説明

防音性合成樹脂製中空材及びこれを用いた防音構造

【課題】屋根材、壁材又は窓材に用いても、防音性を有する防音性合成樹脂製中空材を提供する。
【解決手段】互いに対向する複数の平板と複数のリブによって仕切られた中空部を有し、前記中空部の両端が開口している合成樹脂製中空材本体110の少なくとも1つの中空部113に中実長尺材120が挿入された構成の防音性合成樹脂製中空材100とする。防音性合成樹脂製中空材100を屋根材、壁材又は窓材に用いても、合成樹脂製中空材本体110の中空部113に挿通された中実長尺材120によって音の屋内への漏れを軽減することで防音性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防音性合成樹脂製中空材及びこれを用いた防音構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、互いに対向する複数の平板と複数のリブによって仕切られた中空部を有する合成樹脂製中空材が、採光用屋根材、壁材又は窓材として使用されている。
このような合成樹脂製中空材は、同じ厚さの合成樹脂製中実材に比べ軽量で断熱性が優れているものの、例えば合成樹脂製中空材の一方の面に雨滴が衝突する音が合成樹脂製中空材の他方の面側に伝わる雨音を低減したいといった防音性の向上が求められることもある。
【0003】
屋根材の雨音を低減する方法として特許文献1には、折板屋根の裏面に制振シートを積層する方法が公知技術として記載されている。また、中空材の防音性を向上するための方法として特許文献2では、複数のブリッジにより補強した熱可塑性樹脂製中空状板の表裏各面に、ゴムチップをバインダーで結合したゴムチップシート及び不織布を重ね合わせたゴムチップ・不織布複合シートを張合わせ、さらに前記中空状板の上下各端に、ゴムチップ・不織布複合シートの上下各端部を覆い、その剥離を防止する断面略コの字状カバー部とで構成してなる遮音壁が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2000−301640号公報
【特許文献2】特開平07−317022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の折板屋根では折板屋根の裏面に制振シートを積層するため、特許文献2の遮音壁は熱可塑性樹脂製中空状板の表裏各面に、ゴムチップをバインダーで結合したゴムチップシート及び不織布を重ね合わせたゴムチップ・不織布複合シートを張合わせるため、経時により前記制振シート又はゴムチップシートあるいはゴムチップ・不織布複合シートが剥離し防音性が低下する恐れがあり、更に、既設の壁に防音性を付与することが難しかった。
【0006】
本発明は上記事情の下になされたもので、その解決しようとする課題は、経時による防音性の低下が軽減され、要求される防音性を容易に付与できる防音性合成樹脂製中空材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の請求項1に係る防音性合成樹脂製中空材は、互いに対向する複数の平板と複数のリブによって仕切られた中空部を有し、前記中空部の両端が開口している合成樹脂製中空材本体と、前記合成樹脂製中空材本体の少なくとも1つの中空部に挿入された中実長尺材を備えていることを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項2に係る防音性合成樹脂製中空材は、前記中実長尺材の厚さが、前記平板よりも厚いことを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項3に係る防音性合成樹脂製中空材は、前記平板が3枚以上であることにより、前記合成樹脂製中空材本体の厚さ方向に少なくとも2以上の中空部を有していることを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項4に係る屋根、壁又は窓構造は、前記防音性合成樹脂製中空材1枚、又は前記防音性合成樹脂製中空材を幅方向に2枚以上配したものの、外周部を枠材で覆っていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、互いに対向する複数の平板と複数のリブによって仕切られた中空部を有し、前記中空部の両端が開口している合成樹脂製中空材本体と、前記合成樹脂製中空材本体の少なくとも1つの中空部に挿入された中実長尺材を備えているので、防音性合成樹脂製中空材の防音性を向上することができる。
