説明

集電体用アルミニウム基材、集電体、正極、負極および二次電池

【課題】サイクル特性に優れる二次電池を作製することができる集電体用アルミニウム基材ならびにそれを用いた集電体、正極、負極および二次電池の提供。
【解決手段】平均開口径5μm超100μm以下の大波構造、平均開口径0.5μm超5μm以下の中波構造および平均開口径0.01μm超0.5μm以下の小波構造からなる群から選択される少なくとも2つの構造が重畳された表面を有し、
前記表面の断面曲線の最大断面高さPtが、10μm以下である集電体用アルミニウム基材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集電体用アルミニウム基材ならびにそれを用いた集電体、正極、負極および二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータ、携帯電話等のポータブル機器や、ハイブリッド自動車、電気自動車等の開発に伴い、その電源としての二次電池(特に、リチウム二次電池)の需要が増大している。
【0003】
このような二次電池の正極または負極に用いられる電極用集電体(以下、単に「集電体」という。)としては、箔状のアルミニウム基材を用いることが知られている。
そして、二次電池の正極または負極においては、集電体と活物質を含む層(以下、「活物質層」ともいう。)との密着性が低いと、充放電時に集電体から活物質が剥離し、電池特性に悪影響を与えることが知られている。
【0004】
そこで、集電体と活物質との密着性を改善するために、アルミニウム基材の表面を粗くする技術が提案されている(例えば、特許文献1〜5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−16575号公報
【特許文献2】特開2003−51313号公報
【特許文献3】特開2005−2371号公報
【特許文献4】特開2008−10419号公報
【特許文献5】特開2008−282797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者は、特許文献1〜5に記載された集電体(金属箔、アルミニウム箔)について検討を行った結果、活物質層との密着性が不十分であり、電池特性、特に、サイクル特性に劣る場合があることが明らかとなった。
【0007】
そこで、本発明は、サイクル特性に優れる二次電池を作製することができる集電体用アルミニウム基材ならびにそれを用いた集電体、正極、負極および二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、集電体として、特定の平均開口径からなる2種以上の波構造を重畳させた表面を有するアルミニウム基材を用いることにより、サイクル特性に優れる二次電池を作製できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(14)を提供する。
【0009】
(1)平均開口径5μm超100μm以下の大波構造、平均開口径0.5μm超5μm以下の中波構造および平均開口径0.01μm超0.5μm以下の小波構造からなる群から選択される少なくとも2つの構造が重畳された表面を有し、
上記表面の断面曲線の最大断面高さPtが、10μm以下である集電体用アルミニウム基材。
【0010】
(2)表面積比ΔSが20%以上であり、かつ、急峻度a45が5〜60%である上記(1)に記載の集電体用アルミニウム基材。
ここで、表面積比ΔSは、原子間力顕微鏡を用いて、表面の50μm×50μmの範囲を512×512点測定して得られる3次元データから近似三点法により得られる実面積Sxと、幾何学的測定面積S0とから、下記式(i)により求められる値であり、急峻度a45は、上記実面積Sxに対する角度45°以上の大きさの傾斜(傾斜度45°以上)を有する部分の面積率である。
ΔS=(Sx−S0)/S0×100(%)・・・(i)
【0011】
(3)少なくとも上記大波構造が形成された表面を有する上記(1)または(2)に記載の集電体用アルミニウム基材。
【0012】
(4)上記大波構造、上記中波構造および上記小波構造のいずれもが重畳された表面を有する上記(1)〜(3)のいずれか1つに記載の集電体用アルミニウム基材。
【0013】
(5)厚みが100μm未満である上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載の集電体用アルミニウム基材。
【0014】
(6)上記(1)〜(5)のいずれか1つに記載の集電体用アルミニウム基材からなる集電体。
【0015】
(7)上記(6)に記載の集電体を正極に用いた正極集電体と、上記正極集電体の表面に形成される正極活物質を含む層とを有する正極。
【0016】
(8)上記正極活物質が、リチウムを吸蔵および放出することが可能な物質である上記(7)に記載の正極。
【0017】
(9)上記正極活物質が、リチウムと遷移金属とを含む複合酸化物である上記(7)または(8)に記載の正極。
【0018】
(10)上記正極活物質が、コバルト酸リチウム(LiCoO2)である上記(9)に記載の正極。
【0019】
(11)上記(6)に記載の集電体を負極に用いた負極集電体と、上記負極集電体の表面に形成される負極活物質を含む層とを有する負極。
【0020】
(12)上記負極活物質が、リチウムを吸蔵および放出することが可能であり、かつ、リチウムイオンの吸蔵放出電位が金属リチウム電位に対して0.4V以上となる物質である上記(11)に記載の負極。
【0021】
(13)上記負極活物質が、チタン酸リチウムである上記(12)に記載の負極。
【0022】
(14)正極、負極および電解液を有する二次電池であって、
上記正極が上記(7)〜(10)のいずれか1つに記載の正極である、および/または、上記負極が上記(11)〜(13)のいずれか1つに記載の負極である二次電池。
【発明の効果】
【0023】
以下に説明するように、本発明によれば、サイクル特性に優れる二次電池を作製することができる集電体用アルミニウム基材ならびにそれを用いた集電体、正極、負極および二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、本発明の集電体用アルミニウム基材の表面形状を説明する模式的断面図である。
【図2】図2は、本発明の集電体用アルミニウム基材の作製における電気化学的粗面化処理に用いられる交番波形電流波形図の一例を示すグラフである。
【図3】図3は、本発明の集電体用アルミニウム基材の作製における交流を用いた電気化学的粗面化処理におけるラジアル型セルの一例を示す概略図である。
【図4】図4は、本発明の集電体用アルミニウム基材の作製における陽極酸化処理に用いられる陽極酸化処理装置の一例を示す概略図である。
【図5】図5は、本発明の二次電池の実施態様の一例を示す模式的断面図である。
【図6】図6は、本発明の二次電池の他の実施態様の一例を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[集電体用アルミニウム基材]
本発明の集電体用アルミニウム基材(以下、「本発明のアルミニウム基材」ともいう。)は、特定の平均開口径からなる2種以上の波構造を重畳させた表面を有するアルミニウム基材である。
以下に、本発明のアルミニウム基材の表面形状および製造方法を詳細に説明する。
【0026】
〔表面形状〕
本発明のアルミニウム基材は、平均開口径5μm超100μm以下の大波構造、平均開口径0.5μm超5μm以下の中波構造および平均開口径0.01μm超0.5μm以下の小波構造からなる群から選択される少なくとも2つの構造が重畳された表面を有する。
このような表面形状を有することにより、後述する本発明の集電体と活物質層との接触面積が増えて密着性が良好となり、サイクル特性に優れる二次電池を作製することができる。
これは、活物質層を構成する活物質との密着性が大波構造および/または中波構造で担保されるとともに、活物質層を構成する任意成分(例えば、導電助剤等)との密着性が中波構造および/または小波構造で担保されるためと考えられる。
【0027】
ここで、上記大波構造、上記中波構造および上記小波構造の平均開口径の測定方法は、以下の通りである。
(1)大波構造の平均開口径(平均波長)
触針式粗さ計で2次元粗さ測定を行い、ISO4287に規定されている平均山間隔Smを5回測定し、その平均値を平均開口径とする。
(2)中波構造の平均開口径(平均波長)
高分解能走査型電子顕微鏡(SEM)を用いてアルミニウム基材の表面を真上から倍率2000倍で撮影し、得られたSEM写真において、周囲が環状に連なっている中波構造のピット(凹凸)を少なくとも50個抽出し、その直径を読み取って開口径とし、平均開口径を算出する。
(3)小波構造の平均開口径(平均波長)
高分解能走査型電子顕微鏡(SEM)を用いてアルミニウム基材の表面を真上から倍率50000倍で撮影し、得られたSEM写真において、小波構造のピット(凹凸)を少なくとも50個抽出し、その直径を読み取って開口径とし、平均開口径を算出する。
【0028】
本発明においては、上記大波構造は、活物質層との接触面積が増加して密着性がより良好となり、サイクル特性により優れる二次電池を作製することができる理由から、平均開口径が7〜75μmであるのが好ましく、平均開口径が10〜50μmであるのがより好ましい。
また、上記中波構造は、活物質層を構成する任意成分(例えば、導電助剤等)が開口部(谷部)に入り込むことにより、活物質層との接触面積が増加して接触抵抗が下がる理由から、平均開口径が0.7〜4μmであるのが好ましく、平均開口径が1〜3μmであるのがより好ましい。
更に、上記小波構造は、集電体の導電面として機能する実表面積が向上する理由から、平均開口径が0.015〜0.4μmであるのが好ましく、平均開口径が0.02〜0.3μmであるのがより好ましい。
【0029】
本発明のアルミニウム基材は、その表面が、上記大波構造、上記中波構造および上記小波構造からなる群から選ばれる少なくとも2つを有するが、接触面積が増加して密着性がより良好となり、作製される二次電池のレート特性が良好となる理由から、上記大波構造と上記中波構造および/または上記小波構造とを重畳して有するのが好ましく、更に、活物質層との接触面積が増加して密着性が更に良好となり、サイクル特性およびレート特性により優れる二次電池を作製することができる理由から、上記大波構造、上記中波構造および上記小波構造の全てを重畳して有するのがより好ましい。
ここで、図1を用いて、上記大波構造、上記中波構造および上記小波構造の全てを重畳して有する態様を説明する。
図1に示す通り、大波構造1、中波構造2および小波構造3は、それぞれが略正弦波形を形成し、かつ、全体として1つ(大波構造)の略正弦波形を構成するものである。
【0030】
本発明のアルミニウム基材は、その表面の断面曲線の最大断面高さPtが、10μm以下であり、1〜8μmであるのが好ましい。
ここで、最大断面高さPtとは、JIS B 0601:2001に規定される「断面曲線の最大断面高さ」である(図1参照)。
最大断面高さPtが10μm以下であると、10μm超の場合と比較して、作製される二次電池の放電寿命が良好となる。これは、活物質層内の任意成分(例えば、導電助剤、結着剤等)が、集電体との密着を保持し、かつ、良好な導電性を発現するのに適した深さであるためであると考えられる。
【0031】
また、本発明のアルミニウム基材は、表面積比ΔSが20%以上であり、かつ、急峻度a45が5〜60%であるのが好ましく、表面積比ΔSが35%以上であり、かつ、急峻度a45が8〜50%であるのがより好ましく、表面積比ΔSが50%以上であり、かつ、急峻度a45が10〜40%であるのが更に好ましい。
ここで、表面積比ΔSは、原子間力顕微鏡を用いて、表面の50μm×50μmの範囲を512×512点測定して得られる3次元データから近似三点法により得られる実面積Sxと、幾何学的測定面積S0とから、下記式(i)により求められる値であり、急峻度a45は、上記実面積Sxに対する角度45°以上の大きさの傾斜(傾斜度45°以上)を有する部分の面積率である。
【0032】
ΔS=(Sx−S0)/S0×100(%) (i)
【0033】
表面積差ΔSは、本発明のアルミニウム基材の表面における波構造(主に大波構造)の頻度を示すファクターの一つである。また、急峻度a45は、本発明のアルミニウム基材の表面における波構造(主に大波構造)のとがり具合を表すファクターである。
