説明

防空システム

【課題】防衛上の弱点を簡易に克服することの可能な防空システムを提供すること。
【解決手段】電波の送信装置6とエコーを受信する受信装置7とを別個に配置し、いずれも目標情報ネットワークシステム1に接続することにより防空システムを形成する。そして、送信装置6にデコイとしての役割を併せ持たせるようにすることで、ARMのような電波追尾型の脅威に対しても対応可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は防空システムに関する。
【背景技術】
【0002】
防空システムは、レーダ(以下センサと称する)や迎撃装置のような複数の要素が絡み合って形成される。比較的小規模な防空システム(例えば特許文献1を参照)で用いられるセンサは、空間に放射した電波のエコーから、侵攻目標を探知・追随し、目標への対処を行う。
【0003】
ところで、我が国を防衛する上で、ARM(Anti Radar Missile)と呼ばれる侵攻脅威が存在する。この種の飛翔体(侵攻目標)はセンサが放出する電波に反応し、その防空システムが放射する電波に向かって攻撃を仕掛けてくる。この攻撃から逃れるための最善策は電波を放出しないことであるが、そうすると侵攻して来る目標を探知することができない。結局のところ防空システム本来の能力を発揮することができないことになる。
【特許文献1】特開2004−239561号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
敵側にARMを使用された場合、現状の防空システムではシステムが破壊されるか、あるいは、ARMを避けようとして電波放射を停止すると侵攻目標を探知できずに敵の侵攻を許すか、いずれかの結果が待ち受ける。このように敵の侵攻に対し対処不可能な場合があることは防衛上の弱点となり、侵攻側にとっては格好の侵攻ポイントとなるので、何らかの対処が望まれる。
この発明は上記事情によりなされたもので、その目的は、防衛上の弱点を簡易に克服することの可能な防空システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するためにこの発明の一態様によれば、電波を放射する複数の電波源と、前記電波源とは異なる場所に設けられ、前記複数の電波源の少なくともいずれか1つから放射された電波のエコーを受信解析して目標情報を得る受信手段と、前記目標情報に基づいて要撃目標に対する防空処置を行う防空単位と、前記受信手段と前記防空単位との通信環境を形成する通信手段とを具備することを特徴とする防空システムが提供される。
【0006】
このような手段を講じることにより、レーダとしての機能を持つ手段が、通常のセンサとは異なる態様で、いわばレーダ波の送信機(電波源)と受信機(受信手段)とが別体として形成される。ARMはこのうち電波源に向かって飛来し破壊するが、レーダとしての機能自体は他の電波源が生存している限り、失われない。つまり複数の電波源が擬似センサ(デコイ)として機能することになるので、ARMのような要撃目標に対しても容易に対応することが可能になり、防空能力を向上させることが可能になる。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、防衛上の弱点を簡易に克服することの可能な防空システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は、この発明に係る防空システムの実施の形態を示すシステム図である。このシステムはSAMシステムなどの、地上に配備される比較的小規模な防空システムに好適に利用できる。図1のシステムは、目標情報ネットワークシステム1を中核として形成される。この目標情報ネットワークシステム1には複数の地上装置21〜2n、ネットワークFCS(Fire Control System)31,32、および複数の飛行船41〜4m,4nが有線または無線を介して接続される。このうち飛行船は例えば成層圏プラットフォームであり、地上装置21〜2nは例えば防空レーダや指揮所、指令所、SAMシステムなどのレーダ設備もしくは、レーダ装置である。ネットワークFCS31,32、および飛行船41〜4m,4nは目標情報ネットワークシステム1を通信環境として利用して介して互いに情報を授受しあい、脅威目標(要撃目標)への対処を行う。
【0009】
ネットワークFCS31,32はいずれも例えばSAM(Surface to Air Missile)を発射できるようなLAU(飛翔体発射装置)5を備える。LAU5は、要撃目標に対する防空処置を行ういわゆる防空単位としての機能を担う。ネットワークFCS31はセンサを備えていないが、他のシステム、もしくは装置のセンサから目標情報ネットワークシステム1を介して目標の位置、速度、方位、数などといった目標情報を取得する。
【0010】
地上装置21,2n、飛行船44,45,4nは、電波源としての送信装置6を備える。地上装置22、飛行船41,42,43,4mは、送信装置6から放射された電波のエコーを受信するための受信装置7を備える。このように送信装置6と受信装置7とはそれぞれ異なる場所に設けられる。両者の位置が異なることは、例えば目標情報ネットワークシステム1を介したデータリンクにより補完できる。なおいずれかの送信装置は、到来する目標に向け電波を放射する機能を持つ。
【0011】
