説明

除菌可能な水耕栽培装置および水耕栽培方法

【課題】水耕液を除菌して再利用する。
【解決手段】ナノバブル水槽4とマイクロナノバブル水槽5とシーケンサー13とを設けて、シーケンサー13の制御の下に、1)通常運転工程2)準除菌工程3)除菌工程のうちの何れかを実行する。そして、上記通常運転工程では、水耕液14にマイクロナノバブルを含有させて除菌し、マイクロナノバブルミストによって温室建屋3内の空気および植物9を除菌する。上記準除菌工程では、水耕液14に空気ナノバブルを含有させて除菌し、ナノバブルミスト34によって温室建屋3内の空気および植物9を除菌する。上記除菌工程では、水耕液14にオゾンナノバブルを含有させて除菌または殺菌し、オゾンナノバブルミストによって温室建屋3内の空気および植物9を除菌する。こうして、植物9の種類や植物9の成長や上記病原菌の発生状態に応じた運転パターンによって、植物の水耕栽培を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、除菌可能な水耕栽培装置および水耕栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種植物の水耕栽培装置および水耕栽培方法は数多く存在しており、夫々長所および短所としての特徴を有している。特に、トマトの水耕栽培においては、1本のトマトの木に何万個のトマトが成長すること等、従来のトマトの栽培方法と比較して、成長速度,品質および生産性等に多くのメリットがある。それ故、トマトに限らず、多くの野菜や花類までも、水耕栽培で栽培されるようになってきている。
【0003】
このような水耕栽培等を行うための水耕栽培装置として、特開2006‐289275号公報(特許文献1)に開示された「水質浄化装置及びそれを利用した水耕栽培装置」がある。この「水質浄化装置及びそれを利用した水耕栽培装置」においては、種々の貯水池,調整池,溜め池あるいは湖等の水域に浮遊する浮島に、金網等の多孔部材を介して、ゼオライト,酸化チタン,自然石,触媒,石灰等の材料,微生物を担持させる水不溶性の材料,消化剤等から成る水質浄化材を収容した容器を取り付ける。そして、上記容器の内面に散気管を設け、ポンプによって送り込まれた空気を上記容器の下端部から上端部に向けて放出させる。また、上記浮島の周囲から水中にカーテンを垂下して上記水域に区画領域を形成する。こうして、上記多孔部材内の金網容器に載置された栽培床に植えつけられた植物に、上記水質浄化材に触れて活性化して浄化され、栄養塩を含んだ浄化水を供給するようになっている。
【0004】
また、特開2007‐6859号公報(特許文献2)に開示された「培養液中の溶存酸素濃度を制御、管理できる水耕栽培システム」がある。この「培養液中の溶存酸素濃度を制御、管理できる水耕栽培システム」においては、水耕栽培槽内の培養液を循環ポンプで気体溶解装置に送り込む一方、酸素発生装置によって発生された酸素を上記気体溶解装置に吹き込む。こうして、上記気体溶解装置内において、上記培養液は酸素と激しく衝突,撹乱して上記培養液中の溶存酸素濃度が高められる。そして、高濃度酸素溶液を上記水耕栽培槽に送り込むことによって、栽培作物の根に十分な酸素を供給し、作物の生育を促進するようにしている。
【0005】
しかしながら、上記従来の水耕栽培装置を含む現存する水耕栽培装置には、以下のような問題がある。すなわち、長く水耕栽培装置を使用していると、時として、植物の根部や水耕液に病原菌が繁殖して短時間のうちに拡大し、対象植物が全滅する場合がある。病原菌の発生する原因や発生する時期の詳細が不明であるため、薬剤による消毒対応や水耕液の全量入れ換え等の対策しか今のところ存在していない。したがって、病原菌が一端発生すると、完全に病原菌が消滅するまで時間が掛かり、経営上の被害が莫大であるという問題がある。
【0006】
さらに、病原菌が発生した水耕液を廃棄する場合、環境負荷が増大するという問題もある。具体液には、使用後の水耕液には窒素,リン,その他無機塩類が多量に含まれている。しかしながら、使用後の水耕液は、再使用することなく単に廃棄されている。そのため、使用後の水耕液が河川に流入すると、窒素やリン他を含有しているが故に、環境負荷が増大してしまうのである。
【0007】
ところで、上記水耕液を長く使用した場合には、高収量,高品質生産という本来の水耕栽培の長所を維持することができない。そのために、適当な周期で水耕液の全量を新規の水耕液と入れ換え、水耕ベッドの消毒等を行う必要がある。その場合、病原菌が水耕液や栽培ベッドに繁殖する時期を予め予想することができない。そのため、上記水耕液の全量入れ換えや水耕ベッドの消毒等を安全を見て短い周期で行う必要があり、水耕栽培者にとって大変な作業が強いられるという問題もある。
【0008】
そこで、近年、水耕液を除菌することによって水耕液の廃棄回数を少なくして、半永久的に使用できる水耕栽培装置および水耕栽培方法が求められている。
【特許文献1】特開2006‐289275号公報
【特許文献2】特開2007‐6859号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、この発明の課題は、水耕液を除菌して再利用することができる除菌可能な水耕栽培装置および水耕栽培方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、この発明の除菌可能な水耕栽培装置は、
上部が建屋によって覆われると共に、導入された水耕液の水面に植物を栽培するための水耕ベッドが浮設された水耕栽培槽と、
マイクロバブルとナノバブルとが混合されたマイクロナノバブルを発生するマイクロナノバブル発生機が設置されると共に、導入された上記水耕液にマイクロナノバブルを含有させるためのマイクロナノバブル水槽と、
活性炭が充填されると共に、導入された上記水耕液中の有機物および植物の老廃物を上記活性炭に付着して繁殖している微生物によって分解するための活性炭塔と、
上記水耕液を、上記水耕栽培槽,上記マイクロナノバブル水槽および上記活性炭塔の間でこの順序に循環させる循環装置と
を備えたことを特徴としている。
【0011】
マイクロナノバブルは、酸化作用を有するため除菌作用をも有している。上記構成によれば、循環装置によって、水耕栽培槽からの水耕液をマイクロナノバブル発生機が設置されたマイクロナノバブル水槽に導入するようにしている。したがって、上記水耕液中の病原菌を上記マイクロナノバブルによって除菌することができる。さらに、上記循環装置によって、上記マイクロナノバブル水槽からの除菌された上記水耕液を、活性炭塔に導入するようにしている。したがって、上記活性炭塔内の活性炭に付着し繁殖している微生物によって、上記水耕液中の有機物および植物の老廃物を分解処理することができる。
【0012】
また、この発明の除菌可能な水耕栽培装置は、
上部が建屋によって覆われると共に、導入された水耕液の水面に植物を栽培するための水耕ベッドが浮設された水耕栽培槽と、
ナノバブルを発生するナノバブル発生機が設置されると共に、導入された上記水耕液にナノバブルを含有させるためのナノバブル水槽と、
活性炭が充填されると共に、導入された上記水耕液中の有機物および植物の老廃物を上記活性炭に付着して繁殖している微生物によって分解するための活性炭塔と、
上記水耕液を、上記水耕栽培槽,上記ナノバブル水槽および上記活性炭塔の間でこの順序に循環させる循環装置と
を備えたことを特徴としている。
【0013】
ナノバブルは、酸化作用を有するため除菌作用をも有している。上記構成によれば、循環装置によって、水耕栽培槽からの水耕液をナノバブル発生機が設置されたナノバブル水槽に導入するようにしている。したがって、上記水耕液中の病原菌を上記ナノバブルによって除菌することができる。さらに、上記循環装置によって、上記ナノバブル水槽からの除菌された上記水耕液を活性炭塔に導入するようにしている。したがって、上記活性炭塔内の活性炭に付着し繁殖している微生物によって、上記水耕液中の有機物および植物の老廃物を分解処理することができる。
【0014】
尚、この場合、上記ナノバブルによる除菌作用は、上記マイクロナノバブルによる除菌作用よりも強い。したがって、上記水耕液中に上記マイクロナノバブルを含有させる場合よりも上記水耕液を強力に除菌することができる。
【0015】
また、1実施の形態の除菌可能な水耕栽培装置では、
上記ナノバブル発生機に連結されると共に、発生したオゾンガスを上記ナノバブル発生機に送出してオゾンガスが取り入れられたナノバブルであるオゾンナノバブルを発生させて、上記ナノバブル水槽に導入された上記水耕液にオゾンナノバブルを含有させるオゾン発生機を備えている。
【0016】