【0012】
請求項2の発明によれば、前記中実長尺材の厚さが、前記平板よりも厚いので、後述の重量効果とコインシデンス効果の2つの効果の組み合わせにより防音性合成樹脂製中空材の防音性を更に向上することができる。
【0013】
請求項3の発明によれば、前記平板が3枚以上であることにより、前記合成樹脂製中空材本体の厚さ方向に少なくとも2以上の中空部を有しているので、中実長尺材を挿入できる中空部の数が増えるため、要求される防音性や重量に合わせて長尺材の数の選択の幅が広がり、防音性合成樹脂製中空材の防音性と重量を調整しやすくなる。
【0014】
請求項4の発明によれば、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の防音性合成樹脂製中空材を1枚、又は防音性合成樹脂製中空材を幅方向に2枚以上配したものの、外周部を枠材で覆うことにより、優れた耐風圧性を有する防音屋根、壁又は窓構造を提供することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)は本発明の一実施形態を示す防音性合成樹脂製中空材の斜視図であり、(b)はその部分拡大図である。
【図2】図1(a)のAA’断面図である。
【図3】(a)〜(c)は本発明の他の実施形態を示す防音性合成樹脂製中空材の部分側面図である。
【図4】(a)は本発明の一実施形態を示す防音性屋根構造1の斜視図であり、(b)はその部分拡大図である。
【図5】は接続材130の断面図である。
【図6】(a)は横枠材141の斜視図であり、(b)は縦枠材142の斜視図である。
【図7】(a)は図4のBB’切断端面図であり、(b)はその部分拡大図である。
【図8】は図4のCC’断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の最良の実施形態について図面を参照して説明する。但し、本発明は実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができる。
【0017】
図1及び図2により、本発明の実施形態に係る防音性合成樹脂製中空材について説明する。
【0018】
図1(a)は、本発明の一実施形態を示す防音性合成樹脂製中空材100の斜視図であり、図1(b)は、図1(a)の幅方向端部の部分拡大図である。また、図2は、図1(a)のAA’線に沿った断面図である。
【0019】
この防音性合成樹脂製中空材100は、図1(a)に示すように、互いに対向する4枚の平板111と複数のリブ112によって仕切られた中空部113及び114を有する合成樹脂製中空材本体110と、前記合成樹脂製中空材本体110の多数の中空部113に挿入された中実長尺材120を備えている。
【0020】
合成樹脂製中空材本体110の互い対向する4枚の平板111は略同じ長さ及び幅を有しており、111a、111b、111c、111dの順にそれぞれの面が対向するように並列している。また、合成樹脂製中空材本体110の複数のリブ112は、次の3種のリブを備えている。1種のリブは4枚の平板と略垂直で前記平板111a〜dの幅方向両端部で接しているリブ112aであり、もう1種のリブは4枚の平板111a〜dと略垂直で前記平板111a〜dの幅方向の端部以外で接している又は交差しているリブ112bである。更にもう1種のリブは前記平板111a〜111dの幅方向端部付近に後述の中空部114を形成するリブ112cである。リブ112cは図1(b)に示すように平板111a〜dに略垂直なものもあれば略平行なものもある。なお、いずれのリブ112a、112b、112cも略平面状であり、長さは記平板111の長さに略等しい。
【0021】
