説明

防草目地材、及び防草目地材の施工方法

【課題】長期間にわたって安定的に雑草の繁殖を抑えることが可能であるとともに、作業時の作業者負担を軽減し、かつ施工対象が濡れている場合であってもそのまま作業を継続することが可能な防草目地材の提供を課題とする。
【解決手段】防草目地材1は、粒径の調製された細粒状の珪砂4と、珪砂4よりも大きい粒径を有し、粒状に形成されたPP樹脂5と、ヒマシ油6とを具備して主に構成されている。そして、三種類の成分を均一に分散するように混合し、得られた粘土状の混合物を押出成型機を利用して、断面円形状の長棒状体になるように押出成形して構成される。また、防草目地材1を界面隙間Wに施工する場合には、界面隙間Wに防草目地材1を載置し、押圧して界面隙間Wの空間に密着させた後に防草目地材1に火炎Fを近接させて着火し、防草目地材1に含まれる可燃成分を燃焼させることによって行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防草目地材、及び防草目地材の施工方法に関するものであり、特に、アスファルト舗装された舗装材とコンクリート製の縁石ブロックの隙間から成長する雑草の繁殖を抑制可能な防草目地材、及び防草目地材の施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、アスファルト舗装等が施された道路において、車道部分の側方に雨水等を流出させるためのコの字形状或いはU字形状のコンクリート製の側溝を配設したり、車道及び歩道の間に段差を設けたコンクリート製の縁石ブロック等が設置されることがある。さらに高速道路や主要幹線道路等では、対向車線との境界をコンクリート製の構造物(中央分離帯)で区画することも行われている。
【0003】
ここで、側溝、縁石ブロック、中央分離帯等は、上述したように、主にコンクリート製の資材を利用して構築されており、車道部分或いは歩道部分を構成する一般的なアスファルト舗装とは別の素材である。そのため、これらの間には必然的に境界(界面)が存在している。さらに、側溝等のコンクリート製の構造物は、車道の長さに応じて複数個を連続して配設するものであり、これらのコンクリート製の構造物同士の間にも必然的に界面が存在することになる。なお、上述した境界、隙間、及び界面等を総称し、本明細書においては、「界面隙間」と定義する。
【0004】
アスファルト舗装、側溝等のコンクリート製の構造物の下方は、砂利等を敷設した基礎部分が設けられ、さらにその下層には土壌が存在している。上記界面隙間を介して、基礎部分及び土壌に酸素を供給することができ、かつ外界に対して開放されているため、界面隙間は太陽光の照射を受けることができる。その結果、土壌中に混在した雑草の種子が発芽し、上記界面隙間から成長したり、或いは風等によって飛散した雑草の種子が、アスファルト舗装及び側溝等の間の僅かに凹んだ界面隙間に落下し、当該界面隙間から雑草が繁殖することがある。
【0005】
ここで、雑草の繁殖が著しく進行すると、雑草によってアスファルト舗装や縁石ブロック自体に応力が加わり、或いは土壌や基礎部分の耐久性が低下することによって、アスファルト舗装等自体の強度低下を引起し、破損する等の問題を生じることがあった。さらに、中央分離帯で多く繁殖した雑草は、運転者の視界を妨げる可能性もあり、かつ周囲の美観を損なう結果ともなっていた。そのため、道路を管理する地方自治体や公団等の道路管理団体は、道路周辺に繁殖した雑草を除去する作業を定期的に行う必要があった。しかしながら、それぞれの自治体や道路管理団体等が管理する道路の総延長距離は膨大なものとなり、全ての道路に対して雑草除去の作業を行うことは作業時間及び作業コストが膨大となり、かつ雑草を抑制するための本質的な解決策とはならないことが多かった。
【0006】
上記課題に対し、界面隙間から繁殖する雑草を抑制する対策も行われている。例えば、アスファルト舗装を施工する前の土壌或いは基礎部分に対し、除草剤等の植物成長を抑制する薬剤を散布し、土壌中に混在している雑草或いはその種子を死滅させることを行っている。これにより、界面隙間からの雑草の繁殖をある程度抑えることができる。しかしながら、上述したように、風等によって運ばれた種子に対しては、その成長を抑えることができず、十分な対策をとることはできなかった。