この実施の形態によれば、オゾン発生機によって発生されたオゾンガスを上記ナノバブル発生機に送出してオゾンナノバブルを発生させるので、上記ナノバブル水槽に導入された上記水耕液にオゾンナノバブルを含有させることができる。したがって、オゾンの酸化作用とナノバブルの酸化作用との相乗効果によって、上記水耕液中の病原菌を強力に除菌し、場合によっては殺菌することができる。
【0017】
また、1実施の形態の除菌可能な水耕栽培装置では、
ナノバブルを発生するナノバブル発生機が設置されると共に、導入された上記水耕液にナノバブルを含有させるためのナノバブル水槽と、
上記ナノバブル発生機に連結されると共に、発生したオゾンガスを上記ナノバブル発生機に送出してオゾンガスが取り入れられたナノバブルであるオゾンナノバブルを発生させて、上記ナノバブル水槽に導入された上記水耕液にオゾンナノバブルを含有させるオゾン発生機と
を備え、
上記循環装置は、上記水耕液を上記水耕栽培槽,上記マイクロナノバブル水槽および上記活性炭塔の間でこの順序に循環させる第1循環装置と、上記水耕液を上記水耕栽培槽,上記ナノバブル水槽および上記活性炭塔の間でこの順序に循環させる第2循環装置とで、構成されている。
【0018】
この実施の形態によれば、第1循環装置によって、上記水耕液を、上記水耕栽培槽,上記マイクロナノバブル水槽および上記活性炭塔の間でこの順序に循環させた場合には、上記水耕液中の病原菌を上記マイクロナノバブルによって除菌することができ、上記活性炭塔内の活性炭に付着し繁殖している微生物によって、上記水耕液中の有機物および植物の老廃物を分解処理することができる。
【0019】
さらに、第2循環装置によって、上記水耕液を、上記水耕栽培槽,ナノバブル水槽および上記活性炭塔の間でこの順序に循環させた場合には、上記水耕液中の病原菌をナノバブルによって上記マイクロナノバブルの場合よりも強力に除菌することができ、上記活性炭塔内の活性炭に付着し繁殖している微生物によって、上記水耕液中の有機物および植物の老廃物を分解処理することができる。
【0020】
さらに、上記第2循環装置によって、上記水耕液を、上記水耕栽培槽,上記ナノバブル水槽および上記活性炭塔の間でこの順序に循環させる場合に、オゾン発生機を動作させれば、上記水耕液中の病原菌をオゾンナノバブルによって上記ナノバブルの場合よりも強力に除菌することができ、場合によっては殺菌することができる。
【0021】
また、1実施の形態の除菌可能な水耕栽培装置では、
上記水耕栽培槽を覆う上記建屋内の上部に設置されて、気液混合気体に対する耐腐食性を有するLEDを発光源とすると共に、上記水耕ベッドで栽培されている植物に光を照射する照明装置
を備えている。
【0022】
この実施の形態によれば、照明装置によって上記水耕ベッドで栽培されている植物に光を照射することによって、自然光のみでは光が不十分な植物を栽培することができる。その際に、上記照明装置の発光源として、気液混合気体に対する耐腐食性を有するLEDを用いている。したがって、上記水耕栽培槽で発生する水耕液のミストによって上記照明装置が腐食することはない。さらに、上記マイクロナノバブル水槽で発生した上記マイクロナノバブルを含むマイクロナノバブルミストや、上記活性炭塔で処理された後の上記水耕液のミストを上記建屋内に導入する場合でも、上記照明装置が腐食することはない。
【0023】
また、1実施の形態の除菌可能な水耕栽培装置では、
上記マイクロナノバブル水槽における上記水耕液の水面よりも上部と上記建屋内の上部とを連通すると共に、上記マイクロナノバブル水槽で発生したマイクロナノバブルを含むミストであるマイクロナノバブルミストを上記建屋内の上部に搬送して上記建屋内に放出するマイクロナノバブルミスト搬送装置
を備えている。
【0024】
上記マイクロナノバブル水槽で発生するマイクロナノバブルミストは、上記マイクロナノバブルが有する酸化作用に起因して除菌作用を有している。この実施の形態によれば、マイクロナノバブルミスト搬送装置によって、上記マイクロナノバブル水槽で発生した上記マイクロナノバブルミストを上記建屋内の上部に搬送して放出するので、上記建屋内の空気と栽培されている植物とを上記マイクロナノバブルミストによって除菌することができる。
【0025】
また、1実施の形態の除菌可能な水耕栽培装置では、
上記ナノバブル水槽における上記水耕液の水面よりも上部と上記建屋内の上部とを連通すると共に、上記ナノバブル水槽で発生したナノバブルを含むミストであるナノバブルミストを上記建屋内の上部に搬送して上記建屋内に放出するナノバブルミスト搬送装置
を備えている。
【0026】
上記ナノバブル水槽で発生するナノバブルミストは、上記ナノバブルが有する酸化作用に起因して除菌作用を有している。この実施の形態によれば、ナノバブルミスト搬送装置によって、上記ナノバブル水槽で発生した上記ナノバブルミストを上記建屋内の上部に搬送して放出するので、上記建屋内の空気と栽培されている植物とを上記ナノバブルミストによって除菌することができる。
【0027】
また、1実施の形態の除菌可能な水耕栽培装置では、
上記水耕栽培槽を覆う上記建屋内の上部に設置されたミスト発生器と、
上記活性炭塔で処理された後の上記水耕液を上記ミスト発生器に供給して、上記建屋内の空気に上記水耕液のミストを噴霧させる水耕液供給装置と
を備えている。
【0028】
上記活性炭塔からの上記水耕液には、上記マイクロナノバブルや上記ナノバブルが長時間(数日)持続して存在しているので、酸化作用、すなわち除菌作用を有している。この実施の形態によれば、水耕液供給装置によって、上記活性炭塔で処理された後の上記水耕液をミスト発生器に供給して、上記建屋内の空気に上記水耕液のミストを噴霧させている。したがって、温室建屋3内の空気を除菌することができ、病原菌に弱い植物の病原菌による汚染を上記水耕栽培槽内の水耕液のみを除菌する場合よりもさらに効果的に防止することができる。
【0029】
また、1実施の形態の除菌可能な水耕栽培装置では、
上記マイクロナノバブル発生機は、水中ポンプ型マイクロナノバブル発生機である。
【0030】
この実施の形態によれば、水中ポンプ型マイクロナノバブル発生機によって、除菌作用を有する上記マイクロナノバブルを簡単に発生させることができる。
【0031】
また、1実施の形態の除菌可能な水耕栽培装置では、
上記ナノバブル発生機は、気液混合気体剪断方式のナノバブル発生機であって、マイクロバブル発生部を有する気液混合循環ポンプと、上記マイクロバブル発生部で発生されたマイクロバブルを流体運動によって剪断する気体剪断部と、上記マイクロバブル発生部に供給する空気量またはオゾン量を調整するニードルバルブと、を含んで構成されている。
【0032】
この実施の形態によれば、マイクロバブル発生部を有する気液混合循環ポンプと、気体剪断部と、ニードルバルブとによって、除菌作用を有する上記ナノバブルを確実に発生させることができる。
【0033】
また、1実施の形態の除菌可能な水耕栽培装置では、
上記水耕液の循環経路を、上記第1循環装置によって上記水耕液を上記水耕栽培槽,上記マイクロナノバブル水槽および上記活性炭塔の間でこの順序に循環させる第1循環経路と、上記第2循環装置によって上記水耕液を上記水耕栽培槽,上記ナノバブル水槽および上記活性炭塔の間でこの順序に循環させる第2循環経路と、に切り換える循環経路切換装置と、
上記循環経路切換装置,上記マイクロナノバブル発生機,上記ナノバブル発生機および上記オゾン発生機を制御して、上記水耕栽培槽からの上記水耕液を上記マイクロナノバブル水槽に導入して上記マイクロナノバブルを含有させて除菌する通常運転と、上記水耕栽培槽からの上記水耕液を上記ナノバブル水槽に導入して上記ナノバブルを含有させて除菌する準除菌運転と、上記水耕栽培槽からの上記水耕液を上記ナノバブル水槽に導入すると共に上記オゾン発生機を駆動して上記オゾンナノバブルを含有させて除菌する除菌運転と、の何れかを、切り換え実行する運転制御部と
を備えている。
【0034】
この実施の形態によれば、運転制御部によって、上記水耕栽培槽からの上記水耕液に弱い殺菌作用を有する上記マイクロナノバブルを含有させて除菌する通常運転と、上記水耕液に上記マイクロナノバブルよりも強い殺菌作用を有する上記ナノバブルを含有させて除菌する準除菌運転と、上記水耕液に上記ナノバブルよりも強い強力な殺菌作用を有する上記オゾンナノバブルを含有させて除菌する除菌運転と、の何れかを切り換え実行する。したがって、植物の種類や植物の成長度合いや病原菌の発生状態に合わせて、上記3つの運転パターンを自由に選択して、植物の水耕栽培を最適な方法で行うことが可能になる。
【0035】
