説明

防護柵用支柱および防護柵の取替え方法

【課題】地覆の鉄筋とアンカーとの干渉を回避するにあたって、オフセット量を小さく抑えることが可能な防護柵用支柱を提供すること。
【解決手段】道路脇の地覆Cに固定される台座1と、横梁Bを支持する支柱本体2とを備える防護柵用支柱A1であって、台座1には、背面側アンカー挿通孔1bと、背面側アンカー挿通孔1bよりも道路寄りに位置する道路側アンカー挿通孔1aとが形成されており、背面側アンカー挿通孔1bは、地覆Cの長手方向に沿う基準線Qに対して傾斜する方向に延在する長孔からなる、ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防護柵用支柱および防護柵の取替え方法に関する。
【背景技術】
【0002】
道路用の防護柵は、道路からの車両等の転落を防止するものであり、所定間隔で立設した複数の支柱間に横梁(横架材)等を架け渡した構造を具備している(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の防護柵用支柱は、地覆に固定される台座と、横梁を支持する支柱本体とを備えるものである。この防護柵用支柱は、地覆に植設された後施工アンカーを利用して地覆の上面に固定されるものであり、台座には、前後二つずつ合計四つのアンカー挿通孔が形成されている。
【0004】
後施工アンカーは、地覆内の鉄筋に干渉しないような位置に植設する必要があるところ、鉄筋を避けるべく植設位置を変更すると、台座のアンカー挿通孔にアンカーを挿通できなくなる虞がある。このため、特許文献1の防護柵用支柱では、地覆の長手方向(以下、単に「左右方向」という。)に延在する長孔をアンカー挿通孔としている。なお、上記と同様の目的で、長孔を地覆の短手方向(以下、単に「前後方向」という。)に延在させた防護柵用支柱が特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−223332号公報
【特許文献2】特開2007−204939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
地覆内の鉄筋は縦横の格子状に配筋されているので、特許文献1,2の防護柵用支柱を設置する際には、防護柵用支柱そのものを移動(オフセット)させることで、左右方向に配筋された鉄筋(以下、単に「縦筋」という。)或いは前後方向に配筋された鉄筋(以下、単に「横筋」という。)を回避する必要がある。
【0007】
ところが、防護柵用支柱のオフセット量が大きくなるにつれて、設置間隔の不揃いや横梁の蛇行といった問題が顕著になる虞がある。また、地覆の前後方向の寸法に余裕がないにもかかわらず前後方向へのオフセット量が大きくなると、防護柵用支柱の設置作業が困難になる虞もある。なお、このような問題は、既設の防護柵を取り替える際には特に重要となる。
【0008】
このような観点から、本発明は、地覆内の鉄筋とアンカーとの干渉を回避するにあたり、前後左右へのオフセット量を小さく抑えることが可能な防護柵用支柱を提供することを課題とし、さらには、この防護柵用支柱を利用した防護柵の取替え方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決する本発明に係る防護柵用支柱は、道路脇の地覆に固定される台座と、横梁を支持する支柱本体とを備える防護柵用支柱であって、前記台座には、背面側アンカー挿通孔と、前記背面側アンカー挿通孔よりも道路寄りに位置する道路側アンカー挿通孔とが形成されており、前記背面側アンカー挿通孔は、前記地覆の長手方向に沿う基準線に対して傾斜する方向に延在する長孔からなる、ことを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、背面側アンカー挿通孔に挿通されるアンカーの植設位置に高い自由度を持たせることができるので、防護柵用支柱の前後左右へのオフセット量を小さく抑えつつ、地覆内の鉄筋とアンカーとの干渉を回避することが可能になる。
【0011】
