説明

防蟻工法

【課題】現場作業を大幅に簡素化した防蟻性発泡体による防蟻工法を提供する。
【解決手段】(イ)前記耐圧容器1に樹脂基材及び防蟻薬剤を含有する樹脂組成物3を入れる工程、(ロ)前記耐圧容器1を前記蓋2で密閉する工程、(ハ)前記耐圧容器1に前記非引火性高圧ガスで充填された高圧ガスボンベ5を連結して該耐圧容器1に該非引火性高圧ガスを封入する工程、(ニ)前記耐圧容器1を振って前記樹脂組成物3と前記非引火性高圧ガスとを混合させる工程、(ホ)前記耐圧容器1のバルブ7を開放して前記樹脂組成物3と前記非引火性高圧ガスとを混合させた状態で前記噴射ノズル8から吐出させることにより前記樹脂組成物3を発泡させる工程、並びに、(ヘ)前記発泡させた樹脂組成物3を建物床下におけるシロアリの侵入する恐れのある部分に適量吹き付けて、付着、固化させることにより、前記シロアリの侵入する恐れのある部分に防蟻性発泡体を形成させる工程を順次有する前記防蟻工法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シロアリが建物の床下の土壌から基礎の上部に侵入するのを防止するための防蟻工法に関する。
【背景技術】
【0002】
シロアリは、建物の床下の土壌から、コンクリート基礎や配管に蟻道を立ち上げて、建物の上部の土台や柱に到達し、それらを食害する。シロアリの食害を防止する防蟻工法としては、例えば、(社)日本しろあり対策協会によって発行された『シロアリ防除処理標準仕様書』に記載されているように、床下の土壌表面に殺蟻性の防蟻剤(土壌処理剤)を散布するものが有効である。このような床下の土壌表面に殺蟻性の防蟻剤(土壌処理剤)を散布する防蟻工法は、一般的な工法として、広く用いられている。
【0003】
しかしながら、近年、住宅基礎構造として、防湿対策を兼ねた防湿コンクリートを打設する例が多くなった。このような住宅基礎構造の場合、当初の土壌に散布した薬剤が経年劣化した後の再防蟻施工では、前記防湿コンクリート表面に液状の土壌処理剤を散布せざるを得ない。この再防蟻施工では、防湿コンクリート表面は、前記液状の土壌処理剤を吸収する能力が乏しいので、シロアリに対して短期的には有効であっても、長期の効果は期待できないという欠点があった。また、散布された防蟻剤は、コンクリートに吸収されずに床一面に拡がるので、本来薬剤処理が不要な個所まで防蟻剤で汚染される可能性や施工時における防蟻剤の飛散など安全面での課題もあった。さらに、コンクリート表面に散布した防蟻剤は、乾くとその履歴が残らないので、防蟻施工が確実に行われたことの確認や検査が現実的にできないという問題もあった。
【0004】
このような問題を解決する防蟻工法の一つとして、樹脂性基材(樹脂エマルジョン)と整泡剤と防蟻薬剤とを含有する樹脂組成物を撹拌して形成した防蟻性発泡体を、噴射ノズルを用いて、基礎コンクリートに発生した亀裂部分に吹きつけて、付着、固化させることによって、シロアリの侵入部分に対して防蟻シーリングを行い、シロアリの侵入を阻止することが提案されている(特許文献1を参照)。
【0005】
前記樹脂組成物を発泡させるには、前記樹脂組成物に適度な粘性を与えて、前記基礎コンクリートの垂直面に吹き付けた場合でも、防蟻性能に必要とされる適切な量やシール層の厚みを有した防蟻性発泡体を付着させる必要がある。また、前記防蟻薬剤を含有する樹脂組成物を発泡させることにより、床下施工中の防蟻成分の飛散を防ぎ、作業安全性を向上させることができる。
【特許文献1】特開2007−211538号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の防蟻工法は、防蟻効果、施工中の人畜に対する安全性、施工後の確認が目視で可能なこと等の利点があるが、一方、施工に際しては、樹脂基材(樹脂エマルジョン)と整泡剤と防蟻剤とを含有する樹脂組成物を撹拌機を用いて発泡させる作業が必要であり、さらに、それを噴射ノズルから吹付けるために、外部から空気等で加圧しホースを経由して押し出す作業が必要であった。
【0007】
