陽電子放出コンピュータ断層撮影装置及びX線CT(ComputedTomography)装置
【課題】高計数率時にデータ量の調整を適切に行うことができる陽電子放出コンピュータ断層撮影装置及びX線CT装置を提供することである。
【解決手段】実施の形態の陽電子放出コンピュータ断層撮影装置は、検出器と、計数率測定部と、生成部と、制御部とを備える。検出器は、消滅放射線を検出する。計数率測定部は、前記検出器にて消滅放射線を検出するイベントの計数率を測定する。生成部は、前記検出器にて検出された消滅放射線のデータを前記イベント毎に生成する。制御部は、前記計数率が閾値を上回ると、前記消滅放射線のエネルギー値に応じて、前記データの転送を制御する。
【解決手段】実施の形態の陽電子放出コンピュータ断層撮影装置は、検出器と、計数率測定部と、生成部と、制御部とを備える。検出器は、消滅放射線を検出する。計数率測定部は、前記検出器にて消滅放射線を検出するイベントの計数率を測定する。生成部は、前記検出器にて検出された消滅放射線のデータを前記イベント毎に生成する。制御部は、前記計数率が閾値を上回ると、前記消滅放射線のエネルギー値に応じて、前記データの転送を制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、陽電子放出コンピュータ断層撮影装置及びX線CT装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、核医学イメージング装置として、陽電子放出コンピュータ断層撮影(PET(Positron Emission computed Tomography))装置が知られている。PET装置による撮影においては、陽電子放出核種で標識された化合物や放射性医薬品が被検体に投与される。投与された化合物や放射性医薬品は被検体内を移動し、陽電子放出核種が、被検体内の生体組織に取り込まれる。この陽電子放出核種が陽電子を放出し、放出された陽電子は、電子と結合して消滅する。このとき、陽電子は、一対の消滅放射線(ガンマ線、消滅ガンマ線とも称する)をほぼ反対方向に放出する。一方、PET装置は、被検体の周囲にリング状に配置された検出器を用いて消滅放射線を検出し、検出結果から同時計数情報(Coincidence List)を生成する。そして、PET装置は、生成した同時計数情報を用いて逆投影処理による再構成を行い、PET画像を生成する。
【0003】
ところで、PET装置は、検出結果から同時計数情報を生成する過程において、検出器の出力信号に基づきデータを生成し、生成したデータを後段の処理に向けて転送する。この転送や後段の処理にはハードウェアの制限が伴うため、通常、PET装置は、データを記憶するバッファを備えることで、転送するデータ量を調整する。もっとも、消滅放射線を検出するイベントの計数率(単位時間に発生したイベントの数)が高い時(以下、高計数率時)には、適切な調整が行われないこともある。なお、フォトンカウンティング(Photon Counting)型の検出器を備えたX線CT装置においても、同様の事態が生じ得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】(社)日本画像医療システム工業会編集「医用画像・放射線機器ハンドブック」名古美術印刷株式会社 平成13年、P.190-191
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、高計数率時にデータ量の調整を適切に行うことができる陽電子放出コンピュータ断層撮影装置及びX線CT装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施の形態の陽電子放出コンピュータ断層撮影装置は、検出器と、計数率測定部と、生成部と、制御部とを備える。検出器は、消滅放射線を検出する。計数率測定部は、前記検出器にて消滅放射線を検出するイベントの計数率を測定する。生成部は、前記検出器にて検出された消滅放射線のデータを前記イベント毎に生成する。制御部は、前記計数率が閾値を上回ると、前記消滅放射線のエネルギー値に応じて、前記データの転送を制御する。
【0007】
また、実施の形態のX線CT装置は、フォトンカウンティング型検出器と、計数率測定部と、生成部と、制御部とを備える。検出器は、X線を検出する。計数率測定部は、前記検出器にてX線を検出するイベントの計数率を測定する。生成部は、前記検出器にて検出されたX線のデータを前記イベント毎に生成する。制御部は、前記計数率が閾値を上回ると、前記X線のエネルギー値に応じて、前記データの転送を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、第1の実施形態に係るPET装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、第1の実施形態に係る検出器モジュールを説明するための図である。
【図3】図3は、第1の実施形態に係るイベントデータ収集部の構成を示すブロック図である。
【図4】図4は、第1の実施形態に係るイベントデータの例である。
【図5】図5は、第1の実施形態に係るエネルギーウィンドウを説明するための図である。
【図6】図6は、第1の実施形態に係るエネルギーウィンドウを説明するための図である。
【図7】図7は、第1の実施形態に係るエネルギーウィンドウを説明するための図である。
【図8】図8は、第1の実施形態に係るイベントデータ量調整部による処理手順を示すフローチャートである。
【図9】図9は、第2の実施形態に係るX線CT装置の構成を示すブロック図である。
【図10】図10は、第2の実施形態に係るイベントデータ収集部の構成を示すブロック図である。
【図11】図11は、第2の実施形態に係る検出器とX線との関係を説明するための図である。
【図12】図12は、第2の実施形態に係るエネルギーウィンドウを説明するための図である。
【図13】図13は、第2の実施形態に係るエネルギーウィンドウを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態の陽電子放出コンピュータ断層撮影装置及びX線CT装置を図面を参照して説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
第1の実施形態を説明する。第1の実施形態に係るPET装置100は、高計数率時、消滅放射線のエネルギー値に応じてイベントデータの転送を制御する。すなわち、単位時間に発生したイベントの数が多い時は、イベント毎に生成されるイベントデータのデータ量も多い。このため、計数率の高さを考慮せずにイベントデータの転送を行うと、例えば後段の処理のいずれかの段階でオーバーフローが発生し、イベントデータが無作為に失われるおそれがある。
【0011】
この点、第1の実施形態に係るPET装置100は、高計数率時、消滅放射線のエネルギー値に応じてイベントデータの転送を制御するので、イベントデータが無作為に失われることがない。また、エネルギー値による選別であるので、有用なイベントデータが失われるおそれが少ない。第1の実施形態に係るPET装置100は、かかる制御を、後述する検出器モジュール14が備えるDAS(Data Acquisition System)(イベントデータ収集部15に対応)にて実現する。以下、全体の構成を説明した後に、イベントデータ収集部15の構成を説明する。
【0012】
図1は、第1の実施形態に係るPET装置100の構成を示すブロック図である。図1に示すように、第1の実施形態に係るPET装置100は、架台装置10及びコンソール装置16を有する。
【0013】
図1に示すように、架台装置10は、天板11と、寝台12と、寝台駆動部13と、複数の検出器モジュール14とを有する。また、架台装置10は、撮影口となる空洞を有する。天板11は、被検体Pが横臥するベッドであり、寝台12の上に配置される。寝台駆動部13は、後述する寝台制御部23による制御の下、天板11を移動させる。例えば、寝台駆動部13は、天板11を移動させることにより、被検体Pを架台装置10の撮影口内に移動させる。
【0014】
検出器モジュール14は、被検体Pから放出される消滅放射線を検出する。図1に示すように、検出器モジュール14は、架台装置10において、被検体Pの周囲をリング状に取り囲むように複数配置される。
【0015】
図2は、第1の実施形態に係る検出器モジュール14を説明するための図である。検出器モジュール14は、フォトンカウンティング型かつアンガー型の検出器であり、図2に示すように、シンチレータ141と、光電子増倍管(PMT(Photomultiplier Tube))142と、ライトガイド143とを有する。なお、第1の実施形態に係る検出器モジュール14は一例に過ぎず、例えば光電子増倍管の替わりに半導体を有するものでもよい。
【0016】
シンチレータ141は、被検体Pから放出されて入射した消滅放射線を可視光(以下、シンチレーション光)に変換し、変換したシンチレーション光を出力する。シンチレータ141は、例えばNaI(Sodium Iodide)、BGO(Bismuth Germanate)、LYSO(Lutetium Yttrium Oxyorthosilicate)、LSO(Lutetium Oxyorthosilicate)、LGSO(Lutetium Gadolinium Oxyorthosilicate)などのシンチレータ結晶によって形成され、図2に示すように、2次元に配列される。光電子増倍管142は、シンチレータ141から出力されたシンチレーション光を増倍して電気信号に変換する。図2に示すように、光電子増倍管142は、複数配置される。ライトガイド143は、シンチレータ141から出力されたシンチレーション光を光電子増倍管142に伝達する。ライトガイド143は、例えば光透過性に優れたプラスチック素材などによって形成される。
