説明

除細動装置

【課題】細動を迅速に治療する。
【解決手段】心拍検出部4と、心拍毎に細動状態の症状を検出する症状検出手段7と、直前のN拍のうちM拍の心拍において細動状態の症状が検出されたときに心臓Aが細動状態であると判定する細動判定部9と、直前のN拍のうちM拍の心拍において細動状態の症状が検出されたときに充電手段6により電圧供給部5の充電を開始させる充電制御部8と、心臓Aが細動状態と判定されたときに電圧供給部5により心臓Aに除細動電圧を与えさせる放電制御部10とを備え、N、M、NおよびMが、以下の関係を満たす除細動装置1を提供する。
b=0ならば、M≧a×(M−1)+2
1≦b≦Mならば、M≧a×(M−1)+b+1
b>Mならば、M≧(a+1)×(M−1)+2
ただし、2≦N≦Nを満たしN=N=MとはならないN,N,Mにおいて、N=a×N+bである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除細動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、細動または頻脈を検出した後にコンデンサの充電を開始し、コンデンサから心臓に放電して心臓を刺激する直前に心臓の状態を再確認することにより、心臓に不必要な刺激を与えることを防ぐ装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表平2―501121号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の場合、除細動に必要な電圧までコンデンサを充電するには時間を要するため、細動が検出されても迅速に除細動することができないという問題がある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、細動を迅速に治療することができる除細動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、心拍を検出する心拍検出部と、該心拍検出部によって検出された心拍毎に、心臓の細動状態を示す症状を検出する症状検出手段と、充電された電荷を瞬時に放出することにより前記心臓に除細動電圧を与える電圧供給部と、該電圧供給部を充電する充電手段と、直前に前記心拍検出部によって検出されたN拍の心拍のうちM拍の心拍において、前記症状検出手段によって細動状態を示す症状が検出されたときに、前記心臓が細動状態であると判定する細動判定部と、該細動判定部により前記心臓が細動状態であると判定されたときに、前記電圧供給部により前記心臓に除細動電圧を与えさせる放電制御部と、直前に前記心拍検出部によって検出されたN拍の心拍のうちM拍の心拍において、前記症状検出手段によって細動状態を示す症状が検出されたときに、前記充電手段により前記電圧供給部の充電を開始させる充電制御部とを備え、前記N、M、NおよびMが、以下の関係を満たす除細動装置を提供する。
b=0ならば、M≧a×(M−1)+2
1≦b≦Mならば、M≧a×(M−1)+b+1
b>Mならば、M≧(a+1)×(M−1)+2
ただし、2≦N≦Nを満たし、N=N=MとはならないN、N、Mにおいて、NをNで割ったときの商をa、余りをbとし、aは1以上の整数、bは0以上の整数とする。
【0007】
本発明によれば、心臓が細動状態となりその症状が、心拍検出部によって検出されたN拍の心拍のうちM拍の心拍において症状検出手段によって検出されると、心臓が細動状態であると細動判定部により判定され、放電制御部によって電圧供給部から心臓に除細動電圧が与えられる。
【0008】
この場合に、充電手段は、心臓に細動状態を示す症状が現れ始めると、細動判定部によって心臓が細動状態であることが判定される前に、電圧供給部の充電を開始する。これにより、細動判定部により心臓が細動状態であると判定されてから心臓に除細動電圧が与えるまでの時間を短縮して迅速に細動を治療することができる。
【0009】
上記発明においては、前記症状検出手段は、前記心拍検出部によって検出された心拍の心拍時間が所定の閾値より短いときに、これを細動状態を示す症状として検出してもよい。
このようにすることで、細動状態を示す症状として心拍数の上昇を用いることができる。
【0010】
