説明

隙間測定装置

【課題】粘土を不要にして測定精度を高めることができ、測定者によるばらつきを回避できる隙間測定装置を提供する
【解決手段】本体部4と、該本体部4に配設された計測子5とを含み、前記本体部4と計測子5との合算値Cにより隙間を測定する隙間測定装置3であって、
前記計測子5は前記合算値Cが変化するように前記本体部4に移動可能に配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車のドア開口とドア周壁部との隙間を測定する隙間測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のパネル部材から構成されている自動車の車体においては、建付性やパネル間の隙間が適正であるか否かの検査が一般的に行われている。このような検査の1つに、ドアと車体との閉空間(手が届かない箇所)における隙間を検査するものがある。これは、ドアと車体との隙間が適正でなければ、車外から水や異物等が侵入してしまうからである。
【0003】
このドアと車体との隙間の測定方法として、従来例えば特許文献1に記載の方法がある。これは、車体とドアの各々の表面にスリット光を照射してこのスリット光の反射に基づいて車体とドアとの隙間を測定する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平05−26632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、前記従来方法では、設備費が高額となる問題があり、設備と検査精度との兼ね合いから、結局のところゲージのような原始的なツールを用いた方法が多用されている。この方法では、車体とドアとの隙間に粘土をセットし、ドアを閉じた際の粘土の高さをノギス等で測定することとなる。しかし前記隙間にセットした粘土の変形による測定誤差や測定者の技量により測定値がばらつくといった問題がある。
【0006】
本発明は、前記従来の状況に鑑みてなされたもので、粘土を不要にして測定精度を高めることができ−、測定者によるばらつきを回避できる隙間測定装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、本体部と、該本体部に配設された計測子とを含み、前記本体部と計測子との合算値により隙間を測定する隙間測定装置であって、前記計測子は前記合算値が変化するように前記本体部に移動可能に配設されていることを特徴としている。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の隙間測定装置において、前記本体部には、前記合算値を表示する目盛りが設けられ、前記本体部に対する前記計測子の相対位置に対応する前記目盛りを計測隙間とすることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明に係る隙間測定装置により隙間を測定するには、前記計測子がセットされた本体部を被測定隙間部分に挿入配置し、計測子を該被測定隙間の大きさに応じて移動させる。そして該計測子の移動が停止された状態で、本体部と計測子との合算値を計測すれば、該合算値が計測隙間となる。
【0010】
このように本発明では、従来のような粘土を使用することなく隙間を測定でき、また作業者による測定バラツキもなく、正確に隙間を測定できる。
【0011】
請求項2の発明では、本体部に合算値を表示する目盛りが設けられているので、前記計測子の位置に対応する本体部の目盛りを読むことで、簡単にかつ正確に隙間を測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例1による自動車のドアの隙間測定装置の使用状態を示す断面正面図である。
【図2】前記測定装置の模式拡大図である。
【図3】前記測定装置の本体部を示す図である。
【図4】前記測定装置の計測子を示す図である。
【図5】本発明の実施例2による隙間測定装置の計測子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0014】
図1ないし図4は、本発明の実施例1による自動車のドアの隙間測定装置を説明するための図である。
【0015】
図において、1は、自動車の車体下部両側に配置され、車両前後方向に延びるロッカパネル(固定部材)である。該ロッカパネル1は、ロッカアウタパネル1aと図示しないロッカインナパネルとを間にロッカリインホース1bを介在させて、上,下のフランジ部1c,1cをスポット溶接により結合したものである。前記ロッカアウタパネル1aの上辺部1cはドア開口aの下縁部分を形成している。