【0007】
一方、アスファルトとゴム系素材の高分子物質とを混合した混合物に除草剤を添加し、混合物を界面隙間の目地部分に注入する防草注入目地材及びこれらを用いた施工方法についての開発が進められている(特許文献1参照)。これにより、界面隙間から繁殖する雑草の成長に必要な酸素及び太陽光を遮断することができる。また、界面隙間に沿って広幅帯状のシールを貼着し、界面隙間を遮蔽する防草構造に関する技術の開発も進められている(特許文献2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記雑草繁殖の抑制に関する技術については、いくつかの問題点を有することがあった。すなわち、防草注入目地材を注入する方法は、防草注入目地材に含まれる除草剤の効果によって雑草繁殖を抑制するものであった。そのため、雨水等によって防草注入目地材に含まれる除草剤が流出したり、或いは経年変化によって除草剤の効果が効かなくなる場合があった。そのため、施工直後は雑草の抑制効果はあるものの、数年後には再び雑草が繁殖した状態に戻ってしまうことがあった。加えて、防草注入目地材に使用される高分子物質は、天然ゴムやブタジエンゴム等のゴム系素材を主に使用するものであり、太陽光の紫外線に長期間晒されることによって、防草注入目地材の耐久性自体に問題が残ることがあった。その結果、界面隙間に注入された防草注入目地材が界面隙間から容易に離脱してしまう可能性があった。さらに、界面隙間に防草注入目地材を注入する施工時にも不具合を生じることがあった。すなわち、防草注入目地材は、アスファルト及びゴム系の高分子物質を含有するものであり、注入後にアスファルト及び高分子物質が固化するまでに多くの時間が必要であった。さらに、施工の際には界面隙間に含まれる水分を除去する必要があり、注入前の前処理工程、注入後に固化が完全に完了するまでの管理等に多くの作業が必要であった。そのため、作業性の点で問題を生じていた。
【0009】
一方、広幅帯状のシールを界面隙間に貼着するものは、当該シールによって界面隙間への太陽光の照射を防ぎ、光合成を抑制することが可能であり、上記防草注入目地材に比べて簡易な作業で完了するため、作業性の点においては優れていた。しかしながら、界面隙間へのシールの貼着は、シールの一面に設けられた接着層の接着力によるものであり、経年変化によって接着力が低下したり、界面隙間の周囲に存在する夾雑物によって十分な接着ができない場合があった。さらに、界面隙間の周囲が雨水等によって濡れた状態にある場合には、接着力が低下するため当該作業を行うことができず、十分に乾燥するまで作業を中止したり、或いは乾燥装置等を用いて強制的に乾燥させる必要があった。そのため、シールの貼着作業が種々の要因によって阻害される虞があった。
【0010】
そこで、本発明は、上記実情に鑑み、長期間にわたって安定的に雑草の繁殖を抑えることが可能であるとともに、作業時の作業者負担を軽減し、かつ施工対象が濡れている場合であってもそのまま作業を継続することが可能な防草目地材、及び防草目地材の施工方法の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、本発明の防草目地材は、「珪砂と、非晶性ポリアルファオレフィン樹脂と、油脂成分と」を具備するものから主に構成されている。
【0012】
ここで、珪砂とは、花崗岩や珪岩が自然変化によって細粒状に変化したものであり、建材等の骨材の一部として使用される無機系物質の一種である。なお、珪砂は、後述の非晶性ポリアルファオレフィン樹脂及び油脂成分との分散性を良好とするために、予め粒径調製された所定サイズのものを採用している。例えば、0.3mm以上、1.2mm以下の粒径を有する4号または5号、或いはそれ以下の粒径の珪砂を利用することが可能である。
【0013】
