の面に形成された密着層と、この密着層に形成された防眩層とで構成されている。前記密着層は脂環式炭化水素環又は橋架け環式炭化水素環を有する(メタ)アクリレートを含む硬化性組成物の硬化層で形成されており、上記防眩層は、硬度の高い相分離構造を有する被膜を形成するため、相分離可能な複数の成分を含む硬化性樹脂組成物で形成されている。さらに、防眩層の内部には相分離構造を有しており、防眩層の最表層には凹凸構造が形成されており、外部からの入射光を散乱反射させ外光の映り込みやぎらつきを防止する。
【0025】
[基材フィルム]
環状オレフィン系ポリマーは公知のポリマーであり、ノルボルネン系単量体の重合体、ノルボルネン系単量体と共重合性単量体(オレフィン系単量体など)との共重合体(COC)、ノルボルネン系単量体の重合体の水素添加物(COP)、これらの重合体の変性物などが例示できる。環状オレフィン系ポリマーは、透明性が高く複屈折も小さい。なお、密着性改良のために、ノルボルネン系単量体に官能基を導入する検討も多く行なわれているがコスト的に不利である。また、前記共重合体(COC)は一段反応で重合体が得られるため、重合及び水素添加反応の二段反応が必要な水素添加物(COP)と比較してコスト的に有利である。このような点から、塗布剤やコーティング方法などを改良し、比較的コストの安価な環状オレフィン系ポリマーの成形品(基材フィルム)に対する塗膜の密着性を改善することが望まれている。
【0026】
ノルボルネン系単量体としては、例えば、ノルボルネン、置換基を有するノルボルネン(2−ノルボルネン)、シクロペンタジエンの多量体、置換基を有するシクロペンタジエンの多量体などが例示できる。前記置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アシル基、シアノ基、アミド基、ハロゲン原子などが例示できる。
【0027】
このようなノルボルネン系単量体としては、例えば、2−ノルボルネン;5−メチル−2−ノルボルネン、5,5−ジメチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−ブチル−2−ノルボルネンなどのアルキル基を有するノルボルネン類;5−エチリデン−2−ノルボルネンなどのアルケニル基を有するノルボルネン類;5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネンなどのアルコキシカルボニル基を有するノルボルネン類;5−シアノ−2−ノルボルネンなどのシアノ基を有するノルボルネン類;5−フェニル−2−ノルボルネン、5−フェニル−5−メチル−2−ノルボルネンなどのアリール基を有するノルボルネン類;ジシクロペンタジエン;2,3−ジヒドロジシクロペンタジエン、メタノオクタヒドロフルオレン、ジメタノオクタヒドロナフタレン、ジメタノシクロペンタジエノナフタレン、メタノオクタヒドロシクロペンタジエノナフタレンなどの誘導体;6−エチル−オクタヒドロナフタレンなどの置換基を有する誘導体;シクロペンタジエンとテトラヒドロインデン等との付加物、シクロペンタジエンの3〜4量体などが例示できる。これらの単量体は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0028】
共重合性単量体としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどの鎖状C2−10オレフィン類;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテン、ジシクロペンタジエンなどの環状C4−12シクロオレフィン類;ビニルエステル系単量体(例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなど);ジエン系単量体(例えば、ブタジエン、イソプレンなど);(メタ)アクリル系単量体(例えば、(メタ)アクリル酸、又はこれらの誘導体((メタ)アクリル酸エステルなど)など)などが例示できる。これらの共重合性単量体は単独で又は二種以上組み合わせてもよい。好ましい共重合性単量体は、α−鎖状C2−8オレフィン類、特にエチレンなどのα−鎖状C2−4オレフィン類である。
【0029】
ノルボルネン系単量体と共重合性単量体との割合は、例えば、前者/後者(モル比)=100/0〜50/50、好ましくは100/0〜60/40、さらに好ましくは100/0〜70/30程度であってもよい。
【0030】
環状オレフィン系ポリマーは、商品名「TOPAS」(ポリプラスチックス(株)製)、商品名「ゼオネックス」(日本ゼオン(株)製)、商品名「ARTON」(JSR(株)製)、商品名「APEL」(三井石油化学工業(株)製)などから容易に入手できる。
【0031】
環状オレフィン系ポリマーの分子量は、数平均分子量0.5×10〜100×10程度の範囲から選択でき、例えば、1×10〜50×10、好ましくは2×10〜30×10程度であってもよい。環状オレフィン系ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、100〜230℃、好ましくは120〜200℃、さらに好ましくは130〜180℃程度であってもよい。
【0032】
環状オレフィン系ポリマーは、慣用の添加剤、例えば、可塑剤、着色剤、分散剤、離型剤、安定化剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤などの酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定化剤など)、帯電防止剤、難燃剤、アンチブロッキング剤、結晶核成長剤、充填剤(シリカやタルクなどの粒状充填剤や、ガラス繊維や炭素繊維などの繊維状充填剤など)などを含んでいてもよい。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。なお、高い透明性を維持するため、基材フィルムは、通常、透明性に悪影響を及ぼす添加剤、例えば、充填剤を含んでいない場合が多い。 環状オレフィン系ポリマーは、慣用の方法で成膜でき、例えば、溶液流延法、溶融押出法(例えば、Tダイ法、インフレーション法など)、カレンダー法、熱成形法(特に、熱プレス法)などの成膜法を利用して基材フィルムを製造してもよい。通常、溶融押出法を用いて製造される。
【0033】
基材フィルムは、1軸又は2軸延伸されていてもよいが、光学的に等方性であるのが好ましい。好ましい基材フィルムは、低複屈折率の支持シート又はフィルムである。基材フィルムの厚みは、例えば、5〜2000μm、好ましくは15〜1000μm、さらに好ましくは20〜500μm(例えば、50〜250μm)程度の範囲から選択できる。
【0034】
基材フィルムは、表面処理することなく、又は表面処理して表面ぬれ性を改善し、防眩層との密着性を向上させてもよい。表面処理としては、例えば、溶剤処理、電気的表面処理(コロナ放電処理、プラズマ処理、短波長紫外線照射処理、電子線照射処理など)が挙げられる。表面処理には、電気的表面処理、特にコロナ放電処理を利用する場合が多い。
【0035】
[密着層]
前記密着層を形成する硬化性組成物の硬化性成分は、熱硬化性成分であってもよく活性エネルギー線硬化性成分(光硬化性成分)であってもよい。好ましい硬化性成分は活性エネルギー線の照射により硬化する光硬化性成分である。前記密着層を形成する硬化性組成物の硬化性成分は、脂環式炭化水素環又は橋架環式炭化水素環を有する(メタ)アクリレート(以下、単に第1の硬化性成分という場合がある)を含んでいる。このような第1の硬化性成分としては、例えば、脂環式炭化水素環を有する(メタ)アクリレート[シクロアルキル(メタ)アクリレート(シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレートなどのC5−12シクロアルキル(メタ)アクリレートなど);橋架環式炭化水素環を有する(メタ)アクリレート(トリシクロ[5,2,1,02,6]デカニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレートなどの二乃至四環式C7−12シクロアルキル(メタ)アクリレートなど);脂環式炭化水素環を有するジ(メタ)アクリレート[シクロヘキシレンジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレートなど];橋架環式炭化水素環を有するジ(メタ)アクリレート[トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート(ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート)、アダマンタンジ(メタ)アクリレートなどの二乃至四環式C7−12シクロアルキレンジ(メタ)アクリレートなど]などが例示できる。これらの硬化性成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの硬化性成分を用いると、環状オレフィン系ポリマーで構成された基材フィルムに対する密着性を大きく向上できるとともに、透明性の高い密着層を形成できる。そのため、防眩層を形成する成分の選択に制限がなくなり、広範囲の防眩層の成分を使用できる。
【0036】
前記第1の硬化性成分のうち脂環式炭化水素環又は橋架環式炭化水素環を有するジ(メタ)アクリレート、特に橋架環式炭化水素環を有するジ(メタ)アクリレート(なかでもトリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート(ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート))が好ましい。
【0037】
硬化性組成物は、さらに第2の硬化性成分(熱硬化性成分又は光硬化性成分、特に光硬化性成分)を含んでいてもよい。このような硬化性成分としては、単官能性単量体[(メタ)アクリル酸エステルなどの(メタ)アクリル系単量体、例えば、アルキル(メタ)アクリレート(メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレートなどのC1−16アルキル(メタ)アクリレートなど)]、グリシジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;酢酸ビニルなどのビニルエステル、ビニルピロリドンなどのビニル系単量体など]、少なくとも2つの重合性不飽和結合を有する多官能性単量体[エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートなどのアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリオキシテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリ(2−ヒドロキシエトキシメチル)プロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの3〜6個程度の重合性不飽和結合を有する多官能性単量体]が例示できる。
【0038】
第2の硬化性成分は、オリゴマー又は樹脂であってもよく、このような硬化性成分としては、ビスフェノールA−アルキレンオキサイド付加体の(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート(ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、ノボラック型エポキシ(メタ)アクリレートなど)、ポリエステル(メタ)アクリレート(例えば、脂肪族ポリエステル型(メタ)アクリレート、芳香族ポリエステル型(メタ)アクリレートなど)、(ポリ)ウレタン(メタ)アクリレート(ポリエステル型ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル型ウレタン(メタ)アクリレートなど)、シリコーン(メタ)アクリレートなどが例示できる。
【0039】