また、上記発明においては、前記心臓のインピーダンスを測定するインピーダンス測定手段を備え、前記症状検出手段は、前記インピーダンス測定手段により測定されたインピーダンス値が所定の閾値より小さいときに、これを細動状態を示す症状として検出してもよい。
このようにすることで、細動状態を示す症状として、心臓の収縮機能が低下することによる心臓のインピーダンスの低下を用いることができる。
【0011】
また、上記発明においては、前記心臓のインピーダンスを測定するインピーダンス測定手段を備え、前記症状検出手段は、各心拍内において前記インピーダンス測定手段により測定されたインピーダンス値の最大値と最小値との差が閾値より小さいときに、これを細動状態を示す症状として検出してもよい。
このようにすることで、細動状態を示す症状として、心臓の収縮機能が低下することによる一心拍内でのインピーダンスの変化幅の縮小を用いることができる。
【0012】
また、上記発明においては、前記細動判定部は、前記充電手段による前記電圧供給部の充電が完了したときに、前記心臓が細動状態であるか否かを再度判定してもよい。
このようにすることで、心臓が細動状態であるか否かをより正確に判定し、より適切に心臓に除細動電圧を与えることができる。
【0013】
また、上記発明においては、前記充電手段による前記電圧供給部の充電が完了したときに前記細動判定部により前記心臓が細動状態であると判定されなかったときに、前記電圧供給部に充電された電荷を内部放電させる内部放電手段を備えてもよい。
このようにすることで、電圧供給部が不要に充電された状態で保持されることを防ぐことができる。
【0014】
また、上記発明においては、前記充電手段は、前記電圧供給部を複数の所定の電圧値まで段階的に充電してもよい。
このようにすることで、電圧供給部の充電が開始された後に心臓が細動状態でないと判定されたときに、電圧供給部の充電に要した消費電力を抑えることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、細動を迅速に治療することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る除細動装置の全体構成図である。
【図2】図1の除細動装置の動作を説明するフローチャートである。
【図3】図1の除細動装置の変形例を示す図である。
【図4】(a)心拍が検出されたタイミングを示す図と(b)段階的に充電されたときの電圧供給部の電圧変化を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る除細動装置の全体構成図である。
【図6】心臓の正常状態における(a)心電信号と(b)インピーダンスの時間変化を示す図である。
【図7】心臓の細動状態における(a)心電信号と(b)インピーダンスの時間変化を示す図である。
【図8】図5の除細動装置の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の第1の実施形態について図1〜図4を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る除細動装置1は、図1に示されるように、患者の体内に埋め込まれる装置本体2と、該装置本体2に接続され先端部に電極3a〜3cが設けられた2本のリード3A,3Bとを備え、装置本体2は、心拍を検出する心拍検出部4と、心臓Aに除細動電圧を供給する電圧供給部5と、該電圧供給部5を充電する充電回路(充電手段)6と、心臓Aに現れる細動状態を示す症状を検出する症状検出部(症状検出手段)7と、充電回路6の動作を制御する充電制御部8と、心臓Aの細動状態を判定する細動判定部(細動判定手段)9と、電圧供給部5による除細動電圧の供給を制御する放電制御部10とを備えている。
【0018】
一方のリード3Aは、先端に配置されたV−tip電極3aと、該V−tip電極3aと絶縁されたV−ring電極3bとを備えている。リード3Aは右心室内に挿入され、V−tip電極3aが右心室内壁に接続されている。他方のリード3Bは、先端にCS−tip電極3cを備えている。リード3Bは、左心室の心臓壁に沿って延びる冠状静脈内に挿入され、該冠状静脈内にCS−tip電極3cが配置されている。
【0019】
心拍検出部4は、いずれかの電極3a〜3bの電位変化から心電信号を取得する。そして、心拍検出部4は、取得した心電信号の電位の値または変化率が所定の閾値を越えたときに、心電信号にR波が出現したとして心拍を検出する。
