防護柵
【課題】落石の衝撃力を受けた横ロープ材を複数の支柱により効率よく支持する。
【解決手段】所定の間隔で複数の支柱2,2…を設け、前記支柱2,2…間に横ロープ材3,3Aを多段に設ける。横ロープ材3,3Aには、支柱2の前部とこの支柱2に隣接する支柱2の後部とを通る斜め配置部103,103Aを設け、隣接する支柱2,2…間において、多段に設けた横ロープ材3,3Aの少なくとも一組の斜め配置部103,103Aが前後方向において交差状に配置されている。隣接する支柱2,2…間で一組の斜め配置部103,103Aに落石Rが当たり、横ロープ材3,3Aが後方に撓むと、2本の横ロープ材3,3Aは4本の支柱2,2,2,2により支持されることになり、横ロープ材3,3Aを複数の支柱により効率よく支持することができる。
【解決手段】所定の間隔で複数の支柱2,2…を設け、前記支柱2,2…間に横ロープ材3,3Aを多段に設ける。横ロープ材3,3Aには、支柱2の前部とこの支柱2に隣接する支柱2の後部とを通る斜め配置部103,103Aを設け、隣接する支柱2,2…間において、多段に設けた横ロープ材3,3Aの少なくとも一組の斜め配置部103,103Aが前後方向において交差状に配置されている。隣接する支柱2,2…間で一組の斜め配置部103,103Aに落石Rが当たり、横ロープ材3,3Aが後方に撓むと、2本の横ロープ材3,3Aは4本の支柱2,2,2,2により支持されることになり、横ロープ材3,3Aを複数の支柱により効率よく支持することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雪崩や落石による衝撃力を横ロープ材によって分散吸収する防護柵に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の雪崩・落石防護柵では、所定の間隔で支柱を設け、各支柱の間に水平横ロープ材を水平方向のスライドを許容した状態で係留し、水平横ロープ材の両端は固定し、各支柱間を水平横ロープ材に掛止させたワイヤ製のネットで遮蔽し、前記水平横ロープ材の途上に横ロープ材を重合させて形成した余長部と、余長部を一定の力で挟持する挟持具とにより、水平横ロープ材に設定張力以上の張力が作用したとき、水平横ロープ材が一定の摩擦力を保持したまま余長部が伸長して張力を吸収する緩衝部を形成したものが開示されている(例えば特許文献1)。これにより、衝撃を支柱に伝える前に水平横ロープ材の一部に形成した緩衝部の摺動により衝撃を吸収することができるため、従来と比較して支柱の荷重負担を著しく軽減できるだけでなく、ワイヤネットとの共働により、従来と比較して効果的に衝撃を吸収することができる。
【0003】
上記防護柵の一例を図26に示すと、所定の間隔で支柱2を設け、各支柱2,2の間に水平横ロープ材3を多段に設け、落石が水平横ロープ材3に衝突すると、支柱2,2間で水平横ロープ材3が撓み、落石Rの荷重を受ける。
【0004】
図26に示した防護柵では、支柱2,2間の水平横ロープ材3に落石を受けると、主としてその荷重を両側の支柱2,2が支えることにより、それら両側の支柱2,2に大きな荷重が集中する問題がある。
【0005】
また、衝撃力の吸収効果を高めるために、多段的に配置した複数のロープに跨り、ロープの交差方向に向けて波状の連結材を配置し、前記多段に配置したロープと該連結材との交差部を締結具で締結した衝撃吸収柵が提案され、この衝撃吸収柵では支柱間にロープを平面八の字形に巻き掛けることが記載されている(例えば特許文献2)。
【0006】
上記の衝撃吸収柵では、各段のロープをループ状にして支柱間に巻き掛けることにより、落石時にロープが支柱に摺動して衝撃力を吸収することができるが、上記防護柵と同様に落石の荷重は両側の支柱で支えるため、強度の高い支柱を用いる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平7−018134号公報
【特許文献2】特開2003−184035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は上記の各問題点に着目してなされたもので、落石の衝撃力を受けた横ロープ材を複数の支柱により効率よく支持することができる防護柵を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の防護柵は、上記目的を達成するために、所定の間隔で複数の支柱を設け、前記支柱間に横ロープ材を多段に設けた防護柵において、前記横ロープ材には、前記支柱の前部とこの支柱に隣接する前記支柱の後部とを通る斜め配置部を設け、隣接する支柱間において、多段に設けた横ロープ材の少なくとも一組の前記斜め配置部が前後方向において交差状に配置されていることを特徴とする。
【0010】
このように隣接する支柱間において、少なくとも一組の傾斜配置部を交差状に配置することにより、隣接する支柱間で一組の傾斜配置部に落石が当たり、横ロープ材が後方に撓むと、一方の傾斜配置部は、隣接する支柱の一方と、隣接する支柱の他方の隣の支柱に支持され、他方の斜め配置部は、隣接する支柱の他方と、隣接する支柱の一方の隣の支柱に支持され、2本の横ロープ材は4本の支柱により支持されることになり、横ロープ材を複数の支柱により効率よく支持することができる。
【0011】
また、上記の防護柵において、隣接する支柱間において、上下に隣接する横ロープ材の少なくとも一組の前記斜め配置部が前後方向において交差状に配置されていることを特徴とする。
【0012】
このように交差状に配置する斜め配置部が上下に位置するため、落石をそれら上下の横ロープ材の斜め配置部により捕捉することができる。
【0013】
また、上記の防護柵において、隣接する支柱間において、略同一平面に位置する一組の前記斜め配置部が前後方向において交差状に配置されている。
【0014】
このように交差状に配置する斜め配置部が略同一平面に位置するため、落石を複数の横ロープ材により捕捉することができる。
【0015】
また、上記の防護柵において、前記横ロープ材には、隣接する支柱の後部間を通る直線配置部を設けたことを特徴とする。
【0016】
このように横ロープ材を隣接する支柱の後部間を通し、それら支柱の隣の支柱の前部を通すことにより、落石位置から離れた支柱により落石の荷重を支えることができる。
【0017】
また、上記の防護柵において、前記横ロープ材が前記支柱の前部に摺動することを特徴とする。
【0018】
このように横ロープ材が支柱の前部に摺動することにより、横ロープ材が後方に撓み、支柱前部に落石の荷重が加わる。
【0019】
さらに、上記の防護柵において、前記支柱の前部を曲面状に形成したことを特徴とする。
【0020】
これにより横ロープ材が円滑に摺動することができる。
【0021】
さらに、上記の防護柵において、前記支柱の前部の曲率半径が前記横ロープ材の直径の10倍以上であることを特徴とする。
【0022】
これにより横ロープ材が撓んでも、横ロープ材に無理な曲げが発生することなく、横ロープ材の性能低下を防止できる。
【0023】
さらにまた、上記の実施例において、前記横ロープ材の端部又は端部に連結した部材に載荷面を有する載荷部材を設けると共に、前記支柱に載荷面を設け、それら両載荷面間にリング材を挟んで配置したことを特徴とする。
【0024】
これにより雪崩・落石等の衝撃力を受け、横ロープ材に引張力が加わると、両載荷面間が狭まり、リングが押し潰され、このリング材の変形により衝撃エネルギーを吸収することができる。
【0025】
さらにまた、上記の実施例において、前記横ロープ材の端部を把持する緩衝具を設け、前記横ロープ材が所定以上の張力を受けた場合、前記緩衝具に対して前記横ロープ材が摩擦摺動するように構成したことを特徴とする。
【0026】
これにより雪崩・落石等の衝撃力を受け、横ロープ材に所定以上の引張力が加わると、前記緩衝具に対して前記横ロープ材が摩擦摺動するにより衝撃エネルギーを吸収することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の防護柵によれば、落石を受けた横ロープ材を複数の支柱で支えることにより、落石の衝撃力を受けた横ロープ材を複数の支柱により効率よく支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施例1を示す防護柵の概略平面図であり、図1(A)は落石を受ける前、図1(B)は落石を受けた状態を示す。
【図2】同上、防護柵の正面図である。
【図3】同上、支柱の要部の側面図で示している。
【図4】本発明の実施例2を示す防護柵の概略平面図である。
【図5】同上、防護柵の正面図である。
【図6】同上、落石を受けた状態を説明する平面図である。
【図7】本発明の実施例3を示す支柱要部の側面図である。
【図8】本発明の実施例4を示す支柱要部の側面図である。
【図9】本発明の実施例5を示す一部を断面にした衝撃吸収装置周りの正面図である。
【図10】同上、載荷装置の正面図である。
【図11】同上、鋼管リングの斜視図である。
【図12】同上、孔無で、載荷面の幅が200mmの場合の荷重と変形量の関係を表すグラフ図である。
【図13】同上、孔有で、載荷面の幅が200mmの場合の荷重と変形量の関係を表すグラフ図である。
【図14】同上、孔無で、載荷面の幅が100mmの場合の荷重と変形量の関係を表すグラフ図である。
