説明

隙間測定装置

【課題】測定時間をより一層短かくさせるとともに、測定値のバラツキをより一層少なくさせる隙間測定装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る隙間測定装置は、ノギス本体30の軸方向に沿って摺動し、被測定物43a,43bの距離、寸法を読み取る移動距離読取り部31を備えるとともに、前記ノギス本体30の軸方向に交差する一側に設けた内径用測定子と、この内径用測定子の前記ノギス本体の反対側の他側に設けた外径用測定子を備えた隙間測定装置において、前記移動距離読取り部31は、枢軸32を介して係合させ、回転自在にして折り曲げ、反転自在なデジタル表示部33を備えるとともに、被測定物43a,43bの距離、寸法を測定する測定子34,35を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隙間測定装置に係り、特に、数多くの構成要素で組み立てられたガスタービン燃焼器等の狭隘部の隙間を容易に測定可能な隙間測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、火力発電プラントに適用されるガスタービンプラントに排熱回収ボイラおよび蒸気タービンプラントを組み合せたコンバインドサイクル発電プラントでは、安全な運転ができるように、定期的にメンテナンスを行っている。特に、ガスタービンプラントのガスタービン燃焼器は、燃焼ガス温度が1300℃以上の高温ガスを取扱う関係上、各構成要素の細かい部分までも入念にメンテナンスを行って安全性を確認しており、その構成として図6に示すものがある。
【0003】
このガスタービン燃焼器は、ライナ内筒1にスプリングシール3を介装させてトランジションピース内筒2を接続させている。また、ライナ内筒1の外側には、ライナ外筒を兼ねるフロースリーブ4が、トランジションピース内筒2の外周にはトランジションピース外筒5がそれぞれ設けられている。
【0004】
フロースリーブ4は、トランジションピース外筒5に設けたシールリング6を介して接続され、連続した環状通路7,8を形成している。そして、ライナ内筒1とフロースリーブ4とから燃焼器ライナ10が構成されている。
【0005】
一方、燃焼器ライナ10やトランジションピース内筒2を冷却する冷却空気の流れは、空気圧縮機12から出た吐出空気Aの一部をトランジションピース外筒5の空気孔9より環状流路8に流入し、トランジションピース内筒2の外面をインピンジ冷却させた後、トランジションピース内筒2、トランジションピース外筒5間をライナ内筒1側に向って流れ、対流冷却する。
【0006】
残りの大半の空気は、フロースリーブ空気孔11から流入し、ライナ内筒1の外面をインピンジ冷却し、ライナ内外筒であるフロースリーブ4とライナ内筒1の間の環状通路7を対流冷却する。
【0007】
トランジションピース内筒2を冷却した後の空気と、ライナ内筒1を冷却した後の空気とは、環状通路7で合流し、その一部は燃焼用空気Aaとなり、燃焼ノズル13から噴射された燃料14と混合し、燃焼火炎Bを生成する。残りは、燃焼器ライナフィルム用冷却空気Abとしてライナ内筒1の内面をフィルム冷却した後、燃焼火炎Bと合流し、燃焼ガスCとなってガスタービン15の初段落におけるタービンノズル16に送られる。
【0008】
このような構成を備えたガスタービン燃焼器は、例えば、図7に示すように、トランジションピース内筒2とガスタービン15の初段落における外輪17と内輪18とで支持されたタービンノズル16との隙間Sを測定し、この隙間Sが燃焼ガスCによって熱伸びが生じ、設計寸法値を超えているかのメンテナンスを行う場合、特別な専用の測定装置がある訳ではなく、専らノギス本体19を用いて測定していた。
【0009】
このノギス19は、図8に示すように、通常、市販され、よく知られたもので、ノギス本体20の軸方向に交差する一側に設けた第1内径用測定子21と、ノギス本体20を摺動する移動距離読取り部23に設けた第2内径用測定子22とを備え、ノギス本体20に対して移動距離読取り部23を摺動させることによって第1内径用測定子21と第2内径用測定子22とで被測定部の内径または隙間を測定し、移動距離読取り部23でその寸法を読み取る構成になっている。
【0010】
また、このノギス19は、ノギス本体20の軸方向に交差し、上述第1および第2内径用測定子21,22と反対側の他側に設けた第1外径用測定子24と、ノギス本体20を摺動する移動距離読取り部23に設け第2外径用測定子25とを備え、ノギス本体20に対して移動距離読取り部23を摺動させることによって第1外径用測定子24と第2外径用測定子25とで被測定部の外径を測定し、移動距離読取り部23でその寸法を読み取る構成になっている。
【0011】
また、移動距離読取り部23は、読取り部ハンドル26とストッパ27とを備え、読取り部ハンドル26をノギス本体20に対して摺動させて被測定部の内径また外径を測定するとともに、ストッパ27に押圧力を与えて読取り部ハンドル26を一時的にロックさせる構成になっている。
【0012】
