説明

離型シート及びその製造方法

【課題】優れた離型性、帯電防止性を発揮することで、様々な粘着材料に対して適用でき、しかも剥離面に静電気を発生させ難い離型シートを提供することを目的とし、併せてその離型シートを環境面や作業効率に配慮しながら低コストで製造する方法を提供すること。
【解決手段】基材上に機能層が設けられた離型シートであって、機能層中に、シリコーン系化合物と酸化スズ系化合物とが機能層全体に対し合計で80質量%以上含有され、さらにシリコーン系化合物100質量部に対し酸化スズ系化合物が10〜200質量部含有されている離型シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離型シートとその製法に関する。詳しくは、離型性と帯電防止性とに優れる離型シートと、その好ましい製造方法とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
離型シートは、粘着材料を保護する材料としては勿論、ポリウレタン樹脂、ポリアクリル樹脂などをキャストする際の製膜工程用フィルム、積層セラミックコンデンサのグリーンシート成型用工程フィルムなど、家庭内、産業界を問わず様々な場面で使用されている。
【0003】
とりわけ粘着材料をシート状に加工した粘着シートは、用途も多岐に渡り、それに応じて、離型シートもその保護材料として、もしくは粘着シート製造時のキャリアとして利用されている。
【0004】
このように、離型シートは様々な場面で使用されるものであるが、各種離型シートには以下のような問題が共通して存在する。すなわち、離型シート上に粘着材料を積層したシート状物から離型シートを剥離すると、粘着材料の剥離面に静電気が発生し、大気中のごみ、塵、埃などの異物が剥離面に付着する。そうすると、それが原因で粘着材料の粘着力が低下し、ひいては粘着材料を使用した製品に欠陥が出るという問題がある。そこで、従前より、離型シートに帯電防止性を付与する試みがある。
【0005】
具体的には、特許文献1にあるように、基材となるフィルムの表面に予め静電防止層を形成しておく方法や、特許文献2にあるように、機能層(離型層)の組成を工夫することで、離型シートに帯電防止性を付与する方法などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−1293号公報
【特許文献2】特開2010−158816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献1記載の発明では、静電防止層と離型層とを別々に形成する必要があるため、工程数増加に伴い製造コストが上昇するという点で問題がある。
【0008】
一方、特許文献2記載の発明では、帯電防止性を有する機能層を一工程で形成できる点で、特許文献1記載の発明と比べ製造コスト削減に効果が期待できる。しかしながら、同発明では、帯電防止性を具現する一方で離型性が低減するという問題があり、両特性を共に高めるには、依然として検討の余地が残るのが実情である。
【0009】
本発明は、上記のような従来技術の欠点を解消するものであり、優れた離型性、帯電防止性を発揮することで、様々な粘着材料に対して適用でき、しかも剥離面に静電気を発生させ難い離型シートを提供することを目的とし、併せてその離型シートを環境面や作業効率に配慮しながら低コストで製造する方法を提供することを技術的な課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、シリコーン系化合物と酸化スズ系化合物とを併用すれば、離型性と同時に帯電防止性にも優れる離型シートが提供でき、さらに、この離型シートを低コストで製造できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の要旨は、以下の通りである。
【0011】
(1)基材上に機能層が設けられた離型シートであって、機能層中に、シリコーン系化合物と酸化スズ系化合物とが機能層全体に対し合計で80質量%以上含有され、さらにシリコーン系化合物100質量部に対し酸化スズ系化合物が10〜200質量部含有されていることを特徴とする離型シート。
(2)粘着材料に対して使用されるものであり、アクリル系粘着剤を用いてなる粘着材料を適用したときの、機能層と当該粘着材料との間の剥離強度が0.5N/cm以下であることを特徴とする上記(1)記載の離型シート。