例えば、上記水耕液に対して除菌を行うと共に植物からの老廃物を処理して再利用する場合には、上記通常運転を行う。また、植物に病気が発生しないように日頃から上記水耕液を除菌する場合には、上記準除菌運転を行う。そして、植物の病気発生が確実に予測される場合や植物が病気に罹ってしまった場合には、上記除菌運転を行うのである。
【0036】
また、1実施の形態の除菌可能な水耕栽培装置では、
上記マイクロナノバブル水槽および上記ナノバブル水槽に、充填材が充填されている。
【0037】
この実施の形態によれば、上記マイクロナノバブル水槽および上記ナノバブル水槽に充填されている充填材に微生物を付着させて繁殖させ、その微生物を上記マイクロナノバブルおよび上記ナノバブルによって、活性化させることができる。したがって、上記活性化された微生物によって、上記水耕液中の有機物および植物からの老廃物を効果的に処理することができる。
【0038】
また、1実施の形態の除菌可能な水耕栽培装置では、
上記充填材は、ポリ塩化ビニリデン充填物である。
【0039】
ポリ塩化ビニリデン充填物は、材質が有するマイナスの電荷によって微生物を高濃度に付着させて繁殖させることができるため、微生物繁殖の実績が多い。この実施の形態によれば、上記マイクロナノバブル水槽および上記ナノバブル水槽に、ポリ塩化ビニリデン充填物を充填している。したがって、活性化された高濃度の微生物によって、上記水耕液中の有機物および植物からの老廃物をさらに効果的に処理することができる。
【0040】
また、1実施の形態の除菌可能な水耕栽培装置では、
上記充填材は、木炭である。
【0041】
この実施の形態によれば、上記マイクロナノバブル水槽および上記ナノバブル水槽に、自然の産物であり、微生物の固定化が容易な木炭を充填している。したがって、微生物を安定的に繁殖させることができる。さらに、上記木炭が有する有機物吸着能力によって、上記水耕液中の有機物および植物からの老廃物を吸着処理することができる。さらに、上記木炭に繁殖した微生物を、上記木炭に吸着した上記マイクロナノバブルおよび上記ナノバブルによって活性化させて、上記木炭に吸着した上記有機物および上記老廃物を効果的に処理することができる。
【0042】
また、1実施の形態の除菌可能な水耕栽培装置では、
上記マイクロナノバブル水槽および上記ナノバブル水槽の少なくとも一方で処理された上記水耕液が導入されて、上記水耕液を上澄液と沈澱物とに分離する沈澱槽と、
上記沈澱槽によって分離された上記上澄液を上記活性炭塔に搬送する上澄液搬送装置と
を備え、
上記第1循環装置は、上記水耕液を、上記水耕栽培槽,上記マイクロナノバブル水槽,上記沈澱槽および上記活性炭塔の間でこの順序に循環させるようになっており、
上記第2循環装置は、上記水耕液を、上記水耕栽培槽,上記ナノバブル水槽,上記沈澱槽および上記活性炭塔の間でこの順序に循環させるようになっている。
【0043】
この実施の形態によれば、上記マイクロナノバブル水槽および上記ナノバブル水槽の少なくとも一方で処理された上記水耕液を、さらに沈澱槽によって沈降分離するようにしている。したがって、上記水耕液に対する処理を確実にして、上記水耕液を問題なく再利用することが可能になる。
【0044】
こうして上記水耕液を再利用することによって、上記水耕液の河川等への廃棄を無くすことができ、環境負荷の増大を防止することができる。また、上記水耕液を再利用することによって、新規に水耕液を購入する場合に比して、ランニングコストを低減することができる。
【0045】
また、1実施の形態の除菌可能な水耕栽培装置では、
上記水耕栽培槽を覆う上記建屋内の上部に設置されて、気液混合気体に対する耐腐食性を有するLEDを発光源とすると共に、上記水耕ベッドで栽培されている植物に光を照射する照明装置を備え、
上記運転制御部は、上記照明装置を制御して、上記通常運転,上記準除菌運転および上記除菌運転時に、上記照明装置によって上記植物に光を照射させることが可能になっている。
【0046】
この実施の形態によれば、照明装置による上記植物への光の照射を上記運転制御部によって制御するので、自然光でも十分に栽培が可能な植物を栽培する際には、上記照明装置の動作を停止して、電気代を節約し、ランニングコストの低減を図ることができる。
【0047】
また、1実施の形態の除菌可能な水耕栽培装置では、
上記水耕ベッドで栽培される上記植物は、わさびを含む野菜類,花類あるいは薬用植物類の内の少なくとも何れか一つである。
【0048】
この実施の形態によれば、上記水耕ベッドによって、わさびを含む野菜類,花類あるいは薬用植物類の内の少なくとも何れか一つを栽培するので、植物への適用範囲が広く、殆ど総ての栽培用植物に適用することができ、植物の栽培に有効な水耕栽培装置を提供することができる。
【0049】
また、この発明の水耕栽培方法は、
この発明の除菌可能な水耕栽培装置における上記水耕栽培槽,上記マイクロナノバブル水槽,上記ナノバブル水槽,上記活性炭塔,上記オゾン発生機,上記第1循環装置および上記第2循環装置
を備え、
上記第1循環装置によって、上記水耕液を上記水耕栽培槽,上記マイクロナノバブル水槽および上記活性炭塔の間でこの順序に循環させる第1循環と、上記第2循環装置によって、上記水耕液を上記水耕栽培槽,上記ナノバブル水槽および上記活性炭塔の間でこの順序に循環させる第2循環とを、適宜切り換え行うと共に、
上記第2循環を行うに際して、上記オゾン発生機の動作および停止を適宜切り換え行うことによって、
上記水耕栽培槽からの上記水耕液に上記マイクロナノバブルを含有させて除菌する通常運転と、上記水耕栽培槽からの上記水耕液に上記ナノバブルを含有させて除菌する準除菌運転と、上記水耕栽培槽からの上記水耕液に上記オゾンナノバブルを含有させて除菌する除菌運転と、の何れかを行い、
上記除菌された上記水耕液を上記水耕栽培槽に導入して再利用する
ことを特徴としている。
【0050】
上記構成によれば、第1循環装置によって、上記水耕液を、上記水耕栽培槽,上記マイクロナノバブル水槽および上記活性炭塔の間でこの順序に循環させる第1循環を行った場合には、通常運転を行うことができる。したがって、上記水耕栽培槽からの上記水耕液中の病原菌を上記マイクロナノバブルによって除菌すると共に、上記活性炭塔内の活性炭に付着して繁殖している微生物によって、上記水耕液中の有機物および植物の老廃物を分解処理することができる。
【0051】
また、第2循環装置によって、上記水耕液を、上記水耕栽培槽,ナノバブル水槽および上記活性炭塔の間でこの順序に循環させる第2循環を行った場合には、準除菌運転を行うことができる。したがって、上記水耕栽培槽からの上記水耕液中の病原菌を上記ナノバブルによって上記マイクロナノバブルの場合よりも強力に除菌すると共に、上記活性炭塔内の活性炭に付着し繁殖している微生物によって、上記水耕液中の有機物および植物の老廃物を分解処理することができる。
【0052】
また、上記第2循環装置によって、上記第2循環を行っている場合に、オゾン発生機を動作させれば、除菌運転を行うことができる。したがって、上記水耕栽培槽からの上記水耕液中の病原菌をオゾンナノバブルによって上記ナノバブルの場合よりも強力に除菌することができ、場合によっては殺菌することができる。
【0053】
さらに、上記通常運転,上記準除菌運転あるいは上記除菌運転を行った後の除菌された上記水耕液が、上記水耕栽培槽に導入されて再利用される。したがって、上記水耕液の河川等への廃棄を無くすことができ、環境負荷の増大を防止することができる。また、上記水耕液を再利用することによって、新規に水耕液を購入する場合に比して、ランニングコストを低減することができる。
【発明の効果】
【0054】
以上より明らかなように、この発明の除菌可能な水耕栽培装置は、循環装置によって、水耕栽培槽からの水耕液をマイクロナノバブル発生機が設置されたマイクロナノバブル水槽に導入するので、上記水耕液中の病原菌をマイクロナノバブルによって除菌することができる。さらに、上記循環装置によって、上記マイクロナノバブル水槽からの除菌された上記水耕液を活性炭塔に導入するので、上記活性炭塔内の活性炭に付着し繁殖している微生物によって、上記水耕液中の有機物および植物の老廃物を分解処理することができる。
【0055】
また、この発明の除菌可能な水耕栽培装置は、循環装置によって、水耕栽培槽からの水耕液をナノバブル発生機が設置されたナノバブル水槽に導入するので、上記水耕液中の病原菌をナノバブルによって上記マイクロナノバブルの場合よりも強力に除菌することができる。さらに、上記循環装置によって、上記ナノバブル水槽からの除菌された上記水耕液を活性炭塔に導入するので、上記活性炭塔内の活性炭に付着し繁殖している微生物によって、上記水耕液中の有機物および植物の老廃物を分解処理することができる。
【0056】
