説明

障害物監視装置

【課題】車両周辺監視において、運転者の負担を軽減しつつ危険な状況を回避して車両周辺監視の効果を十分に発揮させる。
【解決手段】本願の実施例に係る障害物監視装置は、画像表示手段と、報知手段とを備える。画像表示手段は、車載カメラによって撮像された画像を、車載カメラが搭載された車両の車速条件を満たす場合に表示する。報知手段は、車載カメラによって撮像された画像から車両の周辺で障害物が画像認識された場合に、車速条件以外の速度であっても、画像とともに該障害物の存在を示す表示を行って報知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の前方または側方へカメラ視界が向けられた車載カメラによって撮像される障害物を認識し、該車両の運転者に該障害物を報知する障害物監視装置に関し、特に、運転者の負担を軽減しつつ危険な状況を回避して車両周辺監視の効果を十分に発揮させることが可能な障害物監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両の前部に備えられたカメラにより撮像された画像を表示することによって、車両の前方または進行方向に存在する他の車両や歩行者など、自車両の走行の障害となりうる障害物を運転者に認識させる装置が提案されてきた。
【0003】
例えば、特許文献1には、自車両の走行環境の検出結果に基づき、自動的に自車両の左右側方視界の画像表示をおこなうことによって、運転者の操作の煩わしさを低減して運転者が自車両の左右側方視界の安全確保をおこなうことを支援する車両用周辺視認装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、自車両と、該自車両の左右両側の障害物との間隔が基準値以下であることが検出された場合に、該障害物を画像表示する車両用周辺視認装置が開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、カーナビゲーション装置から取得される自車両の位置情報が所定の位置である場合で、車速が所定値以下であってブレーキがかけられたときに、表示装置の表示画面に車両の左右側方の周辺画像を強制的に切り替えて表示する車両側方監視装置が開示されている。
【0006】
また、特許文献4には、車両の前部に配置した左右方向の監視カメラにより該車両の左右方向の画像を取得させて記憶させる一方で、車両が進入する交差点における他の車両や歩行者の有無などの情報に基づき、表示装置の表示画面を所定割合で分割して該車両の左右方向の画像を表示させることにより、他の車両や歩行者の接近を運転者に事前に認識させることが可能な車両用周辺監視装置が開示されている。
【0007】
また、特許文献5には、車速が所定値以下であって、カーナビゲーション装置から取得される自車両の位置情報が交差点を示す情報である場合に、該交差点の近辺に存在する自車両の走行の障害となる状況であるとき、表示装置の表示画面に車両の左右側方の周辺画像を表示するノーズビュー装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−264722号公報
【特許文献2】特開2001−315575号公報
【特許文献3】特許第3417134号公報
【特許文献4】特開2006−119904号公報
【特許文献5】特開2004−322797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1〜5に代表される従来技術では、車両の左右側方を監視するカメラ視界が固定であるために、車両の進行方向によってはカメラ視界に死角が生じて障害物を検出できない場合があり、車両周辺監視の効果を十分に発揮していたとはいえなかった。
【0010】
また、上記特許文献1〜5に代表される従来技術は、カメラ画像をモニタ表示するのみであり、その表示画像の中に存在する危険の識別は運転者に委ねられていた。このため運転者は、車外を直視せずモニタ画面を注視することとなり、運転者の負担となるとともに危険な状況となっていた。
【0011】
本発明は、上記問題点(課題)を解消するためになされたものであって、車両周辺監視において、運転者の負担を軽減しつつ危険な状況を回避して車両周辺監視の効果を十分に発揮させることが可能な障害物監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した問題を解決し、目的を達成するため、本発明は、車両の前方または側方へカメラ視界が向けられた車載カメラによって撮像された画像を前記車両の車速に応じて該車両の運転者に所定の画像表示装置の表示画面にて表示して報知する障害物監視装置において、前記車両の周辺で障害物が認識された場合に、前記車両の車速にかかわらず、該障害物を前記所定の画像表示装置の表示画面に表示して報知する報知手段を有することを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、上記発明において、前記障害物を認識した場合に、該障害物の前記車両に対する相対位置または該車両に対する相対速度の少なくとも一方に基づき、該車両との衝突の危険度の高さが所定値以上であるか否かを判定する危険度判定手段をさらに有し、前記報知手段は、前記危険度判定手段によって前記障害物と前記車両との衝突の危険度の高さが前記所定値以上であると判定された場合に、前記車両の車速にかかわらず、画像表示装置の表示画面に該障害物を識別可能に強調表示して報知することを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、上記発明において、前記危険度判定手段によって前記障害物と前記車両との衝突の危険度の高さが前記所定値以上であると判定された場合に、該車両の制動装置および駆動装置を制御して該車両の駆動を制限する駆動制限手段をさらに有することを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、上記発明において、前記危険度判定手段は、前記車両に有しられるカーナビゲーション装置から取得される情報に基づき該車両と前記障害物との衝突の危険度を判定することを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、上記発明において、前記危険度判定手段は、外部から取得される道路交通情報に基づき該車両と前記障害物との衝突の危険度を判定することを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、上記発明において、前記危険度判定手段は、所定の単位時間において前記障害物を認識した回数が所定回数以上の場合に、前記車両と該障害物との衝突の危険度の高さをより高く判定することを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、上記発明において、前記危険度判定手段は、前記車両と該障害物との衝突の危険度の高さをより高く判定した判定結果を所定時間保持することを特徴とする。