一方、非晶性ポリアルファオレフィン樹脂(APAO:Amorphous poly alpha olefin)とは、アルファオレフィン(α−オレフィン)を低圧プロセスによって共重合させたものであり、例えば、アタクチックポリプロピレン、プロピレン及びエチレンの共重合体、プロピレン及びブテンの共重合体、或いはプロピレン、エチレン、及びブテンの三元共重合体等が知られている。ここで、非晶性ポリアルファオレフィン樹脂の一種である非晶性ポリプロピレン樹脂の場合、主鎖に対してメチル基がランダムに結合したものであり、非対称ポリプロピレン(アタクチックポリプロピレン)の一種である。この非晶性ポリプロピレン樹脂は、半硬質または軟質性状を呈し、マイナス30℃程度までの軟質性状(柔軟性)を失わない性質を有しており、粘着性状を呈するものである。一方、油脂成分とは、上記珪砂及び非晶性ポリプロピレン樹脂を撹拌混合し、混合物として形成する際の「つなぎ」としての機能を有するものであり、植物由来の植物性油脂、動物由来の動物性油脂、或いは工業系の鉱物油等の種々の油脂を任意に選択し、使用することが可能である。但し、コスト等の観点から入手容易であり、かつハンドル性に優れる植物性油脂等の使用が好適と考えられる。
【0014】
したがって、本発明の防草目地材によれば、珪砂、非晶性ポリアルファオレフィン樹脂、及び油脂成分を含む防草目地材によって、アスファルト舗装と縁石ブロック等との間に形成された界面隙間から繁殖する雑草を抑制することができる。上述した三種の構成を所定の配合比率で計量し、界面隙間に充填することにより、雑草の種子の発芽等を抑え、界面隙間からの成長を抑制することができる。なお、防草目地材を界面隙間に充填した後に、火を着け、油脂成分等の可燃成分を燃焼させ、珪砂及び非晶性ポリアルファオレフィン樹脂を焼き固めることもできる。
【0015】
さらに、本発明の防草目地材は、上記構成に加え、「前記珪砂、前記非晶性ポリアルファオレフィン樹脂、及び前記油脂成分を撹拌混合した粘土状混合物を成形してなる」ものであっても構わない。
【0016】
したがって、本発明の防草目地材によれば、上記三種類の成分を撹拌混合し、粘土状混合物を形成し、成形することによって構成されている。ここで、成形された形状としては、例えば、直径約1.5cm程度の断面円形状を有する細長円柱状の長棒状体、或いは長片状の板状部材に構成するものであっても構わない。なお、粘土状混合物自体が応力に対して変形可能に形成されるため、長棒状体等の状態であっても自由に曲がることが可能となる。そのため、界面隙間の大きさ及び形状に合わせて容易に充填することが可能となる。さらに、ナイフ等によって必要な長さに任意にカットすることもできる。
【0017】
さらに、本発明の防草目地材は、上記構成に加え、「前記油脂成分は、ヒマシ油で」あっても構わない。
【0018】
したがって、本発明の防草目地材によれば、油脂成分としてヒマシ油が用いられる。ここで、ヒマシ油は、トウゴマの種子から採取される植物油の一種であり、工業用原料或いは医薬品の原料として使用されるものである。そのため、安価であり、かつ入手が容易なものである。さらに、珪砂及び非晶性ポリアルファオレフィン樹脂とともに撹拌混合されることにより、適度な軟質性状を保って両者を混合する「つなぎ」として好適な粘度を有している。また、後述する防草目地材の施工において、界面隙間に充填した際の可燃成分として機能し、容易に着火が可能であり、適度な燃焼熱によって珪砂及び非晶性ポリアルファオレフィン樹脂を固化させることが可能となる。
【0019】
さらに、本発明の防草目地材は、上記構成に加え、「50重量%以上、65重量%以下の前記珪砂と、35重量%以上、45重量%以下の前記非晶性ポリアルファオレフィン樹脂と、2重量%以上、7重量%以下の前記油脂成分とを含有する」ものであっても構わない。
【0020】
したがって、本発明の防草目地材によれば、珪砂、非晶性ポリアルファオレフィン樹脂、及び油脂成分を上記の配合範囲で任意に調製することができる。ここで、防草目地材の配合の一例を示すと、150gの珪砂に対し、100gの非晶性ポリアルファオレフィン樹脂を混合し、さらに珪砂及び非晶性ポリアルファオレフィン樹脂の合計重量の5%に相当する12.5gの油脂成分を添加するものが挙げられる。これにより、適度な粘性及び柔軟性を有し、界面隙間への充填が可能となるとともに、防草目地材の充填後に燃焼させる場合の着火性及び燃焼性、及び燃焼時間も良好なものとなる。
