説明

難燃性ホットメルト接着剤

【課題】導体等の無機系材料や高分子フィルム等の有機系材料に対する優れた接着性と優れた難燃性とを両立させると共に、アンチブロッキング性が良く、耐熱性、絶縁性および耐屈曲性に優れた難燃性ホットメルト接着剤を提供すること。
【解決手段】少なくともアルケンモノマーおよび(メタ)アクリル酸をモノマー成分として含むアルケン/(メタ)アクリル酸共重合体および難燃剤を含有することを特徴とする難燃性ホットメルト接着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は難燃性ホットメルト接着剤、特に接着性、耐熱性、耐屈曲性等に優れ、且つ高い難燃性を有するフラットケーブル用難燃性ホットメルト接着剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、各種の家電製品、通信機器、OA機器、自動車等の内部に多数の電線を配線する必要が生じてきた。ところが、使用される電線としては、銅線等の断面が略円形の導体に塩化ビニル等の絶縁層を被覆したものであり、使用する際には、多数の電線を束ねていた。そして、この多数の電線を束ねる作業は手作業で行わなければならず、極めて面倒で且つ非能率的であった。また、多数の機能を具備させるために、極めて多くの電線を必要とし、上記のような従来の電線では対応しきれなくなってきた。
【0003】
このような背景から、例えば、錫メッキ軟銅導体(以下導体と略す)からなる複数の導線を、その両側から接着剤を用いて絶縁基材等でサンドイッチ状に被覆したフラットケーブルが提案された。
【0004】
このフラットケーブルは、最近では、例えばプリンターや自動車等の配線に広く使用されており、難燃性、耐熱性、耐屈曲性等の要求が高まっている。ところで、このフラットケーブルの接着剤としては、ポリ塩化ビニル系(PVC)、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリオレフィン系等を主成分とするものが用いられている。
【0005】
上記接着剤に難燃性を付与する方法としては、無機物等の難燃剤を添加する方法がある。しかしながら、難燃性を向上させる為に、接着層中の難燃剤量を増加させると、導体との接着性が低下する。一方、導体接着性を向上させる為に、接着層中の難燃剤量を減少させると今度は難燃性が低下する。即ち、導体接着性と難燃性とが両立しないという欠点がある。
【0006】
また、このフラットケーブル用途の接着剤の多くは溶剤型であり、製造上で溶剤の乾燥工程を必要としたり、近年問題となっているシックハウス症候群等を引き起こす可能性がある。
【0007】
そこで、無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレンを含有するホットメルト型難燃性接着剤組成物(特許文献1)、および溶融加工性グラフトエチレン共重合体を含有するホットメルト接着剤組成物(特許文献2)が報告されている。しかしながら、それらの接着剤組成物を用いても、導体との接着性等が十分ではなかった。
【特許文献1】特開平10−130608号公報(請求項1等参照)
【特許文献2】特表2003−514080号公報(第0010〜0011段等参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、導体等の無機系材料や高分子フィルム等の有機系材料に対する優れた接着性と優れた難燃性とを両立させると共に、アンチブロッキング性が良く、耐熱性、絶縁性および耐屈曲性に優れた難燃性ホットメルト接着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、少なくともアルケンモノマーおよび(メタ)アクリル酸をモノマー成分として含むアルケン/(メタ)アクリル酸共重合体および難燃剤を含有することを特徴とする難燃性ホットメルト接着剤に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の難燃性ホットメルト接着剤は、導体等の無機系材料や高分子フィルム等の有機系材料に対する優れた接着性と優れた難燃性とを両立させると共に、アンチブロッキング性が良く、耐熱性、絶縁性および耐屈曲性等にも優れている。この為、電気、電子機器、自動車等の電気配線部分又は家庭用屋内、屋外配線等の用途に大いに有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に係る難燃性ホットメルト接着剤は、少なくともアルケン/(メタ)アクリル酸共重合体および難燃剤を含有してなるものである。
