説明

集積タイプのマスフローコントローラ

【課題】 バルブ等の他の構成部材と同じベース取付け部を有することでガス供給ラインを小型化できる集積タイプのマスフローコントローラを提供することである。
【解決手段】 本体ブロック1に流体入口8aと流体出口8bを形成し、これら流体入口8aと流体出口8bを接続する流体流路11中に制御バルブ31を設け、更に、流体入口8aと制御バルブ31との間に、流体Gをバイパスさせるバイパス素子7と、流体Gの流量測定を行う流量センサ部10とを並列的に設け、前記流量センサ部10からの流量測定信号と流量設定信号とを比較制御回路において比較し、この比較制御回路から出力される制御信号に基づいて制御バルブ31の開度を制御するようにしたマスフローコントローラ3であって、前記本体ブロック1内に前記バイパス素子7を設けるとともに、前記本体ブロック1の側面nに前記流量センサ部10を設ける一方、前記本体ブロック1の上面sに前記制御バルブ31を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、半導体製造プロセスでのウェハーの膜付けや、エッチング等に使用されるガスを流すためのガス供給ラインに設置され、流量センサ部と制御バルブのベース取付け部をコンパクト化した新規な集積タイプのマスフローコントローラに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体の製造に用いられるパージガスを含む各種のガスをウェハー等に供給する場合、図8に示すように、それらの供給流路(ガス供給ライン)81〜88にマスフローコントローラ89をそれぞれ設け、これによってガス流量をそれぞれ調節するとともに、マスフローコントローラ89の入口側(逆止弁90のある側)および出口側に通常複数個のバルブ91が設置されるが、バルブ91,91同士やマスフローコントローラ89とバルブ91を、図8に示すようにパイプにより接続しないで、ガス供給ラインの小型化を目的として、図7に示すように、複数個のバルブ91を基板99により上方から着脱自在に一方向に並んで取り付けて構成部材(この場合バルブ91)の占有面積を小さくすることが提案されている(特開平10−311450号公報、特開平10−311451号公報)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これらによれば、バルブのみならず逆止弁あるいはフィルタ等の構成部材までベース取付け部を同一にすることでこれら構成部材の標準化を図ることができるけれども、マスフローコントローラ89だけは、依然、他のコンポーネント(前記逆止弁あるいはフィルタ等の構成部材)と比べコンパクト化が図られていなかった。すなわち、マスフローコントローラ89は、例えばバルブと大きさが異なるため、特殊な取付け方法にて基板99に設置されていた。これは、マスフローコントローラ89は、図6に示すように、本体ブロック61に形成された流体入口62と流体出口63との間に、ガスGをバイパスさせるバイパス素子64と、ガスGの流量測定を行う流量センサ部65とを並列的に設け、更に、流量センサ部65と制御バルブ66とを同じ側に設置していたためである。例えば、図7、図6において、マスフローコントローラ89の流体入口62と流体出口63の基板99への設置方向を両矢印Yで示す一方、この設置方向に直角な方向を両矢印Xで示すと、上面からみたマスフローコントローラ89の矢印Xで示す方向における横の長さxに比して両矢印Yで示す方向における縦の長さy(図6参照)が大である。
この発明は上述の事柄に留意してなされたもので、その目的は、バルブ等の他の構成部材と同じベース取付け部を有することでガス供給ラインを小型化できる集積タイプのマスフローコントローラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、この発明は、本体ブロックに流体入口と流体出口を形成し、これら流体入口と流体出口を接続する流体流路中に制御バルブを設け、更に、流体入口と制御バルブとの間に、流体をバイパスさせるバイパス素子と、流体の流量測定を行う流量センサ部とを並列的に設け、前記流量センサ部からの流量測定信号と流量設定信号とを比較制御回路において比較し、この比較制御回路から出力される制御信号に基づいて制御バルブの開度を制御するようにしたマスフローコントローラであって、前記本体ブロック内に前記バイパス素子を設けるとともに、前記本体ブロックの側面に前記流量センサ部を設ける一方、前記本体ブロックの上面に前記制御バルブを設けている。
【発明の効果】
【0005】
この発明では、本体ブロック内にバイパス素子を設けるとともに、本体ブロッ
クの側面に流量センサ部をバイパス素子と並列的に設ける一方、本体ブロックの
上面に制御バルブを設けたので、流量センサ部と制御バルブのベース取付け部を
コンパクト化でき、バルブ等の他の構成部材と同じベース取付け部を有する集積
タイプのマスフローコントローラを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、この発明の実施の形態について説明する。
