説明

防虫網を備えた窓開閉機構および防虫網

【課題】構成が簡単であり、取り付けも容易であり、駆動アームの形状如何に拘わらず(すなわち、駆動アームの移動軌跡に拘わらず)、容易に施工することができる防虫網を備えた窓開閉機構および防虫網を提供することを目的とする。
【解決手段】一側縁を枢支された窓20と該窓20の開口部21を閉鎖する防虫網23と前記窓20を前記防虫網23の室外側において開放および閉鎖する駆動手段28とを有する窓開閉機構24であって、前記防虫網23は、前記駆動手段28の貫通箇所に前記防虫網23の駆動手段28の逃がし開口部30を備えると共に、前記防虫網23を貫通して駆動する前記駆動手段28の開閉動作に追従可能な膨出袖部32を備えるよう構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば農業用温室や農業用ハウス(以下「農業用温室」という)の屋根等に設けられた開閉式の窓から害虫が侵入することを防止する防虫網を備えた窓開閉機構および防虫網に関するものであり、より詳しくは、前記防虫網を貫通して開閉動作する前記窓の駆動手段に拘わらず、効果的に隙間を閉鎖できると共に、スムースな開閉動作を行うことができる防虫網を備えた窓開閉機構および防虫網に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、農業用温室には、屋根に換気用又は採光用等のために窓(天窓等)が設けられるとともに、前記窓の開口部から害虫が侵入することがないように、又は、農作物栽培に使用する受粉用昆虫や天敵昆虫(生物農薬)が室内から逃げ出して生態系に悪影響を及ぼさないように、前記窓の開口部に防虫網が取り付けられているものがある。
【0003】
このような農業用温室として、例えば、図9に示されるように、垂木Aの上面に型材を介してガラス板を張り渡して屋根面Bを構成するとともに、該屋根面Bの一部に換気用の開口部Cを開口させており、しかもこの開口部Cには天窓Dが、その一側端部をヒンジEにより棟材Fの天窓支承部に回転自在に支承させてヒンジ機構を構成し、該ヒンジ機構を支点として、駆動アームG、リンク機構Hを介して駆動手段により同図の実線位置から鎖線位置にかけて開閉が自在に構成されており、しかも、前記開口部Cには防虫用の網枠Iが取り付けられているものがある。
【0004】
前記網枠Iは、図10に示すように、前記開口部C全体を覆うに十分な大きさの網Jを、前記駆動アームGの移動軌跡に合わせて2分割し、内部に防虫網を張り巡らせた網枠Iと、該両網枠Iの相互に対接する側の端部に取り付けられ、それぞれの端部を略接触させて両網枠I間の間隙を閉塞することのできるゴム板Kとからなり、両ゴム板K,Kによって前記駆動アームGを挟み込ませた状態のまま、その移動を行うように構成している。
【0005】
しかしながら、前記の窓開閉構造においては、前記駆動アームGの位置が常時移動しているわけではなく、特に天窓Dを全開にし、あるいは全閉状態に保持する場合には、前記駆動アームGがその位置に比較的長時間留まりやすいために、前記ゴム板Kの特定の箇所に前記駆動アームGよる曲げ癖ができやすく、また前記天窓Dを開閉する際において、前記駆動アームGの移動方向に対して横ぶれを起こし、両ゴム板K,Kのいずれか一方の側に偏ることがある。そして上記のいずれの場合においても両ゴム板K,K間に、部分的な隙間を生じ得る。
【0006】
これらの問題を解決するために、例えば、実開平05−74247号公報に記載の防虫網収納装置が提案されている。該防虫網収納装置は、図11および図12に示すように、開口部Lを防虫網Mで覆った前記開口部Lの外側において開閉する天窓Nと、温室内に設置され、前記防虫網Mを貫通する駆動アームOを介して前記天窓Nを開閉する駆動機構とを有するとともに、前記防虫網Mの前記駆動アームOの貫通箇所には、その中央に、少なくとも前記駆動アームOの移動範囲以上の小窓Pを開設したカバープレートQを嵌め込むとともに、前記駆動アームOには、これに追従移動が可能であって、しかも移動時においても前記カバープレートQの小窓Pを完全に覆うことのできるスライドプレートRを嵌め込み、しかも前記カバープレートQに対してスライド自在に重ね合わせて構成しており、これにより温室における前記開口部Lを覆う防虫網Mのシール性を向上させると共に、経時的使用によっても防虫効果の完全を期すことができるように構成されている。
【0007】
【特許文献1】実開平05−74247号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記実開平05−74247号公報に記載された防虫網を備えた窓開閉機構は、構造が複雑であり、部品点数等も多く、前記駆動アームOの移動範囲と前記カバープレートQの小窓Pを位置を合わせたうえで、取り付ける等の必要が生じ、施工時においても、取付工程が難しいものであった。さらに、例えば後述する図1乃至図7に示すように、駆動アームがV字状に広がって伸びるタイプの開閉機構を有する農業用温室では、構造上非常に複雑なものとなり、実際上取り付けることは困難である。
【0009】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、構成が簡単であり、取り付けも容易であり、駆動アームの形状如何に拘わらず(すなわち、駆動アームの移動軌跡に拘わらず)、容易に施工することができる防虫網を備えた窓開閉機構および防虫網を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の防虫網を備えた窓開閉機構は、一側縁を枢支された窓と該窓の開口部を閉鎖する防虫網と前記窓を前記防虫網の室外側において開放および閉鎖する駆動手段とを有する窓開閉機構であって、前記防虫網は、前記駆動手段の貫通箇所に前記防虫網の駆動手段の逃がし開口部を備えると共に、前記防虫網を貫通して駆動する前記駆動手段の開閉動作に追従可能な膨出袖部を備えてなることを特徴とする。
【0011】
請求項1に記載の防虫網を備えた窓開閉機構にあっては、前記防虫網は、駆動手段の逃がし開口部と前記駆動手段の開閉動作に追従可能な膨出袖部を取り付けるだけでよいので、構成が簡単であり、取り付けも容易であり、駆動アームの移動軌跡に拘わらず容易に製造することができ、さらに施工性も良いものとなる。
【0012】
請求項2に記載の防虫網は、一側縁を枢支された窓と該窓の開口部を閉鎖する防虫網と前記窓を前記防虫網の室外側において開放および閉鎖する駆動手段とを有する窓開閉機構に適用する防虫網であって、前記駆動手段の貫通箇所に前記防虫網の駆動手段の逃がし開口部を備えると共に、前記防虫網を貫通して駆動する前記駆動手段の開閉動作に追従可能な膨出袖部を備えてなることを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の防虫網にあっては、駆動手段の逃がし開口部と前記駆動手段の開閉動作に追従可能な膨出袖部を取り付けるだけでよいので、構成が簡単であり、取り付けも容易であり、駆動アームの移動軌跡に拘わらず容易に製造することができ、さらに、施工性も良いものとなる。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の防虫網を備えた窓開閉機構によれば、一側縁を枢支された窓と該窓の開口部を閉鎖する防虫網と前記窓を前記防虫網の室外側において開放および閉鎖する駆動手段とを有する窓開閉機構であって、前記防虫網は、前記駆動手段の貫通箇所に前記防虫網の駆動手段の逃がし開口部を備えると共に、前記防虫網を貫通して駆動する前記駆動手段の開閉動作に追従可能な膨出袖部を備えているので、前記防虫網は、駆動手段の逃がし開口部と前記駆動手段の開閉動作に追従可能な膨出袖部を取り付けるだけでよく、構成が簡単であり、取り付けも容易であり、駆動アームの移動軌跡に拘わらず容易に施工することができる。
【0015】
請求項2に記載の防虫網によれば、一側縁を枢支された窓と該窓の開口部を閉鎖する防虫網と前記窓を前記防虫網の室外側において開放および閉鎖する駆動手段とを有する窓開閉機構に適用する防虫網であって、前記駆動手段の貫通箇所に前記防虫網の駆動手段の逃がし開口部を備えると共に、前記防虫網を貫通して駆動する前記駆動手段の開閉動作に追従可能な膨出袖部を備えているので、前記防虫網にあっては、駆動手段の逃がし開口部と前記駆動手段の開閉動作に追従可能な膨出袖部を取り付けるだけでよく、構成が簡単であり、取り付けも容易であり、駆動アームの移動軌跡に拘わらず容易に製造することができ、さらに施工性も良いものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて具体的に説明する。
【0017】
(第1の実施の形態)
【0018】
図1は、本発明の第1の実施の形態にかかる防虫網を備えた窓開閉機構を有する農業用温室の概略斜視図であり、図2は、同農業用温室の要部断面図である。
【0019】
