説明

雌型コネクタ付き配線基板および電子装置

【課題】 寸法を小型化が可能である雌型コネクタ付き配線基板を提供すること。
【解決手段】 第1貫通孔2aを有している基板2と、基板2の第1貫通孔2aの開口周辺、および、第1貫通2a孔の内壁の少なくとも一方に設けられた電極3と、第2貫通孔4aを有しており、第2貫通孔4aが第1貫通孔2aに連通するように基板2に設けられた樹脂成形体4とを有している電子装置1である。雌型コネクタ9内に、例えば、金属ピンを固定するための金具を設ける必要がなくなる。よって、小型化を図ることが可能な雌型コネクタ付き配線基板9を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雌型コネクタ付き配線基板および電子装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、金属ピン等の雄型コネクタ端子は、雌型コネクタ付き配線基板のピン穴に挿入して電気的に接続されている。また、従来の雌型コネクタは、樹脂成形体の穴内に、金属ピンを固定するとともに電気的に接続するための、バネ性を有する金具が設けられたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−260457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の雌型コネクタにおいて、金具は金属ピンを強固に固定していなければならないので、小型化するのに限界がある。よって、金属ピンどうしの間隔を狭くできないので、複数の雄型コネクタ端子を接続させる際には、雌型コネクタ全体がさらに大型化してしまうという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、小型化を図ることが可能な雌型コネクタ付き配線基板および電子装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の雌型コネクタ付き配線基板は、第1貫通孔を有している基板と、該基板の前記第1貫通孔の開口周辺、および、前記第1貫通孔の内壁の少なくとも一方に設けられた電極と、第2貫通孔を有しており、該第2貫通孔が前記第1貫通孔に連通するように前記基板に設けられた樹脂成形体とを有していることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の雌型コネクタ付き配線基板によれば、第1貫通孔を有している基板と、基板の第1貫通孔の開口周辺、および、第1貫通孔の内壁の少なくとも一方に設けられた電極と、第2貫通孔を有しており、第2貫通孔が第1貫通孔に連通するように基板に設けられた樹脂成形体とを有していることから、雄型コネクタ端子としての金属ピンを第1および第2貫通孔に挿入してその端部を電極に接続する際、金属ピンの先端と電極との間に導電性接着材が入り込めるぐらいの隙間が存在すれば、金属ピンを基板側に電気的に接続させることができる。よって、雌型コネクタ内に、例えば、金属ピンを固定するための金具を設ける必要がなくなる。よって、小型化を図ることが可能な雌型コネクタ付き配線基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の雌型コネクタ付き配線基板の実施の形態の一例を示す縦断面図である。
【図2】図1に示す雌型コネクタ付き配線基板を有する電子装置の縦断面図である。
【図3】(a)、(b)は、それぞれ図2に示す電子装置の実施の形態の他の例を示す縦断面図である。
【図4】図2に示す電子装置の金属ピンを示す正面図である。
【図5】図2に示す電子装置の実施の形態の他の例を示す縦断面図である。
【図6】図2に示す電子装置の実施の形態の他の例を示す縦断面図である。
【図7】(a)は、本発明の電子装置の実施の形態の他の例を示す斜視図であり、(b)は、(a)の正面図であり、(c)は、(a)の側面図である。
【図8】(a)は、本発明の電子装置の実施の形態の他の例を示す斜視図であり、(b)は、(a)の正面図である。
【図9】本発明の電子装置の実施の形態の他の例を示す縦断面図である。
【図10】本発明の電子装置の実施の形態の他の例を示す縦断面図である。
【図11】本発明の電子装置の実施の形態の他の例を示す縦断面図である。
【図12】従来の電子装置の実施の形態の一例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の電子装置の実施の形態の一例について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0010】
