障害物検出装置
【課題】従来の障害物の位置を求める開口合成法は距離画像の画像処理で濃度勾配を求め勾配方向から障害物の大まかな傾き角度を推定できるが距離画像はボケが大きいため、求めた傾き角度には大きな誤差が含まれる。
【解決手段】複数個の超音波センサの中の1個から信号発信部で生成された超音波信号を発信し、障害物から反射され、複数個の超音波センサが得た超音波信号を信号受信部で受信・記憶し、この受信超音波信号から障害物位置検出部で障害物位置を特定し、各超音波センサの受信信号中から障害物からの反射波を特定して、超音波センサ間での反射波の信号強度の比率を求め、障害物と超音波センサと障害物の角度をパラメータとして、各超音波センサで得られる障害物からの反射波の信号強度比が格納された信号強度比角度算出テーブルを参照して障害物の角度を求める信号強度比角度推定部を備える。
【解決手段】複数個の超音波センサの中の1個から信号発信部で生成された超音波信号を発信し、障害物から反射され、複数個の超音波センサが得た超音波信号を信号受信部で受信・記憶し、この受信超音波信号から障害物位置検出部で障害物位置を特定し、各超音波センサの受信信号中から障害物からの反射波を特定して、超音波センサ間での反射波の信号強度の比率を求め、障害物と超音波センサと障害物の角度をパラメータとして、各超音波センサで得られる障害物からの反射波の信号強度比が格納された信号強度比角度算出テーブルを参照して障害物の角度を求める信号強度比角度推定部を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数個の超音波センサを有した障害物検出装置において、障害物の位置だけでなく、板状や棒状等の障害物の傾き角度を高精度に推定するものである。
【背景技術】
【0002】
複数個の超音波センサを用いて障害物の位置を検出する方法として、特開2006-105657号(特許文献1)公報に示されている開口合成法がある。
【0003】
開口合成法では、相対位置関係が既知である複数個の超音波センサを用い、ある超音波センサから超音波を出力すると、その超音波は障害物から反射して超音波を出力する超音波センサを含む複数個の超音波センサに届く。この際、音速は一定であるため、障害物と超音波センサとの距離に比例して各超音波センサにおける反射波の受信時刻にずれが生じる。この受信時刻のずれから、三角測量の原理に従って障害物の位置を推定する方式が開口合成法である。
【0004】
ここで、開口合成法の結果は距離画像として表現できる。距離画像は、センシングエリアを上から俯瞰した2次元平面上の、どこに障害物があるかを示す画像である。距離画像上の各座標点は値を持つ。これは、全超音波センサの受信信号から該座標点に対応した信号の強度値を取り出し、それらを足し合わせた値である。そのため、大きな値を持つ座標点には、障害物が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-105657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
開口合成法は、一般に障害物の位置を求めるために利用される。しかし、距離画像を利用して障害物の傾き角度を荒く推定することも可能と考えられる。例えば、距離画像を画像処理して濃度勾配を計算すると、その勾配方向から障害物の大まかな傾き角度を推定できる。ただし距離画像はボケが大きいため、求めた傾き角度には大きな誤差が含まれる課題がある。
【0007】
この発明は上記の問題点を解決するためになされたものである。複数個の超音波センサの各超音波センサに反射波が到達する時間の差異だけではなく、各超音波センサで得た反射波の信号強度の比率も利用して、障害物の傾き角度を推定することを特徴とする。従来は利用していない信号強度比率も用いて傾き角度を推定するため、従来法単体よりも傾き角度の推定精度を高めることができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る障害物検出装置は、
複数個の超音波センサと、
上記複数個の超音波センサの中の1個の超音波センサから発信するための超音波信号を生成する信号発信部と、
1個の超音波センサから発信され障害物から反射され、複数個の超音波センサが受信した超音波信号を受信し記憶する信号受信部と、
複数個の超音波センサの受信超音波信号から障害物位置を特定する障害物位置検出部と、