好ましい硬化性成分は、短時間で硬化できる光硬化性成分、例えば、紫外線硬化性成分(モノマー、オリゴマーや低分子量であってもよい樹脂など)、EB硬化性成分である。さらに、耐擦傷性などの耐性を向上させるため、光硬化性化合物は、分子中に複数(好ましくは2〜10個、さらに好ましくは2〜6個程度)の重合性不飽和結合((メタ)アクリロイル基など)を有する単量体(多官能性(メタ)アクリレートなど)であるのが好ましい。なお、光硬化性化合物においてはアクリロイル基を有する化合物が好ましい。
【0040】
第1の硬化性成分の割合は、基材フィルム及び防眩層に対する密着性を損なわない限り特に制限されず、例えば、硬化性組成物の硬化性成分全体(第1及び第2の硬化性成分全体、又は光重合性基を有する活性エネルギー線硬化性樹脂前駆体の全体)に対して10重量%以上(例えば、20〜100重量%程度)の範囲から選択でき、通常、30重量%以上(例えば、40〜100重量%、好ましくは50〜100重量%、さらに好ましくは60〜100重量%)程度であってもよい。第1の硬化性成分と第2の硬化性成分との重量割合は、前者/後者=30/70〜100/0、好ましくは40/60〜90/10、さらに好ましくは50/50〜80/20程度であってもよい。第1の硬化性成分が2官能(メタ)アクリレートであり、第2の硬化性成分が3〜6官能(メタ)アクリレートである場合、第1の硬化性成分の割合が多い(例えば、50〜100重量%)と、密着性の向上及びカールの防止に有利であり、第1の硬化性成分の割合が少ない(例えば、30〜50重量%)と、硬度を高めるのに有利である。
【0041】
硬化性組成物は、硬化性成分の種類に応じて、硬化剤と組み合わせて用いてもよい。例えば、熱硬化性成分は、アミン類、多価カルボン酸類などの硬化剤と組み合わせて用いてもよく、光硬化性成分は光重合開始剤と組み合わせて用いてもよい。
【0042】
前記光重合開始剤としては、慣用の成分、例えば、アセトフェノン類(2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノンなど)又はプロピオフェノン類、ベンジル類、ベンゾイン類(ベンゾインアルキルエーテルなど)、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、アシルホスフィンオキシド類などが例示できる。光重合開始剤などの硬化剤の含有量は、硬化性成分100重量部に対して0.1〜20重量部、好ましくは0.5〜10重量部、さらに好ましくは1〜8重量部(特に1〜5重量部)程度であってもよい。
【0043】
さらに、硬化性組成物は硬化促進剤、架橋剤、熱重合禁止剤などを含んでいてもよい。例えば、光硬化性組成物は、光硬化促進剤、例えば、第三級アミン類(ジアルキルアミノ安息香酸エステルなど)、ホスフィン系光重合促進剤などと組み合わせてもよい。
【0044】
密着層を形成する硬化性組成物は、さらにセルロース誘導体(セルロースエステル類、セルロースカーバメート類、セルロースエーテル類など)を含んでいてもよい。セルロースエステル類としては、例えば、脂肪族アシルエステル(セルロースC1−6アルキルカルボニルエステル、例えば、セルロースジアセテート、セルローストリアセテートなどのセルロースアセテート;セルロースプロピオネート、セルロースブチレートなどのセルロースC2−6アルキル−カルボニルエステル;セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどのセルロースアセテートC2−6アルキル−カルボニルエステルなど)、芳香族アシルエステル(セルロースフタレート、セルロースベンゾエートなどのセルロースC7−12アリールカルボニルエステル;セルロースアセテートフタレートなどのセルロースアセテートC7−12アリールカルボニルエステル)、無機酸エステル類(例えば、リン酸セルロース、硫酸セルロースなど)が例示でき、酢酸・硝酸セルロースエステルなどの混合酸エステルであってもよい。セルロースエステル類は、アセチルアルキルセルロースなどのアルキルセルロースC1−6アルキルカルボニルエステルなどであってもよい。セルロース誘導体としては、セルロースカーバメート類(例えば、セルロースフェニルカーバメートなど)、セルロースエーテル類(例えば、シアノエチルセルロース;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのヒドロキシC2−4アルキルセルロース;メチルセルロース、エチルセルロースなどのC1−6アルキルセルロース;カルボキシメチルセルロース又はその塩、ベンジルセルロースなど)などが例示できる。これらのセルロース誘導体は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。なお、セルロース誘導体としては、有機溶媒(特に前記重合性成分を溶解可能な共通溶媒)に可溶なセルロース誘導体が使用される。セルロース誘導体(セルロースエステル類)は硬化性成分(第1の硬化性成分など)との相溶性が高いだけでなく、塗工性を向上でき、均一な塗膜を形成できる。
【0045】
好ましいセルロース誘導体は、セルロースエステル類、特にセルロースアセテートプロピオネートなどのセルロースC1−6アルキルカルボニルエステルである。
【0046】
セルロース誘導体の含有量は、密着層の機能を損なわず、しかも透明性が低下しない範囲、例えば、第1の硬化性成分及び第2の硬化性成分の総量100重量部に対して、0.1〜25重量部程度の範囲から選択でき、通常、0.5〜10重量部、好ましくは1〜7重量部、さらに好ましくは2〜5重量部程度であってもよい。
【0047】
密着層は、慣用の添加剤、例えば、可塑剤、着色剤、分散剤、離型剤、安定化剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定化剤など)、帯電防止剤、難燃剤、アンチブロッキング剤などを含んでいてもよい。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0048】
密着層の厚みは、例えば、0.1〜50μm程度の範囲から選択でき、通常、1〜35μm、好ましくは5〜30μm、さらに好ましくは10〜25μm程度であってもよい。なお、硬化性組成物の硬化層で形成された密着層は、厚みが大きくても、高い密着性及び透明性を有する。そのため、光学的特性を損なうことなく、防眩性に優れた防眩性フィルムを得ることができる。
【0049】
[防眩層]
本発明では、防眩層を相分離可能な複数の成分を含み、かつ少なくとも1つの成分が硬化性成分である硬化性樹脂組成物の硬化層で形成している。そのため、防眩層は高い耐擦傷性(ハードコート性)を示す。
【0050】
前記防眩層を形成する硬化性樹脂組成物は、相分離可能であり、かつ硬化可能な複数の成分を含み、かつ少なくとも1つの成分が硬化性成分であればよく、硬化性成分は熱硬化性であってもよく活性エネルギー線硬化性であってもよい。また、硬化性成分はモノマー、オリゴマーであってもよい。好ましい硬化性成分は、相分離構造を容易に固定できる活性エネルギー線硬化性成分である。さらに、好ましい硬化性成分は、少なくとも硬化性樹脂前駆体を含み、この前駆体は硬化又は架橋により樹脂(架橋樹脂などの硬質で強靱な樹脂など)を形成可能である。硬化性樹脂組成物は、通常、少なくとも1つの硬化性樹脂前駆体(複数の光重合性基を有する硬化性樹脂前駆体(特に、活性エネルギー線硬化性樹脂前駆体))と、少なくとも1つのポリマー成分(1又は複数のポリマー成分)とを含んでいる。また、少なくとも1つのポリマー成分は硬化性樹脂前駆体と反応可能な反応性基を主鎖又は側鎖に有していてもよい。
【0051】
(1)硬化性樹脂前駆体
硬化性成分としての硬化性樹脂前駆体は、熱や活性エネルギー線(紫外線や電子線など)などにより反応する官能基を有する化合物であり、熱や活性エネルギー線などにより硬化又は架橋して樹脂(特に硬化又は架橋樹脂)を形成する。
【0052】
前記樹脂前駆体としては、例えば、熱硬化性化合物又は樹脂[縮合性又は反応性官能基(エポキシ基又はグリシジル基、イソシアネート基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、酸無水物基、アミノ基又はイミノ基、アルコキシシリル基、シラノール基など)、重合性基(ビニル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、アリル基などのC2−6アルケニル基、エチニル、プロピニル、ブチニルなどのC2−6アルキニル基、ビニリデンなどのC2−6アルケニリデン基、(メタ)アクリロイル基など)などを有する低分子量化合物(又はプレポリマー、例えば、エポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂(末端イソシアネート基含有ポリウレタンオリゴマーなど)、シリコーン系樹脂などの低分子量樹脂など)]、活性光線(紫外線など)により硬化可能な光硬化性化合物(光硬化性モノマー、オリゴマー、プレポリマーなどの紫外線硬化性化合物など)などが例示でき、光硬化性化合物は、EB(電子線)硬化性化合物などであってもよい。なお、光硬化性化合物(光硬化性モノマー、オリゴマーや低分子量であってもよい光硬化性樹脂など)を、単に「光硬化性樹脂」という場合がある。硬化性樹脂前駆体は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0053】
前記光硬化性化合物は、通常、光硬化性基、例えば、重合性基(ビニル、プロペニル、イソプロペニル基などのC2−3アルケニル基、(メタ)アクリロイル基など)や感光性基(シンナモイル基など)を有しており、特に重合性基を有する光硬化性化合物(例えば、単量体、オリゴマー(又は低分子量樹脂))が好ましい。光硬化性化合物は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0054】
硬化性成分としては、前記密着層で記載の硬化性成分と同様の単量体、オリゴマー又は樹脂、例えば、単官能性単量体[C1−16アルキル(メタ)アクリレート、脂環式炭化水素環を有する(メタ)アクリレート、橋架環式炭化水素環を有する(メタ)アクリレート]、グリシジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;ビニル系単量体など]、少なくとも2つの重合性不飽和結合を有する多官能性単量体[アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;シ脂環式炭化水素環を有するジ(メタ)アクリレート;橋架環式炭化水素環を有するジ(メタ)アクリレート;3〜6個程度の重合性不飽和結合を有する多官能性単量体]、オリゴマー又は樹脂[エポキシ(メタ)アクリレート、(ポリ)ウレタン(メタ)アクリレートなど]などが例示できる。
【0055】
好ましい硬化性樹脂前駆体は、短時間で硬化できる光硬化性成分、例えば、紫外線硬化性成分(モノマー、オリゴマーや低分子量樹脂など)、EB硬化性成分である。さらに、耐擦傷性などの耐性を向上させるため、光硬化性成分は、複数の光重合性基を有する活性エネルギー線硬化性樹脂前駆体、例えば、分子中に複数(好ましくは2〜10個、さらに好ましくは2〜6個、特に3〜6個程度)の重合性不飽和結合((メタ)アクリロイル基など)を有する単量体(多官能性(メタ)アクリレートなど)であるのが好ましい。なお、光硬化性成分はアクリロイル基を有する化合物が好ましい。
【0056】
硬化性成分(又は硬化性樹脂前駆体)として、防眩層の硬度を高めるため、3乃至6官能性(メタ)アクリレート、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリ(2−ヒドロキシエトキシメチル)プロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどを用いる場合が多い。これらの多官能性(メタ)アクリレートは単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。なお、必要により、3乃至6官能性(メタ)アクリレートは、脂環式炭化水素環又は橋架環式炭化水素環を有するモノ又はジ(メタ)アクリレートと併用してもよい。
