説明

集塵装置および空調装置

【課題】放電を用いたイオン化手段と、電圧印加電極とアース電極からなる集塵部、そして送風ファンの順で構成される電気集塵式集塵装置において、集塵装置に導入された粉塵はイオン化手段で帯電し、平板電極を一定間隔で積層して電圧を印加することで電場を形成する後段の集塵部で除去されるが、タバコ煙などにはタールや炭素分および水分を多く含んでおり、これら成分が集塵部の表面に付着して導電性の膜を形成し、集塵部表面の電荷が消滅して集塵性能が低下するという課題がある。
【解決手段】シート状導電体からなるアース電極1の全体をシート状絶縁体2で被覆した完全絶縁型アース電極4と、シート状導電体からなり、プラスもしくはマイナスの電圧を印加した電圧印加電極5とを、絶縁性を有するコルゲートシート11を挟みながら交互に積層した集塵部7を構成し、前記集塵部7の全体にシリコーンポリマーの膜を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気清浄の分野において空気中の浮遊粒子状物質を除去することができる集塵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気中に存在する粒子状浮遊物質、すなわち粉塵は喘息などの疾病の原因として知られており従来から除去の対象となる物質であったが、近年の研究において粒子径2.5マイクロメートル以下の粉塵(いわゆるPM2.5)が肺ガンなどの疾病を誘起する可能性があるとの報告があり、捕集技術の更なる向上が求められている。その中で電気集塵技術を用いた集塵装置は粒子径がマイクロメートル以下の小粒径の粉塵を捕集することに優れており、また低圧損な特性を持つことから注目を集め、更なる性能向上が求められている。
【0003】
従来、この種の集塵装置として、放電によって粉塵を帯電するイオン化手段を前段に設け、その後段に、電極を積層し、交互に異なる電圧を印加して電場を形成して帯電した粉塵を捕集する集塵部を設けたものが知られている。この構成を応用した例として、特許文献1には積層する片方の極性の電極を絶縁体である樹脂製のフィルムで被覆した集塵装置が示されている。以下、その集塵装置について図7を参照しながら説明する。図7に示すように、荷電部101は線状電極102とアース対向板103とからなり、荷電部101の通風方向下流側に電圧印加電極105とアース電極106を重ね合わせてロール状に巻いた集塵部104を設けている。集塵部104に空気を通過させるためにアース電極106には表面を切り起こして設けた導電性の突起107を設ける加工が施されており、電圧印加電極105とアース電極106は一定の間隔を開けて保持されている。また、電圧印加電極104は絶縁体である樹脂フィルムで被覆されており、アース電極106およびアース電極106に設けられた導電性の突起107と接触しても短絡を起こさない工夫が施されている。通常、荷電部101においては線状電極102とアース対向板103との間に5〜15kV、また、集塵部104の電圧印加電極105とアース電極106との間に2〜6kVの電位差を持つように高圧電源108によって線状電極102および電圧印加電極105にそれぞれ電圧が印加されている。
【0004】
上記構成において、荷電部101では線状電極102に高い電圧がかかっており、線状電極102近傍に非常に強い電場が作られている。そのため空気中の電荷をもつ物質が空気分子と衝突を起こし、空気分子から電子が分離したり、分離した電子が他の空気分子に付着したりして空気イオンとなる。これを空気のイオン化と呼ぶことにする。そして、アース電極の間にある絶縁体である空気が絶縁破壊を起こし、一定の大きな放電電流を伴いながら空気のイオン化が起こる放電現象をコロナ放電というが、コロナ放電によって作られた空気イオンが集塵装置に供給された空気に含まれる粉塵に付着して粉塵を帯電させる。帯電した粉塵は送風の流れにそって集塵部104に導入され、電圧印加電極105とアース電極106との電場の力を受けて主にアース電極106に付着して取り除かれ、清浄な空気が集塵部104の後方から吹出される。
【0005】
また、特許文献2には金属箔板の周囲を絶縁性合成樹脂でモールドした電圧印加電極105と、電圧印加電極105に平行して設けられたアース電極106とで集塵部104を構成し、絶縁性合成樹脂で形成する電圧印加電極105のモールド材109に撥水剤を混入させる、もしくはモールド材109の表面に撥水層を設ける集塵装置が示されている。
【0006】
その集塵装置について図8を用いて説明する。図8はプラスの電圧が印加される電圧印加電極105、およびアースに接続されるアース電極106で構成される集塵部の拡大図となっており、電圧印加電極105を絶縁性合成樹脂で形成されるモールド材109でモールドすることでアース電極106との絶縁が保たれている。また電圧印加電極105とアース電極106との間に粉塵を含んだ空気を通過させるために、アース電極106を折り曲げ加工することによって得られた導電性の突起107が設けられている。粉塵は集塵部の前段に設けられた荷電部101によってプラスに帯電され、帯電した粉塵は集塵部の電圧印加電極105およびアース電極106の間を通過する時に電場の力を受けて主にアース電極106に付着し、取り除かれて清浄な空気が集塵部後方から吹出される。また、電圧印加電極105のモールド材109の表面には撥水層110が設けられているため、高湿度になった際も表面に濡れが生じず、モールド材Pの表面電位を高く保つことで集塵性能を維持する工夫がなされている。
【特許文献1】特開平6−31200号公報
【特許文献2】特公平6−45017号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
空気中に浮遊するタバコの煙はカーボンなどの固形分、タールなどの液状の油分、そして水分といった導電性を有する成分を多分に含んでいる。また、空気中に排出される自動車などの排気には導電性を有するカーボン粒子が含まれる。そして集塵装置の集塵部は、電圧印加電極とアース電極とが接触して短絡しないように一定の間隔を開けて保持することで絶縁のためおよび空気を通過させるための空間が設けられているが、タバコの煙や排気ガス中のカーボン粒子を集塵すると、粉塵に含まれる導電性を有する成分が電極上に捕集され堆積することで、電圧印加電極とアース電極の間の空間層による絶縁距離が小さくなり、短絡してスパークを引き起こし、ノイズと電極破損の原因となる。また電圧印加電極とアース電極が短絡を起こすと両電極間の電位差が得られなくなって集塵性能が低下するという課題があり、電圧印加電極とアース電極との短絡を防止することが要求されている。
【0008】
