説明

集塵装置付き丸鋸

【課題】 切粉を効率良く集めることのできる集塵装置付き丸鋸を提供する。
【解決手段】 丸鋸本体10に取付けられる集塵装置20は、鋸刃13を覆うブレードケース14に配管接続される第一の集塵ボックス22と、第一の集塵ボックス22に配管接続されるサイクロンユニット30と、サイクロンユニット30に配管接続される第二の集塵ボックス40を一体に有している。サイクロンユニット30は、第一の集塵ボックス22内で落下せずに吹き込まれてきた切粉を内壁面に沿って回転させるサイクロン本体30と、空気を上方に排気する排気口32cと、切粉を第二の集塵ボックス40に向けて排出する排出口31bを有する。切断材Wを傾斜切りするために丸鋸本体10をテーブル3に対して横方向に傾倒させた際に丸鋸本体10とともに横方向に傾倒されて上方向に位置移動する第一の集塵ボックス22の横面側にサイクロン本体31が取付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、丸鋸本体に設けられた鋸刃の回転によって巻き上げられたブレードケース内の切粉を集塵する集塵装置を備える集塵装置付き丸鋸に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、種々の丸鋸が知られており、例えば特許文献1に記載の丸鋸が知られている。
特許文献1に係る丸鋸は、卓上丸鋸であって、切断材を載置するためのテーブルと、そのテーブルに対して上下方向に傾動可能に支持される丸鋸本体と、その丸鋸本体に取付けられる集塵装置とを有している。集塵装置は、鋸刃を覆うブレードケースに設けた円筒形の配管口に取付けられる布製の集塵袋を有している。したがって鋸刃の回転によってブレードケース内に巻き上げられた切粉は、空気とともにブレードケースの配管口を経て集塵袋に送られる。そして集塵袋の布目によって切粉のみが集塵袋内に集められる構成になっている。
【特許文献1】特開平10−180713号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし布目を利用して切粉と空気を分離する集塵袋の場合、切粉が布目に徐々に詰まって集塵効率が徐々に低下するという問題がある。
そこで本発明は、鋸刃の回転によって巻き上げられた切粉を効率良く集めることのできる集塵装置付き丸鋸を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題を解決するために本発明は、各請求項に記載の通りの構成を備える集塵装置付き丸鋸であることを特徴とする。
請求項1に記載の発明によると、集塵装置は、鋸刃を覆うブレードケースに配管接続される第一の集塵ボックスと、その第一の集塵ボックスに配管接続されるサイクロンユニットと、そのサイクロンユニットに配管接続される第二の集塵ボックスとを一体に有している。サイクロンユニットは、第一の集塵ボックス内で落下せずに空気とともに第一の集塵ボックス側から吹き込まれてきた切粉を内壁面に沿って回転させるサイクロン本体と、そのサイクロン本体内の空気を上方に排気する排気口と、切粉をサイクロン本体の下方に設けられた第二の集塵ボックスに向けて排出する排出口とを有している。そして切断材を傾斜切りするために丸鋸本体をテーブルに対して横方向に傾倒させた際に丸鋸本体とともに横方向に傾倒されて上方向に位置移動する第一の集塵ボックスの横面側にサイクロン本体が取付けられている。
【0005】
したがって集塵装置は、切粉を回転させるサイクロンユニットによって切粉を空気と分離する構成になっている。そのため従来の集塵袋のように布目に切粉が詰まることによる集塵効率の低下という問題が生じない。
しかも集塵装置は、丸鋸本体を横方向に傾倒させて切断材を傾斜切りする場合において、サイクロン本体が第一の集塵ボックスに対して上方向に位置移動する。そのため第一の集塵ボックス内に貯められていた切粉や、ブレードケース側から第一の集塵ボックスに送り込まれた切粉がサイクロン本体側へ大量に流れてしまうことが抑制され得る。かくして傾斜切りの際における集塵装置の集塵効率が向上する。