このような樹脂基材(樹脂エマルジョン)と整泡剤と防蟻剤とを含有する樹脂組成物を撹拌機を用いて発泡させる作業は、発泡させる樹脂組成物の量にもよるが、長時間を必要とする場合もあり、そのような場合には、防蟻施工に支障をきたすという問題があった。また、樹脂組成物を発泡させて得た防蟻性発泡体を噴射ノズルから押し出すためのコンプレッサー、耐圧タンク等の設備が必要となるので、現場作業が複雑になり、しかも、コストがかかるという問題があった。
【0008】
本発明は、かかる問題を解決することを目的としている。
【0009】
即ち、本発明は、樹脂組成物を発泡させるための電動撹拌機、前記発泡させた樹脂組成物を吐出させるためのコンプレッサーや耐圧タンク等の設備を必要としないと共に、防蟻性発泡体の形成に長時間を必要としない、現場作業を大幅に簡素化した防蟻性発泡体による防蟻工法を低コストで提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載された発明は、耐圧容器と、前記耐圧容器を密閉する蓋と、前記耐圧容器又は前記蓋に設けられた非引火性高圧ガスを前記耐圧容器に導入するためのバルブと、前記耐圧容器又は前記蓋に設けられた噴射ノズルと、を有する噴射装置を用いた防蟻工法であって、
(イ)前記耐圧容器に樹脂基材及び防蟻薬剤を含有する樹脂組成物を入れる工程、
(ロ)前記耐圧容器を前記蓋で密閉する工程、
(ハ)前記耐圧容器に前記非引火性高圧ガスで充填された高圧ガスボンベを連結して該耐圧容器に該非引火性高圧ガスを封入する工程、
(ニ)前記耐圧容器を振って前記樹脂組成物と前記非引火性高圧ガスとを混合させる工程、
(ホ)前記耐圧容器のバルブを開放して前記樹脂組成物と前記非引火性高圧ガスとを混合させた状態で前記噴射ノズルから吐出させることにより前記樹脂組成物を発泡させる工程、並びに、
(ヘ)前記発泡させた樹脂組成物を建物床下におけるシロアリの侵入する恐れのある部分に適量吹き付けて、付着、固化させることにより、前記シロアリの侵入する恐れのある部分に防蟻性発泡体を形成させる工程、
を順次有することを特徴とする防蟻工法である。
【0011】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記樹脂基材が、水性の樹脂エマルジョンで構成されていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項3に記載された発明は、請求項2に記載された発明において、前記水性の樹脂エマルジョンが、ウレタン系重合体、アクリル系重合体、アクリルブタジエンスチレン共重合体、エチレンビニルアセテート共重合体、及び、これらの混合物から選ばれる樹脂で形成されていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項4に記載された発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明において、前記非引火性高圧ガスが、二酸化炭素、亜酸化窒素、窒素、及び、空気から選ばれる非引火性高圧ガスであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載された発明によれば、耐圧容器と、前記耐圧容器を密閉する蓋と、前記耐圧容器又は前記蓋に設けられた非引火性高圧ガスを前記耐圧容器に導入するためのバルブと、前記耐圧容器又は前記蓋に設けられた噴射ノズルと、を有する噴射装置を用いた防蟻工法であって、(イ)前記耐圧容器に樹脂基材及び防蟻薬剤を含有する樹脂組成物を入れる工程、(ロ)前記耐圧容器を前記蓋で密閉する工程、(ハ)前記耐圧容器に前記非引火性高圧ガスで充填された高圧ガスボンベを連結して該耐圧容器に該非引火性高圧ガスを封入する工程、(ニ)前記耐圧容器を振って前記樹脂組成物と前記非引火性高圧ガスとを混合させる工程、(ホ)前記耐圧容器のバルブを開放して前記樹脂組成物と前記非引火性高圧ガスとを混合させた状態で前記噴射ノズルから吐出させることにより前記樹脂組成物を発泡させる工程、並びに、(ヘ)前記発泡させた樹脂組成物を建物床下におけるシロアリの侵入する恐れのある部分に適量吹き付けて、付着、固化させることにより、前記シロアリの侵入する恐れのある部分に防蟻性発泡体を形成させる工程を順次有しているものであるので、(1)樹脂組成物を発泡させるための電動撹拌機、前記発泡させた樹脂組成物を吐出させるためのコンプレッサーや耐圧タンク等の設備を必要としないと共に、防蟻性発泡体の形成に長時間を必要としない、現場作業を大幅に簡素化した防蟻性発泡体による防蟻工法を低コストで提供することができ、そして、(2)本発明の防蟻工法を用いた防蟻施工においては、防蟻薬剤の飛散がなく、防蟻施工が必要な個所だけ適切に施工でき、液剤散布のようなコンクリート床表面での薬剤の無駄な拡がりを防止することがで、かつ、形成された防蟻性発泡体によるシール部分が床下にそのまま残るために、後日、確実に施工されたことを目視で確認できる。
【0015】
請求項2,3に記載された発明によれば、前記樹脂基材が水性の樹脂エマルジョンで構成されているので、かかる水性の樹脂エマルジョンを含有する樹脂組成物を前記耐圧容器内で前記非引火性の高圧ガスと混合して、これを前記噴射ノズルから噴射させると、前記非引火性の高圧ガスを膨張し、防蟻性発泡体を形成することができる。
【0016】
請求項4に記載された発明によれば、前記非引火性高圧ガスが、二酸化炭素、亜酸化窒素、窒素、及び、空気から選ばれる非引火性高圧ガスであるので、人体にあまり影響がなく、また、水性樹脂エマルジョンとの相溶性も良好であり、それらのために、本発明の防蟻工法を床下等の比較的密閉された空間であっても安全に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施の形態を示す防蟻方法の説明図であって、(a)は、噴射装置における耐圧容器から蓋を開ける状態を示し、(b)は、蓋の開けられた耐圧容器に樹脂組成物を入れる状態を示し、(c)は、樹脂組成物を入れた耐圧容器に蓋をした後、該蓋に設けられたバルブにおけるガス注入口の部分に設けられた雌ねじに高圧ガスボンベの先端に設けられた雄ねじをねじ込んで、高圧ガスボンベをそのネジで前記バルブに直接に連結する状態を示し、(d)は、噴射装置を上下に振って樹脂組成物と非引火性高圧ガスとを混合させる状態を示し、(e)は、高圧ガスボンベを取り外し、そこに、ネジキャップを取り付ける状態を示し、そして、(f)は、蓋に設けられた噴射ノズル取付部に噴射ノズルを取り付けた後、該噴射ノズルから非引火性高圧ガスを噴射させる状態を示す。図2は、高圧ガスボンベを、耐圧ホースを介して、蓋に設けられたバルブに連結した噴射装置の斜視図である。図3は、本発明の一実施の形態を示す防蟻方法を建物基礎におけるシロアリの侵入する恐れのある部分に適用して防蟻性発泡体を形成した状態を示す説明図である。
【0019】
図1に示されているように、本発明は、耐圧容器1と、前記耐圧容器1を密閉する蓋2と、前記耐圧容器1又は前記蓋2に設けられた非引火性高圧ガスを前記耐圧容器1に導入するためのバルブ4と、前記耐圧容器1又は前記蓋2に設けられた噴射ノズル8と、を有する噴射装置10を用いた防蟻工法である。そして、前記防蟻工法は、(イ)前記耐圧容器1に樹脂基材及び防蟻薬剤を含有する樹脂組成物3を入れる工程[図1における(b)を参照。]、(ロ)前記耐圧容器1を前記蓋2で密閉する工程、(ハ)前記耐圧容器1に前記非引火性高圧ガスで充填された高圧ガスボンベ5を連結して該耐圧容器1に該非引火性高圧ガスを封入する工程[図1における(c)を参照。]、(ニ)前記耐圧容器1を振って前記樹脂組成物3と前記非引火性高圧ガスとを混合させる工程[図1における(d)を参照。]、(ホ)前記耐圧容器1のノズル台座7を開放して前記樹脂組成物3と前記非引火性高圧ガスとを混合させた状態で前記噴射ノズル8から吐出させることにより前記樹脂組成物3を発泡させる工程[図1における(f)を参照。]、並びに、(ヘ)前記発泡させた樹脂組成物3を建物床下におけるシロアリの侵入する恐れのある部分に適量吹き付けて、付着、固化させることにより、前記シロアリの侵入する恐れのある部分に防蟻性発泡体を形成させる工程[図3を参照。]を順次有している。
【0020】
前記(イ)の工程においては、図1(a)に示されているように、噴射装置10における蓋2を矢印の方向に回して矢印の方向に取り外し、そして、図1(b)に示されているように、前記耐圧容器1に樹脂基材及び防蟻薬剤を含有する樹脂組成物3を入れて、前記耐圧容器1内に樹脂組成物3を入れた部分と非引火性高圧ガス充填空間の部分とを設ける。