また、絶縁体で電圧印加電極の全体を被覆した集塵部においては、電圧印加電極とアース電極との短絡を完全に防ぐことができるが、導電成分を含む粉塵を集塵することによって絶縁体の表面に導電性の膜が形成されることがある。この絶縁体の表面に発現した電荷の消滅を引き起こす導電性の膜は、水分が濡れるように付着してできる膜のみではない。集塵部がタバコの煙などを捕集した場合、電極を被覆する絶縁体の表面には水分のみでなく導電成分を含む粉塵が付着することで導電性の膜が形成される。そして電圧印加電極を被覆する絶縁体とアース電極とが接触することで電荷の移動が起こり、その結果絶縁体の表面に発現した電荷は消滅してその後絶縁体の表面に補充されないため、アース電極と電圧印加電極の間に設けられた空間に電場が形成されなくなり集塵性能が低下する。そのため絶縁体の表面に撥水性のみを付与しても集塵性能が低下するという課題があり、どのような粉塵を集塵しても電極を被覆する絶縁体の表面に導電性の膜が形成されることを防ぐことが要求されている。
【0009】
また、電圧印加電極の全体を被覆する絶縁体がなければ絶縁体表面に導電性の膜ができて絶縁体表面に発現した電荷がアース電極に移動して消滅し、集塵性能が低下するといった問題を回避することができるが、電圧印加電極を被覆する絶縁体がないと電圧印加電極とアース電極との短絡を防ぐことはできず、また、両電極の間隔を小さくできずに集塵性能を向上させることができないという課題が存在する。そのため、電圧印加電極の全体を絶縁体で被覆しなくても電圧印加電極とアース電極との短絡を防ぐことが要求されている。
【0010】
また、集塵部において、電極を一定の間隔に保持して空気を通過させるために設けるスペーサーと電極との接触部分が接着されていないと強度が得られないという課題があり、スペーサーと電極との接触部分が接着されていることが要求されている。
【0011】
また、空気中に浮遊する物質の中には菌やカビ、ウイルス、またはアレルゲンなど人体に入り込んで疾病などの悪影響を及ぼすものがあり、人体に疾病を誘引する物質を集塵部で捕集し、かつ不活化させることが要求されている。
【0012】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、電圧印加電極の全体を絶縁体で被覆しなくとも電圧印加電極とアース電極との絶縁を確保すると同時に、粉塵を捕集して集塵部が汚れた状態になっても高い集塵性能を安定して維持することが可能で、また強度および弾性が高く、外部からの衝撃を受ける、もしくは水洗などの洗浄作業を行うなどをしても、破壊や破損を起こすことがなく、また、空気中に浮遊する菌やカビ、ウイルス、またはアレルゲンなど人体に入り込んで疾病を誘引する物質を集塵部で捕集し、かつ不活化させることが可能な集塵装置およびその集塵装置を搭載した空調装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の集塵装置は上記目的を達成するために、シート状導電体からなる電極の全体を絶縁体で被覆し、アースに接続した完全絶縁型アース電極と、シート状導電体からなり、プラスもしくはマイナスの電圧を印加した電圧印加電極とを、絶縁性を有するスペーサーを挟みながら交互に積層した集塵部を構成し、前記完全絶縁型アース電極の表面にシリコーンポリマーの膜を設けることを特徴とするものである。
【0014】
また、シート状導電体からなる電極の全体を絶縁体で被覆し、アースに接続した完全絶縁型アース電極と、シート状導電体からなり、プラスもしくはマイナスの電圧を印加した電圧印加電極とを、絶縁性を有するスペーサーを挟みながら交互に積層した集塵部を構成し、前記絶縁性を有するスペーサーの表面にシリコーンポリマーの膜を設けることを特徴とするものである。
【0015】
また、シート状導電体からなる電極の全体を絶縁体で被覆し、アースに接続した完全絶縁型アース電極と、シート状導電体からなり、プラスもしくはマイナスの電圧を印加した電圧印加電極とを、絶縁性を有するスペーサーを挟みながら交互に積層した集塵部を構成し、前記集塵部の全体にシリコーンポリマーの膜を設けることを特徴とするものである。
【0016】
また、請求項1乃至3いずれかに記載の集塵装置において、〔請求項4〕絶縁性を有するスペーサーとして、完全絶縁型アース電極の両面に絶縁性を有する突起を設けることを特徴とするものである。
【0017】
また、請求項1乃至3いずれかに記載の集塵装置において、絶縁性を有するスペーサーが3次元の網目構造を持つ多孔体であることを特徴とするものである。
【0018】
また、請求項1乃至3いずれかに記載の集塵装置において、絶縁性を有するスペーサーがコルゲートシートであることを特徴とするものである。
【0019】
また、請求項6記載の集塵装置において、コルゲートシートの材質がポリブチレンテレフタレートであることを特徴とするものである。
【0020】
また、請求項1乃至7いずれかに記載の集塵装置において、完全絶縁型アース電極における絶縁体および絶縁性を有するスペーサーの材質が絶縁性の樹脂であることを特徴とするものである。
【0021】
また、請求項1乃至8いずれかに記載の集塵装置において、通風方向において絶縁体よりも幅の小さいシート状導電体からなる電極を、幅の中心を合わせるように絶縁体のどちらか一方の面に設けたものを電圧印加電極とすることを特徴とするものである。
【0022】
また、請求項3乃至9いずれかに記載の集塵装置において、集塵部の全体にシリコーンポリマーの膜を設ける方法として、シリコーンポリマーの溶液に集塵部ごと浸漬した後に乾燥させることを特徴とするものである。
【0023】
また、請求項10記載の集塵装置において、シリコーンポリマー溶液の溶媒として、無極性の有機溶剤を用いることを特徴とするものである。
【0024】
また、請求項1乃至11いずれかに記載の集塵装置において、集塵部に誘電体材料を添着することを特徴とするものである。
【0025】
また、請求項12記載の集塵装置において、誘電体材料がチタン酸バリウムであることを特徴とするものである。
【0026】
また、請求項1乃至13いずれかに記載の集塵装置において、集塵部に抗菌作用を有する抗菌剤を添着したことを特徴とするものである。
【0027】
また、請求項14記載の集塵装置において、抗菌剤がチタニアもしくはシリカアルミナに銀成分を固定化したものであることを特徴とするものである。
【0028】
また、請求項1乃至13いずれかに記載の集塵装置において、集塵部に抗黴作用を有する抗黴剤を添着したことを特徴とするものである。
【0029】
また、請求項1乃至13いずれかに記載の集塵装置において、集塵部にウイルス不活化作用を有する抗ウイルス剤を添着したことを特徴とするものである。
【0030】
また、請求項17記載の集塵装置において、抗ウイルス剤がフェノール性水酸基を分子構造に持つポリフェノール類であることを特徴とするものである。
【0031】
