説明

離型フィルム及びそれを用いたLEDパッケージの製造方法

【課題】金型及び成形品からの離型性に優れているとともに、複雑な形状の金型に対しても優れた追従性を示し、かつ破れ難い離型フィルムを提供する。
【解決手段】ポリエステル単位とポリエーテル単位を有するブロック共重合体を含む基材層と、基材層の少なくとも一方の表面上に配置される、4−メチル−1−ペンテン系重合体を含む表面層と、を備えた離型フィルムである。この離型フィルムの120℃における貯蔵弾性率E’は、1.00×10〜8.00×10Paである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LEDパッケージをはじめとする金型を用いた樹脂成形品の製造に用いられる離型フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(以下、単に「LED」とも記す)を含む半導体チップは、通常、封止樹脂で封止された半導体パッケージと呼ばれる成形品として基板上に実装される。このような半導体パッケージは、例えば、半導体チップを配置した金型に封止樹脂を注入し、注入された封止樹脂を硬化成形することで製造される。
【0003】
近年、半導体パッケージの小型軽量化に伴い、封止樹脂の量を減らすことが検討されている。また、封止樹脂の量を減らした場合であっても半導体チップと封止樹脂とが強固に接着されるように、封止樹脂に含有させる離型剤の量を減らすことが検討されている。このため、硬化成形後の封止樹脂を金型から容易に離型させるべく、金型内面と封止樹脂との間に離型フィルムを配置する方法が採用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
なお、樹脂材料の金型成形に用いられる離型フィルム等として、例えば、引用文献2〜4に開示されたものが知られている。引用文献2には、4−メチル−1−ペンテン樹脂からなる表面層と、ポリエステルを含有するポリマーアロイからなる支持体層とを備えた離型フィルムが記載されている。引用文献3には、4−メチル−1−ペンテン共重合体からなる樹脂層と、ポリオレフィン又はポリアミドからなる樹脂層が積層された多層インフレーションフィルムが記載されている。また、引用文献4には、4−メチル−1−ペンテン系重合体樹脂からなる表面層と、ポリアミド樹脂からなる基材層とを備えた離型フィルムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4096659号公報
【特許文献2】特開2000−218752号公報
【特許文献3】特開2001−62893号公報
【特許文献4】特開2004−82717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、LEDの封止体(パッケージ)を製造するに際して使用される金型は、通常の半導体パッケージを製造するための金型に比してギャップが大きく、形状が複雑である場合が多い。このため、引用文献2〜4等に記載された離型フィルムをLEDパッケージを製造する際に使用すると、これらの離型フィルムは金型の形状に対する追従性が低いために、金型の微細な形状がパッケージに転写され難いという問題が生ずる場合がある。また、過度な圧力を負荷した場合には局所的な破れ等の不具合が生ずる場合もある。
【0007】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、金型及び成形品からの離型性に優れているとともに、複雑な形状の金型に対しても優れた追従性を示し、かつ破れ難い離型フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、離型性に優れた表面層と、結晶性の第一のポリエステルセグメント、及びポリエーテル部分を持った第二のポリエステルセグメントを有するブロック共重合体を含む、貯蔵弾性率が所定の数値範囲内である基材層と、を備えた積層構造とすることによって、上記課題を達成することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明によれば、以下に示す離型フィルムが提供される。
【0010】
[1]第一の芳香族ジカルボン酸又はそのエステルと脂肪族ジオールからなる第一のポリエステルセグメント、及び第二の芳香族ジカルボン酸又はそのエステルとポリエーテル型ジオールからなる第二のポリエステルセグメントを有するブロック共重合体を含む基材層と、前記基材層の少なくとも一方の表面上に配置される、4−メチル−1−ペンテン系重合体を含む表面層と、を備え、120℃における貯蔵弾性率E’が1.00×10〜8.00×10Paである離型フィルム。
【0011】