【0021】
前記(ハ)の工程においては、図1(c)に示されているように、前記耐圧容器1に、前記非引火性高圧ガスで充填された高圧ガスボンベ5を矢印の方向に回して、矢印の方向に連結して該耐圧容器1に該非引火性高圧ガスを封入する。前記高圧ガスボンベ5は、内容量が数g程度の小型カートリッジタイプのものであるが、本発明においては、図2に示されているような数十Kg程度の大きなボンベタイプのものが使用できる。前記「数十Kg程度の大きなボンベタイプのもの」は、耐圧ホース22を介して連結させる。図2において、11は、耐圧容器であり、14は、バルブであり、15は、高圧ガスボンベであり、18は、噴射ノズルであり、19は、レバーであり、そして、30は、噴射装置である。
【0022】
前記(ニ)の工程においては、図1(d)に示されているように、前記耐圧容器1を矢印の方向に振って前記樹脂組成物3と前記非引火性高圧ガスとを混合させるが、前記樹脂組成物3と前記非引火性高圧ガスとを混合した後には、図1(e)に示されているように、バルブ4を閉じた後に該バルブ4から高圧ガスボンベ5を取外し、ここにネジキャップ6を矢印の方向に回して取り付ける。
【0023】
前記(ホ)の工程においては、図1(f)に示されているように、前記耐圧容器1のバルブ7を開放して前記樹脂組成物3と前記非引火性高圧ガスとを混合させた状態で前記噴射ノズル8から吐出させることにより前記樹脂組成物3を発泡させるが、その際に、非引火性ガス(例えば、炭酸ガス)が常圧下で膨張することによって樹脂エマルジョンの発泡体を形成させることができる。発泡倍率は、コンクリート垂直面への付着性や固化後の発泡体の防蟻性能から、2〜6倍程度が好ましい。発泡体の硬化:吐出された防蟻成分を含む水性樹脂エマルジョン発泡体は、床下にて水分が徐々に乾燥することによって硬化し始め、約1日間でコンクリート表面や配管表面に完全に固着し、コンクリート亀裂などから侵入するシロアリに対する防蟻シール体を形成できた。
【0024】
前記(ヘ)の工程においては、図3に示されているように、前記噴射ノズル8から吐出させて発泡させた樹脂組成物3を、建物床下におけるシロアリの侵入する恐れのある部分111、即ち、コンクリートスラブ103と布基礎102との継ぎ目部分112,配管113の貫通部分114に、適量吹き付けて、付着、固化させることにより、前記シロアリの侵入する恐れのある部分111に防蟻性発泡体109を形成させる。前記噴射ノズル8から吐出させて発泡させた樹脂組成物3は、建物床下におけるシロアリの侵入する恐れのある部分111に付着されるが、床下にて水分が徐々に乾燥することによって硬化し始め、約1日間でコンクリート表面や配管表面に完全に固着される。図3において、101は、防蟻構造であり、102aは、布基礎の側面であり、104は、基礎であり、105は、土壌であり、そして、116は、垂直面である。
【0025】
前記樹脂組成物3に含有させる防蟻薬剤は、例えば、ピレスロイド系、ネオニコチノド系、ピラゾール系などの(社)日本しろあり対策協会認定の防蟻剤に使用されているものであるが、本発明の目的に反しない限り、シロアリに対して殺蟻又は忌避作用があるものであればどれも使用できる。
【0026】
前記樹脂組成物3には、適度の起泡性、安定性や粘性を与えるために、ラウリン酸ナトリウム、ヤシ油けん、高級脂肪酸アミドアルキルスルホン酸ナトリウム等の界面活性剤、ゼラチン、アリギン酸ナトリウム、カーボマーなどの増粘剤などを適宜添加することができる。
【0027】
