難水溶性成分のためのメソ多孔性材料賦形剤
本発明は、難水溶性活性成分と共にメソ多孔性材料を含む固体分散体の剤形及び製造方法を包含するものである。活性成分は非晶質状態に形成され、そして、共噴霧乾燥法を用いてメソ多孔性賦形剤のナノサイズ細孔内に閉じ込められる。メソ多孔性チャンネルの細孔壁は、活性成分の非晶質形態を再結晶に対して安定化させる。メソ多孔性チャンネル内に閉じ込められた非晶質の活性成分は、ストレス試験条件下で長期の保存の間に良好な安定性を示し、そして、有意に高められた溶解速度を有する。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
《関連出願との相互参照》
本出願は、2008年10月28日出願の米国仮出願第61/109,016号の優先権を主張するものであり、あらゆる目的で前記出願の教示はその全体が参考により本明細書に組み込まれる。
【0002】
《発明の分野》
本発明の技術分野は、製薬及び特殊化学的用途のためのメソ多孔性材料及び難水溶性有機成分を含む固体分散体(solid dispersion)又は固溶体に関する。剤形は、共噴霧乾燥法(co-spray drying)を用いて調製される。
【0003】
《発明の背景》
医薬活性成分(API)の難水溶性は、多くの医薬品の製品化の開発において最も困難な課題の一つである。米国薬局方に記載された薬剤の3分の1を超える数及び新規化学物質(NCE)の半分、又は新規活性成分は難水溶性又は不溶性である。難水溶性物質は、10g/Lより小さい、特に5g/Lより小さい、そして、更に特に1g/Lより小さい溶解度を有する。0.1g/Lより小さい水溶解度を有する物質は、ほとんど不溶性の物質又は不溶性の物質として分類される。これらの薬剤が投与された場合、消化液中でのその難溶性のために生体利用率が通常極めて低く、不安定且つ不十分な吸収を引き起こすことによって治療効果の減少させることがある。多くのNCEはその水不溶性又は難水溶性のため製品化し難い。
【0004】
難水溶性薬剤の溶解速度を高めて生体利用率を増加させるために多くの努力がなされてきた。溶解速度を改善するための1つの方法は、特定の剤形化法によるものであり、最も一般的であるのは粒度を低減させること(Jinno, J. et al., Journal of Controlled Release, 111:56-64 (2006); Kirsten, Westesen et al., Particles with modified physicochemical properties, their preparation and uses, 米国特許第6,197,349号明細書 (2001)参照)、シクロデキストリン中の包接(Palmieri, G. F. et al., ISTP Pharma Science 7:174-181 (1997); Xiang, Tian-Xiang et al., Pharmaceutical formulation for poorly water soluble camptothecin analogues, 米国特許第6,653,319号明細書 (2003)参照)、固溶体又は固体分散体中での不活性な水溶性薬剤担体の使用、ナノ結晶質形態の(Wunderlich, et al., Gelatin or collagen hydrolysate containing drug formulation that provides for immediate release of nanoparticle drug compounds, 米国特許第5,932,245号明細書 (1999)参照)又は非晶質形態のAPIである。
【0005】
種々のアプローチの中で、前記種類の薬剤の溶解速度を改善するために固体分散体又は固溶体の剤形が用いられてきた。固体分散体は通常、典型的には小細孔容積及び低比表面積を有する可溶性の有機ポリマーを用いて剤形化される(Yamane, Shogo et al., Solid formulation with improved solubility and stability, and method for producing said formulation, 米国特許出願公開第2006/0153913号明細書; Hoshino, Takafumi et al., Solid dispersion preparation, 米国特許出願公開第2007/0248681A1号明細書参照)。報告された2つの方法は、水溶性担体中の固体薬剤分散体の形成又は界面活性剤及び湿潤剤の添加を含む(Storey, D. E. Drug information Journal 30:1039-1044 (1996)参照)。水溶性担体を使用する場合、固体分散体は通常、共溶融、急冷及び粉砕の方法により達成される(Henricus, R. M. Oral Solid solution formulation of poorly water-soluble active substance, 米国特許出願公開第2005/0008697号明細書参照)。これは、API類を他の固体材料(例えば、PEG及びグリコール薬剤担体)と共に溶融して、事実上半固体及びろう質(waxy)を形成し、次に極低温まで冷却することによって硬化させることを含む。次いで、この混合物を粉砕し、篩分けし、比較的多量の賦形剤と混合し、そして硬ゼラチンカプセルに封入するか又は錠剤に圧縮する。これらの操作は、投薬形態(dosage form)の製造に対しスケールアップすることが難しい。代わりに、溶媒除去法(Straub, Julie et al., Porous Drug matrics and Methods of manufacture thereof, 米国特許出願公開第2005/0048116号明細書, Straub, Julie et al., Porous Drug Matrices and Methods of manufacture thereof, 米国特許第6,932,983号明細書(2005)参照)を用いて薬剤の固体分散体を生成することもできる。石鹸様界面活性剤を難水溶性薬剤の剤形化に組み込むことは、或る場合に、経口投与後に刺激性の副作用を引き起こすことがある。
【0006】
一般に、固体分散体の商業的適用は、主に製造困難性及び安定性の問題のせいで、極めて限られていた。開発されたこれらの投薬形態は、多くの場合、例えば、低い製品熱力学的安定性、製造可能性に関する問題(例えば、バッチ間での低い再現性)、及び商業生産に向けてのスケールアップの限界といった欠点を有する(Serajuddin, A. T. M. Journal of Pharmaceutical Sciences, 88:1058-1066 (1999)参照)。
【0007】
上記のように、別の方法は、薬剤粒子と溶解媒体との間の接触表面積を増やすことを意図した粒度の低下である。この方法の欠点は、粒度の不安定性及び粉砕後(post-milling)保存の間の凝集であり、これによって溶解速度の変動が生じる(Ng, W. K. et al., Pharmaceutical Research 25:1175-1185 (2008) 参照)。或る場合に、粒度の広範な分布は胃出血及び吐き気という副作用を生ずることがある。
【0008】
代わりのアプローチは、薬剤を他の添加剤(例えば、多孔質粉末)と共磨砕(co-grinding)することにより、非晶質形態の薬剤を製造することである(Yonemochi, E. et al., J. Colloid Interphase Sci. 173:186-191 (1995)参照)。急速な乾燥及び冷却は結晶成長を防ぐので、噴霧乾燥及び急冷も非晶質の医薬品の製造に適用される(Gupta, P. et al., Pharmaceutical Development and Technology, 10:273-281 (2005)参照)。しかしながら、非晶質材料は一般に熱力学的に不安定であり保存後に結晶形に戻る傾向があるので、許容貯蔵寿命を達成すべくAPI類を安定化することが最大の課題である。非晶質化(amorphization)により改善された溶解速度は、非晶質API類が結晶形に戻った場合、輸送及び保存の間で失われてしまうであろう。
【0009】
一連の新たにオーダーされたメソ多孔性材料(これは、2〜10nmの間で系統的に変化することのできる規則的な粒度分布を有しているMS41ファミリーと呼ばれる)の発見は、触媒、吸着及び薬剤学的利用の分野における新たな可能性を開いた。更に、種々の構造のメソ多孔性シリカ材料の中で、非イオン性ポリマー界面活性剤により合成されたSBA−15は、そのメソ構造的多様性の理由だけでなくより大きな細孔及びより厚い壁を有する理由から、最も幅広く研究されている。その粒度は30nmまで調整することができる。種々の細孔径(pore size)及び形状(geometries)を得ることが実現可能であるので、典型的な微小孔質材料について示される分子よりも大きい分子をホストする(hosting)広範な可能性が提供される。更に、細孔壁の広い表面積は高濃度のシラノール基により占められるので、多孔性材料を種々の表面官能基で変性することができる。従って、吸着特性は、種々の目的の分子ホスティングに対して調節することができる。
【0010】
以上のことから、難水溶性、水にほとんど不溶性、又は水に不溶性である薬剤及び特殊化学品を剤形化することについての必要性が存在する。消化管内でのその吸収を改善しそれによってその有効性を向上させるために、これらの化合物の溶解速度を改善する剤形が必要である。APIを非晶質化して溶解速度を高めるとともにその後の長期保存の間その非晶質形態を安定化させることができる新規な剤形及び方法を開発することが強く望まれている。本発明はこれらの及び他の要求を満たすものである。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、薬剤学的剤形及び特殊化学薬品剤形を提供するものであって、前記剤形は、賦形剤として高い表面積及び大きな細孔容積を有するメソ多孔性材料又は組成物を利用するものである。或る観点において、前記剤形は、共噴霧乾燥法を使用して非晶質の活性成分を調製する方法により製造されるものであって、この場合、前記活性成分は、ナノサイズのメソ多孔性チャンネル内に高い均質性で閉じ込められる。
【0012】
従って、或る態様によれば、本発明は医薬組成物を提供するものであって、前記医薬組成物は:
実質的に水不溶性の医薬活性成分(pharmaceutical active ingredient);及び
複数のナノ細孔を有するメソ多孔性組成物であって、前記実質的に水不溶性の医薬活性成分を前記メソ多孔性組成物と共に噴霧乾燥して、前記医薬活性成分をナノ細孔内に閉じ込める、前記メソ多孔性組成物;
を含むものである。
【0013】
或る観点によれば、活性成分の非晶質形態は、ナノ空間内に閉じ込められることによって、極めて安定に維持される。本調製方法は、再現性がありかつ容易に拡大縮小することができる。或る観点において、本発明は、製品不安定性の問題及び現在の固体分散法の製造性の問題を克服する。
【0014】
本発明は、新規な剤形及び方法を提供して、難水溶性の活性化合物、特に、医薬品活性成分(API)の溶解速度を改善するものである。或る観点において、活性成分をメソ多孔性材料又は組成物と共噴霧乾燥する直接的な方法は、再現性があり且つ他の固体分散技術と比べると商業的生産に対し容易に拡大縮小をすることができる。
【0015】
従って、別の態様によれば、本発明は、医薬組成物の調製方法を提供するものであって、前記方法は:
適当な溶媒又は溶媒の混合物中で、実質的に水不溶性の医薬活性成分を、複数のナノ細孔を有するメソ多孔性組成物と混合すること;及び
実質的に水不溶性の医薬活性成分をメソ多孔性組成物と共に噴霧乾燥して、ナノ細孔内に医薬活性成分を閉じ込め、それにより医薬組成物を製造すること;を含む。
【0016】
場合によっては、実質的に水不溶性の医薬活性成分は、鎮痛剤、解熱剤、抗コレステロール剤又はコレステロール低下剤、抗炎症剤、抗菌剤、うっ血除去剤及び抗ヒスタミン剤から選択される構成員である。
【0017】
これらの及び他の観点、目的及び態様は、図面及び以下の詳細な説明から、より明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】SBA−15と共に噴霧乾燥したイブプロフェン(50:50 重量%)の溶解プロフィール及び純粋なイブプロフェンの結晶粉末との比較を示す。
【0019】
【図2】メソ多孔性SBA−15と共噴霧乾燥したイブプロフェンの、40℃/75%RHで(a)調製時、保存後(b)3ヶ月、(c)6ヶ月、(d)10ヶ月、(e)12ヶ月のXRDパターン;及び(f)市販のイブプロフェン結晶の対照サンプルのXRDパターンを示す。
【0020】
【図3】共噴霧乾燥したイブプロフェン/SBA−15の保存後のXRDパターン、並びに、市販のイブプロフェン結晶を1重量%及び5重量%有するサンプルとの比較を示す。
【0021】
【図4】(A)噴霧乾燥したSBA−15サブミクロン粒子及び(B)SBA−15と共噴霧乾燥したイブプロフェン(50:50 重量)のSEM画像を示す。
【0022】
【図5】噴霧乾燥したイブプロフェン(Sigma)のSEM画像を示す。
【0023】
【図6】噴霧乾燥したイブプロフェン(Sigma)のXRDパターンを示す。
【0024】
【図7】SBA−15サブミクロンと共噴霧乾燥したイブプロフェンのTEM画像を示す(左:高倍率、右:低倍率)。
【0025】
【図8】SBA−15と共噴霧乾燥したイブプロフェン(50:50 重量)の錠剤型溶解プロフィール及び結晶形の市販イブプロフェンとの比較を示す。
【0026】
【図9】異なる薬剤配合量の25%及び75%で噴霧乾燥したイブプロフェン/SBA−15の溶解プロフィールを示す。
【0027】
【図10】異なる薬剤充填量の25%及び75%で噴霧乾燥したイブプロフェン/SBA−15のXRDパターンを示す。
【0028】
【図11】異なる量のエタノールにおいて噴霧乾燥したイブプロフェン/SBA−15の溶解プロフィールを示す。
【0029】
【図12】サイズの異なるSBA−15粒子(A:10ミクロンまでのミクロン粒子;B:粒度200〜400nmのナノ粒子)のSEM画像を示す。
【0030】
【図13】種々のサイズのSBA−15粒子と共に噴霧乾燥したイブプロフェンの溶解プロフィールを表す。
【0031】
【図14】ボールミル磨砕、含浸、及び共急冷によって、SBA−15と共に剤形化された剤形化イブプロフェンのXRDパターンを示す。
【0032】
【図15】SBA−15と共に噴霧乾燥したインドメタシンの粉末型及び錠剤型の溶解プロフィール、並びに、未処理のインドメタシン結晶との比較を示す(pH6.8リン酸緩衝液900mL、SBA−15と共に噴霧乾燥したインドメタシン50mgの粉末型又はコーンスターチ800mgと共に1トンプレスした錠剤、未処理結晶型は25mgである)。
【0033】
【図16】噴霧乾燥したフェノフィブラートの溶解プロフィール及び市販フェノフィブラートとの比較を示す(溶解媒体:0.5%のTween80を含む0.1N HCl900mL;フェノフィブラート20mg及び噴霧乾燥したフェノフィブラート中の同量の活性成分を30℃/100rpmで試験する)。
【0034】
【図17】噴霧乾燥したインドメタシン/SBA−15サブミクロン粒子のSEM画像を示す。
【0035】
【図18】噴霧乾燥したカルバマゼピン/SBA−15サブミクロン粒子のSEM画像を示す。
【0036】
【図19】噴霧乾燥したウルソデオキシコール酸/SBA−15サブミクロン粒子のSEM画像を示す。
【0037】
【図20】噴霧乾燥したフェノフィブラート/SBA−15サブミクロン粒子のSEM画像を示す。
【0038】
【図21】(a)カルバマゼピン及び(b)インドメタシンと共噴霧乾燥したメソ多孔性SBA−15サブミクロン粒子の40℃/75%RHで1年間保存後のXRDパターンを示す。
【0039】
【図22】(a)フェノフィブラート及び(b)ウルソデオキシコール酸と共噴霧乾燥したメソ多孔性SBA−15サブミクロン粒子の40℃/75%RHで6ヶ月間保存後のXRDパターンを示す。
【0040】
【図23】メソ多孔性炭素の形態及び細孔構造を表すTEM画像を示す。
【0041】
【図24】メソ多孔性炭素のSEM画像、並びに、メソ多孔性炭素と共噴霧したインドメタシン(50:50 重量)のSEM画像を示す。
【0042】
【図25】メソ多孔性炭素と共に噴霧乾燥した粉末型のインドメタシンの溶解プロフィールを示す(媒体:pH6.8リン酸塩緩衝液900mL、メソ多孔性炭素と共に噴霧乾燥したインドメタシン65mg(50:50 重量%)、温度37℃、攪拌速度100rpm)。
【0043】
《発明の詳細な記載》
I.定義
本明細書中で用いる「メソ多孔性組成物」は、平均粒径少なくとも約2nm〜約50nmの細孔を有する多孔質固体(porous solid)を含む。本明細書で用いる「平均粒径」は、組成物中の実質的に全ての孔径の平均を含む。
【0044】
用語「実質的に水不溶性」、「難水溶性」及び「不溶性」は、これらの用語がMack Publishing Companyにより出版されたU.S.P., Remington: "Pharmaceutical Science," 18th editionに定義されそして業界で用いられているように、水に不溶性、水にほとんど不溶性又は水にごくわずかに可溶性である活性成分を含む。或る観点において、難水溶性の化合物又は実質的に水不溶性の化合物は、好ましくは、水(25℃)に≦10g/L、特に、≦5g/L、及び特に好ましくは、≦1g/Lの溶解度を有する。
【0045】