前記道路側アンカー挿通孔は、単なる円孔としてもよいが、左右方向に延在する長孔とすることが望ましい。このようにすると、道路側アンカー挿通孔に挿通されるアンカーの植設位置を長孔の範囲内で左右にずらすことが可能になるので、地覆内の鉄筋とアンカーとの干渉を回避するにあたって、防護柵用支柱の左右方向へのオフセット量をさらに小さく抑えることが可能になる。
【0012】
前記背面側アンカー挿通孔の周囲における前記台座の肉厚を、前記道路側アンカー挿通孔の周囲における前記台座の肉厚よりも小さくしてもよい。このようにすると、防護柵用支柱の軽量化を図ることができる。
【0013】
前記台座の平面形状に制限はないが、その後縁における幅寸法を前縁における幅寸法よりも小さくするとよい。このようにすると、背面側と道路側とで幅寸法を同じにした場合に比べて、台座の面積が小さくなるので、台座が軽量になり、ひいては、防護柵用支柱の軽量化を図ることができる。
【0014】
前記した課題を解決する本発明に係る防護柵の取替え方法は、道路脇の地覆に設置された既設の防護柵用支柱を撤去する既設支柱撤去工程と、前記地覆内の鉄筋を避けるようにアンカーを植設するアンカー植設工程と、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の防護柵用支柱を前記地覆に固定する新設支柱設置工程と、を含む防護柵の取替え方法であって、前記アンカー植設工程では、前記道路側アンカー挿通孔に挿通されるアンカーの植設位置を決定した後に、前記背面側アンカー挿通孔に対応する領域を割り出し、当該領域内において、前記背面側アンカー挿通孔に挿通されるアンカーの植設位置を決定する、ことを特徴とする。
【0015】
既設の防護柵を取り替える際に本発明の防護柵用支柱を利用すれば、防護柵用支柱の前後左右へのオフセット量を小さく抑えることが可能になるので、地覆の前後方向の寸法に余裕がないような場合であっても、地覆内の鉄筋とアンカーとの干渉を回避することが可能になる。また、設置間隔の不揃いや新設した横梁の蛇行を小規模に止めることも可能になる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、地覆の前後方向の寸法に余裕がないような場合であっても、地覆内の鉄筋とアンカーとの干渉を回避することが可能になる。また、本発明によれば、設置間隔の不揃いや横梁の蛇行による美観の悪化を小規模に止めることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る防護柵用支柱を示す斜視図である。
【図2】(a)は本発明の第一の実施形態に係る防護柵用支柱を示す側面図、(b)は(a)のX−X線断面図である。
【図3】アンカーの植設位置を説明するための平面図である。
【図4】(a)は本発明の第一の実施形態に係る防護柵用支柱の設置状態を示す図、(b)および(c)は比較例に係る防護柵用支柱の設置状態を示す図である。
【図5】本発明の第二の実施形態に係る防護柵用支柱を示す斜視図である。
【図6】本発明の第二の実施形態に係る防護柵用支柱を示す図であって、(a)は側面図、(b)は(a)のX2−X2線断面図である。
【図7】本発明の第三の実施形態に係る防護柵用支柱を示す斜視図である。
【図8】本発明の第三の実施形態に係る防護柵用支柱を示す図であって、(a)は側面図、(b)は(a)のX3−X3線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第一の実施形態)
本発明の第一の実施形態に係る防護柵用支柱A1は、図1に示すように、橋梁上の道路に沿って配置される横梁Bを支持するものであり、道路脇の地覆Cに設置されている。
【0019】
以下の説明における「上下」、「前後」および「左右」は、防護柵用支柱A1を道路脇に設置した状態を基準とし、かつ、道路に面する側を「前側」とする。すなわち、地覆Cの短手方向が「前後方向」となり、地覆Cの長手方向が「左右方向」となる。なお、防護柵用支柱Aの左右方向を「幅」、前後方向を「奥行き」と称する場合もある。
【0020】
防護柵用支柱A1は、台座1と、台座1から立ち上る支柱本体2とを具備している。防護柵用支柱A1は、アルミニウム合金製または鋳鉄製の鋳造品であり、台座1および支柱本体2は一体成形されている。