【0019】
また、本発明は、上記発明において、前記障害物が認識されない場合に、前記車両の速度または進行方向に応じて、前記カメラ視界が該車両の正面方向となす角度を制御するカメラ視界角度制御手段をさらに有し、前記カメラ視界角度制御手段は、前記車両の速度が所定速度未満かつ前記進行方向が所定方向となったとき、前記角度を所定角度以上へと制御して前記カメラ視界を該車両の側方へ向け、該車両の速度が前記所定速度以上かつ該進行方向が該所定方向とは異なる方向となったとき、該角度を該所定角度未満へと制御して前記カメラ視界を該車両の前方へ向けることを特徴とする。
【0020】
また、本発明は、上記発明において、前記車載カメラは、前記車両の左側方へカメラ視界が向けられ、前記進行方向と第1の角度をなす第1の車載カメラと、該車両の右側方へカメラ視界が向けられ、前記進行方向と第2の角度をなす第2の車載カメラとを少なくとも含み、前記カメラ視界角度制御手段は、前記車両の速度が所定速度未満かつ前記進行方向が所定方向となったとき、前記第1の角度および前記第2の角度を前記所定角度以上へと制御し、かつ該進行方向へカメラ視界が向けられた前記車載カメラのカメラ視界が前記車両の正面方向となす角度よりも該進行方向とは異なる方向へカメラ視界が向けられた前記車載カメラのカメラ視界が前記車両の正面方向となす角度が大きくなるように制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、障害物が認識された場合に、車両の車速にかかわらず、該障害物を所定の画像表示装置の表示画面に表示して報知するので、車速にかかわらず障害物の報知を確実におこなうことが可能になるという効果を奏する。
【0022】
また、本発明によれば、危険度判定手段によって障害物と車両との衝突の危険度の高さが所定値以上であると判定された場合に、車両の車速にかかわらず、画像表示装置の表示画面に該障害物を識別可能に強調表示して報知するので、より認識しやすく障害物の報知をおこなうことが可能になるという効果を奏する。
【0023】
また、本発明によれば、障害物と車両との衝突の危険度の高さが所定値以上であると判定された場合に、該車両の制動装置および駆動装置を制御して該車両の駆動を制限するので、車両の駆動制限によって自動的に車両の周辺に存在する障害物との衝突を回避するので、ヒューマンエラーによる障害物との衝突を防止することが可能になるという効果を奏する。
【0024】
また、本発明によれば、危険度判定手段は、車両に備えられるカーナビゲーション装置から取得される情報に基づき該車両と障害物との衝突の危険度を判定するので、カーナビゲーション装置から取得される道路状況や周辺状況に基づいて危険度の判定をより高い精度で行うことが可能になるという効果を奏する。
【0025】
また、本発明によれば、外部から取得される道路交通情報に基づき該車両と障害物との衝突の危険度を判定するので、渋滞や工事による車線規制などの道路交通情報に基づいて危険度の判定をより高い精度で行うことが可能になるという効果を奏する。
【0026】
また、本発明によれば、危険度判定手段は、単位時間において障害物を認識した回数が所定回数以上の場合に、車両と該障害物との衝突の危険度の高さをより高く判定するので、障害物認識の頻度が高ければ高いほど危険度の判定をより高く判定して危険の認識を高めることが可能になるという効果を奏する。
【0027】
また、本発明によれば、危険度判定手段は、車両と該障害物との衝突の危険度の高さをより高く判定した判定結果を所定時間保持するので、障害物認識の頻度が高い場合に高く判定した危険度の判定結果を保持し、危険の認識をより持続させることが可能になるという効果を奏する。
【0028】
本発明によれば、車両の速度または進行方向に応じて、カメラ視界が該車両の正面方向となす角度を制御するので、車両の走行状況に応じて適切にカメラ視界を確保して、車両の周辺に存在する障害物を監視することが可能になるという効果を奏する。また、カメラ視界角度制御手段は、前記車両の速度が所定速度未満かつ前記進行方向が所定方向となったとき、前記角度を所定角度以上へと制御して前記カメラ視界を該車両の側方へ向け、該車両の速度が前記所定速度以上かつ該進行方向が該所定方向とは異なる方向となったとき、該角度を該所定角度未満へと制御して前記カメラ視界を該車両の前方へ向けるので、車両の速度に応じて車両の前方または側方へと適切にカメラ視界を確保して、車両の周辺に存在する障害物を監視することが可能になるという効果を奏する。
【0029】
また、本発明によれば、カメラ視界角度制御手段は、進行方向が所定方向となった場合に、第1の角度および第2の角度を所定角度以上へと制御し、かつ該進行方向へカメラ視界が向けられた車載カメラのカメラ視界が車両の正面方向となす角度よりも該進行方向とは異なる方向へカメラ視界が向けられた車載カメラのカメラ視界が車両の正面方向となす角度が大きくなるように制御するので、車両の進行方向に応じて車両の前方または側方へと適切にカメラ視界を確保し、かつ車両の進行方向に応じてより死角となる方向へとカメラ視界を変化させるので、車両の周辺に存在する障害物を効率よく監視することが可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施例1にかかる障害物監視装置の構成および関連する車載装置のネットワーク構成を説明する図である。
【図2】画像パターンデータテーブルの例を示す図である。
