説明

防音シートおよび防音材

【課題】効率よく防音することができる防音シートおよび防音材を提供する。
【解決手段】防音シート100は、気体が封入された複数の突起部113を有する突起面と、弾力性を有する平面シート112で構成される平面と、を有する気泡緩衝シート110と、気泡緩衝シート110の突起面に配置される粘弾性体120と、を備えている。そして、気泡緩衝シート110の突起面に形成された複数の突起部113は、それぞれ、突起面側外周を粘弾性体120によって取り囲まれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防音シートおよび防音材に関する。
【背景技術】
【0002】
音エネルギーを板や膜の振動による運動エネルギー(以下、「振動エネルギー」という)に変換して吸音する技術(以下、「膜振動吸音」という)が知られている。特許文献1には、開口部を膜で覆ったカップ状の円筒を複数備え、円筒内に入射した音を膜の振動で徐々に減衰させる膜振動吸音構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−097147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の円筒は硬い素材でできている。そのため、膜を越えて円筒内に入射した音は、円筒内壁でエネルギーを失うことなく反射され、再び円筒開口の膜に到達する。膜のエネルギー変換効率には限度があるので、膜は、大きな音エネルギーが到達すると、振動エネルギーに変換しきれずに外部に放出する。したがって、特許文献1の膜振動吸音構造では、外部に漏出する音が大きく、効率よく防音することができない。
【0005】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、効率よく防音することができる防音シートおよび防音材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点にかかる防音シートは、
気体が封入された複数の突起部を有する突起面と、弾力性を有する素材で構成された平面と、を有する気泡緩衝シートと、
前記気泡緩衝シートの突起面に配置される粘弾性体と、を備え、
前記突起部は、突起面側外周を前記粘弾性体によって取り囲まれている、
ことを特徴とする。
【0007】
前記防音シートは、前記突起部の位置が合致するように平面を対向させた一対の前記気泡緩衝シート、を備え、
前記粘弾性体は、対となった前記気泡緩衝シートを挟み込むように配置されていてもよい。
【0008】
前記防音シートは、複数対の前記気泡緩衝シート、を備え、
前記突起部の大きさは対ごとに異なっていてもよい。
【0009】
前記粘弾性体には、粒状固体が複数埋め込まれていてもよい。
【0010】
前記粒状固体は、球体または楕円体の鉛であってもよい。
【0011】
前記粘弾性体は、シリコーンゲルであってもよい。
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点にかかる防音材は、
第1の観点にかかる防音シートと、
前記防音シートの一方の面に配置される第1の板材と、を備えていてもよい。
【0013】
前記防音材は、前記防音シートを挟んで前記第1の板材の反対側に配置される第2の板材、をさらに備えていてもよい。
【発明の効果】
【0014】
効率よく防音することができる防音シートおよび防音材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態1の防音シートの部分断面図である。
【図2】粘弾性体の両面に気泡緩衝シートを貼り付けた構成の防音シートの部分断面図である。
【図3】実施形態2の防音シートの部分断面図である。
【図4】複数対の気泡緩衝シートが粘弾性体を挟んで積層される構成の防音シートの部分断面図である。
【図5】実施形態3の防音材の部分断面図である。
【図6】防音シートの両面に板材が貼り付けられた構成の防音材の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施形態1)
以下、本実施形態の防音シートについて、図面を参照しながら説明する。防音シート100は、例えば、建物の外壁等に設置して、音を遮断および吸収(以下、「防音」という)するためのシートである。防音シート100は、図1に示すように、気泡緩衝シート110と、粘弾性体120と、粒状固体130と、樹脂シート140とから構成される。
【0017】