語句「改善された水溶性を有する」は、前記の実質的に水不溶性の薬剤を、水中でのその溶解度を改善することにより通常の剤形化方法によって医薬品として用いることができる態様を含む。特に、本明細書に記載の方法を用いれば、約20℃での水中の溶解度が約5倍まで、好ましくは、約10倍まで、そして更に好ましくは、100倍以上まで改善されるということを指している。
【0046】
用語「非晶質」は、特定的でない種類、特徴、パターン又は構造、すなわち、結晶質でない不定の構造を有する化合物を含む。活性成分の非晶状態を用いると、その安定な非晶質形態のゆえに、活性成分の溶解速度はその結晶形と比べ有意に高められる。
【0047】
II.態様
或る態様において、本発明は医薬組成物を提供するものであって、前記医薬組成物は:
実質的に水不溶性の医薬活性成分;及び
複数のナノ細孔を有するメソ多孔性組成物であって、実質的に水不溶性の医薬活性成分をメソ多孔性組成物と共に噴霧乾燥してナノ細孔内に医薬活性成分を閉じ込める前記メソ多孔性組成物;を含むものである。
【0048】
広範な種類の活性成分が本発明での使用に適している。適当な活性成分としては、以下に限定されるものではないが、制酸薬、鎮痛薬、抗炎症薬、解熱薬、抗生物質、抗菌剤、緩下薬、食欲抑制薬、抗ヒスタミン薬、抗ぜんそく薬、抗利尿薬、整腸剤、抗片頭痛薬、生物学的作用剤(biological;タンパク質類、ペプチド類、オリゴヌクレオチド類等)、鎮痙薬、鎮静薬、抗多動作用剤(antihyperactive)、抗高血圧剤、抗コレステロール薬又はコレステロール降下薬、精神安定薬、うっ血除去薬、β遮断薬及びそれらの組合せを挙げることができる。本発明によると、フェノフィブラート及びアトルバスタチンが特に好ましい。
【0049】
実質的に水不溶性の医薬活性成分としては、例えば、心臓血管薬(例えば、強心配糖体、クロフィブレート及びプロブコール);血糖降下剤;鎮静薬/催眠薬(例えば、バルビツレート);及び抗痙攣薬(例えば、カルバマゼピン、メフェニトイン及びフェニトイン);精神薬理剤(例えば、パーフェナジン、鎮痛薬、解熱薬及び抗炎症剤、例えば、ナプロキセン、オキシコドン及びインドメタシン);抗腫瘍薬(例えば、アルミトリン);並びに、抗菌剤(例えば、エリスロマイシンエストレート)を挙げることができる。本発明によると、不溶性薬剤の特に好ましい種類として、鎮痛薬、解熱薬、抗炎症剤、抗菌剤、うっ血除去薬及び抗ヒスタミン薬を挙げることができる。本発明によると、イブプロフェンが特に好ましい。
【0050】
本発明に適当な他の薬剤又は生理活性剤としては、麻酔薬(例えば、ブタニリカイン(butanilicain)、ホモカイン(fomocain)、リドカイン、プリロカイン、テトラカイン及び エトミデート);抗生物質(例えば、ホスホマイシン、ホスミドマイシン及びリファペンチン(rifapentin));抗高血圧薬(例えば、ミノキシジル、ジヒドロエルゴトキシン及びエンドララジン);抗低血圧薬(例えば、ジヒドロエルゴタミン);全身性抗真菌薬(例えば、ケトコナゾール、ミコナゾール及びグリセオフルビン);抗炎症薬(例えば、インドメタシン、ジクロフェナク、イブプロフェン、ケトプロフェン及びピルプロフェン);抗ウイルス薬(例えば、アシクロビル、ビダラビン及び免疫グロブリン);ACE阻害薬(例えば、カプトプリル及びエナラプリル);β遮断薬(例えば、プロプラノロール、アテノロール、メトプロロール、ピンドロール、オクスプレノロール及びラベタロール);気管支拡張剤(例えば、イプラトロピウムブロミド及びソブレロール);カルシウム拮抗薬(例えば、ジルチアゼム、フルナリジン、ベラパミル、ニフェジピン、ニモジピン及びニトレンジピン);強心配糖体(例えば、ジギトキシン、ジゴキシン、メチルジゴキシン及びアセチルジゴキシン);セファロスポリン(例えば、セフチゾキシム、セファレキシン、セファロチン及びセフォタキシム);細胞増殖抑制剤(例えば、クロルメチン、シクロホスファミド、クロラムブシル、シタラビン、ビンクリスチン、マイトマイシンC、ドキソルビシン、ブレオマイシン、シスプラチン、タキソール、ペンクロメジン及びエストラムスチン);催眠薬(例えば、フルラゼパム、ニトラゼパム及びロラゼパム);向精神薬(例えば、オキサゼパム、ジアゼパム及びブロマゼパム);ステロイドホルモン(例えば、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、デキサメタゾン、プロゲステロン、プレグネノロン、テストステロン及びテストステロンウンデカノエート);血管拡張薬(例えば、モルシドミン、ヒドララジン及びジヒドララジン);脳血管拡張薬(例えば、ジヒドロエルゴトキシン、シクロニカート及びビンカミン);ユビキノン及びその類似体(例えば、ユビデカレノン及びアトバクオン(atovaquon));脂溶性ビタミン類(例えば、ビタミンA、E、D、K及びそれらの誘導体);殺虫剤、除草剤及び農薬(例えば、アセフェート(acephate)、シフルトリン、アジンホスホメチル(azinphosphomethyl)、シペルメトリン、フェンクロホス(fenclofos)、ペルメルトリン(permelthrin)、ピペロナール、テトラメトリン及びトリフルラリン)を挙げることができる。
【0051】
或る観点において、実質的に水不溶性の医薬活性成分は、組成物中に約0.1%〜約75%w/w、好ましくは、約10%〜約60%w/w、そしてより好ましくは、約30%〜約50%w/wで存在する。
【0052】
本発明の活性成分は、好ましくは、医薬活性成分である。しかしながら、活性成分として農薬及び特殊化学品も同様に挙げることができる。
【0053】
A.メソ多孔性材料
或る好ましい観点において、メソ多孔性組成物を用いた本発明の医薬組成物は、シリカ、炭素、アルミナ、カーバイド、ケイ化物、窒化物及び酸化物からなる群から選択される。或る観点において、メソ多孔性組成物は、酸化物(例えば、ケイ酸塩)を含む。或る好ましい観点において、メソ多孔性組成物は、MCM−41、MCM−48、SBA−15、MCF、MSU及びCMK−3からなる群から選択され、SBA−15及びMCM−41が特に好ましい(Vallet-Regi et al., Angewandte Chemie International Edition, 46: 7548 - 7558 (2007)参照)。
【0054】
或る観点において、メソ多孔性材料は、2nm〜10nmの間で系統的に変化することができる細孔径正規分布(regular pore size distribution)を有するMS41ファミリー内にある(Ciesla et al. Microporous Mesoporous Mater. 27: 131-149 ( 1999)参照)。或る観点において、SBA−15は非イオン性ポリマー界面活性剤により合成をすることができそしてメソ構造的多様性を有するだけでなく大きな細孔及び厚い壁も有する。細孔径は30nmまで調整することができる。細孔壁の広い表面積は高濃度のシラノール基によって占められているので、多孔性材料を種々の表面官能基により変性させることができる。従って、吸収特性は種々の目的の分子ホスティングのために調整することができる。或る観点において、メソ多孔性材料は表面積約300〜約2000m2/gを有し、そしてより好ましくは、比表面積約400〜約1200m2/gを有する。
【0055】
或る好ましい観点において、メソ多孔性組成物の使用は、非晶状態の活性成分1種以上の使用を可能にする。活性成分の非晶質形態は、ストレス保存条件下であってさえもナノサイズのメソ多孔性構造体中で安定化している。
【0056】
或る観点において、メソ多孔性組成物は粒度約0.1μm〜約100μmを有し、好ましくは、メソ多孔性組成物は粒度約0.3μm〜約50μmを有し、そしてより好ましくは、メソ多孔性組成物は粒度約0.5μm〜約30μmを有する。棒様形態(rod-like morphology)を有する粒子について、前記粒子の径は約0.1μm〜約50μmであり、そしてより好ましくは、メソ多孔性組成物は平均径約0.2μm〜約30μmを有する。
【0057】
或る観点において、メソ多孔性組成物は平均径約1nm〜約100nmを有し、好ましくは、平均径約1.5nm〜約50nmを有し、そしてより好ましくは、平均径約2nm〜約30nmを有する複数の細孔を含む。
【0058】
或る他の観点において、メソ多孔性組成物は平均容積約0.2cm3/g〜約4.0cm3/g、そしてより好ましくは、平均容積約0.8cm3/g〜約3.0cm3/gを有する複数の細孔を含む。
【0059】
B.調節された放出(modified release)
或る観点において、本発明の剤形は制御された速度で(例えば、徐放(sustained release)、持続放出(prolonged release)、延長放出(extended release)又は遅延放出(retarded release))薬剤を送達する。多くの場合に、前記機序の組合せを用いる投薬形態を設計して特定の活性成分について特に望ましい放出プロフィールを達成することが、実際的である。多様の(multiple)ナノ細孔、例えば、複数の細孔径及び細孔容積を提供する投薬形態構造体が、1種以上の活性成分の放出を制御するため多数の種々の機序を提供することにおける柔軟性に対して特に好都合であることは、当業者に容易に理解されるであろう。
【0060】
調節された放出の投薬形態の1つの目的は、薬剤のための時間に対する望ましい血中濃度(薬物動態、又はPK)プロフィールを提供することである。基本的に、薬剤のPKプロフィールは、血中への薬剤の吸収速度、及び、血液からの薬剤の排出速度により支配される。薬剤は、血液(循環系)中に吸収されるためには、最初に胃液中で溶解されなければならない。胃液中での溶解が薬剤吸収における律速段階である比較的急速に吸収される薬剤に対して、溶解速度(投薬形態からの薬剤放出)を制御することは患者の循環系中への薬剤吸収の速度を制御することを可能にする。PKプロフィールのタイプ、及び対応する、望ましい溶解又は放出プロフィールのタイプは、他の要因の中でも特に、特定の活性成分、メソ多孔性組成物及び治療される生理的状態に依存する。
【0061】
1つの特に望ましいPKプロフィールは、投薬形態からの薬剤の1回以上の投与量の放出が液体媒体による投薬形態の接触後に(例えば、患者による摂取後に)予め決められた時間だけ遅れる遅延放出溶解プロフィールを送達する投薬形態によって達成される。遅延時間(「時間のずれ」)は、活性成分の即時放出(「遅延バースト(delayed burst)」)、又は活性成分の徐放(持続放出、延長放出、又は遅延(retarded)放出)(「遅延後の徐放(delayed then sustained)」)のいずれかによって伴わせることができる。これらのPKプロフィールは、メソ多孔性材料、活性成分(非晶質又は結晶質を問わず)及びコーティングの種々の組合せを用いて設計することができる。
【0062】
或る観点において、本発明はAPIの一部が非晶質でありかつAPIの別の部分が結晶質である剤形を提供する。API類は同一又は異なっていることができる。この方法において、非晶質APIは急速な放出を示すのに対して、結晶形は徐放性であるか又は制御放出性である。例えば、非晶質薬剤は細孔容積に充填(load)されることができるのに対して、結晶質粒子はメソ多孔性マトリックスの外側に存在することができる。或る態様において、非晶質部分が或る一つの薬剤であるのに対して、結晶質薬剤は別の薬剤である。或る場合に、本明細書に記載の固体分散体は非晶質形態だけで存在する。
【0063】
或る他の観点において、本発明に係る剤形の活性成分は、遅延放出のために結晶形としてメソ多孔性マトリックス中に含まれる。細孔の構造及び容積は、適合した(tailored)放出プロフィールを達成するために調節することができる。
【0064】
結晶形、非晶質形態又はそれらの組合せの形態にある活性成分は、遅延放出顆粒を形成するように調節することができる。或る観点において、溶解遅延コーティングのコーティング層で顆粒をコーティングする。コーティングされていない形態では、前記顆粒は急速放出顆粒となり、コーティングされた顆粒より速くその内容物を放出する。溶解遅延性コーティングはポリマー材料、例えば、腸溶性ポリマー(「腸溶性ポリマー」という用語は、より酸性度の高い胃の環境に比べてより酸性度の低い腸の環境中で選択的に可溶性であるポリマーに関する技術用語である)であることができる。
【0065】
腸溶性ポリマーの例としては、酢酸フタル酸セルロース、酢酸コハク酸セルロース、メチルセルロースフタレート、エチルヒドロキシセルロースフタレート、ポリビニルアセテートフタレート、ポリビニルブチレートアセテート、酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、スチレンマレイン酸モノエステル共重合体、アクリル酸メチル−メタクリル酸共重合体、メタクリレート−メタクリル酸−アクリル酸オクチル共重合体等を挙げることができる。これらは単独で又は組み合わせて用いることができる。腸溶性コーティングの例としては、デンプン及び/又はデキストリンも挙げることができる。
【0066】
好ましい腸溶性コーティング材料は、市販の「Eudragit」腸溶性ポリマー、例えば、「Eudragit L(商標)」、「Eudragit S(商標)」及び「Eudragit NE(商標)」であり、単独で又は可塑剤と共に用いられる。前記コーティングは通常液体媒体を用いて付与され、そして可塑剤の性質は媒体が水性であるか又は非水性であるかによる。水性可塑剤として、プロピレングリコール又は「Citroflex(商標)」若しくは「Citroflex A2(商標)」(主成分はクエン酸トリエチル又はクエン酸アセチルトリエチル)を挙げることができる。非水性可塑剤として、これらと共に、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル及びセバシン酸ジブチルを挙げることができる。
【0067】
或る他の観点において、本発明の医薬組成物は、メソ多孔性組成物又は材料を有しない医薬組成物と比べて増加した溶解プロフィールを有する。
【0068】
他の場合には、本明細書に記載の組成物及び方法は、メソ多孔性材料のシラノール基を用いてグラフト有機シラン((RO)3SiR’)を形成するように表面を機能化する。この方法により、医薬品活性成分は表面との相互作用を増加させた。或る他の場合には、表面をアミノ基で機能化する。このことによっても薬剤放出を調節することができる(Vallet-Regi et al., Angewandte Chemie International Edition, 46: 7548 - 7558 (2007)参照)。
【0069】
C.製造方法
本発明は、本明細書に記載した剤形を製造又は調製する方法を提供する。或る観点において、本発明の方法は、固体分散体内に非晶状態の1種以上の活性成分を形成する能力を有する固体分散体を調製することに関する。活性成分の非晶質形態は、ストレス保存条件下でさえもナノサイズのメソ多孔性構造体中で安定化している。
【0070】
或る観点において、本発明の剤形は、適当な溶媒又は溶媒の混合物中に溶解した難水溶性活性成分とメソ多孔性材料とを共噴霧乾燥する方法によって製造される。最終の固体分散体は、重量基準(重量%)で:(a)活性成分1%〜75%、及び、(b)100重量%までの残量の多孔性無機材料(例えば、メソ多孔性シリカ及び炭素)を含む。或る観点において、活性成分は、イブプロフェン、フェノフィブラート、インドメタシン、カルバマゼピン及びウルソデオキシコール酸であることができる。
【0071】
一つの態様によれば、本発明は、医薬組成物の製造方法であって:
適当な溶媒又は溶媒の混合物中で、実質的に水不溶性の医薬活性成分を複数のナノ細孔を有するメソ多孔性組成物と混合すること;及び
前記実質的に水不溶性の医薬活性成分をメソ多孔性組成物と共に噴霧乾燥して前記ナノ細孔内に医薬活性成分を閉じ込め、それによって医薬組成物を製造する;
前記製造方法を提供する。
【0072】
一つの観点において、噴霧乾燥は、難水溶性薬剤を有機溶媒(例えば、エタノール)中に溶解することにより実施する。適当な溶媒又は共溶媒として、C1−C6アルカノール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、ハロゲン化溶媒類、脂環式溶媒類、芳香族複素環式溶媒類、及びそれらの混合物を挙げることができる。次いで、攪拌条件下で固体分散体を作るのに充分な時間にわたり(例えば、一晩)、メソ多孔性粉末を溶液中に分散させる。次には、固体分散体を共噴霧乾燥することができる。
【0073】
典型的な噴霧乾燥装置は、一般に、乾燥室、乾燥室内に溶媒含有フィードを噴霧する噴霧手段、乾燥室内に流入して噴霧された溶媒含有フィードから溶媒を除去する加熱乾燥気体の供給源、及び乾燥室の下流に位置する生成物収集手段を含む。前記装置の例としては、ブッチ(Buchi)ミニスプレードライヤーB290を挙げることができる。或る場合には、噴霧乾燥装置は、溶媒含有フィードを噴霧するための二流体ノズルを備えている。前記ノズルは、フィード溶液の小滴、典型的には直径5〜30μmの小滴を生成し、及び液体フィード液滴と乾燥気体との乱流混合を生じさせて、流体を急速乾燥し、固体粒子を形成させる。前記噴霧乾燥装置は、薬剤と多孔性組成物又は材料との実質的に非晶質かつ実質的に均一な固体−非晶質分散体を形成するのに有効である。入口温度及び出口温度は、それぞれ25℃〜150℃(例えば、81℃)及び25℃〜120℃(例えば、50〜55℃)であることができる。
【0074】