【0021】
一方、本発明の防草目地材の施工方法は、「上記記載の防草目地材を使用した防草目地材の施工方法であって、雑草の繁殖する界面隙間に前記防草目地材を充填する防草目地材充填工程と、前記界面隙間に充填された前記防草目地材に着火する着火工程と、前記防止目地材に含まれる可燃成分を燃焼させる燃焼工程と」を主に具備して構成されている。
【0022】
したがって、本発明の防草目地材の施工方法によれば、界面隙間に調製された防草目地材を充填する。なお、防草目地材は前述した長棒状体の形態を利用し、界面隙間に沿って充填するもの、或いは粘土状混合物を直接充填するものであっても構わない。さらに、界面隙間の空間が大きい場合には、長棒状体の防草目地材を複数使って充填するものであっても構わない。その後、充填された防草目地材にバーナー等の着火手段によって火(火炎)を近づける。ここで、防草目地材には、石油系原料から合成された非晶性ポリアルファオレフィン樹脂及び可燃性の油脂成分(ヒマシ油等)が含まれているため、着火は容易に可能となる。そして、防草目地材に着火した火炎は、ヒマシ油等の上記可燃成分を自己消費しながら燃焼を継続する。そして、可燃成分が存在しなくなった段階で火炎は消失する。その結果、珪砂及び非晶性ポリアルファオレフィン樹脂が固化した物質が界面隙間に残存する。
【0023】
さらに、本発明の防草目地材の施工方法は、上記構成に加え、「前記防草目地材充填工程は、水分を含んだ濡れた前記界面隙間に前記防草目地材が充填される」ものであっても構わない。
【0024】
したがって、本発明の防草目地材の施工方法によれば、水分を含んだ濡れた状態の界面隙間にそのまま防草目地材が充填される。すなわち、前述したように、防草目地材を充填後に着火工程によって防草目地材に着火し、これを燃焼させる工程が行われる。したがって、従来の防草注入目地材等のように、界面隙間の状態に特にこだわることなく、防草目地材の施工を行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の防草目地材、及び防草目地材の施工方法によれば、三種類の成分を所定の配合比率で混合した粘土状混合物を利用し、或いは当該粘土状混合物を長棒状体に構成した防草目地体を利用し、アスファルト舗装及び縁石ブロック等の間に形成される目地部分(界面隙間)にこれを充填し、着火させることによって燃焼させて界面隙間を塞ぐことができる。これにより、雑草の繁殖を抑制することができる。さらに、界面隙間が水分を含んだ濡れた状態であっても、防草目地材の固化を行うことができ、防草目地材自体の耐久性を高めるとともに、作業性を良好なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態の防草目地材の概略構成を示す(a)配合表、(b)長棒状体の防草目地材の斜視図である。
【図2】本実施形態の防草目地材の施工方法の流れの一例を示すフローチャートである。
【図3】本実施形態の防草目地材の施工方法の流れの各工程を模式的に示す(a)載置工程、(b)防草目地材充填工程、及び(c)着火工程、(d)燃焼工程、及び(e)冷却工程及び施工完了の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一実施形態である防草目地材1、及び防草目地材の施工方法2(以下、単に「施工方法2」と称す)について、図1乃至図3に基づいて説明する。ここで、図1は本発明の一実施形態の防草目地材1の概略構成を示す(a)配合表3、(b)長棒状体の防草目地材1の斜視図であり、図2は本実施形態の施工方法2の流れの一例を示すフローチャートであり、図3は本実施形態の防草目地材の施工方法の流れの各工程を模式的に示す(a)載置工程S1、(b)防草目地材充填工程S2、及び(c)着火工程S3、(d)燃焼工程S4、及び(e)冷却工程S5及び施工完了S6の説明図である。
【0028】