【0021】
台座1は、地覆Cに固定される部位であり、本実施形態のものは、厚肉部11と薄肉部12とに区分けされている。
【0022】
厚肉部11は、台座1の前半部分に形成されていて、支柱本体2の前部を支持している。本実施形態の厚肉部11は、支柱本体2よりも幅広であり、図2の(b)に示すように、支柱本体2の下端の側縁を通る直線P1よりも外側に延出している。
【0023】
薄肉部12は、図1に示すように、厚肉部11の後側に続く部位であって、台座1の後半部分に形成されていて、支柱本体2の後部を支持している。本実施形態の薄肉部12は、支柱本体2の下端部よりも幅広であり、図2の(b)に示すように、直線P1よりも外側に延出している。なお、薄肉部12は、後方に向うにしたがって幅寸法が漸減するような平面形状を具備しているので、台座1の後縁における幅寸法は、台座1の前縁における幅寸法よりも小さくなっている。図2の(a)にも示すように、薄肉部12の肉厚は、厚肉部11の肉厚よりも小さくなっていて、薄肉部12の上面は、厚肉部11の上面よりも一段下がったところに位置している。
【0024】
図2の(b)に示すように、台座1には、左右一対の道路側アンカー挿通孔1a,1aと、左右一対の背面側アンカー挿通孔1b,1bとが形成されている。アンカー挿通孔1a,1bには、地覆Cに植設された後施工アンカーC1,C2が挿通される。
【0025】
道路側アンカー挿通孔1aは、厚肉部11に形成されていて、背面側アンカー挿通孔1bよりも前側(道路寄り)に位置している。道路側アンカー挿通孔1aは、支柱本体2と干渉しない領域(本実施形態では、直線P1,P1で挟まれた領域の外側)に形成されている。道路側アンカー挿通孔1aは、左右方向に延在する長孔からなる。
【0026】
背面側アンカー挿通孔1bは、薄肉部12に形成されている。背面側アンカー挿通孔1bは、支柱本体2と干渉しない領域に配置されている。背面側アンカー挿通孔1bは、左右方向に沿う基準線Qに対して傾斜する方向に延在する長孔からなる。背面側アンカー挿通孔1bの長軸と基準線Qとのなす角度θは、45度に設定されている。なお、背面側アンカー挿通孔1bの長軸と基準線Qとのなす角度θは、適宜変更しても差し支えないが、前後左右への調整代を考慮し、30〜60度の範囲で設定することが望ましい。背面側アンカー挿通孔1bは、直線P1に平行な直線であって道路側アンカー挿通孔1aの中心を通る直線P2よりも支柱本体2側に形成されている。背面側アンカー挿通孔1bの中心は、直線P2よりも支柱本体2側に位置していて、背面側アンカー挿通孔1aの後端部は、直線P1,P1で挟まれた領域に入り込んでいる。
【0027】
支柱本体2は、図1に示すように、道路に面する道路側フランジ21と、道路側フランジ21の後方に配置された背面側フランジ22と、道路側フランジ21と背面側フランジ22とを繋ぐウェブ23と、上段の横梁Bの取付座となる上段受け部24と、下段の横梁Bの取付座となる下段受け部25とを具備している。
【0028】
道路側フランジ21は、厚肉部11の幅方向の中央部に立設されている。図2の(b)に示すように、本実施形態の道路側フランジ21は、道路側アンカー挿通孔1a,1aの中心同士を結ぶ線分Rよりも前方において台座1から立ち上っている。図2の(a)に示すように、道路側フランジ21は、後側に凸となる円弧状に形成されていて、その全体が台座1の前縁を通る鉛直面よりも後方に位置している。
【0029】
背面側フランジ22は、図2の(b)に示すように、薄肉部12の幅方向の中央部に立設されている。本実施形態の背面側フランジ22は、背面側アンカー挿通孔1b,1bの中心同士を結ぶ線分Sよりも後方に下がった位置において台座1から立ち上っている。図2の(a)に示すように、背面側フランジ22の下部には、座屈誘引部22aが形成されている。座屈誘引部22aは、支柱本体2が後方へ傾倒する際の起点(局部座屈の開始点)となる部位である。本実施形態では、背面側フランジ22に設けた屈折部分を座屈誘引部22aとしている。
【0030】