【0017】
なお、光電子増倍管142は、シンチレーション光を受光し光電子を発生させる光電陰極、発生した光電子を加速する電場を与える多段のダイノード、及び、電子の流れ出し口である陽極を有する。光電効果により光電陰極から放出された電子は、ダイノードに向って加速されてダイノードの表面に衝突し、複数の電子を叩き出す。この現象が多段のダイノードに渡って繰り返されることにより、なだれ的に電子数が増倍され、陽極での電子数は、約100万にまで達する。かかる例では、光電子増倍管142の利得率は、100万倍となる。また、なだれ現象を利用した増幅のためにダイノードと陽極との間には、通常1000ボルト以上の電圧が印加される。
【0018】
このように、検出器モジュール14は、被検体Pから放出された消滅放射線をシンチレータ141によってシンチレーション光に変換し、変換したシンチレーション光を光電子増倍管142によって電気信号(以下、検出器信号)に変換することで、被検体Pから放出された消滅放射線を検出する。
【0019】
ところで、第1の実施形態において、複数の検出器モジュール14は、複数のブロックに区分けされ、ブロック毎に、イベントデータ収集部15を有する。例えば、第1の実施形態において、1検出器モジュール14が、1ブロックである。このため、検出器モジュール14は、それぞれ、イベントデータ収集部15を有する。なお、1ブロックと検出器モジュール14との数の対応関係は任意である。また、イベントデータ収集部15については後に詳細に説明する。
【0020】
図1に戻り、コンソール装置16は、入力部17と、表示部18と、システム制御部19と、データ記憶部20と、同時計数情報生成部21と、画像再構成部22と、寝台制御部23とを有する。なお、コンソール装置16が有する各部は、内部バスを介して接続される。
【0021】
入力部17は、PET装置100の操作者によって各種指示や各種設定の入力に用いられるマウスやキーボードなどであり、入力された各種指示や各種設定を、システム制御部19に転送する。表示部18は、操作者によって参照されるモニタなどであり、システム制御部19による制御の下、PET画像を表示したり、操作者から各種指示や各種設定を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)を表示したりする。
【0022】
システム制御部19は、架台装置10及びコンソール装置16を制御することによって、PET装置100の全体制御を行う。例えば、システム制御部19は、PET装置100における撮影を制御する。
【0023】
データ記憶部20は、PET装置100において用いられる各種データを記憶する。例えば、データ記憶部20は、架台装置10から転送されたイベントデータ、同時計数情報生成部21によって生成された同時計数情報、画像再構成部22によって再構成されたPET画像などを記憶する。なお、データ記憶部20は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(flash memory)などの半導体メモリ素子や、ハードディスク、光ディスクなどによって実現される。
【0024】
同時計数情報生成部21は、イベントデータ収集部15によって収集されたイベントデータを用いて同時計数情報を生成する。具体的には、同時計数情報生成部21は、データ記憶部20に格納されたイベントデータを読み出し、陽電子から放出された一対の消滅放射線が同時に計数されたイベントデータのペアを検索する。また、同時計数情報生成部21は、検索したイベントデータのペアを同時計数情報として生成し、生成した同時計数情報をデータ記憶部20に格納する。
【0025】
画像再構成部22は、PET画像を再構成する。具体的には、画像再構成部22は、データ記憶部20に格納された同時計数情報を投影データとして読み出し、読み出した投影データを逆投影処理することで、PET画像を再構成する。また、画像再構成部22は、再構成したPET画像をデータ記憶部20に格納する。寝台制御部23は、寝台駆動部13を制御する。
【0026】
なお、上述した同時計数情報生成部21、画像再構成部22、及びシステム制御部19の各部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)などの集積回路、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)などの電子回路によって実現される。
【0027】
続いて、第1の実施形態に係るイベントデータ収集部15について詳細に説明する。図3は、第1の実施形態に係るイベントデータ収集部15の構成を示すブロック図である。図3に示すように、イベントデータ収集部15は、A/D(Analog/Digital)変換器15aと、バッファ15bと、計数率測定部15cと、イベントデータ量調整部15dとを有する。以下、各部の動作を説明する。
【0028】
A/D変換器15aは、イベントデータ15fをイベント毎に生成する。具体的には、A/D変換器15aは、アナログデータである検出器信号15eの入力を受け付けると、デジタルデータに変換してイベントデータ15fを生成し、生成したイベントデータ15fをバッファ15bに出力する。このイベントデータ15fには、消滅放射線の検出位置(例えば検出器モジュール14の識別情報やシンチレータ141の識別情報など)、エネルギー値(例えば検出器信号15eの強度など)、及び検出時間(例えば絶対時刻、撮影開始からの経過時間など)が含まれる。
【0029】
図4は、第1の実施形態に係るイベントデータ15fの例である。図4に示すように、イベントデータ15fは、例えば、『モジュールID』及び『シンチレータID』(検出位置)、『エネルギー値』、及び『検出時間』の値である、『D1』、『P1』、『E1』、及び『T1』を有する。
【0030】
また、A/D変換器15aは、検出器信号15eの入力を受け付けると、1つのパルス信号15gを生成し、生成したパルス信号15gを計数率測定部15cに出力する。なお、A/D変換器15aは、時間の経過とともに複数の検出器信号15eの入力を受け付けるが、入力を受け付ける毎に1つのパルス信号15gを生成する。
【0031】
バッファ15bは、イベントデータ15fを一時的に格納する。具体的には、バッファ15bは、イベントデータ15fの入力を受け付けると、書き込み信号(図示を省略)に従ってこれを格納する。また、バッファ15bは、読み出し信号(図示を省略)に従って、格納中のイベントデータ15fを出力する。
【0032】
計数率測定部15cは、イベントの計数率を測定する。具体的には、計数率測定部15cは、単位時間に入力されるパルス信号15gの数を、クロック信号(図示を省略)を用いて計数し、単位時間に発生したイベントの数を示す計数率情報15hを生成する。また、計数率測定部15cは、生成した計数率情報15hをイベントデータ量調整部15dに出力する。なお、第1の実施形態に係る計数率測定部15cは、定期的に計数率情報15hを生成し、出力するものとして説明するが、これに限られるものではない。例えば、計数率測定部15cは、高計数率時にのみ(例えば後述する第1の閾値を超えた場合にのみ)、計数率情報15hを出力する手法であってもよい。
【0033】
イベントデータ量調整部15dは、消滅放射線のエネルギー値に応じてイベントデータの転送を制御する。具体的には、第1の実施形態に係るイベントデータ量調整部15dは、計数率の閾値及びエネルギーウィンドウを段階的に設定する。そして、イベントデータ量調整部15dは、計数率情報15hの入力を受け付けると、計数率が閾値を上回るか否かを判定し、上回ると判定すると、イベントデータ15fを後段の処理に向けて転送するか否かを、各イベントデータ15fが有するエネルギー値に応じて制御する。この結果、後段の処理に向けて転送されるイベントデータ15fのデータ量がフレキシブルに調整される。
【0034】
図5〜7は、第1の実施形態に係るエネルギーウィンドウを説明するための図である。横軸は、各イベントデータ15fが有するエネルギー値を示す。縦軸は、エネルギー値毎に分類されたイベントデータ15fの数(イベント数に対応)を示す。通常、バッファ15bには、図5に示すように、様々なエネルギー値を有するイベントデータ15fが順次格納される。
【0035】
第1の実施形態に係るイベントデータ量調整部15dは、計数率について、第1の閾値及び第2の閾値を設ける。第2の閾値は、第1の閾値よりも高計数率である。そして、イベントデータ量調整部15dは、「第1の閾値を下回る段階」、すなわち、計数率が相対的に低い段階では、図5に示すように、全エネルギーウィンドウを開放し、バッファ15bに格納されたイベントデータ15f全てを、選別することなく後段の処理に向けて転送する。
【0036】