このように、前記防蟻工法が、(イ)前記耐圧容器1に樹脂基材及び防蟻薬剤を含有する樹脂組成物3を入れる工程、(ロ)前記耐圧容器1を前記蓋2で密閉する工程、(ハ)前記耐圧容器1に前記非引火性高圧ガスで充填された高圧ガスボンベ5を連結して該耐圧容器1に該非引火性高圧ガスを封入する工程、(ニ)前記耐圧容器1を振って前記樹脂組成物3と前記非引火性高圧ガスとを混合させる工程、(ホ)前記耐圧容器1のバルブ7を開放して前記樹脂組成物3と前記非引火性高圧ガスとを混合させた状態で前記噴射ノズル8から吐出させることにより前記樹脂組成物3を発泡させる工程、並びに、(ヘ)前記発泡させた樹脂組成物3を建物床下におけるシロアリの侵入する恐れのある部分に適量吹き付けて、付着、固化させることにより、前記シロアリの侵入する恐れのある部分に防蟻性発泡体を形成させる工程を順次有していると、(1)樹脂組成物3を発泡させるための電動撹拌機、前記発泡させた樹脂組成物3を吐出させるためのコンプレッサーや耐圧タンク等の設備を必要としないと共に、防蟻性発泡体の形成に長時間を必要としない、現場作業を大幅に簡素化した防蟻性発泡体による防蟻工法を低コストで提供することができ、そして、(2)本発明の防蟻工法を用いた防蟻施工においては、防蟻薬剤の飛散がなく、防蟻施工が必要な個所だけ適切に施工でき、液剤散布のようなコンクリート床表面での薬剤の無駄な拡がりを防止することができ、かつ、形成された防蟻性発泡体によるシール部分が床下にそのまま残るために、後日、確実に施工されたことを目視で確認できる。
【0028】
本発明においては、前記樹脂基材は、好ましくは、水性の樹脂エマルジョンで構成されている。そして、前記水性の樹脂エマルジョンは、好ましくは、ウレタン系重合体、アクリル系重合体、アクリルブタジエンスチレン共重合体、エチレンビニルアセテート共重合体、及び、これらのの混合物から選ばれる樹脂で形成されている。このように、前記樹脂基材が水性の樹脂エマルジョンで構成されていると、かかる水性の樹脂エマルジョンを含有する樹脂組成物3を前記耐圧容器1内で前記非引火性の高圧ガスと混合して、これを前記噴射ノズル8から噴射させると、前記非引火性の高圧ガスを膨張し、防蟻性発泡体9を形成することができる。
【0029】
前記非引火性高圧ガスは、好ましくは、二酸化炭素、亜酸化窒素、窒素、及び、空気から選ばれる非引火性高圧ガスである。このように、前記非引火性高圧ガスが、二酸化炭素、亜酸化窒素、窒素、及び、空気から選ばれる非引火性高圧ガスであると、人体にあまり影響がなく、また、水性樹脂エマルジョンとの相溶性も良好であり、それらのために、本発明の防蟻工法を床下等の比較的密閉された空間であっても安全に使用することができる。
【0030】
本発明においては、図1に示されているように、前記非引火性ガスで充填された高圧ガスボンベ5をそのネジで前記バルブに直接に連結する。このように、前記非引火性ガスで充填された高圧ガスボンベ5をそのネジで前記バルブに直接に連結すると、前記高圧ガスボンベ5をそのネジで前記バルブ4に直接に連結するだけで、防蟻性発泡体109を簡単に形成することができ、そのために、比較的狭い密閉された空間であっても、防蟻性発泡体109による防蟻工法を効率よく適用することができる。
【0031】
本発明においては、図2に示されているように、前記非引火性ガスで充填された高圧ガスボンベ15を、耐圧ホース22を介して、前記バルブ14に連結する。このように、前記非引火性ガスで充填された高圧ガスボンベ15を、耐圧ホース22を介して、前記バルブ14に連結すると、前記非引火性ガスで充填された高圧ガスボンベ15を、耐圧ホース22を介して、前記バルブ14に連結するだけで、防蟻性発泡体を簡単に形成することができ、そのために、比較的広い密閉された空間であっても、防蟻性発泡体による防蟻工法を効率よく適用することができる。
【0032】
(実施例)
(イ)内径約10cm、高さ約35cmのステンレス製の円筒形の耐圧容器に、エチレンビニルアセテート共重合物を固形物として50%含有するエマルジョン700gに該エマルジョンの0.25%になるようにチアメトキサムを混合して得た樹脂組成物を、入れる工程、
(ロ)前記耐圧容器を前記蓋で密閉する工程、
(ハ)前記耐圧容器に液化炭酸ガス8gで充填された高圧ガスボンベを連結して該耐圧容器に炭酸ガスを封入する工程、
(ニ)前記耐圧容器を軽く数回振って前記樹脂組成物と前記炭酸ガスとを混合させる工程
(ホ)前記耐圧容器のバルブを開放して前記樹脂組成物と前記炭酸ガスとを混合させた状態で噴射ノズルから吐出させることにより前記樹脂組成物を発泡させる工程、並びに、 (ヘ)前記発泡させた樹脂組成物を建物床下におけるシロアリの侵入する恐れのある部分に適量吹き付けて、付着、固化させることにより、前記シロアリの侵入する恐れのある部分に防蟻性発泡体1cmを形成させる工程