ウェブ23は、台座1の幅方向の中央部に立設されている。本実施形態のウェブ23は、図2の(b)に示すように、前後方向に沿って配置されており、道路側フランジ21の幅方向の中央部と背面側フランジ22の幅方向の中央部とを繋いでいる。図2の(a)に示すように、ウェブ23の上端部は、上段受け部24に接続されている。
【0031】
上段受け部24は、支柱本体2の最上部に形成されており、上段の横梁Bの後部を下側から支持している。本実施形態の上段受け部24は、道路側フランジ21の上端部と背面側フランジ22の上端部を繋いでいる。上段受け部24の前端部24aは、道路側フランジ21の上端部の前方に張り出している。前端部24aは、上段の横梁Bの下面に形成された係合凹部に挿入される。図1に示すように、上段受け部24には、これを上下方向に貫通するボルト挿通孔24bが形成されている。ボルト挿通孔24bには、上段の横梁Bを固定するためのボルトB1(図2の(a)参照)が挿通される。
【0032】
下段受け部25は、上段受け部24の下方に形成されており、下段の横梁Bの後部を支持している。本実施形態の下段受け部25は、道路側フランジ21と一体成形されている。下段受け部25には、これを前後方向に貫通するボルト挿通孔25aが形成されている。ボルト挿通孔25aには、下段の横梁Bを固定するためのボルトB2(図2の(a)参照)が挿通される。
【0033】
次に、既設の防護柵を取り替える場合を想定して、防護柵用支柱A1の設置方法を説明する。
【0034】
既設の防護柵を取り替える場合には、まず、地覆Cに設置された既設の防護柵用支柱(図示略)を撤去する(既設支柱撤去工程)。
【0035】
次に、図3に示すように、地覆C内の既設の鉄筋C3,C4を避けるように後施工アンカーC1,C2を植設する(アンカー植設工程)。
【0036】
アンカー植設工程では、まず、地覆Cの設計図面を調査するか、あるいは、鉄筋探査装置などを使用して地覆C内の鉄筋C3,C4の位置を確認する。
【0037】
鉄筋C3,C4の位置を確認したならば、鉄筋C3,C4と接触しない位置において、前側の後施工アンカーC1,C1の植設位置を決定する。本実施形態では、道路側アンカー挿通孔1aを長孔としているので、後施工アンカーC1の植設位置を長孔の範囲内で左右にずらすことができ、したがって、鉄筋C3,C4と後施工アンカーC1との干渉を容易に回避することができる。
【0038】
道路側の後施工アンカーC1の植設位置を決定したならば、背面側アンカー挿通孔1b,1bに対応する領域を割り出し、当該領域内において、後側の後施工アンカーC2の植設位置を決定する。本実施形態では、斜め方向に延在する長孔を背面側アンカー挿通孔1bとしているので、後施工アンカーC2の植設位置を背面側アンカー挿通孔1bの範囲内で斜めにずらすことができ、したがって、鉄筋C3,C4と後施工アンカーC2との干渉を容易に回避することができる。
【0039】
後施工アンカーC1,C2を植設したならば、図1に示すように、防護柵用支柱A1を地覆Cに固定する(新設支柱設置工程)。防護柵用支柱A1を固定するには、道路側アンカー挿通孔1aに前側の後施工アンカーC1を挿入するとともに、背面側アンカー挿通孔1bに後側の後施工アンカーC2を挿入し、台座1から突出した後施工アンカーC1,C2にナットD1,D2を螺合すればよい。
【0040】
以上説明したように、防護柵用支柱A1によれば、背面側アンカー挿通孔1bに挿通される後施工アンカーC2の植設位置に高い自由度を持たせることができるので、防護柵用支柱A1の前後左右へのオフセット量を小さく抑えつつ、後施工アンカーC2と鉄筋C3,C4との干渉を回避することが可能になる。
【0041】
すなわち、図4の(b)に示す比較例に係る防護柵用支柱A´のように、背面側アンカー挿通孔1bが左右方向に延在する長孔である場合には、後施工アンカーの植設位置を長孔の範囲内で左右に移動させたとしても、左右方向に配筋された鉄筋C3(以下、「縦筋C3」と称する。)との干渉を回避できない場合がある。かかる場合には、図4の(c)に示すように、防護柵用支柱A´そのものを後方へオフセットさせる必要があるが、このようにすると、防護柵用支柱A´の前後方向へのオフセット量が大きくなるので、地覆Cからの食み出しや横梁の蛇行等が顕著になり、美観の悪化を招く虞がある。これに対し、本実施形態の防護柵用支柱A1によれば、その設置位置を前後にオフセットさせずとも、後施工アンカーC2の植設位置を前後方向にずらすことが可能になるので、後施工アンカーC2と縦筋C3との干渉を回避するにあたって、防護柵用支柱A1の前後方向へのオフセット量を小さく抑えることが可能になり、ひいては、横梁B(図1参照)の蛇行を小規模に止めることが可能になる。
