説明

隙間ゲージの製造方法

【課題】
スロットダイのリップ部の隙間間隔を測定するための隙間ゲージとして、測定部厚みが100μm以下のプラスチック製ゲージを製造する場合、目盛り用の溝を従来の機械的罫書き法で加工するとゲージ基材の破損などを起こし易く、製造得率が低い。
【解決手段】
プラスチックゲージ厚み目盛をエッチング法、もしくは高エネルギービーム削除法の中から選択された方法により形成する。エッチング法としてはアルカリや酸による化学的湿式エッチング、スパッタエッチングなどの物理的ドライエッチングが使用される。また紫外線レーザーや赤外線レーザーなどの高エネルギービームによる分解、融解などによる表面除去などの方法も可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スロットダイを使用して基材に塗布を行う際に、ダイのリップ隙間間隔を測定するための隙間ゲージの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からスロットダイを用いてポリエステルフィルムなどの支持体に塗布を行う場合、隙間ゲージを使用してリップ部の隙間を調整した上で、該リップを通して塗布液を供給することにより、所定の厚さの塗布膜を製造していた。
【0003】
まず、一般的に使用されているスロットダイについて説明する。
図5はスロットダイの断面図である。符号51はスロットダイ本体であり、このスロットダイ本体51は、基材の幅方向に延設された前後一対の部材からなり、これらの部材間には、マニホールド52と呼ばれる空間が形成されている、また、マニホールド52には、塗布液を供給するための図示されていない供給口が、マニホールド52に連通して形成されている。また、このダイ本体の両端は、図示されていないサイドプレートで閉鎖されている。
【0004】
マニホールド52の先端側では、その先端部にて一対のダイリップ53により挟んでスリット54を形成している。このダイリップ53の隙間は、塗布条件と目的とする膜厚に応じて適宜調整される。
【0005】
送液ポンプにより加圧された塗布液は塗布液供給口からマニホールド52の塗布液空間に供給され、更にはスリット54から押し出される。この時、リップ部53の隙間間隔が押し出される塗布膜の厚みを規制し、またスリット54の幅に応じた形状に塗工される。
【0006】
この装置を使用する場合において、リップ部の隙間間隔を設定するに際して、隙間ゲージをリップ部隙間に挿入して隙間間隔をチェックし、その結果を基に塗布条件を調整する必要がある。
【0007】
このようなダイ用の隙間ゲージとして、例えば、先端が薄く根本が厚いテーパー状基材表面に、目盛り線とゲージ厚表示を具備した隙間ゲージを使用する。
【0008】
図1は、前記ゲージの形態の一例を示したものであり、その平面図である。
ゲージ01は根本部分が厚く、先端に行くほど薄くなったテーパー状になっている。各部の厚さを表示するように一定間隔に目盛り線02が刻まれると共に、その厚み数字などのマーク03が表示される。
【0009】
前記ゲージの使用方法は一般の隙間ゲージと同様に、ゲージの根本部分を手で持ち先端からダイリップ部に挿入し押し込む。ダイリップの間隔とゲージ厚みが一致した位置で停止するので、そのときの目盛りの数字を読みとることにより、隙間間隔を測定することが出来る。
【0010】
このような隙間ゲージ材料として例えばステンレスなどの金属を使用すると、取り扱いの際に隙間ゲージがクニックなどの塑性変形しやすく、またダイを傷付けやすい問題があった。スロットダイを傷付けると長時間の熟練した補修が必要であり、そのためクニックを起こしにくく、またダイを傷付けることのないゲージが求められていた。そのためのゲージの基材材質として、例えば本願出願人による特願2005−181379号明細書(特許文献1)に、ポリイミドなどの耐熱性プラスチックが好適に使用されることが記載されている。
【0011】
【特許文献1】特願2005−181379号
【特許文献2】特開平10−97081号
【特許文献3】特開平4−20541号
【特許文献4】特開平4−20539号
【特許文献5】特開平4−15233号