障害物と超音波センサとの位置関係および障害物の角度をパラメータとして、各超音波センサで得られる障害物からの反射波の信号強度比が格納された信号強度比角度算出テーブルと、
各超音波センサの受信信号中から障害物からの反射波を特定して、超音波センサ間での反射波の信号強度の比率を求め、次いで信号強度比角度算出テーブルを参照して障害物と超音波センサの位置関係から障害物の角度を求め、その角度を現在対象としている障害物の傾き角度と判定する信号強度比角度推定部を備える。
【発明の効果】
【0009】
この発明による障害物検出装置によれば、信号強度比角度推定部で複数の超音波センサで得られた受信信号の中から障害物の位置に対応した反射波を特定し、その信号強度の比率を求め、この求めた信号強度の比率を予め作成した信号強度比角度算出テーブルと比較することで、推定精度の高い障害物の傾き角度を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態1における基本構成図である。
【図2】信号発信部の動作例の説明図である。
【図3】信号受信部の動作例を説明する4個の超音波センサが得た波形図である。
【図4】障害物位置検出部の動作例を説明する距離画像図である。
【図5】信号強度比角度推定部の動作原理を説明する送信波の伝播経路説明図である。
【図6】障害物の位置に対応した4個の超音波センサの反射波の波形図である。
【図7】障害物の位置と障害物の角度を変えた場合の4個の超音波センサの信号強度比を示す図である。
【図8】信号強度比角度算出テーブルの内容例の説明図である。
【図9】この発明の実施の形態2における基本構成図である。
【図10】距離画像角度推定部の処理後の傾き角度を示す距離画像図である。
【図11】最終的に得られた傾き角度を示す距離画像図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1を示す基本構成図である。
図中の101〜104は4個の超音波センサである。信号発信部105は超音波センサ101〜104に駆動信号を送り、この4個の超音波センサ101〜104の中の1個の超音波センサ、例えば超音波センサ101から超音波を出力させる。信号受信部106は超音波センサ101〜104で得た受信信号を取得する。障害物位置検出部107は受信信号から障害物の位置を特定する。信号強度比角度算出テーブル108は障害物と超音波センサとの位置関係および障害物の角度をパラメータとして、各超音波センサで得られる障害物からの反射波の信号強度比が格納されたデータテーブルである。
信号強度比角度推定部109は観測された信号強度比と信号強度比角度算出テーブル108の内容とを比較して、障害物の傾き角度を求める。結果出力部110は傾き角度の推定結果を外部へ出力する。111は板状の障害物、112はセンシングエリアである。
【0012】
図2は、信号発信部105の動作を説明する例である。201は信号発信部105の駆動信号により超音波センサ101から出力された送信波の例である。
図3は、信号受信部106の動作を説明する例である。301〜304は超音波センサ101〜104から得られた受信信号の例である。
図4は、障害物位置検出部107の動作を説明する例である。401は受信信号から作成した距離画像である。402は障害物の位置である。
図5は、信号強度比角度推定部109の動作原理を説明する例であり、501〜504は超音波センサ101から出した送信波の伝播経路である。
【0013】
図6は、障害物の位置に対応した反射波を示す例であり、601〜604は障害物の位置から得られた反射波である。
図7は、障害物の位置と障害物の角度を変えた場合の信号強度比の例である。701は距離150cmの障害物から得られた反射波強度比のグラフ、702は距離200cmの障害物から得られた信号強度比のグラフである。
図8は、信号強度比角度算出テーブルの内容を示す例である。801は障害物の位置と超音波センサの位置関係から求めた傾き角度の候補を示す。
【0014】
以下、図1〜図8までを適宜参照しつつ、この発明の処理内容について説明する。
まず、図1において信号発信部105は、1個の超音波センサに対して駆動信号を送る。これにより例えば超音波センサ101から超音波を障害物が存在するセンシングエリア112に向けて送信する。送信する信号は、例えば図2に示す送信波201である。超音波センサ101が超音波を送信すると同時に、超音波センサ101〜104は障害物111からの反射波の受信を開始する。
【0015】