【図15】同上、孔有で、載荷面の幅が100mmの場合の荷重と変形量の関係を表すグラフ図である。
【図16】同上、孔無で、載荷面の幅が75mmの場合の荷重と変形量の関係を表すグラフ図である。
【図17】同上、孔有で、載荷面の幅が75mmの場合の荷重と変形量の関係を表すグラフ図である。
【図18】同上、孔有で、載荷面の幅が200mmの場合の荷重と変形量の関係を表すグラフ図であり、吸収エネルギーEの量をハッチングで表している。
【図19】同上、孔有で、載荷面の幅が75mmの場合の荷重と変形量の関係を表すグラフ図であり、吸収エネルギーEの量をハッチングで表している。
【図20】同上、載荷面の幅が200mmの場合の鋼管リングの変形を示す説明図である。
【図21】同上、載荷面の幅が75mmの場合の鋼管リングの変形を示す説明図である。
【図22】同上、載荷面の幅が100mmの場合の鋼管リングの変形を示す説明図である。
【図23】本発明の実施例6を示す側面図である。
【図24】本発明の実施例7を示す衝撃吸収装置周りの平面図である。
【図25】本発明の実施例8を示す衝撃吸収装置周りの平面図である。
【図26】従来例を示す防護柵の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。各実施例では、従来とは異なる新規な防護柵を採用することにより、従来にない防護柵が得られ、その防護柵について記述する。
【実施例1】
【0030】
以下、本発明の実施例を添付図面を参照して説明する。図1〜図3は本発明の実施例1を示し、同図に示すように、防護柵である落石防護柵は、斜面あるいは斜面に並んで基礎たるコンクリート基礎1を設け、このコンクリート基礎1に複数の支柱2…を立設する。前記支柱2は、H型鋼,コンクリート柱,鋼管あるいはコンクリート充填鋼管などからなり、この例では断面円形の鋼管を用い、その下端を前記コンクリート基礎1に固着している。前記支柱2間には横ロープ材3,3Aが上下段に設けられ、これら横ロープ材3,3Aの端部を固定し、支柱2,2の間は金網4により遮蔽されている。尚、図1において、理解を容易にするために、横ロープ材3を太線、横ロープ材3Aを細線で表している。
【0031】
支柱2は上記のように基礎に固定してもよいし、下部を地中に建て込んで固定してもよいし、下部を斜面などに位置固定すると共に、山側と谷側の控え横ロープ材により固定してもよい。
【0032】
図2に示すように、前記横ロープ材3,3Aは、上下方向に間隔を置いて、交互に配置され、第1の横ロープ材3は隣合う支柱2の前部と後部とを交互に通るように配置され、前記第1の横ロープ材3とは逆に、第2の横ロープ材3Aは隣合う支柱2の後部と前部とを交互に通るように配置されている。即ち、横ロープ材3と横ロープ材3Aとは、支柱2の前部と後部とを逆に通るように配置されている。これにより、横ロープ材3,3Aには、支柱2の前部とこの支柱2に隣接する支柱2の後部とを通る斜め配置部103,103Aが設けられ、これら斜め配置部103,103Aは、前後方向において交差状に配置されている。尚、図中Mは防護柵の前側、図中Uは後側である。
【0033】
尚、図3に示すように、支柱2の前部にリング状の係止部11を設け、この係止部11に横ロープ材3,3Aを係止して、横ロープ材3,3Aの高さ位置を決めるようにすればよい。一方、支柱2の後部には係止部を設けずに、横ロープ材3,3Aを載置する載置部12を設け、載置部12に載置した横ロープ材3,3Aが、支柱2から離れることができるように構成している。尚、載置部12は必ずしも設ける必要はない。また、係止部11は、上部が開口したフック状のものでもよい。
【0034】
また、前記支柱2の外形は円筒状をなし、支柱2の前部及び後部が曲面状に形成されている。また、支柱2の直径は横ロープ材3,3Aの直径の20倍以上としている。また、横ロープ材3,3Aには、ワイヤーロープを用いることが好ましいが、各種の材質のものを用いることができる。このようにすることにより、図1(B)に示すように、落石により横ロープ材3,3Aが支柱2に沿って曲がっても、横ロープ材3,3Aの引張耐力の低下を抑制できる。
【0035】
そして、落石Rにより上下段の横ロープ材3,3Aに張力が発生し、後方に撓むと、図1(B)に示すように、横ロープ材3は、落石Rを挟む支柱2,2の一方と、他方の支柱2の隣の支柱2により支持され、横ロープ材3Aは、落石Rを挟む支柱2,2の他方と、一方の支柱2の隣の支柱2により支持され、この場合は、主として4本の支柱2,2,2,2に落石Rの衝撃を分散することができる。
【0036】
このように本実施例では、所定の間隔で複数の支柱2,2…を設け、前記支柱2,2…間に横ロープ材3,3Aを多段に設けた防護柵において、横ロープ材3,3Aには、支柱2の前部とこの支柱2に隣接する支柱2の後部とを通る斜め配置部103,103Aを設け、隣接する支柱2,2…間において、多段に設けた横ロープ材3,3Aの少なくとも一組の斜め配置部103,103Aが前後方向において交差状に配置されているから、隣接する支柱2,2…間で一組の斜め配置部103,103Aに落石Rが当たり、横ロープ材3,3Aが後方に撓むと、一方の斜め配置部103は、隣接する支柱2の一方と、隣接する支柱2の他方の隣の支柱2とに支持され、他方の斜め配置部103Aは、隣接する支柱2の他方と、隣接する支柱2の一方の隣の支柱2とに支持され、2本の横ロープ材3,3Aは4本の支柱2,2,2,2により支持されることになり、横ロープ材3,3Aを複数の支柱により効率よく支持することができる。
【0037】
また、このように本実施例では、隣接する支柱2,2…間において、上下に隣接する横ロープ材3,3Aの少なくとも一組の斜め配置部103,103Aが前後方向において交差状に配置されているから、落石Rをそれら上下の横ロープ材3,3Aの斜め配置部103,103Aにより捕捉することができる。
【0038】
また、このように本実施例では、横ロープ材3,3Aが支柱2の前部に摺動するから、横ロープ材3,3Aが後方に撓み、支柱2の前部に落石Rの荷重が加わる。
【0039】
また、このように本実施例では、支柱2の前部を曲面状に形成したから、横ロープ材3,3Aが円滑に摺動することができる。
【0040】
また、このように本実施例では、支柱2の前部の曲率半径が横ロープ材3,3Aの直径の10倍以上であるから、横ロープ材3,3Aに無理な曲げが発生することなく、横ロープ材の性能低下を防止できる。
【実施例2】
【0041】
図4〜図6は、本発明の実施例2を示し、上記実施例1と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。
【0042】
この例では、前記支柱2間には横ロープ材3B,3C,3Dが上下段に設けられ、隣接する支柱2,2の後部間を通る直線配置部を横ロープ材3B,3C,3Dに設けている。尚、図3において、理解を容易にするために、横ロープ材3Bを太線、横ロープ材3Cを中線、横ロープ材3Dを細線で表している。
【0043】
横ロープ材3B,3C,3Dは、防護柵の一側から他側に向って、支柱2の前部と2本の支柱2の後部と支柱2の前部とを通るように配置され、斜め配置部103B,103C,103D,直線配置部104B,104C,104D,斜め配置部103B,103C,103Dの順に配置されており、それぞれ2本の支柱2,2の後部を通った後、支柱2の前部を通るように配置されている。
【0044】
防護柵の一側から他側に向って、第1の横ロープ材3Bが前部を通る支柱2の一側の隣の支柱2の前部に、第2の横ロープ材3Cが通り、この第2の横ロープ材3Cが前部を通る支柱2の一側の隣の支柱2の前部に、第2の横ロープ材3Dが通るように配置されている。
【0045】
そして、落石Rにより上下段の横ロープ材3B,3C,3Dに張力が発生し、後方に撓むと、図6に示すように、横ロープ材3Bは、落石Rを挟む支柱2,2の一方(図6中左側)と、他方(図6中右側)の支柱2の2本隣の支柱2により支持され、横ロープ材3Cは、落石Rを挟む支柱2,2のそれぞれ隣の支柱2,2により支持され、横ロープ材3Dは、落石Rを挟む支柱2,2の他方と、一方の支柱2の2本隣の支柱2により支持され、
この場合は、主として6本の支柱2,2,2,2,2,2に落石Rの衝撃を分散することができる。
【0046】
このように本実施例では、上記実施例と同様な作用・効果を奏する。
【0047】
また、このように本実施例では、横ロープ材3B,3C,3Dには、隣接する支柱2,2の後部間を通る直線配置部104B,104C,104Dを設けたから、横ロープ材3B,3C,3Dを隣接する支柱2,2の後部間を通し、それら支柱2,2の隣の支柱2の前部を通すことにより、落石位置から離れた支柱2により落石Rの荷重を支えることができる。
【実施例3】
【0048】
図7は、本発明の実施例3を示し、上記各実施例と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。
【0049】
この例では、上記実施例1において、横ロープ材3,3Aを略同一平面状に配置した例であり、図7に示すように、各段に2本の横ロープ材3,3Aを近接して配置している。尚、係止部11は、図示省略している。
【0050】
このように本実施例においても、上記各実施例と同様な作用・効果を奏する。
【0051】