また、イベントデータ量調整部15dは、「第1の閾値を上回り、第2の閾値を下回る段階」、すなわち、計数率が比較的高い段階では、図6に示すように、例えばエネルギーウィンドウの下限値及び上限値を変更することでエネルギーウィンドウの開口幅を1/2に狭める。そして、イベントデータ量調整部15dは、開口幅を狭めた第1のエネルギーウィンドウ内のエネルギー値を有するイベントデータ15fのみを後段の処理に向けて転送する。一方、イベントデータ量調整部15dは、第1のエネルギーウィンドウ外のエネルギー値を有するイベントデータ15f(図6の網掛け部分)を転送せずに破棄する。
【0037】
また、イベントデータ量調整部15dは、「第2の閾値を上回る段階」、すなわち、計数率が相当程度に高い段階では、図7に示すように、例えばエネルギーウィンドウの下限値及び上限値を更に変更することでエネルギーウィンドウの開口幅を1/4に狭める。そして、イベントデータ量調整部15dは、開口幅を狭めた第2のエネルギーウィンドウ内のエネルギー値を有するイベントデータ15fのみを後段の処理に向けて転送する。一方、イベントデータ量調整部15dは、第2のエネルギーウィンドウ外のエネルギー値を有するイベントデータ15f(図7の網掛け部分)を転送せずに破棄する。
【0038】
図8は、第1の実施形態に係るイベントデータ量調整部15dによる処理手順を示すフローチャートである。図8に示すように、イベントデータ量調整部15dは、計数率情報15hの入力を受け付けると(ステップS101、Yes)、計数率情報15hが示す計数率が、第1の閾値を上回るか否かを判定する(ステップS102)。
【0039】
第1の閾値を下回る場合(ステップS102、No)、イベントデータ量調整部15dは、全エネルギーウィンドウを開放し、転送する(ステップS103)。すなわち、イベントデータ量調整部15dは、読み出し信号(図示を省略)に従ってバッファ15bに格納されたイベントデータ15fを読み出し、後段の処理に向けて転送するが、バッファ15bに格納されたイベントデータ15f全てを選別することなく転送する。
【0040】
ステップS102において第1の閾値を上回る場合(ステップS102、Yes)、イベントデータ量調整部15dは、計数率情報15hが示す計数率が、第2の閾値を上回るか否かを判定する(ステップS104)。
【0041】
第2の閾値を下回る場合(ステップS104、No)、イベントデータ量調整部15dは、第1のエネルギーウィンドウ(図6を参照)によりデータ量を調整し、転送する(ステップS105)。すなわち、イベントデータ量調整部15dは、バッファ15bに格納された各イベントデータ15fが有するエネルギー値を参照し、第1のエネルギーウィンドウ内であるか否かを判定する。そして、イベントデータ量調整部15dは、第1のエネルギーウィンドウ内であれば、イベントデータ15fを転送し、第1のエネルギーウィンドウ外であれば、これを転送しない。
【0042】
ステップS104において第2の閾値を上回る場合(ステップS104、Yes)、イベントデータ量調整部15dは、第2のエネルギーウィンドウ(図7を参照)によりデータ量を調整し、転送する(ステップS106)。すなわち、イベントデータ量調整部15dは、バッファ15bに格納された各イベントデータ15fが有するエネルギー値を参照し、第2のエネルギーウィンドウ内であるか否かを判定する。そして、イベントデータ量調整部15dは、第2のエネルギーウィンドウ内であれば、イベントデータ15fを転送し、第2のエネルギーウィンドウ外であれば、これを転送しない。
【0043】
また、第1の実施形態に係るイベントデータ量調整部15dは、計数率情報15hの入力を定期的に受け付ける。このため、イベントデータ量調整部15dは、一旦エネルギーウィンドウの開口幅を狭めた後に受け付けた計数率情報15hが、例えば計数率が相対的に低い段階であることを示す場合には、再び全エネルギーウィンドウを開放する。なお、高計数率時にのみ計数率情報15hの入力を受け付ける手法の場合、例えば、イベントデータ量調整部15dは、所定時間経過後、再び全エネルギーウィンドウを開放してもよい。あるいは、イベントデータ量調整部15dは、時間の経過に応じて、第2のエネルギーウィンドウ、第1のエネルギーウィンドウ、全エネルギーウィンドウの開放、のように、順次エネルギーウィンドウを開放してもよい。
【0044】
また、第1の実施形態において示したエネルギーウィンドウは例示に過ぎない。例えば、複数の閾値を設けることなく1つの閾値によって運用してもよい。また、例えば、第3の閾値、第4の閾値など、更に多くの閾値を設定し、各段階のエネルギーウィンドウの開口幅を更に細かく設定してもよい。
【0045】
このようなことから、第1の実施形態によれば、高計数率時にデータ量の調整を適切に行うことができる。この結果、高計数率時にも十分な画質を担保することができる。また、第1の実施形態によれば、ペアのイベントデータの双方が転送されるように、有効かつ効率的にデータ量の調整を行うことができる。
【0046】
この点について説明する。仮に、イベントデータが無作為に失われると、n個のイベントデータが失われた場合、ペアのイベントデータとしては2n個失われることになる。このため、画質という観点においてイベントデータを十分に有効活用することができず、アーチファクトのある画像を出力してしまうおそれがある。
【0047】
ここで、ペアのイベントデータは、同等のエネルギー値を有するという性質がある。例を挙げると、例えば「511keV」程度のエネルギー値を有するイベントデータと、例えば「200keV」程度のエネルギー値を有するイベントデータとがある場合、後者は、例えば散乱などによって検出されたイベントデータであると考えられる。すなわち、ペアのイベントデータとして有効なイベントデータは、「511keV」程度のエネルギー値を有するイベントデータであり、例えば「200keV」程度のエネルギー値を有するイベントデータは、そもそも有効なイベントデータではないといえる。そうであるとすると、エネルギー値に応じてイベントデータを選択して後段の処理に転送する第1の実施形態によれば、有効なエネルギー値を有するペアのイベントデータの双方が転送されることになり、有効かつ効率的にデータ量の調整を行うことができる。
【0048】
(第2の実施形態)
第2の実施形態を説明する。第2の実施形態に係るX線CT装置200は、フォトンカウンティング型の検出器を備え、高計数率時、X線のエネルギー値に応じてイベントデータの転送を制御する。すなわち、単位時間に発生したイベントの数が多い時は、イベント毎に生成されるイベントデータのデータ量も多い。このため、計数率の高さを考慮せずにイベントデータの転送を行うと、例えば後段の処理のいずれかの段階でオーバーフローが発生し、イベントデータが無作為に失われるおそれがある。
【0049】
この点、第2の実施形態に係るX線CT装置200は、高計数率時、X線のエネルギー値に応じてイベントデータの転送を制御するので、イベントデータが無作為に失われることがない。また、エネルギー値による選別であるので、有用なイベントデータが失われるおそれが少ない。第2の実施形態に係るX線CT装置200は、かかる制御を、後述する検出器214bが備えるDAS(イベントデータ収集部215に対応)にて実現する。
【0050】
図9は、第2の実施形態に係るX線CT装置200の構成を示すブロック図である。図9に示すように、第2の実施形態に係るX線CT装置200は、架台装置210及びコンソール装置216を有する。
【0051】
図9に示すように、架台装置210は、天板211と、寝台212と、寝台駆動部213と、X線管214aと、検出器214bとを有する。また、架台装置210は、撮影口となる空洞を有する。天板211は、被検体Pが横臥するベッドであり、寝台212の上に配置される。寝台駆動部213は、後述する寝台制御部223による制御の下、天板211を移動させる。例えば、寝台駆動部213は、天板211を移動させることにより、被検体Pを架台装置210の撮影口内に移動させる。
【0052】
X線管214a及び検出器214bは、円環状の回転フレームによって、被検体Pを挟んで対向するように支持され、被検体Pを中心とする円軌道上で連続回転する。X線管214aは、X線を発生し、発生したX線を被検体Pに向けて照射する。検出器214bは、被検体Pを透過したX線や、被検体Pを透過せずに直接入射したX線を検出する。
【0053】
ここで、第2の実施形態に係る検出器214bは、フォトンカウンティング型の検出器214bである。例えば、検出器214bは、第1の実施形態において説明した検出器モジュール14と同様の検出器モジュールを、複数有する。また、第2の実施形態において、検出器214bは、複数のブロックに区分けされ、ブロック毎に、イベントデータ収集部215を有する。例えば、第2の実施形態において、1検出器モジュールが、1ブロックである。このため、検出器モジュールは、それぞれ、イベントデータ収集部215を有する。なお、1ブロックと検出器モジュールとの数の対応関係は任意である。
【0054】
図9に戻り、コンソール装置216は、入力部217と、表示部218と、システム制御部219と、データ記憶部220と、エネルギー分別部221と、画像再構成部222と、寝台制御部223とを有する。なお、コンソール装置216が有する各部は、内部バスを介して接続される。
【0055】
入力部217は、X線CT装置200の操作者によって各種指示や各種設定の入力に用いられるマウスやキーボードなどであり、入力された各種指示や各種設定を、システム制御部219に転送する。表示部218は、操作者によって参照されるモニタなどであり、システム制御部219による制御の下、X線画像を表示したり、操作者から各種指示や各種設定を受け付けるためのGUIを表示したりする。
