説明

防雨ルーバー

【課題】降雨時の雨滴のみならず、その微細な飛沫等の屋内への侵入をも効果的に防ぐことができる防雨ルーバーを提供すること。
【解決課題】建物の開口部に取付け可能な枠体1と、枠体1の枠内に互いに上下方向に所定間隔をあけて並べられた複数の羽根体2と、枠体1の下部に設けられた排水部3とを備えた防雨ルーバー10であって、複数の羽根体2同士の間に通気流路4が形成され、各通気流路4を、屋外から屋内へ向けて雨水の飛沫Mを運ぶ気流を上向きに流す外側流路44と下向きに流す内側流路45とから構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨水等の侵入を防ぎ、通気可能な建物用の防雨ルーバーに関する。
【背景技術】
【0002】
現在までに、雨水等の侵入を防いで通気可能な建物用ルーバーが数多く提案されている(例えば、下記特許文献1、2参照)。
【0003】
しかしながら、従来のルーバーは、屋外側へ傾斜した多数の羽根体によって、降雨時における屋内への雨滴の侵入は防ぐことができるものの、例えば雨滴がルーバーの羽根体に衝突した際に発生する微細な雨水の飛沫が、通気気流に乗って屋内へ侵入するのを防ぐことができない難点があった。
【特許文献1】実開昭57−1294号公報
【特許文献2】実開平2−39092号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来の建物用ルーバーに上記のような難点があったことに鑑みて為されたもので、降雨時の雨滴のみならず、その微細な飛沫等の屋内への侵入も効果的に防ぐことができる防雨ルーバーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、建物の開口部に取付け可能な枠体と、該枠体の枠内に互いに上下方向に所定間隔をあけて並べられた複数の羽根体とを備え、該複数の羽根体同士の間に通気流路が形成された防雨ルーバーであって、
前記通気流路が、屋外に臨んだ外側通気口とルーバー内の中間通気口との間に形成された外側流路と、該中間通気口と屋内に臨んだ内側通気口との間に形成された内側流路と、を備え、前記外側流路は、前記外側通気口が前記中間通気口よりも下方に位置し、かつ、該外側通気口及び該中間通気口のそれぞれの開口面積が該外側流路の中程部の横断面積よりも小さく形成され、前記内側流路は、前記内側通気口が前記中間通気口よりも下方に位置し、かつ、該内側通気口の開口面積が前記外側通気口の開口面積とほぼ同じに形成され、前記枠体の下部に、前記内側流路で捕集した雨水を屋外へ排水する排水部が設けられていることを特徴としている。
【0006】
また、本発明は、前記外側流路の外側通気口において前記羽根体の上面に、雨滴の衝突を緩衝する緩衝部が設けられていることを特徴としている。
【0007】
また、本発明は、前記緩衝部が、多数の立毛を有する立毛シート材から成ることを特徴としている。
【0008】
また、本発明は、前記羽根体が、透光性材料から成ることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る防雨ルーバーは、通気流路が外側流路と内側流路とを備え、外側流路の外側通気口が、ルーバー内の中間通気口よりも下方に位置しているので、風雨時において雨滴が屋内に侵入するのを確実に防ぐことができる。
【0010】
しかも、外側流路の外側通気口が中間通気口よりも下方に位置し、かつ、外側通気口の開口面積及び中間通気口のそれぞれの開口面積が外側流路の中程部の横断面積よりも小さく形成されているので、屋外から屋内へ向けて雨水の微細な飛沫を運ぶ気流は、外側流路を上向きに流れ、しかも、その流速が外側通気口から外側流路の中程部にかけて小さくなる。したがって、雨水の飛沫等を外側流路で捕集することができ、飛沫等の屋内への侵入を効果的に防ぐことができる。
【0011】
さらに、内側流路の内側通気口が中間通気口よりも下方に位置し、かつ、内側通気口の開口面積が外側通気口の開口面積とほぼ同じに形成されているので、外側流路を通過してしまった飛沫も、内側流路を通過する途中でその流路内面に捕捉され、飛沫が屋内側へ侵入するのを効果的に防ぐことできる。