このように本実施例では、隣接する支柱2,2間において、略同一平面に位置する一組の斜め配置部103,103Aが前後方向において交差状に配置されているから、同一平面状に位置する複数の横ロープ材3,3Aにより落石Rを捕捉することができる。
【実施例4】
【0052】
図8は、本発明の実施例4を示し、上記各実施例と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。
【0053】
この例では、上記実施例2において、横ロープ材3B,3C,3Dを略同一平面状に配置した例であり、尚、係止部11は、図示省略しており、図8に示すように、各段に3本の横ロープ材3B,3C,3Dを近接して配置している。
【0054】
このように本実施例においても、上記各実施例と同様な作用・効果を奏する。
【0055】
このように本実施例では、隣接する支柱2,2間において、略同一平面に位置する一組の斜め配置部103B,103C,103Dが前後方向において交差状に配置されているから、同一平面状に位置する複数の横ロープ材3B,3C,3Dにより落石Rを捕捉することができる。
【実施例5】
【0056】
図9〜図19は、本発明の実施例5を示し、上記各実施例と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。
【0057】
この例では、前記水平横ロープ材3の端部3Tは、衝撃吸収装置111により端末の支柱2Tに連結され、この端末の支柱2Tは、ウエブ部105と両フランジ部106,106とを有するH型鋼から構成されている。前記衝撃吸収装置111は、鋼管などからなるリング材112と、このリング材112を外周両側から挟むように配置される載荷部材たる載荷板113,113と、それら載荷板113,リング材112及び載荷板113に挿通する前記端部3Tと、この端部3Tに設ける端末定着具114とを備える。
【0058】
そして、この例では、前記衝撃吸収装置111を取り付ける箇所が前記ウエブ部105であり、このウエブ部105に貫通孔105Kを形成し、前記載荷板113,113のほぼ中心位置に貫通孔113K,113Kを形成し、また、前記リング材112には周方向に対向した位置に貫通孔112K,112Kをそれぞれ形成する。そして、この例では前記支柱2Tのウエブ部105が取付位置であり、前記端部3Tを、前記貫通孔105K,113K,112K,112K,113Kの順で挿通し、この挿通した端部3Tを前記端末定着具114により定着する。尚、端末定着具114は端末3Tにくさび作用などにより固定される公知のものである。そして、前記載荷板113,113のリング材112の外周に当接する側の面が、載荷面113M,113Mである。尚、図示しないが、水平横ロープ材3には、端部3Tの他端側の端部に、同様に衝撃吸収装置111を設けてもよいし、前記他端側の端部を他の支柱2,2Tに固定するようにしてもよい。
【0059】
前記載荷面113Mは、前記リング材112の長さ方向の幅とほぼ同一の幅を有し、又は大きな幅を有し、一方、リング材112の直径方向の幅Wは、該リング材112の直径D寸法より小さく、好ましくは、後述するように、対向する内面が当接するまで潰されたリング材112の湾曲状突部112D,112Dの間隔K寸法より小さく設定する。
【0060】
この載荷面Mの構成に係る実験を以下に説明する。
【0061】
図10に示すように、実験装置として、載荷装置201を用い、この載荷装置201は、固定プレート202側に荷重を計測する計測装置203を設け、可動プレート204を昇降する昇降部205と、固定プレート202と可動プレート204との間の変位量を測定するレーザー変位計206とを備え、前記固定プレート202と可動プレート204との間に、リング材に相当する鋼管リング211を直径方向に立てて挟み、可動プレート204を降下させ、鋼管リング211に加わる荷重と該鋼管リング211の変形量とを測定した。
【0062】
図11に示すように、鋼管リング211は、機械構造用炭素鋼鋼管(STKM13A)を用い、呼び径175で、外径φを190.7mm、厚さtを12mm、長さLを150mmとした。また、両プレート202,204の鋼管リング211の直径方向の幅PLを、200mm、100mm,75mmの場合のそれぞれについて、加えた荷重P(kN)とその時の鋼管リング211の変位量δ(mm)の関係を測定し、図12〜図17グラフ図に示した。尚、プレート202,204の幅は載荷面の幅に相当する。
【0063】
尚、実際の使用条件に合わせるため、鋼管リング211には、前記貫通孔112Kに相当する貫通孔211K,211Kがないものと、貫通孔211K,211Kがあるものとをそれぞれ用いて実験を行ない、貫通孔211Kの有る無しを「孔有」「孔無」のグラフ線としてグラフ図に記載した。また、グラフ図には、線材の破断強度の一例として、荷重P=157.0kNの位置に印をつけた。
【0064】
図18は、図13において、線材が破断する強度までに、鋼管リング211の変形により吸収する吸収エネルギーEの量をハッチングで示したものであり、引張荷重が157.0kNで線材が破断するから、この時の鋼管リング211の変形量δは87.54mmであり、吸収エネルギーEは10.0kJとなる。しかし、87.54mmの変形量δから先も鋼管リング211は変形するから、鋼管リング211の変形による衝撃吸収にロスが発生する。そこで、同図の「薄肉」に示すように、鋼管リング211の厚さtを12mmより薄くすれば、線材が破断するまでの変形量δは概算で140mm程度となるが、「薄肉」のグラフ線は勾配を有するため、このグラフ線と、線材が破断する荷重P=157.0kNの横線との間の面積がロスとなる。また、仮に線材の破断する荷重Pを300.0kNに上げれば、吸収エネルギーEは前記10.0kJより大きくなるが、実線のグラフ線と、荷重P=300.0kNの横線との間の面積がエネルギー吸収の上からロスとなり、線材の引張強度を大幅に上げ、コストも上昇する割りには効果が少ないことが分かる。
【0065】
一方、図19は、図17において、線材が破断する強度までに、鋼管リング211の変形により吸収する吸収エネルギーEの量をハッチングで示したものであり、上記図12と同様に、引張荷重が157.0kNで線材が破断するから、この時の鋼管リング111の変形量δは143.89mmであり、吸収エネルギーEは18.3kJとなり、図12の場合に比べて、変形量δの増加に伴い荷重Pの増加が緩やか或いはほぼ一定の割合が大きく、鋼管リング211の変形による衝撃吸収に優れることが分かる。
【0066】
次に、図20〜図22を用いて、上記のようにプレート202,204の幅PLの違いによる鋼管リング211の変形について説明する。尚、図20〜図22においては、(A)から(C)に向って鋼管リング211が潰れていく状態を示している。図20は、幅PLが200mmの場合の鋼管リング211の変形を示し、円形の状態から、図20(A)に示すように、プレート202,204の中央位置で鋼管リング211に凹みが生じ、この凹みの両側に湾曲状突部112D,112Dが発生する。ここからさらに鋼管リング211を図20(B)(C)のように押し潰すと、変形量δに対して荷重Pが増大し、図12又は図13に示したグラフとなる。一方、図21に示すように、幅PLが75mmの場合、円形の状態から、図21(A)に示すように、プレート202,204の中央位置で鋼管リング211に凹みが生じ、この凹みの両側に湾曲状突部112D,112Dが発生するが、プレート202,204は湾曲状突部112D,112Dの最大突出部分を押すことなく、図21(B)(C)のように湾曲状突部112D,112Dの間で鋼管リング211を押すため、変形量δの増加しても荷重Pの増加が緩やか或いはほぼ一定の割合が高く、鋼管リング211において対向する内面が当接するまでほぼ均一な力で変形させることができる。また、図22に示すように、幅PLが100mmの場合も、図21とほぼ同様に鋼管リング211が変形する。
【0067】
このように実験から、使用するリング材112の大きさ及び厚さ、載荷面113Mのリング材112の直径方向の幅W、線材である水平横ロープ材3の引張強度等を設定することにより、リング材112の変形による吸収エネルギーが最大となるように設定することが可能となることが分かった。尚、図19を用いて補足説明すると、線材の破断強度に対応する荷重P=157.0kNと、リング材112の内径寸法との積に対応するエネルギーに対して、吸収エネルギーを50%以上、好ましくは60%以上とする。尚、前記リング材112の内径寸法は、リング材112の最大変位量である。
【0068】
そして、落石等により衝撃力が加わると、水平横ロープ材3に引張力が発生し、端末定着具114が支柱2T側に移動し、載荷面113M,113Mによりリング材112が押し潰され、これにより衝撃エネルギーを吸収し、対向する内面が当接するまでリング材112が潰れた後は、水平横ロープ材2が伸び破断することにより衝撃エネルギーが吸収される。
【0069】
このように本実施例においても、上記各実施例と同様な作用・効果を奏する。
【0070】
また、このように本実施例では、横ロープ材3,3A,3B,3C,3Dの端部又は端部に連結した部材に載荷面113Mを有する載荷部材たる載荷板113を設けると共に、防護柵の支柱2Tに載荷面113Mを設け、それら両載荷面113M,113M間にリング材112を挟んで配置したから、雪崩・落石等の衝撃力により、水平横ロープ材3に引張力が加わると、両載荷面113M,113M間が狭まり、リング材112が押し潰され、このリング材112の変形により衝撃エネルギーを吸収することができる。