【0057】
硬化性樹脂前駆体は、前記密着層を形成する硬化性組成物と同様に、硬化性成分の種類に応じて、硬化剤(光重合開始剤など)、硬化促進剤、架橋剤、熱重合禁止剤などを含んでいてもよく、光重合開始剤としては前記例示の光重合開始剤が前記と同様の割合で使用できる。
【0058】
(2)ポリマー成分
ポリマー成分としては、通常、熱可塑性樹脂が使用できる。熱可塑性樹脂としては、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、有機酸ビニルエステル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、オレフィン系樹脂(環状オレフィン系樹脂を含む)、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、ポリスルホン系樹脂(ポリエーテルスルホン、ポリスルホンなど)、ポリフェニレンエーテル系樹脂(2,6−キシレノールの重合体など)、セルロース誘導体(セルロースエステル類、セルロースカーバメート類、セルロースエーテル類など)、シリコーン樹脂(ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサンなど)、ゴム又はエラストマー(ポリブタジエン、ポリイソプレンなどのジエン系ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴムなど)などが例示できる。これらのポリマー成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0059】
スチレン系樹脂には、スチレン系単量体(スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなど)の単独又は共重合体(ポリスチレンなど)、スチレン系単量体と他の重合性単量体[(メタ)アクリル系単量体、無水マレイン酸、マレイミド系単量体、ジエン類など]との共重合体などが含まれる。スチレン系共重合体としては、例えば、スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体などが挙げられる。好ましいスチレン系樹脂には、ポリスチレン、スチレンと(メタ)アクリル系単量体との共重合体[スチレンとメタクリル酸メチルとを主成分とする共重合体]、AS樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体などが含まれる。
【0060】
(メタ)アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル系単量体の単独又は共重合体、(メタ)アクリル系単量体と共重合性単量体との共重合体などが使用できる。(メタ)アクリル系単量体には、例えば、(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルなどのC1−10アルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどのシクロアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸フェニルなどのアリール(メタ)アクリレート;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート;N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリロニトリル;トリシクロデカンなどの橋架環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレートなどが例示できる。共重合性単量体には、前記スチレン系単量体、ビニルエステル系単量体、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸などが例示できる。これらの単量体は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0061】
(メタ)アクリル系樹脂としては、例えば、ポリメタクリル酸メチルなどのポリ(C1−6アルキル(メタ)アクリレート)、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−スチレン共重合体(MS樹脂など)などが挙げられる。好ましい(メタ)アクリル系樹脂としては、メタクリル酸メチルを主成分(50〜100重量%、好ましくは70〜100重量%程度)とするメタクリル酸メチル系樹脂が挙げられる。
【0062】
有機酸ビニルエステル系樹脂としては、ビニルエステル系単量体の単独又は共重合体(ポリ酢酸ビニルなど)、ビニルエステル系単量体と共重合性単量体との共重合体(エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体など)又はそれらの誘導体(ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアセタール樹脂など)が挙げられる。
【0063】
ビニルエーテル系樹脂としては、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテルなどのビニルC1−10アルキルエーテルの単独又は共重合体、ビニルアルキルエーテルと共重合性単量体との共重合体(ビニルアルキルエーテル−無水マレイン酸共重合体など)が挙げられる。ハロゲン含有樹脂としては、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニリデン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体などが挙げられる。
【0064】
オレフィン系樹脂には、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィンの単独重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体などの共重合体が挙げられる。環状オレフィン系樹脂としては、前記例示の環状オレフィン系ポリマーなどが例示できる。
【0065】
ポリカーボネート系樹脂には、ビスフェノール類(ビスフェノールAなど)をベースとする芳香族ポリカーボネート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネートなどの脂肪族ポリカーボネートなどが含まれる。
【0066】
ポリエステル系樹脂には、芳香族ポリエステル[ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリC2−4アルキレンアリレート(ポリC2−4アルキレンテレフタレート、ポリC2−4アルキレンナフタレートなど)などのポリアルキレンアリレート、C2−4アルキレンアリレート単位を主成分(例えば、50重量%以上)として含むコポリエステルなど]が例示できる。コポリエステルとしては、C2−4アルキレングリコールの一部を、ポリオキシC2−4アルキレングリコール、C6−10アルキレングリコール、環状ジオール(シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAなど)、芳香環を有するジオール(9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、ビスフェノールA、ビスフェノールA−アルキレンオキサイド付加体など)などで置換したコポリエステル、芳香族ジカルボン酸の一部を、フタル酸、イソフタル酸などの非対称芳香族ジカルボン酸、アジピン酸などのC6−12脂肪族ジカルボン酸などで置換したコポリエステルが含まれる。ポリエステル系樹脂には、ポリアリレート系樹脂、アジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸を用いた脂肪族ポリエステル、ε−カプロラクトンなどのラクトンの単独又は共重合体も含まれる。好ましいポリエステル系樹脂は、通常、非結晶性コポリエステル(例えば、C2−4アルキレンアリレート系コポリエステルなど)などのように非結晶性である。
【0067】
ポリアミド系樹脂には、ポリアミド成分[ジカルボン酸(例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸など)、ジアミン(例えば、ヘキサメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン)、ラクタム(ε−カプロラクタムなど)など]とから得られるポリアミド(脂肪族ポリアミド、脂環族ポリアミド、芳香族ポリアミドなど)が含まれ、ホモポリアミドに限らずコポリアミドであってもよい。ポリアミド系樹脂としては、ナイロン46、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12などが例示できる。
【0068】
セルロース誘導体のうちセルロースエステル類としては、前記と同様に、脂肪族アシルエステル(セルロースC1−6アルキルカルボニルエステル、例えば、セルロースアセテート、セルロースC2−6アルキル−カルボニルエステル、セルロースアセテートC2−6アルキル−カルボニルエステル;アセチルアルキルセルロースなどのアルキルセルロースC1−6アルキルカルボニルエステルなど)、芳香族アシルエステル(セルロースフタレート、セルロースベンゾエートなどのセルロースC7−12アリールカルボニルエステル)、無機酸エステル類などが例示でき、セルロース誘導体には、セルロースカーバメート類、セルロースエーテル類(例えば、シアノエチルセルロース;ヒドロキシC2−4アルキルセルロース;C1−6アルキルセルロース;カルボキシメチルセルロース又はその塩、ベンジルセルロースなど)も含まれる。
【0069】
好ましい熱可塑性樹脂としては、例えば、成形性又は製膜性、透明性や耐候性の高い樹脂、例えば、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース誘導体(セルロースエステル類など)が挙げられる。前記熱可塑性樹脂としては、通常、非結晶性であり、かつ有機溶媒(特に複数のポリマーや硬化性化合物を溶解可能な共通溶媒)に可溶な樹脂が使用される。
【0070】
これらのポリマー成分は適当に組み合わせて複数のポリマーで構成してもよい。複数のポリマー成分は、互いに(溶媒の非存在下で)相分離可能であり、完全に溶媒が蒸発する前から液相で相分離可能であってもよい。また、複数のポリマー成分は、互いに非相溶であってもよい。複数のポリマー成分を組み合わせる場合、第1のポリマー成分と第2のポリマー成分との組み合わせは特に制限されないが、加工温度付近で互いに非相溶な複数のポリマー成分、例えば、互いに非相溶な2つのポリマー成分として適当に組み合わせて使用できる。例えば、第1のポリマー成分がスチレン系樹脂(ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体など)である場合、第2のポリマー成分は、セルロース誘導体(例えば、セルロースアセテートプロピオネートなどのセルロースエステル類)、(メタ)アクリル系樹脂(ポリメタクリル酸メチルなど)、環状オレフィン系樹脂(ノルボルネンを単量体とする重合体など)、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂(前記ポリC2−4アルキレンアリレート系コポリエステルなど)などであってもよい。また、第1のポリマー成分がセルロース誘導体(例えば、セルロースアセテートプロピオネートなどのセルロースエステル類)である場合、第2のポリマー成分は、スチレン系樹脂(ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体など)、(メタ)アクリル系樹脂、環状オレフィン系樹脂(ノルボルネンを単量体とする重合体など)、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂(前記ポリC2−4アルキレンアリレート系コポリエステルなど)などであってもよい。