噴霧乾燥が製造に好ましい方法であるが、方法はこれに限定されるものではない。噴霧乾燥方法のほかに、ボールミル磨砕法、含浸法、共急冷法及び混合法を用いて難溶性薬剤をメソ多孔性材料中に充填することができる。他の方法として、例えば、当業者に公知のドライブレンディング(すなわち、直接圧縮)又は湿式造粒法を挙げることができる。ドライブレンディング(直接圧縮)法によれば、1種又は複数種の活性成分を賦形剤と共に適当なブレンダーでブレンドし、圧縮機に直接移し加圧して錠剤にする。湿式造粒法によれば、1種又は複数種の活性成分、適当な賦形剤、及び湿式バインダー(例えば、水性調理デンプンペースト(aqueous cooked starch paste)、又はポリビニルピロリドンの溶液)の溶液又は分散体を混合しそして造粒する。その代わりに、乾式バインダーを賦形剤の中に加え、そしてこの混合物を水又は他の適当な溶媒を用いて造粒することができる。湿式造粒用の適当な装置は当業者に公知であり、例えば、低剪断ミキサー、例えば、遊星形ミキサー;高剪断ミキサー;及び流動層、例えば、回転流動層(rotary fluid bed)を挙げることができる。得られる造粒された材料を乾燥させ、そして場合により追加的成分、例えば、補助剤及び/又は賦形剤、例えば、潤滑剤、着色剤等とドライブレンドする。そして、最終的なドライブレンドは圧縮に適切となる。直接圧縮法及び湿式造粒法は当業者に公知である。
【0075】
多孔性無機材料は、典型的には、大きさ0.1μm〜100μmの範囲であり、細孔径1〜100nmの範囲でありそして細孔容積0.2〜4.0cm3/gの範囲である。
【0076】
有利なことに、本発明の方法は、難水溶性の薬学的活性成分の溶解プロフィールを改善するのに有効である。調製された固体分散体は、40℃/75%RHでの1年間のストレス試験条件下において再結晶に対し明確な物理的安定性を有する。いかなる特定の理論にとらわれることなく、この有意な改善は共噴霧乾燥によってメソ多孔性材料のナノサイズの細孔内に非晶質薬剤を閉じ込めることにより達成されると考えられる。メソ多孔性マトリックス中に取り込まれる薬剤の量は、調製の間に添加された薬剤の量に応じて、最終の固体粉末中に75重量%までの割合に達することができる。
【0077】
或る態様において、活性成分を、例えば、メソ多孔性SBA−15サブミクロンと共噴霧乾燥すると、活性成分の大部分がSBA−15の多孔性構造体内に閉じ込められるので、外表面の形態に明らかな変化は見られない。内部細孔チャンネルが活性成分で満たされると、次に外表面が極めて薄い層の活性成分(<10nm)でコーティングされることができる。固体細孔壁は40℃/75%RHで保存の間、閉じ込められた活性成分の再結晶を防止する。更に、表面に充填される活性成分の量は制御することができる。
【0078】
難水溶性薬剤をナノ閉じ込めする目的で、メソ多孔性材料(例えば、シリカ、炭素、及びアルミナ)をマトリックスとして用いて難溶性薬剤を剤形化し、そして非晶質形態を安定させて長期保存を可能とする。
【0079】
保存安定性は、40℃/75%RHと表記する相対湿度75%及び温度40℃の苛酷な保存条件により試験した。
【0080】
D.追加の賦形剤
或る態様において、本発明の剤形に追加の賦形剤を用いる。例えば、適当な充填剤としては、水溶性の圧縮性炭水化物類、例えば、糖類、例えば、デキストロース、ショ糖、マルトース、及びラクトース、糖アルコール、例えば、マンニトール、ソルビトール、マルチトール、キシリトール、デンプン加水分解物類、例えば、デキストリン類、及びマルトデキストリン類等、水不溶性材料、例えば、微結晶性セルロース又は他のセルロース誘導体、水不溶性材料、例えば、リン酸二カルシウム、リン酸三カルシウム等及びそれらの混合物を挙げることができる。
【0081】
適当な結合剤としては、乾式ブレンダー、例えば、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等;湿式バインダー、例えば、水溶性ポリマー、例えば、ヒドロコロイド、例えば、アカシアゴム、アルギン酸塩、寒天、グアーガム、ローカストビーン、カラギーナン、カルボキシメチルセルロース、タラ(tara)、アラビアゴム、トラガカント、ペクチン、キサンタン、ジェラン(gellan)、ゼラチン、マルトデキストリン、ガラクトマンナン、プスツラン(pusstulan)、ラミナリン、スクレログルカン、イヌリン、ウィーラン(whelan)、ラムサン(rhamsan)、ズーグラン(zooglan)、メチラン(methylan)、キチン、シクロデキストリン、キトサン、ポリビニルピロリドン、セルロース誘導体(cellulosics)、ショ糖、デンプン類等;並びに、これらの誘導体及び混合物を挙げることができる。
【0082】
適当な崩壊剤としては、デンプングリコール酸ナトリウム(sodium starch glycolate)、架橋ポリビニルピロリドン、架橋カルボキシメチルセルロース、デンプン類、微結晶性セルロース等を挙げることができる。
【0083】
適当な潤滑剤としては、長鎖脂肪酸及びその塩、例えば、ステアリン酸マグネシウム及びステアリン酸、タルク、グリセリド及びろうを挙げることができる。
【0084】
圧縮によりコア又はコア部分を作る適当な滑剤(glidant)としては、コロイド状二酸化ケイ素等を挙げることができる。
【0085】
放出調節性賦形剤として用いるのに適当な膨潤性の侵食可能な(erodible)親水性材料としては:水膨潤性セルロース誘導体、ポリアルカレングリコール、熱可塑性ポリアルカレンオキシド、アクリルポリマー、親水コロイド、クレー(clay)、ゲル化デンプン、及び膨潤架橋ポリマー(swelling cross-linked polymer)、及び誘導体、コポリマー、及びそれらの組合せを挙げることができる。適当な水膨潤性セルロース誘導体の例としては、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、架橋ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシイソプロピルセルロース、ヒドロキシブチルセルロース、ヒドロキシフェニルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシペンチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルブチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロースを挙げることができる。適当なポリアルカレングリコールの例としては、ポリエチレングリコールを挙げることができる。適当な熱可塑性ポリアルカレンオキシドの例としては、ポリ(エチレンオキシド)を挙げることができる。適当なアクリルポリマーの例としては、カリウムメタクリレートジビニルベンゼンコポリマー、ポリメチルメタクリレート、CARBOPOL(ポリマー量架橋アクリル酸ホモポリマー及びコポリマー)等を挙げることができる。適当な親水コロイドの例としては、アルギン酸塩、寒天、グアーガム、ローカストビーンガム、カッパカラギーナン、イオタカラギーナン、タラ、アラビアゴム、トラガカント、ペクチン、キサンタンガム、ジェランガム、マルトデキストリン、ガラクトマンナン、プスツラン、ラミナリン、スクレログルカン、アラビアゴム、イヌリン、ペクチン、ゼラチン、ウィーラン、ラムサン、ズーグラン、メチラン、キチン、シクロデキストリン、キトサンを挙げることができる。適当なクレーの例としては、スメクタイト、例えば、ベントナイト、カオリン、及びラポナイト;三ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム等、及びそれらの誘導体及び混合物を挙げることができる。適当なゲル化デンプンの例としては、酸加水分解デンプン(acid hydrolyzed starch)、膨潤性デンプン、例えば、デンプングリコール酸ナトリウム、及びそれらの誘導体を挙げることができる。適当な膨潤架橋ポリマーの例としては、架橋ポリビニルピロリドン、架橋寒天、及び架橋カルボキシメチルセルロースナトリウムを挙げることができる。
【0086】
放出調節性賦形剤として使用するのに適当な不溶性の可食性材料として、水不溶性ポリマー、及び低融点疎水性材料を挙げることができる。適当な水不溶性ポリマーの例としては、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリカプロラクトン、酢酸セルロース及びその誘導体、アクリレート、メタクリレート、アクリル酸コポリマー;等及びそれらの誘導体、コポリマー、及び組合せを挙げることができる。適当な低融点疎水性材料として、脂肪類、脂肪酸エステル類、リン脂質類、及びろうを挙げることができる。適当な脂肪の例としては、水素化植物油類、例えば、カカオ脂、水素化パーム核油、水素化綿実油、水素化ヒマワリ油、及び水素化大豆油;並びに遊離脂肪酸及びその塩を挙げることができる。適当な脂肪酸エステルの例としては、ショ糖脂肪酸エステル、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、ベヘン酸グリセリル、パルミトステアリン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、トリステアリン酸グリセリル、グリセリルトリラウリレート(glyceryl trilaurylate)、ミリスチン酸グリセリル、GlycoWax−932、ラウロイルマクロゴル(lauroyl macrogol)−32グリセリド、及びステアロイルマクロゴル−32グリセリドを挙げることができる。適当なリン脂質の例としては、ホスホチジルコリン、ホスホチジルセレン(phosphotidyl serene)、ホスホチジルエノシトール(phosphotidyl enositol)、及びホスホチジン酸(phosphotidic acid)を挙げることができる。適当なろうの例としては、カルナバろう、鯨ろう(spermaceti wax)、蜜ろう、カンデリラろう、セラックろう(shellac wax)、マイクロクリスタリンワックス、及びパラフィンろう;脂肪含有混合物、例えば、チョコレート等を挙げることができる。
【0087】
場合によっては、本発明の剤形を公知の方法によってコーティングして、味覚マスキング、臭気マスキングを提供するか、調製物を腸溶性にするか、又は調製物の徐放を達成することができる。コーティング剤の例としては、腸溶性ポリマー、例えば、酢酸フタル酸セルロース、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸コポリマーLD、メタクリル酸コポリマーS、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びカルボキシメチルエチルセルロース;胃内可溶性ポリマー、例えば、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート及びアミノアルキルメタクリレートコポリマー;及び水溶性ポリマーを挙げることができる。
【0088】
本発明に係る薬剤学的剤形は、更に追加的な構成要素として、通常の薬剤学的補助物質、例えば、充填剤、例えば、ラクトース、微結晶性セルロース(MCC)又はリン酸水素カルシウム、並びに滑剤、腸の潤滑剤及び流量調整剤(flow regulating agent)、例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸及び/又は高分散二酸化ケイ素を含み、錠剤中のその総重量は0〜80重量%、好ましくは、5〜65重量%である。
【0089】
或る態様によれば、本発明の薬剤学的剤形は、自己充足型単一物(self-contained unitary object)、例えば、錠剤又はカプセル剤であることができる。典型的には、本発明の剤形は、錠剤、硬カプセル剤若しくは軟カプセル剤、坐剤、又は製菓型、例えば、ロゼンジ、ヌガー、キャラメル、フォンダン、若しくは脂肪ベースの組成物に圧縮し又は成形される。
【0090】
III.実施例
《実施例1》
イブプロフェン1.0g及びサブミクロンのメソ多孔性シリカ材料1.0gを攪拌下に一晩エタノール100mL中に分散させた。この懸濁液をブッチスプレードライヤーB290により噴霧乾燥した。入口温度を81℃に設定して、出口温度は〜50℃であった。ポンプ速度は「20」に設定した。溶解条件:SBA−15と共に噴霧乾燥したイブプロフェン50mg及び純粋なイブプロフェン(Sigma)結晶25mgを、37℃の0.1N−HCl900mL中での溶解試験に用いた。攪拌速度は100rpmである。自動サンプリングシステムにより5分間間隔でサンプルを取った。UV読み取りは波長222nmで行なった。
【0091】
図1に示すように、噴霧乾燥したイブプロフェンの溶解速度は、結晶形の市販イブプロフェン(Sigma)と比較して有意に高められる。15分間以内に、SBA−15と共に噴霧乾燥したイブプロフェンの95.6%が溶解するのに対し、純粋なイブプロフェン結晶はわずか17.5%が溶解するにすぎない。フローセルオンラインUV−vis分析システムを備えたVK7010(Varian社)USP溶解試験機を用いて溶解プロフィールを測定した。攪拌速度は100rpmでありそして容器温度は37℃に設定する。
【0092】
噴霧乾燥によるSBA−15配合イブプロフェンの改善された溶解速度は、SBA−15の細孔内に形成された非晶状態の成分によるものである。更に、メソ多孔性材料内のイブプロフェンの非晶質形態は、40℃/相対湿度(RH)75%の試験条件下で再結晶に対し物理的に安定である。図2に示すように、SBA−15と共に新たに噴霧乾燥したイブプロフェンは典型的な非晶特性を示した。2−θにおける15〜30゜のブロードピークは、X線非晶質シリカの回折パターンにおいて典型的である。結晶形のイブプロフェンに対して指定されるX線回折ピークは観察されなかった。この非晶質形態は、40℃/75%RHの苛酷な条件下で優れた安定性を示す。3ヶ月、6ヶ月、10ヶ月及び12ヶ月後、XRDにより結晶成長は検出することができなかった。
【0093】
更に、図3において、イブプロフェンの一部の結晶が添加されそしてSBA−15中に取り込まれた薬剤を含む非晶質固体剤形と混合されると、結晶挙動が再び現れる。このことは、本発明の固体剤形が本質的にもっぱら非晶質でありそして結晶構造の程度は固体分散体へのイブプロフェン結晶の添加によってのみ変更されることができるということを示している。
【0094】
SBA−15と共に噴霧乾燥したイブプロフェンの苛酷な条件下での高められた安定性は、ナノサイズの細孔チャンネル及び高い多孔性を有するSBA−15のメソ多孔性構造によるものである。イブプロフェンをSBA−15サブミクロン粒子と共に噴霧乾燥すると、イブプロフェンの大部分はナノ細孔チャンネルに保存される。SBA−15サブミクロンをイブプロフェンなしに噴霧乾燥すると、その細孔容積は1.019cm3/gであるが、イブプロフェンと共に(50:50 重量)噴霧乾燥すると0.0913cm3/gまで低下する。イブプロフェンの真密度は1.076g/cm3であるので、イブプロフェンの89.9%がメソ多孔性粒子内部の細孔チャンネル内に充填される。非晶質細孔壁は、閉じ込められたイブプロフェンが結晶化するのを防ぐ。
【0095】
図4A及びBは、噴霧乾燥したSBA−15サブミクロン粒子及びSBA−15サブミクロン粒子と共に噴霧乾燥したイブプロフェン(50:50 重量)のSEM形態を示す。サブミクロンSBA−15粒子の形態は、同じ重量比のイブプロフェンと共に噴霧乾燥した後で明らかに変化していないことがわかる。大きな粒子のイブプロフェンは形成されない。純粋なイブプロフェンを噴霧乾燥した場合には、図5に示すように、数十ミクロンメートルより大きな粒子が観察される。更に、図6に示すX線回折パターンにより、噴霧乾燥したイブプロフェンの結晶挙動が確認される。図7は、噴霧乾燥後のSBA−15の細孔チャンネル内及び外表面上のイブプロフェンの分布を明らかにしている。
【0096】
《実施例2》
実施例1と同じ手順を用いてイブプロフェンをSBA−15サブミクロン粒子と共噴霧乾燥する。錠剤型の溶解速度を評価するために、SBA−15と共に噴霧乾燥したイブプロフェン(50:50 重量)50mgをコーンスターチ0.8gと混合しそして直径13mmのダイを用いて1トンの圧力でプレスする。同じ手順により、結晶型(市販)のイブプロフェン25mgの対照サンプルをコーンスターチで錠剤化する。溶解は、実施例1と同じ方法を用いて実施する。図8に示した錠剤型の溶解プロフィールは、粉末型において観察されたものと同様である。結晶形のイブプロフェンはわずか16.4%が溶解するのに比べ、錠剤型の噴霧乾燥イブプロフェンは87.9%が15分間以内に溶解する。
【0097】
《実施例3》
図9は、薬剤充填比25%及び75%で噴霧乾燥したイブプロフェンの溶解を示す。剤形が25%のイブプロフェン及び75%のSBA−15を含んでいる場合のサンプルは、極めて高い溶解速度を示し、活性成分の97.1%が15分間以内に溶解する。剤形が75%のイブプロフェン及び25%のSBA−15を含んでいる場合、15分間以内の溶解は68.9%に達し、これは結晶形の市販の純粋なイブプロフェンよりはるかに高い値であるが、低量の薬剤充填のサンプルと比べてわずかに遅れが見られる。細孔容積は、薬剤高充填量75%の場合、固体分散体中にイブプロフェンをホストするのに十分ではなく、そして残りのイブプロフェンはメソ多孔性マトリックスの外側に結晶粒子を形成する。部分的に結晶化したイブプロフェンは図10に示すようにXRDにより検出することができる。
【0098】
《実施例4》
イブプロフェン1.0g及びサブミクロンメソ多孔性シリカ材料1.0gを、一晩攪拌下にエタノール40mL及び200mL中に分散させた。この懸濁液を噴霧乾燥しそしてこの懸濁液(重量50:50のイブプロフェン:SBA−15)50mgをコーンスターチ0.8gと混合し直径13mmのダイにより1トンの押圧でプレスする。実施例1と同じ方法を用いて溶解を実施する。図11は、異なる量のエタノール中に分散され噴霧乾燥されたイブプロフェンの溶解プロフィールを示す。エタノール200mL中での分散は、エタノール40mL中での分散に比べ高い溶解速度を生じさせた。