【0042】
また、図示は省略するが、背面側アンカー挿通孔1bが前後方向に延在する長孔である場合には、後施工アンカーC2の植設位置を長孔の範囲内で前後に移動させたとしても、前後方向に配筋された鉄筋C4(以下、「横筋C4」と称する。)との干渉を回避できない場合がある。かかる場合には、防護柵用支柱そのものを左右へオフセットさせる必要があるが、このようにすると、防護柵用支柱の左右方向へのオフセット量が大きくなり、設置間隔の不揃いを招く虞がある。これに対し、本実施形態の防護柵用支柱A1によれば、その設置位置を左右にオフセットさせずとも、後施工アンカーC2の植設位置を左右方向にずらすことが可能になるので、後施工アンカーC2と横筋C4との干渉を回避するにあたって、防護柵用支柱A1の左右方向へのオフセット量を小さく抑えることが可能になり、ひいては、設置間隔の不揃いを抑制することが可能になる。
【0043】
また、本実施形態の防護柵用支柱A1によれば、背面側アンカー挿通孔1bの周囲における台座1の肉厚を、道路側アンカー挿通孔1aの周囲における台座1の肉厚よりも小さくしているので、防護柵用支柱A1の軽量化を図ることができる。
【0044】
さらに、本実施形態の防護柵用支柱A1によれば、台座1の後縁における幅寸法を、前縁における幅寸法よりも小さくしているので、防護柵用支柱A1の軽量化を図ることが可能になる。すなわち、台座1の後側の幅寸法を前側よりも小さくすると、前後の幅寸法を等しくした場合に比べて、台座1の面積を小さくすることができるので、台座1が軽量になり、ひいては、防護柵用支柱A1の軽量化を図ることが可能になる。
【0045】
なお、前側からの衝突荷重によって防護柵用支柱A1が後方に傾倒する際には、台座1の厚肉部11を曲げ上げようとする力が作用するようになるが、厚肉部11を肉厚に成形しているので、厚肉部11に発生する変形は極めて小さいものとなる。
【0046】
なお、本実施形態の防護柵用支柱A1は、既設の防護柵を取り替える場合のみならず、地覆を新設するにも使用することができる。
【0047】
(第二の実施形態)
第二の実施形態に係る防護柵用支柱A2は、図5に示すように、台座3と、台座3から立ち上る支柱本体4とを具備している。防護柵用支柱A2は、複数の鋼材を溶接により一体化してなる溶接構造物である。
【0048】
台座3は、地覆Cに固定される部位であり、本実施形態のものは、平面視長方形状の前部31と平面視台形状の後部32とに区分けされている。なお、台座3の厚さは一様である。
【0049】
前部31は、支柱本体4の前部を支持している。本実施形態の前部31は、支柱本体4よりも幅広であり、図6の(b)に示すように、支柱本体4の下端の側縁を通る直線P1よりも外側に延出している。
【0050】
後部32は、図5に示すように、前部31の後側に続く部位であって、支柱本体4の後部を支持している。本実施形態の後部32は、支柱本体4の下端部よりも幅広であり、図6の(b)に示すように、直線P1よりも外側に延出している。なお、後部32は、後方に向うにしたがって幅寸法が漸減する平面視台形状を具備しているので、台座3の後縁における幅寸法は、台座3の前縁における幅寸法よりも小さくなっている。
【0051】
図6の(b)に示すように、台座3には、左右一対の道路側アンカー挿通孔3a,3aと、左右一対の背面側アンカー挿通孔3b,3bとが形成されている。
【0052】
道路側アンカー挿通孔3aは、前部31のうち、直線P1,P1で挟まれた領域の外側に形成されている。道路側アンカー挿通孔3aは、左右方向に延在する長孔からなる。
【0053】
