説明

集束イオンビーム装置

【課題】ガス電界電離イオン源を用いて試料へのダメージが小さく、かつ、効率よく微細加工を行うこと。
【解決手段】イオンビーム1を放出するエミッタ41と、エミッタ41を収容するイオン源室40と、イオン源室40に窒素を供給するガス供給部46と、窒素をイオン化し、窒素イオンを引き出す電圧を印加するための引出電極49と、エミッタ41を冷却する温度制御部34と、を有するガス電界電離イオン源を備えている集束イオンビーム装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガス電界電離イオン源を備えた集束イオンビーム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
集束イオンビーム装置のイオン源として、原料ガスをイオン化しイオンビームを放出するガス電界電離イオン源が知られている。
ガス電界電離イオン源を用いた装置として、例えば、ガス電界電離イオン源からアルゴンイオンビームを照射し、フォトマスクの欠陥修正などの微細加工を行う集束イオンビーム装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、特許文献1の装置では、試料観察の際にアルゴンイオンビームのスパッタリング効果により試料にダメージを与えてしまう問題があった。一方、ヘリウムのイオンビームでは、試料加工の際にエッチング効率が低いため、加工に膨大な時間がかかるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2009/022603号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、その目的は、試料へのダメージが小さく、かつ、効率よく微細加工を行うガス電界電離イオン源を備えた集束イオンビーム装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、この発明は以下の手段を提供している。
(1)本発明に係る集束イオンビーム装置は、イオンビームを放出するエミッタと、エミッタを収容するイオン源室と、イオン源室に窒素を供給するガス供給部と、窒素をイオン化し、窒素イオンを引き出す電圧を印加するための引出電極と、エミッタを冷却する温度制御部と、を有するガス電界電離イオン源を備えている。
【0007】
イオン源室に窒素に比べ質量が大きいガスを供給しイオン化した場合、イオンの質量が大きいため、イオンビームは試料に大きなダメージを与えてしまう。一方、イオン源室に窒素に比べ質量が小さいガスを供給しイオン化した場合、イオンの質量が小さいため、イオンビームによる試料のスパッタリング効率が悪く、加工に膨大な時間がかかる。そこで、上記のとおり原料ガスとして窒素を用いることで、試料へのダメージを軽減すると共に効率よく試料を加工することができる。
【0008】
(2)本発明に係る集束イオンビーム装置のガス供給部は、イオン源室内の圧力が1.0×10-6Pa乃至1.0×10-2Paになるように窒素ガスの供給を制御する。さらにガス供給部は、イオン源室内の圧力が1.0×10-5Pa乃至1.0×10-3Paになるように窒素ガスの供給を制御することがより好ましい。
【0009】
イオン源室内の圧力が1.0×10-2Paよりも高い場合、エミッタの窒化が促進され、引出電圧を印加することでエミッタが電界蒸発により破壊されてしまう。一方、イオン源室内の圧力が1.0×10-6Paよりも低い場合、十分なイオンビームの電流量が得られない。そこで、上記のように窒素ガスの供給を制御することにより、エミッタが電界蒸発により破壊されることなく、かつ、十分なイオンビーム電流を照射することができる。
【0010】
(3)本発明に係る集束イオンビーム装置の温度制御部は、エミッタの温度を40K乃至200Kに制御する。
【0011】
エミッタの温度が200Kよりも高い場合、イオン化領域へのガス供給が減り、十分なイオンビーム電流が得られない。一方、エミッタの温度が20Kよりも小さい場合、イオン源室内やエミッタ近傍の低温部分においてガスが固化し、安定動作を妨げる。そこで、上記のようにエミッタの温度を制御することにより、十分なイオンビーム電流を安定して照射することができる。
【0012】
(4)本発明に係る集束イオンビーム装置は、引出電極に0.5kV乃至20kVの電圧を印加する。
【0013】
引出電圧が20kVより大きいと、放電やエミッタ材料の電界蒸発によりエミッタが破損する。一方、引出電圧が0.5kVより小さいと窒素がイオン化されず、イオンビームを照射できない。そこで、上記のように引出電極に印加する電圧を制御することにより、放電やエミッタ材料の電界蒸発によりエミッタが破損することなく、イオンビームを照射することができる。