図1および図2に示す電子装置1は、雌型コネクタ付き配線基板9と、金属ピン53とを具備している。雌型コネクタ付き配線基板9は、基板2と、電極3と、樹脂成形体4とを具備している。基板2は、第1貫通孔2aを有している。電極3は、基板2の第1貫通孔2aの開口周辺、および、第1貫通孔2aの内壁の少なくとも一方に設けられている。樹脂成形体4は、第2貫通孔4aを有しており、第2貫通孔4aが第1貫通孔2aに連通するように基板2に設けられている。金属ピン53は、第1貫通孔2aおよび第2貫通孔4aを貫通しており、端部5aが導電性接着材6を介して電極に取り付けられている。
【0011】
このような構成によれば、雄型コネクタ端子としての金属ピン53を第1および第2貫通孔2a、4aに挿入してその端部を電極3に接続する際、金属ピン53の先端と電極3との間に導電性接着材6が入り込めるぐらいの隙間が存在すれば、金属ピン53を基板2側に電気的に接続させることができる。よって、雌型コネクタ9内に、例えば、金属ピンを固定するための金具を設ける必要がなくなる。よって、小型化を図ることが可能な雌型コネクタ付き配線基板9を提供することができる。また、このような雌型コネクタ付き配線基板9に、金属ピン53を挿入し接続すれば、小型化を図ることが可能な電子装置1を提供することができる。
【0012】
基板2の材料は、例えば、フェノール系樹脂,ポリイミド系樹脂またはエポキシ系樹脂等の樹脂材料が使用される。また、例えば、アルミナ,窒化アルミニウムまたは窒化珪素等のセラミック材料を用いることもできる。これらのセラミック材料を用いた場合には、剛性に優れるという点から好ましい。基板2の第1貫通孔2aの直径は、例えば、0.5〜
3mmである。
【0013】
電極3の材料は、鉄、銀、銅、金またはこれらを少なくとも2種含む合金等の金属材料が使用される。また、図2に示す例のように、電極3は、基板2の第1主面2bの第1貫通孔2aの開口周辺から、第1貫通孔2aの内壁を経て、基板2の第2主面2cの第1貫通孔2aの開口周辺にかけて設けられていることが好ましい。この構成の場合には、導電性接着材6を介した、電極3と金属ピン53先端部との接合面積を広く確保できる。よって、電極3と金属ピン53とを強固に接合させることができる。
【0014】
図3(a)に示す例のように、電極3は、基板2の第1貫通孔2aの開口周辺に設けられていてもよい。また、図3(b)に示す例のように、電極3は、第1貫通孔2aの内壁に設けられていてもよい。
【0015】
樹脂成形体4の材料は、例えば、フェノール系樹脂,ポリイミド系樹脂またはエポキシ
系樹脂等の樹脂材料が使用される。樹脂成形体4の第2貫通孔4aの直径は、例えば、0.5〜3mmである。
【0016】
金属ピン53の材料は、鉄、銀、銅等が使用される。金属ピン5の直径は、0.1〜2.5mmである。図4に示す例においては、金属ピン53は、端子5の一部である、端子5は、所定の形状に打ち抜かれた1枚の金属板を、折り曲げることによって形成されたものである。端子5は、ケーブル8の芯線81の外周82に圧着されるケーブル圧着部51、芯線に直に圧着される芯線圧着部52、第1および第2貫通孔2a、2b内に挿入される金属ピン53を有する。なお、金属ピン53は、耐腐食性を向上させるため、また、導電性接着材6である半田等との濡れ性を良好にするために、先端にAu,Ni等のメッキを施しておくことが好ましい。
【0017】
導電性接着材6は、例えば、半田である。また、鉄、銀、銅等の金属微粒子を含む樹脂接着材であってもよい。
【0018】
なお、図2に示す例のように、金属ピン53と、第2貫通孔4aの内壁とは、接着材7によって接着されていることが好ましい。この接着材7は、例えば、フェノール系樹脂,ポリイミド系樹脂またはエポキシ系樹脂等の樹脂材料が使用される。このような構成によって、金属ピン53は、第1貫通孔2aの内壁に対向する部分だけでなく、第2貫通孔4aの内壁に対向する部分もまた、接着材7によって固定されることとなる。よって、金属ピン53は、基板2側に強固に固定されることとなるので好ましい。特に、この接着材7は、シリコーン樹脂等の、比較的弾性が低い樹脂材料によって形成されていることが好ましい。このような構成によって、貫通孔2a、4aの内壁に固定された金属ピン53に、多少力が加わったとしても、接着材7の弾性変形によって、その力を吸収できることとなる。よって、金属ピン53と、貫通孔2a、4a内壁との接合をさらに強固にすることが可能となる。