図1〜図5は、この発明の一実施形態を示す。なお、図1は、この発明の集積タイプのマスフローコントローラ3の内部構造を基板4上に設置した状態で示し、マスフローコントローラ3の流体入口8aと流体出口8bの基板4への設置方向を両矢印Yで示すとともに、両矢印Yで示す方向に垂直な上方向、すなわち、マスフローコントローラ3の高さ方向を矢印Zで示している。図2は、基板4上に設置された前記マスフローコントローラ3を上面からみた図で、前記両矢印Yで示す方向(以縦方向Yという)に直角な方向を両矢印Xで示している(以横方向Xという)。図3〜図5は、基板4上にマスフローコントローラ3とバルブと例えばフィルタを設置して構成したガス供給ラインLを示している。
図1〜図5において、1は本体ブロックで、平面視正方形(一辺aの長さが例えば39mm)のベース取付け部2が形成されている。すなわち、横の長さAも縦の長さBも同じ(A=B=a)である。このベース取付け部2の四隅には、半導体の製造に用いられるパージガスを含む各種のガスをウェハー等に供給するガス供給ラインLを形成するための基板4にマスフローコントローラ3を取り付けて固定するためのネジ穴5が所定のピッチbを有して設けられている。5aはネジ穴5に螺合するボルトである。前記ピッチbは、例えば30mmである。このピッチbは、例えば半導体製造プロセスでのウェハーの膜付けや、エッチング等に使用されるガスを流すためのガス供給ラインLにマスフローコントローラ3とともに設置される各種のバルブ50、逆止弁あるいはフィルタ51等の構成部材のベース取付け部52に形成されているネジ穴55,55(図5参照)間のピッチと同一に設定してある。
【0007】
前記本体ブロック1内には、バイパス素子7取り付け用のブロック6を介して、ガス(流体の一例)Gをバイパスさせるバイパス素子7が高さ方向Zに長く設置されている。8aは、本体ブロック1の下面mに設けた流体入口で、この流体入口8aからバイパス素子7の上流端7aに至る第1流路(マスフローコントローラ3の入口流路)9が本体ブロック1内に形成されている。前記ブロック6もバイパス素子7と同様に高さ方向Zに設置されている。このブロック6は、上方開口6aと下方開口6bと保持部6cと保持部6cの中央に形成される側面中央穴6dと下方開口6bの直上に形成される側面下方穴6eを有する。前記ブロック6は本体ブロック1内に設けたガス流路空間H内に嵌め込まれ、保持部6cを介して前記ブロック6内にバイパス素子7が設置される。100は、前記本体ブロック1の内面と前記ブロック6間をシールするメタルOリングである。
【0008】
10は、流体の流量測定を行う流量センサ部で、本体ブロック1の一方側面nに設けてある。この側面nはベース取付け部2の平坦な上面kから垂直に、かつ、上方に至る面であり、かつ、マスフローコントローラ3は前記側面nが前記横方向Xに沿うよう前記基板4へ設置される。そして、本体ブロック1は、これら一方側面n、上面kを跨ぐ形で、これらの中央に縦断面直角三角形の突出部30を有する。この突出部30内には、マスフローコントローラ3の出口流路(第7流路)24(後述する)の一部を構成する流路が形成されている。
【0009】
12は、本体ブロック1の内面において、前記ブロック6の側面下方穴6eに連通するよう開設された測定流路入口である。また、13は、本体ブロック1の内面において、前記ブロック6の側面中央穴6dに連通するよう開設された測定流路出口である。
【0010】
前記流量センサ部10は、ガス流路11に連通するよう一端を前記測定流路入口12に、他端を測定流路出口13に、それぞれ取付部材14,19を介して接続されたセンサ管15を備えている。このセンサ管15は、平面視U字状に形成された例えば薄肉毛細管(キャピラリ)よりなる。すなわち、前記センサ管15は、前記側面nに平行なセンサ流路部分15aと、この一端から直角に折れ曲がり取付部材14に至るセンサ流路部分15bと、前記流路部分15aの他端から直角に折れ曲がり取付部材19に至るセンサ流路部分15cとよりなる。更に、前記センサ流路部分15aには2つの熱式質量流量センサ素子としての自己発熱抵抗体(以下、単にセンサ素子という)16,17が巻回されており、センサ素子16,17はブリッジ回路(図示してない)に接続されている。前記取付部材14,19は、前記側面nに抵抗溶接されている。
【0011】
なお、18は、センサ管15およびセンサ素子16,17を覆う断熱性のカバーで、風による熱影響を防止する。
【0012】
20は、測定流路入口12とセンサ流路部分15bとを繋ぐ第2流路であり、また、21は、センサ流路部分15cと測定流路出口13とを繋ぐ第3流路である。前記第2流路20は、本体ブロック1内に傾斜状態で形成されている。また、前記第3流路21は、本体ブロック1内に水平状態で、すなわち、ベース取付け部2の上面kに平行に形成されている。22は、測定流路出口13と前記上方開口6aを繋ぐ第4流路である。
【0013】
31は、ガスGの流量を制御するための制御バルブである。この制御バルブ31は、流量センサ部10からの流量測定信号と流量設定信号とを比較制御回路(図示せず)において比較し、この比較制御回路から出力される制御信号に基づいて制御されることにより弁開度を変え、これによってガスGの流量を制御するように構成されている。前記制御バルブ31は、例えば、弁ブロック32と、弁ブロック押さえ部材33と、両者32,33に挟まれたダイヤフラム34と、ダイヤフラム34の中央に位置して弁ブロック32の上面中央開口40の開度を調節する弁体35と、この弁体35を常時上方に付勢するばね(図示せず)と、ばねの付勢力に抗して弁体35を押圧駆動するアクチュエータ37と、弁ブロック38に螺着された筒状のケース39とから主としてなる。