【0071】
特に、本発明の樹脂組成物(又は複数のポリマー成分の組合せ)において、ポリマー成分として、少なくともセルロース誘導体(セルロースエステル類など)を用いるのが好ましい。セルロース誘導体(セルロースエステル類など)は、半合成高分子であり、他の樹脂や硬化性樹脂前駆体と溶解挙動が異なる。そのため、セルロース誘導体を含む樹脂組成物を用いると、非常に良好な相分離性を有する。なかでも、少なくともセルロースエステル類(例えば、セルロースアセテート(セルロースジアセテート、セルローストリアセテートなど)、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどのセルロースC2−4アルキルカルボニルエステル類)を用いるのが好ましい。
【0072】
前記ポリマー成分として、硬化反応に関与する官能基(硬化性前駆体と反応可能な官能基)を主鎖又は側鎖に有するポリマー成分(又は熱可塑性樹脂)を用いることもできる。前記官能基は、共重合や共縮合などにより主鎖に導入されてもよいが、通常、側鎖に導入される。硬化した防眩層の耐擦傷性の観点から、複数のポリマー成分のうち、少なくとも一つのポリマー成分は硬化性樹脂前駆体と反応可能な官能基を側鎖に有するポリマー成分であるのが好ましい。このような官能基は、前記樹脂前駆体の縮合性又は反応性官能基、重合性基であってもよい。これらの官能基のうち重合性基(ビニル、プロペニル、イソプロペニル基などのC2−3アルケニル基、(メタ)アクリロイル基など、特に(メタ)アクリロイル基)が好ましい。このような官能基を有するポリマー成分は、硬化性樹脂前駆体の硬化又は架橋に伴って、防眩層において硬化又は架橋していてもよい。
【0073】
重合性基を側鎖に有する熱可塑性樹脂は、例えば、反応性基(前記例示の縮合性又は反応性官能基など)を有する熱可塑性樹脂(i)と、この熱可塑性樹脂の反応性基に対する反応性基を有する重合性化合物(ii)とを反応させ、化合物(ii)の重合性官能基を熱可塑性樹脂に導入することにより製造できる。
【0074】
前記反応性基を有する熱可塑性樹脂(i)としては、カルボキシル基又はその酸無水物基を有する熱可塑性樹脂[例えば、(メタ)アクリル酸を必須成分として用いた(メタ)アクリル系樹脂((メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体など)、末端カルボキシル基を有するポリエステル系樹脂又はポリアミド系樹脂など]、ヒドロキシル基を有する熱可塑性樹脂[例えば、(メタ)アクリル系樹脂((メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル共重合体など)、末端ヒドロキシル基を有するポリエステル系樹脂又はポリウレタン系樹脂、セルロース誘導体(ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのヒドロキシC2−4アルキルセルロース)、ポリアミド系樹脂(N−メチロールアクリルアミド共重合体など)など]、アミノ基を有する熱可塑性樹脂(例えば、末端アミノ基を有するポリアミド系樹脂など)、エポキシ基を有する熱可塑性樹脂(例えば、エポキシ基(グリシジル基など)を有する(メタ)アクリル系樹脂やポリエステル系樹脂など)などが例示できる。また、前記反応性基を有する熱可塑性樹脂(i)としては、スチレン系樹脂やオレフィン系樹脂、環状オレフィン系樹脂などの熱可塑性樹脂に、共重合やグラフト重合により、前記反応性基を導入した樹脂を用いてもよい。これらの熱可塑性樹脂(i)のうち、反応性基としてカルボキシル基又はその酸無水物基、ヒドロキシル基やグリシジル基(特にカルボキシル基又はその酸無水物基)を有する熱可塑性樹脂が好ましい。なお、前記(メタ)アクリル系樹脂のうち、前記共重合体は、(メタ)アクリル酸を50モル%以上含有する単量体を用いて調製するのが好ましい。前記熱可塑性樹脂(i)は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0075】
重合性化合物(ii)の反応性基としては、熱可塑性樹脂(i)の反応性基に対して反応性の基、例えば、前記ポリマーの官能基の項で例示した縮合性又は反応性官能基と同様の官能基などが挙げられる。
【0076】
前記重合性化合物(ii)としては、エポキシ基を有する重合性化合物[例えば、エポキシ基含有(メタ)アクリレート(グリシジル(メタ)アクリレート、1,2−エポキシブチル(メタ)アクリレートなどのエポキシC3−8アルキル(メタ)アクリレート;エポキシシクロヘキセニル(メタ)アクリレートなどのエポキシC5−8シクロアルケニル(メタ)アクリレートなど)、アリルグリシジルエーテルなど]、ヒドロキシル基を有する化合物[ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート、例えば、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシC2−6アルキル(メタ)アクリレートなど]、アミノ基を有する重合性化合物[例えば、アミノ基含有単量体(アリルアミンなどのC3−6アルケニルアミン;4−アミノスチレン、ジアミノスチレンなどのアミノスチレン類など)、イソシアネート基を有する重合性化合物[例えば、(ポリ)ウレタン(メタ)アクリレートやビニルイソシアネートなど]、カルボキシル基又はその酸無水物基を有する重合性化合物[例えば、(メタ)アクリル酸や無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸又はその無水物など]が例示できる。これらの重合性化合物(ii)は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0077】
前記官能基含有ポリマー成分、例えば、(メタ)アクリル系樹脂のカルボキシル基の一部に重合性不飽和基を導入したポリマーは、例えば、「サイクロマーP」などとしてダイセル化学工業(株)から入手できる。なお、サイクロマーPは、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体のカルボキシル基の一部に、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチルアクリレートのエポキシ基を反応させて、側鎖に光重合性不飽和基を導入した(メタ)アクリル系ポリマーである。
【0078】
ポリマー成分(熱可塑性樹脂)に対する官能基(特に重合性基)の導入量は、熱可塑性樹脂1kgに対して、0.001〜10モル、好ましくは0.01〜5モル、さらに好ましくは0.02〜3モル程度である。
【0079】
ポリマー成分のガラス転移温度は、例えば、−100℃〜250℃、好ましくは−50℃〜230℃、さらに好ましくは0〜200℃程度(例えば、50〜180℃程度)の範囲から選択できる。なお、表面硬度の観点から、ガラス転移温度は、50℃以上(例えば、70〜200℃程度)、好ましくは100℃以上(例えば、100〜170℃程度)であるのが有利である。ポリマー成分の重量平均分子量は、例えば、100×10以下、好ましくは0.1×10〜50×10程度の範囲から選択でき、通常、0.5×10〜50×10、好ましくは1×10〜25×10、さらに好ましくは2×10〜10×10程度であってもよい。
【0080】
樹脂組成物は少なくとも1つのポリマー成分(セルロースエステル類などのセルロース誘導体)を含んでいればよいが、複数のポリマー成分を用いる場合、第1のポリマー成分と第2のポリマー成分との割合(重量比)は、例えば、前者/後者=1/99〜99/1、好ましくは5/95〜95/5、さらに好ましくは10/90〜90/10程度の範囲から選択でき、通常、20/80〜80/20程度である。特に、第1のポリマー成分がセルロース誘導体である場合、第1のポリマー成分と第2のポリマー成分との割合(重量比)は、例えば、前者/後者=1/99〜50/50、好ましくは5/95〜40/60、さらに好ましくは10/90〜35/65(特に、15/85〜25/75)程度であり、通常、15/80〜30/70程度であってもよい。
【0081】
なお、樹脂組成物は、互いに非相溶な2つのポリマー成分に加えて、前記熱可塑性樹脂や他のポリマー成分を含んでいてもよい。
【0082】
硬化性樹脂組成物において、硬化性樹脂前駆体の割合は、相分離構造の形成を阻害せず、硬度の高い防眩層を形成できる範囲、例えば、硬化性樹脂前駆体及びポリマー成分の総量に対して固形分換算で30〜95重量%(例えば、50〜90重量%)程度から選択でき、通常、60重量%以上、例えば、60〜95重量%、好ましくは63〜90重量%、さらに好ましくは65〜85重量%程度であってもよい。ポリマー成分と硬化性樹脂前駆体との割合(重量比)は、例えば、前者/後者=5/95〜95/5程度の範囲から選択でき、表面硬度の観点から、好ましくは5/95〜50/50程度であり、さらに好ましくは5/95〜40/60(例えば、10/90〜40/60)、特に5/95〜30/70程度である。
【0083】
(3)添加剤
本発明の硬化性樹脂組成物(又は防眩層)には、必要に応じてレベリング剤、防汚剤、すべり向上剤、ぬれ向上剤、帯電防止剤などの添加剤成分を添加してもよい。これら添加剤の添加割合は、防眩層を構成する成分全体に対して0.05〜5重量%、好ましくは0.1〜3重量%程度である。
【0084】
レベリング剤としては、シリコーン系化合物、フッ素系化合物などが例示される。これらのレベリング剤のなかには、防汚剤やすべり向上剤としての性質を兼ね備えている成分もある。これらの添加剤は防眩層の最表面付近に偏析して存在することが好ましい。また、硬化性樹脂前駆体との反応性に関しては、硬化性樹脂前駆体との反応性を有していてもよく、有していなくてもよいが、効果の持続性の点から、硬化性樹脂前駆体と反応し硬化又は架橋樹脂の一部として存在するのが好ましい。反応性官能基を有する添加剤としては、例えば、重合性不飽和基を有するシリコーン含有化合物(ダイセル・サイテック(株)製「EB1360」)、重合性不飽和基を有するフッ素系化合物(OMNOVA SOLUTIONS社製「POLYFOX3320」)などが例示できる。これらの成分は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0085】
さらに、防眩層は、慣用の添加剤、例えば、可塑剤、着色剤、分散剤、離型剤、安定化剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定化剤など)、帯電防止剤、難燃剤、アンチブロッキング剤などを含んでいてもよい。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0086】
なお、これらの添加剤は、表面に凹凸を有する防眩層に含有させてもよく、後述するように最表層にさらに低反射層をコートする場合には、低反射層に含有させてもよい。
【0087】
(4)相分離
防眩層は、硬化性樹脂組成物の硬化層で形成され、相分離構造を有している。この相分離構造は、塗膜系において、少なくとも1つの前記硬化性樹脂前駆体及び少なくとも1つのポリマー成分のうち、少なくとも2つの成分の相分離(これらの成分を含む液相からの相分離)により形成できる。相分離は、通常、加工温度付近(塗膜形成過程又は成膜温度)で形成される。相分離する成分の組み合わせは、例えば、(a)複数のポリマー成分同士が互いに非相溶で相分離する組み合わせ、(b)硬化性樹脂前駆体と1又は複数のポリマー成分とが非相溶で相分離する組み合わせや、(c)複数の硬化性樹脂前駆体同士が互いに非相溶で相分離する組み合わせなどが挙げられる。相分離には、通常、前記(a)複数のポリマー成分同士の組み合わせ、(b)硬化性樹脂前駆体とポリマー成分との組み合わせが利用され、特に(a)複数のポリマー成分同士の組み合わせが好ましい。なお、複数のポリマー成分を用いる場合、硬化性樹脂前駆体は、少なくとも1つのポリマー成分と相溶性を有していてもよい。
【0088】