【0071】
また、所定の間隔で複数の支柱2…2Tを設け、支柱2…2T間に水平方向の線材たる水平横ロープ材3を設けた防護柵において、水平横ロープ材3の端部3Tに載荷面113Mを有する載荷部材たる載荷板113を設けると共に、支柱2Tに載荷面113Mを設け、それら両載荷面113M,113M間にリング材112を挟んで配置したから、雪崩・落石等の衝撃力により、水平横ロープ材3に引張力が加わると、両載荷面113M,113M間が狭まり、リング材112が押し潰され、このリング材113の変形により衝撃エネルギーを吸収することができる。
【0072】
また、リング材112が鋼製であるから、部材が簡易で比較的安価なものとなる。
【0073】
また、線材たる水平横ロープ材3に加わる張力により、両載荷面113M,113M間でリング材112を潰し、少なくとも一方の載荷面113Mのリング材112の直径方向における幅Wは、リング材112の直径Dより狭いから、水平横ロープ材3の引張力によりリング材112を押し潰すと、リング材112は対向する内面が当接する略∞状に変形するが、載荷面113M,113Mの幅Wがリング材112の直径Dより狭いから、載荷面113Mがその略∞状の湾曲突部112D,112Dを押し潰すことが無い。そして、略∞状に変形した後、その湾曲突部112D,112Dを押し潰すには、大きな力が必要であり、そのため水平横ロープ材3の引張力が増大し、早期に水平横ロープ材3が破断するが、載荷面113Mの幅Wがリング材112の直径Dより狭いから、水平横ロープ材3の早期の破断を防止することができ、衝撃エネルギーの吸収効果に優れたものとなる。
【0074】
また、線材たる水平横ロープ材3に加わる張力により、両載荷面113M,113M間でリング材112を潰し、リング材112の直径方向における載荷面113Mの幅Wは、潰されたリング材112の幅方向両側に発生する湾曲突部112D,112D間の間隔Kより狭いから、リング材112は対向する内面が当接する略∞状に変形し、これにより引張力の上昇により水平横ロープ材3が破断するまでの間、リング材12に加わる力がほぼ一定或いは緩やかに上昇しながら該リング材112が変形する範囲が大となり、これによりリング材112に加わる力とリング材112の変形量の積に相当する衝撃エネルギーの吸収量を大幅に増加することができる。
【0075】
また、線材たる水平横ロープ材3は、対向する内面が当接するまでリング材112が潰れても破断しない引張強度を有するから、リング材112が略∞状に潰れるまで、衝撃エネルギーを吸収することができる。
【0076】
また、衝撃エネルギー吸収量設定方法であって、リング材112の直径Dとリング材112の直径方向における載荷面113Mの幅Wとを調整してリング材112の変形による衝撃エネルギー吸収量を調整するから、載荷面113の幅Wなどを調整してリング材112の変形条件を変更することにより、該リング材112の変形による衝撃エネルギー吸収量を任意に設定することができる。
【0077】
また、線材たる水平横ロープ材3が、対向する内面が当接するまでリング材112が潰れても破断しない引張強度を有するように設定したから、リング材112が潰れるまで、衝撃エネルギーを吸収することができる。
【実施例6】
【0078】
図23は本発明の実施例6を示し、上記各実施例と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述すると、この例では、支柱2T側には載荷板を設けずに、支柱2Tのウエブ部105の外面105Gにより平坦な載荷面を構成しており、このように載荷面113Mと外面105Gの幅Wの少なくとも一方は、リング材112の直径Dより狭いから、上記各実施例と同様な作用・効果を奏する。
【実施例7】
【0079】
図24は本発明の実施例7を示し、上記各実施例と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述すると、この例では、水平横ロープ材3の端部3Tに、部材たる索端金具131を連結し、この索端金具131端部の鋼棒132の端部132Tを、衝撃吸収装置111により端末の前記支柱2Tに連結している。尚、前記端部132Tに雄螺子部を設け、この雄螺子部にダブルのナット133,133を螺合することにより定着している。
【0080】
このように本実施例では、線材たる水平横ロープ材3の端部3T連結した部材である索端金具131の鋼棒132に、リング材112を設け、このリング材112の両側に、載荷面113Mを有する載荷部材たる載荷板113を設けたから、各請求項に対応して、上記各実施例と同様な作用・効果を奏する。
【実施例8】
【0081】
図25は、本発明の実施例8を示し、上記各実施例と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。
【0082】
この例では、衝撃吸収装置である緩衝具304は、前記横ロープ材3を所定の摩擦力で把持する一対の把持体321,321を備え、これら把持体321,321の合せ面に、横ロープ材3に嵌合する一対の嵌合溝(図示せず)を形成し、両把持体321,321は、ボルト323とナット324を備えた締付固定手段323,323により締め付けられ、前記横ロープ材3の端部には、緩衝具304に係止するストッパ306を設けている。
【0083】
そして、落石などを受けて、把持体321,321は横ロープ材3,3A,3B,3C,3Dを所定の摩擦力で把持すると共に、所定以上の張力が作用したとき横ロープ材3,3A,3B,3C,3Dの摩擦摺動を許容するものであり、前記横ロープ材3,3A,3B,3C,3Dに張力が発生すると、嵌合溝に対して横ロープ材3,3A,3B,3C,3Dの端部が摺動摩擦することにより、落石のエネルギーを吸収することができる。尚、ストッパ306が把持体321,321に係止した後は、横ロープ材3,3A,3B,3C,3Dにより落石のエネルギーに対抗する。この場合、把持体321,321から外側に伸びる横ロープ材3,3A,3B,3C,3Dの余長部3Y分だけ、横ロープ材3,3A,3B,3C,3Dが伸張することができる。
【0084】
このように本実施例では、横ロープ材3,3A,3B,3C,3Dの端部を把持する緩衝具304を設け、横ロープ材3,3A,3B,3C,3Dが所定以上の張力を受けた場合、緩衝具304に対して横ロープ材3,3A,3B,3C,3Dが摩擦摺動するように構成したから、雪崩・落石等の衝撃力を受け、横ロープ材3,3A,3B,3C,3Dに所定以上の引張力が加わると、緩衝具304に対して横ロープ材3,3A,3B,3C,3Dが摩擦摺動するにより衝撃エネルギーを吸収することができる。
【0085】
また、このように図23〜図25の構成では落石Rの力により移動可能な余長部3Yを有するから、落石Rにより横ロープ材3,3A,3B,3C,3Dが後方に撓んで複数の支柱2,2…により支持することにより、効率よく衝撃力を緩和することができる。
【0086】
尚、本発明は、本実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、支柱の断面形状は楕円形でもよい。また、直線配置部を、3本以上の支柱の後部を通るように構成してもよい。
【符号の説明】
【0087】
1 コンクリート基礎
2 支柱
3,3A,3B,3C,3D 横ロープ材
103,103A,103B,103C,103D 斜め配置部
104B,104C,104D 直線配置部
【技術分野】
【0001】
本発明は、雪崩や落石による衝撃力を横ロープ材によって分散吸収する防護柵に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の雪崩・落石防護柵では、所定の間隔で支柱を設け、各支柱の間に水平横ロープ材を水平方向のスライドを許容した状態で係留し、水平横ロープ材の両端は固定し、各支柱間を水平横ロープ材に掛止させたワイヤ製のネットで遮蔽し、前記水平横ロープ材の途上に横ロープ材を重合させて形成した余長部と、余長部を一定の力で挟持する挟持具とにより、水平横ロープ材に設定張力以上の張力が作用したとき、水平横ロープ材が一定の摩擦力を保持したまま余長部が伸長して張力を吸収する緩衝部を形成したものが開示されている(例えば特許文献1)。これにより、衝撃を支柱に伝える前に水平横ロープ材の一部に形成した緩衝部の摺動により衝撃を吸収することができるため、従来と比較して支柱の荷重負担を著しく軽減できるだけでなく、ワイヤネットとの共働により、従来と比較して効果的に衝撃を吸収することができる。
【0003】
上記防護柵の一例を図26に示すと、所定の間隔で支柱2を設け、各支柱2,2の間に水平横ロープ材3を多段に設け、落石が水平横ロープ材3に衝突すると、支柱2,2間で水平横ロープ材3が撓み、落石Rの荷重を受ける。
【0004】
図26に示した防護柵では、支柱2,2間の水平横ロープ材3に落石を受けると、主としてその荷重を両側の支柱2,2が支えることにより、それら両側の支柱2,2に大きな荷重が集中する問題がある。
【0005】