(3)機能層の表面抵抗率が1012Ω/□以下であることを特徴とする上記(1)又は(2)記載の離型シート。
(4)シリコーン系化合物と酸化スズ系化合物とを全固形分中に80質量%以上含有すると共に、シリコーン系化合物100質量部に対し酸化スズ系化合物を10〜200質量部含有する水性分散体を基材上に塗布し、乾燥することを特徴とする離型シートの製造方法。
(5)乾燥温度が100℃以上であることを特徴とする上記(4)記載の離型シートの製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、離型性及び帯電防止性に優れる離型シートが提供できる。また、本発明の離型シートは、様々な粘着材料に対して適用でき、その際、離型シートを簡単に剥離でき、しかも、剥離後、粘着材料の剥離面に静電気が発生し難く、大気中のごみ、塵、埃などの異物が剥離面に付着し難い。
【0013】
そして、本発明の製造方法によれば、上記離型シートを環境面や作業効率に配慮しながら低コストで製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0015】
本発明の離型シートは、基材上に機能層を備えるものであり、機能層にはシリコーン系化合物及び酸化スズ系化合物が含まれている。
【0016】
本発明におけるシリコーン系化合物としては、機能層の離型性向上に資するものであれば、どのようなものでも使用できる。シリコーン系化合物の種類としては、具体的に付加反応型、縮合反応型、紫外線硬化型、電子線硬化型などがあげられ、中でも剥離強度や品質の調整など離型シートの設計に幅広く活用できる点から、付加反応型のものが好ましく用いられる。付加反応型のシリコーン系化合物としては、従来公知の熱硬化付加反応型シリコーン樹脂が使用でき、例えば、分子中にアルケニル基を有するポリオルガノシロキサンなどが使用できる。具体的には、ビニル基を有するポリジメチルシロキサン、ヘキセニル基を有するポリジメチルシロキサンなどがあげられ、必要に応じてこれらを混合して用いてもよい。
【0017】
シリコーン系化合物の使用にあたっては、そのままの状態、すなわち無溶剤型の状態で使用してもよいが、一般には、シリコーン系化合物をトルエンなどの有機溶剤に希釈する、もしくは水を用いてエマルション化するなどして用いるのが好ましく、特に酸化スズ系化合物との混合安定性の観点から、シリコーン系化合物をエマルション化して用いるのが好ましい(以下、これをシリコーンエマルションという)。なお、シリコーン系化合物としては、市販のものを使用してもよく、例えば、付加反応型のシリコーン系化合物をエマルション化したものとして、信越化学社製「KM−3951」、「KM−768」など、旭化成ワッカーシリコーン社製「430」、「440」、「480」、「400E」など、荒川化学社製「902」、「909」などがある。
【0018】
シリコーン系化合物を使用する際には、必要に応じて、触媒、架橋剤、付加反応抑制剤、剥離調整剤、密着向上剤などを併用してもよく、後に紫外線を照射して機能層を形成する場合には光開始剤を併用してもよい。本発明では、一般に触媒、架橋剤を併用するのが好ましく、例えば、触媒を併用する際の一態様として、上記した、分子中にアルケニル基を有するポリオルガノシロキサンとハイドロジェンシロキサンとを白金系触媒を用いて加熱硬化させる態様が採用できる。
【0019】
他方、本発明における酸化スズ系化合物としては、例えば、酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ、酸化スズドープインジウムなどが使用できる。
【0020】
酸化スズ系化合物は、粒子状のものが好ましく、粒子径としては、数平均粒子径に換算して200nm以下が好ましい。粒子径がこの範囲を超えると、機能層の透明性に加え、後述する、酸化スズ系化合物を含有する水性分散体(酸化スズ水性分散体)の安定性も低下し易くなる。なお、酸化スズ系化合物の数平均粒子径は、動的光散乱法により測定される。
【0021】
酸化スズ系化合物の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、金属スズやスズ化合物を加水分解又は熱加水分解する方法、スズイオンを含む酸性溶液をアルカリ加水分解する方法、スズイオンを含む溶液をイオン交換膜やイオン交換樹脂によりイオン交換する方法などが採用できる。
