説明

除菌・消臭剤組成物およびエアゾール式噴出装置

【課題】 従来、専門業者の取り扱いに限られてきた安定化二酸化塩素液を、エアゾール式としてのパッケージングを可能とし、保存安定性に優れたものとし、それをエアゾール式のパッケージング化し、携帯もでき、専門的知識・技術を必要とせず誰でも簡易、かつ安全に使用可能とした除菌・消臭剤組成物およびその組成物が充填されたエアゾール噴出装置を提供する。
【解決手段】 密閉状の容器内に、除菌消臭用の安定化二酸化塩素液を40〜60vol%,噴射剤としての液化ジメチルエーテルを60〜40vol%充填してなることを特徴とする除菌・消臭剤組成物、そして、この除菌・消臭剤組成物が充填された容器にエアゾールバルブ装置を設け、エアゾール式として使用できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、安定化二酸化塩素液を主たる内容物としたエアゾール式除菌・消臭剤組成物およびその組成物が充填されたエアゾール式噴出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食肉や魚市場等では扱う食品の性質上、菌が繁殖しやすいため、衛生・安全性の面から殺菌消毒を行う必要がある。また、旅館や健康ランド等の浴槽はコストの面から一般的に循環水を使用している。この循環水も菌が繁殖しやすく、最近、入浴者が菌に感染した事例も多々あり、循環水に対し殺菌処理を行っている。さらに、食品会社や病院の厨房等も各種食品を扱うため、食中毒防止、衛生管理等の観点から消毒を行う必要がある。
【0003】
従来この種の殺菌消毒剤として安定化二酸化塩素液(亜塩素酸塩水溶液)が用いられている。これは、二酸化塩素の病原微生物の除菌・殺菌効果、細菌感染病の予防、消臭効果等を利用したものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
食肉、魚市場等において、安定化二酸化塩素液を用いて殺菌消毒を行う場合、スプライザーなどの大掛かりな噴霧設備が必要であり、これに加え安定化二酸化塩素液の濃度管理、活性化剤の添加などの専門的知識、技術を必要とする。
【0005】
病院などの厨房の消毒についても同様である。
【0006】
旅館や健康ランドなどの循環水の殺菌に対しては活性化剤を添加する大規模な二酸化塩素発生装置が必要である。
【0007】
したがって、これらはいずれも一般の日常生活者が身近に、しかも簡単に利用、応用できるものではない、という課題があった。
【0008】
一般消費者が手にすることができる簡易的なものとしては、樹脂製の小さな簡易ポンプ等を利用したスプレー方式が考えられる。
【0009】
しかしながら、安定化二酸化塩素液は光に反応したり、空気中の炭酸ガスと接触することによっても二酸化塩素ガスを発生する性質があるため、密閉性の低いポンプ方式の樹脂容器では空気中の炭酸ガスに触れるおそれがある。したがって、長期の保存においては炭酸ガスとの反応によって安定化二酸化塩素液から有効成分である二酸化塩素が発生する反応が継続し、安定化二酸化塩素液の有効二酸化塩素濃度が減少するため、使用時の効果が低下する、という課題がある。
【0010】
結局、現状において一般消費者が簡易に使用でき、保存安定性が良く、安全に使用でき、コンパクト化でき日常携帯でき場所を選ばず必要に応じ随時使用可能な殺菌消毒剤、装置は存在しない。
【0011】
この発明は上記のことに鑑み提案されたもので、その目的とするところは、従来、専門業者の取り扱いに限られてきた安定化二酸化塩素液を、エアゾール式としてのパッケージングを可能とし、保存安定性に優れたものとし、それをエアゾール式のパッケージング化し、携帯もでき、専門的知識・技術を必要とせず誰でも簡易、かつ安全に使用可能とした除菌・消臭剤組成物およびその組成物が充填されたエアゾール噴出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の発明は、密閉状の容器内に、除菌消臭用の安定化二酸化塩素液を40〜60vol%,噴射剤としての液化ジメチルエーテルを60〜40vol%充填してなることを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1記載の除菌・消臭剤組成物において、前記容器の材質はアルミニウムであって内面に耐食性の樹脂がコーティングされ、かつ前記安定化二酸化塩素液の有効二酸化塩素濃度は100ppm〜500ppm、pHは5〜8であることを特徴とする。