例えば、前記組み合わせ(a)において、互いに非相溶な複数のポリマーを、例えば、第1のポリマーと第2のポリマーとで構成する場合、硬化性樹脂前駆体は、第1のポリマー及び第2のポリマーのうち少なくともいずれか一方のポリマー成分と相溶してもよく、両方のポリマー成分と相溶してもよい。両方のポリマー成分に相溶する場合、第1のポリマー及び硬化性樹脂前駆体を主成分とした混合物と、第2のポリマー及び硬化性樹脂前駆体を主成分とした混合物との少なくとも二相に相分離してもよい。前記組み合わせ(b)において、ポリマー成分として複数のポリマー成分を用いてもよく、複数のポリマー成分を用いる場合、少なくとも1つのポリマー成分が硬化性樹脂前駆体に対して非相溶であればよく、他のポリマー成分は前記樹脂前駆体と相溶してもよい。さらに、前記組み合わせ(b)において、硬化性樹脂前駆体は、互いに非相溶な複数のポリマー成分のうち、少なくとも1つのポリマー成分と相溶であってもよい。
【0089】
なお、相分離性は、各成分(硬化性樹脂前駆体及びポリマー成分)に対する良溶媒を用いて均一溶液を調製し、溶媒を徐々に蒸発させる過程で、残存固形分が白濁するか否かを目視にて確認することにより簡便に判定できる。
【0090】
さらに、硬化又は架橋した防眩層において、通常、相分離した樹脂成分は互いに屈折率が異なる。例えば、ポリマー成分と、硬化性樹脂前駆体の硬化又は架橋樹脂とは互いに屈折率が異なる。また、複数のポリマー成分(第1のポリマーと第2のポリマー)の屈折率も互いに異なる。本発明では、相分離した樹脂成分の屈折率の差(ポリマー成分と、硬化性樹脂前駆体の硬化又は架橋樹脂との屈折率の差、複数のポリマー(第1のポリマーと第2のポリマー)の屈折率の差)は、例えば、0〜0.06、好ましくは0.0001〜0.05、さらに好ましくは0.001〜0.04程度であってもよい。このような屈折率差のポリマー成分および硬化性樹脂前駆体を選択することにより、相分離したドメインも同様な屈折率差とすることができる。特に、ドメインからの内部散乱を抑制し、内部ヘーズを低減でき、黒味の画像を実現できる。
【0091】
本発明では、防眩層内部での相分離に伴って、防眩層の表面に凹凸構造を形成でき、硬化性樹脂前駆体の硬化により、相分離構造を固定化し、ハードコート層としての防眩層を形成できる。すなわち、表面の凹凸形状(内部の相分離構造によって隆起した表面の凹凸形状)は、活性光線(紫外線、電子線など)や熱線などにより最終的に硬化し、相分離構造が固定化された硬化樹脂を形成する。そのため、防眩層(ハードコート膜)に耐擦傷性を付与でき、耐久性を向上できる。
【0092】
防眩層の厚みは、例えば、0.3〜50μm(例えば、1〜40μm)、好ましくは5〜30μm程度であってもよく、通常、7〜25μm(例えば、10〜20μm)程度である。
【0093】
[防眩性フィルムの製造方法]
防眩性フィルムは、前記基材フィルム上に、密着層を形成する前記硬化性組成物の第1の塗布液を塗布する工程と、相分離可能な複数の成分を含み、かつ少なくとも1つの成分が硬化性成分である硬化性樹脂組成物と溶媒とを含む第2の塗布液を塗布する工程と、前記溶媒の蒸発に伴う相分離により相分離構造を形成させる工程と、前記各組成物中の硬化性成分を硬化させる工程を経ることにより製造でき、相分離構造を有するとともに、表面に凹凸構造を有する防眩層は、密着層により基材フィルムに密着している。なお、本発明では、前記第1の塗布液を用いるため、表面処理することなく基材フィルムに第1の塗布液及び第2の塗布液を塗布しても、密着性の高い硬化塗膜を形成できる。また、基材フィルムに第1の塗布液を塗布し硬化性成分を硬化させて密着層を形成した後、硬化した密着層に第2の塗布液を塗布して硬化性成分を硬化させることにより防眩層を形成してもよく、基材フィルムに第1の塗布液と第2の塗布液とを順次塗布し、硬化性成分を硬化して密着層及び防眩層を形成してもよい。第1の塗布液と第2の塗布液とを順次塗布する場合、第1の塗布液は乾燥させることなく又は乾燥させた後、第2の塗布液を塗布してもよい。
【0094】
第1の塗布液に関し、少なくとも前記第1の硬化性成分(トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートなど)を含む硬化性組成物を第1の塗布液として使用してもよく、硬化性組成物と、硬化性組成物の成分を可溶な溶媒とを含む塗布剤(例えば、少なくとも前記第1の硬化性成分と、セルロース誘導体と、光重合開始剤と、これらの成分を可溶な溶媒とを含むコーティング剤)を第1の塗布液として使用してもよい。なお、溶媒としては、例えば、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセト酢酸エステル、シクロヘキサノンなど)、エーテル類(ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、脂肪族炭化水素類(ヘキサンなど)、脂環式炭化水素類(シクロヘキサンなど)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレンなど)、ハロゲン化炭化水素類(ジクロロメタン、ジクロロエタンなど)、水、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール、ブタノール、t−ブタノール、シクロヘキサノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコールなど)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなど)、カルビトール類(ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなど)、セロソルブ類又はカルビトール類に対応する(ジ)プロピレングリコールモノルキルエーテル類(プロピレングリコールモノメチルエーテルなど)、セロソルブアセテート類、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)などが例示できる。これらの溶媒は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0095】
第2の塗布液としては、複数の光重合性基を有する硬化性樹脂前駆体と、少なくとも1つのポリマー成分と、溶媒とを含む塗布液(特に、複数の(メタ)アクリロイル基を有する多官能性(メタ)アクリレートと、セルロース誘導体と、(メタ)アクリロイル基を有するポリマー成分と、光重合開始剤と、前記多官能性(メタ)アクリレートポリマー成分および光重合開始剤を可溶な溶媒とを含む塗布液)を用いる場合が多い。相分離は、硬化性樹脂組成物と溶媒とを含む液相(液体組成物)から、前記溶媒の蒸発過程で発生させることができる(湿式相分離法)。
【0096】
湿式相分離法においては、系の状態は溶媒の蒸発に伴い時々刻々と変化する非平衡状態の連続であり、相分離過程の構造形成を理論的に取り扱うことは困難である。しかし、文献「Macromolecules,17巻,2812(1984)」には、溶媒存在下における基本的な相分離過程は、2種の高分子間に対する相分離理論で示されるものと同様の挙動を示すことが書かれている。すなわち、湿式相分離法においても、相分離のモードとして、スピノーダル分解と核生成の2つがあることが考えられる。スピノーダル分解による相分離の特徴は、系全体に均一な密度揺らぎが発生することにより、相対的に位置が揃った相分離構造を形成する点である。一方、核生成による相分離では、密度揺らぎが不均一に発生し、ランダムな相分離構造を形成する。形成される相分離構造が制御されているという点において、スピノーダル分解による相分離が好ましい。相分離がいずれのモードで発生し進行するかは、組成と状態変化(例えば、温度変化や、湿式相分離法の場合、溶媒濃度)とで表される相図で示される。通常、スピノーダル分解による相分離の方が核生成による相分離と比べて発現領域が広い。
【0097】
スピノーダル分解による相分離では、発生した密度ゆらぎは、相分離の進行に伴って共連続相構造を形成し、さらに相分離が進行すると、連続相が自らの表面張力により非連続化し、液滴相構造(球状、真球状、円盤状、楕円体状、長方体状などの独立相の海島構造)となる。従って、相分離の程度によって、共連続相構造と液滴相構造との中間的構造(上記共連続相から液滴相に移行する過程の相構造)も形成できる。本発明において、防眩層中の相分離構造は、海島構造(液滴相構造、又は一方の相が独立または孤立した相構造)、共連続相構造(又は網目構造)であってもよく、共連続相構造と液滴相構造とが混在した中間的構造であってもよい。これらの相分離構造により、溶媒乾燥後に防眩層の表面に微細な凹凸を形成できる。
【0098】
前記相分離構造において、表面凹凸構造を形成し、かつ表面硬度を高める点からは、少なくとも島状ドメインを有する液滴相構造であるのが有利である。なお、ポリマー成分と前記前駆体(又は硬化樹脂)とで構成された相分離構造が海島構造である場合、ポリマー成分が海相を形成してもよいが、表面硬度の観点から、ポリマー成分が島状ドメインを形成するのが好ましい。なお、島状ドメインの形成により、乾燥後には防眩層の表面に微細な凹凸を形成できる。本発明では、島状ドメインが異形状(楕円体状、長方体状などの長形状など)であってもよい。また、ドメインの平面形状は、不定形、多角形、円形、楕円形などであってもよい。さらに、これらの島状ドメインは独立していてもよく、部分的に結合して連なったドメインを形成してもよい。 表面凹凸構造におけるドメイン間の平均距離[隣接する凸部の頂部間(ドメイン間)のピッチ]は5〜200μm(例えば、10〜175μm)程度の範囲から選択でき、例えば、10〜150μm、好ましくは15〜100μm程度であってもよい。また、ドメインの平均径は、例えば、3〜100μm、好ましくは5〜50μm、さらに好ましくは8〜30μm(特に10〜25μm)程度であってもよい。
【0099】
湿式相分離において、溶媒は、硬化性樹脂前駆体及びポリマー成分の種類及び溶解性に応じて選択でき、混合溶媒の場合、少なくとも1つの溶媒は固形分又は不揮発成分(硬化性樹脂前駆体及びポリマー成分、反応開始剤、その他添加剤)を均一に溶解できる溶媒であればよい。溶媒としては、前記第1の塗布液と同様の溶媒、例えば、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)、エーテル類、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、脂肪族炭化水素類(ヘキサンなど)、脂環式炭化水素類(シクロヘキサンなど)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレンなど)、ハロゲン化炭化水素類、水、アルコール類(エタノール、プロパノール、イソプロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール、ブタノール、t−ブタノール、シクロヘキサノールなど)、セロソルブ類、、カルビトール類、セロソルブアセテート類、スルホキシド類、アミド類などが例示できる。これらの溶媒は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。なお、セルロースエステル類を可溶な溶媒としては、セルロースエステル類の種類に応じて、例えば、アセトン、酢酸メチル、ジクロロメタン、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどの低沸点溶媒の他、1−メトキシ−2−プロパノール、セロソルブ類(エチルセロソルブなど)などの高沸点溶媒が利用できる。
【0100】
第2の塗布液においては、溶媒として、常圧で沸点100℃以上の溶媒(高沸点溶媒ということがある)を用いるのが好ましい。高沸点溶媒(蒸気圧の低い溶媒)の沸点は100℃以上(通常、100〜200℃、好ましくは105〜150℃、さらに好ましくは110〜130℃程度)である。さらに、相分離を形成するため、溶媒は沸点の異なる複数の溶媒(高沸点溶媒と沸点100℃未満の低沸点溶媒)で構成するのが好ましい。低沸点溶媒(蒸気圧の高い溶媒)の沸点は、100℃未満(例えば、35〜99℃、好ましくは40〜95℃、さらに好ましくは50〜85℃程度)であってもよい。高沸点溶媒と低沸点溶媒との重量割合は、例えば、前者/後者=5/95〜90/10(例えば、10/90〜70/30)程度の範囲から選択でき、通常、15/85〜60/40、好ましくは20/80〜50/50(特に20/80〜40/60)程度であってもよい。