【0006】
請求項2に記載の発明によると、第一の集塵ボックスは、ブレードケース内に巻き上げられた切粉を前側から取込み後端面に打ち付ける構成になっている。第一の集塵ボックスとサイクロンユニットとを配管接続する通気口は、第一の集塵ボックスの後端面よりも前側に寄った位置の側面に設けられている。そして後端面に打ち付けられた切粉が打ち付けられた勢いによって通気口に入ってしまうことを抑制するスペースが後端面と通気口との間に形成されている。
したがって切粉は、第一の集塵ボックスの後端面に打ち付けられるが、打ち付けられた勢いが後端面と通気口との間に設けられたスペースによって抑制され得る。そのため第一の集塵ボックス内に切粉が多く貯められ、集塵装置の集塵効率が良くなる。
【0007】
請求項3に記載の発明によると、第一の集塵ボックスは、ブレードケース内に巻き上げられた切粉を前側から取込む構成であり、かつ前側から後側に向けて徐々に開口径が広くなる流線型になっている。
したがってブレードケース側から第一の集塵ボックスに吹き込まれた空気は、前側から後側に流れた際に乱流を生じることなく徐々に圧力が小さくなり、徐々に流速が遅くなる。このため空気に混入されていた切粉の速度が徐々に遅くなり、切粉が第一の集塵ボックス内で落下する。かくして第一の集塵ボックス内に切粉が多く貯められ、集塵装置の集塵効率が良くなる。
【0008】
請求項4に記載の発明によると、集塵装置は、鋸刃を覆うブレードケースに配管接続される第一の集塵ボックスと、その第一の集塵ボックスに配管接続されるサイクロンユニットと、そのサイクロンユニットに配管接続される第二の集塵ボックスとを一体に有している。サイクロンユニットは、第一の集塵ボックス内で落下せずに空気とともに第一の集塵ボックス側から吹き込まれてきた切粉を内壁面に沿って回転させるサイクロン本体と、そのサイクロン本体内の空気を上方に排気する排気口と、切粉をサイクロン本体の下方に設けられた第二の集塵ボックスに向けて排出する排出口とを有している。第一の集塵ボックスは、ブレードケース内に巻き上げられた切粉を前側から取込み後端面に打ち付ける構成になっており、第一の集塵ボックスとサイクロンユニットとを配管接続する通気口が第一の集塵ボックスの後端面よりも前側に寄った位置の側面に設けられており、後端面に打ち付けられた切粉が打ち付けられた勢いによって通気口に入ってしまうことを抑制するスペースが後端面と通気口との間に形成されている。
【0009】
したがって集塵装置は、切粉を回転させるサイクロンユニットによって切粉を空気と分離する構成になっている。そのため従来の集塵袋のように布目に切粉が詰まることによる集塵効率の低下という問題が生じない。
しかも切粉は、第一の集塵ボックスの後端面に打ち付けられるが、打ち付けられた勢いが後端面と通気口との間に設けられたスペースによって抑制され得る。そのため第一の集塵ボックス内に切粉が多く貯められ、集塵装置の集塵効率が良くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施の形態を図1〜9にしたがって説明する。
実施の形態に係る丸鋸1は、図1,2に示すようにいわゆる卓上型のスライド丸鋸盤であって、切断材Wを載置するためのテーブル3と、テーブル3を水平方向に回転可能に支持するベース2と、テーブル3の後部から並行かつ前後方向(図1の左右方向)に移動可能に支持された二本の下スライドバー4,4と、下スライドバー4,4の後端部間に取付けられる傾動支持部5と、傾動支持部5の上部に設けられるスライド支持部5aに対し並行かつ前後方向(図1の左右方向)に移動自在に支持される二本の上スライドバー6,6と、上スライドバー6,6の前端部間に取付けられる本体支持部7と、本体支持部7に支軸8を介して上下方向に傾動可能に支持される丸鋸本体10を備えている。
【0011】