表面積差ΔSが20%以上であり、かつ、急峻度a45が5〜60%であると、活物質層との接触面積が増加して密着性がより良好となり、サイクル特性により優れ、レート特性が良好な二次電池を作製することができる。
【0034】
本発明においては、表面積差ΔSおよび急峻度a45を求めるために、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope:AFM)により表面形状を測定し、3次元データを求める。測定は、例えば、以下の条件で行うことができる。
すなわち、アルミニウム基材を1cm角の大きさに切り取って、ピエゾスキャナー上の水平な試料台にセットし、カンチレバーを試料表面にアプローチし、原子間力が働く領域に達したところで、XY方向にスキャンし、その際、試料の表面形状(波構造)をZ方向のピエゾの変位でとらえる。ピエゾスキャナーは、XY方向について150μm、Z方向について10μm、走査可能なものを使用する。カンチレバーは共振周波数120〜150kHz、バネ定数12〜20N/mのもの(SI−DF20、NANOPROBE社製)を用い、DFMモード(Dynamic Force Mode)で測定する。また、求めた3次元データを最小二乗近似することにより試料のわずかな傾きを補正し基準面を求める。計測の際は、表面の50μm×50μmの範囲を512×512点測定する。XY方向の分解能は1.9μm、Z方向の分解能は1nm、スキャン速度は60μm/secとする。
【0035】
上記で求められた3次元データ(f(x,y))を用い、隣り合う3点を抽出し、その3点で形成される微小三角形の面積の総和を求め、実面積Sxとする。表面積差ΔSは、得られた実面積Sxと幾何学的測定面積S0とから、上記式(i)により求められる。
また、上記で求められた三次元データ(f(x,y))を用い、各基準点と所定の方向(例えば、右と下)の隣接する2点との3点で形成される微小三角形と基準面とのなす角を各基準点について算出する。微小三角形の傾斜度が45度以上の基準点の個数を、全基準点の個数(全データの個数である512×512点から所定の方向の隣接する2点がない点の個数を減じた個数、すなわち、511×511点)で除して、傾斜度45度以上の部分の面積率a45を算出する。
【0036】
〔製造方法〕
本発明のアルミニウム基材の製造方法は特に限定されず、例えば、アルミニウム箔に粗面化処理を含む表面処理を施すことによって得ることができる。
【0037】
<アルミニウム箔>
本発明のアルミニウム基材の製造には、公知のアルミニウム箔を用いることができる。
本発明に用いられるアルミニウム箔は、アルミニウムを主成分とする金属の箔であり、例えば、JIS規格H4000に記載されている合金番号1085、1N30、3003等を用いることができる。
また、本発明に用いられるアルミニウム箔の厚みは、100μm以下であるのが好ましく、5〜80μmであるのが好ましく、10〜50μmであるのがより好ましい。この厚さは、ユーザーの希望等により適宜変更することができる。
【0038】
<表面処理>
本発明のアルミニウム基材を製造する際の表面処理は、少なくとも粗面化処理を含む処理であれば、粗面化処理以外の各種の工程を含んでいてもよい。
上述した表面形状を形成させるための代表的方法として、例えば、アルミニウム箔にアルカリエッチング処理、酸によるデスマット処理および電解液を用いた電気化学的粗面化処理を順次施す方法;アルミニウム箔にアルカリエッチング処理、酸によるデスマット処理および異なる電解液を用いた電気化学的粗面化処理を複数回施す方法;等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。これらの方法において、電気化学的粗面化処理の後、更に、アルカリエッチング処理および酸によるデスマット処理を施してもよい。
【0039】
具体的には、他の処理(アルカリエッチング処理等)の条件にもよるが、大波構造および中波構造が重畳した表面形状を形成させるには、例えば、硝酸を主体とする電解液を用い、周波数を小さくした電気化学的粗面化処理を施した後、硝酸を主体とする電解液を用い、周波数を大きくした電気化学的粗面化処理を施す方法;硝酸を主体とする電解液を用い、アノード反応にあずかる電気量の総和を大きくした電気化学的粗面化処理のみを施して一括して形成する方法;等が好適に挙げられる。
また、大波構造および小波構造が重畳した表面形状を形成させるには、例えば、硝酸を主体とする電解液を用い、周波数を小さくした電気化学的粗面化処理を施した後、塩酸を主体とする電解液を用いた電気化学的粗面化処理を施す方法;塩酸を主体とする電解液を用い、アノード反応にあずかる電気量の総和を大きくした電気化学的粗面化処理のみを施して一括して形成する方法;等が好適に挙げられる。
また、中波構造および小波構造が重畳した表面形状を形成させるには、例えば、硝酸を主体とする電解液を用い、周波数および電気量を大きくした電気化学的粗面化処理を施した後、塩酸を主体とする電解液を用いた電気化学的粗面化処理を施す方法;硝酸を主体とする電解液を用い、周波数および電気量を大きくした電気化学的粗面化処理を施した後、塩酸を主体とする電解液を用いた電気化学的粗面化処理を施す方法;硝酸を主体とする電解液を用い、周波数および電気量を大きくした電気化学的粗面化処理を施した後、塩酸を主体とする電解液を用いた電気化学的粗面化処理を施す方法;等が好適に挙げられる。
また、大波構造、中波構造および小波構造が重畳した表面形状を形成させるには、例えば、上述した方法により大波構造および中波構造を重畳した表面形状を形成した後に、塩酸を主体とする電解液を用いた電気化学的粗面化処理を施す方法が好適に挙げられる。
以下、表面処理の各工程について、詳細に説明する。
【0040】
(電気化学的粗面化処理)
電気化学的粗面化処理(以下、「電解粗面化処理」ともいう。)には、通常の交流を用いた電気化学的粗面化処理に用いられる電解液を用いることができる。中でも、塩酸または硝酸を主体とする電解液を用いるのが、上述した表面形状を得やすいので好ましい。
【0041】
電解粗面化処理は、例えば、特公昭48−28123号公報および英国特許第896,563号明細書に記載されている電気化学的グレイン法(電解グレイン法)に従うことができる。この電解グレイン法は、正弦波形の交流電流を用いるものであるが、特開昭52−58602号公報に記載されているような特殊な波形を用いて行ってもよい。また、特開平3−79799号公報に記載されている波形を用いることもできる。また、特開昭55−158298号、特開昭56−28898号、特開昭52−58602号、特開昭52−152302号、特開昭54−85802号、特開昭60−190392号、特開昭58−120531号、特開昭63−176187号、特開平1−5889号、特開平1−280590号、特開平1−118489号、特開平1−148592号、特開平1−178496号、特開平1−188315号、特開平1−154797号、特開平2−235794号、特開平3−260100号、特開平3−253600号、特開平4−72079号、特開平4−72098号、特開平3−267400号、特開平1−141094の各公報に記載されている方法も適用できる。また、前述のほかに、電解コンデンサーの製造方法として提案されている特殊な周波数の交番電流を用いて電解することも可能である。例えば、特開昭58−207400号公報、米国特許第4,276,129号明細書および同第4,676,879号明細書に記載されている。
【0042】
電解槽および電源については、種々提案されているが、米国特許第4203637号明細書、特開昭56−123400号、特開昭57−59770号、特開昭53−12738号、特開昭53−32821号、特開昭53−32822号、特開昭53−32823号、特開昭55−122896号、特開昭55−132884号、特開昭62−127500号、特開平1−52100号、特開平1−52098号、特開昭60−67700号、特開平1−230800号、特開平3−257199号の各公報等に記載されているものを用いることができる。また、特開昭52−58602号、特開昭52−152302号、特開昭53−12738号、特開昭53−12739号、特開昭53−32821号、特開昭53−32822号、特開昭53−32833号、特開昭53−32824号、特開昭53−32825号、特開昭54−85802号、特開昭55−122896号、特開昭55−132884号、特公昭48−28123号、特公昭51−7081号、特開昭52−133838号、特開昭52−133840号号、特開昭52−133844号、特開昭52−133845号、特開昭53−149135号、特開昭54−146234号の各公報等に記載されているもの等も用いることができる。
【0043】
電解液である酸性溶液としては、硝酸、塩酸のほかに、米国特許第4,671,859号、同第4,661,219号、同第4,618,405号、同第4,600,482号、同第4,566,960号、同第4,566,958号、同第4,566,959号、同第4,416,972号、同第4,374,710号、同第4,336,113号、同第4,184,932号の各明細書等に記載されている電解液を用いることもできる。
【0044】
酸性溶液の濃度は0.5〜2.5質量%であるのが好ましいが、上記のスマット除去処理での使用を考慮すると、0.7〜2.0質量%であるのが特に好ましい。また、液温は20〜80℃であるのが好ましく、30〜60℃であるのがより好ましい。
【0045】
塩酸または硝酸を主体とする水溶液は、濃度1〜100g/Lの塩酸または硝酸の水溶液に、硝酸アルミニウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム等の硝酸イオンを有する硝酸化合物または塩化アルミニウム、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム等の塩酸イオンを有する塩酸化合物の少なくとも一つを1g/Lから飽和するまでの範囲で添加して使用することができる。また、塩酸または硝酸を主体とする水溶液には、鉄、銅、マンガン、ニッケル、チタン、マグネシウム、シリカ等のアルミニウム合金中に含まれる金属が溶解していてもよい。好ましくは、塩酸または硝酸の濃度0.5〜2質量%の水溶液にアルミニウムイオンが3〜50g/Lとなるように、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム等を添加した液を用いることが好ましい。
【0046】
更に、Cuと錯体を形成しうる化合物を添加して使用することによりCuを多く含有するアルミニウム箔に対しても均一な砂目立てが可能になる。Cuと錯体を形成しうる化合物としては、例えば、アンモニア;メチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、シクロヘキシルアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)等のアンモニアの水素原子を炭化水素基(脂肪族、芳香族等)等で置換して得られるアミン類;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等の金属炭酸塩類が挙げられる。また、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム等のアンモニウム塩も挙げられる。温度は10〜60℃が好ましく、20〜50℃がより好ましい。
【0047】
電気化学的粗面化処理に用いられる交流電源波は、特に限定されず、サイン波、矩形波、台形波、三角波等が用いられるが、矩形波または台形波が好ましく、台形波が特に好ましい。台形波とは、図2に示したものをいう。この台形波において電流がゼロからピークに達するまでの時間(TP)は1〜3msecであるのが好ましい。1msec未満であると、アルミニウム箔の進行方向と垂直に発生するチャタマークという処理ムラが発生しやすい。TPが3msecを超えると、特に硝酸電解液を用いる場合、電解処理で自然発生的に増加するアンモニウムイオン等に代表される電解液中の微量成分の影響を受けやすくなり、均一な砂目立てが行われにくくなる。
【0048】