【0101】
第2の塗布液中の溶質(硬化性樹脂前駆体及びポリマー成分、反応開始剤、その他添加剤)の濃度は、相分離及び流延性やコーティング性などを損なわない範囲で選択でき、例えば、1〜80重量%程度の範囲から選択でき、通常、5〜70重量%、好ましくは15〜60重量%程度である。
【0102】
前記第2の塗布液を流延又は塗布した後、溶媒を蒸発させることにより相分離を誘起することができる。また、溶媒の蒸発を伴う相分離(スピノーダル分解など)により、相分離構造のドメイン間の平均距離に規則性又は周期性を付与できる。溶媒蒸発の温度(乾燥温度)は、特に制限されないが、溶媒の沸点よりも低い温度、例えば、溶媒の沸点と蒸発温度(乾燥温度)との差が、100℃以内、好ましくは70℃以内、さらに好ましくは50℃以内の範囲で選択するのが好ましい。溶媒の蒸発は、通常、乾燥、例えば、溶媒の沸点に応じて、30〜150℃、好ましくは40〜120℃、さらに好ましくは50〜90℃程度の温度で乾燥させることにより行うことができる。
【0103】
密着層及び防眩層は、塗膜中の少なくとも前記硬化性成分(硬化性樹脂前駆体など)を熱や活性光線などを利用して硬化させることにより形成できる。好ましい態様では、塗膜中の光硬化性成分を光照射により硬化させる。光照射は、光硬化性成分などの種類に応じて選択でき、通常、紫外線、電子線などが利用できる。汎用的な露光源は、通常、紫外線照射装置である。なお、光照射は、必要であれば、窒素ガス、二酸化炭素などの不活性ガス雰囲気中で行ってもよい。硬化性成分(硬化性樹脂前駆体など)の硬化により、基材フィルムに緊密に密着した密着層を形成できるとともに、防眩層では相分離構造は固定化でき、通常、規則的又は周期的な平均相間距離を有する相分離構造を形成できる。
【0104】
(5)低屈折率層
前記防眩層の少なくとも一方の面には低屈折率層を積層してもよい。低屈折率層を形成することにより、光学部材などにおいて、低屈折率層を最表面となるように配設した場合などに、外部からの光(外部光源など)が、防眩性フィルムの表面で反射するのを有効に防止できる。低屈折率層の屈折率は、例えば、1.30〜1.49、好ましくは1.30〜1.45、さらに好ましくは1.30〜1.40程度であってもよい。
【0105】
低屈折率層は、低屈折率樹脂で構成されている。低屈折率層を構成する樹脂としては、例えば、メチルペンテン樹脂、(メタ)アクリレート樹脂、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)樹脂、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリビニルフルオライド(PVF)などのフッ素樹脂などが挙げられる。また、低屈折率層は、通常、フッ素含有化合物を含有するのが好ましく、フッ素含有化合物を用いると、低屈折率層の屈折率を所望に応じて低減できる。また、低屈折率層には、内部が中空の微粒子(例えば、シリカ粒子などの金属酸化物粒子)を含んでいてもよく、微粒子の平均径は100nm以下(例えば、5〜100nm、好ましくは10〜70nm、さらに実用的には20〜50nm)程度であってもよい。
【0106】
前記フッ素含有化合物としては、フッ素原子と、熱や活性エネルギー線(紫外線や電子線など)の作用により反応する官能基(架橋性基又は重合性基などの硬化性基など)とを有し、熱や活性エネルギー線などにより硬化又は架橋してフッ素含有樹脂(特に硬化又は架橋樹脂)を形成可能なフッ素含有樹脂前駆体が挙げられる。このようなフッ素含有樹脂前駆体としては、例えば、フッ素原子含有熱硬化性化合物又は樹脂[フッ素原子とともに、反応性基(エポキシ基、イソシアネート基、カルボキシル基、ヒドロキシル基など)、重合性基(ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基など)などを有する低分子量化合物]、活性光線(紫外線など)により硬化可能なフッ素原子含有光硬化性化合物又は樹脂(光硬化性フッ素含有モノマー又はオリゴマーなどの紫外線硬化性化合物など)などが例示できる。
【0107】
前記光硬化性化合物には、例えば、単量体、オリゴマー(又は樹脂、特に低分子量樹脂)が含まれ、単量体としては、例えば、前記防眩層の項で例示の単官能性単量体及び多官能性単量体に対応するフッ素原子含有単量体[(メタ)アクリル酸のフッ化アルキルエステルなどのフッ素原子含有(メタ)アクリル系単量体、フルオロオレフィン類などのビニル系単量体などの単官能性単量体;1−フルオロ−1,2−ジ(メタ)アクリロイルオキシエチレンなどのフッ化アルキレングリコールのジ(メタ)アクリレートなど]が例示できる。また、オリゴマー又は樹脂としては、前記防眩層の項で例示のオリゴマー又は樹脂に対応するフッ素原子含有オリゴマー又は樹脂などが使用できる。これらの光硬化性化合物は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0108】
フッ素含有樹脂の硬化性前駆体は、例えば、溶液(コート液)状の形態で入手でき、このようなコート液は、例えば、JSR(株)製「TT1006A」及び「JN7215」や、大日本インキ化学工業(株)製「ディフェンサTR−330」などとして入手できる。
【0109】
低屈折率層の厚みは、例えば、0.05〜2μm、好ましくは0.07〜1μm、さらに好ましくは0.08〜0.3μm程度である。
【0110】
一般に、防眩層の表面に低屈折率層を形成すると、防眩層単独に比べて、ヘーズが防眩層単体のヘーズの50〜100%程度の値に低下し、透過像鮮明度は防眩層単体の値の100〜150%程度の値に上昇する傾向がある。このため低反射層を設ける場合、最終的なヘーズおよび透過像鮮明度を調整するため、予め防眩層単独のヘーズは高めに調整し、防眩層単独の透過像鮮明度は、低めに調整してもよい。
【0111】
[防眩性フィルム]
本発明の防眩性フィルムは透明性が高く、全光線透過率は、例えば、80〜100%、好ましくは85〜100%、特に90〜100%程度である。また、本発明の防眩性フィルムは、ヘーズが小さく、例えば、防眩性フィルムのヘーズは1〜25%、好ましくは2〜25%、さらに好ましくは6〜20%程度である。本発明の防眩性フィルムは、特に内部ヘーズが小さい。すなわち、相分離によって表面に凹凸形状を形成した防眩層は、微粒子を分散して表面凹凸形状を形成する方法と異なり、層の内部で散乱を引き起こす微粒子を防眩層内に含まない。そのため、層の内部におけるヘーズ(層の内部で散乱を引き起こす内部ヘーズ)は低く、例えば、0〜2%(例えば、0〜1.5%)程度の範囲から選択でき、通常、0〜1%(例えば、0.1〜0.8%、好ましくは0.2〜0.7%)程度である。なお、内部ヘーズは、透明樹脂層をコートして防眩層の表面凹凸を平坦化するか、透明粘着層を介して平滑な透明フィルムと防眩層の表面凹凸を貼り合わせたフィルムについてヘーズを測定することにより評価できる。
【0112】
全光線透過率及びヘーズは、JIS K7136に準拠して、日本電色工業(株)製、NDH−5000Wヘーズメーターを用いて測定できる。
【0113】
本発明の防眩性フィルムは、0.5mm幅の光学櫛を用いた写像性測定器で測定したとき、透過像鮮明度が25〜75%、好ましくは28〜73%(例えば、30〜70%)程度であり、35〜75%(例えば、40〜65%)程度の防眩性フィルムも得られる。このような防眩性フィルムでは、映り込みの輪郭を十分ぼかすことができるため、高い防眩性を付与できる。透過像鮮明度が高すぎると、強い外光が防眩層を透過し、表示装置中の鏡面反射性層(例えば、液晶セルの場合、上部電極のガラス面及びセル内部の上部電極の導電面)から散乱されずに反射し、その反射光をあまり散乱せずに透過する。従って、透過像鮮明度が高い(例えば、75%を越える)の防眩性フィルムでは、要望される映り込み防止は達成できない。一方、透過像鮮明度が小さすぎると、前記の映り込みは防止できるが、画像の鮮明さが低下する。なお、透過像鮮明度が75%以下であっても、防眩性フィルムは、所定のヘーズ(特に前記ヘーズ値)を有するのが有用である。すなわち、曇り度の尺度であるヘーズと透過像鮮明度とが前記範囲にすることにより、外景の映り込みを効果的に防止できる。
【0114】
透過像鮮明度とは、フィルムを透過した光のボケや歪みを定量化する尺度である。透過像鮮明度は、フィルムからの透過光を移動する光学櫛を通して測定し、光学櫛の明暗部の光量により値を算出する。すなわち、フィルムが透過光をぼやかす場合、光学櫛上に結像されるスリットの像は太くなるため、透過部での光量は100%以下となり、一方、不透過部では光が漏れるため0%以上となる。透過像鮮明度の値Cは光学櫛の透明部の透過光最大値Mと不透明部の透過光最小値mから次式により定義される。
【0115】
C(%)=[(M−m)/(M+m)]×100
すなわち、Cの値が100%に近づく程、防眩性フィルムによる像のボケが小さい[参考文献;須賀、三田村,塗装技術,1985年7月号]。
【0116】
前記透過像鮮明度測定の測定装置としては、スガ試験機(株)製写像性測定器ICM−1Tが使用でき、光学櫛としては0.125〜2mm幅の光学櫛を用いることができる。
【0117】
さらに、本発明の防眩性フィルムは、相分離構造において、ドメインの平均相間距離は実質的に規則性又は周期性を有している。そのため、防眩性フィルムに入射して透過する光は、相間平均距離(又は表面凹凸構造の周期性)に対応した散乱(例えば、ブラッグ反射)により、直進透過光とは離れた特定角度に散乱光極大を示す。すなわち、本発明の防眩性フィルムは、入射光を等方的に透過して散乱又は拡散するものの、散乱光(透過散乱光)は、散乱中心からシフトした散乱角、例えば、0.1〜10°、好ましくは0.2〜5°、特に、0.5〜3°で光強度の極大値を示す。散乱光強度の極大値は、散乱光強度の角度分布プロファイルにおいてピーク状に分離していてもよく、ショルダー状ピークであったり、平坦状ピークである場合も極大値を有するとみなすことができる。
【0118】
なお、防眩性フィルムを透過した光の角度分布は、図1に示すように、He−Neレーザなどのレーザ光源1と、ゴニオメーターに設置した光受光器4を備えた測定装置を用いて測定できる。なお、この例では、レーザ光源1からのレーザ光をNDフィルタ2を介して試料3に照射し、試料からの散乱光を、レーザ光の光路に対して散乱角度θで変角可能であり、かつ光電子増幅管を備えた検出器(光受光器)4により検出し、散乱強度と散乱角度θとの関係を測定している。このような装置として、レーザ光散乱自動測定装置(ネオアーク(株)製)を利用できる。
【0119】
本発明の防眩性フィルムは、密着層を介して、基材フィルムに対して高い密着力で防眩層が密着している。密着性は、防眩層の上からカッターにより2mm間隔で縦方向及び横方向にそれぞれ6本の切れ目を入れて2mm角四方の碁盤目25個を形成し、セロハン粘着テープ(ニチバン(株)製)を密着させて、手で急速に引っ張り、剥離しなかった碁盤目の数で評価することができる。このような碁盤目剥離試験において、本発明の防眩性フィルムは、碁盤目の残存率が90%以上(例えば、90〜100%、特に96〜100%程度)である。
【0120】