【0020】
電圧供給部5は、例えば、図示しないコンデンサを備え、該コンデンサに蓄積された電荷を、リード3A,3Bを介してV−tip電極3aとCS−tip電極3cとの間に放電することにより、心臓Aに除細動電圧を供給する。
充電回路6は、例えば、電圧供給部5のコンデンサに電圧を印加することにより、電圧供給部5を充電する。
【0021】
症状検出部7は、心拍検出部4によって心拍が検出された時刻を時系列で記憶し、心拍検出部4によって新たに心拍が検出される度に、その直前に心拍が検出された時刻からの経過時間、すなわち、新たに検出した心拍の心拍時間tを算出する。症状検出部7は、算出した心拍時間tが所定の閾値Tより短い場合に、その心拍を検出する。ここで、所定の閾値とは、患者の正常状態における心拍時間より十分に短い時間に設定される。これにより、心臓Aが細動状態になって心拍時間tが短くなると、それが症状検出部7によって検出されるようになっている。
【0022】
充電制御部8は、例えば、心拍検出部4による心拍の検出履歴を時系列で記憶する。このときに、充電制御部8は、症状検出部7によっても検出された心拍についてはそれを示す情報を付して検出履歴を記憶する。そして、充電制御部8は、心拍検出部4により検出された直前のN拍の心拍のうち、症状検出部7によっても検出された心拍の数がM拍であるときに、充電回路6により電圧供給部5の充電を開始させ、電圧供給部5を所定の電圧値まで充電させる。充電制御部8は、充電回路6による電圧供給部5の充電が完了すると、その旨の情報を放電制御部10に送る。
【0023】
細動判定部9は、充電制御部8と同様にして心拍の検出履歴を記憶し、心拍検出部4により検出された直前のN拍の心拍のうち、症状検出部7によっても検出された心拍の数がM(M≦N)拍以上であるときに、心臓Aが細動状態であると判定する。
【0024】
ここで、M、M、NおよびNは、
b=0ならば、M≧a×(M−1)+2
1≦b≦Mならば、M≧a×(M−1)+b+1
b>Mならば、M≧(a+1)×(M−1)+2
の関係を満たす。ただし、2≦N≦Nを満たし、N=N=MとはならないN、N、Mにおいて、NをNで割ったときの商をa、余りをbとし、aは1以上の整数、bは0以上の整数とする。このようにすることで、細動判定部9による細動判定よりも先に電圧供給部5の充電が確実に開始される。
【0025】
なお、細動の他に、期外収縮などによっても、正常状態のときと比べて短い心拍時間の心拍が数拍続くことが知られている。したがって、細動状態とその他の心臓Aの状態とを正確に区別して判定するため、NおよびMは十分に大きな値、例えば、Mは8以上に設定されることが好ましい。
【0026】
放電制御部10は、細動判定部9により心臓Aが細動状態であると判定されると、電圧供給部5の充電完了の情報を充電制御部8から既に受け取っているか否かを確認する。そして、放電制御部10は、充電制御部8から充電完了の情報を受け取っている場合には、電圧供給部5から心臓Aに除細動電圧を供給させる。
【0027】
一方、放電制御部10は、充電制御部8から充電完了の情報を未だ受け取っていな場合には、充電制御部8から充電完了の情報を受け取るまで待つ。その間に、心拍検出部4によって心拍が検出される度に、細動判定部9によって心臓Aが細動状態であるか否かを再判定される。そして、放電制御部10は、細動判定部9による心臓Aが細動状態であるとの再判定が続いた場合、電圧供給部5の充電完了の情報を受け取ると、電圧供給部5から心臓Aに除細動電圧を供給させる。一方、放電制御部10は、充電制御部8から充電完了の情報を受け取るまでの間に、細動判定部9により心臓Aが細動状態であると判定されなくなった場合は、電圧供給部5から心臓Aへの除細動電圧の供給を停止させる。
【0028】
このように構成された除細動装置1の動作および作用について、図2を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る除細動装置1は、電源が投入されると、心拍数M,M,N,Nおよび心拍時間の閾値Tの値が設定される(ステップS1)。これにより、電圧供給部5の充電を開始する条件および心臓Aが細動状態であると判定する条件が決定される。
【0029】