【0016】
前記ドア開口aには、ドア(可動部材)2が配置されている。該ドア2は、その前端部(図1の紙面垂直方向奥側端部)がヒンジを介して車体に支持されており、前記ドア開口aを矢印b方向に開閉する。前記ドア2は、ドアアウタパネル2aとドアインナパネル2bの周壁部をヘミング加工により結合した概略構造を有する。前記ドアインナパネル2bは車室内側に段をなす環状の周壁部2cを有する。
【0017】
ここで前記ドアインナパネル2bの周壁部2cは、車外側ほど低くなるように傾斜している。一方、前記ロッカアウタパネル1aの上辺部1cは、略水平に形成されている。従って、前記ロッカアウタパネル1aの上辺部1cの予め設定された隙間計測ポイントeにおけるドアインナパネル2bの周壁部2cと隙間Cは、ドア2が全閉位置に近づくほど狭くなる。
【0018】
符号3は、ドアインナパネル2bの周壁部2cと前記ロッカアウタパネル1aの上辺部1cとの隙間を測定するための隙間測定装置である。この隙間測定装置3は、前記固定部材としてのロッカアウタパネル1aの上辺部1cに搭載される本体部4と、該本体部4の支持面4aに、前記ドア2の開閉方向bと同方向にスライド可能に支持され、前記ドア2により前記支持面4a上を移動される計測子5とを備えている。
【0019】
前記本体部4の支持面4aは一端4′から他端4′′に行くほど低くなる傾斜をなしており、またこの支持面4aにはガイド溝4bが凹設されている。このガイド溝4bの底面4b′は前記支持面4aと平行になっている。また前記本体部4には、ガイドスリット4cが支持面4aと平行に、かつ幅方向に貫通するように形成されている。さらにまた前記本体部4の底面には、磁石4dが埋設されている。
【0020】
前記計測子5は、前記本体部4の支持面4aに摺動自在に支持されるスライド面5aを有する。このスライド面5aの上側には触針部5bが一体形成されている。この触針部5bは、断面三角形状をなし、前記開閉方向bと直角方向に延びる稜線5b′を有する。前記スライド面5aの、下面には前記本体部4のガイド溝4bに摺動自在に嵌合するガイド凸部5cが、前記開閉方向b方向に延びるように形成されている。また前記ガイド凸部5cには係止孔5dがスリット状に、かつ前記稜線5b′方向に貫通するように形成されている。
【0021】
前記本体部4上に計測子5をセットし、該計測子5を前記開閉方向b方向に移動させると、該計測子5の移動に伴って該計測子5と本体部4との前記隙間C方向寸法の合算値が変化する。前記本体部4には前記合算値を表示する目盛りSが刻印されている。例えば計測子5が本体部4に対して、図2に破線で示す相対位置に位置している場合は、該計測子5の位置に対応する目盛りS1は、前記合算値がCであることを表示している。
【0022】
前記隙間測定装置3で隙間を測定するには、まず計測子5のガイド凸部5cを前記本体部4のガイド溝4bに嵌合させ、スライド面5aを支持面4aに摺動自在に搭載し、前記ガイドスリット4c及び係止孔5に係止ピン7を挿入する。そしてこの本体部4と計測子5の組立体を、前記上辺部1c上の前記隙間計測ポイントeにセットする。このとき、前記本体部4は、磁石4dにより前記上辺部1c上に確実に吸着する。
【0023】
前記セットに当たっては、前記合算値が設計上の指示隙間より大きくなるように、前記計測子5の本体部4に対する相対位置を、例えば図2に実線で示す位置とし、この状態で本体部4及び計測子5の組立体をセットする。
【0024】
そして前記ドア2を閉じて行くと、図2に実線で示す非接触状態A1から、同図に二点鎖線で示す接触状態A2を経て、同図に破線で示す全閉位置A3状態となり、前記計測子5は破線で示す位置までドア2の周壁部2cにより押圧移動され、この位置に停止する。この測定作業において、計測子5は係止ピン7により本体部4に連結されているので、計測子5が本体部4から落下することはない。
【0025】
前記ドア2を全閉させた後、該ドア2を開くと、前記計測子5は前記破線で示す前記全閉時位置に残ることとなる。この状態で前記計測子5の位置に対応する目盛りS1を読むことにより、前記本体部4及び計測子5の合算値が計測隙間Cであることが判る。
【0026】
なお、前記ドア2を全閉としたとき、前記計測子5が必ずしも前記隙間計測ポイントeに精度良く一致するとは限らない。従って計測子5の位置如何によって計測隙間が設計値と異なることとなるが、これは実用上問題とならない程度の誤差と言える。
