説明

集積回路、その製造方法およびその薄膜形成装置

【目的】 バリア層の電気的コンタクトおよびバリア性が向上した集積回路を得ることを目的とする。
【構成】 シリコン基板62上にバリア層61を介して配線層60が形成された大規模集積回路において、バリア層61を、シリコン基板62から配線層60に向ってチタン層65、窒化二チタン層68および窒化チタン層67の順序で形成した。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、基板上にバリア層を介して配線層が形成された集積回路、その製造方法およびその薄膜形成装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来からLSI(大規模集積回路)の配線層とシリコン基板との境界には、配線層の配線材料がシリコン基板中に拡散することを防止するため及び配線材料とシリコン基板との電気的コンタクトを確保するために窒化チタン等の材料がバリア層もしくは密着層として使われている。LSIの微細化が進むにつれて、設計ルールはハーフミクロンに達し、良好なコンタクトが確保できるバリア層を蒸着できる方法が要求されている。
【0003】図7はセミコンジャパンの予稿集に掲載された単純スタック型セル構造の64MDRAMの配線部コンタクトホールおよびその構造を示すもので、60はアルミニウム・シリコン・銅合金の配線層、61は窒化チタンのバリア層、62はシリコン基板、63はコンタクトホール、64はスルーホール、69は絶縁層である。上記の集積回路のバリア層61は、スパッタリング法、CVD法などの方法でシリコン基板6上に被膜されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来の集積回路の窒化チタンからなるバリア層は、設計ルールが小さくなり薄膜化が進んだ場合、面内での特性のバラッキが顕著になったり、また配線層60とシリコン基板62との相互作用や拡散作用を抑えたりすることができないという課題があった。この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、電気コンタクト性が良く、またバリア性の良い高品質なバリア層を有する集積回路、その製造方法およびその薄膜形成装置を得ることを目的とする。
【0005】
【課題の解決するための手段】この発明の請求項1に係る集積回路のバリア層は、基板から配線層に向って組成Xが変化する窒化チタン(TiNx)薄膜層で構成されたものである。
【0006】この発明の請求項2に係る集積回路のバリア層は、基板から配線層に向ってチタン層、窒化ニチタン層および窒化チタン層の順序で形成されたものである。
【0007】この発明の請求項3に係る集積回路のバリア層は、基板から配線層に向って、チタン(Ti)層、徐々に窒素成分がチタン組成に対して大きくなるようにした窒化チタン(TiNx)層、そして最後に窒化チタン(TiN)層の順序で形成されたものである。
【0008】この発明の請求項4に係る集積回路の製造方法は、真空槽中の基板近傍に窒素ガスを導入する量を順次制御して、クラスター型イオン源によって基板上にイオンを照射しながらチタンを蒸着して、組成Xが変化する窒化チタン(TiNx)薄膜層からなる前記バリア層を形成したものである。
【0009】この発明の請求項5に係る集積回路の製造方法は、真空槽中の基板近傍に窒素ガスの混合ガスもしくは窒素元素を含む混合ガスを導入する量を順次制御して、前記基板に不活性ガスイオンを照射しながらクラスター型イオン源によって前記基板上にイオンを照射しながらチタンを蒸着して、組成Xが変化する窒化チタン(TiNx)薄膜層からなる前記バリア層を形成したものである。
【0010】この発明の請求項6に係る集積回路の薄膜形成装置は、基板近傍に流量が調整された窒素ガスを導入するガス導入管を有するクラスター型イオン源を備えたものである。
【0011】この発明の請求項7に係る集積回路の薄膜形成装置は、基板近傍に流量が調整された窒素ガスを導入するガス導入管を有するクラスター型イオン源と、不活性ガスをイオン化するガスイオン化手段と不活性ガスイオンを加速制御する加速手段とで構成されたガスイオン源とを備えたものである。
【0012】
【作用】この発明の請求項1ないし請求項5の集積回路においては、そのバリア層は薄膜化しても電気的コンタクトおよびバリア性がよい。
【0013】この発明の請求項6および請求項7の集積回路の薄膜形成装置は、電気的コンタクトおよびバリア性がよいバリア層を形成する装置を提供する。また、請求項7の集積回路の薄膜形成装置は、基板近傍に導入された窒素ガスが不活性ガスイオンで照射されながら、活性化して基板に蒸着するので、蒸気もしくはクラスターとの反応効率が向上する。