【非特許文献1】プラスチック・データブック(旭化成アミダス(株)「プラスチックス」編集部編、1999年、工業調査会)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1などにみられる従来の隙間ゲージの作製は、基材を所要の形態に加工、研磨後、各部の基材厚みを測定した後、各部の厚さを表示する目盛りが形成されていた。その方法としては、所定の位置に目盛り線を機械的に削り、その凹部を目視可能なように塗装などの方法により着色する罫書きが行われてきた。
【0013】
しかしながら、近年スロットダイによる塗布に対して、乾燥後膜厚が1μm以下、更には0.5μm以下の厚みの薄膜を高速且つ均一に塗布できるよう強く要求されるようになりつつある。そのような薄膜塗布を行うために、(1)塗布液中の固形分濃度を小さくする、(2)スロットダイから支持体表面に供給する塗布液量を少なくする、等の方法が用いられる。(1)の方法は溶剤量が多くなり乾燥工程に負荷がかかるため、塗布液の希釈には限界がある。また(2)の場合には、塗布液量を少なくするためにリップ間隔を狭める必要が生じる。そのため、最近はリップ間隔が100μm以下と極めて小さく調整するケースが増加している。そのような薄膜塗布の場合、リップ部の隙間間隔を測定する隙間ゲージには、目盛りをつける部分の少なくとも一部の厚みが100μm以下である必要がある。このような薄型ゲージを前記特許文献1で示されるようなプラスチック基材で作成しようとすると、従来からの機械的切削による罫書き法では、プラスチック基材が折れ曲がりや破損を起しやすい。そのためプラスチック基材を用いたゲージの製造歩留まりが著しく低下し、その解決が強く望まれていた。
【0014】
本発明は、プラスチック基材を用いた隙間ゲージの目盛り形成を化学的エッチング法もしくは物理的エッチング法により行うことで、容易に精度よく薄型隙間ゲージを製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、塗布用スロットダイのリップ間隔を測定するための隙間ゲージの目盛りを形成する方法であって、エッチング法もしくは高エネルギービーム削除法の中から選択された方法により、ゲージ厚み目盛りを形成することを特徴とするゲージ製造方法である。
【0016】
本発明は、前記方法において厚み測定部分の少なくとも一部が100μm以下の厚みの部分を含むことを特徴とするゲージである。
【0017】
本発明はプラスチック基材上に設けたフォトレジストを露光、現像した後、露出したプラスチック基材表面を加工することにより目盛りを形成することを特徴とするゲージ製造製方法である。
【0018】
本発明はスクリーン印刷により形成したフォトレジストパターンを露光後、該パターンをエッチングレジストとしてプラスチック基材を加工することを特徴とするゲージ製造方法である。
【0019】
本発明はプラスチック基材上に設けた目盛り形成用薄膜を、パターン状に加工除去することにより、ゲージ厚み目盛りを形成することを特徴とするゲージ製造方法である。
【0020】
本発明は前記方法において、目盛り形成用薄膜がクロムなどの金属薄膜、もしくは顔料などの色材を含む薄膜であることを特徴とするゲージ製造方法である。
【0021】
本発明は、前記方法においてエッチングする際に、高エネルギービームを目盛りパターン状に照射して基材、もしくは目盛り形成用薄膜をドライエッチングすることを特徴とするゲージ製造方法である。
【0022】
本発明は、前記方法において高エネルギービームがレーザー光であることを特徴とするゲージ製造方法である。
【0023】
本発明は、前期方法においてプラスチック基材表面から基材裏面まで貫通して加工することを特徴とするゲージ製造方法である。
【0024】
本発明は、プラスチック基材が、連続使用温度150℃以上のエンジニアリング樹脂を主体に形成されていることを特徴とするゲージ製造方法である。
【0025】
本発明は、樹脂がポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリスルホン、ポリテトラフルオロエチレンなどの特殊エンジニアリング樹脂であることを特徴とするゲージ製造方法である。