【0012】
アルケン/(メタ)アクリル酸共重合体(以下、単に共重合体ということがある)は、少なくともアルケンモノマーと(メタ)アクリル酸とがモノマー成分として直鎖状に付加重合してなるランダム型またはブロック型の共重合体であり、通常はランダム型共重合体である。
【0013】
アルケンモノマーは炭素原子数が2〜4である分枝状または直鎖状のアルケンモノマーであり、例えば、エチレン、プロペン、1−ブテン、2−ブテン、2−メチルプロペン等が挙げられる。アルケンモノマーは2種類以上組み合わせて使用されてよいが、比較的入手しやすいという観点から、エチレンを単独で使用することが好ましい。
【0014】
(メタ)アクリル酸はメタクリル酸およびアクリル酸の両者を包含する概念で用いるものとし、メタクリル酸またはアクリル酸の少なくとも一方が共重合体中、含有されればよい。
【0015】
共重合体における(メタ)アクリル酸モノマー成分の含有量は、接着性と吸湿性の観点から、当該共重合体を構成する全モノマーに対して5重量%以上、特に5〜15重量%であることが好ましく、より好ましくは6〜12重量%である。5重量%より少ないと、接着層と導体との接着性が不足する。一方15重量%を越えると、接着層と導体との接着性が飽和する。更に、(メタ)アクリル酸含有量の増加により親水性が増加して、湿潤時の電気抵抗が低下する為、好ましくない。
【0016】
共重合体におけるアルケンモノマーの含有量は、(メタ)アクリル酸含有量が上記範囲内であれば特に制限されず、通常は、当該共重合体を構成する全モノマーに対して85〜95重量%、特に88〜94重量%が適当である。
【0017】
共重合体は、アルケンモノマーおよび(メタ)アクリル酸以外に他のモノマーを構成モノマーとして含んでよい。
【0018】
本発明においてアルケン/(メタ)アクリル酸共重合体の軟化点は、耐熱性をより有効に向上させる観点から、50℃以上であることが好ましく、接着剤の低温ヒートシール性の観点からは120℃以下であることが好ましい。より好ましい軟化点は60〜100℃である。
【0019】
本明細書中、軟化点は以下に示す方法によって測定された値を用いているが、以下の方法によって測定されなければならないというわけではなく、当該方法と同様の原理・原則に従って測定可能な方法であれば、いかなる方法によって測定されてもよい。
(測定方法)ビカット軟化点;JIS K7206:1999。
【0020】
また共重合体は、Tダイス等による押し出し加工による成膜性および接着性の観点から、MFR(メルトフローレート)が好ましくは3〜280g/10分、より好ましくは10〜250g/10分である。
【0021】
本明細書中、MFRはフローテスターCFT-100D(島津製作所社製)によって190℃/2.16kg荷重の条件下で測定された値を用いている。
【0022】
本発明の接着剤におけるアルケン/(メタ)アクリル酸共重合体の含有量は本発明の目的が達成される限り特に制限されないが、優れた接着性と優れた難燃性とをより有効に両立させる観点から、接着剤全量に対して30〜80重量%、特に35〜75重量%が好ましい。アルケン/(メタ)アクリル酸共重合体は2種類以上組み合わせて使用されてよく、その場合、それらの総含有量が上記範囲内であればよい。2種類以上のアルケン/(メタ)アクリル酸共重合体を用いる場合、それらの混合物のMFRや軟化点がそれぞれ前記範囲内であればよい。
【0023】
アルケン/(メタ)アクリル酸共重合体は市販品として入手可能であり、また公知の方法によって合成可能である。例えば、当該共重合体は、三井・デュポンポリケミカル社製のニュクレルN1214、N1525、N1560、N0903HC、N0908C、N410、N1108C、N1207C等として入手可能である。
【0024】
