説明

集束イオンビーム装置、集束イオンビーム装置を用いた試料加工方法及び試料加工プログラム

【課題】加工パターン検出用のマークの検出確率と加工位置の再現性を向上させ、加工パターンの自動加工を円滑化することができる集束イオンビーム装置、集束イオンビーム装置を用いた試料加工方法及び試料加工プログラムを提供する。
【解決手段】加工パターンの加工前にマーク登録時の視野倍率よりも低いマーク検出用の視野倍率でマークを検出し、登録したマークと検出されたマークの位置を比較して位置ずれ量を算出し、イオンビーム偏向領域をシフトさせてマーク登録時の視野倍率に戻してマークを再検出する。その後、マーク登録時の視野倍率で検出されたマークと登録時のマークの位置を比較してマーク登録時の視野倍率で再度位置ずれ量を算出し、そのずれ量分だけ加工パターンの登録位置から加工用のイオンビーム照射位置をシフトさせて加工パターンの加工を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集束イオンビーム装置、集束イオンビーム装置を用いた試料加工方法及び試料加工プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開平9−245714(特許文献1)には加工中の集束イオンビーム(Focused Ion Beam、以下FIB)の照射位置のずれを自動的に補正するFIB装置による加工方法が開示されている。この従来技術では、加工する試料に所定のマークを形成し、FIBコントローラが所定のマークスキャンインターバルでマークを検出し、最初に検出されたマークの位置と最後に検出されたマークの位置とを比較してイオンビームの照射位置を補正する。
【0003】
【特許文献1】特開平9−245714号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、各加工パターンの検出用のマークを登録した後、目的の加工パターンの位置を検出する際、ステージの移動誤差(位置再現性)やビームドリフトに起因してイオンビームの偏向領域がマーク登録時とずれてしまい、登録したマークが視野内に入らず検出できない場合がある。この場合、各加工パターンの検出用のマークを一通り登録し終えた後、FIB装置に自動加工機能を持たせて複数の目的の加工パターンを自動的に連続加工させようとしても、FIB装置自身で加工位置を定めることができず自動加工を実行することができない。
【0005】
本発明は上記に鑑みなされたもので、加工パターン検出用のマークの検出確率と加工位置の再現性を向上させ、加工パターンの自動加工を円滑化することができる集束イオンビーム装置、集束イオンビーム装置を用いた試料加工方法及び試料加工プログラムを提供することを目的とするである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、加工パターンの加工前にマーク登録時の視野倍率よりも低い視野倍率でマークを検出し、登録したマークと検出されたマークの位置を比較して位置ずれ量を算出し、イオンビーム偏向領域をシフトさせてマーク登録時の視野倍率に戻してマークを再検出する。その後、マーク登録時の視野倍率で検出されたマークと登録時のマークの位置を比較してマーク登録時の視野倍率で再度位置ずれ量を算出し、そのずれ量分だけ加工パターンの登録位置から加工用のイオンビーム照射位置をシフトさせて加工パターンの加工を実行する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、加工パターン検出用のマークの検出確率と加工位置の再現性を向上させ、加工パターンの自動加工を円滑化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0009】
図1は本発明の一実施の形態の係る集束イオンビーム装置の概略構成図、図7は本発明の一実施の形態の係る集束イオンビーム装置の機能ブロック図である。
【0010】