【0019】
なお、図5に示す例のように、第2貫通孔4aが、第1の空間41と、第1の空間41より基板2側であって、第1の空間41より広い第2の空間42と、第1の空間41と第2の空間42との間に設けられた段差43とを有しているとともに、金属ピン53は、段差43に引っ掛かるための引っ掛かり部5aを、中途に有することが好ましい。このような構成の場合には、金属ピン53に多少の力が加わったとしても、金属ピン53の引っ掛かり部5aが段差43に引っ掛かるため、金属ピン53が貫通孔2a、4aから抜けにくくなるので好ましい。
【0020】
また、図6に示す例のように、金属ピン53は、先端部に、基板2の第2主面2cに引っ掛かるための引っ掛かり部5aを有していることが好ましい。このような場合には、樹脂成形体4および基板2の貫通孔2aの内径を大きくすることなく、引っ掛かり部5aが基板2に引っ掛かることによる強固な接合力を得ることができるからである。
【0021】
次に、図2に示す例の電子装置1と、図12に示す例の従来例の電子装置100との寸法
の比較を行なう。
【0022】
まず、図2に示す例の電子装置1においては、金属ピン53の直径は、0.6mmであり、
金属ピン53の外周と第1および第2貫通孔2a、4aの内周との間には、0.05mmの隙間がある。すなわち、第1および第2貫通孔2a、4aの内径は、0.7mmである。なお、
前述した接着材7が、金属ピン53と第1および第2貫通孔2a、4aとの間に入り込むには、0.05mmの隙間があれば十分である。
【0023】
次に、図12に示す例の従来例の電子装置100は、金属ピン105と、この金属ピン105が
挿入されるピン孔101aを有する雌型コネクタ101とを含む。この雌型コネクタ101が、樹
脂成形体104および基板102の貫通孔102aの内壁に固定して設けられている。なお、金属
ピン105のピン孔101aへの接合は、金具103によってなされている。金具103は、一端部がピン孔101a内壁の一方に取り付けられており、他端部が金属ピン105をピン孔101a内壁
の他方に押さえつける構成となっている。ここで、金属ピン105の直径は、0.6mmである。また、雌型コネクタ101の肉厚は0.3mmであり、ピン孔101aの径は1.2mmである。
【0024】
以上のことから、図2に示す例の電子装置1において、樹脂成形体4および基板2の貫通孔2aの内径は、0.7mmであるのに対して、図12に示す例の従来例の電子装置100において、樹脂成形体104および基板102の貫通孔102aの内径は、1.8mmであった。よって、図2に示す例の電子装置1の方が、従来例の電子装置100より1.1mm小型化することができている。
【0025】
この結果より、金属ピン105を固定する機能を果たす金具103が、図2に示す例の電子装置1では、不要になったからであることが分かる。つまり、図2に示す例の電子装置1および雌型コネクタ付き配線基板9は、構造を簡素化することによって、小型化できることが明らかである。
【0026】
次に、図7を用いて、複数の金属ピン53を有する電子装置1を説明する。図7に示す例においては、樹脂成形体4は、複数の金属ピン53を挿入するための複数の第2貫通孔4aと、複数のケーブルを収納しておく収納部4bと、各種電子部品を収納するための凹部4cとを有している。なお、図7においては、基板2が図示されていないが、実際の基板2は、第2貫通孔4aに連通するような複数の第1貫通孔2aを有している。基板2は、複数の金属ピン53を、その複数の第1貫通孔2aに貫通させるようにして、樹脂成形体4に載せられる。なお、この基板2の、凹部4c側に実装された電子部品が大きくても、凹部4cに収納されることとなる。よって、寸法の大きい電子部品であっても、樹脂成形体4で覆うことができるので、耐衝撃性を向上させることができるので好ましい。
【0027】
また、図7に示した例においては、径の大きい金属ピン53と、径の小さい金属ピン53とで、列を分けて樹脂成形体4に挿入しているが、図8に示すように、径の大小で列を分けず、全ての金属ピン53を一列に並べて樹脂成形体4に挿入してもよい。なお、図8に示す例においては、第1貫通孔2aを複数有する基板2が、樹脂成形体4上に載せられている。
【0028】