さらに、上記水耕液中の病原菌を上記ナノバブルによって除菌する場合に、オゾン発生機によってオゾンガスを上記ナノバブル発生機に送出してオゾンナノバブルを発生させるようにすれば、上記ナノバブル水槽に導入された上記水耕液にオゾンナノバブルを含有させることができ、オゾンの酸化作用とナノバブルの酸化作用との相乗効果によって、上記水耕液中の病原菌を強力に除菌し、場合によっては殺菌することができる。
【0057】
さらに、上記水耕栽培槽と上記マイクロナノバブル水槽と上記活性炭塔とに加えて、ナノバブル水槽とオゾン発生機とを備え、第1循環装置によって、上記水耕液を、上記水耕栽培槽,上記マイクロナノバブル水槽および上記活性炭塔の間でこの順序に循環させるようにすれば、上記水耕液中の病原菌を上記マイクロナノバブルによって除菌することができると共に、上記活性炭塔内の活性炭に付着し繁殖している微生物によって、上記水耕液中の有機物および植物の老廃物を分解処理することができる。
【0058】
さらに、第2循環装置によって、上記水耕液を、水耕栽培槽,ナノバブル水槽および上記活性炭塔の間でこの順序に循環させるようにすれば、上記水耕液中の病原菌をナノバブルによって上記マイクロナノバブルの場合よりも強力に除菌することができると共に、上記活性炭塔内の活性炭に付着し繁殖している微生物によって、上記水耕液中の有機物および植物の老廃物を分解処理することができる。
【0059】
さらに、上記第2循環装置によって上記水耕液を循環させる際に、オゾン発生機を動作させるようにすれば、上記水耕液中の病原菌をオゾンナノバブルによって上記ナノバブルの場合よりも強力に除菌することができ、場合によっては殺菌することができる。
【0060】
以上のごとく、この発明および各実施の形態においては、上記水耕栽培槽からの水耕液を除菌すると共に、有機物および植物の老廃物を分解処理している。したがって、上記処理後の水耕液は、再度上記水耕栽培槽に導入して再度利用することが可能になる。そのため、上記水耕栽培槽の上記水耕液によって栽培されている植物には病原菌が繁殖することがなく、上記水耕液の使用期間を、再利用しない従来の水耕栽培装置よりも格段に長くすることができる。その結果、窒素,リンおよびその他無機塩類が多量に含まれた水耕液をそのまま廃棄することを非常に少なくでき、環境負荷の増大を防止することができる。
【0061】
さらに、上述したように、上記水耕液を長期間使用することできるため、水耕液の入れ換えや水耕ベッドの消毒等の回数を減らすことができる。さらに、病原菌の発生による消毒や病原菌に冒された植物の廃棄を無くすことできる。したがって、水耕栽培に伴う作業と病原菌による被害とを軽減することができるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0062】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0063】
・第1実施の形態
図1は、本実施の形態の除菌可能な水耕栽培装置における構成を示す模式図である。除菌可能な水耕栽培装置1は、大きくは、温室建屋3を有する水耕栽培槽2と、ナノバブル水槽4およびマイクロナノバブル水槽5から成るバブル水槽と、第1活性炭塔6および第2活性炭塔7から成る活性炭塔とで、概略構成されている。
【0064】
図1においては、上記水耕栽培槽2と、バブル槽(ナノバブル水槽4およびマイクロナノバブル水槽5)と、活性炭塔(第1活性炭塔6および第2活性炭塔7)とは、大きさが略同程度であり、大きさの差は無いように描かれている。しかしながら、実際には、水耕栽培槽2が最も大きく、上記バブル槽および活性炭塔は、水耕栽培槽2に比して小規模である。尚。それらの規模は、栽培する植物の種類や使用する水耕液の種類,成分,等によって異なる。
【0065】
上記水耕栽培槽2から流出した水耕液は、上記バブル槽(ナノバブル水槽4およびマイクロナノバブル水槽5)において、オゾン含有ナノバブル,ナノバブルあるいはマイクロナノバブルの何れかを含有して急速ろ過機8に圧送され、急速ろ過機8によって水耕液中の浮遊物質が除去される。
【0066】
ここで、上記各バブルについて説明する。通常のバブル(気泡)は、水の中を上昇して、ついには表面でパンとはじけて消滅する。これに対し、マイクロバブルは、直径が50ミクロン(μm)以下の微細気泡であり、水中で縮小して行き、ついには消滅(完全溶解)してしまう。また、上記ナノバブルは、上記マイクロバブルよりもさらに小さいバブル(直径が1ミクロン以下の100nm〜200nm)であり、いつまでも水中に存在することが可能である。そして、上記マイクロナノバブルとは、上記マイクロバブルと上記ナノバブルとが混合したバブルである。
【0067】
上記急速ろ過機8に続いて、水耕液は、第1活性炭塔6および第2活性炭塔7に導入されて処理された後、再び水耕栽培槽2に戻されて、循環利用される。
【0068】
上述したように、上記水耕栽培槽2の上部は温室建屋3で覆われており、水耕栽培槽2の内における植物9の上部には、笠10とその下にLED照明器具(気液混合気体に対応可能)11が設置されている。つまり、LED照明器具11としては、ミストに対応可能な機種を選定して用いるのである。尚、LED照明器具11は、信号線12を介して、上記運転制御部としてのシーケンサー13と電気的に接続されており、シーケンサー13からの制御信号によってシーケンサー13に搭載された制御プログラムにしたがって点滅する。
【0069】
上記水耕栽培槽2内には水耕液14が導入されており、水耕液14の水面15には、間隔を置いて植物支持かご16が設けられた水耕栽培ベッド17が浮設されており、植物支持かご16内で植物9が栽培されている。ここで、水耕栽培ベッド17で栽培される植物9としては、例えば野菜類,花類,薬用植物類等の各種様々な植物が選定される。そして、上記野菜類,上記花類あるいは上記薬用植物類は、植物支持かご16に収容され、固定されて、栽培されるのである。そして、植物9の成長と共に、植物支持かご16も大きさや型式が変更される。植物支持かご16は、水耕液14に一部が浸かるように構成されている。その場合、水耕液14に浸かる程度は、植物の種類や植物の成長時期によって異なっており、ケースバイケースである。
【0070】
上記水耕栽培槽2内の水耕液14は、水耕液流出配管18から流出してナノバブル水槽4あるいはマイクロナノバブル水槽5に自然流下によって流入する。
【0071】
ここで、本実施の形態における上記水耕液14の除菌システムについて説明する。本除菌可能な水耕栽培装置1は、1)通常運転工程、2)準除菌工程、3)除菌工程で構成される3つのパターンによって水耕栽培運転が行われる。これら3つの工程の処理動作は、シーケンサー13内の記憶装置に、水耕栽培される植物毎のプログラムによって記憶されている。
【0072】
上記シーケンサー13は、LED照明器具11,気液混合循環ポンプ19,水中ポンプ型マイクロナノバブル発生機20,オゾン発生機21,電磁弁22,電磁弁23,電磁弁24および電磁弁25と、信号線12を介して接続されている。そして、植物の種類,時期および植物の成長の程度に合わせて、記憶されているプログラムに従って細かく上記機器を制御するようになっている。尚、上記水耕栽培用のプログラムがより複雑な場合には、シーケンサー13に代わってコンピューターが使用されることは言うまでもない。
【0073】
以下、上記3つのパターンである1)通常運転工程、2)準除菌工程、3)除菌工程について詳細に説明する。
【0074】
1)の通常運転工程とは、上記電磁弁25を開にすると共に、電磁弁22を閉にすることによって、水耕栽培槽2からの水耕液14をマイクロナノバブル水槽5に流入させる工程である。この通常運転工程では、マイクロナノバブル水槽5に設置されている水中ポンプ型マイクロナノバブル発生機20を運転して、水耕液14にマイクロナノバブルを含有させることによって、水耕液14中の病原菌を弱いながら除菌するのである。尚、マイクロナノバブルは、弱いながら除菌作用を有している。
【0075】
また、上記水中ポンプ型マイクロナノバブル発生機20が運転されると、マイクロナノバブル水槽5の水面から、マイクロナノバブルであるが故に、マイクロナノバブルを含むミストが発生する。そして、発生した上記マイクロナノバブルミストは、ファン26によって、ダクト27を通って温室建屋3の上部に送り出される。この場合、上記マイクロナノバブルミストも酸化作用を有しているため、温室建屋3内の空気および植物9に対して除菌効果を発揮する。温室建屋3内で除菌を行った後のマイクロナノバブルミストは、ガラリ28から排出される。
【0076】