【0022】
そして、酸化スズ系化合物の場合も市販のものを使用してもよい。例えば、通常の酸化スズ系化合物を含有する水性分散体として、ユニチカ社製「AS11T」などがあり、アンチモンドープ酸化スズ系化合物を含有する水性分散体として、石原産業社製「SN−100D」などがある。また、酸化スズドープインジウム系化合物として、シーアイ化成社製「ITO」などがある。
【0023】
上記シリコーン系化合物及び酸化スズ系化合物は、機能層中に含有される。そして、両化合物の含有量は、機能層全体に対し合計で80質量%以上である必要がある。合計の含有量がこの範囲を外れると、機能層における両化合物の絶対量が著しく減少するため、離型性、帯電防止性を同時に発現する離型シートが得られなくなる。
【0024】
さらに、機能層における両化合物の使用比率としては、シリコーン系化合物100質量部に対し酸化スズ系化合物が10〜200質量部含有されている必要があり、同じく50〜200質量部含有されているのが好ましく、70〜150質量部含有されているのがより好ましい。酸化スズ系化合物の含有量が、10質量部未満になると、離型シートが帯電防止性を発現しなくなり、一方、200質量部を超えると、酸化スズ系化合物が相対的に増える結果、シリコーン系化合物の硬化反応が阻害され、機能層と基材との密着性が低下することに加え離型シートの離型性も大幅に低下する。
【0025】
本発明における機能層には、上記のようにシリコーン系化合物と酸化スズ系化合物とが所定量含有されている。本発明では、この要件を満足さえすれば、機能層に他のいかなる組成物が含有されていてもよいが、好ましくは離型シートの離型性、帯電防止性を低減させ難いもの選んで使用する。他の組成物としては、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂などがあげられる。また、触媒、架橋剤、付加反応抑制剤、剥離調整剤、密着向上剤滑剤、顔料、染料、紫外線吸収剤、レベリング剤、消泡剤、ワキ防止剤、分散剤など各種添加剤を他の組成物として使用してもよい。
【0026】
この点、本発明では、シリコーン系化合物と酸化スズ系化合物と各種添加剤とから機能層を形成するのが好ましく、この場合の添加剤として、触媒、架橋剤が好適であり、架橋剤がより好適である。
【0027】
機能層を構成する組成には、以上のものが採用できるが、他方、機能層の厚みとしては、0.01〜5μmが好ましく、0.05〜1μmがより好ましく、0.1〜0.5μmがさらに好ましく、0.1〜0.3μmが特に好ましい。厚みが0.01μm未満になると、均一な機能層の形成が困難となり易いばかりか、離型シートが離型性並びに帯電防止性を十分に発揮し難くなる。一方、5μmを超えると、機能層の形成自体が困難となり易いばかりか、製造コストが上がり、機能層と基材との密着性も低下する傾向にあり、いずれも好ましくない。
【0028】
そして、本発明では、上記機能層を基材上に形成する。基材としては、離型シートの形成に適したものであればどのようなものでも使用できる。具体的には、樹脂材料、紙、合成紙、布、金属材料、ガラス材料などを適宜組み合わせて構成する。
【0029】
この場合、樹脂材料としては、一般に熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリ乳酸(PLA)などのポリエステル樹脂、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ナイロン6、ポリ−m−キシリレンアジパミド(MXD6ナイロン)などのポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリルニトリル樹脂、ポリイミド樹脂及びこれらの樹脂の複層体(例えば、ナイロン6/MXD6ナイロン/ナイロン6、ナイロン6/エチレン−ビニルアルコール共重合体/ナイロン6など)や混合体などが使用できる。
【0030】
紙としては、和紙、クラフト紙、ライナー紙、アート紙、コート紙、カートン紙、グラシン紙、セミグラシン紙など使用ができる。紙には、目止め層などが設けてあってもよい。
【0031】