【発明の効果】
【0026】
隙間ゲージの目盛り形成をエッチング法、もしくは高エネルギービーム削除法より行うことにより、従来困難であった厚み100μm以下のプラスチック製隙間ゲージの製造が容易となる。その結果、薄膜精密塗布用スロットダイのリップ間隔調整を、ダイを傷付けることなく、作業性よく行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図1は、フォトリソグラフィー法によりプラスチック基材をエッチングしてゲージ厚目盛を設けるゲージ作製工程の模式図である。所定の形状に切り出されたプラスチック基材は、研磨により所定のゲージ厚範囲に入るように表面が研磨され、テーパー状に加工される。次いで所定の間隔で基材の厚みを測定しながら、基準位置に例えばディスペンサーノズルからインクを吐出、乾燥してマーキングする。
【0028】
次いで、プラスチック基材上にフォトレジストをコーティングする。コーティングする方法としてはスピンナーなどの回転塗布法、ロールコーター塗布方法、ドライフィルム状レジストをラミネートする方法など、公知の積層方法が使用される。
【0029】
レジスト積層後、マーキングした基準位置にフォトマスクを位置あわせし、水銀灯などからの紫外線を罫書きパターン状に照射する。次いでレジストの現像液中に浸漬する。使用したフォトレジストがポジ型の場合、紫外線照射部のレジストが現像液に溶解、除去され、プラスチック基材の表面が露出する。
【0030】
次いで、プラスチック基材をスパッタエッチング装置に設置し、反応性ガス例えばアルゴンガスと酸素ガスの混合ガス中で、フォトレジストをエッチングマスクとしてプラスチック基材を所定深さスパッタエッチングする。スパッタ装置によりレジストパターンの上にクロム薄膜を堆積する。次いでフォトレジストをレジスト除去液により除去すると、レジスト上のクロムが一緒に除去され、エッチングにより形成された基材凹部にクロム膜が残留(リフトオフ)して、目盛りパターンが形成される。このように形成された目盛り形成用クロム膜は、ゲージ表面から突出しないためにダイなどと直接接触することがないため摩擦に強く、また溶剤などによる剥離を起こしにくい。
【0031】
上記の工程において、目盛りパターンの近くに、ゲージ厚みの数値マークを設けたフォトマスクを使用することにより、目盛りと同時に数値表示マークを形成することが好ましいことは言うまでもない。
【0032】
上記の工程で用いられるプラスチック材質としては、連続使用可能温度150℃以上のエンジニアリング樹脂を用い、加工・研磨して図1のような形態の先端が薄く根本が厚いテーパー状の形状の基材を作成する。研磨の際にテーパー(傾き)は直線、もしくはできるだけ直線に近いことが好ましい。テーパー測定部の一部はゲージ厚み100μm以下となる領域を含み、特に測定部の全てが20μm以上の厚みであることが好ましい。測定部の全てが100μmより大きい場合には、前述したように従来の機械的な罫書き法により製造可能である。また測定部が20μm厚以下の領域を含むとゲージ基材の剛性(腰)が小さくなり、クニックを発生しやすく、リップ隙間測定時の取り扱い性が悪くなる。
【0033】
本発明に用いられるゲージ基材の材質としては、ダイを傷付けることが少ない点でプラスチックが好ましく、また溶剤溶解性が一般に小さいことから、プラスチックの中でも連続使用可能温度150℃以上のエンジニアリング樹脂が好ましい。このような樹脂は一般に特殊エンジニアリング樹脂もしくはスーパーエンジニアリング樹脂と呼ばれ、例えプラスチック・データブック(旭化成アミダス(株)「プラスチックス」編集部編、1999年、工業調査会)518ページに、その例が記載されている非架橋樹脂である。例えばポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスルホン等が挙げられ、その中でも機械的強度、耐溶剤性の点からポリイミドが特に好ましい。
【0034】