ところで、上記マイクロナノバブルミストによる植物9に対する除菌効果は、上記マイクロナノバブルが有する酸化作用に起因している。すなわち、上記マイクロナノバブルミストは、上記マイクロナノバブルに酸化作用があるが故に、酸化作用を有しているからである。尚、上記マイクロナノバブルの酸化作用は、気泡圧壊時に局部的に高温高圧状態となり、フリーラジカル(不安定な分子)が発生することによって発生する。
【0077】
2)の準除菌工程とは、上記電磁弁25を閉にすると共に、電磁弁22を開にすることによって、水耕栽培槽2からの水耕液14をナノバブル水槽4に流入させる工程である。この準除菌工程では、上記ナノバブル水槽4に設置されているナノバブル発生機29を運転し、且つ、電磁弁23を閉にすると共に、電磁弁24を開にする。そして、ニードルバルブ30で空気量を例えば0.7リットル/分に調整して電磁弁24から空気を取り入れることによって、水耕液14に空気ナノバブルを含有させて、水耕液14中の病原菌を上記空気ナノバブルが有する酸化作用によって除菌するのである。尚、上記空気ナノバブルの酸化作用は、気泡圧壊時に局部的に高温高圧状態となり、フリーラジカル(不安定な分子)が発生することによって発生する。
【0078】
ここで、上記ナノバブル発生機29は、上記気液混合循環ポンプ19、この気液混合循環ポンプ19に付属しているマイクロバブル発生部31、このマイクロバブル発生部31に水配管を介して接続されている気体剪断部32、この気体剪断部32に連結されているナノバブル吐出口33、マイクロバブル発生部31に空気配管を介して接続されているニードルバルブ30から構成されている。
【0079】
3)の除菌工程とは、上記電磁弁25を閉にすると共に、電磁弁22を開にすることによって、水耕栽培槽2からの水耕液14をナノバブル水槽4に流入させる工程である。この除菌工程では、ナノバブル水槽4に設置されているナノバブル発生機29を運転し、且つ、電磁弁23を開にすると共に、電磁弁24を閉にし、オゾン発生機21を運転する。そして、ニードルバルブ30でオゾン量を例えば0.7リットル/分に調整し、電磁弁23を介してオゾン発生機21で発生したオゾンガスを取り入れる。こうすることによって、水耕液14にオゾンナノバブルを含有させて、水耕液14中の病原菌をオゾンナノバブルが有する強力な酸化作用によって除菌し、場合によっては殺菌するのである。尚、上記オゾンナノバブルの強力な酸化作用は、気泡圧壊時に局部的に高温高圧状態となり、フリーラジカル(不安定な分子)が発生して、オゾンの酸化作用とナノバブルの酸化作用との相乗効果によって発生するのである。
【0080】
実際に水耕栽培運転を行う場合には、上記シーケンサー13によって、1)通常運転工程、2)準除菌工程、3)除菌工程のうちの何れかが選択されて実行されることになる。そして、2)準除菌工程および3)除菌工程が選択された場合には、水耕栽培槽2からの水耕液14をナノバブル水槽4に流入させて、ナノバブル発生機29が運転される。
【0081】
そして、上記ナノバブル発生機29が運転されると、ナノバブル水槽4には、ナノバブルが発生されることに起因してナノバブルを含むミスト(ナノバブルミスト)が発生し、発生したナノバブルミスト34は、ファン35によって、ダクト36を通って温室建屋3の上部に送り出される。この場合、ナノバブルミスト34も酸化作用を有しているため、植物9に対して除菌効果を発揮する。温室建屋3内で除菌を行った後のマイクロナノバブルミストは、ガラリ28から排出される。
【0082】
ところで、上記ナノバブルミスト34による植物に対する除菌効果は、上記ナノバブルが有する酸化作用に起因している。すなわち、ナノバブルミスト34は、上記ナノバブルに強力な酸化作用があるが故に、強力な酸化作用を有しているからである。尚、上記ナノバブルの強力な酸化作用は、気泡圧壊時に局部的に高温高圧状態となり、フリーラジカル(不安定な分子)が発生することによって発生する。
【0083】
また、上記ナノバブルミストがオゾンナノバブルミストである場合には、さらに強力な酸化作用を呈する。このオゾンナノバブルミストの強力な酸化作用は、上記オゾンナノバブルが有する強力な酸化作用に起因している。尚、上記オゾンナノバブルの強力な酸化作用は、気泡圧壊時に局部的に高温高圧状態となり、フリーラジカル(不安定な分子)が発生し、オゾンの酸化作用とナノバブルの酸化作用との相乗効果によって発生する。
【0084】
上述したようにして、上記1)通常運転工程、2)準除菌工程、3)除菌工程のうちの何れかが選択されて実行され、処理された水耕液14は、ナノバブル水槽ポンプ37またはマイクロナノバブル水槽ポンプ38の何れかによって、急速ろ過機8に圧送される。その場合、ナノバブル水槽ポンプ37によって圧送される水耕液14は、サクション配管39およびバルブ40によって吐出流量が調整され、吐出配管41を通って急速ろ過機8に圧送される。また、マイクロナノバブル水槽ポンプ38によって圧送される水耕液14は、サクション配管42およびバルブ43によって吐出流量が調整され、吐出配管44を通って急速ろ過機8に圧送される。
【0085】
上記急速ろ過機8の目的は、上記水耕液14中の浮遊物質を物理的に急速にろ過して取り除き、後段の第1活性炭塔6や第2活性炭塔7が、水耕液14中の浮遊物質によって閉塞されないようにすることにある。
【0086】
そして、上記急速ろ過機8によって浮遊物質が急速にろ過されて物理的に取り除かれた後の水耕液14は、第1活性炭塔6および第2活性炭塔7に流入する。第1活性炭塔6には、上部にバルブ45が設置され、下部にはバルブ46が設置されている。また、第2活性炭塔7には、上部にバルブ47が設置され、下部にはバルブ48が設置されている。そして、第1活性炭塔6および第2活性炭塔7の運転方法として、水耕液14の有機物汚染の程度や植物から排出される老廃物濃度のレベルによって、2つの活性炭塔6,7のうちの何れか一方のみを用いる1塔運転と両方を用いる2塔運転とがある。何れの運転方法をとるかは、水耕液14の水質によって決定される。
【0087】
特に、活性炭には、上記ナノバブルや上記マイクロナノバブルによって活性化された微生物が繁殖している。したがって、水耕液14中の有機物や老廃物は、上記活性炭に物理的に吸着された後に、上記活性炭に繁殖している活性化した微生物によって分解されるので、上記活性炭を取り換える必要がなくなる場合(上記有機物や上記老廃物の吸着量と分解量とが拮抗している場合)もある。尚、上記活性炭の取り換えの必要性は、水耕液14の水質と第1活性炭塔6および第2活性炭塔7の容量によって決定される。
【0088】
上記第1活性炭塔6および第2活性炭塔7を出た水耕液14は、バルブ49の開によって配管50を通り、さらにバブル51を開にすることによって、温室建屋3内の水耕栽培槽2に導入される。また、バブル52を少し開にすることによって、スプレーノズル53より水耕液14のミスト54を噴霧させることができる。水耕液14には、ナノバブルやマイクロナノバブルが長時間持続して存在することよって、酸化作用、すなわち除菌作用を有している。そこで、水耕液14のミスト54を噴霧することによって、温室建屋3内の空気を除菌することができるのである。すなわち、選定された植物の種類の中で、病原菌汚染に弱い植物の場合には、スプレーノズル53よって水耕液14のミスト54を噴霧することによって、温室建屋3内の空気を除菌するのである。
【0089】
また、上記第1活性炭塔6および第2活性炭塔7を出た水耕液14は、バルブ55の開によって、ナノバブル水槽4に戻される。
【0090】
すなわち、本実施の形態においては、上記第1循環装置を、上記水耕液流出配管18,電磁弁25,マイクロナノバブル水槽ポンプ38,バルブ43,バルブ49およびバブル51で構成するのである。一方、上記第2循環装置を、水耕液流出配管18,電磁弁22,ナノバブル水槽ポンプ37,バルブ40,バルブ49およびバブル51で構成するのである。また、上記マイクロナノバブルミスト搬送装置を、ファン26およびダクト27で構成するのである。また、上記ナノバブルミスト搬送装置を、ファン35およびダクト36で構成するのである。また、上記ミスト発生器をスプレーノズル53で構成する一方、上記水耕液供給装置をバルブ49およびバブル52で構成するのである。また、上記循環経路切換装置を、電磁弁22および電磁弁25で構成するのである。また、上記上澄液搬送装置を、沈澱槽ピット70,沈澱槽ピットポンプ69およびバルブ71で構成するのである。
【0091】