本実施形態においては、直前に検出された5拍の心拍のうち3拍の心拍において心拍時間tが閾値αより短かったときに、電圧供給部5の充電を開始し、直前に検出された10拍の心拍のうち8拍の心拍において心拍時間tが閾値αより短かったときに、心臓Aが細動状態であると判定するように各値M,M,N,NおよびTを設定する。
【0030】
除細動装置1は、患者の心拍を検出する度に(ステップS2)、その心拍の心拍時間tを算出する(ステップS3)。そして、心臓Aに細動状態を示す症状が現れ始めて、まだ電圧供給部5の充電が開始されていない状態で(ステップS4)心拍時間tが閾値αより短い心拍が直前の5拍の心拍のうち3拍に達すると(ステップS5)、除細動装置1は、電圧供給部5の充電を開始し(ステップS6)、引き続き心拍の検出と心拍時間とを行う。
【0031】
その後、心臓Aの細動状態が続いて、心拍時間tが閾値αより短い心拍の数が、直前の10拍の心拍のうち8拍に達すると(ステップS7)、除細動装置1は電圧供給部5の充電が完了したか否かを確認する(ステップS8)。そして、除細動装置1は、電圧供給部5の充電が完了していれば除細動電圧を心臓Aに供給し(ステップS9)、電圧供給部5の充電が完了していなければ(ステップS8)、心臓Aが細動状態であるか否かの判定(ステップS7)を繰り返しながら電圧供給部5の充電完了を待ってから、心臓Aに除細動電圧を供給する(ステップS9)。
【0032】
このときに、除細動装置1は、電圧供給部5の充電完了を待っている間に心臓Aの細動状態が改善されるなどして心拍時間tが閾値αより短い心拍の数が直前の10拍の心拍のうち8拍に満たなくなると(ステップS7)、心臓Aへの除細動電圧の供給を停止して心拍の検出(ステップS2)と心拍時間の算出(ステップS3)とを繰り返す。
【0033】
このように、本実施形態によれば、心臓Aに細動状態を示す症状が現れ始めると迅速に心臓Aへの除細動電圧の供給に備えて電圧供給部5の充電が開始されるので、その後に心臓Aが細動状態であると判定されたときに、迅速に心臓Aを除細動することができるという利点がある。特に、除細動電圧は、頻脈や除脈に対して心臓Aに供給されるペーシング電圧と比べて大きな電圧を必要とするため、電圧供給部5の充電に比較的長い時間を要する。したがって、細動状態であると判定された後に充電を開始する場合と比べて、心臓Aの治療効果を効果的に向上することができる。
【0034】
なお、上記実施形態においては、図3に示されるように、電圧供給部5に充電された電荷を内部放電させる内部放電回路(内部放電手段)11を備えていてもよい。
内部放電回路11は、例えば、電圧供給部5のコンデンサの両極板に図示しないスイッチを介して接続され十分に高い抵抗値を有する抵抗を有し、スイッチを閉状態にすることによりコンデンサの一方の極板に蓄積された電荷を抵抗を介して他方の極板に流して装置本体2内において内部放電する。
【0035】
この場合、心臓Aが細動状態であると判定されて電圧供給部5の充電を開始した後、細動状態が自然に改善するなどして細動状態であるとの判定がなされなくなったときに、放電制御部10は、内部放電回路11により電圧供給部5に充電された電荷を内部放電させる。これにより、体内に不要なエネルギが保持されることを防ぐことができる。
【0036】
また、上記実施形態においては、電圧供給部5を所定の電圧値まで充電する際に、複数の目標電圧値を設定し、電圧供給部5を段階的に充電してもよい。
例えば、目標電圧値を100Vと200Vとに設定する。そして、図4(a),(b)に示されるように、直前の5拍の心拍のうち3拍の心拍において心拍時間tが閾値αより短かった場合に1回目の充電を開始して電圧供給部5を100Vまで充電し、直前の7拍の心拍のうち5拍の心拍において心拍時間tが閾値αより短かった場合に2回目の充電を開始して電圧供給部5を200Vまで充電する。このようにすることで、1回目の充電が開始された後に細動状態が改善されるなどして心臓Aへの除細動電圧の供給が中止された場合に、電圧供給部5の充電に要した電力の消費量を抑えることができる。
【0037】
次に、本発明の第2の実施形態に係る除細動装置1について、図5〜図8を参照して以下に説明する。なお、本実施形態においては、上述した第1の実施形態と異なる点について主に説明し、第1の実施形態と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0038】