したがって丸鋸本体10は、下スライドバー4,4と上スライドバー6,6によって構成される上下二段のスライド機構によって、切断方向(図1において左右方向、作業者から見て前後方向)に移動可能に支持されている。このため丸鋸1は、丸鋸本体10をスライドさせることで大型の切断材Wを切断することができる構成になっている。
下スライドバー4,4は、固定ねじ9を締め込むことによってテーブル3に対してスライド不能に固定される。上スライドバー6,6は、固定ねじ11を締め込むことによって傾動支持部5に対してスライド不能に固定される。したがって丸鋸本体10は、固定ねじ9,11を締め込むことによってテーブル3に対して切断方向に移動不能に固定され、上下にのみ傾動操作できる状態になる。
【0012】
傾動支持部5は、下スライドバー4,4に対して横方向に傾倒可能に支持されており、固定レバー5bによって所定角度にて固定される構成になっている。したがって傾動支持部5と固定レバー5bとによって丸鋸本体10をテーブル3に対して横方向に傾倒させ、所定角度で固定させることができる。かくして丸鋸1は、切断材Wを傾斜切りすることができる構成になっている。
なお本形態に係る丸鋸本体10は、左側と右側の両方に傾斜可能な構成になっている。しかし作業者は、一般に右利きの人が多く、右手でハンドル16を握り、切断材Wをテーブル3の左寄り置く場合が多い。しかもブレードケース14の右側には、電動モータ12が設けられているために、ブレードケース14の右側よりも左側を容易に見ることができる。そのため作業者は、通常、丸鋸本体10を左側に傾倒させて固定し、その状態で切断材Wを傾斜切りする場合が多い。
【0013】
丸鋸本体10は、図1に示すように電動モータ12によって回転するドーナツ円盤状の鋸刃13と、鋸刃13の上側を覆うブレードケース14と、鋸刃13の下側を開閉可能に覆うセーフティーカバー15を有している。
セーフティーカバー15は、図3に示すように丸鋸本体10を下方へ傾動動作させた際に該傾動動作に連動して開かれ、図1に示すように上方へ傾動動作させた際に該傾動動作に連動して閉じられる。
ブレードケース14の右側(図1手前側)には、電動モータ12を覆うモータハウジング12aが設けられている。モータハウジング12aの前部には、ハンドル16が設けられ、後部には、ハンドル18が設けられている。そしてハンドル16には、トリガスイッチ16aと照明器具17が取付けられている。
【0014】
したがって作業者は、ハンドル16を把持しつつ、トリガスイッチ16aを引き操作することで、電動モータ12を起動させ鋸刃13を回転させることができる(図1参照)。そして丸鋸本体10を下方へ傾動させることによって鋸刃13にて切断材Wを切断することができる。
鋸刃13は、図3において時計反対周りに高速回転している。そのため切粉は、鋸刃13によって鋸刃13の後端(図3右端)からブレードケース14内に巻き上げられる。ブレードケース14内に巻き上げられた切粉は、ブレードケース14に設けられた配管口14aに取付けられる集塵装置20(集塵ボックス)に向けて吹き上げられ、集塵装置20によって集塵される。
【0015】
集塵装置20は、図1に示すように鋸刃13によって吹き込まれた空気と切粉とを分離するために第一の集塵ボックス22とサイクロンユニット30と第二の集塵ボックス40を一体に有している。
第一の集塵ボックス22は、図5に示すように左右二つ割り構成であって、左ボックス部22aと右ボックス部22bを有している。左ボックス部22aと右ボックス部22bの前端部の間には、集塵装置20を丸鋸本体10に接続するための接続部材23が取付けられている。
【0016】
接続部材23は、図5に示すように円筒状の傾動支持部23aと、傾動支持部23aの周面から径方向に突出する円筒状の接続管部23bを有している。
接続管部23bは、図3に示すようにブレードケース14の配管口14aに気密に配管接続され、配管口14aの外周面に脱着可能に取付けられる。
傾動支持部23aの接続管部23bの反対側面には、接続管部23bとほぼ同じ径の開口部23dが形成されている。したがって第一の集塵ボックス22とブレードケース14は、接続部材23を介して配管接続される。