なお、本発明の電子装置1は、通常は、図7および図8に示す例のように、複数の金属ピン53を有するものとして使用されることが一般的である。図2は、図7および図8の実施例の拡大図的な位置づけである。
【0029】
なお、本発明は上述した実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更,改良等が可能である。
【0030】
図9に示す例においては、金属ピン53は、径が先端に向かって小さくなっている第1の傾斜部を有しており、樹脂成形体4の第2貫通孔4aの内径が金属ピン53の先端に向かって小さくなっている第2の傾斜部を有しており、金属ピン53は、第1の傾斜部を第2の傾斜部に合わせるようにして第1および第2貫通孔2a、4aに挿入されている。このような構成によって、金属ピン53の外周と、樹脂成形体4の第2貫通孔4aの内周との間には、強力な摩擦力が生じるので、金属ピン53は第2貫通孔4aから抜けにくくなるので好ましい。
【0031】
図10に示す例においては、金属ピン53の外周に、先端と逆側に開口するような切込み
が設けられており、この切込みの開口に接着材7が入り込んでいる。このような構成によって、金属ピン53を第2貫通孔4aから抜こうとした際に、金属ピン53の外周の切込みが接着材7に引っかかることによって、金属ピン53が第2貫通孔4aから抜けにくくなるので好ましい。
【0032】
図11に示す例においては、金属ピン53の外周に引っかかり部5aが設けられており、第2貫通孔4aに接着材7が充填されている。このような構成によって、金属ピン53を第2貫通孔4aから抜こうとした際に、金属ピン53の外周の引っかかり部5aが接着材7に引っかかることによって、金属ピン53が第2貫通孔4aから抜けにくくなるので好ましい。
【符号の説明】
【0033】
1:電子装置
2:基板
2a:第1貫通孔
2b:第1主面
2c:第2主面
3:電極
4:樹脂成形体
4a:第2貫通孔
41:第1の空間
42:第2の空間
43:段差
53:金属ピン
5a:引っ掛かり部
6:導電性接着材
7:接着材
9:雌型コネクタ付き配線基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1貫通孔を有している基板と、
該基板の前記第1貫通孔の開口周辺、および、前記第1貫通孔の内壁の少なくとも一方に設けられた電極と、
第2貫通孔を有しており、該第2貫通孔が前記第1貫通孔に連通するように前記基板に設けられた樹脂成形体とを
有していることを特徴とする雌型コネクタ付き配線基板。
【請求項2】
請求項1に記載の雌型コネクタ付き配線基板と、
前記第1貫通孔および前記第2貫通孔を貫通しており、端部が導電性接着材を介して前記電極に取り付けられた金属ピンとを、
有していることを特徴とする電子装置。
【請求項3】
前記電極は、前記基板の第1主面の前記貫通孔の開口周辺から、前記貫通孔の内壁を経て、前記基板の第2主面の前記貫通孔の開口周辺にかけて設けられていることを特徴とする請求項2に記載の電子装置。
【請求項4】
前記第2貫通孔が、
第1の空間と、
該第1の空間より前記基板側であって、前記第1の空間より広い第2の空間と、
前記第1の空間と前記第2の空間との間に設けられた段差とを
有しているとともに、
前記金属ピンは、前記段差に引っ掛かるための引っ掛かり部を中途に有することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の電子装置。
【請求項5】
金属ピンは、先端部に、基板の第2主面に引っ掛かるための引っ掛かり部を有していることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の電子装置。
【請求項6】
前記金属ピンと、前記第2貫通孔の内壁とは、接着材によって接着されていることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の電子装置。
【請求項7】
前記接着材は、弾性を有する樹脂からなることを特徴とする請求項2〜6のいずれかに記載の電子装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−94756(P2012−94756A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−242101(P2010−242101)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】