【0056】
システム制御部219は、架台装置210及びコンソール装置216を制御することによって、X線CT装置200の全体制御を行う。例えば、システム制御部219は、X線CT装置200における撮影を制御する。
【0057】
データ記憶部220は、X線CT装置200において用いられる各種データを記憶する。例えば、データ記憶部220は、架台装置210から転送されたイベントデータ、画像再構成部222によって再構成されたX線画像などを記憶する。なお、データ記憶部220は、例えば、RAM、フラッシュメモリなどの半導体メモリ素子や、ハードディスク、光ディスクなどによって実現される。
【0058】
エネルギー分別部221は、イベントデータ収集部215によって収集されたイベントデータをエネルギー値に応じて分別する。具体的には、エネルギー分別部221は、データ記憶部220に格納されたイベントデータを読み出し、各イベントデータが有するエネルギー値を参照し、各イベントデータをエネルギー値に応じて分別する。そして、エネルギー分別部221は、エネルギー値に応じて分別したイベントデータをデータ記憶部220に格納する。
【0059】
画像再構成部222は、X線画像を再構成する。具体的には、画像再構成部222は、データ記憶部20に格納されたイベントデータ(エネルギー値に応じて分別されたイベントデータ)を投影データとして読み出し、読み出した投影データを逆投影処理することで、X線画像を再構成する。また、画像再構成部222は、再構成したX線画像をデータ記憶部220に格納する。寝台制御部223は、寝台駆動部213を制御する。
【0060】
なお、上述したエネルギー分別部221、画像再構成部222、及びシステム制御部219の各部は、ASICやFPGAなどの集積回路、CPUやMPUなどの電子回路によって実現される。
【0061】
続いて、第2の実施形態に係るイベントデータ収集部215について説明する。図10は、第2の実施形態に係るイベントデータ収集部215の構成を示すブロック図である。図10に示すように、イベントデータ収集部215は、A/D変換器215aと、バッファ215bと、計数率測定部215cと、イベントデータ量調整部215dとを有する。これらの各部は、それぞれ、図3を用いて説明したA/D変換器15aと、バッファ15bと、計数率測定部15cと、イベントデータ量調整部15dとに対応し、同様の機能を有する。
【0062】
すなわち、第2の実施形態に係るイベントデータ量調整部215dは、第1の実施形態に係るイベントデータ量調整部15dと同様、X線のエネルギー値に応じてイベントデータの転送を制御する。具体的には、第2の実施形態に係るイベントデータ量調整部215dは、計数率の閾値及びエネルギーウィンドウを段階的に設定する。そして、イベントデータ量調整部215dは、計数率情報215hの入力を受け付けると、計数率が閾値を上回るか否かを判定し、上回ると判定すると、イベントデータ215fを後段の処理に向けて転送するか否かを、各イベントデータ215fが有するエネルギー値に応じて制御する。この結果、後段の処理に向けて転送されるイベントデータ215fのデータ量がフレキシブルに調整される。なお、エネルギーウィンドウは、図5〜7を用いて説明したものと同様であり、また、イベントデータ量調整部215dによる処理手順は、図8を用いて説明したイベントデータ量調整部15dによる処理手順と同様である。
【0063】
このようなことから、第2の実施形態によれば、高計数率時にデータ量の調整を適切に行うことができる。この結果、高計数率時にも十分な画質を担保することができる。例えば、ストリークアーチファクトを軽減することができる。
【0064】
ここで、第2の実施形態における高計数率時の意味を検討する。図11は、第2の実施形態に係る検出器とX線との関係を説明するための図である。図11に示すように、X線管214aは、被検体Pに向けてX線を照射する。X線管214aによって照射されたX線mは、被検体Pを透過せずに直接検出器214bに入射する。一方、X線管214aによって照射されたX線nは、被検体Pを透過してから検出器214bに入射する。
【0065】
X線の光子数は、被検体Pを透過することで減少する。このため、X線が被検体Pを透過せずに直接検出器214bに入射する場合の方が、被検体Pを透過してから検出器214bに入射する場合よりも、その光子数は多い。すなわち、前者の場合の方が、単位時間に発生するイベントは多く、計数率は高い。また、被検体Pを透過せずに直接検出器214bに入射したX線のイベントデータは、有用性が低いイベントデータであるといえる。
【0066】
そうであるとすると、検出器214bに含まれる複数のブロックのうち、あるブロックにおいて高計数率時となった場合、このブロックの検出器モジュールは、被検体Pを透過しないX線を検出している可能性が高く、このブロックのイベントデータ収集部215は、有用性が低いイベントデータを収集している可能性が高い。このため、第2の実施形態においては、高計数率時となったブロックのイベントデータ収集部215が、エネルギー値に応じてデータの転送を制御し、その他のブロックのイベントデータ収集部215は、このような制御を行わない。
【0067】
すなわち、エネルギー値に応じてデータの転送を制御すること自体、有用性の高いイベントデータを選別しようとするものであるが、第2の実施形態においては、そもそも高計数率時となるブロックであるか否かという点でも、その選別を行っているといえる。なお、上述したように、X線管214a及び検出器214bは、被検体Pを中心とする円軌道上で連続回転するので、どのブロックにおいて高計数率時となるかといった関係も、変動すると考えられる。
【0068】
なお、第2の実施形態において示したエネルギーウィンドウは例示に過ぎない。例えば、複数の閾値を設けることなく1つの閾値によって運用してもよい。また、例えば、第3の閾値、第4の閾値など、更に多くの閾値を設定し、各段階のエネルギーウィンドウの開口幅を更に細かく設定してもよい。
【0069】
更に、図12及び13に示すようなエネルギーウィンドウを設定してもよい。図12及び13は、第2の実施形態に係るエネルギーウィンドウを説明するための図である。例えば、X線CT装置200による撮影は、ある特定のエネルギー値に着目して行われる場合がある。このような場合、例えば、計数率が比較的高い段階では、図12に示すように、エネルギーウィンドウx及びyを開放し、計数率が相当程度高い段階では、図13に示すように、エネルギーウィンドウyのみを開放するなどの設定をしてもよい。なお、この場合にも、複数の閾値を設けることなく1つの閾値によって運用してもよい。あるいは、複数のエネルギーウィンドウを設定するとともに、計数率の段階に応じて各エネルギーウィンドウの開口幅を徐々に狭めるといった運用でもよい。
【0070】
なお、実施形態は、上述した第1及び第2の実施形態に限られるものではない。例えば、第1及び第2の実施形態においては、データ転送の制御は、検出器モジュールが有するイベントデータ収集部内において実行される処理として説明したが、これに限られるものではない。例えば、図1に示すコンソール装置16側や、図9に示すコンソール装置216側においても同様に、データ転送の課題は生じ得る。この場合には、例えば、第1の実施形態で述べた制御や、第2の実施形態で述べた制御などを、コンソール装置16やコンソール装置216において、同様に適用することができる。また、計数率の測定も、第1及び第2の実施形態に示した手法に限られない。例えば、イベントデータが格納されるバッファを監視し、単位時間に書き込まれるイベントデータの数によって計数率を測定してもよい。
【0071】
以上述べた少なくとも一つの実施形態のPET装置によれば、高計数率時にデータ量の調整を適切に行うことができる。この結果、高計数率時にも十分な画質を担保することができる。
【0072】
また、以上述べた少なくとも一つの実施形態のX線CT装置によれば、高計数率時にデータ量の調整を適切に行うことができる。この結果、高計数率時にも十分な画質を担保することができる。
【0073】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0074】
15 イベントデータ収集部
15a A/D変換器
15b バッファ
15c 計数率測定部
15d イベントデータ量調整部
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、陽電子放出コンピュータ断層撮影装置及びX線CT装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、核医学イメージング装置として、陽電子放出コンピュータ断層撮影(PET(Positron Emission computed Tomography))装置が知られている。PET装置による撮影においては、陽電子放出核種で標識された化合物や放射性医薬品が被検体に投与される。投与された化合物や放射性医薬品は被検体内を移動し、陽電子放出核種が、被検体内の生体組織に取り込まれる。この陽電子放出核種が陽電子を放出し、放出された陽電子は、電子と結合して消滅する。このとき、陽電子は、一対の消滅放射線(ガンマ線、消滅ガンマ線とも称する)をほぼ反対方向に放出する。一方、PET装置は、被検体の周囲にリング状に配置された検出器を用いて消滅放射線を検出し、検出結果から同時計数情報(Coincidence List)を生成する。そして、PET装置は、生成した同時計数情報を用いて逆投影処理による再構成を行い、PET画像を生成する。