【0014】
【実施例】以下この発明の一実施例を図について説明する。図1はこの発明の一実施例によるLSIコンタクトホールおよびスルーホールの断面構造を示すもので、60は配線層、61は組成的に傾斜機能を持ったチタン層65、窒化二チタン層68そして窒化チタン層67の三層構造からなるバリア層、62はシリコン基板、69は絶縁層である。
【0015】また、図2はこの発明のバリア層の別の実施例で、60は配線層、61は組成的に傾斜機能を持ったチタン層65、しだいに窒素組成がチタン組成に対して大きくなるようにした窒化チタン(TiNx)層66、そして窒化チタン層67からなるバリア層、62はシリコン基板である。
【0016】また、図3はこの発明の一実施例による窒化チタン薄膜の製造装置を模式的に示す断面図であり、図において5は真空槽6を所定の真空度に保持する真空排気系、4は反応性ガス導入系で、例えば窒素ガスが充填されているガスボンベ41、反応性ガスを真空槽6に導入するための流量調整バルブ42および反応性ガスを導入する導入管43で構成される。1は蒸気発生源で、ノズル11を有する密閉型のルツボ12、このルツボ12を加熱するフィラメント13および熱シールド板14からなる。15はこのルツボ12に充填されたチタン、16はこの蒸着物質であるチタン15の蒸気をルツボ12のノズル11から噴出させて形成したクラスター(塊状原子集団)である。
【0017】2はクラスター16のイオン化手段で、電子ビーム放出フィラメント21、このフィラメント21から電子を引き出し加速する電子引き出し電極22および熱シールド板23で構成される。3はイオン化されたクラスター16を電界で加速し、運動エネルギーを付与する加速手段である加速電極、7はその表面に窒化物チタン薄膜が形成される基板、8はバイアス用の直流電源81,82,83とフィラメント加熱用の電源84,85が収納されている電源装置である。
【0018】まず、上記電源装置8内の各バイアス電源の機能は、次のとおりである。第一の直流電源81はフィラメント加熱用の電源84で加熱されたルツボ加熱用フィラメント13から放出された熱電子がルツボ12に衝突するように、フィラメント13に対してルツボ12の電位を正にバイアスする。次に第二の直流電源82はフィラメント加熱用の電源85で加熱されたイオン化フィラメント21から放出された熱電子を引き出し電極22内部に引き出されるように、フィラメント21に対して引き出し電極22の電位を正にバイアスする。また、第三の直流電源83はアース電位である加速電極3に対して電子ビーム引き出し電極22およびルツボ12の電位を正にバイアスし、この間に形成される電界レンズによって、正電荷のクラスターイオンを加速制御する。
【0019】次の動作について説明する。真空排気系5によって真空槽6内が10-4Torr以下の真空度になるまで排気した後、流量調整バルブ42を開き、窒素ガスをガス導入管43より導入する。一方、ルツボ12内の蒸気圧が数Torrになる温度までルツボ加熱用フィラメント13から直流電源81で印加される電界によって、放出される電子をルツボ12に衝突させて加熱すると、蒸着物質チタン15を蒸発し、ノズル11から真空中に噴射する。この噴射する蒸気は、ノズル11を通過する際、断熱膨張により加速冷却されて凝縮し、クラスター16と呼ばれる塊状原子集団が形成される。このクラスター16は次いでイオン化フィラメント21から放出される電子によって一部イオン化され、クラスターイオンとなり、さらに加速電極3で形成された電界による加速をうけてイオン化されていない中性のクラスターと共に基板7に衝突する。一方、基板7近傍には反応性である窒素ガスが存在し、基板7上でチタン15のクラスター16と反応性ガスとの反応が進行して窒化チタン薄膜が基板7に蒸着される。
【0020】図4は、導入される窒素ガスの量を変化させた場合に形成された窒化チタン層の結晶性をX線回折法で分析したもので、これをみると窒素分圧4.0x10-6Torr以下ではチタン(Ti)、1.0x10-5Torrでは窒化二チタン(Ti2N)、1.7x10-5Torrでは窒化二チタン(Ti2N)と窒化チタン(TiN)との混晶、3.0x10-5Torr以上では窒化チタン(TiN)となっていて窒素分圧によって結晶性と膜中の窒素とチタンの組成が自由に制御することができる。なお、図4中の()内のPN2 の値はチタン15が蒸発する前の真空槽6内の窒素分圧である。
