説明

離型方法

【課題】 パターンを有する樹脂層が形成されたガラス基板を型から容易に剥離することができる離型方法を提供する。
【解決手段】 スタバックス金型10の表面に光硬化性樹脂30をドーナツ状に塗布する。ガラス基板20で光硬化性樹脂30をスタバックス金型10に押し付け、光硬化性樹脂30を薄く・均一に伸ばし、空気溜まり50を有する光硬化性樹脂30の層を形成する。次に、ガラス基板20を介して光硬化性樹脂30に紫外光を照射し、光硬化性樹脂30を硬化させる。露光後、光硬化性樹脂30を挟んでいるガラス基板20とスタバックス金型10とを真空槽40に入れ、真空槽40内の空気を排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は離型方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、つぎのような離型方法があった。
【0003】
まず、微細な凹凸のパターンが形成された型の表面に剥離膜としてのニッケルスパッタ膜を成膜する。
【0004】
次に、所定量の光硬化性樹脂をニッケルスパッタ膜が成膜された型の表面に塗布する。
【0005】
その後、ガラス基板で光硬化性樹脂に型に押し付け、光硬化性樹脂を押し広げる。その結果、型のパターンが光硬化性樹脂に転写される。
【0006】
次に、ガラス基板を介して光硬化性樹脂に紫外線等の光を照射する。
【0007】
露光後、くさび状治具を用いてガラス基板を型から剥離する(離型)。このとき、光硬化性樹脂の層はガラス基板とともに剥離される。
【特許文献1】特開平10−244545号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、くさび状治具をガラス基板と型との間に入れてガラス基板を型から引き離すとき、ガラス基板は硬くて薄いため、割れ易かった。また、ガラス基板が割れなかったとしても、ガラス基板の周縁部だけが変形し、ガラス基板や光硬化性樹脂の層に亀裂が発生し易い。
【0009】
この発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、その課題はパターンを有する樹脂層が形成されたガラス基板を型から容易に剥離することができる離型方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため請求項1記載の発明は、下型の上面に光硬化性樹脂を塗布し、その樹脂を上型で押し広げて空気溜まりを有するパターンを有する樹脂層を形成する第1工程と、前記第1工程の後、前記樹脂層に光を照射して前記樹脂層を硬化させる第2工程と、前記第2工程の後、前記空気溜まり内の圧力を前記空気溜まり外の圧力より相対的に高める第3工程とを含むことを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の離型方法において、前記上型はガラス板であることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2記載の離型方法において、前記第3工程では、前記樹脂層を挟んでいる前記両型を真空槽に入れ、この槽内の空気を排出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、パターンを有する樹脂層が形成されたガラス基板を型から容易に剥離することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1はこの発明の一実施形態に係る離型方法を説明するための図、図2(a) はガラス基板20で光硬化性樹脂30をスタバックス金型10に押し付けている状態を示す図、図2(b)はスタバックス金型10の表面を示す図、図3はガラス基板20がスタバックス金型10から離れた状態を説明する図である。
【0016】
以下、この実施形態に係る離型方法を説明する。
【0017】
(a)剥離膜成膜
機械加工、リソグラフィ等によってパターンが形成されたスタバックス金型(下型)10の表面に剥離膜としてのニッケルスパッタ膜(図示せず)を成膜する。
【0018】
(b)光硬化性樹脂塗布
(i)所定量の光硬化性樹脂30をニッケルスパッタ膜が成膜されたスタバックス金型10の表面に塗布する。このとき、例えば光硬化性樹脂30はドーナツ状に塗布される(図2(b)参照)。この実施形態で使用したスタバックス金型10は矩形である。
【0019】
(ii)ガラス基板(上型)20をプレスし、光硬化性樹脂30をスタバックス金型10の表面上に伸ばす。その結果、光硬化性樹脂30の層(樹脂層)の中央部に空気溜まり50が形成される。
【0020】
(c)露光
ガラス基板20を介してUV光を光硬化性樹脂30に照射する。その結果、光硬化性樹脂30が硬化する。