[2]前記基材層と前記表面層との間に配置される接着層を更に備える前記[1]に記載の離型フィルム。
【0012】
[3]120℃における破断伸びが1000%以上である前記[1]又は[2]に記載の離型フィルム。
【0013】
[4]前記表面層の23℃における弾性率が800〜1500MPaであり、前記基材層の23℃における弾性率が1000MPa以下である前記[1]〜[3]のいずれかに記載の離型フィルム。
【0014】
[5]120℃における弾性率が65MPa以下である前記[1]〜[4]のいずれかに記載の離型フィルム。
【0015】
[6]前記第一のポリエステルセグメントが、ポリエチレンテレフタレートセグメントとポリブチレンテレフタレートセグメントの少なくともいずれかである前記[1]〜[5]のいずれかに記載の離型フィルム。
【0016】
[7]前記ポリエーテル型ジオールが、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加重合体、及びエチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体からなる群より選択される少なくとも一種である前記[1]〜[6]のいずれかに記載の離型フィルム。
【0017】
[8]LEDパッケージを製造するために用いられる前記[1]〜[7]のいずれかに記載の離型フィルム。
【0018】
[9]前記[1]〜[8]のいずれかに記載の離型フィルムを成形用の金型に配置する工程と、前記離型フィルムを介して前記金型内に封止樹脂を充填するとともに、前記封入樹脂内に発光ダイオードを配置して型締めし、前記封止樹脂を硬化させてLEDパッケージを成形する工程と、成形された前記LEDパッケージを前記離型フィルムから離型させる工程と、を含むLEDパッケージの製造方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明の離型フィルムは、金型及び成形品からの離型性に優れているとともに、複雑な形状の金型に対しても優れた追従性を示し、かつ破れ難いものである。本発明の離型フィルムは、これらの優れた特性を生かし、LEDパッケージをはじめとする比較的複雑な形状を有する金型を用いた各種樹脂成形品を製造する工程で好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】金型に離型フィルムを配置した状態を模式的に示す断面図である。
【図2】金型内に封止樹脂を充填した状態を模式的に示す断面図である。
【図3】型締めして封止樹脂を硬化させる状態を模式的に示す断面図である。
【図4】型開きした状態を模式的に示す断面図である。
【図5】LEDパッケージの一例を模式的に示す断面図である。
【図6】金型追従性及び耐破れ性の評価方法を説明するための断面図である。
【図7】ポリエチレンシートを成形した状態の一例を模式的に示す断面図である。
【図8】成形品の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0022】
1.離型フィルム:
本発明の離型フィルムは、第一のポリエステルセグメント及び第二のポリエステルセグメントを有するブロック共重合体を含む基材層と、4−メチル−1−ペンテン系重合体を含む表面層とを備えた、積層構造を有するフィルムである。以下、本発明の離型フィルムの更なる詳細について説明する。
【0023】
(表面層)
表面層は、4−メチル−1−ペンテン系重合体により形成された層である。表面層は基材層の少なくとも一方の表面上に配置されていればよい。但し、基材層の両面に配置されていることが、離型フィルムの両面において優れた離型性が発揮される点で好ましい。
【0024】
4−メチル−1−ペンテン系重合体の具体例としては、4−メチル−1−ペンテンの単独重合体、及び4−メチル−1−ペンテンと4−メチル−1−ペンテン以外の炭素原子数2〜20のα−オレフィンとの共重合体を挙げることができる。α−オレフィンの具体例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等を挙げることができる。α−オレフィンの炭素数は7〜20であることが好ましく、8〜20であることが更に好ましく、10〜20であることが特に好ましい。これらのα−オレフィンは、一種単独で、又は二種以上を組み合せて使用することができる。
【0025】
4−メチル−1−ペンテン系重合体は、4−メチル−1−ペンテンから導かれる繰り返し単位を93質量%以上含むものであることが好ましく、93〜98質量%含むものであることが更に好ましく、94〜98質量%含むものであることが特に好ましい。また、4−メチル−1−ペンテン系重合体は、4−メチル−1−ペンテン以外のα−オレフィンから導かれる繰り返し単位を7質量%以下含むものであることが好ましく、2〜7質量%含むものであることが更に好ましく、2〜6質量%含むものであることが特に好ましい。4−メチル−1−ペンテン以外のα−オレフィンから導かれる繰り返し単位の含有割合が上記範囲内である4−メチル−1−ペンテン系重合体は、成形性及び剛性に優れている。