【図3】監視カメラ視界角度を説明するための図である。
【図4】監視カメラ視界角度を説明するための図である。
【図5】監視カメラ視界角度を説明するための図である。
【図6】障害物が認識され、表示部11aの表示画面に該障害物が表示される概要を説明するための図である。
【図7−1】表示制御部13fによって障害物が識別表示される概要を説明するための図である。
【図7−2】表示制御部13fによって障害物が識別表示される概要を説明するための図である。
【図7−3】表示制御部13fによって障害物が識別表示される概要を説明するための図である。
【図8】障害物が認識され、表示部11aおよび音声発生部11bから運転者に対する警報が発せられ、ブレーキ制御部40cおよびスロットル制御部50aが制御されて車両の走行が制限される概要を説明するための図である。
【図9】実施例1にかかる障害物監視装置で実行される障害物監視処理手順を示すフローチャートである。
【図10】実施例1の障害物認識処理手順を示すフローチャートである。
【図11】実施例1の障害物認識外処理手順を示すフローチャートである。
【図12】実施例2(その1)の障害物認識処理手順を示すフローチャートである。
【図13】実施例2(その2)の障害物認識処理手順を示すフローチャートである。
【図14】実施例2(その3)の障害物認識処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に添付図面を参照し、本発明の障害物監視装置に係る実施例を詳細に説明する。以下の実施例では、車両の前部に2台の監視カメラが備えられている場合を前提とする。この場合、この2台の監視カメラは、カメラ視界が車両の左側方へ向いた左方監視カメラ、およびカメラ視界が車両の右側方へ向いた右方監視カメラである。左方監視カメラおよび右方監視カメラは、通常はそのカメラ視界を車両の左側方および右側方へと向けるが、所定の条件が満たされた場合(例えば車速が所定速度以上など)に、カメラ視界を左側方および右側方から車両の前方へと変化させることができる。すなわち、左方監視カメラおよび右方監視カメラは、そのカメラの向く方向を制御して任意にカメラ視界を変化させることが可能である。
【0032】
なお、以下の実施例では、障害物監視装置によって認識される障害物は、歩行者または他の車両であるとする。しかし、これに限らず、障害物は、自車両の進路を妨害し、自車両との接触の可能性がある物体一般であってもよい。
【実施例1】
【0033】
以下に図1〜図10を参照して、本発明にかかる実施例1を説明する。実施例1は、監視カメラで撮像された車両の左右側方または前方の画像から車両の障害物を認識し、該障害物と自車両との接触の危険性を判定し、該危険性が所定値以上である場合に該危険性を自車両の運転者に報知するとともに、車両の駆動を制限する実施例である。なお、監視カメラで車両の左右側方または前方の画像を撮像する際に、車速が所定値以上でなくタイヤ操舵角が所定値以上である場合に、監視カメラのカメラ視野を自車両の左右側方へ向け、車速が所定値以上またはタイヤ操舵角が所定値以上でない場合に、監視カメラのカメラ視野を自車両の前方へ向ける制御をおこなう。
【0034】
先ず、実施例1にかかる障害物監視装置の構成について説明する。図1は、実施例1にかかる障害物監視装置の構成および関連する車載装置のネットワーク構成を説明する図である。同図に示すように、車両1において、障害物監視装置10と、カーナビゲーション装置20aと、VICS(登録商標)などの交通通情報を受信する交通情報受信装置20bと、車両1の前部に備えられ該車両1の前方から左側方の間にカメラ視界を設定して障害物を撮像する左方監視カメラ30aと、同じく車両1の前部に備えられ該車両1の前方から右側方の間にカメラ視界を設定して障害物を撮像する右方監視カメラ30bと、車両の電装装置群を制御する艤装系制御部40と、エンジンの電子燃料噴射を制御するエンジン制御装置50とが、CAN(Controller Area Network)2を介して相互通信可能に接続されている。
【0035】
障害物監視装置10は、左方監視カメラ30aまたは右方監視カメラ30b(以下、これらを監視カメラ30と総称する)によって撮像された画像に含まれている障害物を認識する装置である。障害物監視装置10は、ディスプレイ装置などの表示手段である表示部11aと、スピーカなどの音声発生手段である音声発生部11bと、記憶部12と、制御部13とを有する。
【0036】
記憶部12は、障害物画像パターンデータ記憶部12aをさらに有する記憶手段である。障害物画像パターンデータ記憶部12aには、図2に示すように「画像パターン名」に「画像パターンデータ」が画像パターンデータテーブルにて対応付けられて記憶されている。「画像パターン名」は、障害物を識別する名称であり、図2の例では“歩行者”および“車両”がある。これらに「画像パターンデータ」として“歩行者画像パターンデータ”および“車両画像パターンデータ”が対応付けられている。
【0037】
「画像パターンデータ」は、監視カメラ30によって撮像された画像から特定の画像パターンを抽出するための画像データである。「画像パターンデータ」は、監視カメラ30によって撮像された画像の少なくとも一部とのパターンマッチングによる一致の尤度が所定値以上(例えば90%以上)である場合に、当該画像に特定の画像パターンが含まれていると判定される。このようにして、監視カメラ30によって撮像された画像の少なくとも一部にどのような画像(“歩行者”または“車両”)が含まれているかが認識可能となる。
【0038】
なお、図2では、一つの「画像パターン名」には一つの「画像パターンデータ」のみが対応するとしているが、“歩行者”および“車両”の形態・態様には種々のパターンが存在するため、一つの「画像パターン名」に複数の「画像パターンデータ」が対応していてもよい。
【0039】
制御部13は、障害物監視装置10の全体の制御をつかさどる制御部であり、特に実施例1に関連する構成として、カメラ視界角度制御部13aと、障害物認識部13bと、危険度判定部13cと、危険度報知制御部13dと、駆動制限制御部13eと、表示制御部13fとをさらに有する。
【0040】