次に、信号受信部106は、超音波センサ101〜104で受信した受信波を信号受信部106に備えられたメモリに記録する。図3はこのメモリに記録された受信波をグラフ化した例である。図3の301〜304は各々が超音波センサ101〜104に対応する。グラフの横軸は時間であり、縦軸は受信波の信号強度である。障害物111から戻ってきた反射波は信号強度が高くなる。音速は一定であるために、超音波センサ101が超音波を送信した時刻と信号強度が高くなった時刻とから、障害物111と超音波センサ間の距離を求めることができる。
【0016】
次に、障害物位置検出部107は、信号受信部106でメモリに記録された受信波のデータから、障害物の位置を特定する。この方法としては、三角測量の原理を利用して幾通りかの計算が可能である。以下では距離画像を生成する例で説明する。
【0017】
まず、センシングエリア112を上から俯瞰した2次元平面を考える。この2次元平面上の各座標点は値を持つ。この値は、超音波センサの取り付け位置を中心として円弧を描き、その円弧の半径に対応した時刻に得られた受信波の値を同一円弧上の座標点に加算していく。これを超音波センサ101〜104で得られた受信波301〜304に対して行う。このように作成した画像が距離画像である。距離画像において、障害物の存在した位置の座標点は大きな値をとる。例えば図4に示した401は生成した距離画像の例である。この距離画像401上で、画素値が閾値よりも高い部分を抽出する。このように抽出した領域402を障害物の位置とする。
【0018】
次に、信号強度比角度推定部109は、障害物の領域(位置)402における障害物の傾き角度を推定する。ここでは、まず障害物の位置402を元に、図5に示すように、超音波センサ101から出した送信波の伝播経路501〜504とその伝播距離を特定する。この伝播距離によって、受信波301〜304中のどの時刻の信号が障害物の位置402に対応した反射波であるかを求める。この結果、図6に示す601〜604が障害物の位置402に対応した反射波と特定できる。一般に障害物の傾き角度が0度であれば、伝播距離が近い超音波センサ101の反射波が最大となる。しかし反射波603は超音波センサ101の反射波601よりも約2倍大きい。このことから、障害物の傾き角度が0度より大きいことが推測される。
【0019】
この現象をまとめた結果を図7に示す。図7の701は超音波センサ101の前方150cmの位置に障害物を置いた場合のグラフである。グラフの横軸は障害物の傾き角度、縦軸は前記手段で求めた反射波の強度を示す。また702は超音波センサ101の前方200cmの位置に障害物を置いた場合のグラフである。これらのグラフに示すように、障害物の傾き角度と位置によって、各超音波センサで得られた反射波の信号強度比が変化する。そのため、反射波の信号強度比と障害物の位置から、障害物の傾き角度を逆推定できる。信号強度比角度推定部109では、この原理を元に傾き角度を推定する。
【0020】
上記原理により、信号強度比角度推定部109は、観測された反射波の信号強度比が1:1:2:2であった場合、この値を信号強度比角度算出テーブル108の内容を比較することで、傾き角度を推定する。ここで信号強度比角度算出テーブル108には図8に示すように、ある障害物の位置X,Yに特定の傾き角度を持つ障害物が存在した場合の信号強度比が格納されている。障害物の位置402がセンシングエリア112の座標上でX=50, Y=60の位置であった場合、データの801に示した領域を参照する。その中でもっとも観測された信号強度比率が1:1:2:2に近い値を持つものは、角度15度の場合である。よって、本障害物の傾き角度を15度と判定する。
即ち、信号強度比角度推定部は、各超音波センサの受信信号中から該障害物からの反射波を特定して、超音波センサ間での該反射波の信号強度の比率を求め、次に信号強度比角度算出テーブルを参照して障害物と超音波センサの位置関係が同じ条件下において同様な信号強度比を有する障害物の角度を求め、その角度を現在対象としている障害物の傾き角度と判定する。
最後に結果出力部110は、信号強度比角度推定部109で推定した傾き角度を外部に出力する。
【0021】
以上のように、本障害物検出装置は、複数超音波センサで得られた受信信号の中から障害物の位置に対応した反射波を特定し、その信号強度の比率を求める。これを予め作成した信号強度比角度算出テーブルと比較することで、障害物の傾き角度を推定することができる。
【0022】
実施の形態2.