【0026】
ASTM D1238に準拠し、荷重5.0kg、温度260℃の条件で測定される4−メチル−1−ペンテン系重合体のメルトフローレート(MFR)は、通常0.5〜250g/10分であり、好ましくは1〜150g/10分である。MFRの値が上記範囲内である4−メチル−1−ペンテン系重合体は、成形性及び機械的強度特性に優れている。
【0027】
4−メチル−1−ペンテン系重合体は、例えば、チーグラ・ナッタ触媒やメタロセン系触媒等の周知の触媒を用いた従来公知の方法で製造することができる。また、結晶性を有する重合体が好ましく、アイソタクチック構造を有する重合体と、シンジオタクチック構造を有する重合体のいずれも使用することができる。但し、アイソタクチック構造を有する重合体が好ましく、入手も簡単である。また、適度な成形性を有するとともに、離型フィルムとしての使用に耐える強度を発揮し得るものであれば、立体規則性や分子量について特段の制限はない。4−メチル−1−ペンテン系重合体は、市販の樹脂をそのまま利用することも可能である。市販の樹脂の具体例としては、三井化学社製の商品名「TPX」を挙げることができる。
【0028】
表面層には、4−メチル−1−ペンテン系重合体以外にも、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて他の重合体(樹脂)を含有させることができる。また、表面層には、ポリオレフィンに一般的に配合される耐熱安定剤、耐候安定剤、発錆防止剤、耐銅害安定剤、帯電防止剤等の従来公知の添加剤を配合することができる。このような添加剤の配合量は、4−メチル−1−ペンテン系重合体100質量部に対して、通常、0.0001〜10質量部である。
【0029】
表面層の23℃における弾性率は、800〜1500MPaであることが好ましく、800〜1350MPaであることが更に好ましく、800〜1000MPaであることが特に好ましい。23℃における弾性率が上記範囲内である表面層とすることで、離型フィルム全体の120℃における貯蔵弾性率E’を所定の数値範囲内とすることが容易となる。
【0030】
表面層の厚さは、通常、5〜25μmであり、好ましくは5〜20μm、更に好ましくは10〜20μmである。表面層の厚さが上記範囲内であると、十分な剥離性が発揮されるとともに、基材層の特性を阻害し難く、優れた金型追従性と耐破れ性が発揮される。また、表面層の厚さを上記範囲内とすることで、離型フィルム全体の120℃における貯蔵弾性率E’を所定の数値範囲内とすることが容易となる。
【0031】
(基材層)
基材層は、第一のポリエステルセグメントと第二のポリエステルセグメントを有するブロック共重合体により形成された層である。第一のポリエステルセグメントは、第一の芳香族ジカルボン酸又はそのエステルと、脂肪族ジオールとからなるセグメントであり、形成される基材層の耐破れ性、剛性、及び硬度等の特性に寄与する結晶性の構成単位であると推測される。一方、第二のポリエステルセグメントは、第二の芳香族ジカルボン酸又はそのエステルと、ポリエーテル型ジオールとからなるセグメントであり、形成される基材層の金型追従性、伸び、及び柔軟性等の特性に寄与する構成単位であると推測される。即ち、特性の異なる二種類のポリエステルセグメントを有するブロック共重合体によって形成された基材層を用いることで、金型追従性と耐破れ性を兼ね備えた離型フィルムとすることができる。
【0032】
第一の芳香族ジカルボン酸の具体例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−スルホイソフタル酸等を挙げることができる。
【0033】
また、脂肪族ジオールの具体例としては、1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメチロール等を挙げることができる。なお、第一のポリエステルセグメントは、ポリエチレンテレフタレートセグメントとポリブチレンテレフタレートセグメントの少なくともいずれかであることが好ましい。また、第一のポリエステルセグメントは、これらの芳香族ジカルボン酸(又はそのエステル)及び脂肪族ジオールをそれぞれ二種以上併用した共重合ポリエステルセグメントであってもよい。
【0034】