【0014】
(5)本発明に係る集束イオンビーム装置は、ガス電界電離イオン源から放出されたイオンビームを用いて、マスクの欠陥を修正する。イオン源室に窒素に比べ質量が大きいガスを供給しイオン化した場合、イオンの質量が大きいため、イオンビームは試料に大きなダメージを与えてしまう。一方、イオン源室に窒素に比べ質量が小さいガスを供給しイオン化した場合、イオンの質量が小さいため、イオンビームによる試料のスパッタリングは効率が悪く、欠陥修正に膨大な時間がかかる。そこで、上記のとおり原料ガスとして窒素を用いることで、マスクに与えるダメージを軽減しつつ、マスクの欠陥を効率よく修正することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る集束イオンビーム装置によれば、ガス電界電離イオン源を用いて試料へのダメージが小さく、かつ、効率よく微細加工を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る集束イオンビーム装置の構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係るイオンビーム照射原理の説明図である。
【図3】本発明の実施形態に係るマスク欠陥を修正する集束イオンビーム装置の構成図である。
【図4】本発明の実施形態に係るマスクの観察像である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<実施形態1>
以下、本発明に係る集束イオンビーム装置の実施形態について説明する。
【0018】
本実施形態は、ガス電界電離イオン源を備えた集束イオンビーム装置である。ガス電界電離イオン源は、イオン源ガスが供給されたイオン源室内において、原子レベルで先鋭化されたエミッタの先端周辺に高電界を形成することにより、先端に吸着したイオン源ガスをイオン化し、イオンビームを放出する。エミッタ先端から放出されるイオンビームは、光源径が数オングストロームと微小であるため、ビーム径が小さくかつ高輝度なイオンビームを試料に照射することができる。
【0019】
本実施形態は、イオンビームで試料を加工するために、ヘリウムのような軽い元素ではなく、スパッタリング効率の高い窒素を用いる。ところが、窒素をイオン源ガスとして用いると、エミッタ材料として主に用いるタングステンと窒素が反応し窒化タングステンを形成する。窒化タングステンはタングステンに比べ低い電圧で電界蒸発が起こる。そのため、窒素をイオン化するために必要な電圧をかけるとエミッタが電界蒸発してしまうという問題があった。
【0020】
そこで、本実施形態の集束イオンビーム装置は、イオン源室のガス分圧等を制御することにより、エミッタを電界蒸発させずに窒素をイオン化しイオンビームを放出する。これにより、ヘリウムに比べ加工速度が速く、また、アルゴンイオンビームよりも試料へのダメージが小さい加工を行うことができる。
【0021】
装置構成は、図1に示すように、主にイオンビーム鏡筒10と試料室20と制御部30からなる。
試料室20は、イオンビーム鏡筒10から照射されるイオンビーム1の照射位置に試料2を移動させる試料ステージ3を収容している。
【0022】
試料ステージ3は作業者の指示に基づいて動作し、5軸に変位することができる。すなわち、試料ステージ3は、同一面内で互いに直交するX軸とY軸と、これらに直交するZ軸とに沿って試料ステージ3を移動させるXYZ軸機構と、X軸またはY軸回りで試料ステージ3を回転させ傾斜させるチルト軸機構と、Z軸回りで試料ステージ3を回転させる回転機構とからなる変位機構により支持されている。
【0023】
また試料室20は、イオンビーム1の走査照射により発生する二次イオンや二次電子を検出する検出器4を備えている。この二次イオンや二次電子の検出信号とイオンビーム1の走査信号から観察像を形成することができる。検出器4として反射イオン検出器を用いる場合、試料2から発生した反射イオンを検出し反射イオン像を形成することもできる。
【0024】
また、試料室20は、イオンビーム1の照射中に試料3にガスを吹き付け可能なガス供給部5を備えている。ガス供給部5は、ガスを貯蔵するガス貯蔵部とガスを試料2近傍に吹き付けるノズル部とを備えている。ガス供給部5は、ガスの流量を調整するマスフローコントローラなどのガス流量調整部を備えることも可能である。
【0025】
試料室20は、試料室20内を真空状態にするための真空ポンプ6を備えている。これにより試料室20内の真空度を調整することができる。