を順次経て防蟻施工を実施した。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施の形態を示す防蟻方法の説明図であって、(a)は、噴射装置における耐圧容器から蓋を開ける状態を示し、(b)は、蓋の開けられた耐圧容器に樹脂組成物を入れる状態を示し、(c)は、樹脂組成物を入れた耐圧容器に蓋をした後、該蓋に設けられたバルブにおけるガス注入口の部分に設けられた雌ねじに高圧ガスボンベの先端に設けられた雄ねじをねじ込んで、高圧ガスボンベをそのネジで前記バルブに直接に連結する状態を示し、(d)は、噴射装置を上下に振って樹脂組成物と非引火性高圧ガスとを混合させる状態を示し、(e)は、高圧ガスボンベを取り外し、そこに、ネジキャップを取り付ける状態を示し、そして、(f)は、蓋に設けられた噴射ノズル取付部に噴射ノズルを取り付けた後、該噴射ノズルから非引火性高圧ガスを噴射させる状態を示す。
【図2】高圧ガスボンベを、耐圧ホースを介して、蓋に設けられたバルブに連結した噴射装置の斜視図である。
【図3】本発明の一実施の形態を示す防蟻方法を建物基礎におけるシロアリの侵入する恐れのある部分に適用して防蟻性発泡体を形成した状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0034】
1 耐圧容器
2 蓋
3 樹脂組成物
4 バルブ
5 高圧ガスボンベ
6 ネジキャップ
7 ノズル台座
8 噴射ノズル
9 レバー
10 噴射装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐圧容器と、前記耐圧容器を密閉する蓋と、前記耐圧容器又は前記蓋に設けられた非引火性高圧ガスを前記耐圧容器に導入するためのバルブと、前記耐圧容器又は前記蓋に設けられた噴射ノズルと、を有する噴射装置を用いた防蟻工法であって、
(イ)前記耐圧容器に樹脂基材及び防蟻薬剤を含有する樹脂組成物を入れる工程、
(ロ)前記耐圧容器を前記蓋で密閉する工程、
(ハ)前記耐圧容器に前記非引火性高圧ガスで充填された高圧ガスボンベを連結して該耐圧容器に該非引火性高圧ガスを封入する工程、
(ニ)前記耐圧容器を振って前記樹脂組成物と前記非引火性高圧ガスとを混合させる工程、
(ホ)前記耐圧容器のバルブを開放して前記樹脂組成物と前記非引火性高圧ガスとを混合させた状態で前記噴射ノズルから吐出させることにより前記樹脂組成物を発泡させる工程、並びに、
(ヘ)前記発泡させた樹脂組成物を建物床下におけるシロアリの侵入する恐れのある部分に適量吹き付けて、付着、固化させることにより、前記シロアリの侵入する恐れのある部分に防蟻性発泡体を形成させる工程
を順次有することを特徴とする防蟻工法。
【請求項2】
前記樹脂基材が、水性の樹脂エマルジョンで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の防蟻工法。
【請求項3】
前記水性の樹脂エマルジョンが、ウレタン系重合体、アクリル系重合体、アクリルブタジエンスチレン共重合体、エチレンビニルアセテート共重合体、及び、これらの混合物から選ばれる樹脂で形成されていることを特徴とする請求項2に記載の防蟻工法。
【請求項4】
前記非引火性高圧ガスが、二酸化炭素、亜酸化窒素、窒素、及び、空気から選ばれる非引火性高圧ガスであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の防蟻工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−106541(P2010−106541A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−279499(P2008−279499)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(000180081)株式会社ザイエンス (11)
【Fターム(参考)】