気泡緩衝シート110は、物を梱包する際に、例えば、緩衝材として使用されるシートであり、突起シート111と平面シート112とを貼り合わせた構造をしている。なお、以下の説明では、理解を容易にするため、気泡緩衝シート110の突起シート111側の面を「突起面」、平面シート112側の面を「平面」と呼ぶ。
【0018】
突起シート111は、表面に突起部113が複数形成されたシートから構成される。突起部113は、円筒に円盤をかぶせたカップ形状をしており、その開口部は平面シート112によって覆われている。突起シート111の内部には空気やヘリウム等の気体が密封されていて、突起シート111は、密封された気体の気圧によってそのカップ形状を維持している。また、突起部113の外側は、粘弾性体120が密着した状態で取り囲んでいて、カップ形状が容易に変形しないようになっている。
【0019】
平面シート112は、平面状の一枚のシートから構成され、突起シート111の片面に貼り合わされている。平面シート112は、例えば、ビニールシートのような弾力性を有するシートから構成されており、平面シート112の表面にあたった音を、突起部113の開口部を支点にした振動に変換して吸収する機能を有している。
【0020】
粘弾性体120は、例えば、シリコーンゲルのような弾性と粘性を併せ持つ素材から構成される。ここで、「弾性」とは、力を加えると変形するが力を取り除くと元に戻る性質のことをいう。また、「粘性」とは、力を加えた際の変形が力を取り除いても元には戻らない性質のことをいう。高い弾性の物質は音をよく反射し、高い粘性の物質は音をよく吸収する(つまり、音エネルギーを熱エネルギーに変換する)。粘弾性体120は、弾性と粘性を併せ持つ素材であり、“音を反射する性質”と“音を吸収する性質”をそれぞれ中程度に有している。この粘弾性体120は、気泡緩衝シート110の突起シート111側(以下、「突起面」という)に、突起部113を取り囲むように積層されている。
【0021】
粒状固体130は、平均粒径数μm〜数mmの粒状(例えば、球体や楕円体)の硬くて重い金属(例えば鉛)から構成される。粒状固体130は、粘弾性体120に侵入した音を通過させにくくする、いわば抵抗の役割を果たすものであり、粘弾性体120の全体に所定の密度で散りばめられている。
【0022】
樹脂シート140は、薄い樹脂製のシートから構成される。樹脂シート140は、衝撃等で変形しやすい粘弾性体120を、外面から保護するものであり、粘弾性体120の片面に貼付されている。
【0023】
上述したように、突起部113の開口部は、弾力性を有する平面シート112で覆われている。そのため、気泡緩衝シート110に入射した音は、平面シート112で振動に変換され吸収される。
【0024】
また、気泡緩衝シート110の突起部113は、粘弾性体120で取り囲まれているため、平面シート112を越えて突起部113の内部に侵入した音は、突起部113の内壁で一部が吸収され、一部のみが反射される。反射された音は再び平面シート112に戻るが、平面シート112は、上述したように、音エネルギーを振動エネルギーに変換する機能を有しているので、到達した音を振動に変換して吸収する。
【0025】
一方、突起部113の内壁で反射されなかった音は、そのまま粘弾性体120の内部に侵入する。粘弾性体120は、粘性(すなわち、音エネルギーを熱エネルギーに変換する性質)を有しているので、粘弾性体120の内部に侵入した音を徐々に熱エネルギーに変換しながら吸収する。
【0026】
また、粘弾性体120の内部には、粒状固体130が多数埋め込まれているので、粘弾性体120の内部に侵入した音は、粒状固体130にあたって乱反射する。そうすると、侵入した音は、粘弾性体120の内部を複雑に移動、すなわち、より長い距離を移動することになり、その結果、粘弾性体120によって効率よく熱エネルギーに変換される。
【0027】
本実施形態によれば、突起部113は粘弾性体120で取り囲まれているので、突起部113に入射した音の一部は、突起部113の内壁で吸収される。そのため、突起部113内壁で反射される音は小さくなり、その結果、防音シート100は、平面シート112を越えて外部に漏出する音を小さくすることができる。
【0028】
また、粘弾性体120は、“音を反射する性質”とともに “音を吸収する性質”も併せ持っている。そのため、粘弾性体120の内部に侵入した音は、粘弾性体120によって吸収されるので、防音シート100は、反対面へ通過する音を抑制することができる。
【0029】