本実施形態の防草目地材1は、図1乃至図3に示すように、4号または5号の粒径(0.3mm以上、1.2mm以下)に調製された細粒状の珪砂4と、珪砂4よりも大きい粒径(例えば、約5mm程度)を有し、粒状に形成された非晶性ポリプロピレン樹脂(以下、単に「PP樹脂5」と称す)と、ヒマシ油6とを具備して主に構成されている。ここで、ヒマシ油6が本発明の油脂成分に相当する。上述した三種類の各成分4,5,6は、予め規定された所定の配合比率に従って計量され、撹拌することによって粘土状を呈する物質として構築される。ここで、PP樹脂5が本発明における非晶性ポリアルファオレフィン樹脂に相当する。
【0029】
ここで、各構成成分の配合比率の具体例を示すと、図1(a)の配合表3に示されるように、珪砂4を57.14wt%、PP樹脂5を38.10wt%、及びヒマシ油6を4.76wt%の重量比で配合したものを示すことができる。これは、100gのPP樹脂5に対し、珪砂4を150g、さらにPP樹脂5及び珪砂4の合計重量に対し、5%のヒマシ油6を添加したものに相当する。
【0030】
次に、本実施形態の防草目地材1の製造の一例について説明する。図1(a)に示された配合表3にしたがって、各成分を予め計量しておく。そして、撹拌用の容器に上記三種類の成分を投入し、撹拌用プロペラを有するミキサー等の撹拌手段(図示しない)を利用して、均一に分散するように混合する。なお、撹拌用の容器及び撹拌手段等は周知の構成を利用することができる。また、上記撹拌は室温またPP樹脂5の溶融温度以上で行うことが可能である。このとき、珪砂4及びPP樹脂5はそれぞれ乾燥した物質であり、これらを撹拌しても均一に分散するだけである。本実施形態の防草目地材1では、両者(珪砂4及びPP樹脂5)の合計重量に対して5wt%のヒマシ油6を油脂成分として添加することにより、所定粘度の粘性を有する液体状のヒマシ油6が、一種の「つなぎ」としての機能を発揮し、珪砂4及びPP樹脂5が混じり合った粘土状(換言すれば、ペースト状またはクレイ状)の混合物とすることができる。この粘土状の混合物は、応力に対する変形性を示し、指などによって力(圧力)が加えられると、当該力に応じて容易に変形することができる柔軟性状(軟質性状)を有している。そのため、上記混合物を所望の形状に加工することは容易である。
【0031】
そこで、係る性状を利用し、従来から周知の押出成形機に、上述の粘土状混合物を投入し、長棒状体に押出成形した防草目地材1が構築される(図1(b)参照)。なお、押出成形する前の粘土状混合物の態様であっても雑草の繁殖効果は十分に可能であり、係る態様で使用するものであっても構わない。しかしながら、長棒状体の防草目地材1とすることで、その後の充填や着火等の施工作業を簡略化することができる。
【0032】
ここで、長棒状体に押出成形された防草目地材1は、直径が約1.5cm程度になる用に調製され、さらに押出長さは、約1mから1.5m程度に設定されている。これにより、押出成形後の防草目地材1を保管したり、或いは施工現場の道路まで搬送するのを容易にすることができる。さらに、粘土状混合物を押出成形したものであるため、長棒状体の状態であってもある程度の柔軟性を有している。そのため、応力に応じて自由に変形することができ、例えば、界面隙間Wに力を加えて密着させることもできる。
【0033】
次に、上述した製造方法によって製造された本実施形態の防草目地材1を使用した界面隙間Wに対する施工方法2について、主に図2及び図3に基づいて説明する。本実施形態の施工方法2は、車道及び歩道Bの間を段差を設けて区画するコンクリート製の縁石ブロックCにおいて、歩道B及び縁石ブロックCの間の界面隙間Wに対して防草目地材1を適用する例について説明を行うものとする。
【0034】
防草目地材1による施工を開始する前段階として、施工対象となる界面隙間W及びその周囲の車道及び歩道Bに繁殖している雑草の刈取作業及び界面隙間Wに溜まった夾雑物や砂利等を除去しておく(清掃工程S0)。係る除去及び清掃作業の際に、水を用いて夾雑物等を洗い流すものであって構わない。さらに、後述する着火作業の際に、周囲に延焼が広がるのを防ぐため、界面隙間Wの周囲から雑草、枯れ草を含む可燃物を完全に除去しておく必要がある。