図1および図2において、10は連棟型の農業用温室であり、山型に組み合わされた屋根面11を複数棟連結して構成される。図中12は支柱であり、該支柱12は、横方向(梁行方向)と奥行方向(桁方向)に夫々複数本が立設されており、該支柱12上部には横方向に向けて梁材13を架設すると共に、これと直交する奥行方向において長尺の桁材14を架設している。
【0020】
該桁材14には奥行方向に向けて垂木材15が多数並設されており、該垂木材15は、天頂部16において、合掌状に逆斜面の垂木材15と連結しており、山型状の前記屋根面11を形成しており、また、前記天頂部16には、長尺状の棟材17を奥行方向に取り付けており、ガラス板18を張り渡して形成した屋根面11を支えると同時に、上部両側にはヒンジ受部17aを形成して天窓20を支承している。
【0021】
前記天窓20は、天窓上枠材20aと天窓下枠材20bと天窓側枠材20c,20dとを枠組みし、ガラス板を嵌め込んで形成しており、前記天窓上枠材20aの端部にはヒンジ部20eを形成して、前記棟材17に設けられたヒンジ受部17aに、回動自在に嵌合されている。
【0022】
そして、前記天窓20の開口部21には、前記屋根面と略面一となるように、網枠材22が嵌め込んでおり、該網枠材22に防虫網23を張設して、前記天窓20を換気等のために開放した場合に、前記開口部21からの害虫の侵入又は受粉用等昆虫の逃走を防止している。また、前記網枠材22には横桟22aが架設されており、前記防虫網23を上部防虫網23aと下部防虫網23bの二段に仕切っている。
【0023】
図中24は、前記天窓20の開閉機構であり、該天窓の開閉機構24は、前記梁材13と水平に設置されたレール25と、該レール25に滑車26にて懸架された駆動軸27と、該駆動軸27の端部に設けて前記駆動軸27の水平移動を行う駆動手段(図示せず)と、前記駆動軸27の上部に上方に向けて回動自在に取り付けた略V字状の駆動アーム28とを含み、前記駆動軸27を横方向に水平移動することにより、前記駆動軸アーム28を揺動させながら上下動させて、これにより、前記駆動アーム28の先端に取り付けた前記天窓側枠材20c,20dを上下動させて、前記防虫網23の室外側にて、前記天窓20の開放および閉鎖を行っている。
【0024】
図3は、開放した状態の天窓および天窓周辺を示す拡大断面図であり、図4は、天窓の開放状態を室内側から示す斜視図である。図5は、閉鎖した状態の天窓および天窓周辺を示す拡大断面図であり、図6は、天窓の閉鎖状態を室内から示す斜視図である。また、図7は、防虫網の要部を示す(a)は正面図であり、(b)は側面図である
【0025】
前記下部防虫網23bには、前記駆動アーム28を貫通させるために前記駆動アーム28の外径よりも僅かに径大の逃がし開口部30を開設すると共に、前記駆動アーム28の移動軌跡を担保するために楕円形状のアームホール31を開設しており、該アームホール31の周端縁から前記逃がし開口部30に向けて、室外側に膨出するように膨出袖部32を形成している。なお、本実施形態では、前記防虫網23上における前記駆動アーム28の軌跡は略ハ字状であるため、前記アームホール31もこれに合致するように略ハ字状に形成している。
【0026】
前記天窓20を最大限に開放した状態においては、図3及び図4に示すように、前記膨出袖部32は、前記駆動アーム28の開動作に追従して上方に突出した状態に位置している。このとき、前記逃がし開口部30は、前記駆動アーム28の外径よりも僅かに径大に形成されているため、前記駆動アーム28の移動に対して摺動し、追従移動を行うのであって、この追従移動によって、前記膨出袖部32は最上部に位置しているのである。
【0027】
そして、前記天窓20を閉鎖した場合は、図5および図6に示すように、前記駆動アーム28の閉動作に伴い、前記膨出袖部32は、室内側に引き込まれて収納されるのであるが、このとき、前記膨出袖部32は、前記逃がし開口部30を頂点とする略円錐形状に形成されているので、裏返し状に収納されるか、若しくは、円錐状に重なるように収納され、何れにしても、嵩高くならず、好適に収納することができ、前記天窓20からはみ出ることなく収納することができる。
【0028】
(第2の実施の形態)
【0029】