【0003】
ところで、PET装置は、検出結果から同時計数情報を生成する過程において、検出器の出力信号に基づきデータを生成し、生成したデータを後段の処理に向けて転送する。この転送や後段の処理にはハードウェアの制限が伴うため、通常、PET装置は、データを記憶するバッファを備えることで、転送するデータ量を調整する。もっとも、消滅放射線を検出するイベントの計数率(単位時間に発生したイベントの数)が高い時(以下、高計数率時)には、適切な調整が行われないこともある。なお、フォトンカウンティング(Photon Counting)型の検出器を備えたX線CT装置においても、同様の事態が生じ得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】(社)日本画像医療システム工業会編集「医用画像・放射線機器ハンドブック」名古美術印刷株式会社 平成13年、P.190-191
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、高計数率時にデータ量の調整を適切に行うことができる陽電子放出コンピュータ断層撮影装置及びX線CT装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施の形態の陽電子放出コンピュータ断層撮影装置は、検出器と、計数率測定部と、生成部と、制御部とを備える。検出器は、消滅放射線を検出する。計数率測定部は、前記検出器にて消滅放射線を検出するイベントの計数率を測定する。生成部は、前記検出器にて検出された消滅放射線のデータを前記イベント毎に生成する。制御部は、前記計数率が閾値を上回ると、前記消滅放射線のエネルギー値に応じて、前記データの転送を制御する。
【0007】
また、実施の形態のX線CT装置は、フォトンカウンティング型検出器と、計数率測定部と、生成部と、制御部とを備える。検出器は、X線を検出する。計数率測定部は、前記検出器にてX線を検出するイベントの計数率を測定する。生成部は、前記検出器にて検出されたX線のデータを前記イベント毎に生成する。制御部は、前記計数率が閾値を上回ると、前記X線のエネルギー値に応じて、前記データの転送を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、第1の実施形態に係るPET装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、第1の実施形態に係る検出器モジュールを説明するための図である。
【図3】図3は、第1の実施形態に係るイベントデータ収集部の構成を示すブロック図である。
【図4】図4は、第1の実施形態に係るイベントデータの例である。
【図5】図5は、第1の実施形態に係るエネルギーウィンドウを説明するための図である。
【図6】図6は、第1の実施形態に係るエネルギーウィンドウを説明するための図である。
【図7】図7は、第1の実施形態に係るエネルギーウィンドウを説明するための図である。
【図8】図8は、第1の実施形態に係るイベントデータ量調整部による処理手順を示すフローチャートである。
【図9】図9は、第2の実施形態に係るX線CT装置の構成を示すブロック図である。
【図10】図10は、第2の実施形態に係るイベントデータ収集部の構成を示すブロック図である。
【図11】図11は、第2の実施形態に係る検出器とX線との関係を説明するための図である。
【図12】図12は、第2の実施形態に係るエネルギーウィンドウを説明するための図である。
【図13】図13は、第2の実施形態に係るエネルギーウィンドウを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態の陽電子放出コンピュータ断層撮影装置及びX線CT装置を図面を参照して説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
第1の実施形態を説明する。第1の実施形態に係るPET装置100は、高計数率時、消滅放射線のエネルギー値に応じてイベントデータの転送を制御する。すなわち、単位時間に発生したイベントの数が多い時は、イベント毎に生成されるイベントデータのデータ量も多い。このため、計数率の高さを考慮せずにイベントデータの転送を行うと、例えば後段の処理のいずれかの段階でオーバーフローが発生し、イベントデータが無作為に失われるおそれがある。
【0011】
この点、第1の実施形態に係るPET装置100は、高計数率時、消滅放射線のエネルギー値に応じてイベントデータの転送を制御するので、イベントデータが無作為に失われることがない。また、エネルギー値による選別であるので、有用なイベントデータが失われるおそれが少ない。第1の実施形態に係るPET装置100は、かかる制御を、後述する検出器モジュール14が備えるDAS(Data Acquisition System)(イベントデータ収集部15に対応)にて実現する。以下、全体の構成を説明した後に、イベントデータ収集部15の構成を説明する。
【0012】
図1は、第1の実施形態に係るPET装置100の構成を示すブロック図である。図1に示すように、第1の実施形態に係るPET装置100は、架台装置10及びコンソール装置16を有する。
【0013】
図1に示すように、架台装置10は、天板11と、寝台12と、寝台駆動部13と、複数の検出器モジュール14とを有する。また、架台装置10は、撮影口となる空洞を有する。天板11は、被検体Pが横臥するベッドであり、寝台12の上に配置される。寝台駆動部13は、後述する寝台制御部23による制御の下、天板11を移動させる。例えば、寝台駆動部13は、天板11を移動させることにより、被検体Pを架台装置10の撮影口内に移動させる。
【0014】
検出器モジュール14は、被検体Pから放出される消滅放射線を検出する。図1に示すように、検出器モジュール14は、架台装置10において、被検体Pの周囲をリング状に取り囲むように複数配置される。
【0015】
図2は、第1の実施形態に係る検出器モジュール14を説明するための図である。検出器モジュール14は、フォトンカウンティング型かつアンガー型の検出器であり、図2に示すように、シンチレータ141と、光電子増倍管(PMT(Photomultiplier Tube))142と、ライトガイド143とを有する。なお、第1の実施形態に係る検出器モジュール14は一例に過ぎず、例えば光電子増倍管の替わりに半導体を有するものでもよい。
【0016】
シンチレータ141は、被検体Pから放出されて入射した消滅放射線を可視光(以下、シンチレーション光)に変換し、変換したシンチレーション光を出力する。シンチレータ141は、例えばNaI(Sodium Iodide)、BGO(Bismuth Germanate)、LYSO(Lutetium Yttrium Oxyorthosilicate)、LSO(Lutetium Oxyorthosilicate)、LGSO(Lutetium Gadolinium Oxyorthosilicate)などのシンチレータ結晶によって形成され、図2に示すように、2次元に配列される。光電子増倍管142は、シンチレータ141から出力されたシンチレーション光を増倍して電気信号に変換する。図2に示すように、光電子増倍管142は、複数配置される。ライトガイド143は、シンチレータ141から出力されたシンチレーション光を光電子増倍管142に伝達する。ライトガイド143は、例えば光透過性に優れたプラスチック素材などによって形成される。
【0017】
なお、光電子増倍管142は、シンチレーション光を受光し光電子を発生させる光電陰極、発生した光電子を加速する電場を与える多段のダイノード、及び、電子の流れ出し口である陽極を有する。光電効果により光電陰極から放出された電子は、ダイノードに向って加速されてダイノードの表面に衝突し、複数の電子を叩き出す。この現象が多段のダイノードに渡って繰り返されることにより、なだれ的に電子数が増倍され、陽極での電子数は、約100万にまで達する。かかる例では、光電子増倍管142の利得率は、100万倍となる。また、なだれ現象を利用した増幅のためにダイノードと陽極との間には、通常1000ボルト以上の電圧が印加される。
【0018】
このように、検出器モジュール14は、被検体Pから放出された消滅放射線をシンチレータ141によってシンチレーション光に変換し、変換したシンチレーション光を光電子増倍管142によって電気信号(以下、検出器信号)に変換することで、被検体Pから放出された消滅放射線を検出する。
【0019】
ところで、第1の実施形態において、複数の検出器モジュール14は、複数のブロックに区分けされ、ブロック毎に、イベントデータ収集部15を有する。例えば、第1の実施形態において、1検出器モジュール14が、1ブロックである。このため、検出器モジュール14は、それぞれ、イベントデータ収集部15を有する。なお、1ブロックと検出器モジュール14との数の対応関係は任意である。また、イベントデータ収集部15については後に詳細に説明する。
【0020】
図1に戻り、コンソール装置16は、入力部17と、表示部18と、システム制御部19と、データ記憶部20と、同時計数情報生成部21と、画像再構成部22と、寝台制御部23とを有する。なお、コンソール装置16が有する各部は、内部バスを介して接続される。
【0021】