本発明において使用される難燃剤は従来から難燃性ホットメルト接着剤の分野で知られている難燃剤が使用可能であり、各種の有機系難燃剤や無機系難燃剤が使用され得る。
【0025】
有機系難燃剤としては、例えば、臭素系難燃剤、窒素系難燃剤、リン系難燃剤が挙げられる。
臭素系難燃剤として、例えば、テトラブロモビスフェノールA(TBBA)、デカブロモジフェニルオキサイド(DBDPO)等の臭素原子含有芳香族有機化合物が使用される。臭素系難燃剤の市販品として、例えば、SAYTEX CP-2000(日本アルベマール社製)、SAYTEX8010(日本アルベマール社製)、Great Lakes BA-59P(グレートレイクスケミカル日本社製)、フレームカット120G(東ソー社製)等が挙げられる。
窒素系難燃剤として、例えば、メラミンシアヌレート、尿素、メラミン誘導体等を含むトリアジン環含有化合物等が使用される。メラミンシアヌレートとは、メラミンとシアヌール酸との縮合物であり、例えば、市販品のMC-610(日産化学社製)として入手可能である。
リン系難燃剤として、例えば、芳香族ポリフォスフェート等のリン酸エステル等が使用される。
【0026】
無機系難燃剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、硫酸亜鉛、酸化バリウム、酸化ジルコニウム等が挙げられる。
【0027】
上記難燃剤の中でも、優れた接着性と優れた難燃性とをより有効に両立させる観点から、有機系難燃剤が好ましく、より好ましくは臭素系難燃剤、窒素系難燃剤(特にメラミンシアヌレート)である。さらに耐環境性の観点からは、メラミンシアヌレートが好ましい。
【0028】
難燃剤は、接着剤中での分散性向上、フィルム状にしたときのフィッシュアイによる外観不良防止、溶融粘度の増大防止および難燃性のさらなる向上の観点から、平均粒径1〜5μmのものを使用することが好ましい。
【0029】
難燃剤の含有量は、優れた接着性と優れた難燃性とをより有効に両立させ、かつ耐屈曲性をより向上させる観点から、接着剤全量に対して10〜50重量%が好ましい。難燃剤は2種類以上組み合わせて使用されてよく、その場合、それらの総含有量が上記範囲内であればよい。
【0030】
本発明の接着剤にはさらに難燃助剤を含有させることが好ましい。
難燃助剤は難燃剤の難燃効果を促進するものであり、従来から難燃性ホットメルト接着剤の分野で知られている難燃助剤が使用可能である。例えば、三酸化アンチモン、赤燐、五酸化アンチモン等が挙げられる。
【0031】
難燃助剤は、難燃性のさらなる向上と溶融粘度の増大防止の観点から、平均粒径1〜5μmのものを使用することが好ましい。
【0032】
難燃助剤の含有量は、難燃性のさらなる向上と溶融粘度の増大防止の観点から、接着剤全量に対して3〜20重量%が好ましい。難燃助剤は2種類以上組み合わせて使用されてよく、その場合、それらの総含有量が上記範囲内であればよい。
【0033】
難燃助剤は上記の中でも、優れた接着性と優れた難燃性とを最も有効に両立させる観点から、使用される難燃剤に応じて適宜選択されることが好ましい。
詳しくは、例えば、難燃剤として臭素系難燃剤を使用する場合は、難燃助剤として三酸化アンチモンを使用することが好ましい。
また例えば、難燃剤として窒素系難燃剤、特にメラミンシアヌレートを使用する場合は、難燃助剤として赤燐を使用することが好ましい。
【0034】
臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとを併用する場合において、優れた接着性と優れた難燃性との観点からは、臭素系難燃剤の含有量は接着剤全量に対して10〜35重量%、特に15〜30重量%が好ましく、三酸化アンチモンの含有量は接着剤全量に対して5〜20重量%、特に7〜15重量%が好ましい。そのような場合において臭素系難燃剤(A)と三酸化アンチモン(B)との含有割合(A:B)は重量比で1:1〜8:1、特に2:1〜5:1であることがより好ましい。
【0035】
窒素系難燃剤(特にメラミンシアヌレート)と赤燐とを併用する場合において、優れた接着性と優れた難燃性との観点からは、窒素系難燃剤の含有量は接着剤全量に対して20〜50重量%、特に22〜35重量%が好ましく、赤燐の含有量は接着剤全量に対して3〜15重量%、特に5〜13重量%が好ましい。そのような場合において窒素系難燃剤(A)と赤燐(B)との含有割合(A:B)は重量比で2:1〜20:1、特に3:1〜6:1であることがより好ましい。
