説明

除湿機

【課題】加熱手段の放熱による熱損失を低減し、省電力化が可能となる除湿機を提供する。
【解決手段】本発明の除湿機は、吸湿材15と、この吸湿材15で吸湿される室内空気2を送る送風機4と、前記吸湿材15を再生する循環空気14を送る循環機12と、前記吸湿材15を通過する循環空気14を加熱する加熱手段9と、前記吸湿材15を通過した循環空気14を冷却して水分を凝縮させる熱交換器20とを備え、前記加熱手段9と前記送風機4とを挟み込むように複数の前記吸湿材15を配置し、室内空気2が放湿直後の前記吸湿材15を通過して効率よく循環される構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸湿材を備えた除湿機に関する。
【背景技術】
【0002】
除湿機の従来技術としては、吸湿材は加熱手段の一方の面のみに対向しており、他方の面には反射性の高い金属板を設けて加熱手段の輻射熱を反射させている。また、静電ミストを発生させる静電霧化装置を備えた除湿機において、静電霧化装置には、カートリッジタンク式でユーザーが直接給水する方式のものやペルチェ素子で空気中の水分を結露させて給水する方式のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−144833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、金属板による輻射熱の反射は効率よく行われず、吸湿材側の面の加熱手段の輻射熱のみが有効に利用される。したがって、吸湿材が加熱手段の一方の面のみに対向する構成では、吸湿材の反対側への加熱手段の熱量が熱損失として放熱され、無駄な電力を消費してしまう問題があった。
【0005】
また、別な問題として、カートリッジタンク式の給水方式では、ユーザーが給水したりミスト発生部に堆積するスケールを除去したりしなければならず、ユーザーの手をわずらわせてしまう問題があった。ペルチェ素子を応用した給水方式では、メンテナンスフリーである一方、絶対湿度が低い環境では十分に結露させることができず、安定したミスト量を確保できない問題があった。
【0006】
そこで本発明は上記問題点に鑑み、放熱による熱損失を低減し、消費電力を低減することができる除湿機を提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明の第2の目的は、安定したミスト量の確保及びメンテナンスフリーを実現する静電霧化装置を備えた除湿機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、吸湿材と、この吸湿材で吸湿される室内空気を送る送風機と、前記吸湿材を再生する循環空気を送る循環機と、前記吸湿材を通過する循環空気を加熱する加熱手段と、前記吸湿材を通過した循環空気を冷却して水分を凝縮させる熱交換器とを備える除湿機であって、前記加熱手段と前記送風機とを挟み込むように複数の前記吸湿材を配置したことを特徴とする。
【0009】
請求項1の発明によれば、吸湿材が加熱手段を挟み込むように配置されるので、それぞれの吸湿材は、加熱手段の輻射熱を効率よく受けて加熱され、十分に放湿される。さらに、吸湿材が送風機を挟み込むように配置されるので、空気は、それぞれの吸湿材側から放湿後の吸湿材に直ちに取り込まれ、効率よく循環される。したがって、本体寸法の大型化を抑制しながら、従来の構造よりも省電力化が可能となる。
【0010】
請求項2の発明は、吸湿材と、この吸湿材で吸湿される室内空気を送る送風機と、前記吸湿材を再生する循環空気を送る循環機と、前記吸湿材を通過する循環空気を加熱する加熱手段と、前記吸湿材を通過した循環空気を冷却して水分を凝縮させる熱交換器とを備え、静電ミストを発生させる静電霧化装置を本体内部に設け、前記熱交換器内部から前記静電霧化装置に前記熱交換器内部に凝縮する水分を導入する導入管を設けたことを特徴とする。
【0011】
請求項2の発明によれば、吸湿材を使用した除湿機は、低絶対湿度環境下でも比較的多量の水分を得ることができるので、熱交換器内部壁面には常に十分な凝縮水が存在する。したがって、凝縮水を導入管で静電霧化装置に供給することで、静電ミストを安定的に発生することができ、絶対湿度変化に関係なく、安定的に静電ミストによる除菌効果及び脱臭効果を得ることができる。
【0012】