【0099】
《実施例5》
異なる粒度のメソ多孔性シリカベース材料を用いて噴霧乾燥により難水溶性イブプロフェンを剤形化する。図12に示すように、粒度200〜400nmのメソ多孔性ナノ粒子及び10ミクロンまでの大きな粒子を用いる。これらの材料の細孔径は、同じ方法を用いて製造されるものとほぼ同じである。異なる粒度のメソ多孔性材料と共にイブプロフェンを噴霧乾燥した場合に、ナノ粒子マトリックスはより速い溶解速度を示すことが見出される。錠剤型の溶解試験を実施した場合、図13に示すように、メソ多孔性ナノ粒子と共に噴霧乾燥したイブプロフェンのサンプルは15分間以内に90.5%が溶解するのに対し、大きなメソ多孔性粒子と共に噴霧乾燥したイブプロフェンのサンプルは条件下で71%が溶解する。細孔チャンネルからの活性成分のより速い放出は、細孔チャンネルの長さがより短いことによるものである。
【0100】
《実施例6》
ボールミル磨砕、含浸、共急冷及び混合により、難水溶性モデル薬剤であるイブプロフェンをSBA−15サブミクロンメソ多孔性粒子と剤形化する。
【0101】
ボールミル磨砕:イブプロフェン1.0g及びSBA−15サブミクロン粒子1.0gを、ボールミル(Fritsch)により200rpmの回転速度で1時間共磨砕した。
【0102】
含浸:イブプロフェン0.5gをエタノール5mL中に溶解した。SBA−15サブミクロン粒子0.5gをイブプロフェン溶液に添加した。攪拌下で一晩、室温においてエタノールを蒸発させた。得られた粉末を室温で真空乾燥させた。
【0103】
共急冷:イブプロフェン1.0gをSBA−15サブミクロン粒子と充分に混合した。120℃を超える温度までこの混合物を加熱してイブプロフェンを溶融した。この熱混合物を液体窒素で急冷し、そしてその固体を室温で真空中に保った。
【0104】
混合:イブプロフェン1.0g及びSBA−15サブミクロン粒子1.0gを5分間乳鉢及び乳棒で粉砕した。
【0105】
上記方法を用いて剤形化したイブプロフェンの溶解速度を粉末型で分析しそして15分間、30分間、45分間及び60分間の溶解データを表1に示す。ボールミル磨砕法、混合法、含浸法及び共急冷法は純粋な市販イブプロフェンより高い溶解速度を示すが、これらの方法は噴霧乾燥より劣る。図14に示すXRD調査は、SBA−15サブミクロン粒子との共噴霧乾燥のみが充分なX線非晶質形態をもたらし、一方で、他の全ての方法は部分的に結晶化した形態を生じさせることを示す。従って、用いた全ての剤形化法の中で、噴霧乾燥が最高の溶解速度を示す非晶質形態のイブプロフェンを生じさせる最良の方法であることが示される。
【表1】
【0106】
《実施例7》
フィブリン酸(fibric acid)に由来するエステルであるフェノフィブラートは、コレステロール及びトリグリセリドの値を低下させるために用いられる(Palmieri, G. F. et al., STP pharma Science 6:188-194 (1996))。この薬剤は、極めて難水溶性である。その溶解度及び溶解速度を改善するために多くの努力、例えば、超臨界二酸化炭素を用いた超微粉砕(micronization)(Kere, J. et al., Int. J. Pharm. 182:33-39 (1999)参照)、シクロデキストリン中の包接(inclusion in cyclodextrin)が報告されてきた。本発明は、フェノフィブラートをメソ多孔性SBA−15と共に噴霧乾燥して安定な非晶質フェノフィブラートを製造しそしてその溶解速度を改善することを含むシンプルな方法を用いる。他の難水溶性モデル薬剤、すなわち、インドメタシン、カルバマゼピン及びウルソデオキシコール酸も、その溶解速度を改善するために、メソ多孔性SBA−15と共に噴霧乾燥する。
【0107】
剤形化手順は実施例1と同様である。典型的には、薬剤1.0g及びSBA−15サブミクロン粒子1.0gを、一晩攪拌によってエタノール100mL中に分散させた。ブッチ290Bミニスプレードライヤーを用いて噴霧乾燥を実施する。メソ多孔性SBA−15と共に噴霧乾燥したフェノフィブラートの溶解度分析は、UVオンラインサンプラー及び測定システムを備えたVarian VK7010溶解試験装置を用いて実施する。
【0108】
SBA−15サブミクロン粒子と共に噴霧乾燥した薬剤のそれぞれの溶解速度は、結晶形の市販薬剤より高い。図15に示すように、噴霧乾燥したインドメタシンは15分間以内に97%の溶解に達するのに対し、市販のインドメタシンは25%に達したに過ぎなかった。噴霧乾燥したインドメタシンの溶解も錠剤型及び粉末型の両方で実施する。錠剤型は、粉末型とほぼ同様の溶解プロフィールを示す。図16に示すように、メソ多孔性SBA−15と共に噴霧乾燥したフェノフィブラートの溶解速度は20分間で95%に達するのに対し、未処理のフェノフィブラート結晶では同じ時間でわずか15.6%しか溶解しない。
【0109】
難水溶性薬剤、例えば、インドメタシン(図17)、カルバマゼピン(図18)、ウルソデオキシコール酸(図19)、フェノフィブラート(図20)の形態は、未処理の(bare)メソ多孔性粒子と比較して明らかな変化が見られないことがSEM調査により確認される。この結果は、大部分の薬剤が細孔チャンネル内部に閉じ込められていることを示す。
【0110】
メソ多孔性材料との共噴霧乾燥により形成されたこれらの薬剤の非晶状態は、40℃/75%RHのストレス条件に少なくとも6ヶ月間付された後でも安定である。図21に示すように、噴霧乾燥したインドメタシン及びカルバマゼピンは40℃/75%RHで12ヶ月間の保存後に非晶質形態において安定である。噴霧乾燥したフェノフィブラート及びウルソデオキシコール酸の安定性を今までのところ6ヶ月間試験をし、そして両者は図22に示すように非晶質形態における安定性を示した。
【0111】
相対的には、直接急冷法(direct quench method)から得られた非晶質インドメタシンは不安定であり、そして同じ条件においてわずか1週間の試験後に再結晶した。メソ多孔性材料を用いて剤形化した活性成分の非晶安定性は、高い細孔容積及び細孔構造によるものである。これらは、ナノサイズの空隙中に活性成分を非晶状態でホストさせて、細孔壁は保存の間にストレス試験条件下での再結晶を防止する。
【0112】
《実施例8》
メソ多孔性炭素は難水溶性薬剤をホストするように選択される。メソ多孔性炭素はテンプレートとしてのSBA−15サブミクロン粒子を基材として合成される。ショ糖をSBA−15粒子の細孔チャンネル中に充填した。N2雰囲気中で900℃において炭化を行なった。1N−NaOH溶液中に溶解することによってテンプレートのシリカを除去し、そしてその後脱イオン水で洗浄した。このメソ多孔性炭素を空気中120℃で乾燥させた。
【0113】
図23は、メソ多孔性炭素の形態及び細孔構造を示す。難水溶性薬剤を剤形化するために、メソ多孔性炭素0.5g及びインドメタシン0.5gを一晩攪拌によりエタノール50mL中に分散させる。ブッチ290Bミニスプレードライヤーにより噴霧乾燥を行なう。XRD測定は、メソ多孔性炭素と共に噴霧乾燥したインドメタシン(50:50 重量)が非晶質形態であることを裏付けている。図24に示すSEM測定により、メソ多孔性炭素材料が明らかに変化していないことが確認される。このことは、インドメタシンの大部分が細孔チャンネル内部に位置していることを示す。メソ多孔性炭素と共に噴霧乾燥したインドメタシンの溶解は、UVオンラインサンプラー及び測定システムを備えたVarian VK7010溶解試験機により行なう。
【0114】
図25は、メソ多孔性炭素と共に噴霧乾燥したインドメタシン粉末のpH6.8緩衝液中の溶解プロフィールを示す。インドメタシンのメソ多孔性炭素との共噴霧乾燥は、インドメタシンの溶解速度を有意に高め、5分間で98%に達することを示している。難溶性インドメタシンの即時放出は、メソ多孔性炭素マトリックス内部の活性成分の非晶質形態によるものである。
【0115】
難水溶性成分のメソ多孔性材料との共噴霧乾燥は、ナノサイズの細孔構造内にこれらの活性成分を非晶質形態で閉じ込める独自の方法である。
【発明の詳細な説明】
【0001】
《関連出願との相互参照》
本出願は、2008年10月28日出願の米国仮出願第61/109,016号の優先権を主張するものであり、あらゆる目的で前記出願の教示はその全体が参考により本明細書に組み込まれる。
【0002】
《発明の分野》
本発明の技術分野は、製薬及び特殊化学的用途のためのメソ多孔性材料及び難水溶性有機成分を含む固体分散体(solid dispersion)又は固溶体に関する。剤形は、共噴霧乾燥法(co-spray drying)を用いて調製される。
【0003】
《発明の背景》
医薬活性成分(API)の難水溶性は、多くの医薬品の製品化の開発において最も困難な課題の一つである。米国薬局方に記載された薬剤の3分の1を超える数及び新規化学物質(NCE)の半分、又は新規活性成分は難水溶性又は不溶性である。難水溶性物質は、10g/Lより小さい、特に5g/Lより小さい、そして、更に特に1g/Lより小さい溶解度を有する。0.1g/Lより小さい水溶解度を有する物質は、ほとんど不溶性の物質又は不溶性の物質として分類される。これらの薬剤が投与された場合、消化液中でのその難溶性のために生体利用率が通常極めて低く、不安定且つ不十分な吸収を引き起こすことによって治療効果の減少させることがある。多くのNCEはその水不溶性又は難水溶性のため製品化し難い。
【0004】
難水溶性薬剤の溶解速度を高めて生体利用率を増加させるために多くの努力がなされてきた。溶解速度を改善するための1つの方法は、特定の剤形化法によるものであり、最も一般的であるのは粒度を低減させること(Jinno, J. et al., Journal of Controlled Release, 111:56-64 (2006); Kirsten, Westesen et al., Particles with modified physicochemical properties, their preparation and uses, 米国特許第6,197,349号明細書 (2001)参照)、シクロデキストリン中の包接(Palmieri, G. F. et al., ISTP Pharma Science 7:174-181 (1997); Xiang, Tian-Xiang et al., Pharmaceutical formulation for poorly water soluble camptothecin analogues, 米国特許第6,653,319号明細書 (2003)参照)、固溶体又は固体分散体中での不活性な水溶性薬剤担体の使用、ナノ結晶質形態の(Wunderlich, et al., Gelatin or collagen hydrolysate containing drug formulation that provides for immediate release of nanoparticle drug compounds, 米国特許第5,932,245号明細書 (1999)参照)又は非晶質形態のAPIである。
【0005】
種々のアプローチの中で、前記種類の薬剤の溶解速度を改善するために固体分散体又は固溶体の剤形が用いられてきた。固体分散体は通常、典型的には小細孔容積及び低比表面積を有する可溶性の有機ポリマーを用いて剤形化される(Yamane, Shogo et al., Solid formulation with improved solubility and stability, and method for producing said formulation, 米国特許出願公開第2006/0153913号明細書; Hoshino, Takafumi et al., Solid dispersion preparation, 米国特許出願公開第2007/0248681A1号明細書参照)。報告された2つの方法は、水溶性担体中の固体薬剤分散体の形成又は界面活性剤及び湿潤剤の添加を含む(Storey, D. E. Drug information Journal 30:1039-1044 (1996)参照)。水溶性担体を使用する場合、固体分散体は通常、共溶融、急冷及び粉砕の方法により達成される(Henricus, R. M. Oral Solid solution formulation of poorly water-soluble active substance, 米国特許出願公開第2005/0008697号明細書参照)。これは、API類を他の固体材料(例えば、PEG及びグリコール薬剤担体)と共に溶融して、事実上半固体及びろう質(waxy)を形成し、次に極低温まで冷却することによって硬化させることを含む。次いで、この混合物を粉砕し、篩分けし、比較的多量の賦形剤と混合し、そして硬ゼラチンカプセルに封入するか又は錠剤に圧縮する。これらの操作は、投薬形態(dosage form)の製造に対しスケールアップすることが難しい。代わりに、溶媒除去法(Straub, Julie et al., Porous Drug matrics and Methods of manufacture thereof, 米国特許出願公開第2005/0048116号明細書, Straub, Julie et al., Porous Drug Matrices and Methods of manufacture thereof, 米国特許第6,932,983号明細書(2005)参照)を用いて薬剤の固体分散体を生成することもできる。石鹸様界面活性剤を難水溶性薬剤の剤形化に組み込むことは、或る場合に、経口投与後に刺激性の副作用を引き起こすことがある。
【0006】
一般に、固体分散体の商業的適用は、主に製造困難性及び安定性の問題のせいで、極めて限られていた。開発されたこれらの投薬形態は、多くの場合、例えば、低い製品熱力学的安定性、製造可能性に関する問題(例えば、バッチ間での低い再現性)、及び商業生産に向けてのスケールアップの限界といった欠点を有する(Serajuddin, A. T. M. Journal of Pharmaceutical Sciences, 88:1058-1066 (1999)参照)。
【0007】
上記のように、別の方法は、薬剤粒子と溶解媒体との間の接触表面積を増やすことを意図した粒度の低下である。この方法の欠点は、粒度の不安定性及び粉砕後(post-milling)保存の間の凝集であり、これによって溶解速度の変動が生じる(Ng, W. K. et al., Pharmaceutical Research 25:1175-1185 (2008) 参照)。或る場合に、粒度の広範な分布は胃出血及び吐き気という副作用を生ずることがある。
【0008】
代わりのアプローチは、薬剤を他の添加剤(例えば、多孔質粉末)と共磨砕(co-grinding)することにより、非晶質形態の薬剤を製造することである(Yonemochi, E. et al., J. Colloid Interphase Sci. 173:186-191 (1995)参照)。急速な乾燥及び冷却は結晶成長を防ぐので、噴霧乾燥及び急冷も非晶質の医薬品の製造に適用される(Gupta, P. et al., Pharmaceutical Development and Technology, 10:273-281 (2005)参照)。しかしながら、非晶質材料は一般に熱力学的に不安定であり保存後に結晶形に戻る傾向があるので、許容貯蔵寿命を達成すべくAPI類を安定化することが最大の課題である。非晶質化(amorphization)により改善された溶解速度は、非晶質API類が結晶形に戻った場合、輸送及び保存の間で失われてしまうであろう。
【0009】
一連の新たにオーダーされたメソ多孔性材料(これは、2〜10nmの間で系統的に変化することのできる規則的な粒度分布を有しているMS41ファミリーと呼ばれる)の発見は、触媒、吸着及び薬剤学的利用の分野における新たな可能性を開いた。更に、種々の構造のメソ多孔性シリカ材料の中で、非イオン性ポリマー界面活性剤により合成されたSBA−15は、そのメソ構造的多様性の理由だけでなくより大きな細孔及びより厚い壁を有する理由から、最も幅広く研究されている。その粒度は30nmまで調整することができる。種々の細孔径(pore size)及び形状(geometries)を得ることが実現可能であるので、典型的な微小孔質材料について示される分子よりも大きい分子をホストする(hosting)広範な可能性が提供される。更に、細孔壁の広い表面積は高濃度のシラノール基により占められるので、多孔性材料を種々の表面官能基で変性することができる。従って、吸着特性は、種々の目的の分子ホスティングに対して調節することができる。
【0010】
以上のことから、難水溶性、水にほとんど不溶性、又は水に不溶性である薬剤及び特殊化学品を剤形化することについての必要性が存在する。消化管内でのその吸収を改善しそれによってその有効性を向上させるために、これらの化合物の溶解速度を改善する剤形が必要である。APIを非晶質化して溶解速度を高めるとともにその後の長期保存の間その非晶質形態を安定化させることができる新規な剤形及び方法を開発することが強く望まれている。本発明はこれらの及び他の要求を満たすものである。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、薬剤学的剤形及び特殊化学薬品剤形を提供するものであって、前記剤形は、賦形剤として高い表面積及び大きな細孔容積を有するメソ多孔性材料又は組成物を利用するものである。或る観点において、前記剤形は、共噴霧乾燥法を使用して非晶質の活性成分を調製する方法により製造されるものであって、この場合、前記活性成分は、ナノサイズのメソ多孔性チャンネル内に高い均質性で閉じ込められる。
【0012】
従って、或る態様によれば、本発明は医薬組成物を提供するものであって、前記医薬組成物は:
実質的に水不溶性の医薬活性成分(pharmaceutical active ingredient);及び
複数のナノ細孔を有するメソ多孔性組成物であって、前記実質的に水不溶性の医薬活性成分を前記メソ多孔性組成物と共に噴霧乾燥して、前記医薬活性成分をナノ細孔内に閉じ込める、前記メソ多孔性組成物;
を含むものである。
【0013】
或る観点によれば、活性成分の非晶質形態は、ナノ空間内に閉じ込められることによって、極めて安定に維持される。本調製方法は、再現性がありかつ容易に拡大縮小することができる。或る観点において、本発明は、製品不安定性の問題及び現在の固体分散法の製造性の問題を克服する。
【0014】
本発明は、新規な剤形及び方法を提供して、難水溶性の活性化合物、特に、医薬品活性成分(API)の溶解速度を改善するものである。或る観点において、活性成分をメソ多孔性材料又は組成物と共噴霧乾燥する直接的な方法は、再現性があり且つ他の固体分散技術と比べると商業的生産に対し容易に拡大縮小をすることができる。
【0015】
従って、別の態様によれば、本発明は、医薬組成物の調製方法を提供するものであって、前記方法は:
適当な溶媒又は溶媒の混合物中で、実質的に水不溶性の医薬活性成分を、複数のナノ細孔を有するメソ多孔性組成物と混合すること;及び
実質的に水不溶性の医薬活性成分をメソ多孔性組成物と共に噴霧乾燥して、ナノ細孔内に医薬活性成分を閉じ込め、それにより医薬組成物を製造すること;を含む。
【0016】
場合によっては、実質的に水不溶性の医薬活性成分は、鎮痛剤、解熱剤、抗コレステロール剤又はコレステロール低下剤、抗炎症剤、抗菌剤、うっ血除去剤及び抗ヒスタミン剤から選択される構成員である。
【0017】
これらの及び他の観点、目的及び態様は、図面及び以下の詳細な説明から、より明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】SBA−15と共に噴霧乾燥したイブプロフェン(50:50 重量%)の溶解プロフィール及び純粋なイブプロフェンの結晶粉末との比較を示す。
【0019】
【図2】メソ多孔性SBA−15と共噴霧乾燥したイブプロフェンの、40℃/75%RHで(a)調製時、保存後(b)3ヶ月、(c)6ヶ月、(d)10ヶ月、(e)12ヶ月のXRDパターン;及び(f)市販のイブプロフェン結晶の対照サンプルのXRDパターンを示す。
【0020】
【図3】共噴霧乾燥したイブプロフェン/SBA−15の保存後のXRDパターン、並びに、市販のイブプロフェン結晶を1重量%及び5重量%有するサンプルとの比較を示す。
【0021】
【図4】(A)噴霧乾燥したSBA−15サブミクロン粒子及び(B)SBA−15と共噴霧乾燥したイブプロフェン(50:50 重量)のSEM画像を示す。
【0022】
【図5】噴霧乾燥したイブプロフェン(Sigma)のSEM画像を示す。
【0023】
【図6】噴霧乾燥したイブプロフェン(Sigma)のXRDパターンを示す。
【0024】
【図7】SBA−15サブミクロンと共噴霧乾燥したイブプロフェンのTEM画像を示す(左:高倍率、右:低倍率)。
【0025】
【図8】SBA−15と共噴霧乾燥したイブプロフェン(50:50 重量)の錠剤型溶解プロフィール及び結晶形の市販イブプロフェンとの比較を示す。
【0026】
【図9】異なる薬剤配合量の25%及び75%で噴霧乾燥したイブプロフェン/SBA−15の溶解プロフィールを示す。
【0027】
【図10】異なる薬剤充填量の25%及び75%で噴霧乾燥したイブプロフェン/SBA−15のXRDパターンを示す。
【0028】
【図11】異なる量のエタノールにおいて噴霧乾燥したイブプロフェン/SBA−15の溶解プロフィールを示す。
【0029】
【図12】サイズの異なるSBA−15粒子(A:10ミクロンまでのミクロン粒子;B:粒度200〜400nmのナノ粒子)のSEM画像を示す。
【0030】
【図13】種々のサイズのSBA−15粒子と共に噴霧乾燥したイブプロフェンの溶解プロフィールを表す。
【0031】
【図14】ボールミル磨砕、含浸、及び共急冷によって、SBA−15と共に剤形化された剤形化イブプロフェンのXRDパターンを示す。
【0032】
【図15】SBA−15と共に噴霧乾燥したインドメタシンの粉末型及び錠剤型の溶解プロフィール、並びに、未処理のインドメタシン結晶との比較を示す(pH6.8リン酸緩衝液900mL、SBA−15と共に噴霧乾燥したインドメタシン50mgの粉末型又はコーンスターチ800mgと共に1トンプレスした錠剤、未処理結晶型は25mgである)。
【0033】
【図16】噴霧乾燥したフェノフィブラートの溶解プロフィール及び市販フェノフィブラートとの比較を示す(溶解媒体:0.5%のTween80を含む0.1N HCl900mL;フェノフィブラート20mg及び噴霧乾燥したフェノフィブラート中の同量の活性成分を30℃/100rpmで試験する)。
【0034】
【図17】噴霧乾燥したインドメタシン/SBA−15サブミクロン粒子のSEM画像を示す。
【0035】
【図18】噴霧乾燥したカルバマゼピン/SBA−15サブミクロン粒子のSEM画像を示す。
【0036】
【図19】噴霧乾燥したウルソデオキシコール酸/SBA−15サブミクロン粒子のSEM画像を示す。
【0037】
【図20】噴霧乾燥したフェノフィブラート/SBA−15サブミクロン粒子のSEM画像を示す。
【0038】
【図21】(a)カルバマゼピン及び(b)インドメタシンと共噴霧乾燥したメソ多孔性SBA−15サブミクロン粒子の40℃/75%RHで1年間保存後のXRDパターンを示す。
【0039】
【図22】(a)フェノフィブラート及び(b)ウルソデオキシコール酸と共噴霧乾燥したメソ多孔性SBA−15サブミクロン粒子の40℃/75%RHで6ヶ月間保存後のXRDパターンを示す。
【0040】
【図23】メソ多孔性炭素の形態及び細孔構造を表すTEM画像を示す。
【0041】
【図24】メソ多孔性炭素のSEM画像、並びに、メソ多孔性炭素と共噴霧したインドメタシン(50:50 重量)のSEM画像を示す。
【0042】
【図25】メソ多孔性炭素と共に噴霧乾燥した粉末型のインドメタシンの溶解プロフィールを示す(媒体:pH6.8リン酸塩緩衝液900mL、メソ多孔性炭素と共に噴霧乾燥したインドメタシン65mg(50:50 重量%)、温度37℃、攪拌速度100rpm)。
【0043】
《発明の詳細な記載》
I.定義
本明細書中で用いる「メソ多孔性組成物」は、平均粒径少なくとも約2nm〜約50nmの細孔を有する多孔質固体(porous solid)を含む。本明細書で用いる「平均粒径」は、組成物中の実質的に全ての孔径の平均を含む。
【0044】
用語「実質的に水不溶性」、「難水溶性」及び「不溶性」は、これらの用語がMack Publishing Companyにより出版されたU.S.P., Remington: "Pharmaceutical Science," 18th editionに定義されそして業界で用いられているように、水に不溶性、水にほとんど不溶性又は水にごくわずかに可溶性である活性成分を含む。或る観点において、難水溶性の化合物又は実質的に水不溶性の化合物は、好ましくは、水(25℃)に≦10g/L、特に、≦5g/L、及び特に好ましくは、≦1g/Lの溶解度を有する。
【0045】
語句「改善された水溶性を有する」は、前記の実質的に水不溶性の薬剤を、水中でのその溶解度を改善することにより通常の剤形化方法によって医薬品として用いることができる態様を含む。特に、本明細書に記載の方法を用いれば、約20℃での水中の溶解度が約5倍まで、好ましくは、約10倍まで、そして更に好ましくは、100倍以上まで改善されるということを指している。
【0046】
用語「非晶質」は、特定的でない種類、特徴、パターン又は構造、すなわち、結晶質でない不定の構造を有する化合物を含む。活性成分の非晶状態を用いると、その安定な非晶質形態のゆえに、活性成分の溶解速度はその結晶形と比べ有意に高められる。
【0047】
II.態様
或る態様において、本発明は医薬組成物を提供するものであって、前記医薬組成物は:
実質的に水不溶性の医薬活性成分;及び
複数のナノ細孔を有するメソ多孔性組成物であって、実質的に水不溶性の医薬活性成分をメソ多孔性組成物と共に噴霧乾燥してナノ細孔内に医薬活性成分を閉じ込める前記メソ多孔性組成物;を含むものである。
【0048】
広範な種類の活性成分が本発明での使用に適している。適当な活性成分としては、以下に限定されるものではないが、制酸薬、鎮痛薬、抗炎症薬、解熱薬、抗生物質、抗菌剤、緩下薬、食欲抑制薬、抗ヒスタミン薬、抗ぜんそく薬、抗利尿薬、整腸剤、抗片頭痛薬、生物学的作用剤(biological;タンパク質類、ペプチド類、オリゴヌクレオチド類等)、鎮痙薬、鎮静薬、抗多動作用剤(antihyperactive)、抗高血圧剤、抗コレステロール薬又はコレステロール降下薬、精神安定薬、うっ血除去薬、β遮断薬及びそれらの組合せを挙げることができる。本発明によると、フェノフィブラート及びアトルバスタチンが特に好ましい。
【0049】
実質的に水不溶性の医薬活性成分としては、例えば、心臓血管薬(例えば、強心配糖体、クロフィブレート及びプロブコール);血糖降下剤;鎮静薬/催眠薬(例えば、バルビツレート);及び抗痙攣薬(例えば、カルバマゼピン、メフェニトイン及びフェニトイン);精神薬理剤(例えば、パーフェナジン、鎮痛薬、解熱薬及び抗炎症剤、例えば、ナプロキセン、オキシコドン及びインドメタシン);抗腫瘍薬(例えば、アルミトリン);並びに、抗菌剤(例えば、エリスロマイシンエストレート)を挙げることができる。本発明によると、不溶性薬剤の特に好ましい種類として、鎮痛薬、解熱薬、抗炎症剤、抗菌剤、うっ血除去薬及び抗ヒスタミン薬を挙げることができる。本発明によると、イブプロフェンが特に好ましい。
【0050】
本発明に適当な他の薬剤又は生理活性剤としては、麻酔薬(例えば、ブタニリカイン(butanilicain)、ホモカイン(fomocain)、リドカイン、プリロカイン、テトラカイン及び エトミデート);抗生物質(例えば、ホスホマイシン、ホスミドマイシン及びリファペンチン(rifapentin));抗高血圧薬(例えば、ミノキシジル、ジヒドロエルゴトキシン及びエンドララジン);抗低血圧薬(例えば、ジヒドロエルゴタミン);全身性抗真菌薬(例えば、ケトコナゾール、ミコナゾール及びグリセオフルビン);抗炎症薬(例えば、インドメタシン、ジクロフェナク、イブプロフェン、ケトプロフェン及びピルプロフェン);抗ウイルス薬(例えば、アシクロビル、ビダラビン及び免疫グロブリン);ACE阻害薬(例えば、カプトプリル及びエナラプリル);β遮断薬(例えば、プロプラノロール、アテノロール、メトプロロール、ピンドロール、オクスプレノロール及びラベタロール);気管支拡張剤(例えば、イプラトロピウムブロミド及びソブレロール);カルシウム拮抗薬(例えば、ジルチアゼム、フルナリジン、ベラパミル、ニフェジピン、ニモジピン及びニトレンジピン);強心配糖体(例えば、ジギトキシン、ジゴキシン、メチルジゴキシン及びアセチルジゴキシン);セファロスポリン(例えば、セフチゾキシム、セファレキシン、セファロチン及びセフォタキシム);細胞増殖抑制剤(例えば、クロルメチン、シクロホスファミド、クロラムブシル、シタラビン、ビンクリスチン、マイトマイシンC、ドキソルビシン、ブレオマイシン、シスプラチン、タキソール、ペンクロメジン及びエストラムスチン);催眠薬(例えば、フルラゼパム、ニトラゼパム及びロラゼパム);向精神薬(例えば、オキサゼパム、ジアゼパム及びブロマゼパム);ステロイドホルモン(例えば、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、デキサメタゾン、プロゲステロン、プレグネノロン、テストステロン及びテストステロンウンデカノエート);血管拡張薬(例えば、モルシドミン、ヒドララジン及びジヒドララジン);脳血管拡張薬(例えば、ジヒドロエルゴトキシン、シクロニカート及びビンカミン);ユビキノン及びその類似体(例えば、ユビデカレノン及びアトバクオン(atovaquon));脂溶性ビタミン類(例えば、ビタミンA、E、D、K及びそれらの誘導体);殺虫剤、除草剤及び農薬(例えば、アセフェート(acephate)、シフルトリン、アジンホスホメチル(azinphosphomethyl)、シペルメトリン、フェンクロホス(fenclofos)、ペルメルトリン(permelthrin)、ピペロナール、テトラメトリン及びトリフルラリン)を挙げることができる。
【0051】
或る観点において、実質的に水不溶性の医薬活性成分は、組成物中に約0.1%〜約75%w/w、好ましくは、約10%〜約60%w/w、そしてより好ましくは、約30%〜約50%w/wで存在する。
【0052】
本発明の活性成分は、好ましくは、医薬活性成分である。しかしながら、活性成分として農薬及び特殊化学品も同様に挙げることができる。
【0053】
A.メソ多孔性材料
或る好ましい観点において、メソ多孔性組成物を用いた本発明の医薬組成物は、シリカ、炭素、アルミナ、カーバイド、ケイ化物、窒化物及び酸化物からなる群から選択される。或る観点において、メソ多孔性組成物は、酸化物(例えば、ケイ酸塩)を含む。或る好ましい観点において、メソ多孔性組成物は、MCM−41、MCM−48、SBA−15、MCF、MSU及びCMK−3からなる群から選択され、SBA−15及びMCM−41が特に好ましい(Vallet-Regi et al., Angewandte Chemie International Edition, 46: 7548 - 7558 (2007)参照)。
【0054】
或る観点において、メソ多孔性材料は、2nm〜10nmの間で系統的に変化することができる細孔径正規分布(regular pore size distribution)を有するMS41ファミリー内にある(Ciesla et al. Microporous Mesoporous Mater. 27: 131-149 ( 1999)参照)。或る観点において、SBA−15は非イオン性ポリマー界面活性剤により合成をすることができそしてメソ構造的多様性を有するだけでなく大きな細孔及び厚い壁も有する。細孔径は30nmまで調整することができる。細孔壁の広い表面積は高濃度のシラノール基によって占められているので、多孔性材料を種々の表面官能基により変性させることができる。従って、吸収特性は種々の目的の分子ホスティングのために調整することができる。或る観点において、メソ多孔性材料は表面積約300〜約2000m2/gを有し、そしてより好ましくは、比表面積約400〜約1200m2/gを有する。
【0055】
或る好ましい観点において、メソ多孔性組成物の使用は、非晶状態の活性成分1種以上の使用を可能にする。活性成分の非晶質形態は、ストレス保存条件下であってさえもナノサイズのメソ多孔性構造体中で安定化している。
【0056】
或る観点において、メソ多孔性組成物は粒度約0.1μm〜約100μmを有し、好ましくは、メソ多孔性組成物は粒度約0.3μm〜約50μmを有し、そしてより好ましくは、メソ多孔性組成物は粒度約0.5μm〜約30μmを有する。棒様形態(rod-like morphology)を有する粒子について、前記粒子の径は約0.1μm〜約50μmであり、そしてより好ましくは、メソ多孔性組成物は平均径約0.2μm〜約30μmを有する。
【0057】
或る観点において、メソ多孔性組成物は平均径約1nm〜約100nmを有し、好ましくは、平均径約1.5nm〜約50nmを有し、そしてより好ましくは、平均径約2nm〜約30nmを有する複数の細孔を含む。
【0058】
或る他の観点において、メソ多孔性組成物は平均容積約0.2cm3/g〜約4.0cm3/g、そしてより好ましくは、平均容積約0.8cm3/g〜約3.0cm3/gを有する複数の細孔を含む。
【0059】
B.調節された放出(modified release)
或る観点において、本発明の剤形は制御された速度で(例えば、徐放(sustained release)、持続放出(prolonged release)、延長放出(extended release)又は遅延放出(retarded release))薬剤を送達する。多くの場合に、前記機序の組合せを用いる投薬形態を設計して特定の活性成分について特に望ましい放出プロフィールを達成することが、実際的である。多様の(multiple)ナノ細孔、例えば、複数の細孔径及び細孔容積を提供する投薬形態構造体が、1種以上の活性成分の放出を制御するため多数の種々の機序を提供することにおける柔軟性に対して特に好都合であることは、当業者に容易に理解されるであろう。
【0060】
調節された放出の投薬形態の1つの目的は、薬剤のための時間に対する望ましい血中濃度(薬物動態、又はPK)プロフィールを提供することである。基本的に、薬剤のPKプロフィールは、血中への薬剤の吸収速度、及び、血液からの薬剤の排出速度により支配される。薬剤は、血液(循環系)中に吸収されるためには、最初に胃液中で溶解されなければならない。胃液中での溶解が薬剤吸収における律速段階である比較的急速に吸収される薬剤に対して、溶解速度(投薬形態からの薬剤放出)を制御することは患者の循環系中への薬剤吸収の速度を制御することを可能にする。PKプロフィールのタイプ、及び対応する、望ましい溶解又は放出プロフィールのタイプは、他の要因の中でも特に、特定の活性成分、メソ多孔性組成物及び治療される生理的状態に依存する。
【0061】
1つの特に望ましいPKプロフィールは、投薬形態からの薬剤の1回以上の投与量の放出が液体媒体による投薬形態の接触後に(例えば、患者による摂取後に)予め決められた時間だけ遅れる遅延放出溶解プロフィールを送達する投薬形態によって達成される。遅延時間(「時間のずれ」)は、活性成分の即時放出(「遅延バースト(delayed burst)」)、又は活性成分の徐放(持続放出、延長放出、又は遅延(retarded)放出)(「遅延後の徐放(delayed then sustained)」)のいずれかによって伴わせることができる。これらのPKプロフィールは、メソ多孔性材料、活性成分(非晶質又は結晶質を問わず)及びコーティングの種々の組合せを用いて設計することができる。