請求項3の発明は、エアゾールバルブ装置が取り付けられた密閉状の容器と、この容器内に40〜60vol%充填された除菌消臭用の安定化二酸化塩素液と、60〜40vol%充填された噴射剤としての液化ジメチルエーテルとを備え、前記エアゾールバルブ装置のハウジングには、0.4mm以上のベーパータップオリフィス,1.0mm以下のメインオリフィスが設けられたことを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項3のエアゾール式噴出装置において、前記容器の材質はアルミニウムであって内面に耐食性の樹脂がコーティングされ、かつ前記安定化二酸化塩素液の有効二酸化塩素濃度は100ppm〜500ppm、pHは5〜8であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の本発明にかかる除菌・消臭剤組成物は、密閉状の容器内に安定化二酸化塩素液を充填しているため、安定化二酸化塩素液を安定して保存でき、また、液化ジメチルエーテルと混合するのみで他の添加物は使用しないため、製造が容易で、かつコスト高を防止することができる。
【0014】
請求項2記載の発明によれば、容器は内面に耐食性樹脂がコーティングされたアルミ素材にて形成したため、充填物を長期にわたり安定的に保存でき、また、有効二酸化塩素濃度を100ppm〜500ppm,pHを5〜8としたため、除菌消臭効果を維持しつつ、この点からも容器の腐食を防止し得る。
【0015】
請求項3の発明によれば、安定化二酸化塩素液を誰でも容易に使用できるエアゾール式としてのパッケージングとでき、携帯性にも優れ、保存性、安定性にも優れ、また、噴射剤として液化ジメチルエーテルを用い、バルブによって霧を微細化できるため、空気中において効果的な微量二酸化塩素の発生を促すことができ、優れた除菌・消臭効果を得ることができる。
【0016】
請求項4の発明によれば、上記効果に加え、請求項2と同様の効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面に沿って本発明の実施例を説明する。
【0018】
[実施の形態1]
図1(a)は本発明の一実施例にかかるエアゾール式噴出装置の概略断面図、同図(b)は充填される充填物の割合を示す。
【0019】
図1(a)において1は光を透過せず、かつ密閉状の容器であり、有底円筒状の容器本体1aと、その上方に一体に設けられた逆漏斗状の上部1bとからなり、上部1bの中央部には外部に霧化された充填物を噴射する押しボタン式のエアゾールバルブ装置3が設けられている。このエアゾールバルブ装置3は、ノズル5を有する押しボタン6、容器1内に位置するバルブ7等を備えている。
【0020】
容器1の素材としては、内部に充填される安定化二酸化塩素液2aと液化ジメチルエーテル2bとからなる充填物2による腐食性防止の観点からアルミニウムが用いられる。
【0021】
上部1bは容器本体1aと予め一体形成してなるが、容器1としては、別体の天蓋を一体化するようにしたものでも良い。また、容器1の形状は図示例に限定されるものではない。
【0022】
容器1の内面には好ましくはエポキシポリアミドイミドの如き耐食性の樹脂4が被覆される。
【0023】
このように、容器1をアルミニウムで形成し、かつその内面に耐食性の樹脂4をコーティングすることにより、内部に充填される安定化二酸化塩素液2aおよび液化ジメチルエーテル2b等に対して十分な経時耐久性を確保することができる。
【0024】
容器1内に充填される除菌消臭用の安定化二酸化塩素液2aと噴射剤としての液化ジメチルエーテル2bの割合は、液化ジメチルエーテル2bが60〜40vol%,安定化二酸化塩素液2aが40〜60vol%の範囲で充填される。
【0025】
また、安定化二酸化塩素液2aの有効二酸化塩素濃度は、100ppm〜500ppmとしている。すなわち、500ppm以上とすると容器1の材質であるアルミニウムに対し侵食型の腐食傾向が出てくるためであり、人体に対しても悪影響が強くなるためである。100ppm以下では除菌消臭としての十分な効果が得られないためである。
【0026】
さらに、安定化二酸化塩素液2aの液性はpH5〜8の中性の範囲としている。pH5以下では原液自体の保存安定性を保つことが困難であり、また、原液充填後にアルミ容器1に対しての耐食性が低下するためである。pH8以上ではpH5以下の時と反対に原液自体の保存安定性は高まるが安定がゆえに噴霧後の二酸化塩素の発生が緩慢となり、期待する効果が得られず、かつアルミ容器1に対しては耐食性が低下するためである。