本発明の防眩性フィルムの防眩層は、硬度が高く、傷つき防止機能を有している。すなわち、荷重を500gとし、JIS K5400に従い表面硬度(鉛筆硬度)を測定すると、防眩層の鉛筆硬度は、H以上(例えば、H〜3H程度)である。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明の防眩性フィルムにおいて、防眩層の表面には、前記相分離構造に対応した多数の微細な凹凸構造が形成されているため、表面反射による外景の映り込みを抑制し、防眩性を高めることができる。また、防眩層の硬度も高くハードコート層として機能させることもできる。特に、本発明による防眩層は、防眩性が高いだけでなく透過像の鮮明性も高い。そのため、本発明の防眩性フィルムは防眩性と光散乱性が必要とされる種々の用途、例えば、光学部材や、液晶表示装置などの表示装置の光学要素(光学部材)として有用である。また、基材フィルムとして環状オレフィン系ポリマーを用いているため、防眩性フィルムは、そのまま光学部材として用いてもよく、光学要素(例えば、偏光板、位相差板、導光板などの光路内に配設される種々の光学要素)と組み合わせて光学部材を形成してもよい。すなわち、光学要素の少なくとも一方の光路面に前記防眩性フィルムを配設又は積層してもよい。例えば、光学要素(偏光板、位相差板など)の少なくとも一方の面(光路面)に防眩性フィルムを積層して光学部材(積層光学部材)を形成してもよく、導光板の出射面に防眩性フィルムを配設又は積層してもよい。
【0122】
本発明の防眩性フィルムの防眩層には耐擦傷性が付与されているため、光学要素又は表示装置の最表層の傷つき防止フィルム(保護フィルム)としても機能させることができる。液晶表示では、偏光板が最表層に配設されるケースが多い。そのため、本発明の防眩性フィルムは、偏光板を構成する2枚の保護フィルムのうち少なくとも一方の保護フィルムに代えて、防眩性フィルムを用いた積層体(光学部材)、すなわち、偏光板の少なくとも一方の面に防眩性フィルムが積層された積層体(光学部材)として利用するのに適している。このような光学部材(特に偏光板と防眩性フィルムとの積層体など)は、液晶表示装置、特に、高精細又は高精彩液晶ディスプレイなどの大型液晶表示装置での映り込みを有効に防止でき。また、指やペン型入力機器を用いて表示画面に触れることにより入力信号を発生させるタッチパネル用途にも、耐擦傷性が付与された防眩性フィルムが積層された積層体(光学部材)を利用するのに適している。
【0123】
本発明の防眩性フィルムは、テレビジョン(TV)用途では、黒色が引き締まったコントラスト感の強いテレビジョン(TV)用途に特に好適に使用される。また、種々の表示装置、例えば、液晶表示(LCD)装置、陰極管表示装置、有機又は無機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、表面電界ディスプレイ(SED)、リアプロジェクションテレビディスプレイ、プラズマディスプレイ(PDP)、タッチパネル付き表示装置(タッチパネル式入力装置)などに使用できる。そのため、本発明は、前記防眩性フィルムを備えた表示装置も包含する。これらの表示装置は、前記防眩性フィルムや光学部材(特に偏光板と防眩性フィルムとの積層体など)を光学要素として備えている。特に、高精細液晶ディスプレイなどの大型液晶表示装置に装着しても映り込みを防止できるとともに、光学要素(偏光板など)に高い耐擦傷性を付与できるため、液晶表示装置に好ましく使用できる。なお、前記液晶表示装置は、さらにプリズム単位の断面形状が略二等辺三角形状であるプリズムシートを備えていてもよい。
【0124】
なお、液晶表示装置は、外部光を利用して、液晶セルを備えた表示ユニットを照明する反射型液晶表示装置であってもよく、表示ユニットを照明するためのバックライトユニットを備えた透過型液晶表示装置であってもよい。前記反射型液晶表示装置では、外部からの入射光を、表示ユニットを介して取り込み、表示ユニットを透過した透過光を反射部材により反射して表示ユニットを照明できる。反射型液晶表示装置では、前記反射部材から前方の光路内に前記防眩性フィルムや光学部材(特に偏光板と防眩性フィルムとの積層体)を配設できる。例えば、反射部材と表示ユニットとの間、表示ユニットの前面などに前記防眩性フィルムや光学部材を配設又は積層できる。
【0125】
透過型液晶表示装置において、バックライトユニットは、光源(冷陰極管などの管状光源,発光ダイオードなどの点状光源など)からの光を一方の側部から入射させて前面の出射面から出射させるための導光板(例えば、断面楔形状の導光板)を備えていてもよいし、複数個の光源を液晶パネルの直下に配置する場合には、光源の形をぼやかす拡散板を備えていても良い。また、必要であれば、導光板あるいは拡散板の前面側にはプリズムシートを配設してもよい。なお、通常、導光板の裏面には、光源からの光を出射面側へ反射させるための反射部材が配設されている。このような透過型液晶表示装置では、通常、光源から前方の光路内に前記防眩性フィルムや光学部材を配設又は積層できる。例えば、導光板と表示ユニットとの間、表示ユニットの前面などに前記防眩性フィルムや光学部材を配設又は積層できる。
【実施例】
【0126】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0127】
[環状オレフィン系ポリマーフィルムの作製]
環状オレフィン系ポリマー(ポリプラスチックス(株)製、商品名「TOPAS」グレード6013S−04)を用い、Tダイ付き押出機にて温度270℃で溶融させ、引き取り速度20m/分で100℃の冷却ロール上に溶融押出して、幅800mm、厚み100μmのフィルムを得た。
【0128】
[第1の塗布液の調製と密着層(透明コート層)の形成]
下記表1に示すアクリル系紫外線硬化モノマー58.2重量部を、メチルエチルケトン(MEK)/1−ブタノール=8/2(重量比)の混合溶媒40.0重量部に溶解した。この溶液に、セルロースアセテートプロピオネート(アセチル化度=2.5%、プロピオニル化度=46%、ポリスチレン換算数平均分子量75000;イーストマン製、CAP−482−20)1.8重量部、および光開始剤として、イルガキュア184およびイルガキュア907(チバスペシャルティーケミカルズ製)をそれぞれ0.9重量部溶解させ、第1の塗布液1〜6を調製した。
【0129】
なお、アクリル系紫外線硬化モノマーとしては、ジメチロールジシクロペンタンジアクリレート;ダイセル・サイテック(株)製、IRR214K)、ペンタエリスリトールトリアクリレート(ダイセル・サイテック(株)製、PETIA)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(ダイセル・サイテック(株)製、DPHA)、トリメチロールプロパントリアクリレート(ダイセル・サイテック(株)製、TMPTA)を用いた。調製した第1の塗布液1〜6の配合組成は表1に示す通りである。
【0130】
第1の塗布液1〜6を、それぞれ、ワイヤーバー#28を用いて環状オレフィン系ポリマーフィルム(1)上に塗布した後、70℃の防爆オーブン内で30秒間放置し、溶媒を蒸発させた。その後、コートフィルムを紫外線照射装置(ウシオ電機(株)製高圧水銀ランプ、紫外線照射量;800mJ/cm)に通して紫外線照射して硬化処理し、密着層1〜6を形成した。
【0131】
第1の塗布液1〜6の組成とともに、密着層の膜厚及びフィルムのヘーズを表1に示す。
【0132】
【表1】

【0133】
[第2の塗布液(防眩層用コート溶液)の調製]
第2の塗布液A
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(ダイセル・サイテック(株)製、DPHA)28.3重量部、側鎖に重合性不飽和基を有するアクリル樹脂[(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体のカルボキシル基の一部に、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチルアクリレートを付加させた化合物;ダイセル化学工業(株)製、ACAZ321M、固形分44重量%、1−メトキシ−2−プロパノール(MMPG)溶液]16.0重量部、セルロースアセテートプロピオネート(アセチル化度=2.5%、プロピオニル化度=46%、ポリスチレン換算数平均分子量75000;イーストマン製、CAP−482−20)1.7重量部を、メチルエチルケトン(MEK)39.1重量部、1−ブタノール11.2重量部、1−メトキシ−2−プロパノール(MMPG)3.8重量部の混合溶媒に溶解した。この溶液に、光開始剤として、イルガキュア184およびイルガキュア907(チバスペシャルティーケミカルズ製)をそれぞれ0.5重量部、防汚剤としてフッ素含有重合性化合物(Omnova Solutions社製:Polyfox3320)を0.2重量部溶解させ、第2の塗布液Aを調製した。
【0134】
第2の塗布液B
トリメチロールプロパントリアクリレート(ダイセル・サイテック(株)製、TMPTA)38.0重量部、側鎖に重合性不飽和基を有するアクリル樹脂[(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体のカルボキシル基の一部に、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチルアクリレートを付加させた化合物;ダイセル化学工業(株)製、ACAZ321M、固形分44重量%、1−メトキシ−2−プロパノール(MMPG)溶液]14.6重量部、セルロースアセテートプロピオネート(アセチル化度=2.5%、プロピオニル化度=46%、ポリスチレン換算数平均分子量75000;イーストマン製、CAP−482−20)1.6重量部を、メチルエチルケトン(MEK)35.1重量部、1−ブタノール10.8重量部の混合溶媒に溶解した。この溶液に、光開始剤として、イルガキュア184およびイルガキュア907(チバスペシャルティーケミカルズ製)を各0.5重量部、実施例1で用いた防汚剤を0.1重量部溶解させ、第2の塗布液Bを調製した。
【0135】
第2の塗布液C
トリメチロールプロパントリアクリレート(ダイセル・サイテック(株)製、TMPTA)30.1重量部をメチルエチルケトン(MEK)52.0重量部、1−メトキシ−2−プロパノール(MMPG)13.0重量部に溶解し、平均粒子径4μmのポリスチレンビーズ4.9重量部を添加した。この溶液に、光開始剤として、イルガキュア184およびイルガキュア907(チバスペシャルティーケミカルズ製)をそれぞれ0.5重量部溶解させ、第2の塗布液Cを調製した。
【0136】
実施例1
密着層1上に、第2の塗布液Aを、ワイヤーバー#24を用いて塗布した後、50℃の防爆オーブン内で25秒間放置し、溶媒を蒸発させた。その後、コートフィルムを紫外線照射装置(ウシオ電機(株)製高圧水銀ランプ、紫外線照射量;800mJ/cm)に通して紫外線硬化処理を行い、ハードコート性および表面凹凸構造を有する防眩層を形成した。コート層全体の厚み(密着層+防眩層)は32μmであった。
【0137】
実施例1で得られた防眩性フィルムの透過光散乱測定結果を図2に示す。この図は、横軸の散乱角度(図1におけるθ;すなわち0度は透過直進光を示す)に対して、縦軸は散乱光強度(相対強度測定のため単位はない)をプロットしたものである。図から明らかなように散乱角度1.1°付近に散乱光にピーク極大が見られる。
【0138】
実施例1で得られた防眩性フィルムの表面をレーザー顕微鏡で観察した結果を図3に示す。凸部は独立した島状或いはそれらが部分的に結合して連なった構造に形成されており、かつ視野内で偏りなく均一に存在している様子がみてとれる。この凹凸構造の平均的な周期が、図2における散乱光の極大に対応しているものと考えられる。
【0139】
実施例2
密着層2上に、第2の塗布液Aを、ワイヤーバー#24を用いて塗布した後、50℃の防爆オーブン内で25秒間放置し、溶媒を蒸発させた。その後、コートフィルムを実施例1と同様にして紫外線硬化処理を行い、ハードコート性および表面凹凸構造を有する防眩層を形成した。コート層全体の厚み(密着層+防眩層)は34μmであった。
【0140】
実施例3
密着層3上に、第2の塗布液Aを、ワイヤーバー#24を用いて塗布した後、50℃の防爆オーブン内で25秒間放置し、溶媒を蒸発させた。その後、コートフィルムを実施例1と同様にして紫外線硬化処理を行い、ハードコート性および表面凹凸構造を有する防眩層を形成した。コート層全体の厚み(密着層+防眩層)は33μmであった。
【0141】
実施例4
密着層4上に、第2の塗布液Aを、ワイヤーバー#24を用いて塗布した後、50℃の防爆オーブン内で25秒間放置し、溶媒を蒸発させた。その後、コートフィルムを実施例1と同様にして紫外線硬化処理を行い、ハードコート性および表面凹凸構造を有する防眩層を形成した。コート層全体の厚み(密着層+防眩層)は34μmであった。