台形波交流のduty比は1:2〜2:1のものが使用可能であるが、特開平5−195300号公報に記載されているように、アルミニウムにコンダクタロールを用いない間接給電方式においてはduty比が1:1のものが好ましい。台形波交流の周波数は0.1〜120Hzのものを用いることが可能であるが、50〜70Hzが設備上好ましい。50Hzよりも低いと、主極のカーボン電極が溶解しやすくなり、また、70Hzよりも高いと、電源回路上のインダクタンス成分の影響を受けやすくなり、電源コストが高くなる。
【0049】
電解槽には1個以上の交流電源を接続することができる。主極に対向するアルミニウム箔に加わる交流の陽極と陰極との電流比をコントロールし、均一な砂目立てを行うことと、主極のカーボンを溶解することとを目的として、図3に示したように、補助陽極を設置し、交流電流の一部を分流させることが好ましい。図3において、11はアルミニウム箔であり、12はラジアルドラムローラであり、13aおよび13bは主極であり、14は電解処理液であり、15は電解液供給口であり、16はスリットであり、17は電解液通路であり、18は補助陽極であり、19aおよび19bはサイリスタであり、20は交流電源であり、21は主電解槽であり、22は補助陽極槽である。整流素子またはスイッチング素子を介して電流値の一部を二つの主電極とは別の槽に設けた補助陽極に直流電流として分流させることにより、主極に対向するアルミニウム箔上で作用するアノード反応にあずかる電流値と、カソード反応にあずかる電流値との比を制御することができる。主極に対向するアルミニウム箔上で、陰極反応と陽極反応とにあずかる電気量の比(陰極時電気量/陽極時電気量)は、0.3〜0.95であるのが好ましい。
【0050】
電解槽は、縦型、フラット型、ラジアル型等の公知の表面処理に用いる電解槽が使用可能であるが、特開平5−195300号公報に記載されているようなラジアル型電解槽が特に好ましい。電解槽内を通過する電解液は、アルミニウムウェブの進行方向に対してパラレルであってもカウンターであってもよい。
【0051】
(硝酸電解)
硝酸を主体とする電解液を用いた電気化学的粗面化処理により、平均開口径0.5μm超5μm以下の中波構造を形成させることができる。ただし、電気量を比較的多くしたときは、電解反応が集中し、波長5μmを超える大波構造も生成する。
このような表面形状を得るためには、電解反応が終了した時点でのアルミニウム箔のアノード反応にあずかる電気量の総和が、1〜1000C/dm2であるのが好ましく、50〜300C/dm2であるのがより好ましい。この際の電流密度は20〜100A/dm2であるのが好ましい。
また、例えば、高濃度、例えば、硝酸濃度15〜35質量%の硝酸電解液を用いて30〜60℃で電解を行ったり、硝酸濃度0.7〜2質量%の硝酸電解液を用いて高温、例えば、80℃以上で電解を行ったりすることで、平均波長0.20μm以下の小波構造を形成させることもできる。その結果、ΔSを大きくすることができる。
【0052】
(塩酸電解)
塩酸はそれ自身のアルミニウム溶解力が強いため、わずかな電解を加えるだけで表面に微細な小波構造を形成させることが可能である。この微細な小波構造は、平均開口径0.01μm超0.5μm以下であり、アルミニウム箔の表面の全面に均一に生成する。
このような表面形状を得るためには電解反応が終了した時点でのアルミニウム箔のアノード反応にあずかる電気量の総和が、1〜100C/dm2であるのが好ましく、20〜70C/dm2であるのがより好ましい。この際の電流密度は20〜50A/dm2であるのが好ましい。
【0053】
このような塩酸を主体とする電解液での電気化学的粗面化処理では、アノード反応にあずかる電気量の総和を400〜2000C/dm2と大きくすることでクレーター状の大きなうねりを同時に形成することも可能である。この場合は平均開口径5μm超100μm以下の大波構造に重畳して平均開口径0.01μm超0.5μm以下の微細な小波構造が全面に生成する。この場合、平均開口径0.5μm超5μm以下の中波構造は生成しない。
【0054】
ΔSを大きくするには、小さな波構造を表面に多数設けることが有効である。このように小さな波構造を表面に多数設ける方法としては、例えば、塩酸を主体とする電解液を用いた電解粗面化処理、高濃度かつ高温の硝酸を主体とする電解液を用いた電解粗面化処理が好適に挙げられる。
【0055】
上記の硝酸、塩酸等の電解液中で行われる電解粗面化処理の前および/または後に、アルミニウム箔に陰極電解処理を行うことが好ましい。この陰極電解処理により、アルミニウム箔表面にスマットが生成するとともに、水素ガスが発生してより均一な電解粗面化処理が可能となる。
陰極電解処理は、酸性溶液中で陰極電気量が好ましくは3〜80C/dm2、より好ましくは5〜30C/dm2で行われる。陰極電気量が3C/dm2未満であると、スマット付着量が不足する場合があり、また、80C/dm2を超えると、スマット付着量が過剰となる場合がある。電解液は、電解粗面化処理で使用する溶液と同一であっても異なっていてもよい。
【0056】
(アルカリエッチング処理)
アルカリエッチング処理は、上記アルミニウム箔をアルカリ溶液に接触させることにより、表層を溶解させる処理である。
電解粗面化処理より前に行われるアルカリエッチング処理は、アルミニウム箔の表面の圧延油、汚れ、自然酸化皮膜等を除去することを目的として行われる。
【0057】
アルカリエッチング処理のエッチング量は、0.05〜10g/m2であるのが好ましく、1〜5g/m2であるのがより好ましい。エッチング量が0.05g/m2未満であると、表面の圧延油、汚れ、自然酸化皮膜等が残存する場合があるため、後段の電解粗面化処理において均一な波構造が生成できずムラが発生してしまう場合がある。一方、エッチング量が1〜10g/m2であると、表面の圧延油、汚れ、自然酸化皮膜等の除去が十分に行われる。上記範囲を超えるエッチング量とするのは、経済的に不利となる。
【0058】
電解粗面化処理の直後に行うアルカリエッチング処理は、酸性電解液中で生成したスマットを溶解させることと、電解粗面化処理により形成された波構造のエッジ部分を溶解させることを目的として行われる。電解粗面化処理で形成される波構造は電解液の種類によって異なるためにその最適なエッチング量も異なるが、電解粗面化処理後に行うアルカリエッチング処理のエッチング量は、0.1〜5g/m2であるのが好ましい。硝酸電解液を用いた場合、塩酸電解液を用いた場合よりもエッチング量は多めに設定する必要がある。電解粗面化処理が複数回行われる場合には、それぞれの処理後に、必要に応じてアルカリエッチング処理を行うことができる。
【0059】
アルカリ溶液に用いられるアルカリとしては、例えば、カセイアルカリ、アルカリ金属塩が挙げられる。具体的には、カセイアルカリとしては、例えば、カセイソーダ、カセイカリが挙げられる。また、アルカリ金属塩としては、例えば、タケイ酸ソーダ、ケイ酸ソーダ、メタケイ酸カリ、ケイ酸カリ等のアルカリ金属ケイ酸塩;炭酸ソーダ、炭酸カリ等のアルカリ金属炭酸塩;アルミン酸ソーダ、アルミン酸カリ等のアルカリ金属アルミン酸塩;グルコン酸ソーダ、グルコン酸カリ等のアルカリ金属アルドン酸塩;第二リン酸ソーダ、第二リン酸カリ、第三リン酸ソーダ、第三リン酸カリ等のアルカリ金属リン酸水素塩が挙げられる。中でも、エッチング速度が速い点および安価である点から、カセイアルカリの溶液、および、カセイアルカリとアルカリ金属アルミン酸塩との両者を含有する溶液が好ましい。特に、カセイソーダの水溶液が好ましい。
【0060】
アルカリ溶液の濃度は、エッチング量に応じて決定することができるが、1〜50質量%であるのが好ましく、10〜35質量%であるのがより好ましい。アルカリ溶液中にアルミニウムイオンが溶解している場合には、アルミニウムイオンの濃度は、0.01〜10質量%であるのが好ましく、3〜8質量%であるのがより好ましい。アルカリ溶液の温度は20〜90℃であるのが好ましい。処理時間は1〜120秒であるのが好ましい。
【0061】
アルミニウム箔をアルカリ溶液に接触させる方法としては、例えば、アルミニウム箔をアルカリ溶液を入れた槽の中を通過させる方法、アルミニウム箔をアルカリ溶液を入れた槽の中に浸せきさせる方法、アルカリ溶液をアルミニウム箔の表面に噴きかける方法が挙げられる。
【0062】
(デスマット処理)
電解粗面化処理またはアルカリエッチング処理を行った後、表面に残留する汚れ(スマット)を除去するために酸洗い(デスマット処理)が行われるのが好ましい。
用いられる酸としては、例えば、硝酸、硫酸、リン酸、クロム酸、フッ化水素酸、ホウフッ化水素酸が挙げられる。上記デスマット処理は、例えば、上記アルミニウム箔を塩酸、硝酸、硫酸等の濃度0.5〜30質量%の酸性溶液(アルミニウムイオン0.01〜5質量%を含有する。)に接触させることにより行う。アルミニウム箔を酸性溶液に接触させる方法としては、例えば、アルミニウム箔を酸性溶液を入れた槽の中を通過させる方法、アルミニウム箔を酸性溶液を入れた槽の中に浸せきさせる方法、酸性溶液をアルミニウム箔の表面に噴きかける方法が挙げられる。デスマット処理においては、酸性溶液として、上述した電解粗面化処理において排出される硝酸を主体とする水溶液もしくは塩酸を主体とする水溶液の廃液、または、後述する陽極酸化処理において排出される硫酸を主体とする水溶液の廃液を用いることができる。デスマット処理の液温は、25〜90℃であるのが好ましい。また、処理時間は、1〜180秒であるのが好ましい。デスマット処理に用いられる酸性溶液には、アルミニウムおよびアルミニウム合金成分が溶け込んでいてもよい。
【0063】
(陽極酸化処理)
本発明においては、以上のように処理されたアルミニウム箔に対して、腐食防止の観点から、必要に応じて陽極酸化処理を施してもよい。
【0064】
陽極酸化処理は、従来行われている方法で行うことができる。この場合、例えば、硫酸濃度50〜300g/Lで、アルミニウム濃度5質量%以下の溶液中で、アルミニウム箔を陽極として通電して陽極酸化皮膜を形成させることができる。陽極酸化処理に用いられる溶液としては、硫酸、リン酸、クロム酸、シュウ酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸、アミドスルホン酸等を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0065】
この際、少なくともアルミニウム箔、電極、水道水、地下水等に通常含まれる成分が電解液中に含まれていても構わない。更には、第2、第3の成分が添加されていても構わない。ここでいう第2、第3の成分としては、例えば、Na、K、Mg、Li、Ca、Ti、Al、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn等の金属のイオン;アンモニウムイオン等の陽イオン;硝酸イオン、炭酸イオン、塩化物イオン、リン酸イオン、フッ化物イオン、亜硫酸イオン、チタン酸イオン、ケイ酸イオン、ホウ酸イオン等の陰イオンが挙げられ、0〜10000ppm程度の濃度で含まれていてもよい。
【0066】
陽極酸化処理の条件は、使用される電解液によって種々変化するので一概に決定され得ないが、一般的には電解液濃度1〜80質量%、液温5〜70℃、電流密度0.5〜60A/dm2、電圧1〜100V、電解時間15秒〜50分であるのが適当であり、所望の陽極酸化皮膜量となるように調整される。
【0067】
また、特開昭54−81133号、特開昭57−47894号、特開昭57−51289号、特開昭57−51290号、特開昭57−54300号、特開昭57−136596号、特開昭58−107498号、特開昭60−200256号、特開昭62−136596号、特開昭63−176494号、特開平4−176897号、特開平4−280997号、特開平6−207299号、特開平5−24377号、特開平5−32083号、特開平5−125597号、特開平5−195291号の各公報等に記載されている方法を使用することもできる。
【0068】
中でも、特開昭54−12853号公報および特開昭48−45303号公報に記載されているように、電解液として硫酸溶液を用いるのが好ましい。電解液中の硫酸濃度は、10〜300g/Lであるのが好ましく、また、アルミニウムイオン濃度は、1〜25g/Lであるのが好ましく、2〜10g/Lであるのがより好ましい。このような電解液は、例えば、硫酸濃度が50〜200g/Lである希硫酸に硫酸アルミニウム等を添加することにより調製することができる。
