説明

防除機

【課題】コストを抑えつつ、高所への薬液散布を狭い畝間にて十分に行い得る防除機を提供する。
【解決手段】適宜間隔で設けられたノズル4,5を有する送液パイプ2,3を上下方向に延在するように設けると共に、送液パイプ2,3及びノズル4,5の下方側に、上向きの空気流を起こす送風機6を設けるという簡易な構造で、ノズル4,5から噴霧した薬液を、送風機6による上向流によって、例えばトマト高設栽培等の高所へ満遍無く散布すると共に、上下方向に延在する送液パイプ2,3によって、例えばトマト高設栽培等の狭い畝間での支障無い走行を可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、散布車から薬液を散布する防除機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、散布車から薬液を散布する防除機として以下の特許文献1に記載の防除機が知られている。この防除機は、散布車に、薬液タンク、動力噴霧機及び送風機が装架されると共に、散布車の前部に、空気噴出管及び薬液噴霧管が設けられ、空気噴出管に複数並設された空気噴出口のその内部に、薬液噴霧管に複数並設された噴霧ノズルが各々内蔵される構成を有するもので、動力噴霧機の駆動により薬液タンクから薬液が薬液噴霧管に供給されて噴霧ノズルから噴霧されると共に、送風機の駆動により空気が空気噴出管に供給されて空気噴出口から噴出され、薬液と空気とが合流して薬液が遠くまで散布されるというものである。そして、特許文献1の図1に示す防除機は、薬液噴霧管及び空気噴出管が鉛直に立設されて噴霧ノズル及び空気噴出口が前方側に向くため、薬液噴霧管及び空気噴出管の立設高さ程度の果樹の防除に好適とされ、特許文献1の図8に示す防除機は、薬液噴霧管及び空気噴出管が散布車の進行方向に直交し且つ水平設置されて噴霧ノズル及び空気噴出口が上方側に向くため、棚作りの果樹等の高所の防除に好適とされている。
【特許文献1】特許第3630756号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記防除機にあっては、空気噴出管の各空気噴出口の内部に、薬液噴霧管の各噴霧ノズルをそれぞれ内蔵させる構成のため、二系統の配管が必要であると共に構造が複雑であり、よって防除機が高価になってしまうという問題がある。また、例えばトマト高設栽培等の高所への薬液散布の場合には、特許文献1の図1に示す防除機は不適であり、一方、高所に対して好適とされる特許文献1の図8に示す防除機を用いた場合でも、例えばトマト高設栽培等では畝間が狭いため、散布車の進行方向に直交し且つ水平設置された薬液噴霧管及び空気噴出管が車幅以上となって邪魔となり、散布車の走行が難しい。
【0004】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、コストを抑えつつ、高所への薬液散布を狭い畝間にて十分に行い得る防除機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による防除機(100)は、散布車(1)から薬液を散布する防除機において、上下方向に延在し薬液を送液するための送液パイプ(2,3)と、送液パイプ(2,3)に適宜間隔で設けられ薬液を噴霧するためのノズル(4,5)と、送液パイプ(2,3)及びノズル(4,5)の下方側に設けられ、上向きの空気流を起こす送風機(6)と、を備えたことを特徴としている。
【0006】
このような防除機によれば、適宜間隔で設けられたノズル(4,5)を有する送液パイプ(2,3)を上下方向に延在するように設けると共に、送液パイプ(2,3)及びノズル(4,5)の下方側に、上向きの空気流を起こす送風機(6)を設けるという簡易な構造で、ノズル(4,5)から噴霧された薬液が、送風機(6)による上向流によって、例えばトマト高設栽培等の高所へ満遍無く散布されると共に、上下方向に延在する送液パイプ(2,3)によって、例えばトマト高設栽培等の狭い畝間(A)での支障無い走行が可能とされる。このため、コストを抑えつつ、高所への薬液散布を狭い畝間(A)にて十分に行うことができる。
【0007】
ここで、送風機(6)の上側には、上向きの空気流の風向を制御する風向制御装置(7,17)が設置され、風向制御装置(7,17)は、上向きの空気流を上側に案内する一対の風向板(7a又は17a)を有し、風向板(7a又は17a)同士の開角が調整可能とされているのが好ましい。このような構成を採用した場合、簡易な構造で、上向きの空気流の風向を制御でき、例えば、風向板(7a又は17a)同士の開角を大きくすることで、側方寄りへの薬液散布が可能とされ、低い作物等の様々な品種、生育の植栽形態に対しても十分な薬液散布が可能とされる。
【発明の効果】
【0008】