【0035】
そして、長棒状体に押出成型された防草目地材1を界面隙間Wに載置する(載置工程S1:図3(a)参照)。ここで、界面隙間Wは、アスファルト舗装された歩道B及び縁石ブロックCのブロック上面C1に対して窪んで形成されている。そのため、載置された円柱状の防止目地材1は、横方向(図3における紙面左右方向に相当)への転動が規制される。なお、界面隙間Wは、歩道Bに沿って細長に形成されている。そのため、図2における紙面奥行き方向に向かって界面隙間Wが続いている。ここで、界面隙間Wの長さ(奥行き方向)に対し、防草目地材1の長さが短い場合には、複数の防草目地材1を連結して載置することができ、一方、防草目地材1の長さが界面隙間Wに対して短い場合には、ナイフ等で防草目地材1を所望の長さにカットすることができる。さらに、防草目地材1の断面形状に対し、界面隙間Wの幅や高さが大きい場合、すなわち、界面隙間Wによって防草目地材1の周囲が完全に囲まれている場合には、複数本の防草目地材1を積層し、歩道B及び縁石ブロックCのブロック上面C1に防草目地材1の少なくとも一部が突出している程度のものが望ましい。
【0036】
さらに、界面隙間Wに防草目地材1を載置した状態で上方から指等によって力を加える(充填工程S2:図3(b)参照)。このとき、軟質性状の防草目地材1は上述した力によって若干変形し、界面隙間Wの上に密着する。なお、本実施形態の施工方法2における載置工程S1及び充填工程S2を併せて本発明の防草目地材充填工程と定義する。その後、界面隙間Wに押圧によって密着した防草目地材1に対し、上方からバーナー(図示しない)によって火炎Fによる着火を行う(着火工程S3:図3(c)参照)。ここで、防草目地材1には、可燃成分であるヒマシ油6が含まれているため、バーナーの火炎Fが防草目地材1に近接されると、係るヒマシ油6によって容易に着火が可能となる。その後、着火した防草目地材1は、自己に含まれるヒマシ油6及び石油系材料から構成されるPP樹脂5の一部を利用し、かつこれらを消費しながら燃焼が継続して行われる(燃焼工程S4:図3(d)参照)。その結果、不燃性の珪砂4及びPP樹脂5の一部が固化して焼き固められた状態の防草目地材1が界面隙間Wに残存することになる。そして、可燃成分が全て消費されると火炎Fは消失する。なお、水などを掛けて強制的に燃焼を停止させるものであっても構わない。その後、燃焼工程S4によって高温となった防草目地材1を室温まで徐冷する(冷却工程S5:図3(e)参照)。これにより、防草目地材1の施工が完了する(施工完了S6:図3(e)参照)。なお、上述したように、燃焼前にブロック上面C1等から盛り上がった状態で防草目地材1を載置及び充填しているため、燃焼が終了し、施工が完了した後の防草目地材1は、ブロック上面C1等とほぼ同一面或いは僅かに盛り上がった状態で形成することが可能となる。
【0037】
これにより、歩道B及び縁石ブロックCの下方の土壌と外気との間を連通する界面隙間Wを本実施形態の防草目地材1で塞ぐことが可能となる。これにより、酸素の流通及び太陽光の照射を阻害することができる。その結果、植物の生育に必要な二つの要素を遮断することができる。さらに、充填工程S2及び燃焼工程S4によって、界面隙間Wと防草目地材1とを密着させることが可能どなり、防草目地材1の上に飛来した種子が当該箇所で根付く可能性がない。
【0038】
その結果、長期間に亘って安定的に雑草の繁殖を抑制する効果を享受できる。特に、除草剤等の存在が必要ないため、雨水等によって除草剤が流れ落ちる等の効果の減退の虞もほとんどない。さらに、施工時に着火工程S3及び燃焼工程S4によって可燃成分のヒマシ油6を燃焼させて熱を発生させるため、施工時の界面隙間Wの状況(特に、湿潤の状態)に左右されることなく作業を行うことができる。そのため、雨上がり直後の現場であっても上記した施工作業を行うことができ、効率的に発展させることが可能となる。
【0039】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0040】