また、請求項1乃至13いずれかに記載の集塵装置において、集塵部にアレルゲン不活化作用を有する抗アレルゲン剤を添着したことを特徴とするものである。
【0032】
また、請求項19記載の集塵装置において、抗アレルゲン剤が少なくとも一箇所にフェノール性水酸基を有する芳香族ヒドロキシ化合物であることを特徴とするものである。
【0033】
また、請求項1乃至13いずれかに記載の集塵装置において、抗菌、ウイルス不活化およびアレルゲン不活化作用を有する薬剤を混合した液を集塵部に一括して添着することを特徴とする。
【0034】
また、請求項1乃至21いずれかに記載の集塵装置において、集塵部の風上にイオン化手段を設けることを特徴とするものである。
【0035】
また、請求項1乃至21いずれかに記載の集塵装置において、集塵部と送風機を備えた集塵装置の吹出口に、空気をイオン化して粉塵を帯電させるイオン化手段を設けることを特徴とするものである。
【0036】
本発明の空調装置は、請求項23に記載したとおり、請求項1乃至23いずれかに記載の集塵装置を備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、電極間の絶縁を確保して電極間の電位差を保つと同時に粉塵を捕集して集塵部が汚れた状態になっても安定して高い集塵性能を半永久的に得ることができる。また衝撃を受ける、または水洗などの洗浄作業を行うなどしても集塵部の破壊や破損を防ぐことができ、また、電極の間に設けられた空間における電場の強度を高めることで集塵性能を高めることができ、また、空気中に浮遊する菌やカビ、ウイルス、またはアレルゲンなど人体に入り込んで疾病を誘引する物質を集塵部で捕集し、不活化させることができるという効果のある集塵装置および空調装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
本発明の集塵装置は、シート状導電体からなる電極の全体を絶縁体で被覆し、アースに接続した完全絶縁型アース電極と、シート状導電体からなり、プラスもしくはマイナスの電圧を印加した電圧印加電極とを、絶縁性を有するスペーサーを挟みながら交互に積層した集塵部を構成し、前記完全絶縁型アース電極の表面や絶縁性を有するスペーサーの表面、もしくは集塵部の全体にシリコーンポリマーの膜を設けることを特徴とするものである。空気中に浮遊するタバコの煙はカーボンなどの固形分、タールなどの液状の油分、そして水分といった導電性を有する成分を多分に含んでおり、空気中に排出される自動車などの排気には導電性を有するカーボン粒子が含まれる。このような粉塵を大量に捕集すると、アースに接続される電極、すなわちアース電極と電圧が印加される電極、すなわち電圧印加電極との間に設けられている絶縁のための空間距離が小さくなり、スパークを伴う短絡が発生して集塵性能が得られなくなるという問題が生じる。そこで、電圧印加電極を絶縁体で被覆する方法を用いてアース電極と電圧印加電極との短絡を防止することが一般的となっている。しかし電圧印加電極を被覆する絶縁体の表面にタバコの煙などといった導電成分を含む粉塵が付着して導電性の膜が形成されると、絶縁体の表面に発現した電荷がスペーサーなどを通じてアース電極に移動することで消滅し、粉塵の通過する空間の電場が弱まる。この電場の弱まりによって集塵性能の低下が引き起こされるという課題が存在する。本発明は電圧印加電極の全体を絶縁体で被覆することによって起こる集塵性能の低下と、電圧印加電極の全体を絶縁体で被覆しなくとも電圧印加電極とアース電極の短絡を防止することを主眼とし、アース電極を絶縁体で被覆して完全絶縁型アース電極とし、完全絶縁型アース電極の表面や、完全絶縁型アース電極と電圧印加電極の間に挟まれた絶縁性を有するスペーサーの表面もしくは集塵部の全体にシリコーンポリマーの膜を設けたものである。このようにアース電極の全体を絶縁体で被覆してアース絶縁型電極とし、アース電極を完全に絶縁しているため、電圧印加電極との短絡を完全に防ぐことができる。また、シリコーンポリマーは主鎖にシロキサン結合を、側鎖に例えばメチル基を持つ構造となっており、主鎖がらせん状となる分子構造を持つことにより発現する撥水性と、高い絶縁性、化学的安定性、弾性および接着性を兼ねそろえた材料である。また、シリコーンポリマーは全体としてミクロな隙間を有する特徴を持つ。そして完全絶縁型アース電極の表面や、完全絶縁型アース電極と電圧印加電極との間に挟まれた絶縁性を有するスペーサーの表面、もしくは集塵部の全体に、絶縁性、撥水性およびミクロな隙間を有するシリコーンポリマーの膜を設けることで、完全絶縁型アース電極の絶縁体や絶縁性を有するスペーサーの表面にタバコの煙といった導電成分を含む粉塵が連続して付着することを抑制し、導電性の膜が形成されることを防ぐことができることから、電圧印加電極の持つ電荷が絶縁性を有するスペーサーを通じて完全絶縁型アース電極の絶縁体の表面を自由に移動して絶縁体の表面に発現した電荷を中和し、消滅させるということを防ぐことができる。このことから、導電成分を含む粉塵を集塵しても高い集塵性能を維持することができる。また、シリコーンポリマーは高い化学的安定性、弾性および接着性を持つという大きな特徴を有するため、集塵部全体の表面に強く固着して、安定で強固かつ弾性の高い膜を形成する。そのため集塵部の表面を引っかいたりするなどの外部的な力を与えてもシリコーンポリマーの膜がこぼれ落ちたり剥離することがなく、また、水洗などの洗浄作業を行っても、シリコーンポリマーの膜が洗浄液中に溶出することもないため、高い集塵性能を半永久的に安定して得ることができる。これらの作用は集塵部の全体にシリコーンポリマーの膜を設けることでも得ることができ、その際には完全絶縁型アース電極および電圧印加電極と、絶縁性を有するスペーサーとの接触面は高い接着性および弾性を有するシリコーンポリマーで接着されるため集塵部全体が大きな強度と弾性を有する。そのため外部からの衝撃を受けても、集塵部は破壊されずに接着によって一体化された状態を保持することができるという作用を有する。
【0039】
また、請求項1乃至3いずれかに記載の集塵装置において、絶縁性を有するスペーサーとして、完全絶縁型アース電極の両面に絶縁性を有する突起を設けることを特徴とするものである。完全絶縁型アース電極の絶縁体にエンボス状の突起加工を行う、もしくは絶縁体に突起を一体加工するなどして絶縁性を有する突起を完全絶縁型アース電極の両面に設けることで、完全絶縁型アース電極とシート状導電体からなる電極とを一定間隔に配列する構造を、交互に積層するだけで得ることができるといった作用を有する。
【0040】
また、請求項1乃至3いずれかに記載の集塵装置において、絶縁性を有するスペーサーが3次元の網目構造を持つ多孔体であることを特徴とするものである。多孔体は3次元の方向に網目状の立体構造を成す繊維状基材からなっており、空気は多孔体の内部を通過することができる。このような3次元の網目構造を持つ多孔体を完全絶縁型アース電極と電圧印加電極との間に挟むことで電極の間に空気を通過させる通風路を設けることができるという作用を有する。