また、衝撃力の吸収効果を高めるために、多段的に配置した複数のロープに跨り、ロープの交差方向に向けて波状の連結材を配置し、前記多段に配置したロープと該連結材との交差部を締結具で締結した衝撃吸収柵が提案され、この衝撃吸収柵では支柱間にロープを平面八の字形に巻き掛けることが記載されている(例えば特許文献2)。
【0006】
上記の衝撃吸収柵では、各段のロープをループ状にして支柱間に巻き掛けることにより、落石時にロープが支柱に摺動して衝撃力を吸収することができるが、上記防護柵と同様に落石の荷重は両側の支柱で支えるため、強度の高い支柱を用いる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平7−018134号公報
【特許文献2】特開2003−184035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は上記の各問題点に着目してなされたもので、落石の衝撃力を受けた横ロープ材を複数の支柱により効率よく支持することができる防護柵を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の防護柵は、上記目的を達成するために、所定の間隔で複数の支柱を設け、前記支柱間に横ロープ材を多段に設けた防護柵において、前記横ロープ材には、前記支柱の前部とこの支柱に隣接する前記支柱の後部とを通る斜め配置部を設け、隣接する支柱間において、多段に設けた横ロープ材の少なくとも一組の前記斜め配置部が前後方向において交差状に配置されていることを特徴とする。
【0010】
このように隣接する支柱間において、少なくとも一組の傾斜配置部を交差状に配置することにより、隣接する支柱間で一組の傾斜配置部に落石が当たり、横ロープ材が後方に撓むと、一方の傾斜配置部は、隣接する支柱の一方と、隣接する支柱の他方の隣の支柱に支持され、他方の斜め配置部は、隣接する支柱の他方と、隣接する支柱の一方の隣の支柱に支持され、2本の横ロープ材は4本の支柱により支持されることになり、横ロープ材を複数の支柱により効率よく支持することができる。
【0011】
また、上記の防護柵において、隣接する支柱間において、上下に隣接する横ロープ材の少なくとも一組の前記斜め配置部が前後方向において交差状に配置されていることを特徴とする。
【0012】
このように交差状に配置する斜め配置部が上下に位置するため、落石をそれら上下の横ロープ材の斜め配置部により捕捉することができる。
【0013】
また、上記の防護柵において、隣接する支柱間において、略同一平面に位置する一組の前記斜め配置部が前後方向において交差状に配置されている。
【0014】
このように交差状に配置する斜め配置部が略同一平面に位置するため、落石を複数の横ロープ材により捕捉することができる。
【0015】
また、上記の防護柵において、前記横ロープ材には、隣接する支柱の後部間を通る直線配置部を設けたことを特徴とする。
【0016】
このように横ロープ材を隣接する支柱の後部間を通し、それら支柱の隣の支柱の前部を通すことにより、落石位置から離れた支柱により落石の荷重を支えることができる。
【0017】
また、上記の防護柵において、前記横ロープ材が前記支柱の前部に摺動することを特徴とする。
【0018】
このように横ロープ材が支柱の前部に摺動することにより、横ロープ材が後方に撓み、支柱前部に落石の荷重が加わる。
【0019】
さらに、上記の防護柵において、前記支柱の前部を曲面状に形成したことを特徴とする。
【0020】
これにより横ロープ材が円滑に摺動することができる。
【0021】
さらに、上記の防護柵において、前記支柱の前部の曲率半径が前記横ロープ材の直径の10倍以上であることを特徴とする。
【0022】
これにより横ロープ材が撓んでも、横ロープ材に無理な曲げが発生することなく、横ロープ材の性能低下を防止できる。
【0023】
さらにまた、上記の実施例において、前記横ロープ材の端部又は端部に連結した部材に載荷面を有する載荷部材を設けると共に、前記支柱に載荷面を設け、それら両載荷面間にリング材を挟んで配置したことを特徴とする。
【0024】
これにより雪崩・落石等の衝撃力を受け、横ロープ材に引張力が加わると、両載荷面間が狭まり、リングが押し潰され、このリング材の変形により衝撃エネルギーを吸収することができる。
【0025】
さらにまた、上記の実施例において、前記横ロープ材の端部を把持する緩衝具を設け、前記横ロープ材が所定以上の張力を受けた場合、前記緩衝具に対して前記横ロープ材が摩擦摺動するように構成したことを特徴とする。
【0026】
これにより雪崩・落石等の衝撃力を受け、横ロープ材に所定以上の引張力が加わると、前記緩衝具に対して前記横ロープ材が摩擦摺動するにより衝撃エネルギーを吸収することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の防護柵によれば、落石を受けた横ロープ材を複数の支柱で支えることにより、落石の衝撃力を受けた横ロープ材を複数の支柱により効率よく支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施例1を示す防護柵の概略平面図であり、図1(A)は落石を受ける前、図1(B)は落石を受けた状態を示す。
【図2】同上、防護柵の正面図である。
【図3】同上、支柱の要部の側面図で示している。
【図4】本発明の実施例2を示す防護柵の概略平面図である。
【図5】同上、防護柵の正面図である。
【図6】同上、落石を受けた状態を説明する平面図である。
【図7】本発明の実施例3を示す支柱要部の側面図である。
【図8】本発明の実施例4を示す支柱要部の側面図である。
【図9】本発明の実施例5を示す一部を断面にした衝撃吸収装置周りの正面図である。
【図10】同上、載荷装置の正面図である。
【図11】同上、鋼管リングの斜視図である。
【図12】同上、孔無で、載荷面の幅が200mmの場合の荷重と変形量の関係を表すグラフ図である。
【図13】同上、孔有で、載荷面の幅が200mmの場合の荷重と変形量の関係を表すグラフ図である。
【図14】同上、孔無で、載荷面の幅が100mmの場合の荷重と変形量の関係を表すグラフ図である。
【図15】同上、孔有で、載荷面の幅が100mmの場合の荷重と変形量の関係を表すグラフ図である。
【図16】同上、孔無で、載荷面の幅が75mmの場合の荷重と変形量の関係を表すグラフ図である。
【図17】同上、孔有で、載荷面の幅が75mmの場合の荷重と変形量の関係を表すグラフ図である。
【図18】同上、孔有で、載荷面の幅が200mmの場合の荷重と変形量の関係を表すグラフ図であり、吸収エネルギーEの量をハッチングで表している。
【図19】同上、孔有で、載荷面の幅が75mmの場合の荷重と変形量の関係を表すグラフ図であり、吸収エネルギーEの量をハッチングで表している。
【図20】同上、載荷面の幅が200mmの場合の鋼管リングの変形を示す説明図である。
【図21】同上、載荷面の幅が75mmの場合の鋼管リングの変形を示す説明図である。
【図22】同上、載荷面の幅が100mmの場合の鋼管リングの変形を示す説明図である。
【図23】本発明の実施例6を示す側面図である。
【図24】本発明の実施例7を示す衝撃吸収装置周りの平面図である。
【図25】本発明の実施例8を示す衝撃吸収装置周りの平面図である。
【図26】従来例を示す防護柵の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。各実施例では、従来とは異なる新規な防護柵を採用することにより、従来にない防護柵が得られ、その防護柵について記述する。
【実施例1】
【0030】
以下、本発明の実施例を添付図面を参照して説明する。図1〜図3は本発明の実施例1を示し、同図に示すように、防護柵である落石防護柵は、斜面あるいは斜面に並んで基礎たるコンクリート基礎1を設け、このコンクリート基礎1に複数の支柱2…を立設する。前記支柱2は、H型鋼,コンクリート柱,鋼管あるいはコンクリート充填鋼管などからなり、この例では断面円形の鋼管を用い、その下端を前記コンクリート基礎1に固着している。前記支柱2間には横ロープ材3,3Aが上下段に設けられ、これら横ロープ材3,3Aの端部を固定し、支柱2,2の間は金網4により遮蔽されている。尚、図1において、理解を容易にするために、横ロープ材3を太線、横ロープ材3Aを細線で表している。
【0031】
支柱2は上記のように基礎に固定してもよいし、下部を地中に建て込んで固定してもよいし、下部を斜面などに位置固定すると共に、山側と谷側の控え横ロープ材により固定してもよい。
【0032】
図2に示すように、前記横ロープ材3,3Aは、上下方向に間隔を置いて、交互に配置され、第1の横ロープ材3は隣合う支柱2の前部と後部とを交互に通るように配置され、前記第1の横ロープ材3とは逆に、第2の横ロープ材3Aは隣合う支柱2の後部と前部とを交互に通るように配置されている。即ち、横ロープ材3と横ロープ材3Aとは、支柱2の前部と後部とを逆に通るように配置されている。これにより、横ロープ材3,3Aには、支柱2の前部とこの支柱2に隣接する支柱2の後部とを通る斜め配置部103,103Aが設けられ、これら斜め配置部103,103Aは、前後方向において交差状に配置されている。尚、図中Mは防護柵の前側、図中Uは後側である。
【0033】