合成紙としては、単層構造のものでも多層構造でもよく、その構造は特に限定されない。多層構造の場合、例えば、基底層と表面層との2層構造、基底層の表裏面に表面層が存在する3層構造、基底層と表面層との間に樹脂フィルム層などが存在する多層構造などがあげられる。合成紙における各層は、無機又は有機系のフィラーが含まれていてよい。また、各層は、微細なボイドを多数有する微多孔性のものであってもよい。
【0032】
布としては、各種の合成繊維、天然繊維又は再生繊維からなる不織布、織編物などが使用できる。
【0033】
そして、金属材料としては、例えば、アルミ箔、銅箔などの金属箔の他、アルミ板、銅板などの金属板が使用でき、ガラス材料としては、ガラス板の他、ガラス繊維からなる布などが使用できる。
【0034】
上記材料のうち、基材を構成する材料としては、特に樹脂材料が好適であり、中でも機械的特性及び熱的特性の点から熱可塑性樹脂材料をフィルム状に成形した熱可塑性樹脂フィルムが好適であり、特に価格の点でPETフィルムが好ましい。
【0035】
熱可塑性樹脂フィルムには、各種の添加剤、安定剤、可塑剤、滑剤、酸化防止剤などが含まれていてもよい。また、熱可塑性樹脂フィルムには、機能層との密着性を向上させる観点から、例えば、前処理として、フィルム表面をコロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、薬品処理、溶剤処理などしてよいし、シリカ、アルミナなどを表面に蒸着してもよい。さらに、熱可塑性樹脂フィルムを必要に応じて延伸処理してもよい。そして、フィルム上には、同じく必要に応じてバリア層、易接着層、紫外線吸収層などを設けてもよい。
【0036】
本発明における機能層には、酸化スズ系化合物が含有されているが、基材にも帯電防止剤を含有させてもよく、必要に応じて機能層ではない別の帯電防止層を設けてもよい。
【0037】
基材を構成する材料には、以上のものが採用できるが、他方、基材の厚みとしては、特に限定されるものでないが、実用上の点で1〜1000μmが好ましく、1〜500μmがより好ましく、10〜200μmがさらに好ましく、12〜150μmが特に好ましい。
【0038】
本発明では、以上のように基材上に機能層を設ける。この場合、機能層は基材上の少なくとも一方にさえ設けられていればよく、必要に応じて基材両面上に機能層を設けてもよい。例えば、基材両面上に離型性の異なる機能層をそれぞれ設けると、離型シートに粘着材料を貼りロール状に巻き上げた後、これを引き出す際に粘着材料に起因するブロッキングを効果的に抑えることもできる。この点、引き出しが円滑であれば、被着体への貼り付けも円滑であり、貼り付け後も離型シートを円滑に剥離できることになる。
【0039】
本発明の離型シートは、このように基材上に機能層が設けられ、機能層中にシリコーン系化合物と酸化スズ系化合物とが所定量含有されている。これにより、本発明の離型シートは、優れた離型性と帯電防止性とを発揮する。ここで、具体的に両特性の指標として、前者では特定の粘着材料を使用したときの剥離強度を、後者では表面抵抗率をそれぞれ採用する。
【0040】
まず、離型性の指標には、アクリル系粘着剤を用いてなる粘着材料を適用したときの、機能層と当該粘着材料との間の剥離強度を採用する。本発明では、かかる剥離強度として0.5N/cm以下が好ましく、0.4N/cm以下がより好ましく、0.3N/cm以下がさらに好ましく、0.2N/cm以下が特に好ましい。剥離強度が0.5N/cmを超えると、離型シートとしての適性を欠く傾向にあり、好ましくない。なお、当該指標においては、粘着材料としてアクリル系粘着剤を使用する。これは、離型性の評価において、アクリル系粘着剤が最も一般的に利用されているからである。
【0041】
一方、帯電防止性の指標には、機能層の表面抵抗率を採用する。本発明では、かかる表面抵抗率として1012Ω/□以下が好ましく、1011Ω/□がより好ましく、1010Ω/□以下がさらに好ましい。表面抵抗率が1012Ω/□を超えると、離型シートが帯電防止性を十分に発揮し難くなり、その結果、大気中のごみ、塵、埃などが粘着材料の剥離面に付着することで粘着材料の粘着力が低下し、ひいては粘着材料を使用した製品に欠陥が出ることがあり、好ましくない。
【0042】
次に、本発明の離型シートを製造する好ましい方法について説明する。
【0043】