本発明の製造方法は、所定の形状に加工、研磨した基材の各部の厚さを測定し、エッチングにより目盛り線を形成することを特徴とする。基材を研磨する場合、図3に示すように基材保持台の上に基材を載せ、保持面を所定の角度(テーパー)に傾けながら、研磨材を水平方向に移動させて研磨する。このように基材保持面の傾斜を調整しつつ、研磨面が水平となるように研磨することにより、所定のテーパーを得ることが容易となる。
【0035】
研磨面が水平に均一に研磨されたら、基材の厚みを測定し、特定の位置の厚み、例えば100μmの箇所に位置合わせ用基準マークを付ける。マークを付ける方法としては、ゲージ基材の厚みを測定しながら、例えば水性ペン、インクジェット法などにより位置合わせマークを形成する。
【0036】
次いで、基材表面にフォトレジストを設けて、目盛りパターン状のフォトマスクを通して露光、現像し、露出した基材表面を加工する。
本発明に用いられるフォトレジストとしては、半導体製造工程や印刷版などに使用される公知の感光性樹脂を用いることが出来る。例えば、ビスアジトー環化ゴム等のネガ型レジストや、キノンジアジド化合物―フェノール樹脂からなるポジ形レジストが用いられる。レジスト液をスピンナーなどにより塗布した後、乾燥し、その厚みが例えば0.1μm〜10μm、好ましくは0.5〜3μmの範囲となるように設ける。
【0037】
次いで、ゲージ厚み目盛りパターンを有するフォトマスクを、上記フォトレジストに密着させて紫外線を照射し、レジストを感光させる。この際、ゲージとマスクの位置あわせは、前記した位置合わせマークを基に行われる。またフォトマスクには、基材上の位置合わせマークに対応させた位置合わせマークと、所定のピッチの目盛りパターンが設けられている。露光量などの露光条件、現像条件、水洗、乾燥条件なども、公知のフォトリソグラフィーと同様の方法、条件に従って行われる。
【0038】
次いで、化学的エッチング法あるいは物理的エッチング法により、所望パターンに形成されたレジストをマスク材として上記基材をエッチングする。
化学的エッチングは、湿式(ウエット)エッチングとも呼ばれ、例えばアルカリ系の水溶液を使用して加工を行う。エッチング液としては、例えば特開平10−97081号公報明細書に記載されているような、オキシアルキルアミン及びアルカリ金属化合物を含有むエッチング液以外に、特開平4−20541号、特開平4−20539号、特開平4−15233号に記載されているようなアルカリエッチング液を、ポリイミド基材に対して好適に用いることが出来る。目盛りのエッチング深さは、可視化のための方法に依存する。例えばクロム蒸着膜を用いる場合には、クロム膜厚は0.1μ厚程度あれば十分なため、0.2μm程度以上に基材をエッチングすることにより、クロム膜を保護することが出来る。
【0039】
プラスチック基材を所定深さにエッチングした後、必要によっては更に水洗、乾燥した後、例えばクロムなどの遮光膜をレジストパターン全面に設ける。その手段としては、クロムの場合には真空蒸着法、スパッタリングなど周知の方法により行うことが出来る。遮光膜の材質としては、厚みゲージ使用時の溶剤などに溶解しない材質であれば、特に限定されないが、アルミニウム、クロムなどの金属薄膜以外に、カーボンブラックや有機顔料などの薄膜も用いられる。
【0040】
次いで、遮光膜とレジストパターンを設けたプラスチック基材を、レジスト剥離液中に浸漬し、レジストをその上の遮光膜と共に除去する。この方法は、半導体回路作製では周知の方法でありリフトオフと呼ばれる。エッチング溝中の遮光膜は除去されずに溝中に残留し、目視可能な目盛りを有する隙間ゲージが得られる。
【0041】
上記の実施態様では、エッチング用マスクとしてフォトレジスト、露光用マスクとしてフォトマスク、エッチングとしてアルカリエッチング、マーキング材料としてクロム薄膜を用いる方法を例示したが、本発明ではこれらに限らず、他の種々の方法、他の種々の公知の材料を用いて行うことが出来る。
【0042】
例えば、プラスチック基材やレジストの化学的性質によってはアルカリエッチングの代わりに酸を用いた基材の湿式エッチングも可能である。またこれら化学的エッチングの代わりに、物理的エッチング法も好ましい。プラスチック基材を物理的にエッチングする方法としては、酸素やハロゲンガスなどの活性ガスを用いた反応性スパッタエッチングが代表的である。