図1に示すように、本実施の形態の集束イオンビーム装置(以下、FIB装置と記載する)は、試料108(図1参照)を搭載可能な試料ステージ109(図1参照)と、試料ステージ109の動作を制御するステージ制御部110(図1参照)と、イオンビームを発生するイオン源100と、イオン源100を制御するイオン源制御部4(図7参照)と、イオン源100から発生したイオンビームを加速、集束及び偏向し試料ステージ109上の試料108に導くイオンビーム光学系2(図7参照)と、イオンビーム光学系2を制御するイオンビーム制御部5(図7参照)と、イオンビームの照射により試料108から発生した二次粒子(二次電子・二次イオン)を検出する二次粒子検出器107と、FIB装置全体の動作制御や観察データの取得等を司るコンピュータ部7と、コンピュータ部7からの表示信号を基に走査型イオン顕微鏡(SIM)画像を表示する表示部(例えばCTR)8と、コンピュータ部7に対する操作入力をするためのキーボードやマウス等の操作入力部10(図7参照)とを備えている。図7において、イオン源100、イオンビーム光学系2、試料ステージ109、二次粒子検出部107を含む破線はFIB装置の真空筐体ブロックに相当する。
【0011】
試料ステージ109は、XY軸(水平面方向)、Z軸(高さ方向)、R軸(回転方向)、T軸(傾斜方向)に駆動可能な5軸式のステージであり、XYZ方向への平行移動に加え、回転移動及び傾斜移動が可能な構成である。ステージ制御部110は、コンピュータ部7からの指令を受けて試料ステージ109の位置・姿勢を制御する。
【0012】
イオン源100は、例えばカリウム等の金属イオン源又はアルゴンや酸素等の不活性ガスイオン源を用いることができる。イオン源制御部4は引き出し電極等から構成され、コンピュータ部7からの指令を受けてイオン源100に電圧を印加し、イオン源100をプラズマ化してイオンビームを発生させる。
【0013】
イオンビーム光学系2は、図1に示したように、イオン源100から引き出されたイオンビームを試料108上に集束させるコンデンサーレンズ101及び対物レンズ106、これらコンデンサーレンズ101及び対物レンズ106の間に配置されたイオンビーム制限絞り板102、アライナー・スティグマ103、ブランカー104及び偏向器105を備えている。イオンビーム制御部5は、図1に示すように、イオンビーム制限絞り板102を駆動する絞り駆動部102a、アラナイナー・スティグマ103を制御するアラナイナー・スティグマ制御部103a、ブランカー104を制御するブランキング・アンプ104a、偏向器105を制御してイオンビームを偏向・走査する偏向制御部105a、対物レンズ106に印加する電力を制御するレンズ電源106a等を備えており、これらはいずれもコンピュータ部7からの指令を受けて機能する。
【0014】
二次粒子検出器107は、集束イオンビームの照射によって試料108から放出される二次粒子を検出し、二次粒子検出器107に入射した二次粒子は光電子倍増管等で構成された二次電子検出部107aで電気信号に変換され、コンピュータ部7に入力される。コンピュータ部7は、二次粒子検出器107からの検出信号の信号強度に応じて表示部8の輝度変調を行い、かつ二次粒子の検出信号を偏向制御部105aに指令したビーム偏向信号(走査信号)と同期させることにより、試料108の表面のSIM像を表示部8上に表示させる。
【0015】
コンピュータ部7は、図7に示したように、画像メモリや画像処理部からなる画像制御部9、登録された加工パターン及びその検出用のマークの情報を記憶する記憶部10と、マーク登録時の視野倍率及びそれよりも低く設定されたマーク検出用の視野倍率を切り換える倍率切替制御部13と、記憶部10に記憶されたマークの登録情報を基にマークを検出するマーク検出部12と、検出されたマークの位置情報とそのマークの登録された位置情報のずれ量を算出しイオンビームの照射位置を補正する加工位置補正部11と、加工位置補正部11からの補正値と記憶部10に記憶された加工パターンの位置情報とを基にイオン源制御部4及びイオンビーム制御部5に指令出力し、補正後の位置にイオンビームを照射させる制御演算部14とを備えている。
【0016】
本実施の形態のFIB装置は、加工パターン検出用のマークを一通り登録し終えたら、登録された加工パターンの中から任意に選択した複数の加工パターンを連続的に自動加工する機能を備えている。加工パターンはオペレータがSIM像を見ながら加工の必要性を判断し、加工を予定する部分(位置情報、ビーム条件等)を登録する。このとき、一般に加工パターンは複数に及ぶので、先に加工パターンを一通り登録し終えてから自動加工に移行するので、加工予定箇所には加工パターンと一定の位置関係にイオンビームによって加工パターン検出用のマークを形成しておく。試料108の表面において加工パターンと同じ視野内に特徴的な形状があればそれをマークとして登録することもできる。これらマークに関する情報は、マークの加工時又は(特徴的形状の場合は加工パターンの登録時)に登録される。マークと登録情報は、マークの画像、位置情報、加工パターンとの位置関係等を含む。自動加工に移行したら、コンピュータ部7は、マークの登録情報を頼りに試料ステージ109を移動させ、目的のマークを検出して加工パターンを加工する。