実施の形態1では、反射波の信号強度から障害物の傾き角度を推定したが、反射波の信号強度による障害物の傾き角度推定結果と距離画像から求めた傾き角度とを統合して、より高精度に傾き角度を求める構成を取っても良い。本実施の形態では、この構成について説明する。
【0023】
図9はこの発明の実施の形態2を示す基本構成図である。
101から112までは、実施の形態1の基本構成と同じである。901は距離画像から障害物の傾き角度を推定する距離画像角度推定部、902は信号強度比角度推定部109および距離画像角度推定部901で得た傾き角度を比較して、信頼性の高い傾き角度を求める傾き角度統合判定部である。
図10は距離画像角度推定部901の動作を説明する例である。1001は微分画像、1002は微分画像から求めた障害物の傾き角度である。
図11は傾き角度統合判定部902の動作を説明する例である。1101は最終的に得られた傾き角度である。
【0024】
以下、図9〜図11までを適宜参照しつつ、この発明の処理内容について説明する。
図9において、信号発信部105が超音波センサ101〜104に対して駆動信号を出すと、それに応じて1個の超音波センサ、例えば超音波センサ101から超音波が発信される。その後、全ての超音波センサ101〜104で障害物111からの反射波の受信処理を行い、受信された信号は信号受信部106で信号受信部106に備えられたメモリに記録される。次に障害物位置検出部107ではメモリに記録された受信波から障害物の位置を検出し、信号強度比角度推定部109では信号強度比角度算出テーブル108を元に障害物111の角度を推定する。以上の処理は実施の形態1に記載された処理と同じである。本実施の形態では、これらの処理に加えて距離画像角度推定部901と傾き角度統合判定部902の処理が追加される。
【0025】
ここで距離画像角度推定部901は、障害物位置検出部107で作成された距離画像から障害物111の傾き角度を推定する。具体的には、距離画像に対して一般的な画像処理である微分処理を行うことで微分画像を作成する。これにより距離画像で障害物111周辺のエッジと、エッジが持つ方向が検出される。ここで近接するエッジが同一方向を持つ場合に、これらを統合する。統合したエッジの固まりの例を図10の1002に示す。図中に示すように障害物111周辺の傾き角度を荒く推定することができる。
【0026】
次に傾き角度統合判定部902は、距離画像角度推定部901で得た傾き角度と信号強度比角度推定部109で得た傾き角度を統合することで、信頼性の高い傾き角度を得る。例えば、両方の結果において、ある位置に類似した向きを持つ傾き角度が検出された場合は、これを信頼性が高い結果とみなして残す。また、ある位置に矛盾する傾き角度が検出された場合、もしくはどちらか一方でのみ傾き角度が検出された場合は、信頼性が低い推定結果と判定して削除する。このように両方の結果を比較することで信頼性の高い傾き角度のみが抽出される。図11は最終的に得られた結果の例であり、1101が信頼性の高い傾き角度を示す。
最後に結果出力部110は、傾き角度統合判定部902で得た傾き角度を外部に出力する。
【0027】
以上のように、本実施の形態に係る障害物検出装置は、反射波の信号強度から推定した障害物の傾き角度と、距離画像から求めた傾き角度とを統合して、最終的な傾き角度を得る。異なる情報に基づいた二つの推定結果を統合しているため、安定性が高く高精度な傾き角度を求めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
この発明による障害物検出装置は、例えば電車や自動車の車両に取り付けた数個程度の超音波センサで障害物の検知および障害物の傾きを高精度に推定でき車両周辺監視装置として利用可能性がある。
【符号の説明】
【0029】
101〜104;超音波センサ、105;信号発信部、106;信号受信部、107;障害物位置検出部、108;信号強度比角度算出テーブル、109;信号強度比角度推定部、110;結果出力部、111;板状の障害物、112;センシングエリア、901;距離画像角度推定部、902;傾き角度統合判定部。
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数個の超音波センサを有した障害物検出装置において、障害物の位置だけでなく、板状や棒状等の障害物の傾き角度を高精度に推定するものである。
【背景技術】
【0002】
複数個の超音波センサを用いて障害物の位置を検出する方法として、特開2006-105657号(特許文献1)公報に示されている開口合成法がある。
【0003】