合成樹脂製中空材本体110には、2種の中空部がある。1種は平板111a〜dとリブ112bにより仕切られた略同形の略矩形断面を有する多数の中空部113である。なお、中空部113には、平板111aと平板111bとリブ112bにより仕切られた中空部113abと、平板111bと平板111cとリブ112bにより仕切られた中空部113bcと、平板111cと平板111dとリブ112bにより仕切られた中空部113cdがある。もう1種の中空部は前記平板111の幅方向端部付近に上述の中空部113とは異なる断面形状を有する中空部114である。また、この中空部113及び114はいずれも平板111及びリブ112の長さ方向に遮るものがないので、合成樹脂製中空材本体110の長さ方向の両端が開口している。
【0022】
合成樹脂製中空材本体110の幅方向の両端には、合成樹脂製中空材本体110の長さ方向全長に亘って、厚さ方向の平板111d側に突出した中空の引掛け部115を備えている。また、引掛け部115は、突出片115aと引掛け片115bを備えている。1枚の合成樹脂製中空材本体110の幅方向両端に設けた2つの引掛け部115、115に備えた2つの引掛け片115b、115bは対向するように(共に幅方向中向きに)設けられている。なお、引掛け部115は、後述するように、隣接する合成樹脂製中空材本体110、110を合成樹脂製中空材本体110の幅方向に接続する際に、接続材130により挟持される。
【0023】
合成樹脂製中空材本体110の各部の寸法は特に限定されないが、本実施形態では合成樹脂製中空材本体110の厚さ(平板111aの外側から平板111dの外側までの距離)が約16mm、幅が600mm、長さが2000mmであり、平板111a、111d及び、リブ112aの厚さは約1mm、平板111b、111c、リブ112b及びリブ112cの厚さは約0.5mmであり、引掛け部115は111d側に約14mm突出しており、リブ112bの間隔は約20mmである。
【0024】
合成樹脂製中空材本体110の材料としては、ポリ塩化ビニル、ポリアクリル、ポリオレフィン、ポリエステルなどの熱可塑性の各種の樹脂を使用できるが、その中でもポリカーボネートは、強度、成形性、価格などのバランスが良く、高品質の合成樹脂製中材本体110を比較的安価に製造できるので、特に好ましく使用される。このようなポリカーボネート製の合成樹脂製中空材本体110の全体又は一部には、紫外線吸収剤、光安定剤及び/又は酸化防止剤等を含有させ、あるいは紫外線吸収剤、光安定剤及び/又は酸化防止剤等を有する層を設けることで耐候性を高めることが好ましい。また、ポリカーボネート製の合成樹脂製中空材本体110の全体あるいは一部には、顔料及び/又は熱線吸収材等の公知な添加材を添加してもよく、防曇、制電及び/又は防汚等の公知な機能層を備えてもよい。
【0025】
なお、合成樹脂製中空材本体の平板は4枚に限定されることなく、中空部を形成できる2枚以上であればよい。また、合成樹脂製中空材本体のリブの本数も中空部を形成できる2本以上であればよい。
【0026】
合成樹脂製中空材本体110の中空部113に挿入される中実長尺材120は、防音性合成樹脂製中空材100の重量を増し、更に合成樹脂製中空材本体110の中空部113の空間を小さくすることで、防音性合成樹脂製中空材100の防音性を向上する役目を果たすものである。
【0027】
中実長尺材120は、合成樹脂製中空材本体110の中空部113に挿入できる大きさであれば、断面形状は問わないが、本実施形態では図1(b)に示すように中空部113の断面形状よりも全体的に僅かに小さい略矩形の断面形状を有している。
【0028】
板材の重量を大きくすることで防音性を向上することができる質量効果を考慮すると、合成樹脂製中空材本体110の中空部113に中実長尺材120を挿入することで合成樹脂製中空材本体110の重量が大きくなるので、合成樹脂製中空材本体110の防音性を向上することができる。比重が同じ中実長尺材120であれば中実長尺材120の断面積が大きく且つ長さが長いほうが重量が大きくなるので、中実長尺材120は断面積が大きく且つ長さが長いことが好ましい。更に中実長尺材120の断面積を大きくするには中実長尺材120の幅及び厚さを大きくする必要がある。従って、中空材120は、幅及び厚さが大きく、長さが長いことが好ましい。
【0029】