【0017】
傾動支持部23aは、左右両端部が円盤状の蓋23c,23cによって気密に塞がれている。そして左右両端部は、左ボックス部22aと右ボックス部22bに形成された支持凹部22cによって軸回動可能に支持される。したがって集塵装置20は、接続部材23によって丸鋸本体10に対して上下方向に傾動可能に支持される。
【0018】
第一の集塵ボックス22は、図5に示すように前端部に開口部22dを有している。開口部22dには、接続部材23の接続管部23bが設置され、開口部22dが接続部材23によって第一の集塵ボックス22の内部と気密に区画されている。すなわち傾動支持部23aの両端面と周面全周にフェルト材を素材とするシール部材24が取付けられている。そして左右ボックス部22a,22bには、支持凹部22c,22cの周縁に沿った二つの範囲において断面円弧形状の壁部22e,22eが形成されている。そして左右ボックス部22a,22bの壁部22e,22eの先端部同士が隙間のない状態で突き合わされている。
【0019】
第一の集塵ボックス22は、図1に示すように前側(図1左側端部)から後側に向けて除々に高さが高くなっており、側面が三角形状になっている。したがって第一の集塵ボックス22は、前側から後側に向けて径が広くなる流線型になっている。
第一の集塵ボックス22は、図5,6に示すように左ボックス部22aの左側面に側方に膨らむ拡開部22iを有しており、拡開部22iが略前後中央から後部に掛けて延出している。一方、右ボックス部22bの右側面には、第二の集塵ボックス40が取付けられており、第二の集塵ボックス40は、略前後中央から後部に延出している。したがって集塵装置20は、図6に示すように接続部材23側において横幅が細い幅狭部22mを有している。そのため作業者は、幅狭部22mを把持することによって集塵装置20を安定良く保持し、集塵装置20を安定良く丸鋸本体10の配管口14aに対し脱着させることができる。
【0020】
第一の集塵ボックス22は、前後方向に長く、前側から切粉を取込み、図7に示すように切粉が打ち付けられる後端面22gを有している。
また第一の集塵ボックス22の右側面(横面)には、通気口25が設けられている。通気口25は、後端面22gに打ち付けられた切粉が打ち付けられた勢いによって通気口25に入り込んでしまうことを抑制するために、後端面22gよりも所定距離だけ前側に設けられている。そして後端面22gと通気口25との間には、打ち付けられた勢いを緩衝するためのスペース22hが形成されている。
したがって切粉は、後端面22gに打ち付けられるが、打ち付けられた勢いが通気口25の手前において小さくなる。そのため切粉の多くが第一の集塵ボックス22内において落下し、第一の集塵ボックス22内に貯められる。
【0021】
第一の集塵ボックス22は、図2に示すように左側外周面の上端縁に沿って延出する把持凹部22jと、図1に示すように右側外周面の上端縁に沿って延出する把持凹部22kとを有している。そしてこれら把持凹部22j,22kは、集塵装置20の重心位置に対応する位置に設けられている。したがって作業者は、片手で把持凹部22j,22kを把持することで丸鋸本体10から外された状態の集塵装置20をバランス良く保持することができる。
【0022】
サイクロンユニット30は、図5に示すように円筒状のサイクロン本体31と、サイクロン本体31の上側内周縁に取付けられる蓋部材32を有している。
サイクロン本体31は、図7に示すように第一の集塵ボックス22の右側面横側に取付けられており、通気口25を介して第一の集塵ボックス22と配管接続されている。通気口25は、サイクロン本体31の側面の遍心位置に配管接続されている。したがって第一の集塵ボックス22から吹き込まれてきた空気と切粉は、図7に示すように矢印方向にサイクロン本体31の内壁面に沿って回転する。
【0023】