【0012】
さらに、外側流路の外側通気口において羽根体の上面に緩衝部を設けた防雨ルーバーによれば、羽根板への雨滴衝突時の飛沫の発生を抑制することができ、より効果的に飛沫の侵入を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1及び図2に示すように、本実施形態の防雨ルーバー10は、枠体1と、枠体1の枠内に互いに上下方向に所定間隔をあけて並べられた複数の羽根体2と、枠体1の下部に設けられた排水部3と、から構成されている。
【0014】
枠体1は、左右一対の縦枠11と、一対の縦枠11同士をその上部及び下部でそれぞれ連結する上下の横枠12とから構成され、正面視長方形状に形成されている。本実施形態の枠体1は、図3及び図4に示すように、例えば引違い窓Wなどの建物の開口部Oに取り付け可能に構成されている。
【0015】
羽根体2は、図2に示すように、その横断面形状が略入字形状に形成されており、屋外側へ傾斜した外側傾斜部21と、外側傾斜部21の下部から鉛直下方へ延びる外側垂下部22と、外側傾斜部21の上部から上方へ延びる立上部23と、外側傾斜部21の上部から下方へ延びて屋内側へ傾斜した内側傾斜部24と、内側傾斜部24の下部から下方へ延びる内側垂下部25と、から構成されている。本実施形態の羽根体2は、透明なアクリル板から成り、採光性に優れている。
【0016】
各羽根体2は、枠体1の一対の縦枠11間に横向き状態で架け渡され、上下に並んだ複数の羽根体2同士の間にそれぞれ、屋内外の空気を双方向に流通させるための通気流路4が形成されている。
【0017】
各通気流路4は、屋外側に位置する外側流路44と、屋内側に位置する内側流路45とから構成されている。即ち、上下方向に並ぶ複数の羽根体2のうち、上側の羽根体2の外側垂下部22の下端部と下側の羽根体2の外側傾斜部21の上面の中程部との間には、屋外に臨んだ外側通気口41が形成され、また、上側の羽根体2の外側傾斜部21の下面の中程部と下側の羽根体2の立上部23の上端部との間には、中間通気口42が形成され、そして、上側の羽根体2の内側垂下部25の下端部と下側の羽根体2の立上部23の下部との間には、屋内に臨んだ内側通気口43が形成されている。通気流路4の外側流路44は、外側通気口41と中間通気口42との間に形成され、内側流路45は、中間通気口42と内側通気口43との間に形成されている。
【0018】
また、外側流路44は、その外側通気口41が中間通気口42よりも下方に位置し、かつ、外側通気口41の開口面積S1及び中間通気口42の開口面積S2がそれぞれ、外側流路44の中程部の横断面積S4よりも小さく形成されている。このことで、屋外から屋内へ向けて外側流路44を流れる空気は上向きに流れることになり、外側流路44の外側通気口41から中程部にかけてその流速が小さくなる。また、内側流路45は、その内側通気口43が中間通気口42よりも下方に位置し、かつ、内側通気口43の開口面積S3が、外側通気口41の開口面積S1とほぼ同じに形成されている。このことで、屋外から屋内へ向けて内側流路45を流れる空気は下向きに流れることになる。
【0019】
また、外側流路44の外側通気口41において、羽根体4の外側傾斜部21の上面には、降雨時の雨滴の衝突を緩衝するための緩衝部5が設けられている。本実施形態の緩衝部5は、いわゆる人工芝シート材等の表面に多数の立毛を有する立毛シート材51から形成されている。
【0020】
排水部3は、上記枠体1の下部に設けられ、上記内側流路45で捕集した雨水を屋外へ排水するためのものである。本実施形態の排水部3は、枠体1の左右一対の縦枠11の下部と、これら縦枠11の下部同士を連結する下側の横枠12と、この横枠12の屋外側の端部から上方へ延びる外側壁部31と、この外側壁部31に設けられた排水孔32と、同横枠12の屋内側の端部から上方へ延びる内側壁部33と、から構成されている。そして、排水部3の内側壁部33は、羽根体2の内側垂下部25の下端部よりも屋内側に位置するように設けられている。このことで、内側流路45で捕集されて内側垂下部25の下端部から滴下する水滴Dを確実に排水部3で受けることができる。