【0027】
したがって、本発明ではpH5〜8の範囲とし、これによって原液自体の保存安定性を保ち、また、アルミ容器1の経時耐久性を高め、かつ使用時に適度で効果的な二酸化塩素の発生を促すことを可能としている。
【0028】
噴射剤として液化ジメチルエーテル2bを使用しているが、液化ジメチルエーテル2bを用いると安定化二酸化塩素液2aの安定性を維持でき、また、噴射の際に霧を微細化できるためである。
【0029】
エアゾール噴射剤としてはこの他に炭酸ガス、液化石油ガスがある。このうち炭酸ガスは安定化二酸化塩素液2aと反応して二酸化塩素ガスの発生を促進するため、保存安定性を損ねる。液化石油ガスは安定化二酸化塩素液2aとの相溶性が低く分離してしまうため、霧の微粒子化に適さない。
【0030】
これに対し液化ジメチルエーテル2bは経時試験の結果、経時的な有効二酸化塩素濃度の変化はみられないことが確認され、安定した状態で長期保存が可能である。
【0031】
霧を微粒子化する方法としては、安定化二酸化塩素液2aへのアルコールの添加、界面活性剤の添加等を行い噴射剤である液化ジメチルエーテル2bとの相溶性を高める方法があるが、いずれの物質も安定化二酸化塩素液2aと反応し添加は不可能である。よって、本発明では液化ジメチルエーテル2bのみとし、添加剤は一切使用していない。したがって、その分、製造が容易であり、かつコスト高を招来することはない。
【0032】
なお、容器1内に液化ジメチルエーテル2bを60〜40vol%,安定化二酸化塩素液2aを40〜60vol%充填するが、図1(a)に示すように、液化ジメチルエーテル40〜60vol%の内、一部は安定化二酸化塩素液2aに溶解し、一部は過飽和液化ジメチルエーテル2cの状態で分離している。
【0033】
図2はエアゾールバルブ装置3の要部の基本構造例を示し、説明の便宜上、図1(a)中の押しボタン6等の図示は省略している。
【0034】
樹脂の成形品からなるハウジング7内にはスプリング8の一端が係止され、スプリング8の他端はステム9の下部に係止され、ステム9は、図1(a)に示した押しボタン6を押し下げるとスプリング8のバネ力に抗して下動し、押し下げ力を解除するとバネ力により上動し、復帰するようになっている。
【0035】
ステム9内には容器1内の充填物2を外部に導出する孔9aが軸方向に形成され、かつ下方部に孔9aと直交する方向にステムオリフィス9bが形成されている。このステムオリフィス9bは、常時はその外周部に設けられたステムラバー10によって塞がれており、ステム9を下動させるとバルブ7内の中空室7cに位置し、容器1内とステム9の孔9aとが連通するようになっている。
【0036】
バルブ7の側部には中空室7cと連通する0.4mm以上のベーパータップオリフィス7aが形成され、かつバルブ7内の下方部には中空室7c、容器1内と連通する1.0mm以下のメインオリフィス7bが形成され、かつバルブ7はチューブ11に接続されている。そして、ステム9が押し下げられるとメインオリフィス7b、ベーパータップオリフィス7aを介し霧状となった充填物2がステムオリフィス9b、孔9aを通って図1(a)に示したノズル5から外部に噴出するように構成されている。
【0037】
すなわち、エアゾールバルブ装置3の押しボタン6を押し下げると、図3に示すように、充填物2はチューブ11内を通ってバルブ7内に入り、また、過飽和液化ジメチルエーテル2cは気化し、破線で示すように、ハウジング7内にベーパータップオリフィス7aを介し中空室7c内に導入され、ステムオリフィス9b、孔9aを通って霧となって外部に噴出する。
【0038】
過飽和液化ジメチルエーテル2cは使用始めから使い切るまで容器1の内圧を一定に保ち、かつ図4に示すように、充填物2が使用に伴って減少しても、一定の噴射力、一定の粒子径を使い切るまで確保することを可能とする。
【0039】
そして、図5に示すように、使い切る直前で消失し、液化ジメチルエーテル2bのみが噴射されることはない。使い切った後は容器1内は空のため、容器1の廃棄処理は容易である。
【0040】
このようにして得られた微粒子の平均粒子径は30μm〜40μmである。液化石油ガスを用いた一般のエアゾールの噴霧平均粒子径は100μm〜200μmであり手動式ポンプによって得られる霧の平均粒子径は200μm〜300μmであることより一般エアゾール処方の4〜5倍、手動式ポンプの7〜8倍の細かさの霧が得られる。
【0041】