【0062】
或る観点において、本発明はAPIの一部が非晶質でありかつAPIの別の部分が結晶質である剤形を提供する。API類は同一又は異なっていることができる。この方法において、非晶質APIは急速な放出を示すのに対して、結晶形は徐放性であるか又は制御放出性である。例えば、非晶質薬剤は細孔容積に充填(load)されることができるのに対して、結晶質粒子はメソ多孔性マトリックスの外側に存在することができる。或る態様において、非晶質部分が或る一つの薬剤であるのに対して、結晶質薬剤は別の薬剤である。或る場合に、本明細書に記載の固体分散体は非晶質形態だけで存在する。
【0063】
或る他の観点において、本発明に係る剤形の活性成分は、遅延放出のために結晶形としてメソ多孔性マトリックス中に含まれる。細孔の構造及び容積は、適合した(tailored)放出プロフィールを達成するために調節することができる。
【0064】
結晶形、非晶質形態又はそれらの組合せの形態にある活性成分は、遅延放出顆粒を形成するように調節することができる。或る観点において、溶解遅延コーティングのコーティング層で顆粒をコーティングする。コーティングされていない形態では、前記顆粒は急速放出顆粒となり、コーティングされた顆粒より速くその内容物を放出する。溶解遅延性コーティングはポリマー材料、例えば、腸溶性ポリマー(「腸溶性ポリマー」という用語は、より酸性度の高い胃の環境に比べてより酸性度の低い腸の環境中で選択的に可溶性であるポリマーに関する技術用語である)であることができる。
【0065】
腸溶性ポリマーの例としては、酢酸フタル酸セルロース、酢酸コハク酸セルロース、メチルセルロースフタレート、エチルヒドロキシセルロースフタレート、ポリビニルアセテートフタレート、ポリビニルブチレートアセテート、酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、スチレンマレイン酸モノエステル共重合体、アクリル酸メチル−メタクリル酸共重合体、メタクリレート−メタクリル酸−アクリル酸オクチル共重合体等を挙げることができる。これらは単独で又は組み合わせて用いることができる。腸溶性コーティングの例としては、デンプン及び/又はデキストリンも挙げることができる。
【0066】
好ましい腸溶性コーティング材料は、市販の「Eudragit」腸溶性ポリマー、例えば、「Eudragit L(商標)」、「Eudragit S(商標)」及び「Eudragit NE(商標)」であり、単独で又は可塑剤と共に用いられる。前記コーティングは通常液体媒体を用いて付与され、そして可塑剤の性質は媒体が水性であるか又は非水性であるかによる。水性可塑剤として、プロピレングリコール又は「Citroflex(商標)」若しくは「Citroflex A2(商標)」(主成分はクエン酸トリエチル又はクエン酸アセチルトリエチル)を挙げることができる。非水性可塑剤として、これらと共に、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル及びセバシン酸ジブチルを挙げることができる。
【0067】
或る他の観点において、本発明の医薬組成物は、メソ多孔性組成物又は材料を有しない医薬組成物と比べて増加した溶解プロフィールを有する。
【0068】
他の場合には、本明細書に記載の組成物及び方法は、メソ多孔性材料のシラノール基を用いてグラフト有機シラン((RO)3SiR’)を形成するように表面を機能化する。この方法により、医薬品活性成分は表面との相互作用を増加させた。或る他の場合には、表面をアミノ基で機能化する。このことによっても薬剤放出を調節することができる(Vallet-Regi et al., Angewandte Chemie International Edition, 46: 7548 - 7558 (2007)参照)。
【0069】
C.製造方法
本発明は、本明細書に記載した剤形を製造又は調製する方法を提供する。或る観点において、本発明の方法は、固体分散体内に非晶状態の1種以上の活性成分を形成する能力を有する固体分散体を調製することに関する。活性成分の非晶質形態は、ストレス保存条件下でさえもナノサイズのメソ多孔性構造体中で安定化している。
【0070】
或る観点において、本発明の剤形は、適当な溶媒又は溶媒の混合物中に溶解した難水溶性活性成分とメソ多孔性材料とを共噴霧乾燥する方法によって製造される。最終の固体分散体は、重量基準(重量%)で:(a)活性成分1%〜75%、及び、(b)100重量%までの残量の多孔性無機材料(例えば、メソ多孔性シリカ及び炭素)を含む。或る観点において、活性成分は、イブプロフェン、フェノフィブラート、インドメタシン、カルバマゼピン及びウルソデオキシコール酸であることができる。
【0071】
一つの態様によれば、本発明は、医薬組成物の製造方法であって:
適当な溶媒又は溶媒の混合物中で、実質的に水不溶性の医薬活性成分を複数のナノ細孔を有するメソ多孔性組成物と混合すること;及び
前記実質的に水不溶性の医薬活性成分をメソ多孔性組成物と共に噴霧乾燥して前記ナノ細孔内に医薬活性成分を閉じ込め、それによって医薬組成物を製造する;
前記製造方法を提供する。
【0072】
一つの観点において、噴霧乾燥は、難水溶性薬剤を有機溶媒(例えば、エタノール)中に溶解することにより実施する。適当な溶媒又は共溶媒として、C1−C6アルカノール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、ハロゲン化溶媒類、脂環式溶媒類、芳香族複素環式溶媒類、及びそれらの混合物を挙げることができる。次いで、攪拌条件下で固体分散体を作るのに充分な時間にわたり(例えば、一晩)、メソ多孔性粉末を溶液中に分散させる。次には、固体分散体を共噴霧乾燥することができる。
【0073】
典型的な噴霧乾燥装置は、一般に、乾燥室、乾燥室内に溶媒含有フィードを噴霧する噴霧手段、乾燥室内に流入して噴霧された溶媒含有フィードから溶媒を除去する加熱乾燥気体の供給源、及び乾燥室の下流に位置する生成物収集手段を含む。前記装置の例としては、ブッチ(Buchi)ミニスプレードライヤーB290を挙げることができる。或る場合には、噴霧乾燥装置は、溶媒含有フィードを噴霧するための二流体ノズルを備えている。前記ノズルは、フィード溶液の小滴、典型的には直径5〜30μmの小滴を生成し、及び液体フィード液滴と乾燥気体との乱流混合を生じさせて、流体を急速乾燥し、固体粒子を形成させる。前記噴霧乾燥装置は、薬剤と多孔性組成物又は材料との実質的に非晶質かつ実質的に均一な固体−非晶質分散体を形成するのに有効である。入口温度及び出口温度は、それぞれ25℃〜150℃(例えば、81℃)及び25℃〜120℃(例えば、50〜55℃)であることができる。
【0074】
噴霧乾燥が製造に好ましい方法であるが、方法はこれに限定されるものではない。噴霧乾燥方法のほかに、ボールミル磨砕法、含浸法、共急冷法及び混合法を用いて難溶性薬剤をメソ多孔性材料中に充填することができる。他の方法として、例えば、当業者に公知のドライブレンディング(すなわち、直接圧縮)又は湿式造粒法を挙げることができる。ドライブレンディング(直接圧縮)法によれば、1種又は複数種の活性成分を賦形剤と共に適当なブレンダーでブレンドし、圧縮機に直接移し加圧して錠剤にする。湿式造粒法によれば、1種又は複数種の活性成分、適当な賦形剤、及び湿式バインダー(例えば、水性調理デンプンペースト(aqueous cooked starch paste)、又はポリビニルピロリドンの溶液)の溶液又は分散体を混合しそして造粒する。その代わりに、乾式バインダーを賦形剤の中に加え、そしてこの混合物を水又は他の適当な溶媒を用いて造粒することができる。湿式造粒用の適当な装置は当業者に公知であり、例えば、低剪断ミキサー、例えば、遊星形ミキサー;高剪断ミキサー;及び流動層、例えば、回転流動層(rotary fluid bed)を挙げることができる。得られる造粒された材料を乾燥させ、そして場合により追加的成分、例えば、補助剤及び/又は賦形剤、例えば、潤滑剤、着色剤等とドライブレンドする。そして、最終的なドライブレンドは圧縮に適切となる。直接圧縮法及び湿式造粒法は当業者に公知である。
【0075】
多孔性無機材料は、典型的には、大きさ0.1μm〜100μmの範囲であり、細孔径1〜100nmの範囲でありそして細孔容積0.2〜4.0cm3/gの範囲である。
【0076】
有利なことに、本発明の方法は、難水溶性の薬学的活性成分の溶解プロフィールを改善するのに有効である。調製された固体分散体は、40℃/75%RHでの1年間のストレス試験条件下において再結晶に対し明確な物理的安定性を有する。いかなる特定の理論にとらわれることなく、この有意な改善は共噴霧乾燥によってメソ多孔性材料のナノサイズの細孔内に非晶質薬剤を閉じ込めることにより達成されると考えられる。メソ多孔性マトリックス中に取り込まれる薬剤の量は、調製の間に添加された薬剤の量に応じて、最終の固体粉末中に75重量%までの割合に達することができる。
【0077】
或る態様において、活性成分を、例えば、メソ多孔性SBA−15サブミクロンと共噴霧乾燥すると、活性成分の大部分がSBA−15の多孔性構造体内に閉じ込められるので、外表面の形態に明らかな変化は見られない。内部細孔チャンネルが活性成分で満たされると、次に外表面が極めて薄い層の活性成分(<10nm)でコーティングされることができる。固体細孔壁は40℃/75%RHで保存の間、閉じ込められた活性成分の再結晶を防止する。更に、表面に充填される活性成分の量は制御することができる。
【0078】
難水溶性薬剤をナノ閉じ込めする目的で、メソ多孔性材料(例えば、シリカ、炭素、及びアルミナ)をマトリックスとして用いて難溶性薬剤を剤形化し、そして非晶質形態を安定させて長期保存を可能とする。
【0079】
保存安定性は、40℃/75%RHと表記する相対湿度75%及び温度40℃の苛酷な保存条件により試験した。
【0080】
D.追加の賦形剤
或る態様において、本発明の剤形に追加の賦形剤を用いる。例えば、適当な充填剤としては、水溶性の圧縮性炭水化物類、例えば、糖類、例えば、デキストロース、ショ糖、マルトース、及びラクトース、糖アルコール、例えば、マンニトール、ソルビトール、マルチトール、キシリトール、デンプン加水分解物類、例えば、デキストリン類、及びマルトデキストリン類等、水不溶性材料、例えば、微結晶性セルロース又は他のセルロース誘導体、水不溶性材料、例えば、リン酸二カルシウム、リン酸三カルシウム等及びそれらの混合物を挙げることができる。
【0081】
適当な結合剤としては、乾式ブレンダー、例えば、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等;湿式バインダー、例えば、水溶性ポリマー、例えば、ヒドロコロイド、例えば、アカシアゴム、アルギン酸塩、寒天、グアーガム、ローカストビーン、カラギーナン、カルボキシメチルセルロース、タラ(tara)、アラビアゴム、トラガカント、ペクチン、キサンタン、ジェラン(gellan)、ゼラチン、マルトデキストリン、ガラクトマンナン、プスツラン(pusstulan)、ラミナリン、スクレログルカン、イヌリン、ウィーラン(whelan)、ラムサン(rhamsan)、ズーグラン(zooglan)、メチラン(methylan)、キチン、シクロデキストリン、キトサン、ポリビニルピロリドン、セルロース誘導体(cellulosics)、ショ糖、デンプン類等;並びに、これらの誘導体及び混合物を挙げることができる。
【0082】
適当な崩壊剤としては、デンプングリコール酸ナトリウム(sodium starch glycolate)、架橋ポリビニルピロリドン、架橋カルボキシメチルセルロース、デンプン類、微結晶性セルロース等を挙げることができる。
【0083】
適当な潤滑剤としては、長鎖脂肪酸及びその塩、例えば、ステアリン酸マグネシウム及びステアリン酸、タルク、グリセリド及びろうを挙げることができる。
【0084】
圧縮によりコア又はコア部分を作る適当な滑剤(glidant)としては、コロイド状二酸化ケイ素等を挙げることができる。
【0085】
放出調節性賦形剤として用いるのに適当な膨潤性の侵食可能な(erodible)親水性材料としては:水膨潤性セルロース誘導体、ポリアルカレングリコール、熱可塑性ポリアルカレンオキシド、アクリルポリマー、親水コロイド、クレー(clay)、ゲル化デンプン、及び膨潤架橋ポリマー(swelling cross-linked polymer)、及び誘導体、コポリマー、及びそれらの組合せを挙げることができる。適当な水膨潤性セルロース誘導体の例としては、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、架橋ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシイソプロピルセルロース、ヒドロキシブチルセルロース、ヒドロキシフェニルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシペンチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルブチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロースを挙げることができる。適当なポリアルカレングリコールの例としては、ポリエチレングリコールを挙げることができる。適当な熱可塑性ポリアルカレンオキシドの例としては、ポリ(エチレンオキシド)を挙げることができる。適当なアクリルポリマーの例としては、カリウムメタクリレートジビニルベンゼンコポリマー、ポリメチルメタクリレート、CARBOPOL(ポリマー量架橋アクリル酸ホモポリマー及びコポリマー)等を挙げることができる。適当な親水コロイドの例としては、アルギン酸塩、寒天、グアーガム、ローカストビーンガム、カッパカラギーナン、イオタカラギーナン、タラ、アラビアゴム、トラガカント、ペクチン、キサンタンガム、ジェランガム、マルトデキストリン、ガラクトマンナン、プスツラン、ラミナリン、スクレログルカン、アラビアゴム、イヌリン、ペクチン、ゼラチン、ウィーラン、ラムサン、ズーグラン、メチラン、キチン、シクロデキストリン、キトサンを挙げることができる。適当なクレーの例としては、スメクタイト、例えば、ベントナイト、カオリン、及びラポナイト;三ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム等、及びそれらの誘導体及び混合物を挙げることができる。適当なゲル化デンプンの例としては、酸加水分解デンプン(acid hydrolyzed starch)、膨潤性デンプン、例えば、デンプングリコール酸ナトリウム、及びそれらの誘導体を挙げることができる。適当な膨潤架橋ポリマーの例としては、架橋ポリビニルピロリドン、架橋寒天、及び架橋カルボキシメチルセルロースナトリウムを挙げることができる。
【0086】
放出調節性賦形剤として使用するのに適当な不溶性の可食性材料として、水不溶性ポリマー、及び低融点疎水性材料を挙げることができる。適当な水不溶性ポリマーの例としては、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリカプロラクトン、酢酸セルロース及びその誘導体、アクリレート、メタクリレート、アクリル酸コポリマー;等及びそれらの誘導体、コポリマー、及び組合せを挙げることができる。適当な低融点疎水性材料として、脂肪類、脂肪酸エステル類、リン脂質類、及びろうを挙げることができる。適当な脂肪の例としては、水素化植物油類、例えば、カカオ脂、水素化パーム核油、水素化綿実油、水素化ヒマワリ油、及び水素化大豆油;並びに遊離脂肪酸及びその塩を挙げることができる。適当な脂肪酸エステルの例としては、ショ糖脂肪酸エステル、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、ベヘン酸グリセリル、パルミトステアリン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、トリステアリン酸グリセリル、グリセリルトリラウリレート(glyceryl trilaurylate)、ミリスチン酸グリセリル、GlycoWax−932、ラウロイルマクロゴル(lauroyl macrogol)−32グリセリド、及びステアロイルマクロゴル−32グリセリドを挙げることができる。適当なリン脂質の例としては、ホスホチジルコリン、ホスホチジルセレン(phosphotidyl serene)、ホスホチジルエノシトール(phosphotidyl enositol)、及びホスホチジン酸(phosphotidic acid)を挙げることができる。適当なろうの例としては、カルナバろう、鯨ろう(spermaceti wax)、蜜ろう、カンデリラろう、セラックろう(shellac wax)、マイクロクリスタリンワックス、及びパラフィンろう;脂肪含有混合物、例えば、チョコレート等を挙げることができる。
【0087】
場合によっては、本発明の剤形を公知の方法によってコーティングして、味覚マスキング、臭気マスキングを提供するか、調製物を腸溶性にするか、又は調製物の徐放を達成することができる。コーティング剤の例としては、腸溶性ポリマー、例えば、酢酸フタル酸セルロース、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸コポリマーLD、メタクリル酸コポリマーS、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びカルボキシメチルエチルセルロース;胃内可溶性ポリマー、例えば、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート及びアミノアルキルメタクリレートコポリマー;及び水溶性ポリマーを挙げることができる。