第二の芳香族ジカルボン酸の具体例としては、前述の第一の芳香族ジカルボン酸と同様のものを上げることができる。なお、第一の芳香族ジカルボン酸と第二の芳香族ジカルボン酸は、同一であっても異なっていてもよい。ポリエーテル型ジオールの具体例としては、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体等を挙げることができる。なかでも、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加物が、得られるブロック共重合体の弾性特性が向上するために好ましい。
【0035】
基材層の23℃における弾性率は、1000MPa以下であることが好ましく、20〜1000MPaであることが更に好ましく、20〜250MPaであることが特に好ましい。23℃における弾性率が上記範囲内である基材層とすることで、離型フィルム全体の120℃における貯蔵弾性率E’を所定の数値範囲内とすることが容易となる。
【0036】
基材層の厚さは、通常、5〜40μmであり、好ましくは5〜25μm、更に好ましくは10〜25μmである。基材層の厚さが上記範囲内であると、優れた金型追従性と耐破れ性が発揮される。また、基材層の厚さを上記範囲内とすることで、離型フィルム全体の120℃における貯蔵弾性率E’を所定の数値範囲内とすることが容易となる。
【0037】
(接着層)
基材層と表面層との間には接着層を配置することが好ましい。接着層を配置することで、基材層と表面層の接着をより確実なものとし、使用時に剥離する等の不具合を効果的に抑制することができる。
【0038】
接着層は、接着樹脂によって形成することができる。接着樹脂の具体例としては、少なくとも一部が不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸の酸無水物によりグラフト変性された変性4−メチル−1−ペンテン系重合体;この変性4−メチル−1−ペンテン系重合体とα−オレフィン系重合体を含む混合物;ポリオレフィン系エラストマー等を挙げることができる。
【0039】
接着層の厚さは、表面層と基材層の接着性を向上させることができる厚さであればよく、特に制限はないが、通常は4〜6μm程度である。
【0040】
(離型フィルム)
本発明の離型フィルムは、表面層と基材層を、異なる特性を有する材料でそれぞれ構成したものである。即ち、本発明の離型フィルムは、金型や成形品からの離型性を表面層の特性によって担保するとともに、表面層で発揮し難い金型追従性や伸びを基材層の特性によって担保している。離型フィルムの120℃における貯蔵弾性率E’は1.00×10〜8.00×10Paであり、好ましくは2.00×10〜8.00×10Paである。「120℃における貯蔵弾性率E’」は、前記温度条件下におけるフィルムの変形し易さの指標となる物性値である。120℃における貯蔵弾性率E’が上記範囲内であるため、本発明の離型フィルムは、金型に圧着させ、高温条件下(例えば120℃前後)で樹脂材料の圧縮成形を行った場合であっても優れた追従性を示すとともに破れ等が生じ難い。なお、貯蔵弾性率E’が1.00×10Pa未満であると取り扱い性が低下する。一方、貯蔵弾性率E’が1.00×10Pa超であると、金型追従性及び耐破れ性が低下する。
【0041】
本発明の離型フィルムは、上記のような優れた特性を生かし、通常の半導体パッケージを製造するための金型に比してギャップが大きい、LED等の半導体素子のパッケージを製造するための金型に取り付けて使用するのに好適である。
【0042】
なお、離型フィルムの120℃における貯蔵弾性率E’については、基材層と表面層のそれぞれの弾性率及び厚さを勘案し、これらを前述の数値範囲内において適宜設定することで容易に調整することができる。具体的には、離型フィルムの120℃における貯蔵弾性率E’を高めようとする場合には、表面層及び/又は基材層の23℃における弾性率の高い樹脂を選定及び/又は弾性率の高い層を厚く設定すればよい。一方、離型フィルムの120℃における貯蔵弾性率E’を低くしようとする場合には、表面層及び/又は基材層の23℃における弾性率の低い樹脂を選定及び/又は弾性率の低い層を薄く設定すればよい。
【0043】
離型フィルムの120℃における破断伸びは1000%以上であることが好ましく、1000〜2000%であることが更に好ましく、1000〜1500%であることが特に好ましい。「120℃における破断伸び」は、高温条件下におけるフィルムが破れるまでの伸び量を示す物性値である。離型フィルムの120℃における破断伸びが上記範囲内であると、金型に圧着させて120℃前後の温度条件下で高延伸させた場合であっても破れ難く、優れた金型追従性を示す。なお、本明細書における「破断伸び」は、局所的な破れが生ずることなく、フィルムが実質的に破断するまでの伸びを意味する。
【0044】