【0014】
前記弁ブロック32には、上流の第4流路22と前記上面中央開口40を繋ぐ第5流路41と、弁ブロック32の上面両端に位置する環状開口42と流体出口8bに至る前記出口流路(第7流路)24を繋ぐ第6流路43が形成されている。前記第7流路24は、前記突出部30内に傾斜状態で形成されている。
【0015】
更に、前記弁ブロック32は下部フランジ32aを有し、下部フランジ32aには、四隅に六角穴付ボルト44が設けられている。一方、本体ブロック1の上面Sは、下部フランジ32aの下面Pと同一形状になっており、上面Sにおける前記ボルト44の対応位置にボルト穴(図示せず)が形成されている。そして、制御バルブ31は、本体ブロック1の上面SにメタルOリング46a,46bを介して六角穴付ボルト44で締め付けられて固定される。なお、3aは、マスフローコントローラ3のケースである。
【0016】
この実施形態においては、バイパス素子7取り付け用のブロック6の上方開口6aの直上に弁ブロック32の上面中央開口40に向かう真っ直ぐな第5流路41を形成するように本体ブロック1の上面Sに制御バルブ31を設置してある。これに対し、図6においては、弁ブロック66aの上面中央開口101に向かうバイパス素子64側からの流路102は真っ直ぐではなくカーブしており最短距離ではない。
【0017】
この実施形態では、上述した構成よりなり、流量センサ部10および制御バルブ31をそれぞれ、本体ブロック1の側面nおよび本体ブロック1の上面Sに設置することにより、従来流量センサ部65と制御バルブ66とを本体ブロック側に設置していた分だけ長くなっていたベース取付け部をコンパクト化できる。
【0018】
すなわち、この実施形態は、図7を例にとると、図7におけるマスフローコントローラ89の横の長さxに比して大きかった縦の長さyを横の長さxと同じ長さに設定したもので、マスフローコントローラ3のベース取付け部2をコンパクト化でき、マスフローコントローラ3のベース取付け部2を、前記基板4のガス供給ラインに設置された各種のバルブ50、逆止弁あるいはフィルタ51等の構成部材のベース取付け部52と同一寸法に標準化できる(図3〜図5参照)。その結果、前記基板4を図7に示した基板99に比して更に小型化でき、より集積化が行えることになり、ウェハーの大型化に対応できる。
【0019】
図3〜図5から、マスフローコントローラ3と各種バルブ50、フィルタ51等の構成部材がマスフローコントローラ3と同じベース取付け状態で設置されていることが分かる。なお、98は基板4に設けた流路で、基板4に設置されたマスフローコントローラ3の流路24とバルブ50の流路50aとを繋ぐ流路である。
【0020】
なお、上記実施形態ではバイパス素子7としてキャピラリタイプのものを示したが、テーパーピン、エッチングプレート等のタイプのものを用いてもよい(特願平11−305795号の明細書、図面参照)。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の一実施形態を示す全体構成説明図である。
【図2】上記実施形態における上面側からみた構成説明図である。
【図3】上記実施形態をガスラインに適用した状態を示す要部斜視図である。
【図4】上記実施形態をガスラインに適用した状態を示す構成説明図である。
【図5】上記実施形態をガスラインに適用した状態を示す上面図である。
【図6】従来のマスフローコントローラを示す構成説明図である。
【図7】従来の集積化したガスラインを有する基板を示す構成説明図である。
【図8】従来のガスラインを示す構成説明図である。
【符号の説明】
【0022】
1 本体ブロック
2 ベース取付け部
3 マスフローコントローラ
5 ネジ穴
7 バイパス素子
8a 流体入口
8b 流体出口
10 流量センサ部
31 制御バルブ
44 六角穴付ボルト
n 本体ブロックの一方側面
S 本体ブロックの上面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ブロックに流体入口と流体出口を形成し、これら流体入口と流体出口を接続する流体流路中に制御バルブを設け、更に、流体入口と制御バルブとの間に、流体をバイパスさせるバイパス素子と、流体の流量測定を行う流量センサ部とを並列的に設け、前記流量センサ部からの流量測定信号と流量設定信号とを比較制御回路において比較し、この比較制御回路から出力される制御信号に基づいて制御バルブの開度を制御するようにしたマスフローコントローラであって、前記本体ブロック内に前記バイパス素子を設けるとともに、前記本体ブロックの側面に前記流量センサ部を設ける一方、前記本体ブロックの上面に前記制御バルブを設けたことを特徴とする集積タイプのマスフローコントローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−108277(P2008−108277A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−340951(P2007−340951)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【分割の表示】特願平11−365471の分割
【原出願日】平成11年12月22日(1999.12.22)
【出願人】(000127961)株式会社堀場エステック (88)
【Fターム(参考)】