背面側アンカー挿通孔3bは、後部32に形成されていて、道路側アンカー挿通孔3aの後方に配置されている。背面側アンカー挿通孔3b,3bの中心間距離は、道路側アンカー挿通孔3a,3aの中心間距離よりも小さくなっている。背面側アンカー挿通孔3bは、左右方向に沿う基準線Qに対して傾斜する方向に延在する長孔からなる。背面側アンカー挿通孔3bの長軸と基準線Qとのなす角度θは、限定されるものではないが、本実施形態では45度に設定されている。
【0054】
支柱本体4は、図6の(a)に示すように、道路に面する道路側フランジ41と、道路側フランジ41の後方に配置された背面側フランジ42と、道路側フランジ41と背面側フランジ42とを繋ぐウェブ43と、上段の横梁Bの取付座となる上段受け部44と、下段の横梁Bの取付座となる下段受け部45,45とを具備している。
【0055】
道路側フランジ41は、図6の(b)に示すように、台座3の幅方向の中央部に配置されていて、道路側アンカー挿通孔3a,3aの中心同士を結ぶ線分Rよりも前方において台座3から立ち上っている。本実施形態の道路側フランジ41は、鋼板からなり、台座3の前縁に溶接により固着されている。
【0056】
背面側フランジ42は、台座3の幅方向の中央部に立設されていて、道路側アンカー挿通孔3a,3aの中心同士を結ぶ線分Rと背面側アンカー挿通孔3b,3bの中心同士を結ぶ線分Sとに挟まれた領域において台座3から立ち上っている。背面側フランジ42は、帯板状を呈する鋼板からなり、台座3の後半部分の上面に溶接により固着されている。
【0057】
ウェブ43は、台座3の幅方向の中央部に立設されている。本実施形態のウェブ43は、鋼板からなり、道路側フランジ41の幅方向の中央部と背面側フランジ42の幅方向の中央部とに溶接により固着されている。
【0058】
上段受け部44は、図6の(a)に示すように、支柱本体4の最上部に形成されており、上段の横梁Bの後部を支持している。本実施形態の上段受け部44は、へ字状に折り曲げられた鋼板からなり、道路側フランジ41の上端部と背面側フランジ42の上端部とに溶接により固着されている。
【0059】
下段受け部45は、上段受け部44の下方に形成されており、下段の横梁Bの後部を支持している。本実施形態の下段受け部45は、鋼材からなり、溶接により道路側フランジ41の前面に固着されている。
【0060】
本実施形態の防護柵用支柱A2を使用する場合も、背面側アンカー挿通孔3bに挿通される後施工アンカーC2の植設位置に高い自由度を持たせることができるので、防護柵用支柱A2の前後左右へのオフセット量を小さく抑えつつ、後施工アンカーC2と鉄筋C3,C4との干渉を回避することが可能になる。
【0061】
すなわち、防護柵用支柱A2によれば、その設置位置を前後にオフセットさせずとも、後施工アンカーC2の植設位置を前後方向にずらすことが可能になるので、後施工アンカーC2と縦筋C3との干渉を回避するにあたって、防護柵用支柱A2の前後方向へのオフセット量を小さく抑えることが可能になり、ひいては、横梁Bの蛇行を小規模に止めることが可能になる。
【0062】
(第三の実施形態)
第三の実施形態に係る防護柵用支柱A3は、図7に示すように、台座5と、台座5から立ち上る支柱本体6とを具備している。防護柵用支柱A3は、複数の鋼材を溶接により一体化してなる溶接構造物である。
【0063】
台座5は、地覆Cに固定される部位であり、本実施形態のものは、平面視長方形を呈している。台座5の厚さは一様である。
【0064】
図8の(b)に示すように、台座5には、左右一対の道路側アンカー挿通孔5a,5aと、左右一対の背面側アンカー挿通孔5b,5bとが形成されている。
【0065】
道路側アンカー挿通孔5aは、直線P1,P1で挟まれた領域の外側に形成されている。道路側アンカー挿通孔5aは、左右方向に延在する長孔からなる。
【0066】
背面側アンカー挿通孔5bは、道路側アンカー挿通孔5aの後方に配置されている。背面側アンカー挿通孔5b,5bの中心間距離は、道路側アンカー挿通孔5a,5aの中心間距離と等しくなっている。背面側アンカー挿通孔5bは、左右方向に沿う基準線Qに対して傾斜する方向に延在する長孔からなる。背面側アンカー挿通孔5bの長軸と基準線Qとのなす角度θは、限定されるものではないが、本実施形態では45度に設定されている。