【0036】
本発明の接着剤の難燃性を向上させる為に、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、タルク等の無機フィラーを含有させることができる。無機フィラーの含有量は、本発明の目的が達成される限り特に制限されるものではないが、接着剤全量に対して、例えば、2〜50重量%、好ましくは5〜40重量%で含有させることができる。
【0037】
本発明の接着剤にはさらに、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の安定剤、酸化チタン、カーボンブラック等の顔料を、本発明の目的が達成される範囲内で含有させてもよい。
【0038】
本発明の接着剤は、種々の方法によって製造できるが、溶融混合法が好ましい。例えば上記した各種成分からなる混合物を、溶融釜、ニーダー、ミキシングロール、押出機、インターナルミキサー等により溶融・混練すればよい。混練後は、通常、冷却およびカッティングしてペレット状接着剤を得ることができる。得られたペレット状接着剤を予め溶融しておき、高分子フィルム等の有機系材料または無機系材料にTダイス等によって押し出し加工し、被着体を加熱圧締し、冷却することによって、容易に接着可能である。また接着剤を予めシート状に加工しておき、当該シート状接着剤を所定の被着体で挟持し、加熱圧締し、冷却することによっても被着体の接着を達成することができる。加熱圧締温度は通常、120〜190℃、特に130〜180℃である。
【0039】
本発明の接着剤は特に、いわゆるフラットケーブルの製造に有用である。フラットケーブルは、導体からなる複数の導線を、その両側から2枚の絶縁基材でサンドイッチ状に被覆・挟持してなるものであり、本発明の接着剤は2枚の絶縁基材の接着および絶縁基材と導体との接着に使用される。すなわち、フラットケーブルは2枚の絶縁基材の間および絶縁基材と導体との間に、本発明の難燃性ホットメルト接着剤からなる接着層を有する。
【0040】
絶縁基材としては特に制限されず、通常は高分子フィルムが使用される。高分子フィルムは、特に限定されるものではなく、例えばポリエチレンテレフタレートフィルム(以下PETフィルムと略す)、ポリイミドフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム等が挙げられる。中でも機械的強度、電気絶縁性および耐熱性等とコストとのバランスが良いという理由からPETフィルムが好適である。
【0041】
絶縁基材、特に高分子フィルム面上には、接着剤を適用するに先立って、予めプライマー層を形成しておき、接着剤層と基材との接着性を向上させることができる。プライマーは特に限定されるものではなく、難燃性ホットメルト接着剤の分野で公知のプライマーが使用可能である。例えば、有機シラン化合物、有機チタン化合物等が挙げられる。有機シラン化合物の具体例として、例えば、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン(HN(CHNH(CHSi(OMe))、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン(HN(CHNH(CHSi(Me)(OMe))等のアミノ系シランカップリング剤が挙げられ、他にもエポキシ系シランカップリング剤、ビニル系シランカップリング剤、イソシアネート系シランカップリング剤等が使用可能である。有機チタン化合物の具体例として、例えば、テトライソプロポキシチタン等の有機チタネート系化合物が挙げられる。好ましいプライマーはアミノ系シランカップリング剤である。アミノ基の窒素の非共有電子対が、接着剤層に含まれるアルケン/(メタ)アクリル酸共重合体のカルボニル炭素に配位するので、接着性がより有効に向上するためである。
【実施例】
【0042】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。