入力部17は、PET装置100の操作者によって各種指示や各種設定の入力に用いられるマウスやキーボードなどであり、入力された各種指示や各種設定を、システム制御部19に転送する。表示部18は、操作者によって参照されるモニタなどであり、システム制御部19による制御の下、PET画像を表示したり、操作者から各種指示や各種設定を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)を表示したりする。
【0022】
システム制御部19は、架台装置10及びコンソール装置16を制御することによって、PET装置100の全体制御を行う。例えば、システム制御部19は、PET装置100における撮影を制御する。
【0023】
データ記憶部20は、PET装置100において用いられる各種データを記憶する。例えば、データ記憶部20は、架台装置10から転送されたイベントデータ、同時計数情報生成部21によって生成された同時計数情報、画像再構成部22によって再構成されたPET画像などを記憶する。なお、データ記憶部20は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(flash memory)などの半導体メモリ素子や、ハードディスク、光ディスクなどによって実現される。
【0024】
同時計数情報生成部21は、イベントデータ収集部15によって収集されたイベントデータを用いて同時計数情報を生成する。具体的には、同時計数情報生成部21は、データ記憶部20に格納されたイベントデータを読み出し、陽電子から放出された一対の消滅放射線が同時に計数されたイベントデータのペアを検索する。また、同時計数情報生成部21は、検索したイベントデータのペアを同時計数情報として生成し、生成した同時計数情報をデータ記憶部20に格納する。
【0025】
画像再構成部22は、PET画像を再構成する。具体的には、画像再構成部22は、データ記憶部20に格納された同時計数情報を投影データとして読み出し、読み出した投影データを逆投影処理することで、PET画像を再構成する。また、画像再構成部22は、再構成したPET画像をデータ記憶部20に格納する。寝台制御部23は、寝台駆動部13を制御する。
【0026】
なお、上述した同時計数情報生成部21、画像再構成部22、及びシステム制御部19の各部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)などの集積回路、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)などの電子回路によって実現される。
【0027】
続いて、第1の実施形態に係るイベントデータ収集部15について詳細に説明する。図3は、第1の実施形態に係るイベントデータ収集部15の構成を示すブロック図である。図3に示すように、イベントデータ収集部15は、A/D(Analog/Digital)変換器15aと、バッファ15bと、計数率測定部15cと、イベントデータ量調整部15dとを有する。以下、各部の動作を説明する。
【0028】
A/D変換器15aは、イベントデータ15fをイベント毎に生成する。具体的には、A/D変換器15aは、アナログデータである検出器信号15eの入力を受け付けると、デジタルデータに変換してイベントデータ15fを生成し、生成したイベントデータ15fをバッファ15bに出力する。このイベントデータ15fには、消滅放射線の検出位置(例えば検出器モジュール14の識別情報やシンチレータ141の識別情報など)、エネルギー値(例えば検出器信号15eの強度など)、及び検出時間(例えば絶対時刻、撮影開始からの経過時間など)が含まれる。
【0029】
図4は、第1の実施形態に係るイベントデータ15fの例である。図4に示すように、イベントデータ15fは、例えば、『モジュールID』及び『シンチレータID』(検出位置)、『エネルギー値』、及び『検出時間』の値である、『D1』、『P1』、『E1』、及び『T1』を有する。
【0030】
また、A/D変換器15aは、検出器信号15eの入力を受け付けると、1つのパルス信号15gを生成し、生成したパルス信号15gを計数率測定部15cに出力する。なお、A/D変換器15aは、時間の経過とともに複数の検出器信号15eの入力を受け付けるが、入力を受け付ける毎に1つのパルス信号15gを生成する。
【0031】
バッファ15bは、イベントデータ15fを一時的に格納する。具体的には、バッファ15bは、イベントデータ15fの入力を受け付けると、書き込み信号(図示を省略)に従ってこれを格納する。また、バッファ15bは、読み出し信号(図示を省略)に従って、格納中のイベントデータ15fを出力する。
【0032】
計数率測定部15cは、イベントの計数率を測定する。具体的には、計数率測定部15cは、単位時間に入力されるパルス信号15gの数を、クロック信号(図示を省略)を用いて計数し、単位時間に発生したイベントの数を示す計数率情報15hを生成する。また、計数率測定部15cは、生成した計数率情報15hをイベントデータ量調整部15dに出力する。なお、第1の実施形態に係る計数率測定部15cは、定期的に計数率情報15hを生成し、出力するものとして説明するが、これに限られるものではない。例えば、計数率測定部15cは、高計数率時にのみ(例えば後述する第1の閾値を超えた場合にのみ)、計数率情報15hを出力する手法であってもよい。
【0033】
イベントデータ量調整部15dは、消滅放射線のエネルギー値に応じてイベントデータの転送を制御する。具体的には、第1の実施形態に係るイベントデータ量調整部15dは、計数率の閾値及びエネルギーウィンドウを段階的に設定する。そして、イベントデータ量調整部15dは、計数率情報15hの入力を受け付けると、計数率が閾値を上回るか否かを判定し、上回ると判定すると、イベントデータ15fを後段の処理に向けて転送するか否かを、各イベントデータ15fが有するエネルギー値に応じて制御する。この結果、後段の処理に向けて転送されるイベントデータ15fのデータ量がフレキシブルに調整される。
【0034】
図5〜7は、第1の実施形態に係るエネルギーウィンドウを説明するための図である。横軸は、各イベントデータ15fが有するエネルギー値を示す。縦軸は、エネルギー値毎に分類されたイベントデータ15fの数(イベント数に対応)を示す。通常、バッファ15bには、図5に示すように、様々なエネルギー値を有するイベントデータ15fが順次格納される。
【0035】
第1の実施形態に係るイベントデータ量調整部15dは、計数率について、第1の閾値及び第2の閾値を設ける。第2の閾値は、第1の閾値よりも高計数率である。そして、イベントデータ量調整部15dは、「第1の閾値を下回る段階」、すなわち、計数率が相対的に低い段階では、図5に示すように、全エネルギーウィンドウを開放し、バッファ15bに格納されたイベントデータ15f全てを、選別することなく後段の処理に向けて転送する。
【0036】
また、イベントデータ量調整部15dは、「第1の閾値を上回り、第2の閾値を下回る段階」、すなわち、計数率が比較的高い段階では、図6に示すように、例えばエネルギーウィンドウの下限値及び上限値を変更することでエネルギーウィンドウの開口幅を1/2に狭める。そして、イベントデータ量調整部15dは、開口幅を狭めた第1のエネルギーウィンドウ内のエネルギー値を有するイベントデータ15fのみを後段の処理に向けて転送する。一方、イベントデータ量調整部15dは、第1のエネルギーウィンドウ外のエネルギー値を有するイベントデータ15f(図6の網掛け部分)を転送せずに破棄する。
【0037】
また、イベントデータ量調整部15dは、「第2の閾値を上回る段階」、すなわち、計数率が相当程度に高い段階では、図7に示すように、例えばエネルギーウィンドウの下限値及び上限値を更に変更することでエネルギーウィンドウの開口幅を1/4に狭める。そして、イベントデータ量調整部15dは、開口幅を狭めた第2のエネルギーウィンドウ内のエネルギー値を有するイベントデータ15fのみを後段の処理に向けて転送する。一方、イベントデータ量調整部15dは、第2のエネルギーウィンドウ外のエネルギー値を有するイベントデータ15f(図7の網掛け部分)を転送せずに破棄する。
【0038】
図8は、第1の実施形態に係るイベントデータ量調整部15dによる処理手順を示すフローチャートである。図8に示すように、イベントデータ量調整部15dは、計数率情報15hの入力を受け付けると(ステップS101、Yes)、計数率情報15hが示す計数率が、第1の閾値を上回るか否かを判定する(ステップS102)。
【0039】
第1の閾値を下回る場合(ステップS102、No)、イベントデータ量調整部15dは、全エネルギーウィンドウを開放し、転送する(ステップS103)。すなわち、イベントデータ量調整部15dは、読み出し信号(図示を省略)に従ってバッファ15bに格納されたイベントデータ15fを読み出し、後段の処理に向けて転送するが、バッファ15bに格納されたイベントデータ15f全てを選別することなく転送する。
【0040】
ステップS102において第1の閾値を上回る場合(ステップS102、Yes)、イベントデータ量調整部15dは、計数率情報15hが示す計数率が、第2の閾値を上回るか否かを判定する(ステップS104)。
【0041】