【0017】
上記記憶部10には、加工パターンの自動加工に関するプログラムが格納されている。この試料加工プログラムは、制御演算部14により記憶部10から読み出され、試料加工プログラムに従ってFIB装置が制御演算部14によって動作制御される。試料加工プログラムが制御演算部14に実行させる手順は、主に次の通りである。
(a)マーク検出用視野倍率への視野倍率の切り替え
(b)ステージの移動
(c)マーク検出用視野倍率でマークを検出(粗検出)
(d)マーク検出用視野倍率でマーク位置を補正
(e)マーク登録時視野倍率でマークを検出(微検出)
(f)マーク登録時視野倍率でマーク位置を補正
(g)加工パターンの加工
これらの試料加工プログラムに順じた制御演算部14による試料加工手順を図6のフローチャートを用いて説明する。
【0018】
<マークの登録>
図6のステップS101のマークの登録の手順まではオペレータの手動操作による手順である。ここで、試料ステージ109上に搭載した試料108の斜視図及び平面図を図2(a)及び図2(b)に示し、まず図2(a)及び図2(b)を用いてマーク登録の手順を説明する。図2(a)及び図2(b)では加工パターン及びその検出用のマークの登録イメージを試料108上に重ね合わせて表してある。
【0019】
マーク(位置合わせ用パターン)の登録前に、まず試料ステージ109に試料108を載せてビーム調整を行った後、加工に適切な視野倍率に変更する。このときの視野倍率を加工倍率、加工倍率で観測できる領域(偏向領域)を加工領域と適宜記載する。
【0020】
次いで、事前に実行された試料108の検査によりTEMやSTEM等で詳細に検査する必要があると判断された目的の加工箇所が加工領域内に観測できるように試料ステージ109を移動し、その際のステージ位置・加工パターンの試料108上の位置情報(座標値)・サイズ・加工深さ・ビーム条件等の加工情報を登録する。これら登録情報は記憶部10に記憶される。その後、登録した加工パターンに対応するマークを必要に応じてイオンビーム照射により加工し、その際の視野倍率、マークのSIM画像及び試料108上の位置情報(座標値)を登録する。これら登録情報は記憶部10や画像制御部9に記憶される。このとき、各加工パターンと対応のマークの位置関係も登録される。マークを加工する箇所は、加工領域内に登録した加工パターンに干渉しない位置であり、通常は加工領域内の外寄りの位置である。なお、試料108の表面に特徴的な形状がある場合には、マークを加工せずにその特徴的形状をマークとしてSIM画像及び位置情報を登録することもできる。また、同一視野内に複数の加工パターンがある場合には、その視野内に1つマークを登録し、各加工パターンについてそのマークとの位置関係を登録する。そして、登録した加工パターンとその位置検出用のマークを組み合わせて一つのリストとして自動加工登録リスト(図3参照)に登録する。試料108上に加工箇所が複数ある場合、上述の手順を繰り返し、それぞれについて自動加工登録リストを作成する。この自動加工登録リストは記憶部10に記憶される。図3のリスト1−4は、それぞれ図2(b)の「登録リスト1」「登録リスト2」「登録リスト3」「登録リスト4」と表した加工パターンの加工リストの一部を例示したものである。ここまでが図6のステップ101の手順であり、試料108上又は試料108の一定のエリア内の目的の加工パターンを一通り登録し終えたら、自動加工を開始して続くステップS102以降の手順をコンピュータ部7に実行させる。
【0021】
<自動加工手順:上記(a)〜(g)>
ステップS101のマーク登録手順の完了後、自動加工開始の指示が入力されたら、制御演算部14は、ステップS102の手順を実行し、倍率切替部13に指令出力して視野倍率をマーク登録時よりも低いマーク検出用の視野倍率に切り替え、その際のマーク検出用の視野倍率を記憶部10に記録する。マーク検出用の視野倍率は、試料ステージ109の移動によって生じる位置ずれ、またはイオンビーム観察によって生じるイオンビーム照射位置のずれを最大限に考慮しても、視野内にマークが捉えられるように設定する。マーク検出用の視野倍率は特に限定されるものではないが、例えばあるマークに対してその登録時の視野倍率を一定の割合で下げた値とすることで、登録時の視野倍率のデータを基に自動的にマーク検出用の視野倍率に切り替えることができる。例えばマーク検出用の視野倍率を対応するマークの登録時の視野倍率の1/2とした場合、あるマークを2000倍の視野倍率で作成し登録すれば、倍率切替部13は、登録時の視野倍率(2000倍)を基にマーク検出用の視野倍率を1000倍に切り替える。