カメラ視界角度制御部13aは、監視カメラ30のカメラ視界の角度を制御する制御部である。監視カメラ30のカメラ視界の角度は、図3に示すように、車両1の進行方向と左方監視カメラ30aのカメラ視界(以下、左方監視カメラ視界と呼ぶ)の中心線がなす角度をθ1、車両1の進行方向と右方監視カメラ30bのカメラ視界(以下、右方監視カメラ視界と呼ぶ)の中心線がなす角度をθ2とした場合のこれらθ1およびθ2である。
【0041】
カメラ視界角度制御部13aが前述のθ1およびθ2を制御することによって、図4に示すように、監視カメラ30のカメラ視界を車両1の前方から左右側方まで変化させることが可能となる。例えばθ1、θ2をともに0[°]程度とすると、左方監視カメラ視界および右方監視カメラ視界を車両1の前方へ向けることが可能となる。一方、例えばθ1、θ2をともに90[°]程度とすると、左方監視カメラ視界を車両1の左側方へ向けることが可能となり、右方監視カメラ視界を車両1の右側方へ向けることが可能となる。このように、θ1、θ2をそれぞれおおむね0[°]から90[°]の間で変化させることによって、監視カメラ視界を制御することが可能となる。
【0042】
言うまでもなく、前述のθ1、θ2は、必ずしも同一である必要はなく、車両1が置かれた状況に応じて個別に制御可能である。図5に示すように、車両1が右折する状況において、車両1の右折方向とは逆の左側方は死角となりやすいが、進行方向の反対側にカメラ視界が向けられた左方監視カメラ30aのカメラ視界の角度θ1と、進行方向側にカメラ視界が向けられた右方監視カメラ30bのカメラ視界の角度θ2とθ1>θ2となるように制御すると、カメラ視界の死角をより少なくすることが可能となる。車両1が左折する状況におけるθ1およびθ2は、θ1<θ2となるように制御すればよい。
【0043】
また、カメラ視界角度制御部13aは、車両1の車速またはタイヤ操舵角の少なくとも一方に基づいてθ1、θ2を制御する。車両1の車速は、艤装系制御部40の車速センサ40aから取得可能である。また、タイヤ操舵角は、艤装系制御部40のタイヤ操舵角検知部40bから取得可能である。タイヤ操舵角とは、ステアリング操作によって操舵されたタイヤが車両1の正面方向となす角度をいう。例えば、車速が所定値以上の高速であれば、車両1は直進していると推定されるので、車両1の前方の障害物を重点的に認識することが重要となる。このため、車速が所定値以上である場合にθ1、θ2を0[°]程度とすると、前方の障害物の認識の可能性がより高まる。
【0044】
一方で、車速が所定値未満の低速であり、かつタイヤ操舵角が所定値以上である場合は、車両1は左折または右折していると推定されるので、車両1の左側方または右側方の障害物を重点的に認識することが重要となる。このため、車速が所定値未満の低速であり、かつタイヤ操舵角が所定値以上である場合にθ1、θ2を90[°]程度とすると、左側方または右側方の障害物の認識の可能性がより高まる。
【0045】
障害物認識部13bは、監視カメラ30によって撮像された画像の少なくとも一部と、障害物画像パターンデータ記憶部12aに記憶されている「画像パターンデータ」との画像パターンマッチングをおこない、障害物を画像認識する処理部である。また、障害物認識部13bは、障害物の画像認識結果に基づいて、車両1と障害物との相対的な位置関係、車両1と障害物との距離、障害物の車両1に対する相対速度などを推定する。
【0046】
車両1と障害物との相対的な位置関係は、画像上の座標位置から該障害物の三次元での位置(距離・方向)を推定することが可能である。例えば、障害物が監視カメラ視界の中心付近にある場合は、該障害物が車両の進行方向に位置すると推定可能であり、障害物が監視カメラ視界の中心から外れた位置にある場合は、該障害物が車両の左右側方に位置すると推定可能である。さらに、撮像された障害物の画像大きさから、該障害物と車両1との距離を推定することが可能である。また、移動ステレオ法やオプティカルフローなどの手法を用いて、車速センサ40aから取得される車両1の車速に対する障害物の相対速度を推定することが可能である。
【0047】
危険度判定部13cは、障害物認識部13bによる画像認識結果に基づいて、障害物と車両1との接触の危険度を判定する。例えば、車両1と障害物との相対的な位置関係、車両1と障害物との距離、障害物の車両1に対する相対速度をそれぞれスコアリングした合計値が大きいほど危険度が高いと判定してもよい。この場合の危険度は、1〜10の10段階で評価し、1に近いほど危険度が低く、10に近いほど危険度が高いとする。そして評価された危険度が所定閾値(例えば、危険度5)を超えた場合に、運転者に対する危険報知が必要であると判定する。このように、歩行者や他の車両などの障害物は、周囲の環境や状況によって動きが異なるので、同じ位置に位置していたとしても危険度という指標を異ならせて運転者の注意喚起のレベルを変えることによって、危険報知の効果をより高めることが可能となる。
【0048】
危険度報知制御部13dは、危険度判定部13cによる危険度判定結果に基づいて、表示部11aに障害物を含む車両1の周囲の画像を表示し、音声発生部11bから該障害物との接触の危険性を報知する音声を発する制御をおこなう。このように、危険度判定部13cによる危険度判定結果に基づいて選択的に画像表示および音声発生をおこなうことにより、必要な危険情報のみを運転者に通知することとなり、運転者の負担を軽減することが可能となる。
【0049】
駆動制限制御部13eは、危険度判定部13cによって危険度が所定閾値以上であり該危険度の運転者への報知が必要と判定された場合に、後述のタイヤ操舵角検知部40bの検知結果に基づいて推定される車両1の進行方向と、障害物認識部13bによって推定される車両1と障害物との相対的な位置関係に基づく該障害物の存在方向とが一致するとき、エンジン制御装置50のスロットル制御部50aを制御して車両1の原動機へエネルギー供給を制限するとともに、艤装系制御部40のブレーキ制御部40cを制御してブレーキ油圧を上昇させて車両1の走行を制動する制御をおこなう。これにより、車両1の進行方向に障害物が存在する場合に、車両1と障害物が接触するというヒューマンエラーを防止することができる。
【0050】