本実施形態に係る除細動装置1は、図5に示されるように、心臓Aのインピーダンスを測定するインピーダンス測定部12を備え、症状検出部7は、インピーダンス測定部12によって測定されたインピーダンスに基づいて、心臓Aが示す細動状態の症状を検出する点おいて、第1の実施形態と主に異なっている。
【0039】
インピーダンス測定部12は、リード3A,3Bを介してV−tip電極3aとCS−tip電極3cとの間に微弱な交流電流を印加し、V−ring電極3bとCS−tip電極3cとの間の電圧を測定する。そして、インピーダンス測定部12は、電極3a,3c間に印加した交流電流値と、電極3b,3c間で測定された電圧値から、心臓Aのインピーダンス値を算出する。インピーダンス測定部12は、細動状態における心拍時間より十分に短い時間間隔で連続的に心臓Aのインピーダンスを算出する。
【0040】
症状検出部7は、心拍検出部4によって心拍が検出されると、その直後にインピーダンス測定部12によって測定されたインピーダンス値を最小値および最大値として一時的に記憶する。そして、症状検出部7は、次にインピーダンス測定部12によって測定されたインピーダンス値が記憶されている最小値より小さければ、最小値を新しく測定されたインピーダンス値に更新し、また、新しく測定されたインピーダンス値が記憶されている最大値より大きければ、最大値を新しく測定されたインピーダンス値に更新する。
【0041】
症状検出部7は、以上の工程を心拍検出部4によって次の心拍が検出されるまで繰り返すことにより、同一心拍内におけるインピーダンス値の最大値Zmaxと最小値Zminとを測定し、測定した最大値Zmaxと最小値Zminの差分ΔZを算出する。そして、症状検出部7は、算出した差分ΔZの値が所定の閾値Tzより小さいときにその心拍を検出する。
【0042】
心臓Aのインピーダンスは、心臓Aの容積および血流量に比例して大きくなることが知られている。心臓Aが正常状態のときの心電信号およびインピーダンスの時間変化の一例を図6(a),(b)に示し、心臓Aが細動状態のときの心電信号およびインピーダンスの時間変化の一例を図7(a),(b)に示す。
【0043】
心臓Aが正常状態のとき、心電信号にR波が出現してから若干遅れて心臓Aが最も拡張するのに伴いインピーダンスは極大となり、その後、心臓Aの収縮に伴ってインピーダンスは低下していくため、一心拍内においてインピーダンス値は比較的大きく変動する。一方、心臓Aが細動状態のとき、心臓Aの収縮および拡張が十分に行われなくなるためインピーダンスの変動も小さくなる。このように、心臓Aが細動状態となってインピーダンスの変化幅が小さくなると、それが症状検出部7によって検出されるようになっている。
【0044】
このように構成された除細動装置1の動作および作用について、図8を参照して以下に説明する。
本実施形態においては、直前に検出された3拍の心拍のうち2拍の心拍において差分ΔZが閾値βを下回ったときに、電圧供給部5の充電を開始するように各値M,NおよびTzを設定する。
【0045】
本実施形態に係る除細動装置1は、心拍を検出して(ステップS2)から次の心拍が検出されるまでの間、インピーダンス値の測定(ステップS10)と、インピーダンス値の最大値Zmaxと最小値Zminとの更新(ステップS11)とを繰り返し、各心拍における差分ΔZを算出する(ステップS12)。
【0046】
そして、除細動装置1は、電圧供給部5の充電がまだ開始されていない状態において(ステップS4)、差分ΔZが閾値βより小さい心拍を直前の3拍の心拍のうち2拍において検出すると(ステップS13)、電圧供給部5の充電を開始する(ステップS6)。その後、心臓の細動状態が続いて、差分ΔZが閾値βより小さい心拍を直前の10拍の心拍のうち8拍において検出すると(ステップS14)、電圧供給部5の充電完了を確認した後(ステップS8)、心臓Aに除細動電圧を供給する(ステップS9)。
【0047】
このように、本実施形態によれば、心臓Aの細動状態を示す症状を心臓のインピーダンスに基づいて検出しても、第1の実施形態と同様に、心臓が細動状態となった後迅速に電圧供給部5の充電を開始し、細動の判定がなされた後速やかに除細動を行うことができるという利点がある。
【0048】
なお、上記実施形態においては、細動状態を示す症状として、同一心拍内におけるインピーダンスの最大値Zmaxと最小値Zminとの差分ΔZが閾値Tzより小さくなることを用いたが、これに代えて、インピーダンス値が所定の閾値を下回ることを用いてもよい。