なお、ノギスを用いて被測定物の隙間等を測定する技術には、例えば、特開2002−228402号公報(特許文献1)が開示されている。
【特許文献1】特開2002−228402号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
トランジションピース内筒2とガスタービン17の初段落におけるタービンノズル16との隙間Sをノギス19で測定する場合、幾つかの問題を抱えており、その一つに隙間Sを正確に測定できず、測定値にバラツキが出る場合がある。
【0014】
すなわち、トランジションピース内筒2とタービンノズル16との隙間Sをノギス19で測定する場合、この部分は、非常に狭く、測定者が極端に身体を細くして内径400mm〜50mmの円筒状の狭隘部に入り、手を一杯に伸ばし、身動きがとれない状況での測定を余儀なくされている。このため、測定に長時間を要するとともに、隙間Sの寸法を正確に測定することが難しい等の問題を抱えていた。
【0015】
本発明は、このような事情に基づいてなされたもので、測定時間をより一層短かくさせるとともに、測定値のバラツキをより一層少なくさせる隙間測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る隙間測定装置は、上述の目的を達成するために、請求項1に記載したように、ノギス本体の軸方向に沿って摺動し、被測定物の距離、寸法を読み取る移動距離読取り部を備えるとともに、前記ノギス本体の軸方向に交差する一側に設けた内径用測定子と、この内径用測定子の前記ノギス本体の反対側の他側に設けた外径用測定子を備えた隙間測定装置において、前記移動距離読取り部は、枢軸を介して係合させ、回転自在にして折り曲げ、反転自在なデジタル表示部を備えるとともに、被測定物の距離、寸法を測定する測定子を備えたものである。
【0017】
また、本発明に係る隙間測定装置は、上述の目的を達成するために、請求項2に記載したように、移動距離読取り部は、ノギス本体の軸方向に対し、摺動力を与える把持部を備えたものである。
【0018】
また、本発明に係る隙間測定装置は、上述の目的を達成するために、請求項3に記載したように、測定子は、固定用の測定子と摺動用の測定子を備えるとともに、固定用の測定子と摺動用の測定子とのそれぞれに被測定物の位置決め用の位置決め片を備えたものである。
【0019】
また、本発明に係る隙間測定装置は、上述の目的を達成するために、請求項4に記載したように、固定用の測定子は、ストッパ片を備えたものである。
【0020】
また、本発明に係る隙間測定装置は、上述の目的を達成するために、請求項5に記載したように、ノギス本体は、端部に移動距離読取り部の移動を停止させるストッパ部を備えたものである。
【0021】
また、本発明に係る隙間測定装置は、上述の目的を達成するために、請求項6に記載したように、請求項1記載の隙間測定装置は、ガスタービン燃焼器のトランジションピースとガスタービン初段落のタービンノズルとの隙間の測定に適用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る隙間測定装置は、ノギス本体に設けた移動距離読取り部の枢軸に対し、回転自在にして折り曲げ、反転自在なデジタル表示部を備えたので、狭隘部の外径、内径または距離・寸法を測定する場合であっても、容易にして正確に測定して読み取ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明に係る隙間測定装置の実施形態を図面および図面に付した符号を引用して説明する。
【0024】
図1は、本発明に係る隙間測定装置の実施形態を示す概略側面図である。
【0025】
本実施形態に係る隙間測定装置は、ノギス本体30のスライド方向(軸方向)に沿って摺動する移動距離読取り部31と、この移動距離読取り部31に設けられた枢軸32に係合し、360°回転自在にして折り曲げ、反転自在なデジタル表示部33とを備えている。
【0026】
また、本実施形態に係る隙間測定装置は、ノギス本体30の一側に被測定物の外径または内径を測定する第1測定子34と移動距離読取り部31に固設するスライド用の第2測定子35とを備える一方、ノギス本体30の他側端に移動距離読取り部31の摺動を停止させるストッパ部36を備えている。
【0027】
固定用の第1測定子34は、図2および図3に示すように、折り曲げ状のストッパ片37を設けて第2測定子35の移動を停止させる一方、被測定物への位置設定用としての位置決め片38を備えている。なお、第2測定子35も、第1測定子34と同様に、被測定物への位置設定用としての位置決め片39を備えている。
【0028】
一方、移動距離読取り部31は、図1に示すように、ノギス本体30に対し、スライド方向(軸方向)に向って移動力を与える把手部40と、内部に組み込まれた演算回路をOFFさせるOFF用押しボタン42と、内部に組み込まれた演算回路を起動させるとともに、デジタル表示部33のデジタル値をゼロ値に修正する起動調整用押しボタン43とを備えている。
【0029】