また、離型フィルムの120℃における弾性率は65MPa以下であることが好ましく、10〜65MPaであることが更に好ましく、20〜65MPaであることが特に好ましい。離型フィルムの120℃における弾性率が上記範囲内であると、柔軟性が高く、負荷される力が小さくても容易に伸び始めることができる。
【0045】
本発明の離型フィルムの層構造としては、表面層を「A」、基材層を「B」、及び接着層を「C」とすると、(i)A/B(2層構造)、(ii)A/B/A(3層構造)、(iii)A/C/B(3層構造)、及び(iv)A/C/B/C/A(5層構造)等がある。
【0046】
離型フィルムの全体の厚さは40〜60μmであることが好ましく、40〜55μmであることが更に好ましい。離型フィルムの厚さが40μm未満であると、取り扱い性が低下したり、剥離時に切れたりする場合がある。一方、60μm超であると、金型の形状を忠実に再現することが困難になる場合がある。
【0047】
(離型フィルムの製造方法)
本発明の離型フィルムは、従来公知の積層構造を有する樹脂フィルムの製造方法に準じて製造することができる。具体的には、(i)各層を構成する樹脂材料を共押出成形する方法、(ii)各層を構成する樹脂材料をプレス成形や押出成形等して作製したシート又はフィルムをプレス成形する方法等を挙げることができる。
【0048】
2.LEDパッケージの製造方法:
次に、上述の離型フィルムを用いたLEDパッケージの製造方法につき、図面を参照しつつ説明する。図1に示すように、上金型2a、及び所定形状のキャビティ7が形成された下金型2bからなる成形用の金型2の下金型2bに離型フィルム1を配置する。なお、上金型2aには、複数のLED5を配置した基板3を配設する。
【0049】
下金型2bに配置された離型フィルム1は、例えば吸引等の操作によって下金型2bの内面に密着させる。LEDパッケージを製造するためのキャビティ7の直径は10〜50mm程度であり、金型の段差は5〜25mm程度である。即ち、従来の半導体用金型に比して、LEDパッケージ製造用の金型は、キャビティの径が大きく、ギャップも大きい。このため、従来の離型フィルムではLEDパッケージ製造用の金型へ十分に追従することが難しいが、本実施形態の離型フィルム1は金型追従性に優れたものであるため、キャビティ7の直径が上記の範囲内であっても下金型2bの内面に密着して配置させることができる。
【0050】
次に、図2に示すように、上金型2aと離型フィルム1を介した下金型2bとの間に封止樹脂9を充填する。封止樹脂9としては、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を挙げることができる。なかでも、透明性を有する樹脂が好ましい。その後、図3に示すように、金型2内に充填した封入樹脂9内にLED5を配置して型締めする。型締め時の圧力は特に限定されないが1.0〜10.0MPa程度である。また、型締め時の温度も特に限定されないが110〜190℃程度とすればよい。
【0051】
所定の条件で封止樹脂9を硬化させた後、図4に示すように金型2を型開きする。離型フィルム1は離型性に優れたものであるため、金型2(上金型2a及び下金型2b)や封止樹脂9から容易に離型させることができる。以上の操作により、図5に示すようなLEDパッケージ15を得ることができる。
【0052】
本実施形態の離型フィルム1は金型追従性に優れたものであるため、下金型2bの内面形状を忠実に反映し、寸法精度の高いLEDパッケージ15を製造することができる。また、離型フィルム1は耐破れ性にも優れているため、成形時に破れ等の不具合が生じ難く、LEDパッケージ15の製造歩留まりの向上も図ることができる。
【実施例】
【0053】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、各種物性値の測定方法、及び諸特性の評価方法を以下に示す。
【0054】
[弾性率(室温)]:JIS K7127に準拠し、試験温度を室温(23℃)、試験速度を200mm/分とし、表面層及び基材層のMD方向における弾性率(室温)を測定した。
【0055】
[弾性率、破断応力、破断伸び]:JIS K7127に準拠し、試験温度を120℃、試験速度を200mm/分とし、離型フィルムのMD方向における弾性率、破断応力、及び破断伸びを測定した。
【0056】
[貯蔵弾性率E’]:固体粘弾性装置(商品名「RSA−II」、ティー・エイ・インスツルメント社製)を使用し、−80℃から250℃まで3℃/分の速度で昇温しながら測定周波数1Hzで離型フィルムのMD方向の弾性率を測定し、120℃における貯蔵弾性率E’を算出した。
【0057】