静電霧化装置の給水口には、蒸気を遮断して液化した水分を通す吸水性素材が配置されてもよい。この場合、蒸気が静電霧化装置に流入するのを防ぐことができるので、水分が静電霧化装置に付着することにより、ユーザーが感電するのを防止することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明における上記構成の除湿機であれば、本体寸法の大型化を抑制しながら、従来の構造よりも電力の消費を低減することができ、また絶対湿度変化に関係なく、安定的に静電ミストによる除菌効果及び脱臭効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施例における除湿機の内部構造を示す斜視図である。
【図2】同上、図1におけるA−A断面方向の模式図である。
【図3】同上、図1におけるB−B断面方向の模式図である。
【図4】本発明の第2実施例における除湿機の内部構造の要部拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明における除湿機の好ましい各実施例を説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は、本実施例における除湿機本体1の内部構造の斜視図を示している。図2及び図3は、それぞれA−A断面方向及びB−B断面方向の模式図である。除湿機本体1は、室内空気2を吸気し、乾燥空気3を排気する送風機4を備える。送風機4は、軸心回りに回転するロータ部5を備える。ロータ部5の長手方向中心部には、送風機4の軸心に垂直な支持板6が設けられる。ロータ部5の周囲には、ロータ部5の回転にともない両面から空気を吸気できるように、複数のブレード7が支持板6を挟んで両側に取付けられている。さらに、送風機4には、両面に開口部8が設けられている。こうして送風機4は、両面から室内空気2を吸気し、上部から乾燥空気3を排気するように構成されている。
【0017】
加熱手段9は、加熱手段9の長手方向の中心部に配置される発熱線10を備える。発熱線10には、例えばニクロム線が用いられ、例えば扇形状に配置される。加熱手段9の両側面には、発熱線10の扇形状に合せて開口部11が設けられ、発熱線10の輻射熱が開口部11から加熱手段9の外部に効率よく伝達されるようになっている。さらに、加熱手段9では循環空気14が取り込まれ、取り込まれた循環空気14は、発熱線10により加熱され、開口部11から加熱手段9の外部に送り出されるようになっている。
【0018】
吸湿材15は、例えばハニカム構造に形成され、その表面に水分を吸着するための吸湿剤を担持している。吸湿剤には、例えばシリカゲル、ゼオライト、高分子吸着剤などが用いられる。あるいは、吸湿材15は、ハニカム状のシリカゲルで形成してもよい。第1吸湿材16は、一部が加熱手段9の一方の側面の開口部11に対向し、残りの部分の一部が送風機4の一方の面に対向するように配置される。第2吸湿材17は、一部が加熱手段9の他方の側面の開口部11に対向し、残りの部分が送風機4の他方の面に対向するように配置される。すなわち、吸湿材15は、第1及び第2吸湿材16、17のそれぞれの一部が加熱手段9を挟み込み、残りの部分の一部が送風機4を挟み込むように構成される。吸湿材15は、図示しない駆動手段により、例えば回転方向RDに連続して回転する回転体である。吸湿材15は、加熱手段9を挟み込む部分において加熱手段9の開口部11からの輻射熱と循環空気14とで加熱されて放湿し、送風機4を挟み込む部分において室内空気2から吸湿するので、回転することにより、吸放湿を繰り返すようになっている。
【0019】
吸湿材カバー18は、加熱手段9の開口部11に面する吸湿材15を覆うように扇形状を有する。再生循環部19は、吸湿材カバー18と熱交換器20の上端とを接続する。吸湿材15から放出された水分を多量に含んで高温高湿となっている循環空気14は、再生循環部19を通って熱交換器20へ送られ、室内空気2で冷却される熱交換器20内で冷却され、循環空気14に含まれる水分が凝縮されるようになっている。
【0020】
上記吸湿材カバー18、再生循環部19及び熱交換器20は、加熱手段9の両側で同様の構成となっている。すなわち、循環空気14は、加熱手段9の両側の開口部11から送り出されると、それぞれ両側の吸湿材カバー18、再生循環部19及び熱交換器20の内部を通過するようになっている。熱交換器8の下端は凝縮循環部13に接続される。凝縮循環部13は、加熱手段9の両側からの循環空気14が合流する接続部から垂直に立ち上がり、加熱手段9と平行に配設され、循環機12に接続される。循環機12は、支持部材21で加熱手段9に取り付けられる。循環機12には、例えばファンモータが用いられる。循環空気14は、循環機12の吸気により加熱手段9に取り込まれるようになっている。
