説明

集合住宅建物

【課題】住戸内の梁型をなくすことができる板状の形態の集合住宅建物を提供する。
【解決手段】桁行方向に長い平面形状とされ、各階に複数の住戸12が桁行方向に沿って配置される板状の形態の集合住宅建物10において、桁行方向の主架構をラーメン構造14で構成し、梁間方向の主架構を耐震壁16で構成し、桁行方向の耐震補強架構を、住戸12内を通過するメガブレース構造18で構成した。メガブレース構造を、住戸内の仕切り壁に配置してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の住戸が集合して1棟の建物を構成している集合住宅建物に関し、特に、桁行方向に長い平面形状をなす板状の形態の集合住宅建物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、桁行方向に長い平面形状をなす板状の形態の集合住宅建物が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような板状の形態の集合住宅建物において、梁間方向は、梁型を内蔵した耐震壁構造とすることで住戸内の梁型をなくせるが、桁行方向(建物の長辺方向)は純ラーメンのため、梁型が出る構造架構となってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−295032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような板状の形態の集合住宅建物において、内部空間の使用性、美観、眺望に対する要望などから、住戸内の梁型をなくせる構造の開発が求められている。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、住戸内の梁型をなくすことができる板状の形態の集合住宅建物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の請求項1に係る集合住宅建物は、桁行方向に長い平面形状とされ、各階に複数の住戸が桁行方向に沿って配置される板状の形態の集合住宅建物において、桁行方向の主架構をラーメン構造で構成し、梁間方向の主架構を耐震壁で構成し、桁行方向の耐震補強架構を、前記住戸内を通過するメガブレース構造で構成したことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の請求項2に係る集合住宅建物は、上述した請求項1において、前記メガブレース構造を、前記住戸内の仕切り壁に配置したことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項3に係る集合住宅建物は、上述した請求項2において、前記仕切り壁は、水廻りゾーンの壁であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項4に係る集合住宅建物は、上述した請求項2または3において、梁間方向の梁型を前記耐震壁に内蔵し、桁行方向の梁型を前記メガブレース構造が配置される壁に内蔵することによって、前記住戸内の梁型をなくしたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項5に係る集合住宅建物は、上述した請求項1〜4のいずれか一つにおいて、前記耐震壁を、前記住戸間を区画する戸境壁として構成し、前記住戸の床を、前記耐震壁方向に向く一方向スラブで構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、桁行方向に長い平面形状とされ、各階に複数の住戸が桁行方向に沿って配置される板状の形態の集合住宅建物において、桁行方向の主架構をラーメン構造で構成し、梁間方向の主架構を耐震壁で構成し、桁行方向の耐震補強架構を、前記住戸内を通過するメガブレース構造で構成したので、住戸内の梁型を耐震壁やメガブレース構造に内蔵等することによって、住戸内の梁型をなくすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明に係る集合住宅建物を示す正面断面図である。
【図2】図2は、本発明に係る集合住宅建物を示す平面図である。
【図3】図3は、本発明の実施例1に係る集合住宅建物を示す正面図である。
【図4】図4は、本発明の実施例2に係る集合住宅建物を示す正面図である。
【図5】図5は、本発明の実施例3に係る集合住宅建物を示す正面図である。
【図6】図6は、本発明の実施例4に係る集合住宅建物を示す正面図である。
【図7】図7は、本発明の実施例5に係る集合住宅建物を示す正面図である。
【図8】図8は、住戸タイプ1の平面図である。
【図9】図9は、住戸タイプ2の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に係る集合住宅建物の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【0014】
図1および図2に示すように、本発明に係る集合住宅建物10は、桁行方向に長い平面形状とされ、各階に複数の住戸12が桁行方向に沿って配置される板状の形態の集合住宅建物である。集合住宅建物10の桁行方向の主架構はラーメン構造14で構成し、梁間方向の主架構は耐震壁16で構成してある。桁行方向の耐震補強架構は、住戸12内を通過する耐震要素のメガブレース構造18で構成してある。ここで、図1のハッチング部分Aに示すように、壁をブレース状に配置してもよい。この壁は無開口あるいは有開口の耐震壁で構成する。