【0022】
ステップS103に手順を移すと、制御演算部14は、ステージ制御部110に指令出力して登録されたマークの位置情報を基に目的のマークをイオンビームの偏向領域に移動させ、次いでイオン源制御部4及びイオンビーム制御部5に指令出力してマーク検出用の視野倍率で観察用のイオンビームを試料108上に走査する(粗検出する)。
【0023】
続くステップ104では、制御演算部14は、マーク検出用の視野倍率で偏向領域(視野)内に目的のマークが検出されたか否かを判定する。仮にここで目的のマークが検出されなければ、制御演算部14は、以降の手順を省略し、現在の加工パターンの加工手順を終了し、自動加工登録リスト次の加工パターンの加工に関しステップS102以降の手順を実行する。一方、ステップ104において、イオンビーム照射によって得られたSIM画像からマーク検出部12にて目的のマークが検出され、マーク検出部12から目的のマークの検出信号が入力されたら、制御演算部14は、加工位置補正部11に指令出力して検出されたマークの位置を登録された位置と比較してその相対位置関係から位置ずれ量(X軸方向、Y軸方向のずれ量)を計算し(ステップS105)、さらに加工位置補正部11から入力されたマーク位置の補正値と登録されたマークの位置情報とを基にイオンビームの偏向領域を補正する(ステップS106)。この際、加工位置補正部11が算出する補正値は、イオンビーム光学系2により照射されるイオンビームのシフト量であり、偏向領域はステージ移動によらずイオンビームシフトによって補正する。
【0024】
その後、制御演算部14は、倍率切替制御部13に指令出力して当該マークの登録時の視野倍率(加工倍率)に切り換え(ステップS107)、イオン源制御部4及びイオンビーム制御部5に指令出力して加工倍率で観察用のイオンビームを試料108上に走査し(ステップS107)、加工倍率でマークを再検出(微検出)する(ステップS108)。
【0025】
続くステップ109では、制御演算部14は、加工倍率の偏向領域(視野)内に目的のマークが検出されたか否かを判定する。仮にここで目的のマークが検出されなければ、制御演算部14は、以降の手順を省略し、現在の加工パターンの加工手順を終了し、自動加工登録リスト次の加工パターンの加工に関しステップS102以降の手順を実行する。一方、このステップ109において、イオンビーム照射によって得られたSIM画像からマーク検出部12にて目的のマークが検出され、マーク検出部12から目的のマークの検出信号が入力されたら、制御演算部14は、加工位置補正部11に指令出力して検出されたマークの位置を登録された位置と比較してその相対位置関係から位置ずれ量(X軸方向、Y軸方向のずれ量)を計算し(ステップS110)、さらに加工位置補正部11から入力されたマーク位置の補正値と登録されたマークの位置情報とを基にイオンビームの照射位置を補正する(ステップS111)。この際、加工位置補正部11が算出する補正値は、イオンビーム光学系2により照射されるイオンビームのシフト量であり、イオンビームの照射位置はステージ移動によらずイオンビームシフトによって補正する。
【0026】
ステップS111までの手順を実行して加工用のイオンビーム照射位置が定まったら、制御演算部14は、イオン源制御部4及びイオンビーム制御部5に指令出力して加工パターンの加工を実行し(ステップ112,S113)、1つの加工パターンの自動加工の一連の手順を修了する。
【0027】
制御演算部14は、自動加工登録リストに登録された各リスト(各加工パターン)に対して以上のステップ102〜S113の手順を登録順に実行していき、リストに登録した複数の加工パターンの自動加工を連続的に実行していく。
【0028】
以上本実施の形態によれば、ステージの移動誤差(位置再現性)やビームドリフトに起因してイオンビームの偏向領域がマーク登録時とずれても、マーク検出用の視野倍率でマークを高確率で検出することができ、次いでマーク検出用の倍率、加工倍率で段階的に倍率を上げてイオンビームの照射位置を補正することによって最終的な加工位置を高精度に決定することができる。この際、イオンビームの照射位置はステージ移動によらずビームシフトにより行うので、補正の際に再びステージ移動による誤差が生じることもない。よって、加工パターン検出用のマークの検出確率と加工位置の再現性を向上させ、加工パターンの自動加工を円滑に実行することができる。