サイクロン本体31は、図7に示すように通気口25の前端位置を前端位置とし、第一の集塵ボックス22の後端位置を後端位置とする位置に設けられている。そして第一の集塵ボックス22は、後端を最も高さを高くする形状となっている。したがってサイクロン本体31は、図3に示すように第一の集塵ボックス22からほとんど飛び出ることなく、高い位置に配設され得る。そのためサイクロン本体31の下側のスペースを広く確保でき、第二の集塵ボックス40の切粉の貯留容量が大きく確保され得る。
【0024】
サイクロン本体31は、図5に示すように下側において小径方向に下側が傾斜する円錐部31aと、円錐部31aの下端を開口する排出口31bを有している。排出口31bは、第二の集塵ボックス40に設けられた取込み口40aに配管接続される。
蓋部材32は、サイクロン本体31の上側内周縁に取付けられるドーナツ円盤状の蓋部32bと、蓋部32bの中央孔から下方に延出する円筒状に管部32aとを有している。管部32aは、サイクロン本体31の軸中心にてサイクロン本体31の高さ中心位置まで延出し、上端部にサイクロン本体31内の空気を排気する排気口32cを有している。
【0025】
したがって図7に示すように通気口25を経て第一の集塵ボックス22から吹き込まれた空気と切粉は、サイクロン本体31の内壁面に沿って反時計回りに回転する。そして比重の大きい切粉が遠心力によってサイクロン本体31の内壁面寄りに移動しつつ、重力によって落下する。そして螺旋状の軌跡を描きつつ第二の集塵ボックス40に排出され、第二の集塵ボックス40内に貯められる。一方、比重の小さい空気は、蓋部材32の管部32aを通って排気口32cからサイクロン本体31の上方に排気される。
【0026】
第二の集塵ボックス40は、図5に示すように第一の集塵ボックス22の右側面に取付けられ、後側上面にサイクロンユニット30が配管接続される取込み口40aを有している。
第二の集塵ボックス40と第一の集塵ボックス22は、下端部が同じ高さで同一平面状になっている。そしてこれらの各下端部には、一枚板状の底蓋26によって開閉可能に塞がれる開口部22f,40bが形成されている。
底蓋26は、第一の集塵ボックス22の底部に支軸27を介して回動自在に支持されており、支軸27に取付けられた捩りばね28によって開き方向に付勢されている。そして底蓋26は、第一の集塵ボックス22の後面に設けた係止レバー29によって閉止状態にてロックされる。係止レバー29をアンロック方向に操作した際には、底蓋26が捩りばね28の付勢力によって開かれ、第一の集塵ボックス22内に貯められた切粉と第二の集塵ボックス40内に貯められた切粉とが同時に廃棄され得る。
【0027】
図2に示すように集塵装置20は、下動端規制部材50によって下側から支持されている。
下動端規制部材50は、適度な線径の鋼線を概ねコ字形に屈曲させたものであって、両端部が固定ビス51,52によってスライド支持部5aに固定されている。下動端規制部材50は、傾動支持部5の上方を前側(作業者側)に向かって延びており、上下に適度な弾性を有する。下動端規制部材50の先端には、図1に示すように鋼線をコイル状にした回転体53が軸回転自在に装着されている。
したがって下動端規制部材50は、集塵装置20の下面を弾性的に下方から支持する。また集塵装置20は、丸鋸本体10の上下動にともなって前後動しようとするが、下動端規制部材50に取付けられた回転体53によって前後方向に移動可能に支持されている。そのため丸鋸本体10のスムーズな上下動が回転体53によって確保されている。
【0028】
以下に、集塵装置20によって切粉を集塵する方法について説明する。
切粉は、鋸刃13の回転によってブレードケース14内に巻き上げられる。巻き上げられた切粉は、配管口14aを経て第一の集塵ボックス22内に吹き込まれる(図3参照)。第一の集塵ボックス22内においては、比較的大きな切粉が自重によって落下し、第一の集塵ボックス22内に貯められる。落下しなかった小さな切粉は、空気とともに通気口25を通ってサイクロンユニット30内に吹き込まれる。サイクロンユニット30内に吹き込まれた切粉と空気は、遠心力によって分離され、切粉が第二の集塵ボックス40に排出され、空気がサイクロンユニット30の上方に排気される。