【0015】
メガブレース構造18は、桁行方向のプラン中心部に設けてあり、例えば、住戸12内の水廻りゾーン等の壁を利用して構築することができる。耐震要素であるメガブレース構造18は1フレームであり、必ずしも剛心位置に設けられないため、集合住宅建物10にねじれ変形の発生が予想される場合には、梁間方向の耐震壁16を利用してねじれの力に抵抗するようにしてもよい。
【0016】
集合住宅建物の梁は、メガブレース構造18のブレースを繋ぐ水平梁と最上階の大梁のみとしてある。また、住戸12の床20は、耐震壁16方向に向く一方向スラブで構成され、耐震壁16に荷重を伝達するようにしてある。これにより、住戸12内の梁型をなくすことができる。
【0017】
このように、本発明によれば、住戸12内の梁型をなくすことができるので、集合住宅建物の階高が抑えられ、通常よりも建物の高さが抑えられる。また、住戸のレイアウトのフレキシビリティーが高まるので、内部空間の使用性、美観が向上し、眺望を良好なものとすることができる。
【0018】
次に、本発明の集合住宅建物の実施例1〜実施例5について説明する。
図3〜図7は、それぞれ本発明の実施例1〜実施例5の集合住宅建物の正面図である。実施例1〜実施例5の集合住宅建物は、スパン6m、階高3m程度で、壁柱の厚み500mm、ブレースの厚さ300mm程度の建物を想定したものである。実施例1は6階6スパン案(1)、実施例2は6階6スパン案(2)、実施例3は6階8スパン案、実施例4は6階7スパン案(1)、実施例5は6階7スパン案(2)としたものである。図3〜図7中の符号1の住戸タイプ1、符号2の住戸タイプ2のプランは、図8および図9にそれぞれ示してある。
【0019】
住戸タイプ1は、図8に示すように、玄関・廊下Fが住戸12の端に配置されるプランに対応するものである。住戸タイプ2は、図9に示すように、玄関・廊下Fが住戸12の中央からやや偏心した位置に配置される中廊下型のプランに対応するものである。
【0020】
全ての住戸ユニットが単独で成立するのは実施例2の6階6スパン案(2)である。図3、図5〜図7中(実施例1、3〜5)の符号3で示される住戸タイプ3の住戸については、階高が4m程度以上なければ開口が確保できないため、隣戸からの延長として使用する。集合住宅建物が階段室型マンションのような中入り住戸の場合には、メガブレース構造18のブレース面に向けて階段を配置することで、ブレースのプランに対する影響を殆どなくすことができる。なお、住戸タイプ1〜3に該当しない住戸については、一般的なタイプのプランに対応可能である。
【0021】
以上説明したように、本発明によれば、桁行方向に長い平面形状とされ、各階に複数の住戸が桁行方向に沿って配置される板状の形態の集合住宅建物において、桁行方向の主架構をラーメン構造で構成し、梁間方向の主架構を耐震壁で構成し、桁行方向の耐震補強架構を、前記住戸内を通過するメガブレース構造で構成したので、住戸内の梁型を耐震壁やメガブレース構造に内蔵等することによって、住戸内の梁型をなくすことができる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
以上のように、本発明に係る集合住宅建物は、複数の住戸が集合して1棟の建物を構成しているマンションなどの集合住宅建物に有用であり、特に、桁行方向に長い平面形状をなす板状の形態の集合住宅建物に適している。
【符号の説明】
【0023】
1 住戸タイプ1
2 住戸タイプ2
3 住戸タイプ3
10 集合住宅建物
12 住戸
14 ラーメン構造
16 耐震壁
18 メガブレース構造
20 床

【特許請求の範囲】
【請求項1】
桁行方向に長い平面形状とされ、各階に複数の住戸が桁行方向に沿って配置される板状の形態の集合住宅建物において、
桁行方向の主架構をラーメン構造で構成し、梁間方向の主架構を耐震壁で構成し、桁行方向の耐震補強架構を、前記住戸内を通過するメガブレース構造で構成したことを特徴とする集合住宅建物。
【請求項2】
前記メガブレース構造を、前記住戸内の仕切り壁に配置したことを特徴とする請求項1に記載の集合住宅建物。
【請求項3】
前記仕切り壁は、水廻りゾーンの壁であることを特徴とする請求項2に記載の集合住宅建物。
【請求項4】
梁間方向の梁型を前記耐震壁に内蔵し、桁行方向の梁型を前記メガブレース構造が配置される壁に内蔵することによって、前記住戸内の梁型をなくしたことを特徴とする請求項2または3に記載の集合住宅建物。
【請求項5】
前記耐震壁を、前記住戸間を区画する戸境壁として構成し、前記住戸の床を、前記耐震壁方向に向く一方向スラブで構成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の集合住宅建物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−117189(P2011−117189A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−275641(P2009−275641)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】