【0029】
図4は本実施の形態によるマークの粗検出の様子を例示したイメージ図である。図4ではマーク検出用(粗検出用)の視野倍率を1000倍、加工倍率を2000倍として説明する。
【0030】
図4において、2000倍の倍率(加工倍率)で観察し登録した加工パターンとマークは、リスト登録完了後の位置検出時、登録時と同じ2000倍で検出しようとすると、登録された位置に従って試料ステージ109を移動させても、ステージ移動で生じた位置ずれによって実際のマークが偏向領域(点線で示した2000倍の視野)から外れてしまい、マークを視野内に捉えることができない場合がある。特に本実施の形態のような回転移動機能を持つ試料ステージ108では、僅かな回転角の誤差で大きな位置ずれが生じ易い。それに対し、1000倍の偏向領域内には、実際のマークが捉えられていることが分る。1000倍の偏向領域内にマークを検出することができたら、検出したマークの位置情報とその登録時の位置情報からステージ移動等により生じた位置ずれ量を算出し、その分だけビームシフトさせることで登録時のマーク位置を実際のマーク位置に近付ける(位置補正する)。
【0031】
図5はマーク登録時の倍率(加工倍率)における再検出の様子を例示したイメージ図である。
【0032】
図5に示したように、ビームシフト後は実際のマークが2000倍の視野内に捉えられており、登録したマーク位置との位置ずれも減少している。この時点では1000倍で取得した位置情報を基に位置補正しているので、2000倍で観察した場合には微小な誤差が生じ得る。したがって、2000倍の視野内に実際のマークを捉えたら、2000倍におけるマークの検出位置と登録位置とのずれ量を考慮に入れて加工位置をビームシフトにより補正することで、加工パターンの登録位置を高精度に加工することができる。
【0033】
以上の方法により、ステージ移動やビームドリフトによって生じたステージの位置ずれが生じても、一回目のマーク検出(粗検出)でマークを高確率で検出して位置補正をすることができ、二回目のマーク検出(微検出)でさらに微細な位置補正をすることができるので、位置ずれの補正精度を高められる。そして、マークを検出し高精度に補正することができることで、FIB装置における加工スールプットを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施の形態の係る集束イオンビーム装置の概略構成図である。
【図2】試料ステージ上に搭載した試料の斜視図及び平面図である。
【図3】自動加工登録リストの一例である。
【図4】本発明の一実施の形態の係る集束イオンビーム装置によるマークの粗検出の様子を例示したイメージ図である。
【図5】本発明の一実施の形態の係る集束イオンビーム装置によるマーク登録時の倍率(加工倍率)における再検出の様子を例示したイメージ図である。
【図6】本発明の一実施の形態の係る集束イオンビーム装置に備えられた制御演算部14による試料加工手順を表すフローチャートである。
【図7】本発明の一実施の形態の係る集束イオンビーム装置の機能ブロック図である。
【符号の説明】
【0035】
2 イオンビーム光学系
4 イオン源制御部
5 イオンビーム制御部
10 記憶部
11 加工位置補正部
12 マーク検出部
13 倍率切替制御部
14 制御演算部
100 イオン源
107 二次粒子検出器
108 試料
109 試料ステージ
110 ステージ制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を搭載可能な試料ステージと、
前記試料ステージの動作を制御するステージ制御部と、
イオンビームを発生するイオン源と、
前記イオン源を制御するイオン源制御部と、
前記イオン源から発生したイオンビームを前記試料ステージ上の試料に導くイオンビーム光学系と、
前記イオンビーム光学系を制御するイオンビーム制御部と、
イオンビームの照射により試料から発生した二次粒子を検出する二次粒子検出器と、
登録された加工パターン及びその検出用のマークの情報を記憶する記憶部と、
マーク登録時の視野倍率及びそれよりも低く設定されたマーク検出用の視野倍率を切り換える倍率切替制御部と、
前記記憶部に記憶されたマークの登録情報を基にマークを検出するマーク検出部と、
検出されたマークの位置情報と当該マークの登録された位置情報のずれ量を算出し、イオンビームの照射位置を補正する加工位置補正部と、
前記加工位置補正部からの補正値と前記記憶部に記憶された加工パターンの位置情報とを基に前記イオン源制御部及び前記イオンビーム制御部に指令出力し、補正後の位置にイオンビームを照射させる制御演算部と