【0021】
本実施形態の防雨ルーバー10は、例えば、図3及び図4に示すように、例えば引違い窓W等の建物の開口部Oに取り付けられ、屋外から屋内への雨水等の侵入を防ぎながら、屋外と屋内との間の通気を可能にする。図3及び図4に示すように、引違い窓Wの左右一対の引違い戸d・dと略同じ正面面積を有する防雨ルーバー10を、引違い窓Wの半面に取り付けることもできる。この場合、図4(a)に示すように、一対の引違い戸d及び網戸mを、防雨ルーバー10の固定位置とは反対側に移動させれば、防雨ルーバー10による防雨・通気が可能となる。そして、このとき、防雨ルーバー10の反対側に移動させた一対の引違い戸dを窓枠に固定するためのロック機構を設ければ、防犯も可能となる。また、図4(b)に示すように、一対の引違い戸d及び網戸mを、防雨ルーバー10の固定位置と同じ側に移動させれば、引違い窓Wの半面を全開させることができる。
【0022】
このように本実施形態の防雨ルーバー10は、図2に示すように、各通気流路4が外側流路44と内側流路45とから成り、この外側流路44の外側通気口41が、中間通気口42よりも下方に位置しているので、風雨時において雨滴Rが屋内に侵入するのを確実に防ぐことができる。
【0023】
しかも、本実施形態の防雨ルーバー10は、雨滴Rが羽根体2に衝突した際に発生する微細な雨水の飛沫Mが通気気流に乗って屋内へ侵入するのも効果的に防ぐことができる。即ち、本実施形態の防雨ルーバー10は、その外側通気口41が中間通気口42よりも下方に位置し、かつ、外側通気口41の開口面積S1及び中間通気口42の開口面積S2がそれぞれ、外側流路44の中程部の横断面積S4よりも小さく形成されている。したがって、屋外から屋内へ向けて飛沫Mを運ぶ気流は、外側流路44を上向きに流れ、しかも、その流速が外側通気口41から外側流路44の中程部にかけて小さくなるため、大部分の飛沫Mを外側流路44で捕集することができる。外側流路44で捕集された雨水は、上側の羽根体2の外側傾斜部21の下面、同じく上側の羽根体2の外側垂下部22の屋内側の側面、下側の羽根体2の立上部23の屋外側の側面、及び同じく下側の羽根体2の外側傾斜部21の上面をそれぞれ伝って、外側通気口41から屋外へ排水される。
【0024】
また、本実施形態の防雨ルーバー10は、通気気流と共に外側流路44を通過してしまった飛沫Mについても、その内側流路45で捕集することができる。即ち、本実施形態の防雨ルーバー10は、その内側通気口43が中間通気口42よりも下方に位置し、かつ、内側通気口43の開口面積S3が、外側通気口41の開口面積S1とほぼ同じに形成されている。したがって、屋外から屋内へ向けて飛沫Mを運ぶ気流は、内側流路45を下向きに流れ、殆どの飛沫Mが内側流路45を通過する途中でその流路内面に捕捉され、飛沫Mが屋内側へ侵入するのを効果的に防ぐことできる。本実施形態の内側流路45のように、流路の横断面積に対する流路長の比が大きいほど、より効果的に飛沫を捕集することができる。内側流路45の通気抵抗等を考慮して種々の設計変更が可能である。
【0025】
この内側流路45で捕集された雨水は、上側の羽根体2の内側傾斜部24の下面、同じく上側の羽根体2の内側垂下部25の屋外側の側面、及び下側の羽根体2の立上部23の屋内側の側面をそれぞれ伝って内側通気口43に至る。そしてさらに、下側の羽根体2の内側傾斜部24の上面、及び同じく下側の羽根体2の内側垂下部25の屋内側の側面を伝って、内側垂下部25の下端部から水滴Dとして上記排水部3に落下する。そして、排水部3の排水孔32を通じて屋外へ排水される。
【0026】
また、本実施形態の防雨ルーバー10の内側流路45は、略鉛直方向に形成されているので、風雨時に外側通気口41から吹き込んだ風は、外側流路44を通って内側流路45の内側通気口43から略鉛直下方へ吹き出すことになる。したがって、羽根体2の内側垂下部25に生じた水滴Dを略鉛直下方へ吹き落すことができ、この水滴Dをその下方の排水部3で確実に受けることができる。
【0027】