【0021】
(d)離型
露光後、光硬化性樹脂30を介して一体的に結合しているガラス基板20とスタバックス金型10とを真空槽40に入れ、真空槽40内の空気を排出し、真空槽40内を真空状態にする(図1参照)。このとき、空気溜まり50の外の圧力が空気溜まり50内の圧力より相対的に低下し、空気溜まり50内の圧力(図2(a)参照)によってガラス基板20が光硬化性樹脂30の層とともにスタバックス金型10から剥離する(図3参照)。その結果、反転型が製造される。
【0022】
(f)導電膜
光硬化性樹脂30の層の表面に電鋳用の電極としての銅スパッタ膜を成膜する。
【0023】
(g)電鋳
銅スパッタ膜が成膜されたガラス基板20を銅めっき液浴中に入れ、銅電鋳を行なう。
【0024】
(h)離型
電鋳後、くさび状治具を用いて光硬化性樹脂30の層が形成されたガラス基板20から銅電鋳品を剥離する。その結果、光硬化性樹脂30の層の加工パターンと同じパターン形状を有する銅電鋳品が得られる。
【0025】
この実施形態によれば、パターンを有する光硬化性樹脂30の層が形成されたガラス基板20を治具を用いることなくスタバックス金型10から容易に剥離することができるので、離型工程でガラス基板20が割れたり、ガラス基板20や光硬化性樹脂30に亀裂が発生したりしない。
【0026】
なお、上記実施形態では、光硬化性樹脂30をドーナツ状に塗布することにより空気溜まり50を形成したが、これに代え、スタバックス金型10の表面に形成するパターン自体を空気溜まり50を形成できるような形状にしてもよい。
【0027】
また、上記実施形態では、ガラス基板20とスタバックス金型10とを入れた真空槽40内の空気を排出することによって、空気溜まり50内の圧力を空気溜まり50の外の圧力より高めてガラス基板20をスタバックス金型10から剥離したが、これ以外に次のような方法がある。例えばスタバックス金型10を加熱することによって空気溜まり50内の圧力を空気溜まり50の外の圧力より相対的に高め、ガラス基板20をスタバックス金型10から剥離する。
【0028】
なお、上型としてはガラス基板20に限られず、光を透過するものであれば、例えば石英、プラスチックの基板でもよい。
【0029】
更に、下型としてスタバックス金型10を用いたが、下型を紫外光を透過する材料(例えば、耐熱性、機械的強度を有する耐熱ガラス)で製造してもよい。このような下型を用いた場合にはガラス基板20にガラス以外の不透明な材質のものを使用することができる。
【0030】
また、光硬化性樹脂に照射する光は紫外光に限らず、光硬化性樹脂が紫外光以外の光によっても硬化するものの場合には紫外光以外の光を使用する。
【0031】
更に、スタバックス金型10の表面には機械加工、リソグラフィ等によってパターンが形成されるので、スタバックス金型10の表面をナノメートルオーダの粗さで仕上げることができ、高精度の成型品を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1はこの発明の一実施形態に係る離型方法を説明するための図である。
【図2】図2(a) はガラス基板で光硬化性樹脂をスタバックス金型に押し付けている状態を示す図、図2(b)はスタバックス金型の表面を示す図である。
【図3】図3はガラス基板がスタバックス金型から離れた状態を説明する図である。
【符号の説明】
【0033】
10:スタバックス金型(下型)、20:ガラス基板(上型)、30:光硬化性樹脂、40:真空槽、50:空気溜まり。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下型の上面に光硬化性樹脂を塗布し、その樹脂を上型で押し広げて空気溜まりを有するパターンを有する樹脂層を形成する第1工程と、
前記第1工程の後、前記樹脂層に光を照射して前記樹脂層を硬化させる第2工程と、
前記第2工程の後、前記空気溜まり内の圧力を前記空気溜まり外の圧力より相対的に高める第3工程と
を含むことを特徴とする離型方法。
【請求項2】
前記上型はガラス板であることを特徴とする請求項1記載の離型方法。
【請求項3】
前記第3工程では、前記樹脂層を挟んでいる前記両型を真空槽に入れ、この槽内の空気を排出することを特徴とする請求項1又は2記載の離型方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−341479(P2006−341479A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−169041(P2005−169041)
【出願日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】