このような構成を備えた隙間測定装置は、ノギスで被測定物43a,43bの隙間Sを測定する場合、具体的には、図7に示したトランジションピース内筒2とガスタービン15の初段落におけるタービンノズル16との隙間Sを測定する場合、図4および図5に示すように、被測定物43aに第1測定子34を当接させるとともに、位置決め片38で位置決めさせた後、移動距離読取り部31の起動調整用押しボタン42をONさせ、把持部40を用いて移動距離読取り部31をノギス本体30に対しろ、摺動させる。
【0030】
ノギス本体30に対する移動距離読取り部31の摺動中、第1測定子35が被測定物43に当接し、位置決め片39で位置決めがなされると、デジタル表示部33は、移動距離読取り部31の移動距離をデジタル表示し、被測定物43a,43bの隙間Sを測定する。
【0031】
そして、被測定物43a,43bの隙間Sを測定しても、測定者がデジタル表示部3
3のデジタル表示値が読み切れない場合、デジタル表示部33は、移動距離読取り部31の枢軸32を介して360°回転させるか、あるいは折り曲げて反転させれば、デジタル表示値を容易に読み取ることができる。
【0032】
このように、本実施形態に係る隙間測定装置は、ノギス本体30を摺動させる移動距離読取り部31に枢軸32を介して係合させ、360°回転自在で、かつ折り曲げ反転自在なデジタル表示部33を備えたので、測定者の身動きの自由が僅かにしか許されない狭隘部の外径、内径または隙間の距離、寸法を測定する場合であっても、容易にして正確に測定して読み取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る隙間測定装置を示すもので、被測定物の距離・寸法の測定前の姿を示す概略側面図。
【図2】図1のA−A矢視方向から見た平面図。
【図3】図2のB−B矢視方向から見た正面図。
【図4】本発明に係る隙間測定装置を示すもので、被測定物の距離・寸法の測定中の姿を示す概略側面図。
【図5】図4の第2測定子の挙動を示す部分拡大図。
【図6】従来のガスタービン燃焼器を示す一部切欠断面図。
【図7】図7で示したトランジションピースからガスタービンの初段落におけるタービンノズルまでの構造を示す部分拡大一部切欠断面図。
【図8】従来のノギスを示す概略側面図。
【符号の説明】
【0034】
1 ライナ内筒
2 トランジションピース内筒
3 スプリングシール
4 フロースリーブ
5 トランジションピース外筒
6 シールリング
7,8 環状通路
9 空気孔
10 燃焼器ライナ
11 フロースリーブ空気孔
12 空気圧縮機
13 燃焼ノズル
14 燃料
15 ガスタービン
16 タービンノズル
17 外輪
18 内輪
19 ノギス
20 ノギス本体
21 第1内径用測定子
22 第2内径用測定子
23 移動距離読取り部
24 第1外径用測定子
25 第2外径用測定子
26 読取り部ハンドル
27 ストッパ
30 ノギス本体
31 移動距離読取り部
32 枢軸
33 デジタル表示部
34 第1測定子
35 第2測定子
36 ストッパ部
37 ストッパ片
38,39 位置決め片
40 把持部
41 OFF用押しボタン
42 起動調整用押しボタン
43a,43b 被測定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノギス本体の軸方向に沿って摺動し、被測定物の距離、寸法を読み取る移動距離読取り部を備えるとともに、前記ノギス本体の軸方向に交差する一側に設けた内径用測定子と、この内径用測定子の前記ノギス本体の反対側の他側に設けた外径用測定子を備えた隙間測定装置において、前記移動距離読取り部は、枢軸を介して係合させ、回転自在にして折り曲げ、反転自在なデジタル表示部を備えるとともに、被測定物の距離、寸法を測定する測定子を備えたことを特徴とする隙間測定装置。
【請求項2】
移動距離読取り部は、ノギス本体の軸方向に対し、摺動力を与える把持部を備えたことを特徴とする請求項1記載の隙間測定装置。
【請求項3】
測定子は、固定用の測定子と摺動用の測定子を備えるとともに、固定用の測定子と摺動用の測定子とのそれぞれに被測定物の位置決め用の位置決め片を備えたことを特徴とする請求項1記載の隙間測定装置。
【請求項4】
固定用の測定子は、ストッパ片を備えたことを特徴とする請求項1記載の隙間測定装置。
【請求項5】
ノギス本体は、端部に移動距離読取り部の移動を停止させるストッパ部を備えたことを特徴とする請求項1記載の隙間測定装置。
【請求項6】
請求項1記載の隙間測定装置は、ガスタービン燃焼器のトランジションピースとガスタービン初段落のタービンノズルとの隙間の測定に適用することを特徴とする隙間測定装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−46971(P2006−46971A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−224824(P2004−224824)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】