開口合成法では、相対位置関係が既知である複数個の超音波センサを用い、ある超音波センサから超音波を出力すると、その超音波は障害物から反射して超音波を出力する超音波センサを含む複数個の超音波センサに届く。この際、音速は一定であるため、障害物と超音波センサとの距離に比例して各超音波センサにおける反射波の受信時刻にずれが生じる。この受信時刻のずれから、三角測量の原理に従って障害物の位置を推定する方式が開口合成法である。
【0004】
ここで、開口合成法の結果は距離画像として表現できる。距離画像は、センシングエリアを上から俯瞰した2次元平面上の、どこに障害物があるかを示す画像である。距離画像上の各座標点は値を持つ。これは、全超音波センサの受信信号から該座標点に対応した信号の強度値を取り出し、それらを足し合わせた値である。そのため、大きな値を持つ座標点には、障害物が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-105657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
開口合成法は、一般に障害物の位置を求めるために利用される。しかし、距離画像を利用して障害物の傾き角度を荒く推定することも可能と考えられる。例えば、距離画像を画像処理して濃度勾配を計算すると、その勾配方向から障害物の大まかな傾き角度を推定できる。ただし距離画像はボケが大きいため、求めた傾き角度には大きな誤差が含まれる課題がある。
【0007】
この発明は上記の問題点を解決するためになされたものである。複数個の超音波センサの各超音波センサに反射波が到達する時間の差異だけではなく、各超音波センサで得た反射波の信号強度の比率も利用して、障害物の傾き角度を推定することを特徴とする。従来は利用していない信号強度比率も用いて傾き角度を推定するため、従来法単体よりも傾き角度の推定精度を高めることができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る障害物検出装置は、
複数個の超音波センサと、
上記複数個の超音波センサの中の1個の超音波センサから発信するための超音波信号を生成する信号発信部と、
1個の超音波センサから発信され障害物から反射され、複数個の超音波センサが受信した超音波信号を受信し記憶する信号受信部と、
複数個の超音波センサの受信超音波信号から障害物位置を特定する障害物位置検出部と、
障害物と超音波センサとの位置関係および障害物の角度をパラメータとして、各超音波センサで得られる障害物からの反射波の信号強度比が格納された信号強度比角度算出テーブルと、
各超音波センサの受信信号中から障害物からの反射波を特定して、超音波センサ間での反射波の信号強度の比率を求め、次いで信号強度比角度算出テーブルを参照して障害物と超音波センサの位置関係から障害物の角度を求め、その角度を現在対象としている障害物の傾き角度と判定する信号強度比角度推定部を備える。
【発明の効果】
【0009】
この発明による障害物検出装置によれば、信号強度比角度推定部で複数の超音波センサで得られた受信信号の中から障害物の位置に対応した反射波を特定し、その信号強度の比率を求め、この求めた信号強度の比率を予め作成した信号強度比角度算出テーブルと比較することで、推定精度の高い障害物の傾き角度を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態1における基本構成図である。
【図2】信号発信部の動作例の説明図である。
【図3】信号受信部の動作例を説明する4個の超音波センサが得た波形図である。
【図4】障害物位置検出部の動作例を説明する距離画像図である。
【図5】信号強度比角度推定部の動作原理を説明する送信波の伝播経路説明図である。
【図6】障害物の位置に対応した4個の超音波センサの反射波の波形図である。
【図7】障害物の位置と障害物の角度を変えた場合の4個の超音波センサの信号強度比を示す図である。
【図8】信号強度比角度算出テーブルの内容例の説明図である。
【図9】この発明の実施の形態2における基本構成図である。
【図10】距離画像角度推定部の処理後の傾き角度を示す距離画像図である。
【図11】最終的に得られた傾き角度を示す距離画像図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1を示す基本構成図である。
図中の101〜104は4個の超音波センサである。信号発信部105は超音波センサ101〜104に駆動信号を送り、この4個の超音波センサ101〜104の中の1個の超音波センサ、例えば超音波センサ101から超音波を出力させる。信号受信部106は超音波センサ101〜104で得た受信信号を取得する。障害物位置検出部107は受信信号から障害物の位置を特定する。信号強度比角度算出テーブル108は障害物と超音波センサとの位置関係および障害物の角度をパラメータとして、各超音波センサで得られる障害物からの反射波の信号強度比が格納されたデータテーブルである。