【0069】
硫酸を含有する電解液中で陽極酸化処理を行う場合には、アルミニウム箔と対極との間に直流を印加してもよく、交流を印加してもよい。アルミニウム箔に直流を印加する場合においては、電流密度は、1〜60A/dm2であるのが好ましく、5〜40A/dm2であるのがより好ましい。連続的に陽極酸化処理を行う場合には、アルミニウム箔の一部に電流が集中していわゆる「焼け」が生じないように、陽極酸化処理の開始当初は、5〜10A/dm2の低電流密度で電流を流し、陽極酸化処理が進行するにつれ、30〜50A/dm2またはそれ以上に電流密度を増加させるのが好ましい。連続的に陽極酸化処理を行う場合には、アルミニウム箔に、電解液を介して給電する液給電方式により行うのが好ましい。
【0070】
陽極酸化皮膜に存在するマイクロポアは、通常、その平均ポア径が5〜50nm程度であり、平均ポア密度が300〜800個/μm2程度である。
【0071】
陽極酸化皮膜の量は1〜5g/m2であるのが好ましい。1g/m2未満であると本発明に関する多孔質アルミナ担体に傷が入りやすくなり、一方、5g/m2を超えると製造に多大な電力が必要となり、経済的に不利となる。陽極酸化皮膜の量は、1.5〜4g/m2であるのがより好ましい。また、アルミニウム箔の中央部と縁部近傍との間の陽極酸化皮膜量の差が1g/m2以下になるように行うのが好ましい。
【0072】
陽極酸化処理に用いられる電解装置としては、特開昭48−26638号、特開昭47−18739号、特公昭58−24517号の各公報等に記載されているものを用いることができる。中でも、図4に示す装置が好適に用いられる。図4は、アルミニウム箔の表面を陽極酸化処理する装置の一例を示す概略図である。陽極酸化処理装置410において、アルミニウム箔416は、図4中矢印で示すように搬送される。電解液418が貯溜された給電槽412にてアルミニウム箔416は給電電極420によって(+)に荷電される。そして、アルミニウム箔416は、給電槽412においてローラ422によって上方に搬送され、ニップローラ424によって下方に方向変換された後、電解液426が貯溜された電解処理槽414に向けて搬送され、ローラ428によって水平方向に方向転換される。ついで、アルミニウム箔416は、電解電極430によって(−)に荷電されることにより、その表面に陽極酸化皮膜が形成され、電解処理槽414を出たアルミニウム箔416は後工程に搬送される。上記陽極酸化処理装置410において、ローラ422、ニップローラ424およびローラ428によって方向転換手段が構成され、アルミニウム箔416は、給電槽412と電解処理槽414との槽間部において、上記ローラ422、424および428により、山型および逆U字型に搬送される。給電電極420と電解電極430とは、直流電源434に接続されている。
【0073】
図4の陽極酸化処理装置410の特徴は、給電槽412と電解処理槽414とを1枚の槽壁432で仕切り、アルミニウム箔416を槽間部において山型および逆U字型に搬送したことにある。これによって、槽間部におけるアルミニウム箔416の長さを最短にすることができる。よって、陽極酸化処理装置410の全体長を短くできるので、設備費を低減することができる。また、アルミニウム箔416を山型および逆U字型に搬送することによって、各槽412および414の槽壁432にアルミニウム箔416を通過させるための開口部を形成する必要がなくなる。よって、各槽412および414内の液面高さを必要レベルに維持するのに要する送液量を抑えることができるので、稼働費を低減することができる。
【0074】
(封孔処理)
本発明においては、必要に応じて陽極酸化皮膜に存在するマイクロポアを封じる封孔処理を行ってもよい。封孔処理は、沸騰水処理、熱水処理、蒸気処理、ケイ酸ソーダ処理、亜硝酸塩処理、酢酸アンモニウム処理等の公知の方法に従って行うことができる。例えば、特公昭56−12518号公報、特開平4−4194号公報、特開平5−202496号公報、特開平5−179482号公報等に記載されている装置および方法で封孔処理を行ってもよい。
【0075】
(水洗処理)
本発明においては、上述した各処理の工程終了後には水洗を行うのが好ましい。水洗には、純水、井水、水道水等を用いることができる。処理液の次工程への持ち込みを防ぐためにニップ装置を用いてもよい。
【0076】
[集電体]
本発明の集電体は、上述した本発明のアルミニウム基材からなる正極または負極用の集電体である。
本発明の集電体は、上述したように、本発明のアルミニウム基材が上述した特定の表面形状を有することにより、活物質層との接触面積が増加して密着性が良好となり、サイクル特性に優れる二次電池を作製することができる。
【0077】
[正極]
本発明の正極は、上述した本発明の集電体を正極に用いた正極集電体と、上記正極集電体の表面に形成される正極活物質を含む層(正極活物質層)とを有する正極である。
ここで、上記正極活物質は、従来公知の活物質を用いることができるが、本発明の正極を二次電池(特に、リチウム二次電池)に用いる観点から、リチウムを吸蔵および放出することが可能な物質であるのが好ましい。
このような物質としては、リチウム含有化合物が好ましく、具体的には、リチウムと遷移金属とを含む複合酸化物(以下、「リチウム遷移金属複合酸化物」という。)、リチウムと遷移金属とを含むリン酸化合物(以下、「リチウム含有遷移金属リン酸化合物」という。)等が挙げられ、中でも、リチウム遷移金属複合酸化物が好ましい。
【0078】
上記リチウム遷移金属複合酸化物を構成する遷移金属としては、例えば、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、W等が好適に挙げられる。
また、上記リチウム遷移金属複合酸化物は、リチウム以外のアルカリ金属(周期律表の第1(Ia)族、第2(IIa)族の元素)、Al、Ga、In、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Si、P、B等を混合してもよく、その混合量は、上記遷移金属に対して0〜30mol%であるのが好ましい。
【0079】
上記リチウム遷移金属複合酸化物の中でも、リチウム化合物と遷移金属化合物(ここで遷移金属とは、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、MoおよびWからなる群から選択される少なくとも1種のことをいう。)とのモル比(リチウム化合物/遷移金属化合物)が0.3〜2.2になるように混合して合成されたものが、より好ましい。
また、上記リチウム遷移金属複合酸化物の中でも、LiM3O(M3はCo、Ni、FeおよびMnからなる群から選択される少なくとも1種の元素を表す。gは0.1〜1.2を表す。)を含む材料や、LiM4O(M4はMnを表す。hは0.1〜2を表す。)で表されるスピネル構造を有する材料が特に好ましい。ここで、上記M3、M4としては、遷移金属以外にAl、Ga、In、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Si、P、Bなどを混合してもよく、その混合量は上記遷移金属に対して0〜30mol%が好ましい。
【0080】
上記Lig1M3Oを含む材料、Lih1M4Oで表されるスピネル構造を有する材料の中でも、Lig2CoO、Lig2NiO、Lig2MnO、Lig2Coj2Ni1−j、Lih2Mn、LiNiMn1−j、LiCoNih2Al1−j−h2、LiCoNih2Mn1−j−h2、LiMnh2Al2−h2、LiMnh2Ni2−h2(ここでg2は0.02〜1.2を表す。jは0.1〜0.9を表す。h2は0.1〜2を表す。)が特に好ましい。ここで、g値およびh値は、充放電開始前の値であり、充放電により増減する値である。具体的には、
LiNi0.5Mn0.5、LiNi0.85Co0.01Al0.05
LiNi0.33Co0.33Mn0.33、LiMn1.8Al0.2
LiMn1.5Ni0.5等が挙げられる。
【0081】
一方、上記リチウム含有遷移金属リン酸化合物を構成する遷移金属としては、例えば、の遷移金属としては、V、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu等が好適に挙げられる。
上記リチウム含有遷移金属リン酸化合物としては、具体的には、例えば、LiFePO、LiFe(PO、LiFeP等のリン酸鉄類;LiCoPO等のリン酸コバルト類;これらのリチウム遷移金属リン酸化合物の主体となる遷移金属原子の一部をAl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Li、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、Nb、Si等で置換したもの等が挙げられる。
【0082】
このような正極活物質のうち、正極集電体との密着性がより良好となり、サイクル特性により優れる二次電池を作製することができる理由から、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、LiNi0.33Co0.33Mn0.332、リン酸鉄類であるのが好ましい。
【0083】
また、上記正極活物質の平均粒子径は特に限定されないが、0.1μm〜50μmが好ましい。
ここで、正極活物質を所定の粒子径にするには、従来公知の粉砕機や分級機が用いられる。例えば、乳鉢、ボールミル、振動ボールミル、振動ミル、衛星ボールミル、遊星ボールミル、旋回気流型ジェットミルや篩などが用いられる。
また、平均粒子径は、試料を液中に分散させるか空気中に分散させて、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置等で測定することができる。
【0084】
また、上記正極活物質の比表面積は特に限定されないが、BET法で0.01m/g〜50m/gであるのが好ましい。
更に、上記正極活物質5gを蒸留水100mlに溶かした時の上澄み液のpHとしては、7以上12以下が好ましい。
なお、焼成法等によって得られた正極活物質は、水、酸性水溶液、アルカリ性水溶液、有機溶剤にて洗浄した後使用してもよい。
【0085】
本発明においては、上記活物質層は、上記活物質以外に、必要に応じて、導電材、結着剤、溶媒等の他の材料を含有していてもよい。
【0086】
上記導電材は、構成される二次電池において、化学変化を起こさない電子伝導性材料であれば特に限定されず、公知の導電材を任意に用いることができる。
上記導電材としては、例えば、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛、土状黒鉛など)、人工黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維や金属粉(銅、ニッケル、アルミニウム、銀(特開昭63−10148,554号に記載)等)、金属繊維、ポリフェニレン誘導体(特開昭59−20,971号に記載)等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、黒鉛およびアセチレンブラックを併用するのが好ましい。
上記導電材の添加量としては、正極活物質層の1〜50質量%が好ましく、2〜30質量%がより好ましい。カーボンや黒鉛の場合は、2〜15質量%が特に好ましい。
【0087】