【0043】
またこれらのエッチング法以外に、高エネルギービームを照射して基材表面を削除、加工する方法も、工程を簡略化する上で有効である。例えば炭酸ガスレーザーや高出力半導体レーザービームを照射すると、プラスチックが熱分解、ガス化して凹部が形成される。また波長300nm以下のエキシマーレーザーを照射するとプラスチック表面が光分解、ガス化して除去され、凹部が形成される。高エネルギービームとしては上記の光ビーム以外に、電子線やモレキュラービームなどの高エネルギー粒子線も使用可能である。
【0044】
また前述したフォトマスクを使用せずに、エキシマーレーザーのようなUVレーザービームをフォトレジストにパターン状に走査、露光する方法も可能である。このようなレーザー走査によれば、フォトマスクが不要となると共に、ゲージ厚みに対応した位置にレーザービームを走査することにより、正確な目盛りパターンを形成が可能である。
【0045】
また前述の工程において、フォトマスク露光、現像の代わりに、例えばスクリーン印刷などの印刷法を用い、UV硬化インキによりレジストパターンを形成することも可能である。スクリーン印刷法を用いることにより、上記したようなマスク露光、現像、水洗、乾燥などの煩雑な工程を省略することが出来る。
【0046】
また前述の工程では、プラスチック基材に目盛り用の溝をエッチング法により形成し、その溝中にマーク形成材料を設ける方法を述べたが、本発明ではその方法に限定されない。例えば、目盛り形成用膜をゲージ基材上に設けた後、その上にフォトレジストを積層し、次いで上記と同様のフォトリソグラフィー法により、目盛り形成用薄膜をエッチング、レジスト除去することにより、プラスチック基材上に目盛りを形成することも可能である。目盛り形成用膜としては前記のクロム薄膜や、カーボンブラックなどを含んだ色材膜などの公知の材料を用いることができる。その場合の材料や公邸も、前記と同様に各種の材料、方法を使用することが出来る。
【0047】
前記の方法では、エッチングレジストを用いてプラスチック基材をパターン状に加工していたが、本発明ではレジストを用いずにプラスチック基材を表面加工する方法も可能である。その方法としては前述した高エネルギービーム、例えば高出力の半導体レーザーや、エキシマーレーザーなどを基材に直接照射、走査して、プラスチック基材表面を分解し、溝を形成する方法が挙げられる。図3で簡易的に示されるレーザー走査装置により、プラスチック基材表面をレジスト無しで走査して基材表面を削除した後、溝の中に例えばインクジェット法などによりインクでマーキングする。目盛り位置に高エネルギービームを走査するため、エッチングレジストが不要となり工程が著しく簡略化される。
【0048】
またレーザーなどの高エネルギービームで直接マーキングする方法として、図3で示される方法も可能である。プラスチック基材表面全面に遮光膜を積層後、レーザー光をパターン状に照射して、遮光膜を融解除去して物理的にエッチングする方法も可能である。遮光膜としてクロムのような機械強度の大きな材質を用いることにより、簡便に目盛り用のマーク形成が可能である。
【0049】
前述の実施態様では、プラスチック基材に凹部、もしくは基材上の遮光膜をエッチングすることにより目盛りを形成していたが、本発明ではそれらに限定されずに、例えば基材表面から裏面まで貫通してエッチングすることにより目盛りを形成することも可能である。例えば、プラスチック基材としてポリイミドのような不透明フィルムを、炭酸ガスレーザービームにより貫通して加工することにより、ダイレクトに目視可能な目盛りを形成でき、工程を著しく簡略化することが出来る。
【0050】
以上述べたように、本発明は基材厚みが100μm以下の小さなプラスチック製隙間ゲージに、切削などの機械的加工方法によらずに目盛りを付ける方法であって、プラスチック基材もしくはマーキング材料のいずれか、もしくは両者をパターン状にエッチング、もしくは削除する工程を含むことを特徴とするゲージ製造方法である。ここで、高エネルギービームによる削除には表面の分解除去、昇華蒸発以外に、表面の融解除去もしくは融解変形などのいわゆるアブレーションも含まれる。被エッチング材料、パターン状に加工する方法は従来公知の方法を用いることが出来ることは前述した通りである。具体的な製造方法の詳細を以下の実施例によりを例示するが、本発明はこれらの実施例に限定されないことは言うまでもない。