【0021】
次に、上記の構成の除湿機の作用について説明する。除湿機の運転が開始されると、送風機4により室内空気2が除湿機本体1内に取り込まれる。熱交換器20を通過する室内空気2は熱交換器20を冷却する。吸湿材15を通過する室内空気2は、吸湿材15で吸湿され、送風機4の上部から乾燥空気3となって外部へ排気される。ここで、送風機4は両面から室内空気2を吸気し、第1及び第2吸湿材16、17が送風機4を挟み込むように配置されるので、室内空気2は、放湿直後の第1及び第2吸湿材16、17を通過することができ、効率よく循環される。
【0022】
循環空気14は、循環機12の吸気により加熱手段9に取り込まれる。取り込まれた循環空気14は、発熱線10により加熱され、加熱手段9の両側の開口部11に向かい、吸湿材15を通過する。循環空気14は、吸湿材15から放出された水分を多量に含んで高温高湿となる。高温高湿な循環空気14は、再生循環部19を通って熱交換器20へ送られ、室内空気2で冷却される熱交換器20内で冷却され、循環空気14に含まれる水分が凝縮される。そして、循環空気14は、凝縮循環部13を通り、循環機12から排出される。
【0023】
吸湿材15は図示しない駆動手段により連続的に回転する。吸湿材15が回転し、加熱手段9の開口部11に差し掛かった部分は、加熱手段9の輻射熱と加熱手段9により加熱された循環空気14とにより加熱される。加熱された部分は放湿され、吸湿効果が再生する。ここで、第1及び第2吸湿材16、17が加熱手段9を挟み込むように配置されるので、吸湿材15は、加熱手段9の両面の輻射熱を効率よく受けて加熱され、十分に放湿されることができる。加熱手段9の両面の輻射熱が有効に活用されることで、放熱による熱損失を低減し、従来の構造よりも省電力化が可能となる。吸湿効果が再生された吸湿材15は、加熱手段9の開口部11を通り過ぎると、直ちに送風機4により吸気される室内空気2を受けて、室内空気2から吸湿する。こうして吸湿材15は、回転することにより、吸放湿を繰り返す。
【0024】
以上のように、本実施例では、吸湿材15と、この吸湿材15で吸湿される室内空気2を送る送風機4と、前記吸湿材15を再生する循環空気14を送る循環機12と、前記吸湿材15を通過する循環空気14を加熱する加熱手段9と、前記吸湿材15を通過した循環空気14を冷却して水分を凝縮させる熱交換器20とを備える除湿機であって、前記加熱手段9と前記送風機4とを挟み込むように複数の前記吸湿材15を配置している。
【0025】
この場合、複数の吸湿材15が加熱手段9を挟み込むように配置されるので、吸湿材15は、加熱手段9の両面の輻射熱を効率よく受けて加熱され、十分に放湿されることができる。さらに、複数の吸湿材15が送風機4を挟み込むように配置されるので、室内空気2が放湿直後の第1及び第2吸湿材16、17の両方から吸気され、効率よく室内空気2を循環させることができる。したがって、加熱手段9の両面の輻射熱を有効に活用することで放熱による熱損失を低減し、さらに、複数の吸湿材15へ効率よく室内空気2を循環させることで、本体寸法の大型化を抑制しながら、従来の構造よりも省電力化が可能となる。
【実施例2】
【0026】
図4は、本実施例における除湿機の内部構造の要部拡大斜視図を示している。本実施例における除湿機の構成は、第1実施例とほぼ共通しているが、第1実施例のように吸湿材15が送風機4を挟み込むものではなく、図4に示すように吸湿材15が送風機4の片側に配置されるものであってもよい。なお、上記第1実施例と同一部分には同一符号を付し、その共通する箇所の説明は重複するため省略する。
【0027】
本体は、周知の静電霧化装置22を備える。静電霧化装置22は、放電電極(図示せず)と、放電電極の下方に離隔して配置された対向電極(図示せず)とを備える。
【0028】
導入管23は、吸湿材15を通過した循環空気14を冷却して水分を凝縮させる熱交換器20と静電霧化装置22とを接続し、静電ミストに使用する水分として、熱交換器20内部に凝縮する水分の一部を静電霧化装置22に供給するようにしている。
【0029】
次に上記構成につき、その作用を説明するが、第1実施例と同じ作用については省略する。
【0030】