また、上記結着剤としては、多糖類、熱可塑性樹脂およびゴム弾性を有するポリマーなどが挙げられ、具体的には、例えば、でんぷん、カルボキシメチルセルロース、セルロース、ジアセチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルフェノール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリロニトリル、ポリアクリルアミド、ポリヒドロキシ(メタ)アクリレート、スチレン−マレイン酸共重合体等の水溶性ポリマー;ポリビニルクロリド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、テトラフロロエチレン−ヘキサフロロプロピレン共重合体、ビニリデンフロライド−テトラフロロエチレン−ヘキサフロロプロピレン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、ポリビニルアセタール樹脂、メチルメタアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルを含有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−アクリロニトリル共重合体、ビニルアセテート等のビニルエステルを含有するポリビニルエステル共重合体;スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリブタジエン、ネオプレンゴム、フッ素ゴム、ポリエチレンオキシド、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエーテルポリウレタン樹脂、ポリカーボネートポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等のエマルジョン(ラテックス)またはサスペンジョン;等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、ポリアクリル酸エステル系のラテックス、カルボキシメチルセルロース、ポリテトラフロロエチレン、ポリフッ化ビニリデンが、好ましい。
結着剤の添加量は、電極合剤の保持力や凝集力、電極単位体積あるいは単位質量あたりの容量の観点から、正極活物質層の1〜30質量%が好ましく、2〜10質量%がより好ましい。
【0088】
また、上記溶媒としては、具体的には、例えば、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の非プロトン性極性溶媒が挙げられる。
【0089】
[負極]
本発明の負極は、上述した本発明の集電体を負極に用いた負極集電体と、上記負極集電体の表面に形成される負極活物質を含む層とを有する負極である。
ここで、上記負極活物質は、可逆的にリチウムイオンを挿入・放出できるものであれば特に限定されず、その具体例としては、酸化錫や酸化ケイ素などの金属酸化物;金属複合酸化物;金属硫化物;金属窒化物;リチウムアルミニウム合金などのリチウム合金;SnやSiなどのリチウムと合金形成可能な金属;等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、リチウムイオンの吸蔵放出電位が金属リチウム電位に対して0.4V以上となる物質が好ましい。
このようなリチウムイオン吸蔵放出電位を有する負極活物質は、アルミニウムもしくはアルミニウム合金とリチウムとの合金反応が抑えられ使用可能であり、例えば、チタン酸化物、チタン酸リチウム、タングステン酸化物、アモルファススズ酸化物、スズ珪素酸化物、酸化珪素等が挙げられ、中でもチタン酸リチウムが好ましい。
【0090】
[二次電池]
本発明の二次電池は、正極と、負極と、電解液とを有する二次電池である。
以下に、図5および図6を用いて、本発明の二次電池の構成を詳細に説明する。
【0091】
図5は、本発明の二次電池の実施態様の一例を示す模式的断面図である。
図5に示す二次電池30は、いわゆるコイン型と呼ばれるものであり、外装缶(ケース)31に収容された正極32(符号33:正極電体、符号34:正極活物質層)と、外装カップ(封口板)35に収容された負極36(符号37:負極集電体、符号38:負極活物質層)とが、電解液を含むセパレータ39を介して積層されたものである。
また、外装缶31および外装カップ35の周縁部は絶縁性のガスケット40を介してかしめることにより密閉されている。
【0092】
ここで、正極32および負極36の少なくとも一方が本発明の正極または負極であり、本発明の正極32を構成する正極集電体33および正極活物質層34ならびに本発明の負極36を構成する負極集電体37および負極活物質層38については、上述した本発明の正極および負極において説明した通りである。
なお、正極32および負極36のいずれか一方が本発明の正極または負極である場合は、他方の極を構成する集電体および活物質層については、本発明においては特に限定されず、いずれも従来公知の構成を用いることができる。
【0093】
従来公知の負極活物質としては、可逆的にリチウムイオンを挿入・放出できるものであれば特に限定されず、上述した本発明の負極で用いる負極活物質に加え、例えば、炭素質材料、リチウム単体等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、炭素質材料、金属酸化物、金属複合酸化物が、安全性の観点から好ましい。
【0094】
負極活物質として用いられる炭素質材料とは、実質的に炭素からなる材料である。例えば、石油ピッチ、天然黒鉛;気相成長黒鉛等の人造黒鉛;PAN系の樹脂やフルフリルアルコール樹脂等の各種の合成樹脂を焼成した炭素質材料;を挙げることができる。また、PAN系炭素繊維、セルロース系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維、脱水PVA系炭素繊維、リグニン炭素繊維、ガラス状炭素繊維、活性炭素繊維等の各種炭素繊維類、メソフェーズ微小球体、グラファイトウィスカー、平板状の黒鉛等を挙げることもできる。
【0095】
これらの炭素質材料は、黒鉛化の程度により難黒鉛化炭素材料と黒鉛系炭素材料に分けることもできる。また炭素質材料は、特開昭62−22066号公報、特開平2−6856号公報、同3−45473号公報に記載される面間隔や密度、結晶子の大きさを有することが好ましい。炭素質材料は、単一の材料である必要はなく、特開平5−90844号公報記載の天然黒鉛と人造黒鉛の混合物、特開平6−4516号公報記載の被覆層を有する黒鉛等を用いることもできる。
【0096】
負極活物質として用いられる金属酸化物および金属複合酸化物としては、特に非晶質酸化物が好ましく、更に金属元素と周期律表第16族の元素との反応生成物であるカルコゲナイトも好ましく用いられる。ここでいう非晶質とは、CuKα線を用いたX線回折法で、2θ値で20°〜40°の領域に頂点を有するブロードな散乱帯を有するものを意味し、結晶性の回折線を有してもよい。2θ値で40°以上70°以下に見られる結晶性の回折線の内最も強い強度が、2θ値で20°以上40°以下に見られるブロードな散乱帯の頂点の回折線強度の100倍以下であるのが好ましく、5倍以下であるのがより好ましく、結晶性の回折線を有さないことが特に好ましい。
なお、金属複合酸化物としては、リチウムを吸蔵、放出可能であれば特に限定されないが、構成成分としてチタンおよび/またはリチウムを含有していることが、高電流密度充放電特性の観点から好ましい。
【0097】
上記非晶質酸化物およびカルコゲナイドからなる化合物群のなかでも、半金属元素の非晶質酸化物およびカルコゲナイドがより好ましく、周期律表第13(IIIB)族〜15(VB)族の元素、Al、Ga、Si、Sn、Ge、Pb、Sb、Biの一種単独あるいはそれらの2種以上の組み合わせからなる酸化物およびカルコゲナイドが特に好ましい。
好ましい非晶質酸化物およびカルコゲナイドの具体例としては、例えば、Ga、SiO、GeO、SnO、SnO、PbO、PbO、Pb、Pb、Pb、Sb、Sb、Sb、Bi、Bi、SnSiO、GeS、SnS、SnS、PbS、PbS、Sb、Sb、SnSiSなどが好ましく挙げられる。また、これらは、酸化リチウムとの複合酸化物、例えば、LiSnOであってもよい。
【0098】
上記負極活物質の平均粒子径は特に限定されないが、0.1μm〜60μmが好ましい。
ここで、負極活物質を所定の粒子径にするには、従来公知の粉砕機や分級機が用いられる。例えば、乳鉢、ボールミル、サンドミル、振動ボールミル、衛星ボールミル、遊星ボールミル、旋回気流型ジェットミルや篩などが好適に用いられる。粉砕時には水またはメタノール等の有機溶媒を共存させた湿式粉砕も必要に応じて行うことができる。所望の粒径とするためには分級を行うことが好ましい。分級方法としては特に限定はなく、篩、風力分級機などを必要に応じて用いることができる。分級は乾式、湿式ともに用いることができる。
【0099】
Sn、Si、Geを中心とする非晶質酸化物負極活物質に併せて用いることができる負極活物質としては、リチウムイオンまたはリチウム金属を吸蔵・放出できる炭素材料や、リチウム、リチウム合金、リチウムと合金可能な金属が好適に挙げられる。
本発明においては、上記負極活物質層は、上記負極活物質以外に、必要に応じて、上述した導電助剤、結着剤、溶媒等の他の材料を含有していてもよい。
【0100】
同様に、セパレータ39についても特に限定されず、正極と負極を電子的に絶縁する機械的強度、イオン透過性および正極と負極の接触面で酸化・還元耐性のある材料であれば特に限定されることはない。
このような材料として、多孔質のポリマー材料や無機材料、有機無機ハイブリッド材料、ガラス繊維などが用いられる。
これらセパレータは安全性確保のためのシャットダウン機能、すなわち、80℃以上で隙間を閉塞して抵抗を上げ、電流を遮断する機能、を持つことが好ましく、閉塞温度は90℃以上、180℃以下であることが好ましい。
【0101】
上記セパレータの孔の形状は、通常は円形や楕円形で、大きさは0.05μm〜30μmであり、0.1μm〜20μmが好ましい。さらに延伸法、相分離法で作った場合のように、棒状や不定形の孔であってもよい。これらの隙間の占める比率すなわち気孔率は、20%〜90%であり、35%〜80%が好ましい。
【0102】
上記ポリマー材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの単一の材料を用いたものでも、2種以上の複合化材料を用いたものであってもよい。孔径、気孔率や孔の閉塞温度などを変えた2種以上の微多孔フィルムを積層したものが、好ましい。
【0103】
上記無機物としては、アルミナや二酸化珪素等の酸化物類、窒化アルミや窒化珪素等の窒化物類、硫酸バリウムや硫酸カルシウム等の硫酸塩類が用いられ、粒子形状もしくは繊維形状のものが用いられる。形態としては、不織布、織布、微多孔性フィルム等の薄膜形状のものが用いられる。薄膜形状では、孔径が0.01μm〜1μm、厚さが5μm〜50μmのものが好適に用いられる。前記の独立した薄膜形状以外に、前記無機物の粒子を含有する複合多孔層を樹脂製の結着剤を用いて正極および/または負極の表層に形成させてなるセパレータを用いることができる。例えば、正極の両面に90%粒径が1μm未満のアルミナ粒子をフッ素樹脂の結着剤を用いて多孔層として形成させることが挙げられる。
【0104】
本発明に用いられる電解液に用いることができる有機溶媒としては、例えば、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル、炭酸メチルプロピル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、イソ酪酸メチル、トリメチル酢酸メチル、トリメチル酢酸エチル、アセトニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリジノン、N−メチルオキサゾリジノン、N,N’−ジメチルイミダゾリジノン、ニトロメタン、ニトロエタン、スルホラン、燐酸トリメチル、ジメチルスルホキシドあるいはジメチルスルホキシド燐酸などが挙げられる。これらは、一種単独で用いても2種以上を併用してもよい。中でも、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチルおよび炭酸エチルメチルからなる群のうちの少なくとも1種が好ましく、特に、炭酸エチレンあるいは炭酸プロピレンなどの高粘度(高誘電率)溶媒(例えば、比誘電率ε≧30)と炭酸ジメチル、炭酸エチルメチルあるいは炭酸ジエチルなどの低粘度溶媒(例えば、粘度≦1mPa・s)との組み合わせがより好ましい。電解質塩の解離性およびイオンの移動度が向上するからである。
しかしながら、本発明に用いられる有機溶媒(非水溶媒)は、上記例示によって限定されるものではない。
【0105】
また、溶媒は、不飽和結合を有する環状炭酸エステルを含有していてもよい。電解液の化学的安定性がより向上するからである。この不飽和結合を有する環状炭酸エステルとしては、例えば、炭酸ビニレン系化合物、炭酸ビニルエチレン系化合物および炭酸メチレンエチレン系化合物からなる群のうちの少なくとも1種などが挙げられる。