プライマーはA-1(日本曹達社製)、SH6020(東レ・ダウコーニング社製)を用いた。
炭酸カルシウムはホワイトンSB(白石カルシウム社製)を用いた。
臭素系難燃剤はSAYTEX CP-2000、SAYTEX8010(日本アルベマール社製)を用いた。
三酸化アンチモンはPATOX-C(日本精鉱社製)を用いた。
メラミンシアヌレートはMC-610(日産化学社製)を用いた。
赤燐はノーバエクセルF5(燐化学工業社製)を用いた。
酸化チタンはJR-701(テイカ社製)を用いた。
【0043】
得られた接着剤の各物性の評価は次のような方法で行った。
1.接着性(剥離強度)
(1)PET−導体間
厚さ25μmのPETフィルムにプライマーを塗布・乾燥し、その上に、押出しラミ機(田辺プラスチック社製、40mmφExt)を用いて180℃の温度で接着剤層(膜厚40μm)を積層した。さらにその上にラミネーターを用いて150℃、1.8m/minのライン速度で、厚さ50μmの導体(幅0.8mm)を加熱圧締した。この作製した試験片のT字剥離強度を引張速度50mm/minで測定した(導体幅0.8mm)。0.8N以上が実用上問題のない範囲であり、好ましくは1.0N以上、より好ましくは1.2N以上、最も好ましくは1.4N以上である。
プライマーとして、実施例1〜7,9および比較例1〜4ではA-1を、実施例8,10ではSH6020を用いた。
【0044】
(2)PET−PET間
厚さ25μmのPETフィルムにプライマーを塗布・乾燥し、その上に、押出しラミ機(田辺プラスチック社製、40mmφExt)を用いて180℃の温度で接着剤層(膜厚40μm)を積層した。さらに、このPETフィルムを接着剤同志で重ね合わせ、ラミネーターを用いて150℃、1.8m/minのライン速度で加熱圧締した。この作製した試験片のT字剥離強度を引張速度50mm/minで測定した(試験片幅10mm)。10N以上が実用上問題のない範囲であり、好ましくは11N以上、より好ましくは12N以上、最も好ましくは14N以上である。
プライマーは前記PET−導体間接着性の評価方法においてと同様である。
【0045】
2.耐熱性
前記PET−導体間接着性の評価方法で作製した試験片(PET/接着剤層/導体)とPET/接着剤層積層体とを重ね合わせ、ラミネーターを用いて150℃の温度で加熱圧締して、25μm厚PET/40μm厚ホットメルト接着剤層/導体/40μm厚ホットメルト接着剤層/25μm厚PETの積層体を作製した。積層体を折り曲げ、113℃中に7日間放置し、各層間で浮き等が生じるかどうか確認した。このとき、いかなる層間でも浮きが生じなかったものを○、いずれかの層間で浮きが生じたものを×で評価した。
【0046】
3.耐屈曲性
前記耐熱性の評価方法で作製した積層体を常態で折り曲げ、浮き等が生じるかどうか確認した。このとき、いかなる層間でも浮きが生じなかったものを○、いずれかの層間で浮きが生じたものを×で評価した。
【0047】
4.アンチブロッキング性
前記PET−導体間接着性の評価方法で作製したPET/接着剤層積層体フィルムを50mm×40mmのサイズにカットし、PET層と接着剤層とが交互になるように積層した(総積層数10枚)。この積層体の最上部から1.0kgの荷重を加え、70℃中で48時間放置し、接着剤とPETフィルムの間のブロッキングの有無を確認した。このとき、ブロッキングが生じなかったものを○、ブロッキングが生じたものを×で評価した。
5.難燃性
UL規格VW−1に準じて測定し、自消したものを○、自消しなかったものを×で評価した。
【0048】
6.熱安定性
接着剤を140℃で3時間混練したときのゲル化について観察した。ゲル化が起こらなかったものを○、起こったものを×で評価した。
【0049】
(実施例1)
エチレン含有量88%/メタクリル酸含有量12%で、MFRが14g/10min、ビカット軟化点が72℃であるエチレン/メタクリル酸共重合体(三井・デュポンポリケミカル社製ニュクレルN1214)38g、臭素系難燃剤18g、三酸化アンチモン7g、炭酸カルシウム37gを2軸ルーダーを用いて140℃で混練してホットメルト型難燃性接着剤を調製した。厚さ25μmのPETフィルムにプライマーを塗布しこの接着剤とラミ加工等行い各種試験を実施した。得られた試験結果は表1に示すように、接着性、耐熱性、耐屈曲性、アンチブロッキング性、難燃性のいずれにおいても優れたものであった。