熱交換器20では、吸湿材15を通過した循環空気14が冷却され、水分が凝縮される。吸湿材15は、絶対湿度が低い環境下でも空気中から選択的に水分を吸着することができる。したがって、吸湿材15を使用した除湿機は、絶対湿度が低い環境下でも比較的多量の水分を得ることができ、熱交換器20内部壁面には十分な凝縮水が存在する。凝縮水は、導入管23で静電霧化装置22に供給される。したがって、カートリッジ方式の給水方式のようにユーザーが給水する必要がなく、また、水道水を使用しないためミスト発生部(図示せず)にスケールが堆積することがなく、定期的なメンテナンスの必要がない。ペルチェ素子を応用した給水方式では、絶対湿度が低い環境では十分に結露させることができない問題があった。しかしながら、凝縮水を使用することで、絶対湿度が低い環境下でも十分な水分量を確保でき、安定したミスト量を確保することができる。
【0031】
以上のように、本実施例では、吸湿材15と、この吸湿材15で吸湿される室内空気2を送る送風機4と、前記吸湿材15を再生する循環空気14を送る循環機12と、前記吸湿材15を通過する循環空気14を加熱する加熱手段9と、前記吸湿材15を通過した循環空気14を冷却して水分を凝縮させる熱交換器20とを備え、静電ミストを発生させる静電霧化装置22を本体1内部に設け、前記熱交換器20内部から前記静電霧化装置22に前記熱交換器20内部に凝縮する水分を導入する導入管を設けている。
【0032】
この場合、吸湿材15を使用した除湿機は、低絶対湿度環境下でも比較的多量の水分を得ることができるので、熱交換器20内部壁面には常に十分な凝縮水が存在する。したがって、凝縮水を導入管21で静電霧化装置22に供給することで、静電ミストを安定的に発生することができ、絶対湿度変化に関係なく、安定的に静電ミストによる除菌効果及び脱臭効果を得ることができる。
【0033】
また、静電霧化装置22の給水口24に、蒸気を遮断して液化した水分を通す吸水性素材25を配置してもよい。この場合、蒸気の静電霧化装置22への流入を防ぐことができる。したがって、水分が静電霧化装置22に付着することにより、ユーザーが感電するのを防止することができる。
【0034】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。例えば、送風機4で吸気される室内空気2は、熱交換器20を通過した後に吸湿材15を通過するように構成してもよい。また、第2実施例の静電霧化装置22及び導入管23は、第1実施例の除湿機に取り付けることができ、複数の熱交換器20から凝縮水を供給するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 本体(除湿機本体)
2 室内空気
4 送風機
9 加熱手段
12 循環機
14 循環空気
15 吸湿材
20 熱交換器
22 静電霧化装置
23 導入管
24 給水口
25 吸水性素材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸湿材と、この吸湿材で吸湿される室内空気を送る送風機と、前記吸湿材を再生する循環空気を送る循環機と、前記吸湿材を通過する循環空気を加熱する加熱手段と、前記吸湿材を通過した循環空気を冷却して水分を凝縮させる熱交換器とを備える除湿機であって、前記加熱手段と前記送風機とを挟み込むように複数の前記吸湿材を配置したことを特徴とする除湿機。
【請求項2】
吸湿材と、この吸湿材で吸湿される室内空気を送る送風機と、前記吸湿材を再生する循環空気を送る循環機と、前記吸湿材を通過する循環空気を加熱する加熱手段と、前記吸湿材を通過した循環空気を冷却して水分を凝縮させる熱交換器とを備え、静電ミストを発生させる静電霧化装置を本体内部に設け、前記熱交換器内部から前記静電霧化装置に前記熱交換器内部に凝縮する水分を導入する導入管を設けたことを特徴とする除湿機。
【請求項3】
前記静電霧化装置の給水口に、蒸気を遮断して液化した水分を通す吸水性素材を配置したことを特徴とする請求項2に記載の除湿機。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−240260(P2011−240260A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114859(P2010−114859)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【出願人】(390010168)東芝ホームテクノ株式会社 (292)
【Fターム(参考)】