【0106】
炭酸ビニレン系化合物としては、例えば、炭酸ビニレン(1,3−ジオキソール−2−オン)、炭酸メチルビニレン(4−メチル−1,3−ジオキソール−2−オン)、炭酸エチルビニレン(4−エチル−1,3−ジオキソール−2−オン)、4,5−ジメチル−1,3−ジオキソール−2−オン、4,5−ジエチル−1,3−ジオキソール−2−オン、4−フルオロ−1,3−ジオキソール−2−オンあるいは4−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソール−2−オンなどが挙げられる。
【0107】
炭酸ビニルエチレン系化合物としては、例えば、炭酸ビニルエチレン(4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン)、4−メチル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−エチル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−n−プロピル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、5−メチル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4−ジビニル−1,3−ジオキソラン−2−オンあるいは4,5−ジビニル−1,3−ジオキソラン−2−オンなどが挙げられる。
【0108】
炭酸メチレンエチレン系化合物としては、4−メチレン−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4−ジメチル−5−メチレン−1,3−ジオキソラン−2−オンあるいは4,4−ジエチル−5−メチレン−1,3−ジオキソラン−2−オンなどが挙げられる。
【0109】
これらは単独で用いられてもよいし、複数種が混合されて用いられてもよい。中でも、炭酸ビニレンが好ましい。高い効果が得られるからである。
【0110】
電解液に含まれる周期律表第一族または第二族に属する金属イオンもしくはその塩としては、電解液の使用目的により適宜選択される、例えば、リチウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などが挙げられ、二次電池などに使用される場合には、出力の観点からリチウム塩が好ましい。電解質をリチウム二次電池用非水系電解液の電解質として用いる場合には、金属イオンの塩としてリチウム塩を選択すればよい。リチウム塩としては、リチウム二次電池用非水系電解液の電解質に通常用いられるリチウム塩であれば特に制限はないが、例えば、以下に述べるものが好ましい。
【0111】
(L−1)無機リチウム塩:LiPF、LiBF、LiAsF、LiSbF等の無機フッ化物塩;LiClO、LiBRO、LiIO等の過ハロゲン酸塩;LiAlCl等の無機塩化物塩等。
【0112】
(L−2)含フッ素有機リチウム塩:LiCFSO等のパーフルオロアルカンスルホン酸塩;LiN(CFSO、LiN(CFCFSO、LiN(FSO、LiN(CFSO)(CSO)等のパーフルオロアルカンスルホニルイミド塩;LiC(CFSO等のパーフルオロアルカンスルホニルメチド塩;Li[PF(CFCFCF)]、Li[PF(CFCFCF]、Li[PF(CFCFCF]、Li[PF(CFCFCFCF)]、Li[PF(CFCFCFCF]、Li[PF(CFCFCFCF]等のフルオロアルキルフッ化リン酸塩等。
【0113】
(L−3)オキサラトボレート塩:リチウムビス(オキサラト)ボレート、リチウムジフルオロオキサラトボレート等。
【0114】
これらのなかで、LiPF、LiBF、LiAsF、LiSbF、LiClO、Li(RfSO)、LiN(RfSO、LiN(FSO、およびLiN(RfSO)(RfSOが好ましく、LiPF、LiBF、LiN(RfSO、LiN(FSO、およびLiN(RfSO)(RfSOなどのリチウムイミド塩がさらに好ましい。ここで、Rf、Rfはそれぞれパーフルオロアルキル基を示す。
なお、電解液に用いるリチウム塩は、1種を単独で使用しても、2種以上を任意に組み合わせてもよい。
電解液における周期律表第一族または第二族に属する金属のイオンもしくはその金属塩の含有量は、以下に電解液の調製法で述べる好ましい塩濃度となるよう量で添加される。塩濃度は電解液の使用目的により適宜選択されるが、一般的には電解液全質量中10質量%から50質量%であり、更に好ましくは15質量%から30質量%である。なお、イオンの濃度として評価するときには、その好適に適用される金属との塩換算で算定されればよい。
【0115】
次に、電解液の代表的な調整方法を、金属イオンの塩としてリチウム塩を用いた場合を例に挙げて説明する。
電解液は、前記非水電解液溶媒に、ケイ素化合物、リチウム塩、および、所望により添加される種々の添加剤を溶解して、調製される。
【0116】
本発明において、「非水」とは水を実質的に含まないことをいい、発明の効果を妨げない範囲で微量の水を含んでいてもよい。良好な特性を得ることを考慮して言うと、水の含有量が200ppm以下であることが好ましく、100ppm以下であることがより好ましい。下限値は特にないが、不可避的な混入を考慮すると、10ppm以上であることが実際的である。
【0117】
また、外装缶31および外装カップ35についても特に限定されず、例えば、ステンレスやアルミニウム等の金属により構成することができる。
【0118】
図6は、本発明の二次電池の他の実施態様の一例を示す模式的断面図である。
図6に示す二次電池50は、いわゆる円筒型と呼ばれるものであり、中空円柱状の電池缶51の内部に、電解液を含むセパレータ63を介して正極61と負極62とが積層および巻回された巻回電極体60と、一対の絶縁板52および53とが収納されたものである。
【0119】
ここで、正極61および負極62のなくとも一方が本発明の正極または負極であり、本発明の正極61を構成する正極集電体および正極活物質層ならびに本発明の負極62を構成する負極集電体および負極活物質層については、上述した本発明の正極および負極において説明した通りである。
なお、正極61および負極62のいずれか一方が本発明の正極または負極である場合は、他方の極を構成する集電体および活物質層については、本発明においては特に限定されず、いずれも従来公知の構成を用いることができる。
同様に、セパレータ63についても特に限定されず、例えば、図5に示したセパレータ39と同様の方法により形成することができる。
【0120】
また、図6に示すように、電池缶51の開放端部には、電池蓋54と、その内側に設けられた安全弁機構55および熱感抵抗素子(Positive Temperature Coefficient:PTC素子)56とが、ガスケット57を介してかしめられることによって取り付けられている。これにより、電池缶51の内部は密閉されている。
電池蓋54は、例えば、電池缶51と同様の金属材料によって構成されている。
安全弁機構55は、熱感抵抗素子56を介して電池蓋54と電気的に接続されている。
この安全弁機構55では、内部短絡または外部からの加熱等に起因して内圧が一定以上となった場合に、ディスク板55Aが反転して電池蓋54と巻回電極体60との間の電気的接続を切断するようになっている。
熱感抵抗素子56は、温度の上昇に応じて抵抗が増大することによって電流を制限し、大電流に起因する異常な発熱を防止するものである。
ガスケット57は、例えば、絶縁材料によって構成されており、その表面にはアスファルトが塗布されている。
【0121】
巻回電極体60の中心には、センターピン64が挿入されていてもよい。
この巻回電極体60では、アルミニウムなどの金属材料によって構成された正極リード65が正極61に接続されていると共に、ニッケル等の金属材料によって構成された負極リード66が負極62に接続されている。
正極リード65は、安全弁機構55に溶接等されて電池蓋54と電気的に接続されており、負極リード66は、電池缶51に溶接等されて電気的に接続されている。
【0122】
本発明の二次電池は、特定の集電体を備えることでサイクル性やレート特性の良好な二次電池を作製することができるため、種々の用途に適用される。
適用態様には特に限定なはいが、例えば、電子機器に搭載する場合、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、コードレスフォン子機、ページャー、ハンディーターミナル、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドフォンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、電気シェーバー、トランシーバー、電子手帳、電卓、メモリーカード、携帯テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、メモリーカードなどが挙げられる。その他民生用として、自動車、電動車両、モーター、照明器具、玩具、ゲーム機器、ロードコンディショナー、時計、ストロボ、カメラ、医療機器(ペースメーカー、補聴器、肩もみ機など)などが挙げられる。更に、各種軍需用、宇宙用として用いることができる。また、太陽電池と組み合わせることもできる。
【0123】
本発明の二次電池において電荷の輸送に用いられる金属イオンは特に限定されないが、周期律表第一族または第二族に属する金属イオンを利用したものであることが好ましい。中でも、リチウムイオン、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、アルミニウムイオン等を用いることが好ましい。リチウムイオンを用いた二次電池についての一般的な技術事項は冒頭に挙げた特許文献等、多くの文献や書籍があり参考になる。その他、ナトリウムイオンを用いた二次電池については、Journal of Electrochemical Society;Electrochemical Science and Technology、米国、1980年、第127巻、第2097〜2099頁等を参照することができる。マグネシウムイオンについては、Nature 407, p.724−727(2000)等を参照することができる。カルシウムイオンについては、J.Electrochem. Soc., Vol.138, 3536 (1991)等を参照することができる。本発明においてはその普及の程度からリチウムイオン二次電池に適用することが好ましいが、それ以外のものにおいても所望の効果を奏するものであり、これに限定して解釈されるものではない。
【実施例】
【0124】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されない。
<集電体用アルミニウム基材の作製>
(実施例1−1)
厚さ20μm、幅200mmのアルミニウム箔(JIS H−4160、アルミニウム純度:99.30%)の表面に、以下に示す表面処理(a1)〜(g1)に供し、集電体用アルミニウム基材を作製した。
【0125】
(a1)電気化学的粗面化処理(大波構造の形成)
まず、直流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸10.4g/L水溶液(アルミニウムイオンを4.5g/L含む。)、液温50℃であった。カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。使用した電解槽は図3に示すものを使用した。電流密度は電流のピーク値で30A/dm2、電気量はアルミニウム箔が陽極時の電気量の総和で220C/dm2であった。補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0126】
(b1)電気化学的粗面化処理(中波構造の形成)
次いで、60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸9.2g/L水溶液(アルミニウムイオンを4.5g/L含む。)、温度50℃であった。交流電源波形は図2に示した波形であり、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。使用した電解槽は図3に示すものを使用した。電流密度は電流のピーク値で25A/dm2、電気量はアルミニウム箔が陽極時の電気量の総和で185C/dm2であった。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0127】