【0088】
本発明に係る薬剤学的剤形は、更に追加的な構成要素として、通常の薬剤学的補助物質、例えば、充填剤、例えば、ラクトース、微結晶性セルロース(MCC)又はリン酸水素カルシウム、並びに滑剤、腸の潤滑剤及び流量調整剤(flow regulating agent)、例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸及び/又は高分散二酸化ケイ素を含み、錠剤中のその総重量は0〜80重量%、好ましくは、5〜65重量%である。
【0089】
或る態様によれば、本発明の薬剤学的剤形は、自己充足型単一物(self-contained unitary object)、例えば、錠剤又はカプセル剤であることができる。典型的には、本発明の剤形は、錠剤、硬カプセル剤若しくは軟カプセル剤、坐剤、又は製菓型、例えば、ロゼンジ、ヌガー、キャラメル、フォンダン、若しくは脂肪ベースの組成物に圧縮し又は成形される。
【0090】
III.実施例
《実施例1》
イブプロフェン1.0g及びサブミクロンのメソ多孔性シリカ材料1.0gを攪拌下に一晩エタノール100mL中に分散させた。この懸濁液をブッチスプレードライヤーB290により噴霧乾燥した。入口温度を81℃に設定して、出口温度は〜50℃であった。ポンプ速度は「20」に設定した。溶解条件:SBA−15と共に噴霧乾燥したイブプロフェン50mg及び純粋なイブプロフェン(Sigma)結晶25mgを、37℃の0.1N−HCl900mL中での溶解試験に用いた。攪拌速度は100rpmである。自動サンプリングシステムにより5分間間隔でサンプルを取った。UV読み取りは波長222nmで行なった。
【0091】
図1に示すように、噴霧乾燥したイブプロフェンの溶解速度は、結晶形の市販イブプロフェン(Sigma)と比較して有意に高められる。15分間以内に、SBA−15と共に噴霧乾燥したイブプロフェンの95.6%が溶解するのに対し、純粋なイブプロフェン結晶はわずか17.5%が溶解するにすぎない。フローセルオンラインUV−vis分析システムを備えたVK7010(Varian社)USP溶解試験機を用いて溶解プロフィールを測定した。攪拌速度は100rpmでありそして容器温度は37℃に設定する。
【0092】
噴霧乾燥によるSBA−15配合イブプロフェンの改善された溶解速度は、SBA−15の細孔内に形成された非晶状態の成分によるものである。更に、メソ多孔性材料内のイブプロフェンの非晶質形態は、40℃/相対湿度(RH)75%の試験条件下で再結晶に対し物理的に安定である。図2に示すように、SBA−15と共に新たに噴霧乾燥したイブプロフェンは典型的な非晶特性を示した。2−θにおける15〜30゜のブロードピークは、X線非晶質シリカの回折パターンにおいて典型的である。結晶形のイブプロフェンに対して指定されるX線回折ピークは観察されなかった。この非晶質形態は、40℃/75%RHの苛酷な条件下で優れた安定性を示す。3ヶ月、6ヶ月、10ヶ月及び12ヶ月後、XRDにより結晶成長は検出することができなかった。
【0093】
更に、図3において、イブプロフェンの一部の結晶が添加されそしてSBA−15中に取り込まれた薬剤を含む非晶質固体剤形と混合されると、結晶挙動が再び現れる。このことは、本発明の固体剤形が本質的にもっぱら非晶質でありそして結晶構造の程度は固体分散体へのイブプロフェン結晶の添加によってのみ変更されることができるということを示している。
【0094】
SBA−15と共に噴霧乾燥したイブプロフェンの苛酷な条件下での高められた安定性は、ナノサイズの細孔チャンネル及び高い多孔性を有するSBA−15のメソ多孔性構造によるものである。イブプロフェンをSBA−15サブミクロン粒子と共に噴霧乾燥すると、イブプロフェンの大部分はナノ細孔チャンネルに保存される。SBA−15サブミクロンをイブプロフェンなしに噴霧乾燥すると、その細孔容積は1.019cm3/gであるが、イブプロフェンと共に(50:50 重量)噴霧乾燥すると0.0913cm3/gまで低下する。イブプロフェンの真密度は1.076g/cm3であるので、イブプロフェンの89.9%がメソ多孔性粒子内部の細孔チャンネル内に充填される。非晶質細孔壁は、閉じ込められたイブプロフェンが結晶化するのを防ぐ。
【0095】
図4A及びBは、噴霧乾燥したSBA−15サブミクロン粒子及びSBA−15サブミクロン粒子と共に噴霧乾燥したイブプロフェン(50:50 重量)のSEM形態を示す。サブミクロンSBA−15粒子の形態は、同じ重量比のイブプロフェンと共に噴霧乾燥した後で明らかに変化していないことがわかる。大きな粒子のイブプロフェンは形成されない。純粋なイブプロフェンを噴霧乾燥した場合には、図5に示すように、数十ミクロンメートルより大きな粒子が観察される。更に、図6に示すX線回折パターンにより、噴霧乾燥したイブプロフェンの結晶挙動が確認される。図7は、噴霧乾燥後のSBA−15の細孔チャンネル内及び外表面上のイブプロフェンの分布を明らかにしている。
【0096】
《実施例2》
実施例1と同じ手順を用いてイブプロフェンをSBA−15サブミクロン粒子と共噴霧乾燥する。錠剤型の溶解速度を評価するために、SBA−15と共に噴霧乾燥したイブプロフェン(50:50 重量)50mgをコーンスターチ0.8gと混合しそして直径13mmのダイを用いて1トンの圧力でプレスする。同じ手順により、結晶型(市販)のイブプロフェン25mgの対照サンプルをコーンスターチで錠剤化する。溶解は、実施例1と同じ方法を用いて実施する。図8に示した錠剤型の溶解プロフィールは、粉末型において観察されたものと同様である。結晶形のイブプロフェンはわずか16.4%が溶解するのに比べ、錠剤型の噴霧乾燥イブプロフェンは87.9%が15分間以内に溶解する。
【0097】
《実施例3》
図9は、薬剤充填比25%及び75%で噴霧乾燥したイブプロフェンの溶解を示す。剤形が25%のイブプロフェン及び75%のSBA−15を含んでいる場合のサンプルは、極めて高い溶解速度を示し、活性成分の97.1%が15分間以内に溶解する。剤形が75%のイブプロフェン及び25%のSBA−15を含んでいる場合、15分間以内の溶解は68.9%に達し、これは結晶形の市販の純粋なイブプロフェンよりはるかに高い値であるが、低量の薬剤充填のサンプルと比べてわずかに遅れが見られる。細孔容積は、薬剤高充填量75%の場合、固体分散体中にイブプロフェンをホストするのに十分ではなく、そして残りのイブプロフェンはメソ多孔性マトリックスの外側に結晶粒子を形成する。部分的に結晶化したイブプロフェンは図10に示すようにXRDにより検出することができる。
【0098】
《実施例4》
イブプロフェン1.0g及びサブミクロンメソ多孔性シリカ材料1.0gを、一晩攪拌下にエタノール40mL及び200mL中に分散させた。この懸濁液を噴霧乾燥しそしてこの懸濁液(重量50:50のイブプロフェン:SBA−15)50mgをコーンスターチ0.8gと混合し直径13mmのダイにより1トンの押圧でプレスする。実施例1と同じ方法を用いて溶解を実施する。図11は、異なる量のエタノール中に分散され噴霧乾燥されたイブプロフェンの溶解プロフィールを示す。エタノール200mL中での分散は、エタノール40mL中での分散に比べ高い溶解速度を生じさせた。
【0099】
《実施例5》
異なる粒度のメソ多孔性シリカベース材料を用いて噴霧乾燥により難水溶性イブプロフェンを剤形化する。図12に示すように、粒度200〜400nmのメソ多孔性ナノ粒子及び10ミクロンまでの大きな粒子を用いる。これらの材料の細孔径は、同じ方法を用いて製造されるものとほぼ同じである。異なる粒度のメソ多孔性材料と共にイブプロフェンを噴霧乾燥した場合に、ナノ粒子マトリックスはより速い溶解速度を示すことが見出される。錠剤型の溶解試験を実施した場合、図13に示すように、メソ多孔性ナノ粒子と共に噴霧乾燥したイブプロフェンのサンプルは15分間以内に90.5%が溶解するのに対し、大きなメソ多孔性粒子と共に噴霧乾燥したイブプロフェンのサンプルは条件下で71%が溶解する。細孔チャンネルからの活性成分のより速い放出は、細孔チャンネルの長さがより短いことによるものである。
【0100】
《実施例6》
ボールミル磨砕、含浸、共急冷及び混合により、難水溶性モデル薬剤であるイブプロフェンをSBA−15サブミクロンメソ多孔性粒子と剤形化する。
【0101】
ボールミル磨砕:イブプロフェン1.0g及びSBA−15サブミクロン粒子1.0gを、ボールミル(Fritsch)により200rpmの回転速度で1時間共磨砕した。
【0102】
含浸:イブプロフェン0.5gをエタノール5mL中に溶解した。SBA−15サブミクロン粒子0.5gをイブプロフェン溶液に添加した。攪拌下で一晩、室温においてエタノールを蒸発させた。得られた粉末を室温で真空乾燥させた。
【0103】
共急冷:イブプロフェン1.0gをSBA−15サブミクロン粒子と充分に混合した。120℃を超える温度までこの混合物を加熱してイブプロフェンを溶融した。この熱混合物を液体窒素で急冷し、そしてその固体を室温で真空中に保った。
【0104】
混合:イブプロフェン1.0g及びSBA−15サブミクロン粒子1.0gを5分間乳鉢及び乳棒で粉砕した。
【0105】
上記方法を用いて剤形化したイブプロフェンの溶解速度を粉末型で分析しそして15分間、30分間、45分間及び60分間の溶解データを表1に示す。ボールミル磨砕法、混合法、含浸法及び共急冷法は純粋な市販イブプロフェンより高い溶解速度を示すが、これらの方法は噴霧乾燥より劣る。図14に示すXRD調査は、SBA−15サブミクロン粒子との共噴霧乾燥のみが充分なX線非晶質形態をもたらし、一方で、他の全ての方法は部分的に結晶化した形態を生じさせることを示す。従って、用いた全ての剤形化法の中で、噴霧乾燥が最高の溶解速度を示す非晶質形態のイブプロフェンを生じさせる最良の方法であることが示される。
【表1】
【0106】
《実施例7》
フィブリン酸(fibric acid)に由来するエステルであるフェノフィブラートは、コレステロール及びトリグリセリドの値を低下させるために用いられる(Palmieri, G. F. et al., STP pharma Science 6:188-194 (1996))。この薬剤は、極めて難水溶性である。その溶解度及び溶解速度を改善するために多くの努力、例えば、超臨界二酸化炭素を用いた超微粉砕(micronization)(Kere, J. et al., Int. J. Pharm. 182:33-39 (1999)参照)、シクロデキストリン中の包接(inclusion in cyclodextrin)が報告されてきた。本発明は、フェノフィブラートをメソ多孔性SBA−15と共に噴霧乾燥して安定な非晶質フェノフィブラートを製造しそしてその溶解速度を改善することを含むシンプルな方法を用いる。他の難水溶性モデル薬剤、すなわち、インドメタシン、カルバマゼピン及びウルソデオキシコール酸も、その溶解速度を改善するために、メソ多孔性SBA−15と共に噴霧乾燥する。
【0107】
剤形化手順は実施例1と同様である。典型的には、薬剤1.0g及びSBA−15サブミクロン粒子1.0gを、一晩攪拌によってエタノール100mL中に分散させた。ブッチ290Bミニスプレードライヤーを用いて噴霧乾燥を実施する。メソ多孔性SBA−15と共に噴霧乾燥したフェノフィブラートの溶解度分析は、UVオンラインサンプラー及び測定システムを備えたVarian VK7010溶解試験装置を用いて実施する。
【0108】
SBA−15サブミクロン粒子と共に噴霧乾燥した薬剤のそれぞれの溶解速度は、結晶形の市販薬剤より高い。図15に示すように、噴霧乾燥したインドメタシンは15分間以内に97%の溶解に達するのに対し、市販のインドメタシンは25%に達したに過ぎなかった。噴霧乾燥したインドメタシンの溶解も錠剤型及び粉末型の両方で実施する。錠剤型は、粉末型とほぼ同様の溶解プロフィールを示す。図16に示すように、メソ多孔性SBA−15と共に噴霧乾燥したフェノフィブラートの溶解速度は20分間で95%に達するのに対し、未処理のフェノフィブラート結晶では同じ時間でわずか15.6%しか溶解しない。
【0109】
難水溶性薬剤、例えば、インドメタシン(図17)、カルバマゼピン(図18)、ウルソデオキシコール酸(図19)、フェノフィブラート(図20)の形態は、未処理の(bare)メソ多孔性粒子と比較して明らかな変化が見られないことがSEM調査により確認される。この結果は、大部分の薬剤が細孔チャンネル内部に閉じ込められていることを示す。
【0110】
メソ多孔性材料との共噴霧乾燥により形成されたこれらの薬剤の非晶状態は、40℃/75%RHのストレス条件に少なくとも6ヶ月間付された後でも安定である。図21に示すように、噴霧乾燥したインドメタシン及びカルバマゼピンは40℃/75%RHで12ヶ月間の保存後に非晶質形態において安定である。噴霧乾燥したフェノフィブラート及びウルソデオキシコール酸の安定性を今までのところ6ヶ月間試験をし、そして両者は図22に示すように非晶質形態における安定性を示した。
【0111】
相対的には、直接急冷法(direct quench method)から得られた非晶質インドメタシンは不安定であり、そして同じ条件においてわずか1週間の試験後に再結晶した。メソ多孔性材料を用いて剤形化した活性成分の非晶安定性は、高い細孔容積及び細孔構造によるものである。これらは、ナノサイズの空隙中に活性成分を非晶状態でホストさせて、細孔壁は保存の間にストレス試験条件下での再結晶を防止する。
【0112】
《実施例8》
メソ多孔性炭素は難水溶性薬剤をホストするように選択される。メソ多孔性炭素はテンプレートとしてのSBA−15サブミクロン粒子を基材として合成される。ショ糖をSBA−15粒子の細孔チャンネル中に充填した。N2雰囲気中で900℃において炭化を行なった。1N−NaOH溶液中に溶解することによってテンプレートのシリカを除去し、そしてその後脱イオン水で洗浄した。このメソ多孔性炭素を空気中120℃で乾燥させた。
【0113】
図23は、メソ多孔性炭素の形態及び細孔構造を示す。難水溶性薬剤を剤形化するために、メソ多孔性炭素0.5g及びインドメタシン0.5gを一晩攪拌によりエタノール50mL中に分散させる。ブッチ290Bミニスプレードライヤーにより噴霧乾燥を行なう。XRD測定は、メソ多孔性炭素と共に噴霧乾燥したインドメタシン(50:50 重量)が非晶質形態であることを裏付けている。図24に示すSEM測定により、メソ多孔性炭素材料が明らかに変化していないことが確認される。このことは、インドメタシンの大部分が細孔チャンネル内部に位置していることを示す。メソ多孔性炭素と共に噴霧乾燥したインドメタシンの溶解は、UVオンラインサンプラー及び測定システムを備えたVarian VK7010溶解試験機により行なう。
【0114】
図25は、メソ多孔性炭素と共に噴霧乾燥したインドメタシン粉末のpH6.8緩衝液中の溶解プロフィールを示す。インドメタシンのメソ多孔性炭素との共噴霧乾燥は、インドメタシンの溶解速度を有意に高め、5分間で98%に達することを示している。難溶性インドメタシンの即時放出は、メソ多孔性炭素マトリックス内部の活性成分の非晶質形態によるものである。
【0115】
難水溶性成分のメソ多孔性材料との共噴霧乾燥は、ナノサイズの細孔構造内にこれらの活性成分を非晶質形態で閉じ込める独自の方法である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に水不溶性の医薬活性成分;及び
複数のナノ細孔を有するメソ多孔性組成物;
を含む医薬組成物であって、
前記実質的に水不溶性の医薬活性成分を前記メソ多孔性組成物と共に噴霧乾燥して、前記医薬活性成分を前記ナノ細孔内に閉じ込める、前記医薬組成物。
【請求項2】