第2の閾値を下回る場合(ステップS104、No)、イベントデータ量調整部15dは、第1のエネルギーウィンドウ(図6を参照)によりデータ量を調整し、転送する(ステップS105)。すなわち、イベントデータ量調整部15dは、バッファ15bに格納された各イベントデータ15fが有するエネルギー値を参照し、第1のエネルギーウィンドウ内であるか否かを判定する。そして、イベントデータ量調整部15dは、第1のエネルギーウィンドウ内であれば、イベントデータ15fを転送し、第1のエネルギーウィンドウ外であれば、これを転送しない。
【0042】
ステップS104において第2の閾値を上回る場合(ステップS104、Yes)、イベントデータ量調整部15dは、第2のエネルギーウィンドウ(図7を参照)によりデータ量を調整し、転送する(ステップS106)。すなわち、イベントデータ量調整部15dは、バッファ15bに格納された各イベントデータ15fが有するエネルギー値を参照し、第2のエネルギーウィンドウ内であるか否かを判定する。そして、イベントデータ量調整部15dは、第2のエネルギーウィンドウ内であれば、イベントデータ15fを転送し、第2のエネルギーウィンドウ外であれば、これを転送しない。
【0043】
また、第1の実施形態に係るイベントデータ量調整部15dは、計数率情報15hの入力を定期的に受け付ける。このため、イベントデータ量調整部15dは、一旦エネルギーウィンドウの開口幅を狭めた後に受け付けた計数率情報15hが、例えば計数率が相対的に低い段階であることを示す場合には、再び全エネルギーウィンドウを開放する。なお、高計数率時にのみ計数率情報15hの入力を受け付ける手法の場合、例えば、イベントデータ量調整部15dは、所定時間経過後、再び全エネルギーウィンドウを開放してもよい。あるいは、イベントデータ量調整部15dは、時間の経過に応じて、第2のエネルギーウィンドウ、第1のエネルギーウィンドウ、全エネルギーウィンドウの開放、のように、順次エネルギーウィンドウを開放してもよい。
【0044】
また、第1の実施形態において示したエネルギーウィンドウは例示に過ぎない。例えば、複数の閾値を設けることなく1つの閾値によって運用してもよい。また、例えば、第3の閾値、第4の閾値など、更に多くの閾値を設定し、各段階のエネルギーウィンドウの開口幅を更に細かく設定してもよい。
【0045】
このようなことから、第1の実施形態によれば、高計数率時にデータ量の調整を適切に行うことができる。この結果、高計数率時にも十分な画質を担保することができる。また、第1の実施形態によれば、ペアのイベントデータの双方が転送されるように、有効かつ効率的にデータ量の調整を行うことができる。
【0046】
この点について説明する。仮に、イベントデータが無作為に失われると、n個のイベントデータが失われた場合、ペアのイベントデータとしては2n個失われることになる。このため、画質という観点においてイベントデータを十分に有効活用することができず、アーチファクトのある画像を出力してしまうおそれがある。
【0047】
ここで、ペアのイベントデータは、同等のエネルギー値を有するという性質がある。例を挙げると、例えば「511keV」程度のエネルギー値を有するイベントデータと、例えば「200keV」程度のエネルギー値を有するイベントデータとがある場合、後者は、例えば散乱などによって検出されたイベントデータであると考えられる。すなわち、ペアのイベントデータとして有効なイベントデータは、「511keV」程度のエネルギー値を有するイベントデータであり、例えば「200keV」程度のエネルギー値を有するイベントデータは、そもそも有効なイベントデータではないといえる。そうであるとすると、エネルギー値に応じてイベントデータを選択して後段の処理に転送する第1の実施形態によれば、有効なエネルギー値を有するペアのイベントデータの双方が転送されることになり、有効かつ効率的にデータ量の調整を行うことができる。
【0048】
(第2の実施形態)
第2の実施形態を説明する。第2の実施形態に係るX線CT装置200は、フォトンカウンティング型の検出器を備え、高計数率時、X線のエネルギー値に応じてイベントデータの転送を制御する。すなわち、単位時間に発生したイベントの数が多い時は、イベント毎に生成されるイベントデータのデータ量も多い。このため、計数率の高さを考慮せずにイベントデータの転送を行うと、例えば後段の処理のいずれかの段階でオーバーフローが発生し、イベントデータが無作為に失われるおそれがある。
【0049】
この点、第2の実施形態に係るX線CT装置200は、高計数率時、X線のエネルギー値に応じてイベントデータの転送を制御するので、イベントデータが無作為に失われることがない。また、エネルギー値による選別であるので、有用なイベントデータが失われるおそれが少ない。第2の実施形態に係るX線CT装置200は、かかる制御を、後述する検出器214bが備えるDAS(イベントデータ収集部215に対応)にて実現する。
【0050】
図9は、第2の実施形態に係るX線CT装置200の構成を示すブロック図である。図9に示すように、第2の実施形態に係るX線CT装置200は、架台装置210及びコンソール装置216を有する。
【0051】
図9に示すように、架台装置210は、天板211と、寝台212と、寝台駆動部213と、X線管214aと、検出器214bとを有する。また、架台装置210は、撮影口となる空洞を有する。天板211は、被検体Pが横臥するベッドであり、寝台212の上に配置される。寝台駆動部213は、後述する寝台制御部223による制御の下、天板211を移動させる。例えば、寝台駆動部213は、天板211を移動させることにより、被検体Pを架台装置210の撮影口内に移動させる。
【0052】
X線管214a及び検出器214bは、円環状の回転フレームによって、被検体Pを挟んで対向するように支持され、被検体Pを中心とする円軌道上で連続回転する。X線管214aは、X線を発生し、発生したX線を被検体Pに向けて照射する。検出器214bは、被検体Pを透過したX線や、被検体Pを透過せずに直接入射したX線を検出する。
【0053】
ここで、第2の実施形態に係る検出器214bは、フォトンカウンティング型の検出器214bである。例えば、検出器214bは、第1の実施形態において説明した検出器モジュール14と同様の検出器モジュールを、複数有する。また、第2の実施形態において、検出器214bは、複数のブロックに区分けされ、ブロック毎に、イベントデータ収集部215を有する。例えば、第2の実施形態において、1検出器モジュールが、1ブロックである。このため、検出器モジュールは、それぞれ、イベントデータ収集部215を有する。なお、1ブロックと検出器モジュールとの数の対応関係は任意である。
【0054】
図9に戻り、コンソール装置216は、入力部217と、表示部218と、システム制御部219と、データ記憶部220と、エネルギー分別部221と、画像再構成部222と、寝台制御部223とを有する。なお、コンソール装置216が有する各部は、内部バスを介して接続される。
【0055】
入力部217は、X線CT装置200の操作者によって各種指示や各種設定の入力に用いられるマウスやキーボードなどであり、入力された各種指示や各種設定を、システム制御部219に転送する。表示部218は、操作者によって参照されるモニタなどであり、システム制御部219による制御の下、X線画像を表示したり、操作者から各種指示や各種設定を受け付けるためのGUIを表示したりする。
【0056】
システム制御部219は、架台装置210及びコンソール装置216を制御することによって、X線CT装置200の全体制御を行う。例えば、システム制御部219は、X線CT装置200における撮影を制御する。
【0057】
データ記憶部220は、X線CT装置200において用いられる各種データを記憶する。例えば、データ記憶部220は、架台装置210から転送されたイベントデータ、画像再構成部222によって再構成されたX線画像などを記憶する。なお、データ記憶部220は、例えば、RAM、フラッシュメモリなどの半導体メモリ素子や、ハードディスク、光ディスクなどによって実現される。
【0058】
エネルギー分別部221は、イベントデータ収集部215によって収集されたイベントデータをエネルギー値に応じて分別する。具体的には、エネルギー分別部221は、データ記憶部220に格納されたイベントデータを読み出し、各イベントデータが有するエネルギー値を参照し、各イベントデータをエネルギー値に応じて分別する。そして、エネルギー分別部221は、エネルギー値に応じて分別したイベントデータをデータ記憶部220に格納する。
【0059】
画像再構成部222は、X線画像を再構成する。具体的には、画像再構成部222は、データ記憶部20に格納されたイベントデータ(エネルギー値に応じて分別されたイベントデータ)を投影データとして読み出し、読み出した投影データを逆投影処理することで、X線画像を再構成する。また、画像再構成部222は、再構成したX線画像をデータ記憶部220に格納する。寝台制御部223は、寝台駆動部213を制御する。
【0060】
なお、上述したエネルギー分別部221、画像再構成部222、及びシステム制御部219の各部は、ASICやFPGAなどの集積回路、CPUやMPUなどの電子回路によって実現される。
【0061】
続いて、第2の実施形態に係るイベントデータ収集部215について説明する。図10は、第2の実施形態に係るイベントデータ収集部215の構成を示すブロック図である。図10に示すように、イベントデータ収集部215は、A/D変換器215aと、バッファ215bと、計数率測定部215cと、イベントデータ量調整部215dとを有する。これらの各部は、それぞれ、図3を用いて説明したA/D変換器15aと、バッファ15bと、計数率測定部15cと、イベントデータ量調整部15dとに対応し、同様の機能を有する。