表示制御部13fは、車両1の車速が所定値(例えば、時速20km)未満になると、障害物の認識にかかわらず表示部11aに監視カメラ30の画像を表示する。さらに、障害物を認識したならば、車両1の車速にかかわらず、認識された障害物を表示部11aに表示する。このとき、危険度判定部13cによる危険度判定結果に応じて、危険度が所定位置以上の高さであるとされる場合に、認識された障害物を表示部11aに表示する。例えば、車速が時速25kmであると、従来は、歩行者を表示部11aに表示しなかったが、実施例1によれば、例えば車速が時速25kmであっても、歩行者を認識した場合に表示部11aに表示するので、飛び出し等による接触事故等を車速にかかわらず未然に防止することができる。
【0051】
表示制御部13fは、危険度判定部13cによって危険度が所定閾値以上であり該危険度の運転者への報知が必要と判定された障害物を、表示部11aにおける画像表示において枠囲みやズームアップ(拡大)表示などによって強調表示して、運転者により認識しやすくする制御をおこなう。なお、危険度に応じて表示態様を異ならせ、より危険度が高い場合にはより認識しやすい強調表示や音声発生をおこなうことによって、危険報知の効果が向上する。
【0052】
次に、実施例1にかかる障害物監視装置によって車両の前方または左右側方の障害物が認識され、表示部11aの表示画面に該障害物が表示される概要を説明する。図6は、障害物が認識され、表示部11aの表示画面に該障害物が表示される概要を説明するための図である。同図に示すように、左方監視カメラ30aおよび右方監視カメラ30bによって撮像された車両1の前方または左右側方の画像に含まれる障害物が、障害物認識部13bによって認識される。そして、この認識結果に基づいて、危険度判定部13cによって、該障害物と車両1との接触の危険度が判定される。そして、障害物認識部13bの認識対象である障害物の危険度に応じて、表示部11aの表示画面に該障害物が表示されることとなる。
【0053】
なお、表示部11aにおける画像表示は、左方監視カメラ視界による画像と右方監視カメラ視界による画像とが連続となる場合には、連続する1画面表示としてもよい。また、左方監視カメラ視界による画像と右方監視カメラ視界による画像とが連続とならない場合には、表示部11aの表示画面を左右2分割表示することとしてもよい。この場合に、左方監視カメラ視界による画像と右方監視カメラ視界による画像とのうち、障害物を含む画像を拡大表示することとしてもよい。あるいは、左方監視カメラ視界による画像と右方監視カメラ視界による画像とのうち、障害物を含む画像のみを表示部11aの表示画面に表示することとしてもよい。また、2台の監視カメラ30を使用せず、一台の監視カメラを使用し、鏡による画像反射などを使用して1台の監視カメラのカメラ視界を同時に左右側方に確保することとしてもよい。この場合、カメラ視界の角度は、鏡の取り付け角度の制御によっておこなわれることとなる。
【0054】
次に、実施例1にかかる障害物監視装置の表示制御部13fによって障害物が識別表示される概要を説明する。図7−1〜図7−3は、表示制御部13fによって障害物が識別表示される概要を説明するための図である。図7−1は、表示部11aの表示画面に障害物が通常表示される元の画像を示す。
【0055】
この図7−1の元の画像に対して、表示制御部13fは、図7−2に示すように、図中の障害物である歩行者を枠で囲む強調表示を行うことが可能である。さらに、表示制御部13fは、図7−3に示すように、図7−2において枠で囲まれた部分をズームアップ(拡大)表示することが可能である。このようにして、運転者は、表示部11aの表示画面に表示される障害物を容易に認識・識別することが可能となる。
【0056】
なお、障害物を枠で囲む態様、障害物をズームアップ表示する態様を、危険度に応じて異ならせる(例えば、枠の色、枠の太さ、障害物を枠で囲んだ領域の輝度などを異ならせる)ことによって、危険報知の効果が向上する。
【0057】
次に、実施例1にかかる障害物監視装置によって車両の前方または左右側方の障害物が認識され、表示部11aおよび音声発生部11bから運転者に対する警報が発せられ、ブレーキ制御部40cおよびスロットル制御部50aが制御されて車両の走行が制限される概要を説明する。図8は、障害物が認識され、表示部11aおよび音声発生部11bから運転者に対する警報が発せられ、ブレーキ制御部40cおよびスロットル制御部50aが制御されて車両の走行が制限される概要を説明するための図である。
【0058】
同図に示すように、左方監視カメラ30aおよび右方監視カメラ30bによって撮像された車両1の前方または左右側方の画像に含まれる障害物が、障害物認識部13bによって認識される。そして、この認識結果に基づいて、危険度判定部13cによって、該障害物と車両1との接触の危険度が判定される。そして、障害物認識部13bの認識対象である障害物の危険度と、車両の走行方向と障害物の存在方向の一致とに応じて、表示部11aおよび音声発生部11bから運転者に対する警報が発せられ、ブレーキ制御部40cおよびスロットル制御部50aが制御されて車両の走行が制限されることとなる。
【0059】
次に、実施例1にかかる障害物監視装置で実行される障害物監視処理について説明する。図9は、実施例1にかかる障害物監視装置で実行される障害物監視処理手順を示すフローチャートである。同図に示すように、先ず、障害物認識部13bは、障害物が認識されたか否かを判定する(ステップS101)。障害物が認識されたと判定される場合に(ステップS101肯定)、ステップS102へ移り、障害物が認識されたと判定されない場合に(ステップS101否定)、ステップS103へ移る。
【0060】
ステップS102では、障害物監視装置10は、障害物認識処理をおこなう。この障害物認識処理の詳細は後述する。この処理が終了すると、ステップS104へ移る。一方、ステップS103では、障害物監視装置10は、障害物認識外処理をおこなう。この障害物認識外処理の詳細は後述する。この処理が終了すると、ステップS104へ移る。
【0061】
ステップS104では、障害物監視装置10は、障害物監視を終了するか否かを判定する。障害物監視を終了と判定される場合に(ステップS104肯定)、障害物監視処理は終了し、障害物監視を終了と判定されない場合に(ステップS104否定)、ステップS101へ移る。