また、合成樹脂製中空材本体110の中空部113と中実長尺材120の間に大きな隙間があると、風等により、合成樹脂製中空材本体110が振動すると、合成樹脂製中空材本体110の中空部113に挿入された中実長尺材120が中空部113内でガタつくことにより中空部113を形成している平板111やリブ112bに衝突して衝突音が発生する可能性があるので、中実長尺材120は、合成樹脂製中空材本体110の中空部113との隙間が少ないか又は隙間がない断面形状が好ましい。更に、中実長尺材120と合成樹脂製中空材本体110の中空部113との間に隙間(空間)が存在すると、隙間の大きさに起因する共鳴が発生するため、特定の周波数での防音性が低下する。従って中実長尺材120の断面形状は、合成樹脂製中空材本体110の中空部113の断面形状より全体的に僅かに小さく、挿入した際に隙間が極力小さくなる形状がより好ましい。
【0030】
また、中実長尺材120の長さは、合成樹脂製中空材本体110の中空部113の長さよりも短い場合には中実長尺材120が中空部113の中で長さ方向に移動する可能性があるのみならず、透光性を有する合成樹脂製中空材本体110では中実長尺材120の有無により透光性に違いが生じるため意匠性が低下することが懸念されるため、図2に示すように、合成樹脂製中空材本体110の長さと略等しく、合成樹脂製中空材本体110の中空部113の全長に亘り挿入されていることが好ましい。
【0031】
中実長尺材120の材料としては、合成樹脂、ガラス、金属などが使用可能であるが、採光用の軽量な屋根材、壁材又は窓材等として使用される防音性合成樹脂製中空材100を得るためには、透光性の合成樹脂が適している。透光性の樹脂としては、ポリ塩化ビニル、ポリアクリル、ポリオレフィン、ポリエステルなどの熱可塑性の各種の樹脂を使用できるが、その中でもポリカーボネートは、強度、成形性、価格などのバランスが良く、高品質の中実長尺材120を比較的安価に製造できるので、特に好ましく使用される。このようなポリカーボネート製の中実長尺材120には、紫外線吸収剤や光安定剤を含有させ、又は紫外線吸収製を有する層を設けることで耐候性を高めることが好ましい。また、ポリカーボネート製の中実長尺材120には紫外線吸収剤、顔料、光拡散剤及び/又は熱線吸収材等の公知な添加材を添加してもよく、紫外線吸収剤、顔料、光拡散剤及び/又は熱線吸収材等の公知な機能層を備えてもよい。
【0032】
また、材料や厚さに起因する特定の周波数で防音性が低下するコインシデンス効果を考慮すると、中実長尺材120は、合成樹脂製中空材本体110と材料及び/又は厚さが異なることが好ましい。これは、材料が同じであれば防音性が低下する特定の周波数は厚さにより決まるため、中実長尺材120と合成樹脂製中空材本体110の平板111の厚さが異なると防音性が低下する特定の周波数は異なることになり、一方の厚さに起因する特定の周波数での防音性の低下を他方で補うことができるためである。また、長尺中空材120と合成樹脂製中空材本体110の厚さが同じ場合には、防音性が低下する特定の周波数は材料により決まるため、中実長尺材120と合成樹脂製中空材本体110材料を厚さが同じであって防音性が低下する特定の周波数が異なる材料を選定することで、一方の材料に起因する特定の周波数での防音性の低下を他方で補うことができる。しかし、長尺中空材120と合成樹脂製中空材本体110の材料が異なり、厚さが同じ場合にも、防音性が低下する特定の周波数が同じになる材料の組み合わせも考えられるので、コインシデンス効果を確実に発現させることができるように長尺中空材120と合成樹脂製中空材本体110は材質が同じで厚さが異なることがより好ましい。また、中実長尺材120と合成樹脂製中空材本体110の材料及び厚さが異なる場合には、それぞれの防音性が低下する特定の周波数が異なるように材料及び厚さを選定することが好ましい。
【0033】
なお、本発明にいう「中実長尺材」とは、実質的に気泡や空間等が内部にない長尺材を意味している。従って、発泡合成樹脂からなる長尺材及び合成樹脂からなる中空の長尺材は本発明にいう「中実長尺材」に包含されない。ただし、製造過程で意図せず発生し得る少量及び/又は極小の気泡等が存在する合成樹脂からなる長尺材は本発明にいう「中実長尺材」に包含される。
【0034】