また、粘弾性体120には粒状固体130が多数埋め込まれているので、粘弾性体120は効率よく音エネルギーを熱エネルギーに変換できる。そのため、防音シート100は、高い防音性を発揮することができる。
【0030】
なお、気泡緩衝シート110は、粘弾性体120の片面のみに貼付されていたが、例えば、図2に示すように、粘弾性体120の両面に貼付されていてもよい。この際、突起部113のカップ部分外側が粘弾性体120に取り囲まれるように、突起部113が対向していてもよい。防音シート100の両面で音エネルギーを振動エネルギーに変換できるので、防音効率をさらに高めることができる。
【0031】
また、上述の実施形態では、粘弾性体120の素材としてシリコーンゲルを例示したが、粘弾性体120の素材はシリコーンゲルに限られない。例えば、分散質が高分子の高分子ゲルであってもよいし、また、天然ゴム、合成ゴム、軟質プラスチック等であってもよい。
【0032】
また、本実施形態では、粒状固体130の素材として鉛を例示したが、粒状固体130の素材は鉛に限られない。例えば、鉄、銅、木、硬質プラスチック等の粒であってもよい。また、粒状固体130の形状は、球体や楕円体に限られず、例えば、立方体や三角錐等の形状をしていてもよい。
【0033】
(実施形態2)
実施形態1の防音シート100は、シート表面に気泡緩衝シート110が配置されていたが、気泡緩衝シート110は防音シート100の内層に配置されていてもよい。以下、内層に気泡緩衝シート110を有する防音シート100について説明する。
【0034】
防音シート100は、図3に示すように、対となった2枚の気泡緩衝シート110と、2層の粘弾性体120と、粒状固体130と、2枚の樹脂シート140とから構成される。
【0035】
2枚の気泡緩衝シート110は、突起部113の位置が合致するように、平面シート112を向かい合わせて貼り合わされている。粘弾性体120は、その貼り合わせた2枚の気泡緩衝シート110を挟み込むように配置されていて、突起部113は、その粘弾性体120によって外側を取り囲まれている。そのため、防音シート100の内部には、周囲を粘弾性体120で取り囲まれ、中央を平面シート112で区切られたカプセル状の空間(以下、「カプセル空間」という)が複数形成されている。
【0036】
防音シート100のその他の構成については、実施形態1と同様であるので説明を省略する。
【0037】
上述したように、防音シート100は、中央を平面シート112で区切られたカプセル空間を複数有している。そのため、防音シート100内部に侵入した音は、樹脂シート140および粘弾性体120を越えて、カプセル空間に侵入する。カプセル空間内部に進入した音は、やがて平面シート112に到達するが、平面シート112は、その音をエネルギー減として振動する。この振動により、音エネルギーは振動エネルギーに変換される。
【0038】
振動エネルギーに変換されなかった音は平面シート112を超えて、平面シート112で区切られた他方のカプセル空間に侵入する。侵入した音は、やがてカプセル空間の内壁、つまり、突起部113の内壁に到達するが、突起部113は粘弾性体120で取り囲まれているので、その一部のみが反射される。
【0039】
反射された音は、再び平面シート112に到達する。平面シート112は、その音を再び振動エネルギーに変換して吸収する。
【0040】
音は、カプセル空間内部を、平面シート112を越えて行ったり来たりし、やがて消失する。
【0041】
本実施形態によれば、防音シート100内部にカプセル空間が形成されているので、カプセル空間に侵入した音は何度も平面シート112を通過することになる。そのため、音エネルギーは効率よく平面シート112の振動エネルギーに変換される。したがって、防音シート100は効率よく音を吸収することができる。
【0042】
なお、防音シート100は、図4に示すように、複数対の気泡緩衝シート110が、粘弾性体120を挟んで積層される構成であってもよい。この際、カプセル空間の大きさは、対ごとに異なっていてもよい。カプセル空間の大きさによって、吸収できる音の周波数帯が異なるので、防音シート100は、さまざまな周波数帯の音を吸収できるようになる。
【0043】
(実施形態3)
以上、実施形態1および2では防音シート100について説明したが、この防音シート100は、予め木材等に貼り付けられていてもよい。以下、防音シート100を備える防音材200について説明する。
【0044】
防音材200は、図5に示すように、防音シート100と、板材210とから構成される。