この細分化されたエアゾール噴霧によって微量二酸化塩素の発生が可能となり、充分な効果を発揮することができる。
【0042】
上述のように本発明では、安定化二酸化塩素液2aと液化ジメチルエーテル2bを所定の割合で充填し、かつ所定の径のベーパータップオリフィス7a、メインオリフィス7bを有するバルブ7を用いたことにより、一般的なエアゾール処方や手動ポンプと比較して微量二酸化塩素の発生が促進された。
【0043】
以下その実験方法と結果を示す。
【0044】
[二酸化塩素放出量測定試験]
本発明の構成を採用することによって有効成分である二酸化塩素の発生が促進されることを定量的に測定することによって実証する。
【0045】
[試験方法]
a.悪臭成分を気流として一定方向に流す。
b.悪臭気流と垂直の方向から検体をスプレーする。この時、悪臭気流とスプレー気流は垂直に交差するようにする。
c.悪臭気流を通過してきたスプレー粒子を捕獲する。
[捕獲方法]
スプレー気流と垂直に鋼板をセットし、悪臭気流を通過してきたスプレー粒子はこの鋼板に付着した後、下に流れ落ちて捕獲される。
悪臭気流を通過する前後の有効二酸化塩素濃度を定量し、発生効率を算出する。
[検体]
1.本発明品
2.一般エアゾール処方
3.手動ポンプ
[悪臭成分の調整]
アセトアルデヒドの酢酸酸性溶液の気体
[定量]
残存ジメチルエーテル等による測定誤差を少なくするため各検体の有効二酸化塩素濃度は2000ppmとし、定量前に精製水にて4倍に希釈したものを試料液とする。定量方法はチオ硫酸ナトリウム滴定法による。
【0046】
【表1】

【0047】
[考察]
本発明品では有効二酸化塩素濃度が約25%減少し、この減少した分は二酸化塩素として発生したことになる。一般処方と手動ポンプは有効二酸化塩素の濃度に殆ど変化がなく、二酸化塩素の発生は見られない。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】(a)は本発明の一実施例の概略断面図、(b)は容器内に充填される充填物の割合を示す。
【図2】エアゾール式バルブ装置の一構造例を示す。
【図3】使用状態説明図。
【図4】容器内の充填物が減少した状態の説明図。
【図5】容器内の充填物が消失した状態の説明図。
【符号の説明】
【0049】
1 容器
1a 容器本体
1b 上部
2 充填物
2a 安定化二酸化塩素液
2b 液化ジメチルエーテル
2c 過飽和液化ジメチルエーテル
3 エアゾールバルブ装置
4 耐食性樹脂
5 ノズル
6 押しボタン
7 バルブ
7a ベーパータップオリフィス
7b メインオリフィス
7c 中空室
8 スプリング
9 ステム
9a 孔
9b ステムオリフィス
10 ステムラバー
11 チューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉状の容器内に、除菌消臭用の安定化二酸化塩素液を40〜60vol%,噴射剤としての液化ジメチルエーテルを60〜40vol%充填してなることを特徴とする除菌・消臭剤組成物。
【請求項2】
請求項1記載の除菌・消臭剤組成物において、前記容器の材質はアルミニウムであって内面に耐食性の樹脂がコーティングされ、かつ前記安定化二酸化塩素液の有効二酸化塩素濃度は100ppm〜500ppm、pHは5〜8であることを特徴とする除菌・消臭剤組成物。
【請求項3】
エアゾールバルブ装置が取り付けられた密閉状の容器と、この容器内に40〜60vol%充填された除菌消臭用の安定化二酸化塩素液と、60〜40vol%充填された噴射剤としての液化ジメチルエーテルとを備え、前記エアゾールバルブ装置のハウジングには、0.4mm以上のベーパータップオリフィス,1.0mm以下のメインオリフィスが設けられたことを特徴とするエアゾール式噴出装置。
【請求項4】
請求項3のエアゾール式噴出装置において、前記容器の材質はアルミニウムであって内面に耐食性の樹脂がコーティングされ、かつ前記安定化二酸化塩素液の有効二酸化塩素濃度は100ppm〜500ppm、pHは5〜8であることを特徴とするエアゾール式噴出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−342113(P2006−342113A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−170285(P2005−170285)
【出願日】平成17年6月10日(2005.6.10)
【出願人】(595058808)日本瓦斯株式会社 (13)
【Fターム(参考)】