【0021】一方、図5はさまざまな組成の窒化チタン(TiNx)層の電気抵抗率を示したもので、組成的に窒素が少なくチタンが多いほど電気抵抗が低いことが解る。
【0022】一方、図6は本発明の製造装置の別の実施例を示すもので、40は基板7近傍に窒素ガスを導入する導入管、41はアルゴンボンベ、42はガスの流量調整弁、43はガス導入管、44は電子ビーム放出手段であるフィラメント(カソード)、45は内部でプラズマを形成する電子ビーム引き出し電極(アノード)、46はイオンを加速制御して多孔電極47を通して基板7に照射する加速手段、48は電子ビーム放出手段であるフィラメント44を加熱するフィラメント加熱電源、49は電子ビーム放出手段であるフィラメント44に対して電子ビーム引き出し電極45を正の電位にバイアスする直流電源、50は加速電極46に対して電子ビーム引き出し電極45を正の電位にバイアスする直流電源である。
【0023】また、本発明の別の実施例では、40は基板7近傍に窒素ガスの混合ガスもしくは窒素元素を含む混合ガスを導入するガス導入管であってもよい。
【0024】次に、この窒化チタン薄膜形成装置の動作について説明する。真空排気装置5によって高真空中に保たれた真空槽6内に、基板7近傍にガス導入管40によって窒素ガスを導入する一方、ガスボンベ41より流量調整バルブ42を調整することにより、ガスイオン源の電子ビーム引き出し電極45内にガス導入管43より不活性ガスにあるアルゴンガスを導入し、真空層6内のガス圧をアルゴン分圧と窒素分圧合わせて10-5〜10-3Torr程度になるように調整する。フィラメント加熱電源48により、電子ビーム放出手段である加熱されたフィラメント44から、電子ビーム引き出し電極45に向かって電子ビームが放出されるように直流電源49によってバイアス電圧を印加すると、放出された熱電子が電子ビーム引き出し電極45内のアルゴンガスと衝突しプラズマを形成し、イオン化が行われる。生成した窒素イオンは、加速電極46で形成される電界による加速を受けて、多孔電極47より引き出されて基板7に照射される。次いで、ルツボ12内の蒸気圧が数Torrになる温度までルツボ加熱用フィラメント13によって加熱すると、蒸着物質であるチタン15は蒸発し、ノズル11から噴射する。この噴射するチタンの蒸気もしくはクラスター16は、次にイオン化フィラメント21から放出される電子によって一部イオン化され、加速電極3で形成される電界による加速を受けて、イオン化されていない蒸気もしくはクラスターと共に基板7に衝突する。
【0025】一方、基板7および基板7付近にはガス導入管40より供給される窒素ガスが存在し、アルゴンイオン照射によって励起、解離もしくはイオン化された活性な状態にあり、この窒素ガスは蒸着物質のチタン蒸気もしくはクラスターと衝突して効率よく反応が進行し酸化窒化チタン薄膜が基板7に蒸着される。このとき、基板7に照射する窒素イオンの量を変化させると、膜中のチタンと窒素の組成比が変化するため、自由に組成比を制御することが可能となる。
【0026】
【発明の効果】以上説明したように、この発明の請求項1ないし請求項3に係る集積回路によれば、そのバリア層をチタンと窒素との組成比を変化させた傾斜構造にしたことにより、バリア層を薄膜化しても電気的コンタクトおよびバリア性が向上するという効果がある。
【0027】この発明の請求項4および請求項5に係る集積回路の製造方法によれば、チタンと窒素との組成比を変化させる傾斜構造を真空槽中に導入される窒素の量を制御することにより簡単に形成することができるという効果がある。
【0028】この発明の請求項6および請求項7に係る集積回路の薄膜形成装置によれば、チタンと窒素の組成が変化した傾斜構造のバリア層を形成することができる。また、請求項7に係る薄膜形成装置によれば、基板近傍に導入された窒素ガスが不活性ガスイオンで照射されながら活性化して基板に蒸着するので、蒸気もしくはクラスターとの反応効率が向上し、高品質な薄膜が形成されるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例による大規模集積回路の断面図である。
【図2】この発明の別の実施例による大規模集積回路の断面図である。
【図3】この発明の一実施例を示す集積回路の薄膜形成装置の断面図である。
【図4】窒化チタンの結晶性を示す図である。
【図5】窒化チタンの電気抵抗率を示す図である。
【図6】この発明の別の実施例を示す集積回路の薄膜形成装置の断面図である。
【図7】従来の大規模集積回路の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 蒸気発生源