(c1)アルカリエッチング処理
次いで、アルミニウム箔をカセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%の水溶液を用いてスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム箔を0.5g/m2溶解し、前段の交流を用いて電気化学的粗面化処理を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成した中波構造のエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0128】
(d1)デスマット処理
次いで、温度60℃の硫酸濃度25質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を10秒間行い、その後、スプレーによる水洗を行った。
【0129】
(e1)電気化学的粗面化処理(小波構造の形成)
次いで、60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、塩酸8.2g/L水溶液(アルミニウムイオンを4.5g/L含む。)、温度35℃であった。交流電源波形は図2に示した波形であり、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。使用した電解槽は図3に示すものを使用した。電流密度は電流のピーク値で25A/dm2、電気量はアルミニウム箔が陽極時の電気量の総和で63C/dm2であった。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0130】
(f1)アルカリエッチング処理
次いで、アルミニウム箔をカセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%の水溶液を用いてスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム箔を0.1g/m2溶解し、前段の交流を用いて電気化学的粗面化処理を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成した小波構造のエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0131】
(g1)デスマット処理
次いで、温度60℃の硫酸濃度25質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を10秒間行い、その後、スプレーによる水洗を行った。
【0132】
(実施例1−2)
上記(a1)処理を施さず、上記(b1)処理および上記(c1)処理に代えて、下記(b2)電解粗面化処理および下記(c2)アルカリエッチング処理を施した以外は、実施例1−1と同様の方法により、集電体用アルミニウム基材を作製した。
【0133】
(b2)電気化学的粗面化処理(中波構造の形成)
まず、60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸10.2g/L水溶液(アルミニウムイオンを4.5g/L含む。)、温度33℃であった。交流電源波形は図2に示した波形であり、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。使用した電解槽は図3に示すものを使用した。電流密度は電流のピーク値で25A/dm2、電気量はアルミニウム箔が陽極時の電気量の総和で245C/dm2であった。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0134】
(c2)アルカリエッチング処理
次いで、アルミニウム箔をカセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%の水溶液を用いてスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム箔を0.2g/m2溶解し、前段の交流を用いて電気化学的粗面化処理を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成した中波構造のエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0135】
(実施例1−3)
上記(a1)および上記(b1)処理に代えて、下記(a2)電解粗面化処理のみを施した以外は、実施例1−1と同様の方法により、集電体用アルミニウム基材を作製した。
【0136】
(a2)電解粗面化処理(大波構造および中波構造の一括形成)
まず、60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸10.2g/L水溶液(アルミニウムイオンを4.5g/L含む。)、液温33℃であった。交流電源波形は図2に示した波形であり、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。使用した電解槽は図3に示すものを使用した。電流密度は電流のピーク値で30A/dm2、電気量はアルミニウム箔が陽極時の電気量の総和で612C/dm2であった。補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0137】
(実施例1−4)
上記(a1)処理を施さず、上記(b1)処理および上記(c1)処理に代えて、下記(b3)電解粗面化処理および下記(c3)アルカリエッチング処理を施した以外は、実施例1−1と同様の方法により、集電体用アルミニウム基材を作製した。
【0138】
(b3)電気化学的粗面化処理(中波構造の形成)
まず、60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸10.2g/L水溶液(アルミニウムイオンを4.5g/L含む。)、温度37℃であった。交流電源波形は図2に示した波形であり、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。使用した電解槽は図3に示すものを使用した。電流密度は電流のピーク値で25A/dm2、電気量はアルミニウム箔が陽極時の電気量の総和で245C/dm2であった。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0139】
(c3)アルカリエッチング処理
次いで、アルミニウム箔をカセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%の水溶液を用いてスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム箔を0.1g/m2溶解し、前段の交流を用いて電気化学的粗面化処理を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成した中波構造のエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0140】
(実施例1−5)
上記(a1)処理を施さず、上記(b1)処理に代えて、下記(b4)電解粗面化処理を施した以外は、実施例1−1と同様の方法により、集電体用アルミニウム基材を作製した。
【0141】
(b4)電気化学的粗面化処理(中波構造の形成)
まず、60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸10.2g/L水溶液(アルミニウムイオンを4.5g/L含む。)、温度50℃であった。交流電源波形は図2に示した波形であり、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。使用した電解槽は図3に示すものを使用した。電流密度は電流のピーク値で25A/dm2、電気量はアルミニウム箔が陽極時の電気量の総和で245C/dm2であった。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0142】
(実施例1−6)
上記(b1)〜(d1)の各処理を施さず、中波構造を形成しなかった以外は、実施例1−1と同様の方法により、集電体用アルミニウム基材を作製した。
【0143】
(実施例1−7)
上記(a1)処理を施さず、大波構造を形成しなかった以外は、実施例1−1と同様の方法により、集電体用アルミニウム基材を作製した。
【0144】
(実施例1−8)
上記(e1)〜(g1)の各処理を施さず、小波構造を形成しなかった以外は、実施例1−1と同様の方法により、集電体用アルミニウム基材を作製した。
【0145】
(実施例1−9)
上記(a1)処理の電気量総和を80C/dm2とし、上記(b1)処理の電気量総和を100C/dm2とした以外は、実施例1−8と同様の方法により、集電体用アルミニウム基材を作製した。
【0146】
(比較例1−1)
上記(b1)〜(g1)の各処理を施さず、中波構造および小波構造を形成しなかった以外は、実施例1−1と同様の方法により、集電体用アルミニウム基材を作製した。
【0147】
(比較例1−2)
上記(a1)および上記(e1)〜(g1)の各処理を施さず、大波構造および小波構造を形成しなかった以外は、実施例1−1と同様の方法により、集電体用アルミニウム基材を作製した。
【0148】
(比較例1−3)
上記(a1)〜(d1)の各処理を施さず、大波構造および中波構造を形成しなかった以外は、実施例1−1と同様の方法により、集電体用アルミニウム基材を作製した。
【0149】
(比較例1−4)
上記(a2)処理に代えて、下記(a3)電解粗面化処理のみを施した以外は、実施例1−3と同様の方法により、集電体用アルミニウム基材を作製した。
【0150】
(a3)電解粗面化処理(大波構造および中波構造の一括形成)
まず、60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸10.2g/L水溶液(アルミニウムイオンを4.5g/L含む。)、液温33℃であった。交流電源波形は図2に示した波形であり、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。使用した電解槽は図3に示すものを使用した。電流密度は電流のピーク値で30A/dm2、電気量はアルミニウム箔が陽極時の電気量の総和で415C/dm2であった。補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0151】
(比較例1−5)
表面処理を施さず、厚さ20μm、幅200mmのアルミニウム箔(JIS H−4160、アルミニウム純度:99.30%)をそのまま用いた。
【0152】
<集電体用アルミニウム基材の表面形状の測定>
作製した各集電体用アルミニウム基材の表面の表面形状について、下記(1)〜(3)の測定を行って大波構造、中波構造および小波構造の平均開口径を算出し、下記(4)の測定を行って断面曲線の最大断面高さPtを算出した。
結果を第1表に示す。なお、第1表中、「−」は、該当する平均開口径の波構造がなかったことを示す。
【0153】
(1)大波構造の平均開口径
触針式粗さ計(sufcom575、東京精密社製)で2次元粗さ測定を行い、ISO4287に規定されている平均山間隔Smを5回測定し、その平均値を平均開口径とした。
2次元粗さ測定は、以下の条件で行った。
<測定条件>
・カットオフ値:0.8mm
・傾斜補正:FLAT−ML
・測定長:3mm
・縦倍率:10000倍
・走査速度:0.3mm/sec
・触針先端径:2μm
【0154】
(2)中波構造の平均開口径
高分解能走査型電子顕微鏡(SEM)を用いてアルミニウム基材の表面を真上から倍率2000倍で撮影し、得られたSEM写真において周囲が環状に連なっている中波構造のピット(凹凸)を50個抽出し、その直径を読み取って平均開口径を算出した。
【0155】
(3)小波構造の平均開口径