信号強度比角度推定部109は観測された信号強度比と信号強度比角度算出テーブル108の内容とを比較して、障害物の傾き角度を求める。結果出力部110は傾き角度の推定結果を外部へ出力する。111は板状の障害物、112はセンシングエリアである。
【0012】
図2は、信号発信部105の動作を説明する例である。201は信号発信部105の駆動信号により超音波センサ101から出力された送信波の例である。
図3は、信号受信部106の動作を説明する例である。301〜304は超音波センサ101〜104から得られた受信信号の例である。
図4は、障害物位置検出部107の動作を説明する例である。401は受信信号から作成した距離画像である。402は障害物の位置である。
図5は、信号強度比角度推定部109の動作原理を説明する例であり、501〜504は超音波センサ101から出した送信波の伝播経路である。
【0013】
図6は、障害物の位置に対応した反射波を示す例であり、601〜604は障害物の位置から得られた反射波である。
図7は、障害物の位置と障害物の角度を変えた場合の信号強度比の例である。701は距離150cmの障害物から得られた反射波強度比のグラフ、702は距離200cmの障害物から得られた信号強度比のグラフである。
図8は、信号強度比角度算出テーブルの内容を示す例である。801は障害物の位置と超音波センサの位置関係から求めた傾き角度の候補を示す。
【0014】
以下、図1〜図8までを適宜参照しつつ、この発明の処理内容について説明する。
まず、図1において信号発信部105は、1個の超音波センサに対して駆動信号を送る。これにより例えば超音波センサ101から超音波を障害物が存在するセンシングエリア112に向けて送信する。送信する信号は、例えば図2に示す送信波201である。超音波センサ101が超音波を送信すると同時に、超音波センサ101〜104は障害物111からの反射波の受信を開始する。
【0015】
次に、信号受信部106は、超音波センサ101〜104で受信した受信波を信号受信部106に備えられたメモリに記録する。図3はこのメモリに記録された受信波をグラフ化した例である。図3の301〜304は各々が超音波センサ101〜104に対応する。グラフの横軸は時間であり、縦軸は受信波の信号強度である。障害物111から戻ってきた反射波は信号強度が高くなる。音速は一定であるために、超音波センサ101が超音波を送信した時刻と信号強度が高くなった時刻とから、障害物111と超音波センサ間の距離を求めることができる。
【0016】
次に、障害物位置検出部107は、信号受信部106でメモリに記録された受信波のデータから、障害物の位置を特定する。この方法としては、三角測量の原理を利用して幾通りかの計算が可能である。以下では距離画像を生成する例で説明する。
【0017】
まず、センシングエリア112を上から俯瞰した2次元平面を考える。この2次元平面上の各座標点は値を持つ。この値は、超音波センサの取り付け位置を中心として円弧を描き、その円弧の半径に対応した時刻に得られた受信波の値を同一円弧上の座標点に加算していく。これを超音波センサ101〜104で得られた受信波301〜304に対して行う。このように作成した画像が距離画像である。距離画像において、障害物の存在した位置の座標点は大きな値をとる。例えば図4に示した401は生成した距離画像の例である。この距離画像401上で、画素値が閾値よりも高い部分を抽出する。このように抽出した領域402を障害物の位置とする。
【0018】
次に、信号強度比角度推定部109は、障害物の領域(位置)402における障害物の傾き角度を推定する。ここでは、まず障害物の位置402を元に、図5に示すように、超音波センサ101から出した送信波の伝播経路501〜504とその伝播距離を特定する。この伝播距離によって、受信波301〜304中のどの時刻の信号が障害物の位置402に対応した反射波であるかを求める。この結果、図6に示す601〜604が障害物の位置402に対応した反射波と特定できる。一般に障害物の傾き角度が0度であれば、伝播距離が近い超音波センサ101の反射波が最大となる。しかし反射波603は超音波センサ101の反射波601よりも約2倍大きい。このことから、障害物の傾き角度が0度より大きいことが推測される。
【0019】