2 イオン化手段
3 加速電極
6 真空槽
7 基板
40 ガス導入管
43 ガス導入管
44 フィラメント(電子ビーム放出手段)
45 電子ビーム引き出し電極
46 加速手段
60 配線層
61 バリア層
62 シリコン基板
65 チタン層
66 窒化チタン(TiNx)層
67 窒化チタン層
68 窒化ニチタン層

【特許請求の範囲】
【請求項1】 基板上にバリア層を介して配線層が形成された集積回路において、前記バリア層は、前記基板から前記配線層に向って組成Xが変化する窒化チタン(TiNx)薄膜層であることを特徴とする集積回路。
【請求項2】 基板上にバリア層を介して配線層が形成された集積回路において、前記バリア層は、前記基板から前記配線層に向ってチタン層、窒化二チタン層および窒化チタン層の順序で形成されたことを特徴とする集積回路。
【請求項3】 基板上にバリア層を介して配線層が形成された集積回路において、前記バリア層は、前記基板から前記配線層に向って、チタン層、徐々に窒素組成がチタン組成に対して大きくなるようにした窒化チタン(TiNx)層そして最後に窒化チタン(TiN)層の順序で形成されたことを特徴とする集積回路。
【請求項4】 基板上にバリア層を介して配線層が形成された集積回路の製造方法において、真空槽中の基板近傍に窒素ガスを導入する量を順次制御して、クラスター型イオン源によって前記基板上にイオンを照射しながらチタンを蒸着して、組成Xが変化する窒化チタン(TiNx)薄膜層からなる前記バリア層を形成したことを特徴とする集積回路の製造方法。
【請求項5】 基板上にバリア層を介して配線層が形成された集積回路の製造方法において、真空槽中の基板近傍に窒素ガスの混合ガスもしくは窒素元素を含む混合ガスを導入する量を順次制御して、前記基板に不活性ガスイオンを照射しながらクラスター型イオン源によって前記基板上にイオンを照射しながらチタンを蒸着して、組成Xが変化する窒化チタン(TiNx)薄膜層からなる前記バリア層を形成したことを特徴とする集積回路の製造方法。
【請求項6】 内部に基板が配置されるとともに所定の真空度に保持された真空槽、前記基板近傍に流量を調整された窒素ガスを導入するガス導入管、またこの基板に向けて蒸着物質の蒸気を噴出し、この蒸着物質の蒸気もしくはクラスターを発生させる蒸気発生源、この蒸着物質の蒸気もしくはクラスターの一部をイオン化するイオン化手段およびイオン化された蒸気もしくはクラスターイオンを加速制御し、イオン化されていない蒸着物質の蒸気もしくはクラスターと共に前記基板に輸送する加速手段によって構成されるクラスター型イオン源を備えたことを特徴とする集積回路の薄膜形成装置。
【請求項7】 内部に基板が配置されるとともに所定の真空度に保持された真空槽、前記基板近傍に流量を調整された窒素ガスの混合ガスもしくは窒素元素を含む混合ガスを導入するガス導入管、またこの基板に向けて蒸着物質の蒸気を噴出し、この蒸着物質の蒸気もしくはクラスターを発生させる蒸気発生源、この蒸着物質の蒸気もしくはクラスターの一部をイオン化するイオン化手段、イオン化された蒸気もしくはクラスターイオンを加速制御し、イオン化されていない蒸着物質の蒸気もしくはクラスターと共に基板に輸送する加速手段によって構成されるクラスター型イオン源と、前記真空層内に設けられた不活性ガス導入管、不活性ガスの導入部分に配置された電子ビーム引き出し電極と電子ビーム放出手段からなる、不活性ガスをイオン化するガスイオン化手段、この電子ビーム放出手段によりイオン化された不活性ガスを加速制御する加速手段によって構成されるガスイオン源と、を備えたことを特徴とする集積回路の薄膜形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図7】
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【図3】
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【図6】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開平5−195210
【公開日】平成5年(1993)8月3日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−4636
【出願日】平成4年(1992)1月14日
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)