前記実質的に水不溶性の医薬活性成分が、鎮痛剤、抗コレステロール剤又はコレステロール低下剤、解熱剤、抗炎症剤、抗菌剤、うっ血除去剤及び抗ヒスタミン剤からなる群から選択される構成員である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記実質的に水不溶性の医薬活性成分が、約10g/Lより小さい溶解度を有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記実質的に水不溶性の医薬活性成分が、約0.1g/L〜約5g/Lの溶解度を有する、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記実質的に水不溶性の医薬活性成分が、イブプロフェンである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記実質的に水不溶性の医薬活性成分が、非晶質形態である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記メソ多孔性組成物が、粒度約0.1μm〜約100μmを有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記メソ多孔性組成物が、粒度約0.3μm〜約50μmを有する、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記メソ多孔性組成物が、粒度約0.5μm〜約30μmを有する、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記メソ多孔性組成物の前記複数の細孔が、平均径約1nm〜約100nmを有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記メソ多孔性組成物の前記複数の細孔が、平均径約1.5nm〜約50nmを有する、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記メソ多孔性組成物の前記複数の細孔が、平均径約2nm〜約30nmを有する、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記メソ多孔性組成物の前記複数の細孔が、平均容積約0.2cm3/g〜約4.0cm3/gを有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記メソ多孔性組成物の前記複数の細孔が、平均容積約0.8cm3/g〜約3.0cm3/gを有する、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記実質的に水不溶性の医薬活性成分が、約0.1%〜約75%w/wで存在する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記実質的に水不溶性の医薬活性成分が、約10%〜約60%w/wで存在する、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記実質的に水不溶性の医薬活性成分が、約30%〜約50%w/wで存在する、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記メソ多孔性組成物が、炭素、カーバイド、ケイ化物、窒化物及び酸化物からなる群から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記メソ多孔性組成物が酸化物を含む、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記メソ多孔性組成物がケイ化物を含む、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記メソ多孔性組成物が、MCM−41、MCM−48、SBA−15、MCF、MSU及びCMK−3からなる群から選択される構成員である、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記メソ多孔性組成物がSBA−15である、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記医薬組成物が、前記メソ多孔性組成物を有していない医薬組成物と比べて増加した溶解プロフィールを有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項24】
医薬組成物の製造方法であって:
実質的に水不溶性の医薬活性成分と複数のナノ細孔を有するメソ多孔性組成物とを、適当な溶媒又は溶媒の混合物中で混合すること;及び
前記実質的に水不溶性の医薬活性成分を前記メソ多孔性組成物と共に噴霧乾燥して、前記ナノ細孔内に前記医薬活性成分を閉じ込め、それにより前記医薬組成物を製造すること;
を含む、前記方法。
【請求項25】
前記実質的に水不溶性の医薬活性成分が、鎮痛剤、解熱剤、抗コレステロール剤又はコレステロール低下剤、抗炎症剤、抗菌剤、うっ血除去剤及び抗ヒスタミン剤からなる群から選択される構成員である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記実質的に水不溶性の医薬活性成分が、約10g/Lより小さい溶解度を有する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記実質的に水不溶性の医薬活性成分が、約0.1g/L〜約5g/Lの溶解度を有する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記実質的に水不溶性の医薬活性成分がイブプロフェンである、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記実質的に水不溶性の医薬活性成分が非晶質形態である、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
前記メソ多孔性組成物が、粒度約0.1μm〜約100μmを有する、請求項24に記載の方法。
【請求項31】
前記メソ多孔性組成物が、粒度約0.3μm〜約50μmを有する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記メソ多孔性組成物が、粒度約0.5μm〜約30μmを有する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記メソ多孔性組成物の前記複数の細孔が、平均径約1nm〜約100nmを有する、請求項24に記載の方法。
【請求項34】
前記メソ多孔性組成物の前記複数の細孔が、平均径約1.5nm〜約50nmを有する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記メソ多孔性組成物の前記複数の細孔が、平均径約2nm〜約30nmを有する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記メソ多孔性組成物の前記複数の細孔が、平均容積約0.2cm3/g〜約4.0cm3/gを有する、請求項24に記載の方法。
【請求項37】
前記メソ多孔性組成物の前記複数の細孔が、平均容積約0.8cm3/g〜約3.0cm3/gを有する、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記実質的に水不溶性の医薬活性成分が、約0.1%〜約75%w/wで存在する、請求項24に記載の方法。
【請求項39】
前記実質的に水不溶性の医薬活性成分が、約10%〜約60%w/wで存在する、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記実質的に水不溶性の医薬活性成分が、約30%〜約50%w/wで存在する、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記メソ多孔性組成物が、炭素、カーバイド、ケイ化物、窒化物及び酸化物からなる群から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項42】
前記メソ多孔性組成物が酸化物を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記メソ多孔性組成物がケイ化物を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記メソ多孔性組成物が、MCM−41、MCM−48、SBA−15、MCF、MSU及びCMK−3からなる群から選択される構成員である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記メソ多孔性組成物がSBA−15である、請求項44に記載の方法。
【請求項1】
実質的に水不溶性の医薬活性成分;及び
複数のナノ細孔を有するメソ多孔性組成物;
を含む医薬組成物であって、
前記実質的に水不溶性の医薬活性成分を前記メソ多孔性組成物と共に噴霧乾燥して、前記医薬活性成分を前記ナノ細孔内に閉じ込める、前記医薬組成物。
【請求項2】
前記実質的に水不溶性の医薬活性成分が、鎮痛剤、抗コレステロール剤又はコレステロール低下剤、解熱剤、抗炎症剤、抗菌剤、うっ血除去剤及び抗ヒスタミン剤からなる群から選択される構成員である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記実質的に水不溶性の医薬活性成分が、約10g/Lより小さい溶解度を有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記実質的に水不溶性の医薬活性成分が、約0.1g/L〜約5g/Lの溶解度を有する、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記実質的に水不溶性の医薬活性成分が、イブプロフェンである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記実質的に水不溶性の医薬活性成分が、非晶質形態である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記メソ多孔性組成物が、粒度約0.1μm〜約100μmを有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記メソ多孔性組成物が、粒度約0.3μm〜約50μmを有する、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記メソ多孔性組成物が、粒度約0.5μm〜約30μmを有する、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記メソ多孔性組成物の前記複数の細孔が、平均径約1nm〜約100nmを有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記メソ多孔性組成物の前記複数の細孔が、平均径約1.5nm〜約50nmを有する、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記メソ多孔性組成物の前記複数の細孔が、平均径約2nm〜約30nmを有する、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記メソ多孔性組成物の前記複数の細孔が、平均容積約0.2cm3/g〜約4.0cm3/gを有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記メソ多孔性組成物の前記複数の細孔が、平均容積約0.8cm3/g〜約3.0cm3/gを有する、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記実質的に水不溶性の医薬活性成分が、約0.1%〜約75%w/wで存在する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記実質的に水不溶性の医薬活性成分が、約10%〜約60%w/wで存在する、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記実質的に水不溶性の医薬活性成分が、約30%〜約50%w/wで存在する、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記メソ多孔性組成物が、炭素、カーバイド、ケイ化物、窒化物及び酸化物からなる群から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記メソ多孔性組成物が酸化物を含む、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記メソ多孔性組成物がケイ化物を含む、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記メソ多孔性組成物が、MCM−41、MCM−48、SBA−15、MCF、MSU及びCMK−3からなる群から選択される構成員である、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記メソ多孔性組成物がSBA−15である、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記医薬組成物が、前記メソ多孔性組成物を有していない医薬組成物と比べて増加した溶解プロフィールを有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項24】
医薬組成物の製造方法であって:
実質的に水不溶性の医薬活性成分と複数のナノ細孔を有するメソ多孔性組成物とを、適当な溶媒又は溶媒の混合物中で混合すること;及び
前記実質的に水不溶性の医薬活性成分を前記メソ多孔性組成物と共に噴霧乾燥して、前記ナノ細孔内に前記医薬活性成分を閉じ込め、それにより前記医薬組成物を製造すること;
を含む、前記方法。
【請求項25】
前記実質的に水不溶性の医薬活性成分が、鎮痛剤、解熱剤、抗コレステロール剤又はコレステロール低下剤、抗炎症剤、抗菌剤、うっ血除去剤及び抗ヒスタミン剤からなる群から選択される構成員である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記実質的に水不溶性の医薬活性成分が、約10g/Lより小さい溶解度を有する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記実質的に水不溶性の医薬活性成分が、約0.1g/L〜約5g/Lの溶解度を有する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記実質的に水不溶性の医薬活性成分がイブプロフェンである、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記実質的に水不溶性の医薬活性成分が非晶質形態である、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
前記メソ多孔性組成物が、粒度約0.1μm〜約100μmを有する、請求項24に記載の方法。
【請求項31】
前記メソ多孔性組成物が、粒度約0.3μm〜約50μmを有する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記メソ多孔性組成物が、粒度約0.5μm〜約30μmを有する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記メソ多孔性組成物の前記複数の細孔が、平均径約1nm〜約100nmを有する、請求項24に記載の方法。
【請求項34】
前記メソ多孔性組成物の前記複数の細孔が、平均径約1.5nm〜約50nmを有する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記メソ多孔性組成物の前記複数の細孔が、平均径約2nm〜約30nmを有する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記メソ多孔性組成物の前記複数の細孔が、平均容積約0.2cm3/g〜約4.0cm3/gを有する、請求項24に記載の方法。
【請求項37】
前記メソ多孔性組成物の前記複数の細孔が、平均容積約0.8cm3/g〜約3.0cm3/gを有する、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記実質的に水不溶性の医薬活性成分が、約0.1%〜約75%w/wで存在する、請求項24に記載の方法。
【請求項39】
前記実質的に水不溶性の医薬活性成分が、約10%〜約60%w/wで存在する、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記実質的に水不溶性の医薬活性成分が、約30%〜約50%w/wで存在する、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記メソ多孔性組成物が、炭素、カーバイド、ケイ化物、窒化物及び酸化物からなる群から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項42】
前記メソ多孔性組成物が酸化物を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記メソ多孔性組成物がケイ化物を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記メソ多孔性組成物が、MCM−41、MCM−48、SBA−15、MCF、MSU及びCMK−3からなる群から選択される構成員である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記メソ多孔性組成物がSBA−15である、請求項44に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図21】
【図22】
【図25】
【図4】
【図5】
【図7】
【図12】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図21】
【図22】
【図25】
【図4】
【図5】
【図7】
【図12】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図23】
【図24】
【公表番号】特表2012−506904(P2012−506904A)
【公表日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−534455(P2011−534455)
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【国際出願番号】PCT/SG2009/000053
【国際公開番号】WO2010/050897
【国際公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(503231882)エージェンシー フォー サイエンス,テクノロジー アンド リサーチ (179)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【国際出願番号】PCT/SG2009/000053
【国際公開番号】WO2010/050897
【国際公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(503231882)エージェンシー フォー サイエンス,テクノロジー アンド リサーチ (179)
【Fターム(参考)】
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