上記ナノバブル発生機29は、上記したように、気液混合循環ポンプ19、この気液混合循環ポンプ19に付属しているマイクロバブル発生部31、このマイクロバブル発生部31に水配管を介して接続されている気体剪断部32、この気体剪断部32に連結されているナノバブル吐出口33、マイクロバブル発生部31に空気配管を介して接続されているニードルバルブ30から構成されている。そして、ニードルバルブ30,マイクロバブル発生部31を有する気液混合循環ポンプ19,気体剪断部32およびナノバブル吐出口33から構成されたナノバブル発生機29は、具体的には、ステンレス製の容器に収納されたユニットとして、販売されている。
【0092】
上記マイクロバブル発生部31は、特殊なケーシング構造を有しており、気体としての空気と液体とを「混合,撹拌,昇圧」させてマイクロバブルを生成させる。すなわち、ニードルバルブ30を開にすることによって、気液混合循環ポンプ19の吸い込み側から空気が自給され、マイクロバブル発生部31によってマイクロバブルが生成されるのである。さらに、生成されたマイクロバブルを水配管を介して気体剪断部32に導入し、流体運動により剪断することによって、マイクロバブルからナノバブルを発生させている。その際におけるナノバブル発生のメカニズムを詳細に説明すると、以下のように第1ステップと第2ステップとによってナノバブルが発生されるのである。尚、56は、ナノバブル吐出口33から吐出されるナノバブル水流である。
【0093】
第1ステップ
上記マイクロバブル発生部31において、流体力学的に圧力を制御することによって、負圧形成部分から気体を吸入し、高速流体運動を行わせて負圧部を形成し、上記マイクロバブルを発生させる。より解かり易く簡単に説明すると、水と空気とを効果的に自給混合溶解して圧送することによって、マイクロバブル白濁水を製造することが、本第1ステップである。
【0094】
第2ステップ
上記マイクロバブル発生部31によって発生されたマイクロバブルを気体剪断部32に導入し、気体剪断部32において、流体運動により剪断を行うことによって、上記マイクロバブルからナノバブルを発生させる。
【0095】
尚、上記ナノバブル発生機29を基本的に構成している気液混合循環ポンプ19,マイクロバブル発生部31,気体剪断部32,ニードルバルブ30およびナノバブル吐出口33のセットは、市販されているものであればメーカーを限定するものではない。本実施の形態においては、株式会社 協和機設の商品を採用している。
【0096】
上記水中ポンプ型マイクロナノバブル発生機20への空気は、バルブ57を開にすると空気配管58を介して取り込まれる。そして、水中ポンプ型マイクロナノバブル発生機20からはマイクロナノバブル水流59が発生される。尚、水中ポンプ型マイクロナノバブル発生機20は、野村電子工業株式会社の商品を採用している。
【0097】
上記水中ポンプ型マイクロナノバブル発生機20およびナノバブル発生機29として、今後、他メーカーの商品も数多く販売されるものと予想されるが、目的に従って適宜選定すれば良い。
【0098】
以上のごとく、本第1実施の形態においては、上部が温室建屋3で覆われた水耕栽培槽2内に水耕液14を導入し、水耕液14の水面15に浮設された水耕栽培ベッド17の植物支持かご16内で植物9を栽培する。また、ナノバブル発生機29のナノバブル吐出口33が設置されているナノバブル水槽4と、水中ポンプ型マイクロナノバブル発生機20が設置されたマイクロナノバブル水槽5と、気液混合循環ポンプ19,水中ポンプ型マイクロナノバブル発生機20,オゾン発生機21,電磁弁22〜電磁弁25の動作を制御するシーケンサー13とを設けている。そして、水耕栽培運転時には、シーケンサー13の制御の下に、1)通常運転工程、2)準除菌工程、3)除菌工程のうちの何れかを実行するようにしている。
【0099】
すなわち、1)の通常運転工程においては、上記水耕栽培槽2からの水耕液14をマイクロナノバブル水槽5に流入させると共に、水中ポンプ型マイクロナノバブル発生機20を運転することによって、水耕液14にマイクロナノバブルを含有させて、水耕液14中の病原菌を弱いながら除菌する。さらに、マイクロナノバブル水槽5で発生したマイクロナノバブルミストを温室建屋3の上部に送り出して、上記マイクロナノバブルミストの酸化作用を利用して温室建屋3内の空気および植物9に対して除菌を行う。
【0100】
また、2)の準除菌工程においては、上記水耕栽培槽2からの水耕液14をナノバブル水槽4に流入させると共に、ナノバブル発生機29を運転することによって、水耕液14に空気ナノバブルを含有させて、水耕液14中の病原菌を空気ナノバブルが有する酸化作用によって除菌する。さらに、ナノバブル水槽4で発生したナノバブルミスト34を、ダクト36を介して温室建屋3の上部に送り出して、上記ナノバブルミスト34の酸化作用を利用して温室建屋3内の空気および植物9に対して除菌を行うのである。
【0101】
また、3)の除菌工程においては、上記水耕栽培槽2からの水耕液14をナノバブル水槽4に流入させると共に、オゾン発生機21およびナノバブル発生機29を運転することによって、水耕液14にオゾンナノバブルを含有させて、水耕液14中の病原菌をオゾンナノバブルが有する強力な酸化作用によって除菌し、場合によっては殺菌する。さらに、ナノバブル水槽4で発生したオゾンナノバブルミストを、ダクト36を介して温室建屋3の上部に送り出して、上記オゾンナノバブルミストの強力な酸化作用を利用して温室建屋3内の空気および植物9に対して除菌を行うのである。
【0102】
したがって、上記マイクロナノバブル,上記空気ナノバブルおよび上記オゾンナノバブルによって、水耕液14中の病原菌を除菌することができる。さらに、上記マイクロナノバブルミスト,ナノバブルミスト34および上記オゾンナノバブルミストによって、温室建屋3内の空気および植物9を除菌することができるのである。
【0103】
水槽内に上記マイクロナノバブルあるいは上記ナノバブルが存在しない場合には、上記水槽内の水面からは余程の高温でない限りミストは発生しない。しかしながら、本実施の形態においては、ナノバブル水槽4内では上記ナノバブルが存在し、上記マイクロナノバブル水槽5内では上記マイクロナノバブルが存在している。したがって、水槽4,5の表面から水蒸気が発生し易く、例えば冬季のように気温が低い場合でもミストがよく発生するのである。そのため、このミストに含まれる上記マイクロナノバブルあるいは上記ナノバブルによって、植物9の茎や葉の部分を除菌若しくは殺菌することができるのである。
【0104】
さらに、上記水耕栽培運転時には、1)通常運転工程、2)準除菌工程、3)除菌工程のうちの何れかを選択的に実行するようにしている。したがって、植物9の種類や植物9の成長や上記病原菌の発生状態に応じた運転パターンによって、植物の水耕栽培を行うことができるのである。
【0105】
さらに、上記1)通常運転工程においては、上記マイクロナノバブルが植物9の毛細根に付着するので、各種ミネラルの毛細根細胞内へ取り込みを容易にすることができる。したがって、上記マイクロナノバブルによって根からの栄養吸収が促進され、結果として根を急成長させることができる。その結果、本除菌可能な水耕栽培装置によれば、植物9成長が早く、病原菌によって汚染され難い水耕栽培を行うことができるのである。
【0106】
・第2実施の形態
図2は、本実施の形態の除菌可能な水耕栽培装置における構成を示す図である。本実施の形態は、上記第1実施の形態と比較して、上記第1実施の形態における急速ろ過機8が削除されている点において異なる。したがって、上記第1実施の形態と同じ部材については、同じ符号を付けて詳細説明は省略する。以下においては、上記第1実施の形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0107】
上述したように、本実施の形態においては、上記第1実施の形態における急速ろ過機8が削除されている。したがって、水耕液14中の浮遊物質が除去されないことになる。すなわち、本実施の形態は、水耕液14中の浮遊物質が少ない場合に適用される実施の形態である。
【0108】
植物の種類によっては、上記水耕液14中における窒素,リンおよび各種ミネラルの濃度が低く、水耕液14に浮遊物質が殆ど発生しない場合がある。その場合の実施の形態が第2実施の形態なのである。
【0109】
本実施の形態によれば、上記急速ろ過機8が設置されていないので、イニシャルコストを低減することができる。
【0110】
・第3実施の形態
図3は、本実施の形態の除菌可能な水耕栽培装置における構成を示す図である。本実施の形態は、上記第1実施の形態と比較して、上記第1実施の形態におけるナノバブル水槽4にポリ塩化ビニリデン充填物61が充填され、マイクロナノバブル水槽5にはポリ塩化ビニリデン充填物62が充填されている点において異なる。したがって、上記第1実施の形態と同じ部材については、同じ符号を付けて詳細説明は省略する。以下においては、上記第1実施の形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0111】