本発明の離型シートを得るには、まずシリコーン系化合物と酸化スズ系化合物とを含有する液状物を作製し、次に予め用意した基材にこれを塗布、乾燥すればよい。この方法を採用することで、機能層の厚みを均一にでき、離型シートの大量生産が可能となる。
【0044】
かかる液状物を作製する方法としては、各成分が液状物中に均一に分散される方法であれば、特に限定されない。例えば、シリコーン系化合物を含む分散体と、酸化スズ系化合物を含む分散体とを混合する方法、シリコーン系化合物と酸化スズ系化合物とを同一媒体中に分散させる方法などが採用でき、特に本発明では前者の方法が好ましい。そして、分散にあたり乳化剤を使用してもよいが、乳化剤は後に機能層に残留して層の性能を低減させることがあるので、使用量を可能な限り抑えるか又は使用しないことが好ましい。そして、液状物において、シリコーン系化合物と酸化スズ系化合物とを全固形分中に合計で80質量%以上含有させると共に、前者100質量部に対し後者を10〜200質量部含有させる点は、前述の通りである。
【0045】
液状物を構成する媒体としては、各成分を安定的に分散できるものであれば、特に限定されないが、一般には水、有機溶剤が使用される。中でも水又は水を主体としてこれに親水性有機溶剤を適量加えた水性媒体が、環境面及び作業効率の観点から好ましい。
【0046】
ここで、親水性有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec−アミルアルコール、tert−アミルアルコール、1−エチル−1−プロパノール、2−メチル−1−ブタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルなどのアルコール類、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、酢酸メチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−tert−ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジメチルなどのエステル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジアセトンアルコール、アセトニトリルなどが使用できる。
【0047】
さらに、親水性有機溶剤を使用することは、液状物のぬれ性を向上させる点でも有効であり、ひいては塗布時のハジキを抑える点でも有効である。
【0048】
液状物中の固形分濃度としては、塗布条件の他、機能層の厚み、性能などを考慮して適宜決定してよく、特に限定されるものではないが、液状物の粘度を適度に保ちかつ性能に優れる機能層を形成する観点から、1〜50質量%が好ましく、3〜20質量%がより好ましい。
【0049】
液状物には、必要に応じて任意の助剤を含有させてもよく、例えば、架橋剤、レベリング剤、消泡剤、ワキ防止剤、顔料分散剤、紫外線吸収剤などの添加剤、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラックなどの顔料、染料などを含有させてもよい。
【0050】
このような液状物を基材に塗布する方法としては、任意の方法が採用できるが、通常は、基材上に均一な層を形成できる方法が採用される。具体的には、グラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、リップコーティング、エアナイフコーティング、カーテンフローコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング、はけ塗り法などが採用される。なお、塗布後は、必要に応じて室温付近でこれをセッティングしてもよい。
【0051】
液状物を基材上に塗布した後は、これを乾燥する。これにより、厚みが均一な機能層を基材上に密着させて形成できる。乾燥方法としては、自然乾燥する、テンターを用いて加熱処理する、恒温槽に所定時間投入するなどの方法が採用できる。
【0052】
乾燥温度としては、シリコーン系化合物の硬化を促進させる観点から、高温が好ましく、具体的には100℃以上が好ましい。ただ、温度をあまり高くし過ぎると、基材を熱で損傷させることがあるため、一般には120℃〜170℃が好ましく、140〜150℃がより好ましい。乾燥温度が100℃未満になると、シリコーン系化合物の硬化が進み難く、結果、基材と機能層との密着性が低下し、同時に離型シートとしての離型性も低下する傾向にあり、好ましくない。