【0041】
また、請求項1乃至3いずれかに記載の集塵装置において、絶縁性を有するスペーサーがコルゲートシートであることを特徴とするものである。コルゲートシートは通風方向に垂直な断面において波状や三角状、もしくはコの字状といった形状をしており、コルゲートシートを電極の間に挟むことで、完全絶縁型アース電極と電圧印加電極との間に空気を通過させる空間を規則的な配列で均一に設けることができるという作用を有する。
【0042】
また、請求項6記載の集塵装置において、コルゲートシートの材質がポリブチレンテレフタレートであることを特徴とするものである。ポリブチレンテレフタレート(以下PBT)は形状記憶性を持つため、例えば加熱可能な歯車を上下に持つコルゲート成形機にPBTのシートを通すことによって容易にコルゲート形状を得ることができ、そして外力を受けてもコルゲート形状を損なわずに保つことが可能なコルゲートシートを得ることができるという作用を有する。
【0043】
また、請求項1乃至7いずれかに記載の集塵装置において、完全絶縁型アース電極における絶縁体および絶縁性を有するスペーサーの材質が絶縁性の樹脂であることを特徴とするものである。絶縁性の樹脂としてはポリプロピレン(以下PP)やポリエチレン(以下PE)といったポリオレフィン類、ポリエチレンテレフタレート(以下PET)やPBTといったポリエステル類、もしくはポリスチレン(以下PS)、ポリカーボネート(以下PC)やポリウレタンなどが挙げられる。絶縁性を有する樹脂は絶縁耐圧が15kV/mm以上と絶縁性が非常に高く、また成形性や加工性がよいという特徴を持つため、シート状導電体を樹脂によってラミネートやモールド加工により被覆して高い絶縁性を有する完全絶縁型アース電極を容易に作成することが可能となる。また可撓性が高くなることから、完全絶縁型アース電極、シート状導電体からなる電極、また絶縁性を有するスペーサーを長い帯状にし、重ね合わせて巻くことによって集塵部を形成することが可能となるという作用を有する。
【0044】
また、請求項1乃至8いずれかに記載の集塵装置において、通風方向において絶縁体よりも幅の小さいシート状導電体からなる電極を、幅の中心を合わせるように絶縁体のどちらか一方の面に設けたものを電圧印加電極とすることを特徴とするものである。電圧印加電極には通常数kVの高電圧が印加されるため、例えば集塵部を囲うケースなどに金属など導電性のものを用いた場合、集塵部の開口面に電圧印加電極の端面が存在すると、電圧印加電極の端面からケースへ異常放電を起こす不具合が起こる可能性がある。通風方向に対して上流側、下流側とも開口面に電圧印加電極の端面を存在しないようにするためには、完全絶縁型アース電極よりも通風方向に対して幅の狭い電圧印加電極を用い、完全絶縁型アース電極と幅の中心を合わせるように積層する必要がある。絶縁体よりも幅の小さい電極を、幅の中心に合わせるように絶縁体のどちらかの面に設けたものを電圧印加電極とすることで、電極の端面を集塵部の内部に設け、開口面に存在させないようにしてケースへの異常放電などを起こさせないことから、安定して集塵装置を動作させることができるという作用を有する。
【0045】
また、請求項1乃至9いずれかに記載の集塵装置において、集塵部の全体にシリコーンポリマーの膜を設ける方法として、シリコーンポリマーの溶液に集塵部ごと浸漬した後に乾燥させることを特徴とするものである。シリコーンポリマーには接着成分が含まれており、集塵部をシリコーンポリマーの溶液に浸漬し乾燥することで、電極もしくはシート状絶縁体とスペーサーとの接触部分を含めた集塵部全体を、シリコーンポリマーで接着して一体化して弾性および強度と得ることと、集塵部全体にシリコーンポリマーの膜を均一に設けることを一括して同時に行うことができるという作用を有する。
【0046】
また、請求項10記載の集塵装置において、シリコーンポリマー溶液の溶媒として、無極性の有機溶剤を用いることを特徴とするものである。シリコーンポリマーは例えばトルエンやシクロヘキサン、ノルマルヘキサンといった極性の小さい芳香族系や炭化水素系の有機溶剤で希釈することができる。このような極性の小さい有機溶剤で希釈することでシリコーンポリマーの粘度を低下させると同時に分散をよくし、集塵部全体に均一にシリコーンポリマーの膜を設けることができるという作用を有する。
【0047】
また、請求項1乃至11いずれかに記載の集塵装置において、集塵部に誘電体材料を添着することを特徴とするものである。チタン酸バリウムなどの誘電体材料を集塵部の表面に添着する、もしくはシリコーンポリマーの溶液に混合して集塵部をコーティングすることで、電極、電極を被覆する絶縁体もしくはスペーサーの表面に発現する電荷を増加させ、電極間に設けられた空間の電場の強度を高めることで集塵性能を高めることができるという作用を有する。
【0048】
また、請求項1乃至13いずれかに記載の集塵装置において、集塵部に、抗菌作用を有する抗菌剤、抗黴作用を有する抗黴剤、ウイルス不活化作用を有する抗ウイルス剤、もしくはアレルゲン不活化作用を有する抗アレルゲン剤をそれぞれ添着もしくは全て一括して添着して固定化することを特徴とするものである。抗菌剤として例えばチタニアもしくはシリカアルミナの微細粒子に銀成分を固定化したものを用いることで、抗菌作用を有する銀成分を均一に抗菌剤の中で分散することができ、集塵部に均一に添着することができるという作用を有する。また例えばチアベンダゾールを主成分とした抗黴剤を用いることで、真菌に分類される黴類の繁殖を抑制することができる。また例えばエピカテキンガレートのようにフェノール性水酸基を分子構造に持つポリフェノール類を抗ウイルス剤として用いることで、ウイルスの外皮であるエンベローブやエンベローブ表面に存在するスパイクを包み込んで細胞への感染作用を抑制し、増殖を防ぐことができる。また例えばフェノール性水酸基を有する芳香族ヒドロキシ化合物などを抗アレルゲン剤として用いることで、フェノール性水酸基がアレルゲンを包み込み、アレルゲンの持つ特異結合部を無効化してアレルギーを引き起こす要因となる抗体生成体との特異結合を抑制することができる。これらの薬剤を集塵部7に添着して固定化することにより、空気中に浮遊する菌やカビ、ウイルス、またはアレルゲンなど人体に入り込んで疾病を誘引する物質を集塵部で捕集し、かつ集塵部において不活化させることができるという作用を有する。
【0049】
また、請求項1乃至21いずれかに記載の集塵装置において、集塵部の風上にイオン化手段を設けることを特徴とするものである。放電による電離現象などを用いて得られた空気イオンを集塵部の風上に発生させ、取り込んだ空気中に存在する粉塵に付着させることによって粉塵を帯電させ、そして帯電した粉塵を集塵部に送り込んで捕集することで集塵性能を高めることができるという作用を有する。