を備えたことを特徴とする集束イオンビーム装置。
【請求項2】
請求項1の集束イオンビーム装置において、前記制御演算部は、
前記倍率切替制御部に指令出力して前記マーク検出用の視野倍率に切り換える手順と、
前記ステージ制御部に指令出力して登録されたマークの位置情報を基に目的のマークをイオンビームの偏向領域に移動させる手順と、
前記イオン源制御部及び前記イオンビーム制御部に指令出力して前記マーク検出用の視野倍率で観察用のイオンビームを試料上に走査する手順と、
前記マーク検出部から目的のマークの検出信号を入力した場合、前記加工位置補正部から入力されたマーク位置の補正値と登録されたマークの位置情報とを基にイオンビームの偏向領域を補正する手順と、
前記倍率切替制御部に指令出力して当該マークの登録時の視野倍率に切り換える手順と、
前記イオン源制御部及び前記イオンビーム制御部に指令出力してマーク登録時の視野倍率で観察用のイオンビームを試料上に走査する手順と、
前記マーク検出部から目的のマークの検出信号を入力した場合、前記加工位置補正部から入力されたマーク位置の補正値と登録されたマークの位置情報とを基に加工用のイオンビームの照射位置を補正し、前記イオン源制御部及び前記イオンビーム制御部に指令出力して加工パターンの加工を実行する手順と
を連続的に実行可能であることを特徴とする集束イオンビーム装置。
【請求項3】
請求項1の集束イオンビーム装置において、前記試料ステージが、XYZ方向への平行移動に加え、少なくとも回転移動可能であることを特徴とする集束イオンビーム装置。
【請求項4】
請求項1の集束イオンビーム装置において、前記マーク検出用の視野倍率が対応するマークの登録時の視野倍率の1/2であることを特徴とする集束イオンビーム装置。
【請求項5】
請求項1の集束イオンビーム装置において、
加工位置補正部が、前記イオンビーム光学系により照射されるイオンビームのシフト量を補正値として算出することを特徴とする集束イオンビーム装置。
【請求項6】
集束イオンビーム装置を用いた試料加工方法において、
加工パターン検出用のマークを登録した後、マーク登録時の視野倍率よりも低く設定されたマーク検出用の視野倍率に切り換え、
目的のマークをイオンビームの偏向領域に移動させ、
前記マーク検出用の視野倍率で観察用のイオンビームを試料上に走査し、
目的のマークが前記マーク検出用の視野倍率の視野内に入った場合、検出されたマークの位置情報と当該マークの登録された位置情報のずれ量を算出してイオンビームの偏向領域を補正し、
当該マークの登録時の視野倍率に切り換え、
マーク登録時の視野倍率で観察用のイオンビームを試料上に走査し、
目的のマークが前記マーク登録時の視野倍率の視野内に入った場合、検出されたマークの位置情報と当該マークの登録された位置情報のずれ量を算出して加工用のイオンビームの照射位置を補正し、加工パターンの加工を実行する
ことを特徴とする試料加工方法。
【請求項7】
集束イオンビーム装置の試料加工プログラムにおいて、
マーク登録時の視野倍率よりも低く設定されたマーク検出用の視野倍率に切り換える手順と、
登録されたマークの位置情報を基に目的のマークをイオンビームの偏向領域に移動させる手順と、
前記マーク検出用の視野倍率で観察用のイオンビームを試料上に走査する手順と、
目的のマークの検出信号を入力した場合、検出されたマークの位置情報及び当該マークの登録された位置情報のずれ量を基に算出されたマーク位置の補正値と登録されたマークの位置情報とを基にイオンビームの偏向領域を補正する手順と、
当該マークの登録時の視野倍率に切り換える手順と、
マーク登録時の視野倍率で観察用のイオンビームを試料上に走査する手順と、
目的のマークの検出信号を入力した場合、検出されたマークの位置情報及び当該マークの登録された位置情報のずれ量を基に算出されたマーク位置の補正値と登録されたマークの位置情報とを基に加工用のイオンビームの照射位置を補正し、加工パターンの加工を実行する手順と
を演算制御部に指令して連続的に実行させることを特徴とする試料加工プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−9987(P2010−9987A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−169295(P2008−169295)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】