【0026】
制御部30は、検出器4からの検出信号から観察像を形成する像形成部31を備えている。像形成部31で形成された観察像を表示部7に表示する。従って、イオンビーム1を試料2に照射し、発生した二次イオンや二次電子を検出することで、試料2の観察像を表示部7に表示し観察することができる。
【0027】
イオンビーム鏡筒10は、イオン源室40から放出されたイオンビーム1を集束させるコンデンサレンズ電極11と、試料2上にフォーカスさせる対物レンズ電極12を備えている。また、イオン源室40と試料室20との間に中間室13を備えている。中間室13は、イオン源室40と中間室13との間にオリフィス14を、試料室20と中間室13との間にオリフィス15を備えている。イオンビーム1はオリフィス14、15を通過し、試料2に照射される。そして、中間室13は真空ポンプ16を備えている。これにより、中間室の真空度を調整することができ、中間室13は試料室20とイオン源室40との間で差動排気することができる。
【0028】
イオン源室40は、イオンビーム1を放出するエミッタ41と、エミッタ41を冷却する冷却装置42と、エミッタに41にイオン源ガスを供給するイオン源ガス供給部46と、イオン源室40を真空状態にする真空ポンプ48とを備えている。エミッタ41は冷却装置42とイオン源室40とを接続する接続部43とイオン源室40の壁部44を介して、冷却装置42により冷却される。また、エミッタ41にはヒータ45が接続されており、エミッタ41の温度を調整することができる。冷却装置42とヒータ45は、制御部30の温度制御部34により制御される。
【0029】
ここで、冷却装置42は内部に収容された液体窒素、液体ヘリウム等の冷媒によってエミッタ41を冷却する装置である。冷却装置42として、GM型、パルスチューブ型等のクローズドサイクル式冷凍機やガスフロー型の冷凍機を用いてもよい。
【0030】
エミッタ41は、タングステンやモリブデンからなる。または、エミッタ41は、タングステンやモリブデンからなる針状の基材に、白金、パラジウム、イリジウム、ロジウム、金等の貴金属を被覆したものである。エミッタ41の先端は原子レベルで尖鋭化されたピラミッド状になっている。
【0031】
エミッタ41の先端は極めて尖鋭な形状であり、窒素イオンはこの先端から放出され、イオンビーム1のエネルギー分布幅は極めて狭いために色収差の影響を小さく抑えることができ、例えば、プラズマ型ガスイオン源や液体金属イオン源と比較して、ビーム径が極めて小さくかつ高輝度なイオンビームを得ることができる。
【0032】
また、イオン源室40は、エミッタ41近傍にイオンビーム1を引き出すための電界を形成するための引出電極49を備えている。引出電極49への印加電圧は、制御部30の引出電圧制御部32により制御される。
【0033】
イオン源室40にイオン源ガスを供給するイオン源ガス供給部46を備える。イオン源ガス供給部46は、イオン源ガスを貯蔵するガス貯蔵部とイオン源ガスをエミッタ41近傍に供給するノズル部とを備えている。イオン源ガス供給部46は、イオン源ガスの流量を調整するマスフローコントローラなどのガス流量調整部を備える。イオン源ガス供給部46は制御部30のイオン源ガス制御部33により制御される。
【0034】
次にイオンビーム照射原理について図2を用いて説明する。イオン源室40にはイオン源ガス供給部46から窒素ガスが供給され、エミッタ41周辺には窒素分子51が存在している。エミッタ41は、冷却装置42により冷却されており、エミッタ41周辺の窒素分子51はエミッタ41に吸着する。また、引出電圧制御部32からの信号により電源50はエミッタ41と引出電極49との間に電圧を印加する。これによりエミッタ41先端の周辺に高電界が発生し、エミッタ41に吸着した窒素分子51は先端に移動する。そして、先端で窒素分子51はイオン化され、引出電圧によりイオンビーム1が放出される。
【0035】
このエミッタ41の先端は、原子レベルで先鋭化されており、結晶構造がピラミッド状になるように構成されている。従って、エミッタ41と引出電極49との間に電圧が印加させると、ピラミッドの先端において非常に大きな電界が形成され、窒素分子51は分極して先端に引き寄せられる。そして、引き寄せられた窒素分子51は電界の高い位置でイオン化される。窒素イオンは引出電極49の開口部から試料室2内部に向かって放出される。イオンビームが放出される領域の大きさ、つまり、イオン源のソースサイズが極めて小さいので、試料上でのビーム径が小さく、かつ、高輝度な窒素イオンビームを照射することができる。
【0036】