【0062】
次に、図9に示した障害物監視処理のステップS102で実行される障害物認識処理の詳細について説明する。図10は、実施例1の障害物認識処理手順を示すフローチャートである。同図に示すように、先ず、表示制御部13fは、認識された障害物を表示部11aの表示画面にて識別可能に強調表示する(ステップS111)。続いて、危険度判定部13cは、認識された障害物と車両1との接触の危険度を判定する(ステップS112)。続いて、危険度判定部13cは、認識された障害物と車両1との接触の危険度は所定値以上か否かを判定する(ステップS113)。認識された障害物と車両1との接触の危険度は所定値以上であると判定される場合に(ステップS113肯定)、ステップS114へ移り、認識された障害物と車両1との接触の危険度は所定値以上であると判定されない場合に(ステップS113否定)、障害物監視処理へ復帰する。
【0063】
ステップS114では、危険度報知制御部13dは、認識された障害物と車両1との接触の危険度を車両1の運転者に報知するとともに、駆動制限制御部13eは、車両1の駆動を制限する。この処理が終了すると、障害物監視処理へ復帰する。
【0064】
次に、図9に示した障害物監視処理のステップS103で実行される障害物認識外処理の詳細について説明する。図11は、実施例1の障害物認識外処理手順を示すフローチャートである。同図に示すように、先ず、障害物認識部13bは、車速センサ40aから取得される車速が所定値以上か否かを判定する(ステップS121)。車速センサ40aから取得される車速が所定値以上であると判定される場合に(ステップS121肯定)、ステップS122へ移り、車速センサ40aから取得される車速が所定値以上であると判定されない場合に(ステップS121否定)、ステップS125へ移る。
【0065】
ステップS122では、表示制御部12fは、表示部11aの表示画面に監視カメラ30の撮像画像を表示せず、カーナビゲーション装置20aから出力される地図情報など監視カメラ30の撮像画像とは異なる画像を表示する。続いて、障害物認識部13bは、タイヤ操舵角検知部40bから取得されるタイヤ操舵角が所定値以上か否かを判定する(ステップS123)。タイヤ操舵角検知部40bから取得されるタイヤ操舵角が所定値以上であると判定される場合に(ステップS123肯定)、障害物監視処理へ復帰し、タイヤ操舵角検知部40bから取得されるタイヤ操舵角が所定値以上であると判定されない場合に(ステップS123否定)、ステップS124へ移る。
【0066】
ステップS124では、カメラ視界角度制御部13aは、監視カメラ30のカメラ視界角度を制御して、監視カメラ30のカメラ視界を前方へ向ける。この処理が終了すると、障害物監視処理へ復帰する。
【0067】
一方、ステップS125では、表示制御部12fは、表示部11aの表示画面に監視カメラ30の撮像画像を表示する。続いて、障害物認識部13bは、タイヤ操舵角検知部40bから取得されるタイヤ操舵角が所定値以上か否かを判定する(ステップS126)。タイヤ操舵角検知部40bから取得されるタイヤ操舵角が所定値以上であると判定される場合に(ステップS126肯定)、ステップS127へ移り、タイヤ操舵角検知部40bから取得されるタイヤ操舵角が所定値以上であると判定されない場合に(ステップS126否定)、障害物監視処理へ復帰する。
【0068】
ステップS127では、カメラ視界角度制御部13aは、監視カメラ30のカメラ視界角度を制御して、監視カメラ30のカメラ視界を左右側方へ向ける。この処理が終了すると、障害物監視処理へ復帰する。
【実施例2】
【0069】
以上、本発明にかかる実施例1を説明したが、本発明は、これに限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した技術的思想の範囲内で、更に種々の異なる実施例で実施されてもよいものである。以下に、この種々の異なる実施例を実施例2として説明する。以下に実施例2を3通り示すが、いずれも実施例1の図9の障害物監視処理のステップS102で実行される障害物認識処理のみが異なる実施例である。この点以外は、実施例2の障害物監視装置の構成および処理機能は実施例1と同一であるので、説明を省略する。
【0070】
先ず、実施例2(その1)の障害物認識処理について説明する。図12は、実施例2(その1)の障害物認識処理手順を示すフローチャートである。同図に示すように、先ず、危険度判定部13cは、認識された障害物と車両1との接触の危険度を判定する(ステップS131)。続いて、危険度判定部13cは、カーナビゲーション装置20aから取得される情報または交通情報受信装置20bにて受信される交通情報に基づいて、車両1の現在位置が危険地点であるか否かを判定する(ステップS132)。車両1の現在位置が危険地点であると判定される場合に(ステップS132肯定)、ステップS133へ移り、車両1の現在位置が危険地点であると判定されない場合に(ステップS132否定)、障害物監視処理へ復帰する。
【0071】
ステップS133では、認識された障害物と車両1との接触の危険度をさらに高く補正する。続いて、認識された障害物と車両1との補正後の接触の危険度は所定値以上か否かを判定する(ステップS134)。認識された障害物と車両1との補正後の接触の危険度は所定値以上であると判定される場合に(ステップS134肯定)、ステップS135へ移り、認識された障害物と車両1との補正後の接触の危険度は所定値以上であると判定されない場合に(ステップS134否定)、障害物監視処理へ復帰する。
【0072】
ステップS135では、危険度報知制御部13dは、認識された障害物と車両1との接触の危険度を車両1の運転者に報知するとともに、駆動制限制御部13eは、車両1の駆動を制限する。この処理が終了すると、障害物監視処理へ復帰する。
【0073】