上述したように、本実施の形態においては、上記ナノバブル水槽4とマイクロナノバブル水槽5とに、ポリ塩化ビニリデン充填物61およびポリ塩化ビニリデン充填物62が充填されている。したがって、ポリ塩化ビニリデン充填物61にはナノバブルで活性化された微生物が付着して繁殖する一方、ポリ塩化ビニリデン充填物62にはマイクロナノバブルで活性化された微生物が付着して繁殖する。その結果、水耕液14中の有機物および植物9からの老廃物を、上記活性化された微生物によって微生物分解することができるのである。
【0112】
このように、本実施の形態においては、上記水耕液14中における有機物や老廃物を微生物分解するので、第1活性炭塔6および第2活性炭塔7における有機物負荷を低減することができ、第1活性炭塔6および第2活性炭塔7の容量を設計上小さくすることができる。すなわち、第1活性炭塔6および第2活性炭塔7のイニシャルコストを低減することができるのである。
【0113】
・第4実施の形態
図4は、本実施の形態の除菌可能な水耕栽培装置における構成を示す図である。本実施の形態は、上記第1実施の形態と比較して、上記第1実施の形態におけるナノバブル水槽4に木炭63が収納された収容かご64が充填され、マイクロナノバブル水槽5には木炭65が収納された収容かご66が充填されている点において異なる。したがって、上記第1実施の形態と同じ部材については、同じ符号を付けて詳細説明は省略する。以下においては、上記第1実施の形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0114】
上述したように、本実施の形態においては、上記ナノバブル水槽4とマイクロナノバブル水槽5とに、木炭63,65が収納された収容かご64,66が充填されている。したがって、木炭63にはナノバブルで活性化された微生物が付着して繁殖する一方、木炭65にはマイクロナノバブルで活性化された微生物が付着して繁殖する。その結果、水耕液14中の有機物および植物9からの老廃物を、上記活性化された微生物によって微生物分解できるのである。
【0115】
このように、本実施の形態においては、上記水耕液14中における有機物や老廃物を微生物分解するので、第1活性炭塔6および第2活性炭塔7における有機物負荷を低減することができ、第1活性炭塔6および第2活性炭塔7の容量を設計上小さくすることができる。すなわち、第1活性炭塔6および第2活性炭塔7のイニシャルコストを低減することができるのである。
【0116】
・第5実施の形態
図5は、本実施の形態の除菌可能な水耕栽培装置における構成を示す図である。本実施の形態は、上記第1実施の形態と比較して、上記第1実施の形態における温室建屋3内の笠10とLED照明器具11とが削除されている点において異なる。したがって、上記第1実施の形態と同じ部材については、同じ符号を付けて詳細説明は省略する。以下においては、上記第1実施の形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0117】
上述したように、本実施の形態においては、上記第1実施の形態における笠10とLED照明器具11とが削除されている。したがって、光は自然光を利用して水耕栽培運転を行うことになる。
【0118】
植物の種類によっては、上記自然光でも十分栽培できる植物も多い。その場合の実施の形態が第5実施の形態なのである。
【0119】
本実施の形態によれば、上記笠10とLED照明器具11とが設置されていないので、イニシャルコストおよびランニングコストとしての電気代を節約することができる。
【0120】
・第6実施の形態
図6は、本実施の形態の除菌可能な水耕栽培装置における構成を示す図である。本実施の形態は、上記第1実施の形態と比較して、上記第1実施の形態におけるナノバブル水槽4およびマイクロナノバブル水槽5の後段に、沈澱槽67,沈澱槽汚泥ポンプ68および沈澱槽ピットポンプ69が設けられた沈澱槽ピット70が追加設置されている点において異なる。したがって、上記第1実施の形態と同じ部材については、同じ符号を付けて詳細説明は省略する。以下においては、上記第1実施の形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0121】
上述したように、本実施の形態においては、上記ナノバブル水槽4およびマイクロナノバブル水槽5の後段に、沈澱槽67,沈澱槽汚泥ポンプ68,沈澱槽ピットポンプ69および沈澱槽ピット70が追加設置されている。したがって、急速ろ過機8に水耕液14を導入する前に、水耕液14が吐出配管41および吐出配管44を通過後、沈澱槽67に導入されて、上澄液と沈澱物とに沈降分離される。そして、上記沈殿物は、沈澱槽汚泥ポンプ68によって引き抜かれて処分される。また、上記上澄液としての水耕液14は、沈澱槽ピット70に流入した後、バルブ71を介して沈澱槽ピットポンプ69によって急速ろ過機8に導入されて、少量残存している浮遊物質が除去処理される。
【0122】
上記ナノバブル水槽4およびマイクロナノバブル水槽5において、水耕液14中の有機物および植物9からの老廃物が強力に酸化処理されると、浮遊物質が発生し易くなる。本実施の形態によれば、上記ナノバブル水槽4およびマイクロナノバブル水槽5の後段に沈澱槽67を配置しているので、上記発生した浮遊物質を沈澱物として処分することができる。したがって、後工程である急速ろ過機8の閉塞原因となる上記浮遊物質を予め除去して、急速ろ過機8の閉塞を防止することができるのである。
【0123】
尚、上記各実施の形態においては、上述した1)通常運転工程、2)準除菌工程、3)除菌工程の総てを実行可能な構成を有している。しかしながら、この発明は、これに限定されるものではなく、上記3工程のうちの何れか1工程のみを実行可能な構成を有していても一向に差し支えない。上述したように、何れの工程においても、マイクロナノバブル,ナノバブルあるいはオゾンナノバブルによる水耕液14の除菌、および、マイクロナノバブルミスト,ナノバブルミストあるいはオゾンナノバブルミストによる温室建屋3内の空気および植物9に対する除菌を行うことができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】この発明の除菌可能な水耕栽培装置における構成を示す図である。
【図2】図1とは異なる除菌可能な水耕栽培装置における構成を示す図である。
【図3】図1および図2とは異なる除菌可能な水耕栽培装置における構成を示す図である。
【図4】図1乃至図3とは異なる除菌可能な水耕栽培装置における構成を示す図である。
【図5】図1乃至図4とは異なる除菌可能な水耕栽培装置における構成を示す図である。
【図6】図1乃至図5とは異なる除菌可能な水耕栽培装置における構成を示す図である。
【符号の説明】
【0125】
1…除菌可能な水耕栽培装置、
2…水耕栽培槽、
3…温室建屋、
4…ナノバブル水槽、
5…マイクロナノバブル水槽、
6…第1活性炭塔、
7…第2活性炭塔、
8…急速ろ過機、
9…植物、
11…LED照明器具、
12…信号線、
13…シーケンサー、
14…水耕液、
16…植物支持かご、
17…水耕栽培ベッド、
19…気液混合循環ポンプ、
20…水中ポンプ型マイクロナノバブル発生機、
21…オゾン発生機、
26,35…ファン、
27,36…ダクト、
29…ナノバブル発生機、
30…ニードルバルブ、
31…マイクロバブル発生部、
32…気体剪断部、
33…ナノバブル吐出口、
34…ナノバブルミスト、
37…ナノバブル水槽ポンプ、
38…マイクロナノバブル水槽ポンプ、
53…スプレーノズル、
54…水耕液のミスト、
61,62…ポリ塩化ビニリデン充填物、
63,65…木炭、
64,66…収容かご、
67…沈澱槽、
68…沈澱槽汚泥ポンプ、
69…沈澱槽ピットポンプ、
70…沈澱槽ピット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部が建屋によって覆われると共に、導入された水耕液の水面に植物を栽培するための水耕ベッドが浮設された水耕栽培槽と、
マイクロバブルとナノバブルとが混合されたマイクロナノバブルを発生するマイクロナノバブル発生機が設置されると共に、導入された上記水耕液にマイクロナノバブルを含有させるためのマイクロナノバブル水槽と、
活性炭が充填されると共に、導入された上記水耕液中の有機物および植物の老廃物を上記活性炭に付着して繁殖している微生物によって分解するための活性炭塔と、
上記水耕液を、上記水耕栽培槽,上記マイクロナノバブル水槽および上記活性炭塔の間でこの順序に循環させる循環装置と