【0027】
このように本実施例では、従来のような粘土を使用することなく隙間を測定でき、また作業者による測定バラツキもなく、正確にロッカパネル1の上辺部1cの隙間計測ポイントeにおけるドア2の周壁部2cとの隙間Cを測定できる。
【0028】
またことの場合、本体部4に合算値を表示する目盛りSを設けたので、前記計測子5の位置に対応する本体部の目盛りS1を読むことで、簡単にかつ正確に隙間を測定できる。
【0029】
また前記本体部4のガイドスリット4c及び計測子5の係止孔5dに係止ピン7を挿入して計測子5を本体部4に連結したので、計測子5が落下するのを回避できる。
【実施例2】
【0030】
図5は本発明の実施例2に係る隙間測定装置における計測子を示す。本実施例2における計測子15は前記本体部4と組み合わせて使用される。該計測子15のスライド面15aは、本体部4と略同じ長さに設定されている。また前記スライド面15aの上側には触針部15bが一体形成されている。この触針部15bは、前記本体部4の支持面4aに対して一端15′側が高くなる傾斜をなすように形成されており、前記開閉方向bと直角方向に延びる稜線15b′を有する。また前記スライド面15aの、下面には前記本体部4のガイド溝4bに摺動自在に嵌合されるガイド凸部15cが、前記開閉方向b方向に延びるように形成されている。また前記ガイド突部15cには係止孔15dがスリット状に、かつ前記稜線15b′方向に貫通するように形成されている。
【0031】
本実施例2では、前記計測子5のスライド面15aが本体部4の支持面4aと同じ長さを有するので、該計測子5を安定的に支持できる。
【0032】
なお、前記実施例では、ロッカパネル1とドア2との隙間に対して、本体部4と計測子5又は15との合算値が適正であり、そのままで前記隙間を測定可能の場合を説明したが、本発明装置は、前記合算値が計測しようとする隙間に対して過少である場合には、本体部4と車体側固定部材との間にシムプレートを介在させることにより測定が可能となる。
【0033】
また、前記実施例1,2では、車体構成部材であるロッカパネルのドア開口部分とドアの周壁部との隙間を測定する場合を説明したが、本発明はドアの隙間の測定に限られるものではない。
【0034】
本発明は、固定部材と、該固定部材に対して相対移動可能に、かつ固定部材との隙間が移動に伴って狭くなるように配設された可動部材との該隙間を測定する場合に好適であり、このような観点から本発明を前記実施例1,2の上位概念で表現すれば以下のようになる。
【0035】
即ち、本発明の隙間測定装置は、前記固定部材に搭載される本体部と、該本体部の支持面に前記可動部材の移動方向と同方向に移動可能に支持され、かつ前記可動部材により移動される計測子とを備え、前記支持面は、前記計測子の移動に伴って該計測子と本体部との前記隙間方向寸法の合算値が変化するように形成され、前記可動部材が所定位置に移動したときの前記計測子と本体部との前記合算値を計測隙間とする。
【0036】
また、本発明の隙間測定装置は、固定部材同士の隙間あるいは間隔を計測する場合にも適用でき、さらにまた1つの部材に形成された溝やクラックの幅あるいは隙間を計測する場合にも適用できる。この場合は、前記計測子がセットされた本体部を被測定隙間部分に挿入し、該計測子を被測定隙間の大きさに応じて移動させる。そして計測子の移動が停止された状態で、本体部と計測子との合算値を計測すれば、該合算値が計測隙間となる。
【符号の説明】
【0037】
3 隙間測定装置
4 本体部
5 計測子
C 合算値,計測隙間
S 目盛り
S1 計測子位置に対応する目盛り

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、該本体部に配設された計測子とを含み、前記本体部と計測子との合算値により隙間を測定する隙間測定装置であって、
前記計測子は前記合算値が変化するように前記本体部に移動可能に配設されている
ことを特徴とする隙間測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の隙間測定装置において、
前記本体部には、前記合算値を表示する目盛りが設けられ、
前記本体部に対する前記計測子の相対位置に対応する前記目盛りを計測隙間とする
ことを特徴とする隙間測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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