図8は、他の防虫網を備えた開放した状態の天窓を室内側から示す斜視図である。図中320aは、第2の実施の形態の防虫網23である。前述した第1の実施形態では、前記駆動アーム28は略V字形状であり、したがって、前記アームホール31も前記駆動アーム28の移動軌跡に合致する形状から構成されるが、本実施の形態の駆動アーム280は、1本であり、前記天窓下枠材20bの中央部に軸支されている。したがって、これに対応する前記アームホール310も、前記下部防虫網の横方向略中央部に直線上に開設されている。このように、前記アームホール310は前記駆動アーム280の移動軌跡に沿って開設するとよく、前記駆動アームの形状(すなわち、前記防虫網上の軌跡)の如何にっかわらず、前記駆動アームの形状に合わせて開設するとよいのである。
【0030】
前記防虫網23は、以上のような構成からなるため、構造が簡単で容易に製造ができるとと共に、前記駆動アーム28,280に対して追従性が良く、しかも確実に防虫効果を発揮できるもである。また、前記駆動アーム28,280の形状が相違する場合であっても、製造変更を容易に行うことができ、さらに、施工性もよく、既存の農業用温室にも容易に取り付けることができるという優れた効果を奏するもである。
【0031】
また、前述のように、前記防虫網枠22を上下二段に分けて構成した場合にあっては、下部23b又は上部23aの防虫網にのみ、前記構造を付加すればよく、一方の防虫網枠には、例えば、栽培作物の相違や季節の相違等に適宜合わせて、網目の大きさが異なる防虫網23a又は23bに張り替える等の作業が行うことができ、より効率的な運用が可能となるのである。さらに、前記防虫網枠22を上下二段に分けて構成した場合にあっては、前記構造を付加した何れかの防虫網(下部23b又は上部23aの防虫網)部分を、網素材ではなく、布帛素材や合成樹脂フィルム素材等の可撓性を有する素材で構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明にかかる防虫網を備えた窓開閉機構を有する農業用温室の概略斜視図である。
【図2】農業用温室の要部断面図である。
【図3】開放した状態の天窓および天窓周辺を示す拡大断面図である。
【図4】天窓の開放状態を室内側から示す斜視図である。
【図5】閉鎖した状態の天窓および天窓周辺を示す拡大断面図である。
【図6】天窓の閉鎖状態を室内から示す斜視図である。
【図7】防虫網の要部を示す(a)は正面図であり、(b)は側面図である
【図8】他の防虫網を備えた開放した状態の天窓を室内側から示す斜視図である。
【図9】従来例を示す部分断面図である。
【図10】従来例を示す要部平面図である。
【図11】従来例を示す部分断面図である。
【図12】従来例を示す要部斜視図である。
【符号の説明】
【0033】
10 農業用温室
11 屋根面
12 支柱
13 梁材
14 桁材
15 垂木材
16 天頂部
17 棟材
17a ヒンジ受部
18 ガラス板
20 天窓
20a 天窓上枠材
20b 天窓下枠材
20c 天窓側枠材
20d 天窓側枠材
20e ヒンジ部
21 開口部
22 網枠材
23 防虫網
23a 上部防虫網
23b 下部防虫網
24 開閉機構
25 レール
26 滑車
27 駆動軸
28 駆動アーム
30 逃がし開口部
31 アームホール
32 膨出袖部
280 駆動アーム
310 アームホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一側縁を枢支された窓と該窓の開口部を閉鎖する防虫網と前記窓を前記防虫網の室外側において開放および閉鎖する駆動手段とを有する窓開閉機構であって、
前記防虫網は、前記駆動手段の貫通箇所に前記防虫網の駆動手段の逃がし開口部を備えると共に、前記防虫網を貫通して駆動する前記駆動手段の開閉動作に追従可能な膨出袖部を備えてなることを特徴とする防虫網を備えた窓開閉機構。
【請求項2】
一側縁を枢支された窓と該窓の開口部を閉鎖する防虫網と前記窓を前記防虫網の室外側において開放および閉鎖する駆動手段とを有する窓開閉機構に適用する防虫網であって、
前記駆動手段の貫通箇所に前記防虫網の駆動手段の逃がし開口部を備えると共に、前記防虫網を貫通して駆動する前記駆動手段の開閉動作に追従可能な膨出袖部を備えてなることを特徴とする防虫網。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−215436(P2007−215436A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−37633(P2006−37633)
【出願日】平成18年2月15日(2006.2.15)
【出願人】(305024008)サンキンB&G株式会社 (13)
【Fターム(参考)】