を備えたことを特徴とする除菌可能な水耕栽培装置。
【請求項2】
上部が建屋によって覆われると共に、導入された水耕液の水面に植物を栽培するための水耕ベッドが浮設された水耕栽培槽と、
ナノバブルを発生するナノバブル発生機が設置されると共に、導入された上記水耕液にナノバブルを含有させるためのナノバブル水槽と、
活性炭が充填されると共に、導入された上記水耕液中の有機物および植物の老廃物を上記活性炭に付着して繁殖している微生物によって分解するための活性炭塔と、
上記水耕液を、上記水耕栽培槽,上記ナノバブル水槽および上記活性炭塔の間でこの順序に循環させる循環装置と
を備えたことを特徴とする除菌可能な水耕栽培装置。
【請求項3】
請求項2に記載の除菌可能な水耕栽培装置において、
上記ナノバブル発生機に連結されると共に、発生したオゾンガスを上記ナノバブル発生機に送出してオゾンガスが取り入れられたナノバブルであるオゾンナノバブルを発生させて、上記ナノバブル水槽に導入された上記水耕液にオゾンナノバブルを含有させるオゾン発生機を備えた
ことを特徴とする除菌可能な水耕栽培装置。
【請求項4】
請求項1に記載の除菌可能な水耕栽培装置において、
ナノバブルを発生するナノバブル発生機が設置されると共に、導入された上記水耕液にナノバブルを含有させるためのナノバブル水槽と、
上記ナノバブル発生機に連結されると共に、発生したオゾンガスを上記ナノバブル発生機に送出してオゾンガスが取り入れられたナノバブルであるオゾンナノバブルを発生させて、上記ナノバブル水槽に導入された上記水耕液にオゾンナノバブルを含有させるオゾン発生機と
を備え、
上記循環装置は、上記水耕液を上記水耕栽培槽,上記マイクロナノバブル水槽および上記活性炭塔の間でこの順序に循環させる第1循環装置と、上記水耕液を上記水耕栽培槽,上記ナノバブル水槽および上記活性炭塔の間でこの順序に循環させる第2循環装置とで、構成されている
ことを特徴とする除菌可能な水耕栽培装置。
【請求項5】
請求項1あるいは請求項2に記載の除菌可能な水耕栽培装置において、
上記水耕栽培槽を覆う上記建屋内の上部に設置されて、気液混合気体に対する耐腐食性を有するLEDを発光源とすると共に、上記水耕ベッドで栽培されている植物に光を照射する照明装置
を備えたことを特徴とする除菌可能な水耕栽培装置。
【請求項6】
請求項1あるいは請求項4に記載の除菌可能な水耕栽培装置において、
上記マイクロナノバブル水槽における上記水耕液の水面よりも上部と上記建屋内の上部とを連通すると共に、上記マイクロナノバブル水槽で発生したマイクロナノバブルを含むミストであるマイクロナノバブルミストを上記建屋内の上部に搬送して上記建屋内に放出するマイクロナノバブルミスト搬送装置
を備えたことを特徴とする除菌可能な水耕栽培装置。
【請求項7】
請求項2あるいは請求項4に記載の除菌可能な水耕栽培装置において、
上記ナノバブル水槽における上記水耕液の水面よりも上部と上記建屋内の上部とを連通すると共に、上記ナノバブル水槽で発生したナノバブルを含むミストであるナノバブルミストを上記建屋内の上部に搬送して上記建屋内に放出するナノバブルミスト搬送装置
を備えたことを特徴とする除菌可能な水耕栽培装置。
【請求項8】
請求項1,請求項2および請求項4の何れか一つに記載の除菌可能な水耕栽培装置において、
上記水耕栽培槽を覆う上記建屋内の上部に設置されたミスト発生器と、
上記活性炭塔で処理された後の上記水耕液を上ミスト発生器に供給して、上記建屋内の空気に上記水耕液のミストを噴霧させる水耕液供給装置と
を備えたことを特徴とする除菌可能な水耕栽培装置。
【請求項9】
請求項1に記載の除菌可能な水耕栽培装置において、
上記マイクロナノバブル発生機は、水中ポンプ型マイクロナノバブル発生機である
ことを特徴とする除菌可能な水耕栽培装置。
【請求項10】
請求項2あるいは請求項4に記載の除菌可能な水耕栽培装置において、
上記ナノバブル発生機は、気液混合気体剪断方式のナノバブル発生機であって、マイクロバブル発生部を有する気液混合循環ポンプと、上記マイクロバブル発生部で発生されたマイクロバブルを流体運動によって剪断する気体剪断部と、上記マイクロバブル発生部に供給する空気量あるいはオゾン量を調整するニードルバルブと、を含んで構成されている
ことを特徴とする除菌可能な水耕栽培装置。
【請求項11】
請求項4に記載の除菌可能な水耕栽培装置において、
上記水耕液の循環経路を、上記第1循環装置によって上記水耕液を上記水耕栽培槽,上記マイクロナノバブル水槽および上記活性炭塔の間でこの順序に循環させる第1循環経路と、上記第2循環装置によって上記水耕液を上記水耕栽培槽,上記ナノバブル水槽および上記活性炭塔の間でこの順序に循環させる第2循環経路と、に切り換える循環経路切換装置と、
上記循環経路切換装置,上記マイクロナノバブル発生機,上記ナノバブル発生機および上記オゾン発生機を制御して、上記水耕栽培槽からの上記水耕液を上記マイクロナノバブル水槽に導入して上記マイクロナノバブルを含有させて除菌する通常運転と、上記水耕栽培槽からの上記水耕液を上記ナノバブル水槽に導入して上記ナノバブルを含有させて除菌する準除菌運転と、上記水耕栽培槽からの上記水耕液を上記ナノバブル水槽に導入すると共に上記オゾン発生機を駆動して上記オゾンナノバブルを含有させて除菌する除菌運転と、の何れかを、切り換え実行する運転制御部と
を備えたことを特徴とする除菌可能な水耕栽培装置。
【請求項12】
請求項4に記載の除菌可能な水耕栽培装置において、
上記マイクロナノバブル水槽および上記ナノバブル水槽に、充填材が充填されている
ことを特徴とする除菌可能な水耕栽培装置。
【請求項13】
請求項12に記載の除菌可能な水耕栽培装置において、
上記充填材は、ポリ塩化ビニリデン充填物である
ことを特徴とする除菌可能な水耕栽培装置。
【請求項14】
請求項12に記載の除菌可能な水耕栽培装置において、
上記充填材は、木炭である
ことを特徴とする除菌可能な水耕栽培装置。
【請求項15】
請求項4に記載の除菌可能な水耕栽培装置において、
上記マイクロナノバブル水槽および上記ナノバブル水槽の少なくとも一方で処理された上記水耕液が導入されて、上記水耕液を上澄液と沈澱物とに分離する沈澱槽と、
上記沈澱槽によって分離された上記上澄液を上記活性炭塔に搬送する上澄液搬送装置と
を備え、
上記第1循環装置は、上記水耕液を、上記水耕栽培槽,上記マイクロナノバブル水槽,上記沈澱槽および上記活性炭塔の間でこの順序に循環させるようになっており、
上記第2循環装置は、上記水耕液を、上記水耕栽培槽,上記ナノバブル水槽,上記沈澱槽および上記活性炭塔の間でこの順序に循環させるようになっている
ことを特徴とする除菌可能な水耕栽培装置。
【請求項16】
請求項11に記載の除菌可能な水耕栽培装置において、
上記水耕栽培槽を覆う上記建屋内の上部に設置されて、気液混合気体に対する耐腐食性を有するLEDを発光源とすると共に、上記水耕ベッドで栽培されている植物に光を照射する照明装置を備え、
上記運転制御部は、上記照明装置を制御して、上記通常運転,上記準除菌運転および上記除菌運転時に、上記照明装置によって上記植物に光を照射させることが可能になっている
ことを特徴とする除菌可能な水耕栽培装置。
【請求項17】
請求項4に記載の除菌可能な水耕栽培装置において、
上記水耕ベッドで栽培される上記植物は、わさびを含む野菜類,花類あるいは薬用植物類の内の少なくとも何れか一つ
であることを特徴とする除菌可能な水耕栽培装置。
【請求項18】
請求項4に記載の上記水耕栽培槽,上記マイクロナノバブル水槽,上記ナノバブル水槽,上記活性炭塔,上記オゾン発生機,上記第1循環装置および上記第2循環装置
を備え、
上記第1循環装置によって、上記水耕液を上記水耕栽培槽,上記マイクロナノバブル水槽および上記活性炭塔の間でこの順序に循環させる第1循環と、上記第2循環装置によって、上記水耕液を上記水耕栽培槽,上記ナノバブル水槽および上記活性炭塔の間でこの順序に循環させる第2循環とを、適宜切り換え行うと共に、
上記第2循環を行うに際して、上記オゾン発生機の動作および停止を適宜切り換え行うことによって、
上記水耕栽培槽からの上記水耕液に上記マイクロナノバブルを含有させて除菌する通常運転と、上記水耕栽培槽からの上記水耕液に上記ナノバブルを含有させて除菌する準除菌運転と、上記水耕栽培槽からの上記水耕液に上記オゾンナノバブルを含有させて除菌する除菌運転と、の何れかを行い、
上記除菌された上記水耕液を上記水耕栽培槽に導入して再利用する
ことを特徴とする水耕栽培方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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