尚、図3に示すように、支柱2の前部にリング状の係止部11を設け、この係止部11に横ロープ材3,3Aを係止して、横ロープ材3,3Aの高さ位置を決めるようにすればよい。一方、支柱2の後部には係止部を設けずに、横ロープ材3,3Aを載置する載置部12を設け、載置部12に載置した横ロープ材3,3Aが、支柱2から離れることができるように構成している。尚、載置部12は必ずしも設ける必要はない。また、係止部11は、上部が開口したフック状のものでもよい。
【0034】
また、前記支柱2の外形は円筒状をなし、支柱2の前部及び後部が曲面状に形成されている。また、支柱2の直径は横ロープ材3,3Aの直径の20倍以上としている。また、横ロープ材3,3Aには、ワイヤーロープを用いることが好ましいが、各種の材質のものを用いることができる。このようにすることにより、図1(B)に示すように、落石により横ロープ材3,3Aが支柱2に沿って曲がっても、横ロープ材3,3Aの引張耐力の低下を抑制できる。
【0035】
そして、落石Rにより上下段の横ロープ材3,3Aに張力が発生し、後方に撓むと、図1(B)に示すように、横ロープ材3は、落石Rを挟む支柱2,2の一方と、他方の支柱2の隣の支柱2により支持され、横ロープ材3Aは、落石Rを挟む支柱2,2の他方と、一方の支柱2の隣の支柱2により支持され、この場合は、主として4本の支柱2,2,2,2に落石Rの衝撃を分散することができる。
【0036】
このように本実施例では、所定の間隔で複数の支柱2,2…を設け、前記支柱2,2…間に横ロープ材3,3Aを多段に設けた防護柵において、横ロープ材3,3Aには、支柱2の前部とこの支柱2に隣接する支柱2の後部とを通る斜め配置部103,103Aを設け、隣接する支柱2,2…間において、多段に設けた横ロープ材3,3Aの少なくとも一組の斜め配置部103,103Aが前後方向において交差状に配置されているから、隣接する支柱2,2…間で一組の斜め配置部103,103Aに落石Rが当たり、横ロープ材3,3Aが後方に撓むと、一方の斜め配置部103は、隣接する支柱2の一方と、隣接する支柱2の他方の隣の支柱2とに支持され、他方の斜め配置部103Aは、隣接する支柱2の他方と、隣接する支柱2の一方の隣の支柱2とに支持され、2本の横ロープ材3,3Aは4本の支柱2,2,2,2により支持されることになり、横ロープ材3,3Aを複数の支柱により効率よく支持することができる。
【0037】
また、このように本実施例では、隣接する支柱2,2…間において、上下に隣接する横ロープ材3,3Aの少なくとも一組の斜め配置部103,103Aが前後方向において交差状に配置されているから、落石Rをそれら上下の横ロープ材3,3Aの斜め配置部103,103Aにより捕捉することができる。
【0038】
また、このように本実施例では、横ロープ材3,3Aが支柱2の前部に摺動するから、横ロープ材3,3Aが後方に撓み、支柱2の前部に落石Rの荷重が加わる。
【0039】
また、このように本実施例では、支柱2の前部を曲面状に形成したから、横ロープ材3,3Aが円滑に摺動することができる。
【0040】
また、このように本実施例では、支柱2の前部の曲率半径が横ロープ材3,3Aの直径の10倍以上であるから、横ロープ材3,3Aに無理な曲げが発生することなく、横ロープ材の性能低下を防止できる。
【実施例2】
【0041】
図4〜図6は、本発明の実施例2を示し、上記実施例1と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。
【0042】
この例では、前記支柱2間には横ロープ材3B,3C,3Dが上下段に設けられ、隣接する支柱2,2の後部間を通る直線配置部を横ロープ材3B,3C,3Dに設けている。尚、図3において、理解を容易にするために、横ロープ材3Bを太線、横ロープ材3Cを中線、横ロープ材3Dを細線で表している。
【0043】
横ロープ材3B,3C,3Dは、防護柵の一側から他側に向って、支柱2の前部と2本の支柱2の後部と支柱2の前部とを通るように配置され、斜め配置部103B,103C,103D,直線配置部104B,104C,104D,斜め配置部103B,103C,103Dの順に配置されており、それぞれ2本の支柱2,2の後部を通った後、支柱2の前部を通るように配置されている。
【0044】
防護柵の一側から他側に向って、第1の横ロープ材3Bが前部を通る支柱2の一側の隣の支柱2の前部に、第2の横ロープ材3Cが通り、この第2の横ロープ材3Cが前部を通る支柱2の一側の隣の支柱2の前部に、第2の横ロープ材3Dが通るように配置されている。
【0045】
そして、落石Rにより上下段の横ロープ材3B,3C,3Dに張力が発生し、後方に撓むと、図6に示すように、横ロープ材3Bは、落石Rを挟む支柱2,2の一方(図6中左側)と、他方(図6中右側)の支柱2の2本隣の支柱2により支持され、横ロープ材3Cは、落石Rを挟む支柱2,2のそれぞれ隣の支柱2,2により支持され、横ロープ材3Dは、落石Rを挟む支柱2,2の他方と、一方の支柱2の2本隣の支柱2により支持され、
この場合は、主として6本の支柱2,2,2,2,2,2に落石Rの衝撃を分散することができる。
【0046】
このように本実施例では、上記実施例と同様な作用・効果を奏する。
【0047】
また、このように本実施例では、横ロープ材3B,3C,3Dには、隣接する支柱2,2の後部間を通る直線配置部104B,104C,104Dを設けたから、横ロープ材3B,3C,3Dを隣接する支柱2,2の後部間を通し、それら支柱2,2の隣の支柱2の前部を通すことにより、落石位置から離れた支柱2により落石Rの荷重を支えることができる。
【実施例3】
【0048】
図7は、本発明の実施例3を示し、上記各実施例と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。
【0049】
この例では、上記実施例1において、横ロープ材3,3Aを略同一平面状に配置した例であり、図7に示すように、各段に2本の横ロープ材3,3Aを近接して配置している。尚、係止部11は、図示省略している。
【0050】
このように本実施例においても、上記各実施例と同様な作用・効果を奏する。
【0051】
このように本実施例では、隣接する支柱2,2間において、略同一平面に位置する一組の斜め配置部103,103Aが前後方向において交差状に配置されているから、同一平面状に位置する複数の横ロープ材3,3Aにより落石Rを捕捉することができる。
【実施例4】
【0052】
図8は、本発明の実施例4を示し、上記各実施例と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。
【0053】
この例では、上記実施例2において、横ロープ材3B,3C,3Dを略同一平面状に配置した例であり、尚、係止部11は、図示省略しており、図8に示すように、各段に3本の横ロープ材3B,3C,3Dを近接して配置している。
【0054】
このように本実施例においても、上記各実施例と同様な作用・効果を奏する。
【0055】
このように本実施例では、隣接する支柱2,2間において、略同一平面に位置する一組の斜め配置部103B,103C,103Dが前後方向において交差状に配置されているから、同一平面状に位置する複数の横ロープ材3B,3C,3Dにより落石Rを捕捉することができる。
【実施例5】
【0056】
図9〜図19は、本発明の実施例5を示し、上記各実施例と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。
【0057】
この例では、前記水平横ロープ材3の端部3Tは、衝撃吸収装置111により端末の支柱2Tに連結され、この端末の支柱2Tは、ウエブ部105と両フランジ部106,106とを有するH型鋼から構成されている。前記衝撃吸収装置111は、鋼管などからなるリング材112と、このリング材112を外周両側から挟むように配置される載荷部材たる載荷板113,113と、それら載荷板113,リング材112及び載荷板113に挿通する前記端部3Tと、この端部3Tに設ける端末定着具114とを備える。
【0058】
そして、この例では、前記衝撃吸収装置111を取り付ける箇所が前記ウエブ部105であり、このウエブ部105に貫通孔105Kを形成し、前記載荷板113,113のほぼ中心位置に貫通孔113K,113Kを形成し、また、前記リング材112には周方向に対向した位置に貫通孔112K,112Kをそれぞれ形成する。そして、この例では前記支柱2Tのウエブ部105が取付位置であり、前記端部3Tを、前記貫通孔105K,113K,112K,112K,113Kの順で挿通し、この挿通した端部3Tを前記端末定着具114により定着する。尚、端末定着具114は端末3Tにくさび作用などにより固定される公知のものである。そして、前記載荷板113,113のリング材112の外周に当接する側の面が、載荷面113M,113Mである。尚、図示しないが、水平横ロープ材3には、端部3Tの他端側の端部に、同様に衝撃吸収装置111を設けてもよいし、前記他端側の端部を他の支柱2,2Tに固定するようにしてもよい。
【0059】
前記載荷面113Mは、前記リング材112の長さ方向の幅とほぼ同一の幅を有し、又は大きな幅を有し、一方、リング材112の直径方向の幅Wは、該リング材112の直径D寸法より小さく、好ましくは、後述するように、対向する内面が当接するまで潰されたリング材112の湾曲状突部112D,112Dの間隔K寸法より小さく設定する。
【0060】
この載荷面Mの構成に係る実験を以下に説明する。
【0061】