中実長尺材120の数は、防音性合成樹脂製中空材100に要求される重量、防音性及び断熱性等を考慮し適宜選定すればよく、図3(a)〜(c)に示すように、合成樹脂製中空材本体110の中空部113の全て又は一部に挿入されてもよい。また、本実施形態のように合成樹脂製中空材本体110の厚さ方向に中空部113が複数ある場合には厚さ方向の全て又は一部に中実長尺材120を挿入してもよい。なお、中実長尺材120の数が多いと防音性合成樹脂製中空材100の重量が大きくなるため防音性を向上できる一方、軽量という中空材の利点が損なわれる可能性がある。図1(a)に示す防音性合成樹脂製中空材100では、合成樹脂製中空材本体110の中空部113のうち、中空部113cdの全てに中実長尺材120が挿入されている。これは、施工時に屋外側に位置し雨粒が当たる平板111dにより仕切られた中空部113cdに長尺中空材120を挿入することで、防音性合成樹脂製中空材100の最も屋外側で防音性を発現することになり、この結果、防音性合成樹脂製中空材100の内部への音の透過を軽減できるので、中実長尺材120を挿入していない中空部113ab、113bc及び114での共鳴を低減することができるためである。更に、全ての中空部113に中実長尺材120を挿入する場合と比較して、中空部113cdの全てに中実長尺材120が挿入されている場合には、防音性合成樹脂製中空材100の質量の増加を抑制することができる。従って、防音性と中空体の利点である軽量及び優れた断熱性を両立することができる。
【0035】
なお、中実長尺材は中空部114にも挿入することができる。その際に好ましい条件等は上記中空部113に挿入する中実長尺材120と同様であるので説明を省略する。
【0036】
合成樹脂製中空材本体110の長さ方向の両開口端部は、中実長尺材120を挿入した後に、結露防止及び/又は異物や雨水等が中空部113に浸入することを防止するため、アルミテープ等により封止することが好ましい。
【0037】
次に防音性合成樹脂製中空材100を用いた防音性屋根構造1について、図4〜図8を用いて説明する。
【0038】
図4(a)は、本発明の一実施形態を示す防音性屋根構造1の斜視図であり、図4(b)は、図4(a)の防音性屋根用パネル140の横枠材141と縦枠材142の接合部付近の部分拡大図であり、図5は接続材130の断面図であり、図6(a)は、横枠材141の斜視図であり、図6(b)は、縦枠材142の斜視図であり、図7(a)は、図4のBB’線に沿った切断端面図であり、図7(b)は、図7(a)の2枚の防音性合成樹脂製中空材100、100の接続部付近の部分拡大図であり、図8は、図4のCC’線に沿った断面図である。
【0039】
この防音性屋根構造1は、後述する防音性屋根用パネル140と、躯体150からなる。
【0040】
防音性屋根用パネル140は、3枚の同じ長さの防音性合成樹脂製中空材100と、隣接する前記防音性合成樹脂製中空材100を接続する2本の接続材130と、接続材130で接続した3枚の防音性合成樹脂製中空材100の長さ方向の両端をそれぞれ外嵌する2本の横枠材141と、接続材130で接続した3枚の防音性合成樹脂製中空材100の幅方向の両端をそれぞれ外嵌する2本の縦枠材142からなる。なお、本実施例では3枚の合成樹脂製中空材本体110の長さはいずれも約2mであり、3枚の合成樹脂製中空材本体110のうち両端に使用する2枚は、屋根の幅に合わせて幅方向の中間部で全長に亘り切断したものを使用している。
【0041】
図5に示すように、接続材130は、中空の天面部131と、天面部131の両端にそれぞれ下方垂設した中空の2つの側面部132と、2つの側面部132と平行に側面部131の略中央部に垂設した一部中空の仕切り部133を有する断面略E字状の長尺材である。接続材130の2つの側面部132のそれぞれの対向面側は、前述の合成樹脂製中空材本体110の引掛け部115の形状に対応した形状を備えている。
【0042】
接続材130の材料としては、合成樹脂、金属などが使用可能であるが、本実施形態ではポリカーボネートを使用している。合成樹脂の場合には、採光性を有する材料を用いると防音性合成樹脂製中空パネルと接続材130を含む屋根、壁又は窓構造等の採光性の低下を抑えられるため好ましい。また、合成樹脂を使用する場合に、接続材130を構成する各部位は中空部にリブを備えてもよく、更に中実としてもよい。一方、金属の場合には軽量で成形性に優れたアルミニウムが好適に用いられる。