このように本発明による防除機によれば、コストを抑えつつ、高所への薬液散布を狭い畝間にて十分に行い得る防除機を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明に係る防除機の好適な実施形態について添付図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態に係る防除機を示す側面図、図2は、防除機の背面図、図3は、送風機及び当該送風機に設置された風向制御装置を示す斜視図、図4は、防除機がトマト高設栽培の畝間を走行している状態を示す背面図である。
【0010】
図4に示すように、本実施形態の防除機100は、無人自走式の散布車1が、トマト高設栽培の畝間Aを走行しながら薬液を葉(特に葉裏)等に対して散布するためのものである。ここでは、畝間A=約1.5m、畝幅B=30cm、草丈=3〜5mに設定されている。
【0011】
図1及び図2に示すように、防除機100を構成する散布車1は、車両外の薬液タンク(散布車1に搭載されていても良い)からの薬液をさらに散布車1において送液する送液パイプ2,3を備えている。送液パイプ2は、散布車1の前端部の中央において上下方向に延在するように立設された支柱12に沿って当該支柱12に支持され、すなわち鉛直方向に延在するように設けられ、図1に示すように、送液パイプ3は、支柱12の上部に回動可能に連結され後方且つ斜め下方に延在するように設けられた支柱13に沿って当該支柱13に支持されている。そして、薬液散布時には、支柱13が回動して直立され、送液パイプ2,3が鉛直方向に直線状に連なった状態とされ、送液パイプ2,3合わせて長さ約2〜3mとされる。
【0012】
これらの送液パイプ2,3には各々、薬液噴霧部となるノズル4,5が送液パイプ2,3の各々の延在方向に沿って適宜間隔で複数設けられている。これらのノズル4,5は、その噴霧口が、水平方向若しくは水平よりやや上を向くように設置されている。
【0013】
また、散布車1には、図1及び図3に示すように、送液パイプ2により前方の位置で、送液パイプ2及びノズル4の下方側の位置に、送風機6が搭載されている。この送風機6は、その回転軸が鉛直方向に延在すると共に吹出口6aが上側を向くように設置され、吹出口6aから上向きの空気流を起こすものである。
【0014】
また、送風機6の上側には、上向きの空気流の風向を制御する風向制御装置7が設置されている。この風向制御装置7は、送風機6からの上向きの空気流を上側に案内すべく、互いに対向するようにして配設された一対の風向板7a,7aと、図3に示すように、これら風向板7a,7a同士が成す角度(開角)を調整可能とする連結機構7bと、を備えている。
【0015】
風向板7aは、平板状部材であり、車両幅方向に対向するようにして離間配置され、その下部側が送風機6の上部側に対して枢設されている。連結機構7bは、各風向板7aの上端部の各隅部に各連結板7cの一端側を各々連結し、対応する隅部同士に連結された連結板7c,7c同士の他端側を重ね合わせて重ね合わせ部7dを各々形成し、一方の重ね合わせ部7dに連結棒7eの一端部を枢着すると共に他方の重ね合わせ部7dに連結棒7eの他端側を枢着したものであり、連結棒7eを仮想線で示すように上方に引き上げると、仮想線で示すように風向板7a,7a同士の上方に開く開角が小さくされ、上方への風向が狭められると共に吹出面積が小さくされ、一方、連結棒7eを実線で示すように下方に押し下げると、実線で示すように風向板7a,7a同士の上方へ開く開角が大きくされ、上方への風向が広げられると共に吹出面積が大きくされる。従って、風向制御装置7を構成する連結棒7eを上下することにより、送風機6による上向きの空気流の風向及び風量を調整できる。
【0016】
なお、ここでは、手動により連結棒7eを引き上げ、又は、押し下げることにより、風向及び風量を調整できるようにしているが、シリンダ等の駆動源を設け、散布車1に設けられている操作パネルにより自動で開角を調整することも可能である。
【0017】
このような防除機100によれば、送液パイプ3を直立した状態で散布車1がトマト高設栽培の畝間Aを走行している際に、薬液が送液パイプ2,3を介してノズル4,5から車両幅方向の両方向に向かって噴霧されると共に、送風機6が駆動されて当該送風機6の上方に上向きの空気流が形成される。このため、ノズル4,5からの薬液は、送風機6による上向流によって散布車1の進行方向両脇の斜め上方に向かって噴霧されることになり、畝間A両側の作物の葉に向かって好適に噴霧される。そして、送風機6による上向流は畝間Aにおいて上方まで到達し、この上向流により作物の葉は下から上へと揺り動かされるため、薬液は作物の上側から下側に亘って葉裏まで満遍無く散布される。
【0018】