【0050】
また、請求項1乃至21いずれかに記載の集塵装置において、集塵部と送風機を備えた集塵装置の吹出口に、空気をイオン化して粉塵を帯電させるイオン化手段を設けることを特徴とするものである。僅かな放電電流によって得られた空気イオンを吹出し口から部屋へ供給することによって、オゾンをほとんど発生させずに部屋の中の空気中に存在する粉塵を帯電させる。このように部屋の空間において帯電された粉塵を集塵部に送り込んで捕集することができるという作用を有する。
【0051】
本発明の空調装置は、請求項24に記載したとおり、請求項1乃至23いずれかに記載の集塵装置を備えたことを特徴とするものである。空調装置の熱交換器の前に請求項1乃至1いずれかに記載の集塵装置を設けることによって、空調装置に安定して高い空気清浄機能を持たせることができるという作用を有する。
【0052】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0053】
(実施の形態1)
シート状導電体からなるアース電極1の全体をシート状絶縁体2で被覆し、絶縁性を有する突起3を両面に設けた完全絶縁型アース電極4と、シート状絶縁体2のどちらか一方の面に通風方向において幅の中心を合わせるように、シート状絶縁体2よりも幅の小さいシート状導電体からなる電圧印加電極5を設けてなる片面被覆型電圧印加電極6とを交互に積層してアース電極1をアースに接続し、電圧印加電極5にプラスもしくはマイナスの電圧を印加する集塵部7を構成し、集塵部7の全体にシリコーンポリマーの膜8を設けた集塵部の側面図を図1に、正面図を図2に示す。シート状導電体からなるアース電極1および電圧印加電極5の材質としてはアルミや鉄、ステンレスといった金属板もしくは金属箔や、カーボン樹脂の成形シートなどが良く用いられる。また、図1に示すように完全絶縁型アース電極4は、アース電極1を、アース電極1よりも幅の広い2枚のシート状絶縁体2で挟むようにして貼り合わせることでアース電極1を完全に被覆し絶縁したものとなっている。また、片面被覆型電圧印加電極6は、通風方向においてシート状絶縁体2よりも幅の小さい電圧印加電極5を、幅の中心を合わせるようにシート状絶縁体2のどちらか一方の面に設けたもので、集塵部7の送風方向に対して電圧印加電極5の端面を集塵部7の内部に設けることで、金属など導電性を持つ材料で作られたケースなどへの異常放電を防ぎ、集塵装置を安定して動作させることができる構造となっている。シート状絶縁体2は材質としてPPやPE、PET、PBT、PS、PCといった絶縁性を有する樹脂が主に用いられる。完全絶縁型アース電極4におけるアース電極1はシート状絶縁体2で全体が被覆されるため、電圧印加電極5と直接接触することがなくなり、アース電極1と電圧印加電極5との絶縁を完全に確保することができることから、アース電極1と電圧印加電極5との間で生じるスパークや漏れ電流の増大による電圧の低下を完全に防ぐことができる。また、図1に示すように、完全絶縁型アース電極4の両面にはシート状絶縁体2をプレス成型や真空成型などによって浮き上がらせる、もしくは射出成型などの一体成型を行うなどによって絶縁性を有する突起3が設けられている。この絶縁性を有する突起3によって、完全絶縁型アース電極4の表面と電圧印加電極5とを直接接触させることなく、空気を通過させるための空間を設けながら完全絶縁型アース電極4と片面被覆型電圧印加電極6とを交互に積層することができる。そして集塵部7を、シリコーンポリマーを炭化水素系有機溶剤に溶かした溶液の中に漬け込む、もしくは前記シリコーンポリマーの溶液を吹き付けるなどして、シート状絶縁体2や絶縁性を有する突起3を含む集塵部7全体の表面に絶縁性、撥水性およびミクロな隙間を有するシリコーンポリマーの膜8を設けており、導電成分を含む粉塵9はシリコーンポリマーの膜8が有するミクロな隙間によって非連続的に付着するために、シート状絶縁体2および絶縁性を有する突起3の表面に導電性の膜を作ることを防ぐことができる。このため、電圧印加電極5の持つ電荷が絶縁性を有する突起3、および完全絶縁型アース電極4のシート状絶縁体2の表面を伝わってシート状絶縁体2の表面に発現した電荷を中和し消滅させ、その結果完全絶縁型アース電極4および片面被覆型電圧印加電極6の間に設けられた空間の電場が弱められるということを防止できることから、粉塵を捕集しても高い集塵性能を長期間安定して維持することができる。また、シリコーンポリマーは高い化学的安定性、接着性および弾性を有するため、集塵部7の表面に強固に固着し、弾性かつ化学的安定性を有する膜を形成する。このためシリコーンポリマーの膜8は集塵部7から外力によって剥離したり、水洗などの洗浄によって溶出することがないことから半永久的に安定して高い集塵性能を持つ集塵部7を得ることができる。
【0054】
なお、シート状絶縁体2として主に絶縁性を有する樹脂を用いているが、絶縁性を有するのであれば無機材料といった他の材料を用いても効果に差は生じない。
【0055】
また、電圧印加電極5の片面にそれよりも幅の広いシート状絶縁体2を設けた片面被覆型電圧印加電極6を用いているが、片面にシート状絶縁体2を設けていない電圧印加電極5そのものを用いても同様の集塵性能を持つ集塵部7を得ることができる。
【0056】
また、絶縁性を有する突起3を設けた完全絶縁型アース電極4および片面被覆型電圧印加電極6を長い帯状のものにして重ね合わせ、一定の間隔を開けてロール状に巻いても同様の効果を有する集塵部7を作成することができる。
【0057】
また、完全絶縁型アース電極4は、アース電極1の全体を覆って完全に絶縁される形であれば、絶縁体でアース電極1をモールドするといったその他の方法を用いても効果に差異を生じない。
【0058】
(実施の形態2)
完全絶縁型アース電極4と片面被覆型電圧印加電極6との間に3次元の網目構造を持つ多孔体10を挟んで積層することで構成された集塵部7の全体に、シリコーンポリマーの膜8を設けた集塵部を図3に示す。多孔体10は3次元の方向に網目状の立体構造を成す繊維状基材からなっており、空気が通過できる空間を内部に持つ。材質としてはPPやPE、PET、PBT、もしくはポリウレタンなどといった絶縁性を有する樹脂が主に用いられる。このような3次元の網目構造を持つ多孔体10を完全絶縁型アース電極4と片面被覆型電圧印加電極6との間に挟むことで、完全絶縁型アース電極4と片面被覆型電圧印加電極6との間に空気を通過させる空間を設けることができる。また、図には示していないが集塵部7全体の表面には絶縁性、撥水性およびミクロな隙間を有するシリコーンポリマーの膜8を設けており、導電成分を含む粉塵9が非連続的に付着することからシート状絶縁体2および多孔体10の表面に導電性の膜を作ることを防ぐことができる。このためシート状絶縁体2の表面に発現した電荷が消滅することがなく、多孔体10によって設けられた空間の電場が弱まることがないことから、粉塵を捕集しても高い集塵性能を長期間安定して維持することができる。また、シリコーンポリマーは高い化学的安定性、接着性および弾性を有するため、集塵部7の表面に強固に固着し、弾性かつ化学的安定性を有する膜を形成する。このためシリコーンポリマーの膜8は集塵部7から外力によって剥離したり、水洗などの洗浄によって溶出することがないことから半永久的に安定して高い集塵性能を持つ集塵部を得ることができる。