この現象をまとめた結果を図7に示す。図7の701は超音波センサ101の前方150cmの位置に障害物を置いた場合のグラフである。グラフの横軸は障害物の傾き角度、縦軸は前記手段で求めた反射波の強度を示す。また702は超音波センサ101の前方200cmの位置に障害物を置いた場合のグラフである。これらのグラフに示すように、障害物の傾き角度と位置によって、各超音波センサで得られた反射波の信号強度比が変化する。そのため、反射波の信号強度比と障害物の位置から、障害物の傾き角度を逆推定できる。信号強度比角度推定部109では、この原理を元に傾き角度を推定する。
【0020】
上記原理により、信号強度比角度推定部109は、観測された反射波の信号強度比が1:1:2:2であった場合、この値を信号強度比角度算出テーブル108の内容を比較することで、傾き角度を推定する。ここで信号強度比角度算出テーブル108には図8に示すように、ある障害物の位置X,Yに特定の傾き角度を持つ障害物が存在した場合の信号強度比が格納されている。障害物の位置402がセンシングエリア112の座標上でX=50, Y=60の位置であった場合、データの801に示した領域を参照する。その中でもっとも観測された信号強度比率が1:1:2:2に近い値を持つものは、角度15度の場合である。よって、本障害物の傾き角度を15度と判定する。
即ち、信号強度比角度推定部は、各超音波センサの受信信号中から該障害物からの反射波を特定して、超音波センサ間での該反射波の信号強度の比率を求め、次に信号強度比角度算出テーブルを参照して障害物と超音波センサの位置関係が同じ条件下において同様な信号強度比を有する障害物の角度を求め、その角度を現在対象としている障害物の傾き角度と判定する。
最後に結果出力部110は、信号強度比角度推定部109で推定した傾き角度を外部に出力する。
【0021】
以上のように、本障害物検出装置は、複数超音波センサで得られた受信信号の中から障害物の位置に対応した反射波を特定し、その信号強度の比率を求める。これを予め作成した信号強度比角度算出テーブルと比較することで、障害物の傾き角度を推定することができる。
【0022】
実施の形態2.
実施の形態1では、反射波の信号強度から障害物の傾き角度を推定したが、反射波の信号強度による障害物の傾き角度推定結果と距離画像から求めた傾き角度とを統合して、より高精度に傾き角度を求める構成を取っても良い。本実施の形態では、この構成について説明する。
【0023】
図9はこの発明の実施の形態2を示す基本構成図である。
101から112までは、実施の形態1の基本構成と同じである。901は距離画像から障害物の傾き角度を推定する距離画像角度推定部、902は信号強度比角度推定部109および距離画像角度推定部901で得た傾き角度を比較して、信頼性の高い傾き角度を求める傾き角度統合判定部である。
図10は距離画像角度推定部901の動作を説明する例である。1001は微分画像、1002は微分画像から求めた障害物の傾き角度である。
図11は傾き角度統合判定部902の動作を説明する例である。1101は最終的に得られた傾き角度である。
【0024】
以下、図9〜図11までを適宜参照しつつ、この発明の処理内容について説明する。
図9において、信号発信部105が超音波センサ101〜104に対して駆動信号を出すと、それに応じて1個の超音波センサ、例えば超音波センサ101から超音波が発信される。その後、全ての超音波センサ101〜104で障害物111からの反射波の受信処理を行い、受信された信号は信号受信部106で信号受信部106に備えられたメモリに記録される。次に障害物位置検出部107ではメモリに記録された受信波から障害物の位置を検出し、信号強度比角度推定部109では信号強度比角度算出テーブル108を元に障害物111の角度を推定する。以上の処理は実施の形態1に記載された処理と同じである。本実施の形態では、これらの処理に加えて距離画像角度推定部901と傾き角度統合判定部902の処理が追加される。
【0025】
ここで距離画像角度推定部901は、障害物位置検出部107で作成された距離画像から障害物111の傾き角度を推定する。具体的には、距離画像に対して一般的な画像処理である微分処理を行うことで微分画像を作成する。これにより距離画像で障害物111周辺のエッジと、エッジが持つ方向が検出される。ここで近接するエッジが同一方向を持つ場合に、これらを統合する。統合したエッジの固まりの例を図10の1002に示す。図中に示すように障害物111周辺の傾き角度を荒く推定することができる。
【0026】
次に傾き角度統合判定部902は、距離画像角度推定部901で得た傾き角度と信号強度比角度推定部109で得た傾き角度を統合することで、信頼性の高い傾き角度を得る。例えば、両方の結果において、ある位置に類似した向きを持つ傾き角度が検出された場合は、これを信頼性が高い結果とみなして残す。また、ある位置に矛盾する傾き角度が検出された場合、もしくはどちらか一方でのみ傾き角度が検出された場合は、信頼性が低い推定結果と判定して削除する。このように両方の結果を比較することで信頼性の高い傾き角度のみが抽出される。図11は最終的に得られた結果の例であり、1101が信頼性の高い傾き角度を示す。