【0043】
図7(b)に示すように、接続材130の天面部131、2つの側面部132及び仕切り部133で形成される2つの空間部134、134には、それぞれ合成樹脂製中空材本体110の引掛け部115が挿入される。なお、空間部134を形成している側面部132の空間部134側の側面は、合成樹脂製中空材本体110の引掛け部115と略同形の断面形状(特に引掛け片115bに対応する凹み部)を有している。また、側面材132と仕切り材133の距離は、合成樹脂製中空材本体110の引掛け部115の幅よりも僅かに幅広くなっている。このため、接続材130は、合成樹脂製中空材110の引掛け部115と組み合わせることにより、接続する2つの合成樹脂製中空材本体110、110の隣接する引掛け部115、115を嵌合し、且つ一度嵌合すると抜け難くなっている。
【0044】
図6(a)に示すように、横枠材141は、側面部141aと、側面部141aの両端に垂設した天面部141bと底面部141cからなる断面コ字状の長尺材であり、その長さL1は連結した合成樹脂製中空材本体110の全幅wに略等しい。側面部141aの高さは、合成樹脂製中空材本体110の引掛け部115がある部分に対応する部分付近では合成樹脂製中空材本体110の厚さTに接続材130の高さH130を加えた長さよりも僅かに高くなっており(H1)、その他の部分では防音性合成樹脂製中空材本体110の厚さTよりも僅かに幅広くなっている(H2)。このため、横枠材141は合成樹脂製中空材本体110の長さ方向端部を外嵌することができる。
【0045】
縦枠材142は、側面部142aと、側面部142aの両端に垂設した天面部142bと底面部142cからなる断面コの字状の長尺材であり、その長さL2は合成樹脂製中空材本体110の長さLと略等しく、側面材142aの高さは横枠材141の高さと同じH2で、合成樹脂製中空材本体110の厚さTよりも僅かに幅広くなっている。このため縦枠材142は、合成樹脂製中空材本体110の幅方向端部を外嵌することができる。なお、縦枠材142の長さと防音性屋根用パネル140の長さは等しいので、共にL2と記す。
【0046】
横枠材141及び縦枠材142の材料は特に制限はないが、用途及び耐荷重等を考慮して適宜選定すればよい。本実施形態ではアルミ材からなる。
【0047】
図4(b)に示すように、防音性屋根用パネル140の横枠材141と縦枠材142の各接合部付近では、横枠材141及び縦枠材142は互いに重ならないように、側面材141a及び142aの端部を、横枠材141の底面材141aを含む面と側面材141b端部のなす角度θ1及び縦枠材142の底面材142aを含む面と側面材142bの端部のなす角度θ2が略45°になるようにそれぞれ切欠いている。この切欠いた端部を含め、横枠材141と縦枠材142が隣接する部位にシーリングすることにより防音性屋根用パネル140の水密性や気密性が向上する。
【0048】
また、横枠材141又は縦枠材142と防音性合成樹脂製中空材100の間にパッキン等を挿入することにより、水密性や気密性が向上すると共にガタツキを防止することができる。更にパッキンの露出面を覆うようにシーリングすることにより、防音性屋根用パネル140の防水性や気密性を向上することができる。
【0049】
図4(a)に示すように、防音性屋根用パネル140は、2本の接続材130を用いて3枚の防音性合成樹脂製中空材100を接続材130により幅方向に接続させたものの四周を、断面コ字状の2本の横枠材141及び断面コ字状の2本の縦枠材142で外嵌して覆っている。このため、防音性屋根パネル140は、風圧等でも防音性合成樹脂製中空材100が外れにくい構造になっている。上述のように、横枠材141及び縦枠材142は、防音性合成樹脂製中空材100及び接続材130を外嵌して覆うことにより、防音性屋根用パネル140に優れた耐風圧性を付与する役割を果たす。
【0050】
躯体150は、一端を地中に埋設した柱材151と、柱材151の他端に延設した梁材152からなる。
【0051】
柱材151の材料、形状、及び本数は特に制限はないが、用途、屋根の大きさ、及び耐荷重等を考慮して適宜選定すればよい。本実施形態では長さが約2mで断面矩形の中空のアルミ材からなる柱材151を2本使用している。