したがって切粉は、第一の集塵ボックス22とサイクロンユニット30によって空気と分離され、第一の集塵装置20内と第二の集塵ボックス40内に貯められる。そのため従来の集塵袋のように布目に切粉が詰まることによって集塵効率が徐々に低下するという問題が生じない構成になっている。
【0029】
また集塵装置20は、図3に示すように第一の集塵ボックス22とサイクロンユニット30と第二の集塵ボックス40とを一体に有している。そしてサイクロン本体31は、図8,9に示すように切断材を傾斜切りするために丸鋸本体10をテーブル3に対して横方向に傾倒させることで丸鋸本体10とともに横方向に傾倒されて上方向に向く第一の集塵ボックス22の横面側(右側面)に取付けられている。
【0030】
したがって集塵装置20は、図9に示すように丸鋸本体10を横方向に傾倒させて切断材を傾斜切りする場合において、サイクロン本体31が第一の集塵ボックス22に対して上方向に位置移動する。そのため第一の集塵ボックス22内に貯められていた切粉や、ブレードケース14側から第一の集塵ボックス22に送り込まれた切粉がサイクロン本体31側へ大量に流れてしまうことが抑制され得る。かくして傾斜切りの際における集塵装置20の集塵効率が向上する。
【0031】
また第一の集塵ボックス22は、図3,7に示すようにブレードケース14内に巻き上げられた切粉を前側から取込み後端面22gに打ち付ける構成になっている。第一の集塵ボックス22とサイクロンユニット30とを配管接続する通気口25は、第一の集塵ボックス22の後端面22gよりも前側に寄った位置の側面に設けられている。そして後端面22gに打ち付けられた切粉が打ち付けられた勢いによって通気口25に入ってしまうことを抑制するスペース22hが後端面22gと通気口25との間に形成されている。
したがって切粉は、第一の集塵ボックス22の後端面22gに打ち付けられるが、打ち付けられた勢いが後端面22gと通気口25との間に設けられたスペース22hによって抑制され得る。そのため第一の集塵ボックス22内に切粉が多く貯められ、集塵装置20の集塵効率が良くなる。
【0032】
また第一の集塵ボックス22は、図3に示すようにブレードケース14内に巻き上げられた切粉を前側から取込む構成であり、かつ前側から後側に向けて徐々に高さ方向に開口径が広くなる流線型になっている。
したがってブレードケース14側から第一の集塵ボックス22に吹き込まれた空気は、前側から後側に流れた際に乱流を生じることなく徐々に圧力が小さくなり、徐々に流速が遅くなる。このため空気に混入されていた切粉の速度が徐々に遅くなり、切粉が第一の集塵ボックス22内で落下する。かくして第一の集塵ボックス22内に切粉が多く貯められ、集塵装置20の集塵効率が良くなる。
【0033】
また集塵装置20は、図1,3に示すように接続部材23を介して丸鋸本体10に対して上下動可能に支持されている。そのため集塵装置20は、丸鋸本体10の傾動位置に関係なく、ほぼ水平の状態で保持される構成にもなっている。
【0034】
(他の実施の形態)
本発明は、上記の実施の形態に限定されず、例えば以下の形態であっても良い。
(1)上記の実施の形態に係る丸鋸は、丸鋸本体が左右両方向に傾倒可能な構成になっていた。しかし丸鋸本体が左方向のみに傾倒、あるいは右方向のみに傾倒する構成でも良い。そして丸鋸本体が右方向のみに傾倒する形態の場合には、サイクロンユニットが第一の集塵ボックスの左側面に設けられることが好ましい。すなわち切断材を傾斜切りするために丸鋸本体をテーブルに対して横方向に傾倒させた際に丸鋸本体とともに横方向に傾倒されて上方向に位置移動する第一の集塵ボックスの左面側にサイクロン本体が取付けられていることが好ましい。これによって傾斜切りの際における集塵装置の集塵効率が良くなるからである。
(2)また上記の実施の形態は、接続部材によって集塵装置が丸鋸本体に対して上下動可能に支持されていた。しかし集塵装置が丸鋸本体に対して上下動不能に取付けられる形態であっても良い。