【0059】
なお、長い帯状のものにした完全絶縁型アース電極4および片面被覆型電圧印加電極6との間に、長い帯状にした多孔体10が挟まれるように積層したものをロール状に巻いても同様の効果を有する集塵部7を得ることができる。
【0060】
また、電圧印加電極5の片面にそれよりも幅の広いシート状絶縁体2を設けた片面被覆型電圧印加電極6を用いているが、片面にシート状絶縁体2を設けていない電圧印加電極5そのものを用いても同様の集塵性能を持つ集塵部7を得ることができる。
【0061】
また、多孔体10の材質として主に樹脂を用いているが、絶縁性、そして通風可能な空間を内部に有するのであれば、セラミックスなどといった他の材質で作成した多孔体10を用いてもその効果に差異を生じない。
【0062】
(実施の形態3)
完全絶縁型アース電極4と片面被覆型電圧印加電極6との間にコルゲートシート11を挟んで積層することで構成された集塵部の全体に、シリコーンポリマーの膜8を設けた集塵部7を図4に示す。コルゲートシート11は図4に示すとおり波状の形状となっており、材質としてはPPやPET、PBTもしくはPCなどといった絶縁性を有する樹脂が主に用いられる。コルゲートシート11を完全絶縁型アース電極4と片面被覆型電圧印加電極6との間に挟むことで、完全絶縁型アース電極4と片面被覆型電圧印加電極6との間に空気を通過させる空間を規則的な配列で均一に設けることができる。また、集塵部7全体の表面には絶縁性、撥水性およびミクロな隙間を有するシリコーンポリマーの膜8を設けており、導電成分を含む粉塵9が非連続的に付着することからシート状絶縁体2およびコルゲートシート11の表面に導電性の膜を作ることを防ぐことができる。このためシート状絶縁体2の表面に発現した電荷が消滅することがなく、コルゲートシート11によって設けられた空間の電場が弱まることがないことから、粉塵を捕集しても高い集塵性能を長期間安定して維持することができる。また、シリコーンポリマーは高い化学的安定性、接着性および弾性を有するため、集塵部7の表面に強固に固着し、弾性かつ化学的安定性を有する膜を形成する。このためシリコーンポリマーの膜8は集塵部7から外力によって剥離したり、水洗などの洗浄によって溶出することがないことから半永久的に安定して高い集塵性能を持つ集塵部7を得ることができる。
【0063】
なお、長い帯状のものにした完全絶縁型アース電極4および片面被覆型電圧印加電極6との間に、長い帯状にしたコルゲートシート11が挟まれるように積層したものをロール状に巻いても同様の効果を有する集塵部7を得ることができる。
【0064】
また、電圧印加電極5の片面にそれよりも幅の広いシート状絶縁体2を設けた片面被覆型電圧印加電極6を用いているが、片面にシート状絶縁体2を設けていない電圧印加電極5そのものを用いても同様の集塵性能を持つ集塵部7を得ることができる。
【0065】
また、図4に示したコルゲートシート11は波状の形状であるが、完全絶縁型アース電極4および片面被覆型電圧印加電極6との間に空間を設けることができるのであれば、三角状やコの字状といった他の形状であっても効果に差を生じない。
【0066】
また、コルゲートシート11の材質として樹脂を用いているが、絶縁性、そして通風可能な空間を設けるため形状を有するのであれば、ガラス繊維などの無機材といった他の材質によるコルゲートシート11を用いてもその効果に差異を生じない。
【実施例】
【0067】
(実施例1)
上記実施の形態3で示した集塵部を有する集塵装置の集塵効率を評価した実験結果を以下に示す。図5に示すように、集塵効率を求める際は、温湿度制御可能な実験室で、ダクトを用いて上流側から荷電部101、集塵部7、送風機12の順番で設置した実験装置を作成し、面風速が1.4m/sとなるように送風機12を設定して集塵効率を求めた。そしてリオン製パーティクルカウンターKC18を用い、荷電部の上流側および集塵部の下流側の空気中に含まれる粒径0.1μm以上の粉塵を測定し、以下の式を用いて集塵効率を算出した。
【0068】
η=(1−Cin/Cout)×100
η:集塵効率(%)、Cin:荷電部上流側の粉塵濃度(個/L)、Cout:集塵部下流側の粉塵濃度(個/L)
実験に用いた荷電部101は幅100、高さ50mmの開口寸法、25mmの奥行寸法を持つABS製ボックスに80μmの径を持つタングステン製の線状電極102を3本水平に設置し、線状電極102の中心に位置するようにアース対向板103を16mmの間隔で4枚設置したものを用いた。線状電極102に約4kVの電圧を印加し、温湿度20℃40%RHで評価する際は5μA、30℃80%RHで評価する際は10μAの放電電流となるようにコロナ放電を起こして通過する粉塵を帯電させた。
【0069】
集塵部7の作成に用いた部品は以下のとおりである。
【0070】
厚さ15μm、幅20mmの長い帯状のアルミ箔からなるアース電極1の両面に、厚さ50μm、幅30mmの長い帯状のPETフィルムからなるシート状絶縁体2を接着剤で貼り合わせて完全に被覆したものを作成し、これを比較例4および実施例1の集塵部における完全絶縁型アース電極4として用いた。また、厚さ50μm、幅30mmの長い帯状のアルミ箔を作成し、これを比較例1、2および3の集塵部におけるアース電極1として用いた。また、厚さ15μm、幅20mmの長い帯状のアルミ箔からなる電圧印加電極5の片面に厚さ50μm、幅30mmのPETフィルムからなるシート状絶縁体2を幅の中心がそろうように張り合わせたものを作成し、これを比較例4および実施例1の集塵部における片面被覆型電圧印加電極6として用いた。また、厚さ15μm、幅20mmの長い帯状のアルミ箔からなる電圧印加電極5の両面に、厚さ50μm、幅30mmの長い帯状のPETフィルムからなるシート状絶縁体2を接着剤で貼り合わせて完全に被覆したものを作成し、これを比較例1、2および3の集塵部における完全絶縁型電圧印加電極13として用いた。また、厚さ80μm、幅30mmの長い帯状のPBT製シートを波高さが1.67mmとなるように波状にコルゲート加工したものを作成し、これを比較例2の集塵部を除くその他の集塵部におけるコルゲートシート11として用いた。
【0071】