[金型追従性、耐破れ性]:図6に示すように、ステンレス板27(厚さ:1mm)、アルミ板26(厚さ:0.1mm)、孔あきテスト板25(厚さ:0.5mm)、離型フィルム11、ポリエチレンシート23(厚さ:0.5mm)、クッション紙22(厚さ:0.4mm)、及びステンレス板21(厚さ1mm)をこの順に積層し、20t油圧成形機(東邦マシナリー社製)を使用して上下方向に圧縮した。圧縮条件は、温度:120℃、圧力:15kgf/cm(1.47MPa)、時間:30秒とした。なお、各層の平面寸法は25cm×25cmである。また、孔あきテスト板25には直径2.5mmの円柱状の貫通孔28が形成されている。この圧縮により、離型フィルム11が孔あきテスト板25の貫通孔28の形状に追従して延伸されるとともに、ポリエチレンシート23が貫通孔28内に充填されて円柱状の成形品30が成形される(図7及び8)。成形された成形品30の角部35及び離型フィルム11を肉眼で観察し、以下に示す基準に従って離型フィルムの金型追従性と耐破れ性を評価した。
<金型追従性>
○:角部が形成されているとともに、高さも十分である。
×:角部が形成されておらず、高さも不十分である。
<耐破れ性>
○:離型フィルムに破れが生じていない。
×:離型フィルムに破れが生じている。
【0058】
[離型性]:以下に示す基準に従って離型フィルムの離型性を評価した。
<離型性>
○:成形品に貼り付いた離型フィルムを手でつまみ、成形品に対して90°の角度で引っ張って剥離させる場合に、手を軽く添える程度に成形品を固定するだけで容易に離型フィルムを剥離させることができる。
×:成形品に貼り付いた離型フィルムを手でつまみ、成形品に対して90°の角度で引っ張って剥離させる場合に、成形品を台等に固定しなければ離型フィルムを剥離させることができないか、或いは剥離途中で離型フィルムが破れてしまう。
【0059】
(実施例1)
表面層の構成材料として4−メチル−1−ペンテン系重合体(1)(商品名「TPX MX002」、三井化学社製、弾性率(室温):900MPa)、及び基材層の構成材料としてブロック共重合体(1)(商品名「ペルプレン P40B」、東洋紡社製、弾性率(室温):25MPa)を使用し、共押出成形することにより3層構造(A/B/A)を有する離型フィルムを得た。得られた離型フィルムの表面層の厚さはいずれも15μm、基材層の厚さは20μmであった。また、得られた離型フィルムの全体の厚さは50μm、弾性率(120℃)は24MPa、破断応力(120℃)は6MPa、破断伸び(120℃)は1000%、貯蔵弾性率E’(120℃)は2.52×10Paであった。なお、得られた離型フィルムの金型追従性は「○」、耐破れ性は「○」、離型性は「○」であった。
【0060】
(実施例2〜6、比較例1〜3)
表面層と基材層の構成材料として表1に示す種類の樹脂材料を用いたこと、及び各層を表1に示す厚さとしたこと以外は、前述の実施例1と同様にして離型フィルムを得た。得られた離型フィルムの各種物性値及び特性評価の結果を表2に示す。なお、表面層と基材層の構成材料として用いた樹脂材料を以下に示す。
【0061】
4−メチル−1−ペンテン系重合体(1):商品名「TPX MX002」(三井化学社製)
4−メチル−1−ペンテン系重合体(2):商品名「TPX MX022」(三井化学社製)
4−メチル−1−ペンテン系重合体(3):商品名「TPX DX818」(三井化学社製)
ブロック共重合体(1):商品名「ペルプレン P40B」(東洋紡社製)
ブロック共重合体(2):商品名「ハイトレル 4777」(東レ・デュポン社製)
ブロック共重合体(3):商品名「ハイトレル 5577」(東レ・デュポン社製)
ブロック共重合体(4):商品名「ハイトレル 7277」(東レ・デュポン社製)
ポリブチレンテレフタレート:商品名「ノバデュラン 5020」(三菱エンジニアリングプラスチックス社製)
ポリアミド66:商品名「レオナ 1700S」(旭化成社製)
【0062】
なお、「TPX MX002」、「TPX MX022」、及び「TPX DX818」は、いずれも4−メチル−1−ペンテンと炭素数10〜18のオレフィンとの共重合体である。「ペルプレン P40B」は、ポリブチルテレフタレートとポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールの共重合体である。また、「ハイトレル 4777」、「ハイトレル 5577」、及び「ハイトレル 7277」は、いずれもポリブチレンテレフタレートと下記一般式(1)で表されるセグメントとの共重合体である。
【0063】
【化1】

(上記一般式(1)中、m、p、及びqは任意の数である)
【0064】
(実施例7)