図10に示すように、実験装置として、載荷装置201を用い、この載荷装置201は、固定プレート202側に荷重を計測する計測装置203を設け、可動プレート204を昇降する昇降部205と、固定プレート202と可動プレート204との間の変位量を測定するレーザー変位計206とを備え、前記固定プレート202と可動プレート204との間に、リング材に相当する鋼管リング211を直径方向に立てて挟み、可動プレート204を降下させ、鋼管リング211に加わる荷重と該鋼管リング211の変形量とを測定した。
【0062】
図11に示すように、鋼管リング211は、機械構造用炭素鋼鋼管(STKM13A)を用い、呼び径175で、外径φを190.7mm、厚さtを12mm、長さLを150mmとした。また、両プレート202,204の鋼管リング211の直径方向の幅PLを、200mm、100mm,75mmの場合のそれぞれについて、加えた荷重P(kN)とその時の鋼管リング211の変位量δ(mm)の関係を測定し、図12〜図17グラフ図に示した。尚、プレート202,204の幅は載荷面の幅に相当する。
【0063】
尚、実際の使用条件に合わせるため、鋼管リング211には、前記貫通孔112Kに相当する貫通孔211K,211Kがないものと、貫通孔211K,211Kがあるものとをそれぞれ用いて実験を行ない、貫通孔211Kの有る無しを「孔有」「孔無」のグラフ線としてグラフ図に記載した。また、グラフ図には、線材の破断強度の一例として、荷重P=157.0kNの位置に印をつけた。
【0064】
図18は、図13において、線材が破断する強度までに、鋼管リング211の変形により吸収する吸収エネルギーEの量をハッチングで示したものであり、引張荷重が157.0kNで線材が破断するから、この時の鋼管リング211の変形量δは87.54mmであり、吸収エネルギーEは10.0kJとなる。しかし、87.54mmの変形量δから先も鋼管リング211は変形するから、鋼管リング211の変形による衝撃吸収にロスが発生する。そこで、同図の「薄肉」に示すように、鋼管リング211の厚さtを12mmより薄くすれば、線材が破断するまでの変形量δは概算で140mm程度となるが、「薄肉」のグラフ線は勾配を有するため、このグラフ線と、線材が破断する荷重P=157.0kNの横線との間の面積がロスとなる。また、仮に線材の破断する荷重Pを300.0kNに上げれば、吸収エネルギーEは前記10.0kJより大きくなるが、実線のグラフ線と、荷重P=300.0kNの横線との間の面積がエネルギー吸収の上からロスとなり、線材の引張強度を大幅に上げ、コストも上昇する割りには効果が少ないことが分かる。
【0065】
一方、図19は、図17において、線材が破断する強度までに、鋼管リング211の変形により吸収する吸収エネルギーEの量をハッチングで示したものであり、上記図12と同様に、引張荷重が157.0kNで線材が破断するから、この時の鋼管リング111の変形量δは143.89mmであり、吸収エネルギーEは18.3kJとなり、図12の場合に比べて、変形量δの増加に伴い荷重Pの増加が緩やか或いはほぼ一定の割合が大きく、鋼管リング211の変形による衝撃吸収に優れることが分かる。
【0066】
次に、図20〜図22を用いて、上記のようにプレート202,204の幅PLの違いによる鋼管リング211の変形について説明する。尚、図20〜図22においては、(A)から(C)に向って鋼管リング211が潰れていく状態を示している。図20は、幅PLが200mmの場合の鋼管リング211の変形を示し、円形の状態から、図20(A)に示すように、プレート202,204の中央位置で鋼管リング211に凹みが生じ、この凹みの両側に湾曲状突部112D,112Dが発生する。ここからさらに鋼管リング211を図20(B)(C)のように押し潰すと、変形量δに対して荷重Pが増大し、図12又は図13に示したグラフとなる。一方、図21に示すように、幅PLが75mmの場合、円形の状態から、図21(A)に示すように、プレート202,204の中央位置で鋼管リング211に凹みが生じ、この凹みの両側に湾曲状突部112D,112Dが発生するが、プレート202,204は湾曲状突部112D,112Dの最大突出部分を押すことなく、図21(B)(C)のように湾曲状突部112D,112Dの間で鋼管リング211を押すため、変形量δの増加しても荷重Pの増加が緩やか或いはほぼ一定の割合が高く、鋼管リング211において対向する内面が当接するまでほぼ均一な力で変形させることができる。また、図22に示すように、幅PLが100mmの場合も、図21とほぼ同様に鋼管リング211が変形する。
【0067】
このように実験から、使用するリング材112の大きさ及び厚さ、載荷面113Mのリング材112の直径方向の幅W、線材である水平横ロープ材3の引張強度等を設定することにより、リング材112の変形による吸収エネルギーが最大となるように設定することが可能となることが分かった。尚、図19を用いて補足説明すると、線材の破断強度に対応する荷重P=157.0kNと、リング材112の内径寸法との積に対応するエネルギーに対して、吸収エネルギーを50%以上、好ましくは60%以上とする。尚、前記リング材112の内径寸法は、リング材112の最大変位量である。
【0068】
そして、落石等により衝撃力が加わると、水平横ロープ材3に引張力が発生し、端末定着具114が支柱2T側に移動し、載荷面113M,113Mによりリング材112が押し潰され、これにより衝撃エネルギーを吸収し、対向する内面が当接するまでリング材112が潰れた後は、水平横ロープ材2が伸び破断することにより衝撃エネルギーが吸収される。
【0069】
このように本実施例においても、上記各実施例と同様な作用・効果を奏する。
【0070】
また、このように本実施例では、横ロープ材3,3A,3B,3C,3Dの端部又は端部に連結した部材に載荷面113Mを有する載荷部材たる載荷板113を設けると共に、防護柵の支柱2Tに載荷面113Mを設け、それら両載荷面113M,113M間にリング材112を挟んで配置したから、雪崩・落石等の衝撃力により、水平横ロープ材3に引張力が加わると、両載荷面113M,113M間が狭まり、リング材112が押し潰され、このリング材112の変形により衝撃エネルギーを吸収することができる。
【0071】
また、所定の間隔で複数の支柱2…2Tを設け、支柱2…2T間に水平方向の線材たる水平横ロープ材3を設けた防護柵において、水平横ロープ材3の端部3Tに載荷面113Mを有する載荷部材たる載荷板113を設けると共に、支柱2Tに載荷面113Mを設け、それら両載荷面113M,113M間にリング材112を挟んで配置したから、雪崩・落石等の衝撃力により、水平横ロープ材3に引張力が加わると、両載荷面113M,113M間が狭まり、リング材112が押し潰され、このリング材113の変形により衝撃エネルギーを吸収することができる。
【0072】
また、リング材112が鋼製であるから、部材が簡易で比較的安価なものとなる。
【0073】
また、線材たる水平横ロープ材3に加わる張力により、両載荷面113M,113M間でリング材112を潰し、少なくとも一方の載荷面113Mのリング材112の直径方向における幅Wは、リング材112の直径Dより狭いから、水平横ロープ材3の引張力によりリング材112を押し潰すと、リング材112は対向する内面が当接する略∞状に変形するが、載荷面113M,113Mの幅Wがリング材112の直径Dより狭いから、載荷面113Mがその略∞状の湾曲突部112D,112Dを押し潰すことが無い。そして、略∞状に変形した後、その湾曲突部112D,112Dを押し潰すには、大きな力が必要であり、そのため水平横ロープ材3の引張力が増大し、早期に水平横ロープ材3が破断するが、載荷面113Mの幅Wがリング材112の直径Dより狭いから、水平横ロープ材3の早期の破断を防止することができ、衝撃エネルギーの吸収効果に優れたものとなる。
【0074】
また、線材たる水平横ロープ材3に加わる張力により、両載荷面113M,113M間でリング材112を潰し、リング材112の直径方向における載荷面113Mの幅Wは、潰されたリング材112の幅方向両側に発生する湾曲突部112D,112D間の間隔Kより狭いから、リング材112は対向する内面が当接する略∞状に変形し、これにより引張力の上昇により水平横ロープ材3が破断するまでの間、リング材12に加わる力がほぼ一定或いは緩やかに上昇しながら該リング材112が変形する範囲が大となり、これによりリング材112に加わる力とリング材112の変形量の積に相当する衝撃エネルギーの吸収量を大幅に増加することができる。
【0075】
また、線材たる水平横ロープ材3は、対向する内面が当接するまでリング材112が潰れても破断しない引張強度を有するから、リング材112が略∞状に潰れるまで、衝撃エネルギーを吸収することができる。
【0076】
また、衝撃エネルギー吸収量設定方法であって、リング材112の直径Dとリング材112の直径方向における載荷面113Mの幅Wとを調整してリング材112の変形による衝撃エネルギー吸収量を調整するから、載荷面113の幅Wなどを調整してリング材112の変形条件を変更することにより、該リング材112の変形による衝撃エネルギー吸収量を任意に設定することができる。
【0077】
また、線材たる水平横ロープ材3が、対向する内面が当接するまでリング材112が潰れても破断しない引張強度を有するように設定したから、リング材112が潰れるまで、衝撃エネルギーを吸収することができる。