実施例2(その1)の障害物認識処理によれば、カーナビゲーション装置20aから取得される車両1の現在位置に関する情報(例えば、道が狭いことの情報、事故多発地点であることの情報など)または交通情報受信装置20bにて受信される車両1の現在位置の交通情報(インフラ情報、事故多発地点であることの情報、渋滞情報など)に基づいて、車両1の現在位置が危険地点であるか否かに応じて危険度を高める補正をおこなうことによって運転者に報知される報知内容を通常と異ならせることにより、運転者は、危険な状況への迅速かつ的確な対応を取ることが可能となる。
【0074】
次に、実施例2(その2)の障害物認識処理について説明する。図13は、実施例2(その2)の障害物認識処理手順を示すフローチャートである。同図に示すように、先ず、危険度判定部13cは、認識された障害物と車両1との接触の危険度を判定する(ステップS141)。続いて、障害物認識部13bは、所定時間を計時し、該所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS142)。所定時間が経過したと判定される場合に(ステップS142肯定)、ステップS143へ移り、所定時間が経過したと判定されない場合に(ステップS142否定)、ステップS148へ移る。
【0075】
ステップS143では、障害物認識部13bは、認識された障害物の数を計数する。続いて、障害物認識部13bは、ステップS143で計数された障害物が所定数以上であるか否かを判定する(ステップS144)。ステップS143で計数された障害物が所定数以上であると判定される場合に(ステップS144肯定)、ステップS145へ移り、ステップS134で計数された障害物が所定数以上であると判定されない場合に(ステップS144否定)、障害物監視処理へ復帰する。
【0076】
ステップS145では、認識された障害物と車両1との接触の危険度をさらに高く補正する。続いて、認識された障害物と車両1との補正後の接触の危険度は所定値以上か否かを判定する(ステップS146)。認識された障害物と車両1との補正後の接触の危険度は所定値以上であると判定される場合に(ステップS146肯定)、ステップS147へ移り、認識された障害物と車両1との補正後の接触の危険度は所定値以上であると判定されない場合に(ステップS146否定)、障害物監視処理へ復帰する。
【0077】
ステップS147では、危険度報知制御部13dは、認識された障害物と車両1との接触の危険度を車両1の運転者に報知するとともに、駆動制限制御部13eは、車両1の駆動を制限する。この処理が終了すると、障害物監視処理へ復帰する。
【0078】
一方、ステップS148では、障害物認識部13bは、時間を計時するタイマをリセット(初期化)し、ステップS145の処理による危険度の補正をリセット(初期化)して補正前の危険度へと復帰させる(ステップS149)。この処理が終了すると、障害物監視処理へ復帰する。
【0079】
実施例2(その2)の障害物認識処理によれば、障害物として認識された歩行者または他の車両が所定の単位時間の間に所定数以上計数された場合に危険度を高める補正をおこなうことによって運転者に報知される報知内容が通常と異ならされることにより、より危険な状況が自動的に検知されるとともに、運転者は、危険な状況への迅速かつ的確な対応を取ることが可能となり、延いては安全性の向上を図ることが可能となる。
【0080】
また、実施例2(その2)の障害物認識処理によれば、所定の単位時間の間に認識された障害物の数が所定数以上である場合に、所定時間が経過しない限り危険度を高める補正を維持するので、障害物の出現を予め予見して危険な状況に対して継続的に対処可能な状態を保って高い危険度を認識しておくことが可能となる。
【0081】
次に、実施例2(その3)の障害物認識処理について説明する。図14は、実施例2(その3)の障害物認識処理手順を示すフローチャートである。同図に示すように、先ず、危険度判定部13cは、認識された障害物と車両1との接触の危険度を判定する(ステップS151)。続いて、駆動制限制御部13eは、車両1の進路は障害物が存在する方向と一致するか否かを判定する(ステップS152)。なお、車両1の進行方向(進路)は、タイヤ操舵角検知部40bにより取得されるタイヤ操舵角に基づいて推定されるとするが、これに限らず、ヨーレートセンサから取得される情報に基づいて推定されることとしてもよい。また、方向指示器が示す方向を車両1の進行方向とすることとしてもよい。
【0082】
車両1の進路は障害物が存在する方向と一致すると判定される場合に(ステップS152肯定)、ステップS153へ移り、車両1の進路は障害物が存在する方向と一致すると判定されない場合に(ステップS152否定)、ステップS157へ移る。
【0083】
ステップS153では、認識された障害物と車両1との接触の危険度をさらに高く補正する。続いて、認識された障害物と車両1との補正後の接触の危険度は所定値以上か否かを判定する(ステップS154)。認識された障害物と車両1との補正後の接触の危険度は所定値以上であると判定される場合に(ステップS154肯定)、ステップS155へ移り、認識された障害物と車両1との補正後の接触の危険度は所定値以上であると判定されない場合に(ステップS154否定)、障害物監視処理へ復帰する。
【0084】
ステップS155では、危険度報知制御部13dは、認識された障害物と車両1との接触の危険度を車両1の運転者に報知するとともに、駆動制限制御部13eは、車両1の駆動を制限する。続いて、表示制御部13fは、表示部11aの表示画面において、車両1の進行方向の部分の画像を拡大表示、枠囲み表示、反転表示、点滅表示などの強調表示などする(ステップS156)。この処理が終了すると、障害物監視処理へ復帰する。
【0085】
一方、ステップS157では、障害物認識部13bは、ステップS153の処理による危険度の補正をリセット(初期化)して補正前の危険度へと復帰させる。続いて、表示制御部13fは、ステップS156で行われた強調表示を解除する(ステップS158)。
この処理が終了すると、障害物監視処理へ復帰する。
【0086】
実施例2(その3)の障害物認識処理によれば、障害物が認識された方向と車両1の進行方向とが一致する場合に、表示部11aの表示画面においてその方向とともに障害物を強調表示して運転者に警告するので、運転者は、事故の発生しやすい右左折時において障害物の認識精度を高めることができ、安全性の向上を図ることが可能となる。