表面層の構成材料として4−メチル−1−ペンテン系重合体(2)、接着層の構成材料としてポリオレフィン系エラストマー(商品名「NOTIO」、三井化学社製)、及び基材層の構成材料としてブロック共重合体(2)を使用し、共押出成形することにより5層構造(A/C/B/C/A)を有する離型フィルムを得た。得られた離型フィルムの表面層の厚さ、基材層の厚さ、及び離型フィルム全体の厚さを表1に示す。また、得られた離型フィルムの各種物性値及び特性評価の結果を表2に示す。
【0065】
(比較例4〜6)
表1に示す種類の樹脂材料を使用し、押出成形することにより単層構造の離型フィルムを得た。得られた離型フィルムの厚さを表1に示す。また、得られた離型フィルムの各種物性値及び特性評価の結果を表2に示す。
【0066】
【表1】

【0067】
【表2】

【0068】
実施例1と比較例1は、表面層を構成する樹脂材料は同一であるが、基材層を構成する樹脂材料の弾性率(室温)が大きく異なっている。また、実施例4と比較例1の弾性率(120℃)は概ね同一であるが、貯蔵弾性率(120℃)が大きく異なっている。このため、実施例1及び2と比較例1との特性評価では、金型追従性と耐破れ性に顕著な違いが生じている。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の離型フィルムは、金型を用いた各種樹脂の成形工程、特にLEDパッケージの製造工程において好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0070】
1,11 離型フィルム
2a 上金型
2b 下金型
2 金型
3 基板
5 LED
7 キャビティ
9 封止樹脂
15 LEDパッケージ
21,27 ステンレス板
22 クッション紙
23 ポリエチレンシート
25 孔あきテスト板
26 アルミ板
28 貫通孔
30 成形品
35 角部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の芳香族ジカルボン酸又はそのエステルと脂肪族ジオールからなる第一のポリエステルセグメント、及び第二の芳香族ジカルボン酸又はそのエステルとポリエーテル型ジオールからなる第二のポリエステルセグメントを有するブロック共重合体を含む基材層と、
前記基材層の少なくとも一方の表面上に配置される、4−メチル−1−ペンテン系重合体を含む表面層と、を備え、
120℃における貯蔵弾性率E’が1.00×10〜8.00×10Paである離型フィルム。
【請求項2】
前記基材層と前記表面層との間に配置される接着層を更に備える請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項3】
120℃における破断伸びが1000%以上である請求項1又は2に記載の離型フィルム。
【請求項4】
前記表面層の23℃における弾性率が800〜1500MPaであり、
前記基材層の23℃における弾性率が1000MPa以下である請求項1〜3のいずれか一項に記載の離型フィルム。
【請求項5】
120℃における弾性率が65MPa以下である請求項1〜4のいずれか一項に記載の離型フィルム。
【請求項6】
前記第一のポリエステルセグメントが、ポリエチレンテレフタレートセグメントとポリブチレンテレフタレートセグメントの少なくともいずれかである請求項1〜5のいずれか一項に記載の離型フィルム。
【請求項7】
前記ポリエーテル型ジオールが、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加重合体、及びエチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体からなる群より選択される少なくとも一種である請求項1〜6のいずれか一項に記載の離型フィルム。
【請求項8】
LEDパッケージを製造するために用いられる請求項1〜7のいずれか一項に記載の離型フィルム。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の離型フィルムを成形用の金型に配置する工程と、
前記離型フィルムを介して前記金型内に封止樹脂を充填するとともに、前記封入樹脂内に発光ダイオードを配置して型締めし、前記封止樹脂を硬化させてLEDパッケージを成形する工程と、
成形された前記LEDパッケージを前記離型フィルムから離型させる工程と、
を含むLEDパッケージの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−240547(P2011−240547A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−113238(P2010−113238)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】