【0052】
梁材152の材料や形状は特に制限はないが、用途、屋根の大きさ、及び耐荷重等を考慮して適宜選定すればよい。本実施形態では長さが防音性屋根用パネル140の長さL2に略等しい約2mで断面矩形の中空のアルミ材からなる。
【0053】
柱材151で梁材152を支持する方法は、一端、両端、或いは3点以上のいずれでもよく、いずれの方法で支持するかは用途、屋根の大きさ、及び耐荷重等を考慮して適宜選定すればよい。本実施形態では図6(a)に示すように梁材152の一端で柱材151が梁材152を支持している。
【0054】
梁材152の上面に防音性屋根用パネル140設置し固定することで防音性屋根構造1が得られる。本実施形態では梁材152の長さは防音性屋根用パネル140の長さL2に略等しいため、梁材152の両端と防音性屋根用パネル140の横枠材141をビスにより固定している。なお、固定方法はビスに限らず公知のあらゆる固定方法を採用することができる。
【0055】
柱材151と梁材152なす角度は用途、屋根の大きさ、及び耐荷重等を考慮し適宜選定すればよいが、梁材152上に設置される防音性屋根用パネル140上面の排水性を考慮すると、防音性屋根用パネル140が傾斜していることが好ましいので、柱材151と梁材152なす角度は90度よりも大きいことが好ましい。
【0056】
以上、防音性合成樹脂製中空材100、及びこれを用いた防音性屋根構造1について説明した。本実施形態の防音性合成樹脂製中空材100及びこれを用いた防音性屋根構造1では、合成樹脂製中空材本体110の中空部113に中実長尺材120を挿入することにより防音性を向上することができる。更に中実長尺材120の数を適宜選定することで防音性と重量のバランスの取れた防音性合成樹脂製中空材100及びこれを用いた防音性屋根構造1を得ることができる。
【0057】
なお、本発明の防音性合成樹脂製中空材100は、合成樹脂製中空材本体110の中空部に中実長尺材を挿入したものであるから、本発明を利用すれば、既設の屋根、壁又は窓においても、防音性合成樹脂製中空材100の外周部を覆う枠材を外して中実長尺材を挿入することにより、容易に防音性を向上することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 防音性屋根構造
100 防音性合成樹脂製中空材
110 合成樹脂製中空材本体
111a〜d 平板
112a〜c リブ
113 中空部
114 中空部
115 引掛け部
120 中実長尺材
130 接続材
140 防音性屋根用パネル
141 横枠材
142 縦枠材
150 躯体
151 柱材
152 梁材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する複数の平板と複数のリブによって仕切られた中空部を有し、前記中空部の両端が開口している合成樹脂製中空材本体と、
前記合成樹脂製中空材本体の少なくとも1つの中空部に挿入された中実長尺材を
備えていることを特徴とする防音性合成樹脂製中空材。
【請求項2】
前記中実長尺材の厚さが、前記平板よりも厚いことを特徴とする請求項1に記載の防音性合成樹脂製中空材。
【請求項3】
前記平板が3枚以上であり、前記合成樹脂製中空材本体の厚さ方向に少なくとも2以上の中空部を有していることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の防音性合成樹脂製中空材。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の防音性合成樹脂製中空材を1枚、又は防音性合成樹脂製中空材を幅方向に2枚以上配したものの、外周部を枠材で覆うことを特徴とする屋根、壁又は窓構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−214225(P2011−214225A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−80427(P2010−80427)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000108719)タキロン株式会社 (421)
【Fターム(参考)】