【0049】
心臓Aが細動状態のとき、心臓A内の血流量が減少することに伴い、心臓Aのインピーダンス値は全体的に低下する。従って、インピーダンス値が所定の閾値を下回ったときに、その心拍を症状検出部7によって検出しても、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、この場合、症状検出部7は、同一心拍内において測定されたインピーダンス値の平均値を算出し、算出した平均値が所定の閾値を下回ったときにその心拍を検出することとしてもよい。このようにすることで、細動状態を示す症状の検出精度を向上することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 除細動装置
2 装置本体
3A,3B リード
3a V−tip電極
3b V−ring電極
3c CS−tip電極
4 心拍検出部
5 電圧供給部
6 充電回路(充電手段)
7 症状検出部(症状検出手段)
8 充電制御部
9 細動判定部
10 放電制御部
11 内部放電回路(内部放電手段)
12 インピーダンス測定部(インピーダンス測定手段)
A 心臓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
心拍を検出する心拍検出部と、
該心拍検出部によって検出された心拍毎に、細動状態を示す症状を検出する症状検出手段と、
充電された電荷を瞬時に放出することにより心臓に除細動電圧を与える電圧供給部と、
該電圧供給部を充電する充電手段と、
直前に前記心拍検出部によって検出されたN拍の心拍のうちM拍の心拍において、前記症状検出手段によって細動状態を示す症状が検出されたときに、前記心臓が細動状態であると判定する細動判定部と、
直前に前記心拍検出部によって検出されたN拍の心拍のうちM拍の心拍において、前記症状検出手段によって細動状態を示す症状が検出されたときに、前記充電手段により前記電圧供給部の充電を開始させる充電制御部と、
前記細動判定部により前記心臓が細動状態であると判定されたときに、前記電圧供給部により前記心臓に除細動電圧を与えさせる放電制御部とを備え、
前記N、M、NおよびMが、以下の関係を満たす除細動装置。
b=0ならば、M≧a×(M−1)+2
1≦b≦Mならば、M≧a×(M−1)+b+1
b>Mならば、M≧(a+1)×(M−1)+2
ただし、2≦N≦Nを満たし、N=N=MとはならないN、N、Mにおいて、NをNで割ったときの商をa、余りをbとし、aは1以上の整数、bは0以上の整数とする。
【請求項2】
前記症状検出手段は、前記心拍検出部によって検出された心拍の心拍時間が所定の閾値より短いときに、これを細動状態を示す症状として検出する請求項1に記載の除細動装置。
【請求項3】
前記心臓のインピーダンスを測定するインピーダンス測定手段を備え、
前記症状検出手段は、前記インピーダンス測定手段により測定されたインピーダンス値が所定の閾値より小さいときに、これを細動状態を示す症状として検出する請求項1に記載の除細動装置。
【請求項4】
前記心臓のインピーダンスを測定するインピーダンス測定手段を備え、
前記症状検出手段は、各心拍において前記インピーダンス測定手段により測定されたインピーダンス値の最大値と最小値との差が閾値より小さいときに、これを細動状態を示す症状として検出する請求項1に記載の除細動装置。
【請求項5】
前記細動判定部が、前記充電手段による前記電圧供給部の充電が完了したときに、再度心臓が細動状態であるか否かを判定する請求項1に記載の除細動装置。
【請求項6】
前記充電手段による前記電圧供給部の充電が完了したときに前記細動判定部により前記心臓が細動状態でないと判定されたときに、前記電圧供給部に充電された電荷を内部放電させる内部放電手段を備える請求項5に記載の除細動装置。
【請求項7】
前記充電手段は、前記電圧供給部を複数の所定の電圧値まで段階的に充電する請求項5に記載の除細動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−194058(P2011−194058A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−64692(P2010−64692)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】