【0035】
(他の発明)
上記した実施の形態は、下記の発明の実施形態であると捉えることもできる。
(1)すなわち「丸鋸本体に設けられた鋸刃の回転によって巻き上げられた切粉を集塵する集塵装置を備える集塵装置付き丸鋸であって、
前記集塵装置は、鋸刃を覆うブレードケースに配管接続される第一の集塵ボックスと、その第一の集塵ボックスに配管接続されるサイクロンユニットと、そのサイクロンユニットに配管接続される第二の集塵ボックスとを一体に有し、
前記サイクロンユニットは、前記第一の集塵ボックス内で落下せずに空気とともに前記第一の集塵ボックス側から吹き込まれてきた切粉を内壁面に沿って回転させるサイクロン本体と、そのサイクロン本体内の空気を上方に排気する排気口と、切粉を前記サイクロン本体の下方に設けられた前記第二の集塵ボックスに向けて排出する排出口とを有し、
前記第一の集塵ボックスと前記第二の集塵ボックスは、一つの底蓋によって開閉可能に覆われる各開口部を有していることを特徴とする集塵装置付き丸鋸。」
したがって本発明によると「一枚の底蓋を開けることによって第一の集塵ボックス内に貯められた切粉と第二の集塵ボックス内に貯められた切粉とを同時に廃棄することができる」等の有益な効果を奏する。
(2)また「丸鋸本体に設けられた鋸刃の回転によって巻き上げられた切粉を集塵する集塵装置を備える集塵装置付き丸鋸であって、
前記集塵装置は、鋸刃を覆うブレードケースに配管接続される第一の集塵ボックスと、その第一の集塵ボックスに配管接続されるサイクロンユニットと、そのサイクロンユニットに配管接続される第二の集塵ボックスとを一体に有し、
前記サイクロンユニットは、前記第一の集塵ボックス内で落下せずに空気とともに前記第一の集塵ボックス側から吹き込まれてきた切粉を内壁面に沿って回転させるサイクロン本体と、そのサイクロン本体内の空気を上方に排気する排気口と、切粉を前記サイクロン本体の下方に設けられた前記第二の集塵ボックスに向けて排出する排出口とを有し、
前記第一の集塵ボックスは、横幅が細い幅狭部を前記丸鋸本体に取付けられる接続部材寄りに有していることを特徴とする集塵装置付き丸鋸。」
したがって本発明によると「幅狭部を把持することによって集塵装置を安定良く丸鋸本体に対して脱着させることができる」等の有益な効果を奏する。
(3)また「丸鋸本体に設けられた鋸刃の回転によって巻き上げられた切粉を集塵する集塵装置を備える集塵装置付き丸鋸であって、
前記集塵装置は、鋸刃を覆うブレードケースに配管接続される第一の集塵ボックスと、その第一の集塵ボックスに配管接続されるサイクロンユニットと、そのサイクロンユニットに配管接続される第二の集塵ボックスとを一体に有し、
前記サイクロンユニットは、前記第一の集塵ボックス内で落下せずに空気とともに前記第一の集塵ボックス側から吹き込まれてきた切粉を内壁面に沿って回転させるサイクロン本体と、そのサイクロン本体内の空気を上方に排気する排気口と、切粉を前記サイクロン本体の下方に設けられた前記第二の集塵ボックスに向けて排出する排出口とを有し、
前記第一の集塵ボックスの左右両側面に、上端縁に沿って把持凹部が形成されていることを特徴とする集塵装置付き丸鋸。」
したがって本発明によると「把持凹部を利用して集塵装置を安定良く把持することができる」等の有益な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】スライド丸鋸の右側面図である。
【図2】スライド丸鋸の左後方からの斜視図である。
【図3】丸鋸本体を下げた際のスライド丸鋸の右側面図である。
【図4】丸鋸本体を下げた際のスライド丸鋸の左後方からの斜視図である。
【図5】集塵装置の分解斜視図である。
【図6】集塵装置の上面図である。
【図7】集塵装置の後側一部の断面図である。
【図8】集塵装置の正面模式図である。
【図9】傾斜切りにおける集塵装置の正面模式図である。
【符号の説明】
【0037】
1…丸鋸
2…ベース
3…テーブル
5…傾動支持部
10…丸鋸本体
12…電動モータ
13…鋸刃
14…ブレードケース