【実施例1】
【0051】
厚み120μmのポリイミドシートを、長さ110mm、幅13mmの形状に切削した。それを図2aに示すように、所定の角度に傾斜した支持台の上に上記シートを固定し、研磨剤を水平方向に移動しながらシート表面の研磨を行う(図1b)。先端部の厚みが20μm、根本部の厚みが110μmのテーパー状に加工する。この際、研磨面表面のうねりを出きるだけ小さくするために、表面のうねり量を測定しながら、ゲージ厚みが直線的に変化するように研磨を行う。次いで端部のバリ取りと面取りを行った後、作成された基材の各部の厚さを測定し、例えば厚み100μmの位置に、フォトレジスト液に溶解しない水性インクでマーキングし、基準位置マークとした。
【0052】
前記作成した基材の全面に、ピスアジト系環化天然ゴムをベースとしたフォトレジスト(商品名 FSR 富士薬品工業社製)をスピンナーにより塗布した後、100℃で3分間乾燥し、3μmの厚さのレジスト膜を形成した。
【0053】
次いで、基材のレジストが塗布されていない面を露光用の支持台に載せる。この際、支持台表面を研磨台の角度と同一にすることにより、レジスト面が水平となる。このレジスト面にゲージ厚を表す目盛りを等間隔に設けたクロムマスクを密着させ、1kW超高圧水銀灯の紫外線を110mj/cm照射(図2c)した後、所定の条件で現像、水洗、乾燥を行う(図2d)。
【0054】
次いで、3.1%の水酸化テトラメチルアンモニウムと13.6%のエチレンジアミンと26.7のエタノールと25.6%の尿素とを含む溶液を50℃に加温してエッチング液を作成し、前記基材を、このエッチング液に浸漬して、目盛りパターンの深さが1μmとなるようにポリイミド基材のエッチング(図2e)を行った後、水洗、乾燥した。
【0055】
次に、スパッタリング装置中のクロムターゲットに上記フォトレジスト膜が対向するようにゲージ基材を基板フォルダーに載置し、アルゴンガス中でクロム膜を0.05μm厚積層(図2f)した。次いでレジスト剥離液中に基材を浸漬し、レジスト膜をその上のクロム膜と一緒に除去(リフトオフ)すると、エッチングされた溝中にクロムが残留し、厚み目盛が形成された(図2g)。
【実施例2】
【0056】
実施例1と同様の方法によりポリイミド基材を所定の形状に切削、研磨した後、フォトレジストを積層し、目盛りパターンを有するフォトマスク露光、現像、水洗、乾燥を行った。
次にこの基材をスパッタエッチング装置の基板フォルダーに載せ、フロンガスを用いて露出したポリイミド表面を0.3μm深さドライエッチングを行った。更に、実施例1と同様にしてクロム膜の積層、レジスト除去(リフトオフ)を行うことにより、溝中に残留したクロム膜により目視可能な目盛りが形成された。
【実施例3】
【0057】
実施例1と同様の方法によりポリイミド基材を所定の形状に切削、研磨した後、基材全面にスパッタ法により厚み0.1μmのNiCr合金薄膜を形成した。この状態で基材各部の厚みを測定し、厚み100μmの位置に基準マークを水性インクでマーキングした。次にキノンジアジド系ポジ型フォトレジストを2μm厚で合金膜上に形成した後、実施例1と同様の方法によりマスク露光し、次いでアルカリ現像液でフォトレジストを現像、水洗、乾燥した。次に実施例2と同様の方法により、露出したNiCr合金の反応性スパッタエッチング、レジスト除去を行い、目視可能な目盛りを有するゲージを得た。
【実施例4】
【0058】
レーザー走査→マーキング
実施例1と同様の方法によりポリイミド基材を所定の形状に切削、研磨した。次に、高出力YAGレーザー光を波長変換素子により短波長化した光を、基材表面に集光しながら照射、走査することにより、基材表面を分解削除して目盛用溝を形成した(図3)。表面に形成された溝中に、色材を混合したUV硬化塗料でマーキング、紫外線硬化させて目盛を形成した。