ここで、上向きの空気流の風向及び風量を調整したい場合には、風向制御装置7を制御すれば良く、例えば、連結棒7eを下げて風向板7a,7a同士の開角を大きくすれば、側方寄りへも薬液を散布できる。
【0019】
このように、本実施形態においては、送液パイプ2,3を上下方向に延在するように設けると共に当該送液パイプ2,3に適宜間隔でノズル4,5を設け、且つ、送液パイプ2,3及びノズル4,5の下方側に、上向きの空気流を起こす送風機6を設けるという簡易な構造で、ノズル4,5から噴霧した薬液を、送風機6による上向流によって、高所へ満遍無く散布すると共に、上下方向に延在する送液パイプ2,3によって、狭い畝間Aでの支障無い走行を可能としているため、コストを抑えつつ、高所への薬液散布を狭い畝間Aにて十分に行うことができる。また、葉裏への薬液の付着性が優れるため、作業速度を上げることが可能であり省力化に繋がる。
【0020】
また、本実施形態においては、上向きの空気流を上側に案内する一対の風向板7a,7aを有しこれらの風向板7a,7a同士の開角を調整可能とする風向制御装置7により、簡易な構造で、上向きの空気流の風向を制御できるという利点もある。
【0021】
図5は、他の風向制御装置を示す斜視図である。この風向制御装置17が、先の風向制御装置7と違う点は、上方に行くに従い開口が大きくされるラッパ形状部材を軸線に沿って二分割し、その各々を車両幅方向に対向するようにして離間配置して、一対の風向板17a,17aとした点である。そして、これらの風向板17a,17a同士が成す角度(開角)は、先の連結機構7bと略同様な連結機構17bにより調整可能とされている。なお、図5にあっては、図3に示す連結棒7eに相当する部材が設けられていないが、連結棒は勿論あっても良い。
【0022】
このような風向制御装置17によれば、先の風向制御装置7とほぼ同様な作用・効果を奏するというのはいうまでもない。
【0023】
図6は、上記送風機6の吹出口6aの中央に対して、底広がりの円錐台形状を成すベル8を設置したものである。このようにベル8を設けることによって、空気抵抗が低減され送風機効率が高められる。
【0024】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、上記実施形態においては、特に有効であるとして、トマト高設栽培に対する適用を述べているが、トマト高設栽培以外に対しても適用可能である。特に、上記風向制御装置7(17)を用い、風向板7a,7a(17a,17a)同士の開角を大きくして側方寄りへも薬液を散布することで、例えば高さの低い作物等、様々な品種、生育の植栽形態に対しても適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係る防除機を示す側面図である。
【図2】図1に示す防除機の背面図である。
【図3】図1中の送風機及び当該送風機に設置された風向制御装置を示す斜視図である。
【図4】図1の防除機がトマト高設栽培の畝間を走行している状態を示す背面図である。
【図5】他の風向制御装置を示す斜視図である。
【図6】ベルを設置した送風機を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0026】
1…散布車、2,3…送液パイプ、4,5…ノズル、6…送風機、7,17…風向制御装置、7a,17a…風向板、100…防除機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
散布車(1)から薬液を散布する防除機(100)において、
上下方向に延在し薬液を送液するための送液パイプ(2,3)と、
前記送液パイプ(2,3)に適宜間隔で設けられ前記薬液を噴霧するためのノズル(4,5)と、
前記送液パイプ(2,3)及び前記ノズル(4,5)の下方側に設けられ、上向きの空気流を起こす送風機(6)と、を備えたことを特徴とする防除機。
【請求項2】
前記送風機(6)の上側には、前記上向きの空気流の風向を制御する風向制御装置(7,17)が設置され、
前記風向制御装置(7,17)は、前記上向きの空気流を上側に案内する一対の風向板(7a又は17a)を有し、前記風向板(7a又は17a)同士の開角が調整可能とされていることを特徴とする請求項1記載の防除機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−289417(P2008−289417A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−138150(P2007−138150)
【出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(000141174)株式会社丸山製作所 (134)
【出願人】(000104113)カゴメ株式会社 (50)
【Fターム(参考)】