最後に結果出力部110は、傾き角度統合判定部902で得た傾き角度を外部に出力する。
【0027】
以上のように、本実施の形態に係る障害物検出装置は、反射波の信号強度から推定した障害物の傾き角度と、距離画像から求めた傾き角度とを統合して、最終的な傾き角度を得る。異なる情報に基づいた二つの推定結果を統合しているため、安定性が高く高精度な傾き角度を求めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
この発明による障害物検出装置は、例えば電車や自動車の車両に取り付けた数個程度の超音波センサで障害物の検知および障害物の傾きを高精度に推定でき車両周辺監視装置として利用可能性がある。
【符号の説明】
【0029】
101〜104;超音波センサ、105;信号発信部、106;信号受信部、107;障害物位置検出部、108;信号強度比角度算出テーブル、109;信号強度比角度推定部、110;結果出力部、111;板状の障害物、112;センシングエリア、901;距離画像角度推定部、902;傾き角度統合判定部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の超音波センサと、
上記複数個の超音波センサの中の1個の超音波センサから発信するための超音波信号を生成する信号発信部と、
1個の超音波センサから発信され障害物から反射され、複数個の超音波センサが得た超音波信号を受信し記憶する信号受信部と、
複数個の超音波センサの受信超音波信号から距離画像を生成し、障害物位置を特定する障害物位置検出部と、
障害物と超音波センサの位置関係および障害物の角度をパラメータとして、各超音波センサで得られる障害物からの反射波の信号強度比が格納された信号強度比角度算出テーブルと、
各超音波センサの受信信号中から障害物からの反射波を特定して、超音波センサ間での反射波の信号強度の比率を求め、次いで信号強度比角度算出テーブルを参照して障害物と超音波センサの位置関係から障害物の角度を求め、その角度を対象としている障害物の傾き角度と判定する信号強度比角度推定部を備えたことを特徴とする障害物検出装置。
【請求項2】
上記障害物検出部で生成された距離画像から障害物の傾き角度を推定する距離画像角度推定部と、
この距離画像角度推定部で推定された障害物の傾き角度と、上記信号強度比角度推定部で信号強度比から推定された障害物の傾き角度とを入力して、信頼性の高い傾き角度を求める傾き角度統合判定部を備えることを特徴とする請求項1記載の障害物検出装置。
【請求項1】
複数個の超音波センサと、
上記複数個の超音波センサの中の1個の超音波センサから発信するための超音波信号を生成する信号発信部と、
1個の超音波センサから発信され障害物から反射され、複数個の超音波センサが得た超音波信号を受信し記憶する信号受信部と、
複数個の超音波センサの受信超音波信号から距離画像を生成し、障害物位置を特定する障害物位置検出部と、
障害物と超音波センサの位置関係および障害物の角度をパラメータとして、各超音波センサで得られる障害物からの反射波の信号強度比が格納された信号強度比角度算出テーブルと、
各超音波センサの受信信号中から障害物からの反射波を特定して、超音波センサ間での反射波の信号強度の比率を求め、次いで信号強度比角度算出テーブルを参照して障害物と超音波センサの位置関係から障害物の角度を求め、その角度を対象としている障害物の傾き角度と判定する信号強度比角度推定部を備えたことを特徴とする障害物検出装置。
【請求項2】
上記障害物検出部で生成された距離画像から障害物の傾き角度を推定する距離画像角度推定部と、
この距離画像角度推定部で推定された障害物の傾き角度と、上記信号強度比角度推定部で信号強度比から推定された障害物の傾き角度とを入力して、信頼性の高い傾き角度を求める傾き角度統合判定部を備えることを特徴とする請求項1記載の障害物検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−251895(P2012−251895A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125133(P2011−125133)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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