【実施例6】
【0078】
図23は本発明の実施例6を示し、上記各実施例と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述すると、この例では、支柱2T側には載荷板を設けずに、支柱2Tのウエブ部105の外面105Gにより平坦な載荷面を構成しており、このように載荷面113Mと外面105Gの幅Wの少なくとも一方は、リング材112の直径Dより狭いから、上記各実施例と同様な作用・効果を奏する。
【実施例7】
【0079】
図24は本発明の実施例7を示し、上記各実施例と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述すると、この例では、水平横ロープ材3の端部3Tに、部材たる索端金具131を連結し、この索端金具131端部の鋼棒132の端部132Tを、衝撃吸収装置111により端末の前記支柱2Tに連結している。尚、前記端部132Tに雄螺子部を設け、この雄螺子部にダブルのナット133,133を螺合することにより定着している。
【0080】
このように本実施例では、線材たる水平横ロープ材3の端部3T連結した部材である索端金具131の鋼棒132に、リング材112を設け、このリング材112の両側に、載荷面113Mを有する載荷部材たる載荷板113を設けたから、各請求項に対応して、上記各実施例と同様な作用・効果を奏する。
【実施例8】
【0081】
図25は、本発明の実施例8を示し、上記各実施例と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。
【0082】
この例では、衝撃吸収装置である緩衝具304は、前記横ロープ材3を所定の摩擦力で把持する一対の把持体321,321を備え、これら把持体321,321の合せ面に、横ロープ材3に嵌合する一対の嵌合溝(図示せず)を形成し、両把持体321,321は、ボルト323とナット324を備えた締付固定手段323,323により締め付けられ、前記横ロープ材3の端部には、緩衝具304に係止するストッパ306を設けている。
【0083】
そして、落石などを受けて、把持体321,321は横ロープ材3,3A,3B,3C,3Dを所定の摩擦力で把持すると共に、所定以上の張力が作用したとき横ロープ材3,3A,3B,3C,3Dの摩擦摺動を許容するものであり、前記横ロープ材3,3A,3B,3C,3Dに張力が発生すると、嵌合溝に対して横ロープ材3,3A,3B,3C,3Dの端部が摺動摩擦することにより、落石のエネルギーを吸収することができる。尚、ストッパ306が把持体321,321に係止した後は、横ロープ材3,3A,3B,3C,3Dにより落石のエネルギーに対抗する。この場合、把持体321,321から外側に伸びる横ロープ材3,3A,3B,3C,3Dの余長部3Y分だけ、横ロープ材3,3A,3B,3C,3Dが伸張することができる。
【0084】
このように本実施例では、横ロープ材3,3A,3B,3C,3Dの端部を把持する緩衝具304を設け、横ロープ材3,3A,3B,3C,3Dが所定以上の張力を受けた場合、緩衝具304に対して横ロープ材3,3A,3B,3C,3Dが摩擦摺動するように構成したから、雪崩・落石等の衝撃力を受け、横ロープ材3,3A,3B,3C,3Dに所定以上の引張力が加わると、緩衝具304に対して横ロープ材3,3A,3B,3C,3Dが摩擦摺動するにより衝撃エネルギーを吸収することができる。
【0085】
また、このように図23〜図25の構成では落石Rの力により移動可能な余長部3Yを有するから、落石Rにより横ロープ材3,3A,3B,3C,3Dが後方に撓んで複数の支柱2,2…により支持することにより、効率よく衝撃力を緩和することができる。
【0086】
尚、本発明は、本実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、支柱の断面形状は楕円形でもよい。また、直線配置部を、3本以上の支柱の後部を通るように構成してもよい。
【符号の説明】
【0087】
1 コンクリート基礎
2 支柱
3,3A,3B,3C,3D 横ロープ材
103,103A,103B,103C,103D 斜め配置部
104B,104C,104D 直線配置部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の間隔で複数の支柱を設け、前記支柱間に横ロープ材を多段に設けた防護柵において、前記横ロープ材には、前記支柱の前部とこの支柱に隣接する前記支柱の後部とを通る斜め配置部を設け、隣接する支柱間において、多段に設けた横ロープ材の少なくとも一組の前記斜め配置部が前後方向において交差状に配置されていることを特徴とする防護柵。
【請求項2】
隣接する支柱間において、上下に隣接する横ロープ材の少なくとも一組の前記斜め配置部が前後方向において交差状に配置されていることを特徴とする請求項1記載の防護柵。
【請求項3】
隣接する支柱間において、略同一平面に位置する一組の前記斜め配置部が前後方向において交差状に配置されていることを特徴とする請求項1記載の防護柵。
【請求項4】
前記横ロープ材には、隣接する支柱の後部間を通る直線配置部を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の防護柵。
【請求項5】
前記横ロープ材が前記支柱の前部に摺動することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の防護柵。
【請求項6】
前記支柱の前部を曲面状に形成したことを特徴とする請求項5記載の防護柵。
【請求項7】
前記支柱の前部の曲率半径が前記横ロープ材の直径の10倍以上であることを特徴とする請求項6記載の防護柵。
【請求項8】
前記横ロープ材の端部又は端部に連結した部材に載荷面を有する載荷部材を設けると共に、前記支柱に載荷面を設け、それら両載荷面間にリング材を挟んで配置したことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の防護柵。
【請求項9】
前記横ロープ材の端部を把持する緩衝具を設け、前記横ロープ材が所定以上の張力を受けた場合、前記緩衝具に対して前記横ロープ材が摩擦摺動するように構成したことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の防護柵。
【請求項1】
所定の間隔で複数の支柱を設け、前記支柱間に横ロープ材を多段に設けた防護柵において、前記横ロープ材には、前記支柱の前部とこの支柱に隣接する前記支柱の後部とを通る斜め配置部を設け、隣接する支柱間において、多段に設けた横ロープ材の少なくとも一組の前記斜め配置部が前後方向において交差状に配置されていることを特徴とする防護柵。
【請求項2】
隣接する支柱間において、上下に隣接する横ロープ材の少なくとも一組の前記斜め配置部が前後方向において交差状に配置されていることを特徴とする請求項1記載の防護柵。
【請求項3】
隣接する支柱間において、略同一平面に位置する一組の前記斜め配置部が前後方向において交差状に配置されていることを特徴とする請求項1記載の防護柵。
【請求項4】
前記横ロープ材には、隣接する支柱の後部間を通る直線配置部を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の防護柵。
【請求項5】
前記横ロープ材が前記支柱の前部に摺動することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の防護柵。
【請求項6】
前記支柱の前部を曲面状に形成したことを特徴とする請求項5記載の防護柵。
【請求項7】
前記支柱の前部の曲率半径が前記横ロープ材の直径の10倍以上であることを特徴とする請求項6記載の防護柵。
【請求項8】
前記横ロープ材の端部又は端部に連結した部材に載荷面を有する載荷部材を設けると共に、前記支柱に載荷面を設け、それら両載荷面間にリング材を挟んで配置したことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の防護柵。
【請求項9】
前記横ロープ材の端部を把持する緩衝具を設け、前記横ロープ材が所定以上の張力を受けた場合、前記緩衝具に対して前記横ロープ材が摩擦摺動するように構成したことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の防護柵。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2010−229629(P2010−229629A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−75172(P2009−75172)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000228785)日本サミコン株式会社 (41)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000228785)日本サミコン株式会社 (41)
【Fターム(参考)】
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