【0045】
板材210は、例えば、木板や石膏ボード等の硬い板材から構成される。板材210の片面には、防音シート100が貼り付けられている。防音シート100は、気泡緩衝シート110が防音材200の表面に来るように、すなわち、樹脂シート140が板材210と接するように貼り付けられている。
【0046】
なお、防音シート100の構成については、実施形態1と同様であるので説明を省略する。
【0047】
上述したように、防音シート100は、気泡緩衝シート110が防音シート100の表面にくるように貼り付けられているので、平面シート112は、板材210に邪魔されることなく、効率よく音エネルギーを振動エネルギーに変換できる。
【0048】
また、防音シート100は硬い材質の板材210に貼り付けられているので、防音シート100を通過して板材210に到達した音は、板材210によって跳ね返され、再び、防音シート100内部に侵入する。
【0049】
防音シート100は、内部に音が侵入すると、粘弾性体120の粘性、および、平面シート112の振動によってその音を吸収する。
【0050】
本実施の形態によれば、防音シート100が硬い材質の板材210に貼り付けられているので、音を板材210で跳ね返して防音シート100に戻すことができる。そのため、
防音シート100単体よりもさらに効率よく防音することができる。
【0051】
また、防音シート100はすでに板材210に貼り付けられているので、建設現場等で防音材の設置が容易になる。
【0052】
なお、防音材200は、図6に示すように、防音シート100の両面に板材210を有する構成であってもよい。この際、防音シート100は、平面シート112を効率よく振動させるため、実施形態2で説明したように、内層に一対の気泡緩衝シート110を有していてもよい。両面に板材210を備えることによって、さらに高い防音性を発揮することができる。
【符号の説明】
【0053】
100 防音シート
110 気泡緩衝シート
111 突起シート
112 平面シート
113 突起部
120 粘弾性体
130 粒状固体
140 樹脂シート
200 防音材
210 板材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体が封入された複数の突起部を有する突起面と、弾力性を有する素材で構成された平面と、を有する気泡緩衝シートと、
前記気泡緩衝シートの突起面に配置される粘弾性体と、を備え、
前記突起部は、突起面側外周を前記粘弾性体によって取り囲まれている、
ことを特徴とする防音シート。
【請求項2】
前記突起部の位置が合致するように平面を対向させた一対の前記気泡緩衝シート、を備え、
前記粘弾性体は、対となった前記気泡緩衝シートを挟み込むように配置されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の防音シート。
【請求項3】
複数対の前記気泡緩衝シート、を備え、
前記突起部の大きさは対ごとに異なる、
ことを特徴とする請求項2に記載の防音シート。
【請求項4】
前記粘弾性体には、粒状固体が複数埋め込まれている、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の防音シート。
【請求項5】
前記粒状固体は、球体または楕円体の鉛である、
ことを特徴とする請求項4に記載の防音シート。
【請求項6】
前記粘弾性体は、シリコーンゲルである、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の防音シート。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の防音シートと、
前記防音シートの一方の面に配置される第1の板材と、を備える、
ことを特徴とする防音材。
【請求項8】
前記防音シートを挟んで前記第1の板材の反対側に配置される第2の板材、をさらに備える、
ことを特徴とする請求項7に記載の防音材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−211442(P2012−211442A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76832(P2011−76832)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(311003307)
【Fターム(参考)】