図1のシステムにおいて、侵攻目標(ARM)10が飛来すると、その目標情報が取得されて目標情報ネットワークシステム1に流される。これに応じてFCSからLAU5に迎撃指令が発せられ、迎撃飛翔体100がいずれかのLAU5から発射される。間に合えば、見方側への損害を受ける前に侵攻目標10を破壊することができる。
【0012】
一方、侵攻目標10は送信装置6から放射される電波を捕捉していずれかの送信装置6に向かって飛来する。例えば地上装置2nの搭載する送信装置6が捕捉され、迎撃が間に合わなければ地上装置2nはダメージを受けることになる。
しかしながら送信装置6は複数あるので、まだ残りが生存している。この残った送信装置6により取得された目標情報が依然として目標情報ネットワークシステム1に流されるので、防御能力自体が極度に低下することは極めて少ない。
【0013】
図2は、図1のシステムにおける処理手順の一例を示すフローチャートである。図2において、送信機による捜索(ステップS1)により侵攻目標10が探知されると(ステップS2)、受信機による探知・追随フェースに入る(ステップS3)。これにより得られた目標情報は目標情報ネットワークシステム1に流され(ステップS4)、ネットワークFCS32にまで伝達される。これにより侵攻目標要撃フェーズに入り(ステップS5)、目標は撃破される(ステップS6)。
【0014】
図3は、図1のシステムにおける処理手順の他の例を示すフローチャートである。図3において、デコイとしての送信機、および真の送信機によりそれぞれ捜索フェーズが実行され(ステップS10,S11)、2つの侵攻目標が検知されたとする(ステップS12,S14)。このうちデコイ送信機は撃破されたとしても(ステップS13)、もう一方の送信機により得られた情報から受信機による探知・追随フェースが開始される(ステップS15)。これにより得られた目標情報は目標情報ネットワークシステム1に流され(ステップS16)、ネットワークFCS32にまで伝達される。これにより侵攻目標要撃フェーズに入り(ステップS17)、最終的に目標は撃破される(ステップS18)。
【0015】
このように本実施形態では、電波の送信装置6と侵攻目標からの反射エコーを受信する受信装置7とを別個に配置し、いずれも目標情報ネットワークシステム1に接続することにより防空システムを形成する。そして、送信装置6にデコイとしての役割を併せ持たせるようにすることで、ARMのような電波追尾型の脅威に対しても対応可能とするようにしている。すなわち、本来の目標を探知・追随するセンサを敵(目標)の攻撃から守り、当初の防空能力を維持しながら、侵攻して来る敵(目標)に対しても対処可能としている。
【0016】
以上をまとめると、全方位に対して強電波を送信できる複数の飛行船(デコイ)を設置することにより、侵攻して来るARMは、強電波の発せられている方向へ飛しょうし、その飛行船を撃破する。ここで、飛行船は複数設置(浮遊)していずれも電波を送信しているので、防空システムとしての機能は失われない。また、侵攻目標方向に対して強電波を送信できる送信装置6を地上にも複数設置することにより、同じ作用を得ることが出来る。
このように本実施形態によれば、電波に対して反応する(攻撃して来る)侵攻目標から防空システムを守ることが容易に可能となり、防空システムにおける弱点を克服することができる。
【0017】
なお、この発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素に対し、幾つかの構成要素を追加、もしくは削除してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明に係る防空システムの実施の形態を示すシステム図。
【図2】図1のシステムにおける処理手順の一例を示すフローチャート。
【図3】図1のシステムにおける処理手順の他の例を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0019】
1…目標情報ネットワークシステム、21〜2n…地上装置、31,32…ネットワークFCS、41〜4m,4n…飛行船、5…飛翔体発射装置(LAU)、6…送信装置、7…受信装置、10…侵攻目標(ARM)、100…迎撃飛翔体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波を放射する複数の電波源と、
前記電波源とは異なる場所に設けられ、前記複数の電波源の少なくともいずれか1つから放射された電波のエコーを受信解析して目標情報を得る受信手段と、
前記目標情報に基づいて要撃目標に対する防空処置を行う防空単位と、
前記受信手段と前記防空単位との通信環境を形成する通信手段とを具備することを特徴とする防空システム。
【請求項2】
前記複数の電波源の少なくとも1つは、飛行船に搭載されることを特徴とする請求項1に記載の防空システム。
【請求項3】
前記複数の電波源の少なくとも1つは、地上に設置されることを特徴とする請求項1に記載の防空システム。
【請求項4】
前記複数の電波源の少なくとも1つは、前記要撃目標に向け前記電波を放射することを特徴とする請求項1に記載の防空システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−224194(P2008−224194A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−67242(P2007−67242)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】