【0053】
乾燥時間としては、同じくシリコーン系化合物の硬化を促進させる観点から、15秒以上が好ましく、30秒以上がより好ましい。乾燥温度が15秒未満になると、上記同様シリコーン系化合物が硬化し難くなるため、好ましくない。
【0054】
乾燥後は、必要に応じて離型シートを熱処理してもよい。
【0055】
本発明の離型シートは、離型性に優れていることから、様々な粘着材料に対して適用できる。
【0056】
粘着材料としては、粘着シート、接着シート、粘着テープ、接着テープなどがあげられ、基材に粘着剤が積層されたもの、粘着剤自体をシート状にしたものでもよい。粘着材料における基材の種類、粘着剤の組成は特に限定されない。この点、基材としては、前述した紙、布、樹脂材料などが一般に好ましく、粘着剤としては、アクリル系粘着剤、天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤などが一般に好ましく、アクリル系粘着剤が特に好ましい。
【0057】
また、粘着剤には、必要に応じて、ロジン系、クマロン−インデン系、テルペン系、石油系、スチレン系、フェノール系、キシレン系などの粘着付与剤を含有させてもよい。
【0058】
そして、離型シートを粘着材料に対して適用する方法としては、特に限定されないが、具体的には、粘着剤を溶解した液状物などを離型シート上に塗布し、乾燥することで離型シート上に粘着材料を積層する方法や、基材上に粘着剤を備えた粘着材料と離型シートとを貼り合せる方法などが例示できる。さらに、剥離強度を調整した2種の離型シートを、粘着材料の両面にそれぞれ貼り合わせ、粘着材料を挟んだような態様で使用することも可能である。なお、粘着材料の両面に離型シートを貼り合わせた場合には、例えば、使用時に一方の離型シートを剥がして被着体に貼り合わせ、その後、他方の離型シートを剥がせばよい。
【実施例】
【0059】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0060】
(1)機能層の厚み
離型シート全体の厚みを接触式膜厚計により測定し、その測定値から基材の厚みを減じることにより求めた。
(2)剥離強度
離型シートの機能層側に、巾50mm、長さ150mmのポリエステル粘着テープ(日東電工社製、「No.31B(商品名)」、アクリル系粘着剤使用」)をゴムロールで圧着し、その後、23℃の室内で一日保存し、剥離強度測定用試料とした。そして、25℃の恒温室内において、引張試験機(インテスコ社製、精密万能材料試験機、「2020型(商品名)」)を用いて、当該剥離強度測定用試料における、粘着テープと離型シートとの剥離強度を測定した。条件は、剥離角度180℃、剥離速度300mm/分とした。
(3)表面抵抗率
JIS K6911に基づき、デジタル超高抵抗/微小電流計(株式会社アドバンテスト製、「R8340(商品名)」)を用いて、温度23℃、湿度65%雰囲気下で離型シートにおける機能層の表面抵抗率を測定した。
【0061】
(実施例1)
シリコーンエマルション(信越化学社製、「KM−3951(商品名)」、固形分濃度40質量%)と、酸化スズ超微粒子水性分散体(ユニチカ社製、「AS11T(商品名)」、固形分濃度11.5質量%、数平均粒子径9.8nm)とを用意し、シリコーン系化合物100質量部に対して、酸化スズ超微粒子が100質量部含有されるように両者を混合した。そして、水及びイソプロパノールを4:1の割合で添加して全体の固形分濃度を10質量%に調整し、十分に撹拌した。その後、白金系触媒(信越化学社製、「CAT−PM−10A(商品名)」)を、シリコーン系化合物100質量部に対して2.5質量部添加し、シリコーン系化合物と酸化スズ系化合物と白金系触媒とを含有する水性分散体を得た。
【0062】
次に、二軸延伸PETフィルム(ユニチカ社製、「エンブレットS−50(商品名)」、厚さ50μm)のコロナ処理面に、マイヤーバーを用いて上記水性分散体を塗布し、後に140℃で30秒間乾燥して、フィルム上に0.1μmの機能層を形成し、離型シートとなした。
【0063】
(実施例2、3、比較例3、4)
シリコーン系化合物100質量部に対して、酸化スズ超微粒子がそれぞれ50質量部(実施例2)、200質量部(実施例3)、5質量部(比較例3)、300質量部(比較例4)含有されるように両分散体を混合した以外は、実施例1同様に行って2種の離型シート(実施例2、3)及び2種の積層シート(比較例3、4)を得た。