高分解能走査型電子顕微鏡(SEM)を用いてアルミニウム基材の表面を真上から倍率50000倍で撮影し、得られたSEM写真において小波構造のピット(凹凸)を50個抽出し、その直径を読み取って平均開口径を算出した。
【0156】
(4)断面曲線の最大断面高さPt
アルミニウム基材の断面の断面曲線の最大断面高さPtをJIS B0601:2001に規定される方法で測定した。
【0157】
<集電体用アルミニウム基材の表面積差ΔSおよび急峻度a45の測定>
作製した各集電体用アルミニウム基材の表面について表面積差ΔSおよび急峻度a45を求めるために、原子間力顕微鏡(SP13700、セイコー電子工業社製)により表面形状を測定し、3次元データを求めた。以下、具体的な手順を説明する。
アルミニウム基材を1cm角の大きさに切り取って、ピエゾスキャナー上の水平な試料台にセットし、カンチレバーを試料表面にアプローチし、原子間力が働く領域に達したところで、XY方向にスキャンし、その際、試料の表面形状(波構造)をZ方向のピエゾの変位でとらえた。ピエゾスキャナーは、XY方向について150μm、Z方向について10μm、走査可能なものを使用した。カンチレバーは共振周波数120〜150kHz、バネ定数12〜20N/mのもの(SI−DF20、NANOPROBE社製)を用い、DFMモード(Dynamic Force Mode)で測定した。また、求めた3次元データを最小二乗近似することにより試料のわずかな傾きを補正し基準面を求めた。
計測の際は、表面の50μm×50μmの範囲を512×512点測定した。XY方向の分解能は1.9μm、Z方向の分解能は1nm、スキャン速度は60μm/secとした。
上記で求められた3次元データ(f(x,y))を用い、隣り合う3点を抽出し、その3点で形成される微小三角形の面積の総和を求め、実面積Sxとした。表面積差ΔSは、得られた実面積Sxと幾何学的測定面積S0とから、上記式(i)により求めた。
また、上記で求められた三次元データ(f(x,y))を用い、各基準点と所定の方向(例えば、右と下)の隣接する2点との3点で形成される微小三角形と基準面とのなす角を各基準点について算出する。微小三角形の傾斜度が45度以上の基準点の個数を、全基準点の個数(全データの個数である512×512点から所定の方向の隣接する2点がない点の個数を減じた個数、すなわち、511×511点)で除して、傾斜度45度以上の部分の面積率a45を算出する。
結果を第1表に示す。
【0158】
【表1】

【0159】
<正極の作製>
まず、正極活物質としてのコバルト酸リチウム(LiCoO2)200gと、導電助剤としてのアセチレンブラック2gおよび黒鉛10gとを予め混合し、混合物を得た。
次いで、得られた混合物212gと、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(固形分:8%)100gと、溶媒としてのN−メチルピロリドン20gとを、スリーワンモーター(回転数:1200rpm)を用いて撹拌し、10分間撹拌した後に撹拌浴内の壁に付着したスラリーを落とし、更に5分間撹拌した。
次いで、得られたペースト状の混合物をメッシュ(SUS100)でろ過することで、正極活物質層の材料を調製した。
作製した各集電体用アルミニウム基材の表面に、調製した正極活物質層の材料を70μm厚で塗布し、100℃の温度条件で30分間乾燥させ、正極を作製した。なお、実施例1−1〜1−9で作製した集電体用アルミニウム基板を用いた正極をそれぞれ正極A〜Iとし、比較例1−1〜1−5で作製した集電体用アルミニウム基板を用いた正極をそれぞれ正極1〜5とする。
【0160】
<負極Aの作製>
コバルト酸リチウム(正極活物質)をチタン酸リチウム(負極活物質)に代えた以外は、正極活物質層の材料と同様の方法で、負極活物質層の材料を調製した。
実施例1−1で作製した集電体用アルミニウム基材の表面に、調製した負極活物質層の材料を70μm厚で塗布し、100℃の温度条件で30分間乾燥させ、負極Aを作製した。
【0161】
<負極1の作製>
負極活物質としての黒鉛450gと、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(固形分:8%)50gと、溶媒としてのN−メチルピロリドン500gとを混合してスラリー状にしたものを、銅箔からなる集電体の片面に70μm厚で塗布し、100℃の温度条件で30分間乾燥させ、負極1を作製した。
【0162】
<電解液の調製>
電解液としては、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)および4−フルオロエチレンカーボネート(FEC)および炭酸ビニレン(VC)を、エチレンカーボネート:ジメチルカーボネート:メチルエチルカーボネート:4−フルオロエチレンカーボネート:炭酸ビニレン=23:65:6:3:3の質量比で混合した溶媒に、更に電解質塩として、LiPF6を溶解させたものを用いた。LiPF6を質量モル濃度は、1.5mol/kgとなるように溶解させたものを用いた。
【0163】
<リチウム二次電池の製造:実施例2−1〜2−11、比較例2−1〜2−5>
作製した正極A〜Iまたは1〜5(第2表参照)と、微多孔性ポリプロピレンフィルム(25μm厚)からなるセパレータと、作製した負極Aまたは1(第2表参照)とをこの順に積層してから渦巻状に多数回巻回させたのち、巻き終わり部分を粘着テープで固定することにより、巻回電極体を形成した。
次いで、ニッケルめっきが施された鉄製の電池缶を準備したのち、巻回電極体を一対の絶縁板で挟み、負極リードを電池缶に溶接すると共に正極リードを安全弁機構に溶接して、その巻回電極体を電池缶の内部に収納した。
次いで、電池缶の内部に、減圧方式により調製した電解液を注入することで、リチウム二次電池を製造した。
【0164】
<サイクル特性>
20℃の常温槽内において充放電を繰り返して、1サイクル目の放電容量に対するnサイクル目の放電容量の維持率が80%を下回るまでの回数(サイクル数)を測定した。
結果を第2表に示す。
【0165】
<レート特性>
製造した各リチウム二次電池について、3.2mA/cm2の電流で5時間(0.2C)充電した後の5Cでの放電容量を測定し、0.2Cで測定した放電容量に対する容量維持率(%)を測定した。
結果を第2表に示す。
【0166】
【表2】

【0167】
第1表および第2表に示す結果から、大波構造、中波構造および小波構造のいずれか1つのみを表面に有する集電体用アルミニウム基材を用いると、表面処理を施していない比較例1−5の集電体用アルミニウム基材を用いた場合と比較しても、サイクル特性およびレート特性を改善できないことが分かった(比較例2−1〜2−3)。
また、大波構造、中波構造および小波構造のいずれか2つ以上を表面に有していても、断面曲線の最大断面高さPtが10μmより大きいと、サイクル特性およびレート特性が更に悪くなることが分かった(比較例2−4)。
これに対し、大波構造、中波構造および小波構造のいずれか2つ以上を表面に有する集電体用アルミニウム基材を用いると、比較例1−5の集電体用アルミニウム基材を用いた場合と比較すると、サイクル数が約3〜5倍となり、サイクル特性に優れた二次電池を作製できることが分かった(実施例2−1〜2−11)。
特に、大波構造と、中波構造および/または小波構造とを表面に有する集電体用アルミニウム基材を用いると、レート特性にも優れた二次電池を作製できることが分かった(実施例2−1、2−3、2−6、2−8、2−10および2−11)。
また、実施例1−8と実施例1−9との対比から、表面積比ΔSが20%以上であり、かつ、急峻度a45が5〜60%である集電体用アルミニウム基材を用いると、サイクル特性およびレート特性が良好となることが分かった(実施例2−8および2−9)。
更に、正極および負極として実施例1−1の作製した集電体用アルミニウム基材を用いると、サイクル特性が極めて良好となることが分かった(実施例2−11)。
【符号の説明】
【0168】
1 大波構造
2 中波構造
3 小波構造
11 アルミニウム箔
12 ラジアルドラムローラ
13a、13b 主極
14 電解処理液
15 電解液供給口
16 スリット
17 電解液通路
18 補助陽極
19a、19b サイリスタ
20 交流電源
21 主電解槽
22 補助陽極槽
30 二次電池
31 外装缶(ケース)
32 正極
33 正極集電体
34 正極物質層
35 外装カップ(封口板)
36 負極
37 負極集電体
38 負極活物質層
39 セパレータ
40 ガスケット
50 二次電池
51 電池缶
52、53 絶縁板
54 電池蓋
55 安全弁機構
55A ディスク板
56 熱感抵抗素子
57 ガスケット
60 巻回電極体
61 正極
62 負極
63 セパレータ
64 センターピン
410 陽極酸化処理装置
412 給電槽
414 電解処理槽
416 アルミニウム箔
418、426 電解液
420 給電電極
422、428 ローラ
424 ニップローラ
430 電解電極
432 槽壁
434 直流電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均開口径5μm超100μm以下の大波構造、平均開口径0.5μm超5μm以下の中波構造および平均開口径0.01μm超0.5μm以下の小波構造からなる群から選択される少なくとも2つの構造が重畳された表面を有し、
前記表面の断面曲線の最大断面高さPtが、10μm以下である集電体用アルミニウム基材。
【請求項2】
表面積比ΔSが20%以上であり、かつ、急峻度a45が5〜60%である請求項1に記載の集電体用アルミニウム基材。
ここで、表面積比ΔSは、原子間力顕微鏡を用いて、表面の50μm×50μmの範囲を512×512点測定して得られる3次元データから近似三点法により得られる実面積Sxと、幾何学的測定面積S0とから、下記式(i)により求められる値であり、急峻度a45は、前記実面積Sxに対する角度45°以上の大きさの傾斜(傾斜度45°以上)を有する部分の面積率である。
ΔS=(Sx−S0)/S0×100(%)・・・(i)
【請求項3】
少なくとも前記大波構造が形成された表面を有する請求項1または2に記載の集電体用アルミニウム基材。
【請求項4】
前記大波構造、前記中波構造および前記小波構造のいずれもが重畳された表面を有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の集電体用アルミニウム基材。
【請求項5】
厚みが100μm未満である請求項1〜4のいずれか一項に記載の集電体用アルミニウム基材。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の集電体用アルミニウム基材からなる集電体。
【請求項7】
請求項6に記載の集電体を正極に用いた正極集電体と、前記正極集電体の表面に形成される正極活物質を含む層とを有する正極。
【請求項8】
前記正極活物質が、リチウムを吸蔵および放出することが可能な物質である請求項7に記載の正極。
【請求項9】
前記正極活物質が、リチウムと遷移金属とを含む複合酸化物である請求項7または8に記載の正極。
【請求項10】
前記正極活物質が、コバルト酸リチウム(LiCoO2)である請求項9に記載の正極。
【請求項11】
請求項6に記載の集電体を負極に用いた負極集電体と、前記負極集電体の表面に形成される負極活物質を含む層とを有する負極。
【請求項12】
前記負極活物質が、リチウムを吸蔵および放出することが可能であり、かつ、リチウムイオンの吸蔵放出電位が金属リチウム電位に対して0.4V以上となる物質である請求項11に記載の負極。
【請求項13】
前記負極活物質が、チタン酸リチウムである請求項12に記載の負極。
【請求項14】
正極、負極および電解液を有する二次電池であって、
前記正極が請求項7〜10のいずれか一項に記載の正極である、および/または、前記負極が請求項11〜13のいずれか一項に記載の負極である二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−216513(P2012−216513A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−62230(P2012−62230)
【出願日】平成24年3月19日(2012.3.19)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】