【0062】
すなわち、第2の実施形態に係るイベントデータ量調整部215dは、第1の実施形態に係るイベントデータ量調整部15dと同様、X線のエネルギー値に応じてイベントデータの転送を制御する。具体的には、第2の実施形態に係るイベントデータ量調整部215dは、計数率の閾値及びエネルギーウィンドウを段階的に設定する。そして、イベントデータ量調整部215dは、計数率情報215hの入力を受け付けると、計数率が閾値を上回るか否かを判定し、上回ると判定すると、イベントデータ215fを後段の処理に向けて転送するか否かを、各イベントデータ215fが有するエネルギー値に応じて制御する。この結果、後段の処理に向けて転送されるイベントデータ215fのデータ量がフレキシブルに調整される。なお、エネルギーウィンドウは、図5〜7を用いて説明したものと同様であり、また、イベントデータ量調整部215dによる処理手順は、図8を用いて説明したイベントデータ量調整部15dによる処理手順と同様である。
【0063】
このようなことから、第2の実施形態によれば、高計数率時にデータ量の調整を適切に行うことができる。この結果、高計数率時にも十分な画質を担保することができる。例えば、ストリークアーチファクトを軽減することができる。
【0064】
ここで、第2の実施形態における高計数率時の意味を検討する。図11は、第2の実施形態に係る検出器とX線との関係を説明するための図である。図11に示すように、X線管214aは、被検体Pに向けてX線を照射する。X線管214aによって照射されたX線mは、被検体Pを透過せずに直接検出器214bに入射する。一方、X線管214aによって照射されたX線nは、被検体Pを透過してから検出器214bに入射する。
【0065】
X線の光子数は、被検体Pを透過することで減少する。このため、X線が被検体Pを透過せずに直接検出器214bに入射する場合の方が、被検体Pを透過してから検出器214bに入射する場合よりも、その光子数は多い。すなわち、前者の場合の方が、単位時間に発生するイベントは多く、計数率は高い。また、被検体Pを透過せずに直接検出器214bに入射したX線のイベントデータは、有用性が低いイベントデータであるといえる。
【0066】
そうであるとすると、検出器214bに含まれる複数のブロックのうち、あるブロックにおいて高計数率時となった場合、このブロックの検出器モジュールは、被検体Pを透過しないX線を検出している可能性が高く、このブロックのイベントデータ収集部215は、有用性が低いイベントデータを収集している可能性が高い。このため、第2の実施形態においては、高計数率時となったブロックのイベントデータ収集部215が、エネルギー値に応じてデータの転送を制御し、その他のブロックのイベントデータ収集部215は、このような制御を行わない。
【0067】
すなわち、エネルギー値に応じてデータの転送を制御すること自体、有用性の高いイベントデータを選別しようとするものであるが、第2の実施形態においては、そもそも高計数率時となるブロックであるか否かという点でも、その選別を行っているといえる。なお、上述したように、X線管214a及び検出器214bは、被検体Pを中心とする円軌道上で連続回転するので、どのブロックにおいて高計数率時となるかといった関係も、変動すると考えられる。
【0068】
なお、第2の実施形態において示したエネルギーウィンドウは例示に過ぎない。例えば、複数の閾値を設けることなく1つの閾値によって運用してもよい。また、例えば、第3の閾値、第4の閾値など、更に多くの閾値を設定し、各段階のエネルギーウィンドウの開口幅を更に細かく設定してもよい。
【0069】
更に、図12及び13に示すようなエネルギーウィンドウを設定してもよい。図12及び13は、第2の実施形態に係るエネルギーウィンドウを説明するための図である。例えば、X線CT装置200による撮影は、ある特定のエネルギー値に着目して行われる場合がある。このような場合、例えば、計数率が比較的高い段階では、図12に示すように、エネルギーウィンドウx及びyを開放し、計数率が相当程度高い段階では、図13に示すように、エネルギーウィンドウyのみを開放するなどの設定をしてもよい。なお、この場合にも、複数の閾値を設けることなく1つの閾値によって運用してもよい。あるいは、複数のエネルギーウィンドウを設定するとともに、計数率の段階に応じて各エネルギーウィンドウの開口幅を徐々に狭めるといった運用でもよい。
【0070】
なお、実施形態は、上述した第1及び第2の実施形態に限られるものではない。例えば、第1及び第2の実施形態においては、データ転送の制御は、検出器モジュールが有するイベントデータ収集部内において実行される処理として説明したが、これに限られるものではない。例えば、図1に示すコンソール装置16側や、図9に示すコンソール装置216側においても同様に、データ転送の課題は生じ得る。この場合には、例えば、第1の実施形態で述べた制御や、第2の実施形態で述べた制御などを、コンソール装置16やコンソール装置216において、同様に適用することができる。また、計数率の測定も、第1及び第2の実施形態に示した手法に限られない。例えば、イベントデータが格納されるバッファを監視し、単位時間に書き込まれるイベントデータの数によって計数率を測定してもよい。
【0071】
以上述べた少なくとも一つの実施形態のPET装置によれば、高計数率時にデータ量の調整を適切に行うことができる。この結果、高計数率時にも十分な画質を担保することができる。
【0072】
また、以上述べた少なくとも一つの実施形態のX線CT装置によれば、高計数率時にデータ量の調整を適切に行うことができる。この結果、高計数率時にも十分な画質を担保することができる。
【0073】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0074】
15 イベントデータ収集部
15a A/D変換器
15b バッファ
15c 計数率測定部
15d イベントデータ量調整部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
消滅放射線を検出する検出器と、
前記検出器にて消滅放射線を検出するイベントの計数率を測定する計数率測定部と、
前記検出器にて検出された消滅放射線のデータを前記イベント毎に生成する生成部と、
前記計数率が閾値を上回ると、前記消滅放射線のエネルギー値に応じて、前記データの転送を制御する制御部と
を備えたことを特徴とする陽電子放出コンピュータ断層撮影装置。
【請求項2】
前記制御部は、複数の閾値を段階的に設定し、前記データの転送を許容するエネルギー値の幅が段階的に狭くなるように制御することを特徴とする請求項1に記載の陽電子放出コンピュータ断層撮影装置。
【請求項3】
X線を検出するフォトンカウンティング(Photon Counting)型の検出器と、
前記検出器にてX線を検出するイベントの計数率を測定する計数率測定部と、
前記検出器にて検出されたX線のデータを前記イベント毎に生成する生成部と、
前記計数率が閾値を上回ると、前記X線のエネルギー値に応じて、前記データの転送を制御する制御部と
を備えたことを特徴とするX線CT(Computed Tomography)装置。
【請求項4】
前記制御部は、複数の閾値を段階的に設定し、前記データの転送を許容するエネルギー値の幅が段階的に狭くなるように制御することを特徴とする請求項3に記載のX線CT装置。
【請求項1】
消滅放射線を検出する検出器と、
前記検出器にて消滅放射線を検出するイベントの計数率を測定する計数率測定部と、
前記検出器にて検出された消滅放射線のデータを前記イベント毎に生成する生成部と、
前記計数率が閾値を上回ると、前記消滅放射線のエネルギー値に応じて、前記データの転送を制御する制御部と
を備えたことを特徴とする陽電子放出コンピュータ断層撮影装置。
【請求項2】
前記制御部は、複数の閾値を段階的に設定し、前記データの転送を許容するエネルギー値の幅が段階的に狭くなるように制御することを特徴とする請求項1に記載の陽電子放出コンピュータ断層撮影装置。
【請求項3】
X線を検出するフォトンカウンティング(Photon Counting)型の検出器と、
前記検出器にてX線を検出するイベントの計数率を測定する計数率測定部と、
前記検出器にて検出されたX線のデータを前記イベント毎に生成する生成部と、
前記計数率が閾値を上回ると、前記X線のエネルギー値に応じて、前記データの転送を制御する制御部と
を備えたことを特徴とするX線CT(Computed Tomography)装置。
【請求項4】
前記制御部は、複数の閾値を段階的に設定し、前記データの転送を許容するエネルギー値の幅が段階的に狭くなるように制御することを特徴とする請求項3に記載のX線CT装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−7585(P2013−7585A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138842(P2011−138842)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
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