【0064】
(実施例4)
「KM−3951(商品名)」に代えてシリコーンエマルション(旭化成ワッカーシリコーン社製、「480(商品名)」)を用い、さらに、「CAT−PM−10A(商品名)」に代えて白金系触媒(旭化成ワッカーシリコーン社製、「V72(商品名)」)を用いた以外は、実施例1と同様に行って離型シートを得た。
【0065】
(実施例5、6)
シリコーン系化合物100質量部に対して、酸化スズ超微粒子がそれぞれ50質量部(実施例5)、200質量部(実施例6)含有されるように両分散体を混合した以外は、実施例4同様に行って2種の離型シートを得た。
【0066】
(実施例7)
「AS11T(商品名)」に代えてアンチモンドープ酸化スズ超微粒子分散体(石原産業社製、「SN−100D(商品名)」、固形分濃度30.0質量%、数平均粒子径60nm)を用いた以外は、実施例1と同様に行って離型シートを得た。
【0067】
(実施例8)
シリコーン系化合物100質量部に対して、酸化スズ超微粒子が10質量部含有されるように混合した以外は、実施例7と同様に行って離型シートを得た。
【0068】
(比較例1)
「KM−3951(商品名)」に水及びイソプロパノールを4:1の割合で添加して全体の固形分濃度を10質量%に調整し、十分に撹拌した。その後、「CAT−PM−10A(商品名)」を、シリコーン系化合物100質量部に対して2.5質量部添加し、シリコーン系化合物と白金系触媒とを含有する水性分散体を得た。
【0069】
以降は、得られた水性分散体を用いて、実施例1と同じ基材に対し同条件でコーティング、乾燥を行い、積層シートを得た。
【0070】
(比較例2)
「AS11T(商品名)」にイソプロパノールを添加して全体の固形分濃度を10質量%に調整し、十分に撹拌した。以降は、得られた水性分散体を用いて、実施例1と同じ基材に対し同条件でコーティング、乾燥を行い、積層シートを得た。
【0071】
上記実施例で得られた離型シート及び比較例で得られた積層シートの評価結果を表1に示す。
【0072】
【表1】

【0073】
実施例1〜8で得られた離型シートは、離型性及び帯電防止性に優れるものであった。
【0074】
これに対し、酸化スズ系化合物を使用していない比較例1並びに同化合物の含有量が少ない比較例3にかかる各積層シートは、いずれも離型性には優れるものの帯電防止性には劣るものであった。一方、シリコーン系化合物を使用していない比較例2並びに同化合物の含有量が相対的に少ない比較例4にかかる各積層シートは、いずれも帯電防止性には優れるものの離型性には劣るものであった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に機能層が設けられた離型シートであって、機能層中に、シリコーン系化合物と酸化スズ系化合物とが機能層全体に対し合計で80質量%以上含有され、さらにシリコーン系化合物100質量部に対し酸化スズ系化合物が10〜200質量部含有されていることを特徴とする離型シート。
【請求項2】
粘着材料に対して使用されるものであり、アクリル系粘着剤を用いてなる粘着材料を適用したときの、機能層と当該粘着材料との間の剥離強度が0.5N/cm以下であることを特徴とする請求項1記載の離型シート。
【請求項3】
機能層の表面抵抗率が1012Ω/□以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の離型シート。
【請求項4】
シリコーン系化合物と酸化スズ系化合物とを全固形分中に80質量%以上含有すると共に、シリコーン系化合物100質量部に対し酸化スズ系化合物を10〜200質量部含有する水性分散体を基材上に塗布し、乾燥することを特徴とする離型シートの製造方法。
【請求項5】
乾燥温度が100℃以上であることを特徴とする請求項4記載の離型シートの製造方法。


【公開番号】特開2013−78849(P2013−78849A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218470(P2011−218470)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】