【0067】
支柱本体6は、図8の(a)に示すように、道路に面する道路側フランジ61と、道路側フランジ61の後方に配置された背面側フランジ62と、道路側フランジ61と背面側フランジ62とを繋ぐウェブ63と、上段の横梁Bの取付座となる上段受け部64と、下段の横梁Bの取付座となる下段受け部65,65とを具備している。なお、支柱本体6の構成は、第二の実施形態で説明した支柱本体4の構成と同様であるが、背面側フランジ62は、背面側アンカー挿通孔3b,3bの中心同士を結ぶ線分S上において台座5から立ち上っている。
【0068】
本実施形態の防護柵用支柱A3を使用する場合も、背面側アンカー挿通孔5bに挿通される後施工アンカーC2の植設位置に高い自由度を持たせることができるので、防護柵用支柱A3の前後左右へのオフセット量を小さく抑えつつ、後施工アンカーC2と鉄筋C3,C4との干渉を回避することが可能になる。
【0069】
すなわち、防護柵用支柱A3によれば、その設置位置を前後にオフセットさせずとも、後施工アンカーC2の植設位置を前後方向にずらすことが可能になるので、後施工アンカーC2と縦筋C3との干渉を回避するにあたって、防護柵用支柱A3の前後方向へのオフセット量を小さく抑えることが可能になり、ひいては、横梁Bの蛇行を小規模に止めることが可能になる。
【符号の説明】
【0070】
A1,A2,A3 防護柵用支柱
1,3,5 台座
1a,3a,5a 道路側アンカー挿通孔
1b,3b,5b 背面側アンカー挿通孔
2,4,6 支柱本体
B 横梁
C 地覆
Q 基準線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路脇の地覆に固定される台座と、横梁を支持する支柱本体とを備える防護柵用支柱であって、
前記台座には、背面側アンカー挿通孔と、前記背面側アンカー挿通孔よりも道路寄りに位置する道路側アンカー挿通孔とが形成されており、
前記背面側アンカー挿通孔は、前記地覆の長手方向に沿う基準線に対して傾斜する方向に延在する長孔からなる、ことを特徴とする防護柵用支柱。
【請求項2】
前記道路側アンカー挿通孔は、左右方向に延在する長孔からなる、ことを特徴とする請求項1に記載の防護柵用支柱。
【請求項3】
前記背面側アンカー挿通孔の周囲における前記台座の肉厚が、前記道路側アンカー挿通孔の周囲における前記台座の肉厚よりも小さいことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の防護柵用支柱。
【請求項4】
前記台座の後縁における幅寸法は、その前縁における幅寸法よりも小さい、ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の防護柵用支柱。
【請求項5】
道路脇の地覆に設置された既設の防護柵用支柱を撤去する既設支柱撤去工程と、
前記地覆内の鉄筋を避けるようにアンカーを植設するアンカー植設工程と、
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の防護柵用支柱を前記地覆に固定する新設支柱設置工程と、を含む防護柵の取替え方法であって、
前記アンカー植設工程では、前記道路側アンカー挿通孔に挿通されるアンカーの植設位置を決定した後に、前記背面側アンカー挿通孔に対応する領域を割り出し、当該領域内において、前記背面側アンカー挿通孔に挿通されるアンカーの植設位置を決定する、ことを特徴とする防護柵の取替え方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−21435(P2011−21435A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−169441(P2009−169441)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(500538715)株式会社住軽日軽エンジニアリング (58)
【Fターム(参考)】