すなわち、本実施形態の防草目地材1として、長棒状体に押出成形したものを使用したがこれに限定されるものではなく、その他の形状、或いは粘土状混合物として混合したままのものを直に界面隙間Wに塗布等により適用するものであっても構わない。例えば、本発明の別形態の防草目地材として次の製造方法によって製造される形状を示すことができる。始めに、PP樹脂5、硅砂4、及びヒマシ油6(油脂成分に相当)を混練り機に投入し、PP樹脂5の溶融温度以上に加熱しながら撹拌した混合物を型(例えば、長さ1000mm×幅500mm×厚さ25mm)に流し込む。これを冷却することによって平板状の防草目地材が形成される。その後、平板状の防草目地材を所定幅(例えば、7mm幅)にノコギリやカッター等で切断する。これにより、長片板状の防草目地材が構成される。係る製造方法は、押出成形よりも製造効率が良好なため、製造コストを安価にすることができる利点を有している。また、板形状とするため熱によって全体を均一に溶かすことが可能となる。さらに、防草目地材1の長さも施工対象の界面隙間Wに応じて任意に設定することができる。さらに、本実施形態の防草目地材1において示した、珪砂4、PP樹脂5、及びヒマシ油6の配合比率、さらには非晶性ポリアルファオレフィン樹脂としてPP樹脂5を使用する点及び油脂成分としてヒマシ油6を使用する点については、特に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 防草目地材
2 施工方法(防草目地材の施工方法)
3 配合表
4 珪砂
5 PP樹脂(非晶性ポリプロピレン樹脂、非晶性ポリアルファオレフィン樹脂)
6 ヒマシ油(油脂成分)
F 火炎
W 界面隙間
S1 載置工程(防草目地材充填工程)
S2 充填工程(防草目地材充填工程)
S3 着火工程
S4 燃焼工程
S5 冷却工程
S6 施工完了
【先行技術文献】
【特許文献】
【0042】
【特許文献1】特開平02−27004号公報
【特許文献2】特開平11−303040号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
珪砂と、
非晶性ポリアルファオレフィン樹脂と、
油脂成分と
を具備することを特徴とする防草目地材。
【請求項2】
前記珪砂、前記非晶性ポリアルファオレフィン樹脂、及び前記油脂成分を撹拌混合した粘土状混合物を成形してなることを特徴とする請求項1に記載の防草目地材。
【請求項3】
前記油脂成分は、
ヒマシ油であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の防草目地材。
【請求項4】
50重量%以上、65重量%以下の前記珪砂と、
35重量%以上、45重量%以下の前記非晶性ポリアルファオレフィン樹脂と、
2重量%以上、7重量%以下の前記油脂成分と
を含有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の防草目地材。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4に記載の防草目地材を使用した防草目地材の施工方法であって、
雑草の繁殖する界面隙間に前記防草目地材を充填する防草目地材充填工程と、
前記界面隙間に充填された前記防草目地材に着火する着火工程と、
前記防止目地材に含まれる可燃成分を燃焼させる燃焼工程と
を具備することを特徴とする防草目地材の施工方法。
【請求項6】
前記防草目地材充填工程は、
水分を含んだ濡れた前記界面隙間に前記防草目地材が充填されることを特徴とする請求項5に記載の防草目地材の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−112184(P2012−112184A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262649(P2010−262649)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(391051614)成瀬化学株式会社 (11)
【Fターム(参考)】