評価を行った各集塵部について以下に説明する。
【0072】
比較例1の集塵部は、アース電極1、コルゲートシート11、完全絶縁型電圧印加電極13、コルゲートシート11の順番で積層し、ロール状に巻いた構造となっている。比較例2の集塵部は、表面にシリコーンポリマーの膜8を設けた完全絶縁型電圧印加電極13と、上下の頭の距離が2.4mmとなるように折り曲げて導電性の突起107を設けたシート状導電体からなるアース電極1とを重ね合わせてロール状に巻いた構造となっている。比較例3の集塵部は、比較例1の集塵部において、集塵部7の全体にフッ素樹脂の膜を設けたものである。比較例4の集塵部は、完全絶縁型アース電極4、コルゲートシート11、片面被覆型電圧印加電極6、コルゲートシート11の順番で積層し、ロール状に巻いた構造となっている。これらに対して実施例1の集塵部は、比較例4の集塵部において、集塵部7の全体にシリコーンポリマーの膜8を設けたものである。
【0073】
なお、これらの集塵部は全て図6に示す寸法で作成した。ちなみにアース電極1と電圧印加電極5との間隔を示す電極間隔は、比較例2の集塵部で1.2mm、それ以外の集塵部で1.67mmとなる。実験の際にはアース電極1をアースに接続し、電圧印加電極5に4kVの電圧を印加して両電極に4kVの電位差を与えた。
【0074】
実験においては、集塵部7が低湿度(20℃40%RH)かつタバコの煙で汚れていない時、および高湿度(30℃80%RH)かつタバコの煙を集塵して汚れている時という2つの条件で集塵効率がどのように変化するかを評価した。具体的には新品の集塵部7を実験装置に組み込み、20℃40%RHに制御された実験室の中で集塵効率を測定した。その後荷電部101、集塵部7、送風機12を設けた集塵装置を組んで、容積0.5立方メートルのアクリルボックスの中で合計40本のタバコを燃焼させながら運転してタバコの煙を集塵させた後、温湿度が30℃80%RHに制御された実験室に集塵部7を持ち込んで実験装置に組み込み、集塵効率を求めた。
【0075】
【表1】

【0076】
評価を行った集塵部の仕様および集塵効率の測定結果を表1に示す。タバコの煙0本付着、20℃40%RHの条件では全ての集塵部において集塵効率が97%以上となったが、タバコの煙40本付着、30℃80%RHにおいては比較例1、2、3および4の集塵部はそれぞれ53.6%、68.3%、48.5%、13.0%となったのに対して実施例1の集塵部は87.0%となった。比較例1の集塵部においてはタバコの煙を集塵することで完全絶縁型電圧印加電極13やコルゲートシート11の表面に導電性の膜が形成され、完全絶縁型電圧印加電極13の表面に発現した電荷が消滅し、シート状絶縁体2が絶縁性を持つために完全絶縁型アース電極4の表面に電荷が補充されないことから集塵効率が大幅に低下した。それに対して比較例2の集塵部は、完全絶縁型電圧印加電極13の表面にシリコーンポリマーの膜8を設けることで導電性の膜の形成を抑制している。しかしながら40本分もの大量のタバコの煙を集塵すると、シリコーンポリマーの膜8を設けたとしても、完全絶縁型電圧印加電極13の表面には導電性の膜が僅かに形成された状態となる。そしてシート状導電体からなる電極2に設けられた導電性の突起107と完全絶縁型電圧印加電極13とが直接接触する構造となっているため、この接触部分によって完全絶縁型電圧印加電極13の表面に発現した電荷が移動し、アース電極1の表面に発現した電荷と結びついて消滅することがある程度の割合で起こることで集塵効率が低下した。また、比較例3の集塵部は、集塵部7全体に撥水性を有するフッ素樹脂の膜を設けているが、40本分もの大量のタバコの煙を集塵すると、フッ素樹脂の膜によって水分をはじくことができても、タバコの煙に含まれる導電成分を含む粉塵は表面を覆うように付着してしまう。そのため完全絶縁型電圧印加電極13やコルゲートシート11の表面に導電性の膜が形成されてしまい、集塵効率が大幅に低下した。すなわち完全絶縁型電圧印加電極13やコルゲートシート11の表面に撥水性のみを付与しても大量のタバコの煙を集塵することで集塵性能が低下することがわかった。また、比較例4の集塵部は片面被覆型電圧印加電極6を用いており、電圧印加電極5を完全に絶縁していないが、アース電極1の全体をシート状絶縁体2で被覆した完全絶縁型アース電極4を用いているため、アース電極1と電圧印加電極5の短絡を防ぐ構造となっている。しかしながらタバコの煙を集塵することで完全絶縁型アース電極4やコルゲートシート11の表面に導電性の膜が形成され、完全絶縁型アース電極4の表面に発現した電荷が消滅し、シート状絶縁体2が絶縁性を持つために完全絶縁型アース電極4の表面に電荷が補充されないことから集塵効率が大幅に低下した。
【0077】
それに対して実施例1の集塵部は、完全絶縁型アース電極4やコルゲートシート11を含む集塵部7の全体にシリコーンポリマーの膜8を設けると同時に絶縁性を有するコルゲートシート11を挟んで空気が通過する空間を設けることで、完全絶縁型アース電極4と片面被覆型電圧印加電極6とが直接接触しない構造となっている。このように完全絶縁型アース電極4およびコルゲートシート11の表面に導電性の膜が形成されること、および完全絶縁型アース電極4の表面に発現した電荷が片面被覆型電圧印加電極6と直接接触することで移動し、消滅することを抑制することができる構造となっているため、40本分のタバコの煙を集塵した後においても30℃80%RHの高湿度の環境で87.0%と高い集塵効率を維持した。
【0078】
また、比較例2の集塵部のアース電極1および完全絶縁型電圧印加電極13の間で測定した静電容量は3.26nFとなり、他の集塵部と比較して大きい。これはアース電極1を折り曲げ加工して設けた導電性の突起107が完全絶縁型電圧印加電極13と接触しており、接触部分において電極間隔が大幅に小さくなるためである。静電容量が大きいと、アース電極1と完全絶縁型電圧印加電極13との間に蓄えられる電荷量が大きくなる。多くの電荷が蓄えられた状態でアース電極1と完全絶縁型電圧印加電極13の端子が触れ合うと大きな火花放電の原因となる。また、アース電極1と完全絶縁型電圧印加電極13が接触している部分において、完全絶縁型電圧印加電極13のシート状絶縁体2の絶縁が破壊され、電圧印加電極5に電圧が印加できなくなって集塵部7としての機能を果たせなくなる可能性が高くなるといった欠点を持つ。実施例1の集塵部では絶縁性を有するコルゲートシート11を挟むことで完全絶縁型アース電極4と電圧印加電極5とが直接接触しない構造となっているため、静電容量は0.33nFとなり非常に小さい。そのため電荷の蓄積量が小さくなり、仮に両電極の端子が触れ合うことになっても火花を伴う大きな放電は起こらない。また、完全絶縁型アース電極4と片面被覆型電圧印加電極6とが絶縁性を有するコルゲートシート11を挟むことによって直接接触しない構造となっているため、完全絶縁型アース電極4のシート状絶縁体2の絶縁が破壊される可能性はまずないといってよく、集塵部としての機能を半永久的に保つことが可能となることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の集塵装置は、集塵部が粉塵を捕集して汚れても安定して高い集塵性能を半永久的に得ることができるという効果を有し、室内ばかりでなく屋外での空気環境を向上させる用途としても有用である。