【0087】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は、これに限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した技術的思想の範囲内で、更に種々の異なる実施例で実施されてもよいものである。また、実施例に記載した効果は、これに限定されるものではない。
【0088】
また、上記実施例において説明した各処理のうち、自動的におこなわれるものとして説明した処理の全部または一部を手動的におこなうこともでき、あるいは、手動的におこなわれるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的におこなうこともできる。この他、上記実施例で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0089】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示のように構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。
【0090】
さらに、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPU(Central Processing Unit)(またはMPU(Micro Processing Unit)、MCU(Micro Controller Unit)などのマイクロ・コンピュータ)および当該CPU(またはMPU、MCUなどのマイクロ・コンピュータ)にて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、車両周辺監視において、運転者の負担を軽減しつつ危険な状況を回避して車両周辺監視の効果を十分に発揮させたい場合に有用であり、特に、車両の車速や進行方向に応じて監視カメラの視野方向を制御して、効率的に車両周辺監視をおこないたい場合に効果的である。
【符号の説明】
【0092】
10 障害物監視装置
11a 表示部
11b 音声発生部
12 記憶部
12a 障害物画像パターンデータ記憶部
13 制御部
13a カメラ視界角度制御部
13b 障害物認識部
13c 危険度判定部
13d 危険度報知制御部
13e 駆動制限制御部
13f 表示制御部
20a カーナビゲーション装置
20b 交通情報受信装置
30 監視カメラ
30a 左方監視カメラ
30b 右方監視カメラ
40 艤装系制御部
40a 車速センサ
40b タイヤ操舵角検知部
40c ブレーキ制御部
50 エンジン制御装置
50a スロットル制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載カメラによって撮像された画像を、前記車載カメラが搭載された車両の車速条件を満たす場合に表示する画像表示手段と、
前記画像から前記車両の周辺で障害物が画像認識された場合に、前記車速条件以外の速度であっても、前記画像とともに該障害物の存在を示す表示を行って報知する報知手段と
を有することを特徴とする障害物監視装置。
【請求項2】
車載カメラによって撮像された画像を、前記車載カメラが搭載された車両の車速条件を満たす場合に表示する画像表示手段と、
前記画像から前記車両の周辺で障害物が画像認識され、且つ、該障害物の画像認識結果に基づいて該障害物と前記車両との衝突の危険度が所定値以上と判定された場合に、前記車速条件以外の速度であっても、前記画像とともに該障害物の存在を示す表示を行って報知する報知手段と
を有することを特徴とする障害物監視装置。
【請求項3】
車載カメラによって撮像された画像を、前記車載カメラが搭載された車両の車速条件を満たす場合に表示する画像表示手段と、
前記画像から前記車両の周辺で障害物が画像認識され、且つ、該障害物の画像認識結果に基づいて該障害物と前記車両との衝突の危険度が所定値以上と判定された場合に、前記車速条件以外の速度であっても、前記画像とともに該障害物の存在を示す強調表示を行い、該危険度が低下した場合に、前記強調表示を解除する報知手段と
を有することを特徴とする障害物監視装置。
【請求項4】
車載カメラによって撮像された画像を、前記車載カメラが搭載された車両の車速条件を満たす場合に表示する画像表示手段と、
前記画像から前記車両の周辺で障害物が画像認識され、且つ、該障害物の画像認識結果に基づいて該障害物と前記車両との衝突の危険度が所定値以上と判定された場合に、前記車速条件以外の速度であっても、前記画像とともに該障害物の存在を示す表示を行って報知する報知手段と、
前記危険度が所定値以上と判定された場合に、前記車両のブレーキによって前記車両の走行を制動する駆動制限制御手段と
を有することを特徴とする障害物監視装置。
【請求項5】
前記報知手段は、
前記障害物を枠囲みする表示によって障害物の存在を示す
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の障害物監視装置。
【請求項6】
前記報知手段は、
前記障害物をズームアップ表示して障害物の存在を示す
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の障害物監視装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7−1】
image rotate

【図7−2】
image rotate

【図7−3】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2012−69154(P2012−69154A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−269290(P2011−269290)
【出願日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【分割の表示】特願2007−135708(P2007−135708)の分割
【原出願日】平成19年5月22日(2007.5.22)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】