さらに、本実施形態の防雨ルーバー10は、外側流路44の外側通気口41において羽根体2の上面に、雨滴Rの衝突を緩衝する緩衝部5が設けられているので、飛沫Mの発生それ自体を抑制することができる。このことによっても、飛沫Mの屋内への侵入をより効果的に防ぐことができる。
【0028】
以上、本実施形態の防雨ルーバー10について説明したが、本発明はその他の形態でも実施することができる。
【0029】
例えば、上記実施形態では、羽根体2を透明なアクリル板から構成しているが、この羽根体2を、例えばガラス板等の他の透光性材料で構成してもよい。勿論、羽根体2を木材や金属材で形成してもよい。
【0030】
また、上記実施形態では、緩衝部5を立毛シート材51で構成しているが、この緩衝部5を、例えば不織布やスポンジ材で形成してもよい。また、羽根体2の外側傾斜部21の上面に、深さ5ミリ程度の凹凸を密に形成することによって緩衝部を設けるようにしてもよい。
【0031】
また、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内で、当業者の知識に基づいて種々の改良、修正、変形を加えた態様で実施し得る。同一の作用又は効果が生じる範囲内でいずれかの発明特定事項を他の技術に置換した形態で実施しても良く、また、一体に構成されている発明特定事項を複数の部材から構成したり、複数の部材から構成されている発明特定事項を一体に構成した形態で実施しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本実施形態の防雨ルーバーの一部断面斜視図である。
【図2】本実施形態の防雨ルーバーの一部省略断面図である。
【図3】本実施形態の防雨ルーバーを建物の開口部に取り付けた状態を示す正面図である。
【図4】本実施形態の防雨ルーバーを建物の開口部に取り付けた状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0033】
10 防雨ルーバー
1 枠体
2 羽根体
3 排水部
4 通気流路
41 外側通気口
42 中間通気口
43 内側通気口
44 外側流路
45 内側流路
5 緩衝部
51 立毛シート材
O 建物の開口部
S1 外側通気口の開口面積
S2 中間通気口の開口面積
S3 内側通気口の開口面積
S4 外側流路の中程部の横断面積
R 雨滴
M 飛沫



【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の開口部に取付け可能な枠体と、該枠体の枠内に互いに上下方向に所定間隔をあけて並べられた複数の羽根体とを備え、該複数の羽根体同士の間に通気流路が形成された防雨ルーバーであって、
前記通気流路が、
屋外に臨んだ外側通気口とルーバー内の中間通気口との間に形成された外側流路と、
該中間通気口と屋内に臨んだ内側通気口との間に形成された内側流路と、
を備え、
前記外側流路は、
前記外側通気口が前記中間通気口よりも下方に位置し、かつ、該外側通気口及び該中間通気口のそれぞれの開口面積が該外側流路の中程部の横断面積よりも小さく形成され、
前記内側流路は、
前記内側通気口が前記中間通気口よりも下方に位置し、かつ、該内側通気口の開口面積が前記外側通気口の開口面積とほぼ同じに形成され、
前記枠体の下部に、前記内側流路で捕集した雨水を屋外へ排水する排水部が設けられていることを特徴とした防雨ルーバー。
【請求項2】
前記外側流路の外側通気口において前記羽根体の上面に、雨滴の衝突を緩衝する緩衝部が設けられている請求項1に記載の防雨ルーバー。
【請求項3】
前記緩衝部が、多数の立毛を有する立毛シート材から成る請求項2に記載の防雨ルーバー。
【請求項4】
前記羽根体が、透光性材料から成る請求項1〜3のいずれかに記載の防雨ルーバー。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−121274(P2010−121274A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−293082(P2008−293082)
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【出願人】(506393134)
【Fターム(参考)】