ここで、引出電圧について説明する。イオン源ガスをイオン化するために必要な電界は、ガス種によって異なる。ヘリウムの場合は、4.40×1010V/mである。窒素の場合は、ヘリウムよりも小さい1.65×1010V/mである。すなわち、窒素はヘリウムよりも小さい電界でイオン化できるので、印加電圧はヘリウムよりも小さくて良い。印加電圧が大きいとエミッタ自身が電界蒸発してしまい早く消耗してしまうので、窒素を用いることでエミッタ41を長持ちさせることができる。イオンビームを放出可能な印加電圧はエミッタ41の先端形状により異なることがあるが、本実施形態は0.5から20kVの印加電圧でイオンビーム1を放出することが可能である。
【0037】
ところで、イオンビーム1で試料2の微細加工を効率的にするためにはサブピコアンペアオーダーの電流量が必要である。イオン源室40の窒素ガス分圧を1.0×10-6Paとした場合、サブピコアンペアオーダーのイオンビーム電流を得ることができる。また、窒素ガス分圧を1.0×10-5Paで数pA、1.0×10-4Paで数十pA、1.0×10-3Paで数百pA、1.0×10-2Paで数nAの電流量を照射することができる。この傾向は、エミッタ41に吸着し、イオン化に寄与する窒素分子の密度が大きくなるため、これにより電流量も大きくなることに起因する。しかしながら、1.0×10-2Paよりも大きい窒素ガス分圧では、エミッタ41の窒化が促進され、エミッタ41自身が電界蒸発により消耗してしまう。
【0038】
よって、本実施形態ではイオン源室40における窒素ガスのガス分圧を1.0×10-6Pa乃至1.0×10-2Paになるようにイオン源ガス供給部46を制御する。また、より加工速度が速く、かつ、エミッタ41の消耗をより小さくするために、ガス分圧を1.0×10-5Pa乃至1.0×10-3Paになるように制御することがより好ましい。
【0039】
イオン源室40のガス分圧を上記の範囲になるように制御するために、本実施形態ではイオン源室40と試料室20との間に中間室13を備える。また、イオン源ガス供給部46に断続的に開閉動作するマスフローコントローラを備える。
【0040】
中間室13はイオン源室40と中間室13との間にオリフィス14を、試料室20と中間室13との間にオリフィス15を備え、かつ、真空ポンプ16を動作させることにより、試料室20とイオン源室40をそれぞれ異なる真空度に保つことができる。試料室20のベース真空度は1.0×10-5Paオーダーである。また、ガス供給部5により試料2にガスを吹き付けながら加工する場合、試料室20の真空度は1.0×10-3Paオーダーである。すなわち、このような場合、イオン源室40が試料室20よりも真空度が高い状態で動作させることになる。中間室13がないと、試料室20から不純物ガスがイオン源室40に流入し、不純物がエミッタ41に吸着するため、イオンビーム照射が不安定になってしまう。
【0041】
また、断続的に開閉動作するマスフローコントローラを備えることで、イオン源室40に微少量の窒素ガスを供給することができるので、上記のガス分圧を実現することができる。
【0042】
次に、エミッタ41の温度制御について説明する。エミッタ41の温度が低いと窒素分子51の吸着密度が高くなる。従って、エミッタ41の温度を低くすることでイオンビーム1の電流量が大きくなる。しかし、エミッタ41の温度を低くすると、イオン源室40の壁部44や冷却装置42とイオン源室40との接続部43に窒素分子51が吸着し、固体化する。固体化した窒素はイオン源室40の温度が上がった際に、一斉に気化するため、イオン源室40のガス分圧が急激に高くなり、イオン源の動作が不安定になる。
【0043】
そこで、本実施形態では、温度制御部34によりエミッタ41の温度を40K乃至200Kになるように制御する。これにより、微細加工に必要な電流量のイオンビームを安定して照射することができる。
以上のとおり、本実施形態の集束イオンビーム装置によれば、窒素イオンビームを安定して照射することができる。
【0044】
<実施形態2>
実施形態1のガス電界電離イオン源を備えたイオンビーム鏡筒を備えたマスク修正装置の実施形態について説明する。
【0045】
マスクの欠陥修正では、イオンビームを照射し欠陥を修正する際にマスクの透過部分にイオンが打ち込まれマスクの透過率が低下することが問題であった。ガリウムなどの金属イオンがマスクを露光する光を吸収してしまうからである。ガス電界電離イオン源でヘリウムイオンビームを用いることで透過部分へのダメージを軽減することができるが、スパッタリング効率が極めて低いため、加工の効率が悪いという問題があった。そこで、本実施形態では、窒素イオンビームによるマスク修正を実施することで、透過部分へのダメージが小さく、かつ、効率の良い加工を実現する。