【0080】
また本発明の集塵装置を備えた空調装置は、長期間において安定した集塵性能を得ることができるという効果を有し、室内の冷暖房および湿度制御といった空調を行いながら清浄化された室内空間を提供する用途として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の実施の形態1の集塵部の側面を示す構成図
【図2】同集塵部の正面を示す構成図
【図3】同実施の形態2の集塵部の構成図
【図4】同実施の形態3の集塵部の構成図
【図5】同実施例1の実験室を示す図
【図6】同集塵部の寸法図
【図7】従来の電気集塵式集塵装置の構成図
【図8】同他の電気集塵式集塵装置の構成図
【符号の説明】
【0082】
1 アース電極
2 シート状絶縁体
3 絶縁性を有する突起
4 完全絶縁型アース電極
5 電圧印加電極
6 片面被覆型電圧印加電極
7 集塵部
8 シリコーンポリマーの膜
9 導電成分を含む粉塵
10 多孔体
11 コルゲートシート
12 送風機
13 完全絶縁型電圧印加電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状導電体からなる電極の全体を絶縁体で被覆し、アースに接続した完全絶縁型アース電極と、シート状導電体からなり、プラスもしくはマイナスの電圧を印加した電圧印加電極とを、絶縁性を有するスペーサーを挟みながら交互に積層した集塵部を構成し、前記完全絶縁型アース電極の表面にシリコーンポリマーの膜を設けることを特徴とする集塵装置。
【請求項2】
シート状導電体からなる電極の全体を絶縁体で被覆し、アースに接続した完全絶縁型アース電極と、シート状導電体からなり、プラスもしくはマイナスの電圧を印加した電圧印加電極とを、絶縁性を有するスペーサーを挟みながら交互に積層した集塵部を構成し、前記絶縁性を有するスペーサーの表面にシリコーンポリマーの膜を設けることを特徴とする集塵装置。
【請求項3】
シート状導電体からなる電極の全体を絶縁体で被覆し、アースに接続した完全絶縁型アース電極と、シート状導電体からなり、プラスもしくはマイナスの電圧を印加した電圧印加電極とを、絶縁性を有するスペーサーを挟みながら交互に積層した集塵部を構成し、前記集塵部の全体にシリコーンポリマーの膜を設けることを特徴とする集塵装置。
【請求項4】
絶縁性を有するスペーサーとして、完全絶縁型アース電極の両面に絶縁性を有する突起を設けることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の集塵装置。
【請求項5】
絶縁性を有するスペーサーが3次元の網目構造を持つ多孔体であることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の集塵装置。
【請求項6】
絶縁性を有するスペーサーがコルゲートシートであることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の集塵装置。
【請求項7】
コルゲートシートの材質がポリブチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項6記載の集塵装置。
【請求項8】
完全絶縁型アース電極における絶縁体および絶縁性を有するスペーサーの材質が絶縁性の樹脂であることを特徴とする請求項1乃至7いずれかに記載の集塵装置。
【請求項9】
通風方向において絶縁体よりも幅の小さいシート状導電体からなる電極を、幅の中心を合わせるように絶縁体のどちらか一方の面に設けたものを電圧印加電極とすることを特徴とする請求項1乃至8いずれかに記載の集塵装置。
【請求項10】
集塵部の全体にシリコーンポリマーの膜を設ける方法として、シリコーンポリマーの溶液に集塵部ごと浸漬した後に乾燥させることを特徴とする請求項3乃至9いずれかに記載の集塵装置。
【請求項11】
シリコーンポリマー溶液の溶媒として、無極性の有機溶剤を用いることを特徴とする請求項10記載の集塵装置。
【請求項12】
集塵部に誘電体材料を添着することを特徴とする請求項1乃至11いずれかに記載の集塵装置。
【請求項13】
誘電体材料がチタン酸バリウムであることを特徴とする請求項12記載の集塵装置。
【請求項14】
集塵部に抗菌作用を有する抗菌剤を添着したことを特徴とする請求項1乃至13いずれかに記載の集塵装置。
【請求項15】
抗菌剤がチタニアもしくはシリカアルミナに銀成分を固定化したものであることを特徴とする請求項14記載の集塵装置。
【請求項16】
集塵部に抗黴作用を有する抗黴剤を添着したことを特徴とする請求項1乃至13いずれかに記載の集塵装置。
【請求項17】
集塵部にウイルス不活化作用を有する抗ウイルス剤を添着したことを特徴とする請求項1乃至13いずれかに記載の集塵装置。
【請求項18】
抗ウイルス剤がフェノール性水酸基を分子構造に持つポリフェノール類であることを特徴とする請求項17記載の集塵装置。
【請求項19】
集塵部にアレルゲン不活化作用を有する抗アレルゲン剤を添着したことを特徴とする請求項1乃至13いずれかに記載の集塵装置。
【請求項20】
抗アレルゲン剤が少なくとも一箇所にフェノール性水酸基を有する芳香族ヒドロキシ化合物であることを特徴とする請求項19記載の集塵装置。
【請求項21】
抗菌、ウイルス不活化およびアレルゲン不活化作用を有する薬剤を混合した液を集塵部に一括して添着することを特徴とする請求項1乃至13いずれかに記載の集塵装置。
【請求項22】
集塵部の風上にイオン化手段を設けることを特徴とする請求項1乃至21いずれかに記載の集塵装置。
【請求項23】
集塵部と送風機を備えた集塵装置の吹出口に、空気をイオン化して粉塵を帯電させるイオン化手段を設けることを特徴とする請求項1乃至21いずれかに記載の集塵装置。
【請求項24】
請求項1乃至23いずれかに記載の集塵装置を備えた空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−83203(P2007−83203A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−277751(P2005−277751)
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】