14a…配管口
20…集塵装置
22…第一の集塵ボックス
22a…左ボックス部
22b…右ボックス部
22c…支持凹部
22g…後端面
22h…スペース
22j,22k…把持凹部
22m…幅狭部
23…接続部材
25…通気口
26…底蓋
30…サイクロンユニット
31…サイクロン本体
31b…排出口
32…蓋部材
32a…管部
32b…蓋部
32c…排気口
40…第二の集塵ボックス
50…下動端規制部材




【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断材を載置するためのテーブルと、そのテーブルに対して上下方向に傾動可能に支持される丸鋸本体と、その丸鋸本体に取付けられる集塵装置とを備える集塵装置付き丸鋸であって、
前記集塵装置は、鋸刃を覆うブレードケースに配管接続される第一の集塵ボックスと、その第一の集塵ボックスに配管接続されるサイクロンユニットと、そのサイクロンユニットに配管接続される第二の集塵ボックスとを一体に有し、
前記サイクロンユニットは、前記第一の集塵ボックス内で落下せずに空気とともに前記第一の集塵ボックス側から吹き込まれてきた切粉を内壁面に沿って回転させるサイクロン本体と、そのサイクロン本体内の空気を上方に排気する排気口と、切粉を前記サイクロン本体の下方に設けられた前記第二の集塵ボックスに向けて排出する排出口とを有し、
切断材を傾斜切りするために前記丸鋸本体を前記テーブルに対して横方向に傾倒させた際に前記丸鋸本体とともに横方向に傾倒されて上方向に位置移動する前記第一の集塵ボックスの横面側に前記サイクロン本体が取付けられていることを特徴とする集塵装置付き丸鋸。
【請求項2】
請求項1に記載の集塵装置付き丸鋸であって、
第一の集塵ボックスは、ブレードケース内に巻き上げられた切粉を前側から取込み後端面に打ち付ける構成になっており、前記第一の集塵ボックスと前記サイクロンユニットとを配管接続する通気口は、前記第一の集塵ボックスの後端面よりも前側に寄った位置の側面に設けられており、前記後端面に打ち付けられた切粉が打ち付けられた勢いによって前記通気口に入ってしまうことを抑制するスペースが前記後端面と前記通気口との間に形成されていることを特徴とする集塵装置付き丸鋸。
【請求項3】
請求項1または2に記載の集塵装置付き丸鋸であって、
第一の集塵ボックスは、ブレードケース内に巻き上げられた切粉を前側から取込む構成であり、かつ前側から後側に向けて徐々に開口径が広くなる流線型になっていることを特徴とする集塵装置付き丸鋸。
【請求項4】
丸鋸本体に設けられた鋸刃の回転によって巻き上げられた切粉を集塵する集塵装置を備える集塵装置付き丸鋸であって、
前記集塵装置は、鋸刃を覆うブレードケースに配管接続される第一の集塵ボックスと、その第一の集塵ボックスに配管接続されるサイクロンユニットと、そのサイクロンユニットに配管接続される第二の集塵ボックスとを一体に有し、
前記サイクロンユニットは、前記第一の集塵ボックス内で落下せずに空気とともに前記第一の集塵ボックス側から吹き込まれてきた切粉を内壁面に沿って回転させるサイクロン本体と、そのサイクロン本体内の空気を上方に排気する排気口と、切粉を前記サイクロン本体の下方に設けられた前記第二の集塵ボックスに向けて排出する排出口とを有し、
前記第一の集塵ボックスは、前記ブレードケース内に巻き上げられた切粉を前側から取込み後端面に打ち付ける構成になっており、前記第一の集塵ボックスと前記サイクロンユニットとを配管接続する通気口が前記第一の集塵ボックスの後端面よりも前側に寄った位置の側面に設けられており、前記後端面に打ち付けられた切粉が打ち付けられた勢いによって前記通気口に入ってしまうことを抑制するスペースが前記後端面と前記通気口との間に形成されていることを特徴とする集塵装置付き丸鋸。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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