【0046】
本発明の実施形態に係るマスク欠陥を修正する集束イオンビーム装置は、図3に示すように主にイオンビーム鏡筒10と制御部30と試料室65から構成される。
【0047】
欠陥を有するマスクの修正について説明する。試料室65内の試料ステージ61に載置されたマスク60に対し、イオンビーム鏡筒20から窒素イオンビームを照射し、マスク表面の観察を行う。図4はマスク60の観察像である。マスク60は遮光パターン部66を有している。遮光パターン部66の一部に欠陥67が存在する。
【0048】
次に、炭素系ガスまたはプラチナやタングステンなどの金属を含有した炭素系化合物ガスなどのデポジションガスをデポジションガス供給部62からマスク60の欠陥67に吹きつけながら窒素イオンビームを照射する。これにより欠陥67を埋めるようにデポジション膜が形成される。したがって欠陥が修正されたマスクは露光しても欠陥が転写されることなく正常にパターンを転写することができる。
【0049】
また、遮光パターン部から余分に突出した欠陥を修正する場合は、ヨウ素などのハロゲン系のエッチングガスをエッチングガス供給部63からマスクの欠陥部分に吹きつけながら窒素イオンビームを照射する。これにより突出した欠陥部分がエッチングされ、マスクを正常に修正することができる。
【0050】
以上のとおり、本実施形態の集束イオンビーム装置によれば、窒素イオンビームを用いることで、マスクの透過部分に露光の光を吸収するようなイオンを打ち込むことなく欠陥を、効率よく修正することができる。
【符号の説明】
【0051】
1…イオンビーム
2…試料
3…試料ステージ
4…検出器
5…ガス供給部
6…真空ポンプ
7…表示部
10…イオンビーム鏡筒
11…コンデンサレンズ電極
12…対物レンズ電極
13…中間室
14、15…オリフィス
16…真空ポンプ
20…試料室
30…制御部
31…像形成部
32…引出電圧制御部
33…イオン源ガス制御部
34…温度制御部
40…イオン源室
41…エミッタ
42…冷却装置
43…接続部
44…壁部
45…ヒータ
46…イオン源ガス供給部
48…真空ポンプ
49…引出電極
50…電源
51…窒素分子
60…マスク
61…試料ステージ
62…デポジションガス供給部
63…エッチングガス供給部
65…試料室
66…遮光パターン部
67…欠陥

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンビームを放出するエミッタと、
前記エミッタを収容するイオン源室と、
前記イオン源室に窒素を供給するガス供給部と、
前記窒素をイオン化し、窒素イオンを引き出す電圧を印加するための引出電極と、
前記エミッタを冷却する温度制御部と、を有するガス電界電離イオン源を備えた集束イオンビーム装置。
【請求項2】
前記ガス供給部は、前記イオン源室内の圧力が1.0×10-6Pa乃至1.0×10-2Paになるように前記窒素の供給を制御する請求項1に記載の集束イオンビーム装置。
【請求項3】
前記ガス供給部は、前記イオン源室内の圧力が1.0×10-5Pa乃至1.0×10-3Paになるように前記窒素の供給を制御する請求項1に記載の集束イオンビーム装置。
【請求項4】
前記温度制御部は、前記エミッタの温度を40K乃至200Kに制御する請求項1乃至3のいずれか一つに記載の集束イオンビーム装置。
【請求項5】
前記引出電極に印加する前記電圧は、0.5kV乃至20kVである請求項1乃至4のいずれか一つに記載の集束イオンビーム装置。
【請求項6】
前記ガス電界電離イオン源から放出されたイオンビームを用いて、マスクの欠陥を修正する請求項1乃至5のいずれか一つに記載の集束イオンビーム装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−89534(P2013−89534A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230769(P2011−230769)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「次世代半導体材料・プロセス基盤(MIRAI)プロジェクト/次世代半導体材料・プロセス基盤(MIRAI)プロジェクト(石特会計)/次世代マスク基盤技術開発(継続研究)」委託研究、産業技術力強化第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(503460323)株式会社日立ハイテクサイエンス (330)
【Fターム(参考)】