【0142】
実施例5
密着層5上に、第2の塗布液Aを、ワイヤーバー#24を用いて塗布した後、50℃の防爆オーブン内で25秒間放置し、溶媒を蒸発させた。その後、コートフィルムを実施例1と同様にして紫外線硬化処理を行い、ハードコート性および表面凹凸構造を有する防眩層を形成した。コート層全体の厚み(密着層+防眩層)は33μmであった。
【0143】
実施例6
密着層6上に、第2の塗布液Aを、ワイヤーバー#24を用いて塗布した後、50℃の防爆オーブン内で25秒間放置し、溶媒を蒸発させた。その後、コートフィルムを実施例1と同様にして紫外線硬化処理を行い、ハードコート性および表面凹凸構造を有する防眩層を形成した。コート層全体の厚み(密着層+防眩層)は33μmであった。
【0144】
実施例7
密着層5上に、第2の塗布液Bを、ワイヤーバー#28を用いて塗布した後、70℃の防爆オーブン内で20秒間放置し、溶媒を蒸発させた。その後、コートフィルムを実施例1と同様にして紫外線硬化処理を行い、ハードコート性および表面凹凸構造を有する防眩層を形成した。コート層全体の厚み(密着層+防眩層)は36μmであった。
【0145】
実施例8
密着層6上に、第2の塗布液Bを、ワイヤーバー#30を用いて塗布した後、70℃の防爆オーブン内で20秒間放置し、溶媒を蒸発させた。その後、コートフィルムを実施例1と同様にして紫外線硬化処理を行い、ハードコート性および表面凹凸構造を有する防眩層を形成した。コート層全体の厚み(密着層+防眩層)は38μmであった。
【0146】
実施例8で得られた防眩性フィルムの透過光散乱測定結果を図2に示す。図から明らかなように散乱角度0.7°付近に散乱光にピーク極大が見られる。
【0147】
防眩性フィルムの表面をレーザー顕微鏡で観察した結果を図4に示す。凸部は独立した島状に形成されており、かつ視野内で偏りなく均一に存在している様子がみてとれる。この凹凸構造の平均的な周期が、図2における散乱光の極大に対応しているものと考えられる。
【0148】
比較例1
環状オレフィン系ポリマーフィルム(1)上に、第2の塗布液Aを、ワイヤーバー#22を用いて塗布した後、50℃の防爆オーブン内で25秒間放置し、溶媒を蒸発させた。その後、コートフィルムを実施例1と同様にして紫外線硬化処理を行い、ハードコート性および表面凹凸構造を有する防眩層を形成した。コート層全体の厚み(防眩層)は12μmであった。
【0149】
比較例2
密着層2上に、第2の塗布液Cを、ワイヤーバー#22を用いて塗布した後、70℃の防爆オーブン内で20秒間放置し、溶媒を蒸発させた。その後、コートフィルムを実施例1と同様にして紫外線硬化処理を行い、ハードコート性および表面凹凸構造を有する防眩層を形成した。コート層全体の厚み(密着層+防眩層)は31μmであった。
【0150】
実施例1〜8および比較例1〜2で得られた防眩性フィルムについて、以下のようにして、全光線透過率、ヘーズ、内部ヘーズ、透過像鮮明度、透過散乱光強度の極大を示すピーク角度、塗膜密着性、鉛筆硬度を測定した。また、以下のようにして、液晶表示装置に実装して防眩性などを評価した。
【0151】
[ヘーズおよび全光線透過率測定]
日本電色(株)製 ヘーズメーター(商品名「NDH−5000W」)を用いて測定した。全体ヘーズの測定は、防眩性フィルム単体で、防眩層側を受光器側に配置し測定した。
【0152】
内部ヘーズの測定は、防眩性フィルムの防眩層側に透明両面粘着糊(厚み約25μm)を貼り、その上に基材フィルムとして用いた環状オレフィン系ポリマーフィルム(1)を貼り合わせて、表面凹凸をなくした状態でヘーズ測定を行った。
【0153】
[透過像鮮明度測定]
写像測定器(スガ試験機(株)製、商品名「ICM−1T」)を用いて、光学櫛(櫛歯の幅=0.5mm)を用いて、JIS K7105に基づいて測定した。
【0154】
[透過散乱光強度測定]
防眩性フィルムを透過した光の角度分布は、図1に示すような光源にHe−Neレーザーを用いゴニオメーターに設置した光受光器を備えた測定装置(レーザ光散乱自動測定装置:ネオアーク(株)製)を用いて測定した。透過散乱光強度のピークの判定としては、散乱光強度の角度分布プロファイルにおいて、ピーク状に分離、ショルダー状ピーク、平坦状ピークである場合も極大値とみなして、その角度をピーク角度とした。
【0155】
[塗膜密着性評価方法]
塗膜密着性は、防眩層の上からカッターにより2mm間隔で縦方向及び横方向にそれぞれ6本の切れ目を入れて2mm角四方の碁盤目25個を作製し、セロハン粘着テープ(ニチバン(株)製)を密着させ、手で急速に引っ張り、剥離しなかった碁盤目の数で評価した。
【0156】
[鉛筆硬度測定]
硬度はJIS K5400に従って評価した。但し、荷重は500gとした。
【0157】
[実装評価]
液晶表示装置(シャープ(株)製「アクオスLC20AX5」)を使用し実装評価を行なった。なお、表層側偏光板はクリアタイプの偏光板に貼り替え、その上に実施例1〜8及び比較例1〜2の防眩性フィルムを透明両面粘着糊で貼りつけ、以下の基準で目視にて評価した。
【0158】
(防眩性)
蛍光管がむき出しの蛍光灯をパネル表面に反射させて、蛍光管の輪郭がぼかされているかどうかを目視で観察し、以下の基準で評価した。
【0159】
◎:蛍光灯の輪郭が全く映り込まない
○:蛍光灯の輪郭の映り込みはわずかに認められるが、気にならないレベルである
△:蛍光灯の輪郭の映り込みが認められ、気になるレベルである
×:強く蛍光灯の輪郭が映り込み、非常に気になる
【0160】
(黒味)
明室環境において、黒表示をしたとき、表面が黒く感じるかどうかを目視で観察し、以下の基準で評価した。
【0161】
◎:表面が非常に黒く感じる
○:表面が黒く感じる
△:表面があまり黒く感じない
×:表面が殆ど黒く感じない
【0162】
(ギラツキ)
外光が映り込まない環境において、液晶の表示を緑表示とし、液晶パネルとの距離約50cmの位置にて目視で観察し、以下の基準で評価した。
【0163】
◎:ギラツキを全く感じない
○:ギラツキを感じない
△:ギラツキをわずかに感じる
×:ギラツキを感じる
結果を表2に示す。
【0164】
【表2】

【0165】
表2から明らかなように、実施例1〜8の防眩性フィルムは、塗膜密着性にも優れ、高い鉛筆硬度を有するだけではなく、相分離による均一な凹凸構造のため、防眩性に有効な反射光特性を有し、実装評価においても優れた特性を有している。これに対して、比較例1の防眩性フィルムは、相分離型防眩層が形成されているため、光学特性は優れているが、塗膜密着性が極めて低い。また、比較例2の防眩性フィルムは微粒子による凹凸形成であり、内部ヘーズのため実装評価において黒味に劣り、凹凸に粗密があるためギラツキがやや認められる。
【図面の簡単な説明】
【0166】
【図1】図1は透過散乱光特性(透過散乱光の角度分布)を測定するための装置を示す概略図である。
【図2】図2は実施例1及び実施例8で得られた防眩性フィルムの透過散乱光の角度分布を測定した結果を示すグラフである。
【図3】図3は実施例1で得られた防眩性フィルムの表面凹凸形状を示すレーザー反射顕微鏡写真である。
【図4】図4は実施例8で得られた防眩性フィルムの表面凹凸形状を示すレーザー反射顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状オレフィン系ポリマーで構成された基材フィルムと、密着層を介して、この基材フィルムに形成された防眩層とを有する防眩性フィルムであって、前記密着層が脂環式炭化水素環を有するモノ又はジ(メタ)アクリレート及び橋架環式炭化水素環を有するモノ又はジ(メタ)アクリレートから選択された少なくとも一種の硬化性成分を含む硬化性組成物の硬化層で形成され、前記防眩層が、相分離可能な複数の成分を含み、かつ少なくとも1つの成分が硬化性成分である硬化性樹脂組成物の硬化層で形成され、かつ相分離構造を有するとともに、表面に凹凸構造を有する防眩性フィルム。
【請求項2】
密着層を形成する硬化性組成物が、硬化性成分全体に対して請求項1記載の硬化性成分を30重量%以上の割合で含む請求項1記載の防眩性フィルム。
【請求項3】
密着層を形成する硬化性組成物が、さらにセルロース誘導体を含む請求項1又は2記載の防眩性フィルム。
【請求項4】
防眩層が、複数の光重合性基を有する活性エネルギー線硬化性樹脂前駆体と、少なくとも1つのポリマー成分とで構成されており、前記硬化性樹脂前駆体及びポリマー成分のうち少なくとも2つの成分が液相からの相分離による相分離構造を有しているとともに、前記硬化性樹脂前駆体が硬化している請求項1〜3のいずれかに記載の防眩性フィルム。
【請求項5】
硬化性樹脂組成物が、複数の(メタ)アクリロイル基を有する多官能性(メタ)アクリレートを含み、ポリマー成分が、セルロース誘導体と、(メタ)アクリロイル基を有するポリマー成分とを含む請求項1〜4のいずれかに記載の防眩性フィルム。
【請求項6】
密着層が、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートと、セルロースエステル類とで形成され、防眩層が、多官能性(メタ)アクリレートと、セルロースエステル類と、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有するポリマー成分とで形成されている請求項1〜5のいずれかに記載の防眩性フィルム。
【請求項7】
入射光を等方的に透過して散乱し、かつ散乱光強度の極大値を示す散乱角が0.1〜10°であり、全光線透過率が80〜100%である請求項1〜6のいずれかに記載の防眩性フィルム。
【請求項8】
全ヘーズが1〜25%、内部ヘーズが0〜1%、0.5mm幅の光学櫛を用いた写像性測定器で測定した透過像鮮明度が25〜75%である請求項1〜7のいずれかに記載の防眩性フィルム。
【請求項9】
防眩層が、碁盤目剥離試験による碁盤目の残存率90%以上であり、鉛筆硬度H以上である請求項1〜8のいずれかに記載の防眩性フィルム。
【請求項10】
環状オレフィン系ポリマーで構成された基材フィルム上に、脂環式炭化水素環を有するモノ又はジ(メタ)アクリレート及び橋架環式炭化水素環を有するモノ又はジ(メタ)アクリレートから選択された少なくとも一種の硬化性成分を含む硬化性組成物の第1の塗布液を塗布する工程と、相分離可能な複数の成分を含み、かつ少なくとも1つの成分が硬化性成分である硬化性樹脂組成物と溶媒とを含む第2の塗布液を塗布する工程と、前記溶媒の蒸発に伴う相分離により相分離構造を形成させる工程と、前記組成物中の硬化性成分を硬化させる工程とを含む防眩性フィルムの製造方法。
【請求項11】
トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートと、セルロース誘導体と、光重合開始剤と、これらの成分を可溶な溶媒とを含む第1の塗布液を塗布し、複数の(メタ)アクリロイル基を有する多官能性(メタ)アクリレートと、セルロース誘導体と、(メタ)アクリロイル基を有するポリマー成分と、光重合開始剤と、これらの成分を可溶な溶媒とを含む塗布液を塗布し、相分離により相分離構造を形成し、光照射して密着層及び防眩層を形成する請求項10記載の製造方法。
【請求項12】
基材フィルムを表面処理することなく第1の塗布液及び第2の塗布液を塗布する請求項10又は11記載の製造方法。
【請求項13】
請求項1記載の防眩性フィルムを備えた表示装置。
【請求項14】
液晶表示装置、陰極管表示装置、プラズマディスプレイ、及びタッチパネル式入力装置から選択された表示装置である請求項13記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−66470(P2010−66470A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−232197(P2008−232197)
【出願日】平成20年9月10日(2008.9.10)
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】