【実施例5】
【0059】
実施例3と同様の方法により所定の形状に切削、研磨したポリイミド基材の上に厚み0.05μmのNiCr合金遮光膜を形成した。次いで波長830nm、出力3Wの半導体レーザー光を基材上でビーム径50μmに絞りつつ走査して、NiCr合金をエッチング(融解除去)することにより目視可能な目盛りを形成することができた(図4)。
【実施例6】
【0060】
実施例1と同様の方法によりポリイミド基材を所定の形状に切削、研磨した。次に、高出力炭酸ガスレーザー光を基材表面に照射、走査することにより、基材を分解削除して目盛用孔を貫通し、目盛を形成した。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】隙間ゲージの概略平面図である。
【図2】フォトレジストを用いて、エッチング法により目盛を形成する方法を模式的に示す工程図である。
【図3】高エネルギービームにより基材表面を加工して目盛を形成する装置、及び工程の模式図である。
【図4】高エネルギービームにより目盛系形成用薄膜を加工する本発明の模式図である。
【図5】スロットダイによる塗布の様子を示す模式図(側面図)である。
【符号の説明】
【0062】
01 隙間ゲージ
02 目盛
03 数値表示マーク
11 プラスチック基材
12 テーパー加工済み基材
13 目盛表示遮光膜
21 研磨装置
22 フォトレジスト
23 目盛パターン形成用フォトマスク
24 遮光膜
31 レーザー
32 ミラー
33 集光レンズ
51 スロットダイ本体
52 マニホールド
53 ダイリップ
54 スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布用スロットダイのリップ間隔を測定するための隙間ゲージの目盛りを形成する方法であって、エッチング法もしくは高エネルギービーム削除法の中から選択された方法により、ゲージ目盛りを形成することを特徴とするゲージ製造方法。
【請求項2】
測定部分の少なくとも一部が100μm以下のゲージ厚の部分を含むことを特徴とする請求項1項のゲージ製造方法。
【請求項3】
プラスチック基材上のフォトレジストを露光、現像した後、露出したプラスチック基材表面を加工することにより目盛りを形成することを特徴とする、請求項第1乃至2項のゲージ製造製方法。
【請求項4】
スクリーン印刷により形成したフォトレジストパターンを露光硬化した後、該パターンをエッチングレジストとしてプラスチック基材を加工することを特徴とする、請求項第1乃至3項のゲージ製造方法。
【請求項5】
プラスチック基材上に設けた目盛り形成用薄膜を、パターン状に加工除去することにより、ゲージ厚目盛りを形成することを特徴とする、請求項第1乃至2項のゲージ製造方法。
【請求項6】
目盛り形成用薄膜がクロムなどの金属薄膜、もしくは顔料などの色材を含む薄膜であることを特徴とする、請求項第5項のゲージ製造方法。
【請求項7】
表面加工する際に、高エネルギービームを目盛りパターン状に照射して、プラスチック基材表面、もしくは目盛り形成用薄膜を加工して目盛りを形成することを特徴とする、請求項第1項乃至6項のゲージ製造方法。
【請求項8】
高エネルギービームがレーザー光であることを特徴とする、請求項第1乃至7項のゲージ製造方法。
【請求項9】
プラスチック基材表面から基材裏面まで貫通して加工することを特徴とする、請求項第1乃至2項のゲージ製造方法。
【請求項10】
プラスチック基材が、連続使用温度150℃以上のエンジニアリング樹脂を主体に形成されていることを特徴とする、請求項1項乃至9項のゲージ製造方法。
【請求項11】
樹脂がポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリスルホン、ポリテトラフルオロエチレンなどの特殊エンジニアリング樹脂であることを特徴とする、請求項10項のゲージ製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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