【0050】
(実施例2)
エチレン含有量85%/メタクリル酸含有量15%で、MFRが25g/10min、ビカット軟化点が63℃であるエチレン/メタクリル酸共重合体(三井・デュポンポリケミカル社製ニュクレルN1525)38g、臭素系難燃剤18g、三酸化アンチモン7g、炭酸カルシウム37gを2軸ルーダーを用いて140℃で混練してホットメルト型難燃性接着剤を調製した。厚さ25μmのPETフィルムにプライマーを塗布しこの接着剤とラミ加工等行い各種試験を実施した。得られた試験結果は表1に示すように、接着性、耐熱性、耐屈曲性、アンチブロッキング性、難燃性のいずれにおいても優れたものであった。
【0051】
(実施例3)
エチレン含有量85%/メタクリル酸含有量15%で、MFRが60g/10min、ビカット軟化点が60℃であるエチレン/メタクリル酸共重合体(三井・デュポンポリケミカル社製ニュクレルN1560)38g、臭素系難燃剤18g、三酸化アンチモン7g、炭酸カルシウム37gを2軸ルーダーを用いて140℃で混練してホットメルト型難燃性接着剤を調製した。厚さ25μmのPETフィルムにプライマーを塗布しこの接着剤とラミ加工等行い各種試験を実施した。得られた試験結果は表1に示すように、接着性、耐熱性、耐屈曲性、アンチブロッキング性、難燃性のいずれにおいても優れたものであった。
【0052】
(実施例4)
エチレン含有量91%/メタクリル酸含有量9%で、MFRが3g/10min、ビカット軟化点が82℃であるエチレン/メタクリル酸共重合体(三井・デュポンポリケミカル社製ニュクレルN0903HC)38g、臭素系難燃剤18g、三酸化アンチモン7g、炭酸カルシウム37gを2軸ルーダーを用いて140℃で混練してホットメルト型難燃性接着剤を調製した。厚さ25μmのPETフィルムにプライマーを塗布しこの接着剤とラミ加工等行い各種試験を実施した。得られた試験結果は表1に示すように、接着性、耐熱性、耐屈曲性、アンチブロッキング性、難燃性のいずれにおいても優れたものであった。
【0053】
(実施例5)
エチレン含有量88%/メタクリル酸含有量12%で、MFRが14g/10min、ビカット軟化点が72℃であるエチレン/メタクリル酸共重合体(三井・デュポンポリケミカル社製ニュクレルN1214)38g、メラミンシアヌレート24g、赤燐8g、炭酸カルシウム30gを2軸ルーダーを用いて140℃で混練してホットメルト型難燃性接着剤を調製した。厚さ25μmのPETフィルムにプライマーを塗布しこの接着剤とラミ加工等行い各種試験を実施した。得られた試験結果は表1に示すように、接着性、耐熱性、耐屈曲性、アンチブロッキング性、難燃性のいずれにおいても優れたものであった。
【0054】
(実施例6〜7)
実施例1の配合を表1の配合に変えて行った以外は実施例1と同様にしてホットメルト型難燃性接着剤を調製し、試験片を作製して、各種試験を行った。得られた試験結果は表1に示すように接着性、耐熱性、耐屈曲性、アンチブロッキング性、難燃性のいずれにおいても優れたものであった。
【0055】
(実施例8〜10)
以下に示す共重合体およびその他の成分等の配合を表1の配合に変えて行った以外は実施例1と同様にしてホットメルト型難燃性接着剤を調製し、試験片を作製して、各種試験を行った。得られた試験結果は表1に示すように接着性、耐熱性、耐屈曲性、アンチブロッキング性、難燃性のいずれにおいても優れたものであった。
実施例8;ニュクレルN1525(三井・デュポンポリケミカル社製)40重量%とニュクレルN1560(三井・デュポンポリケミカル社製)20重量%との混合物
実施例9;ニュクレルN1525(三井・デュポンポリケミカル社製)40重量%とニュクレルN1560(三井・デュポンポリケミカル社製)20重量%との混合物
実施例10;ニュクレルN0903HC(三井・デュポンポリケミカル社製)60重量%。
【0056】
【表1】

【0057】
(比較例1)
エチレン含有量90%/メチルメタクリレート含有量10%で、MFRが7g/10min、ビカット軟化点が75℃であるエチレン/メチルメタクリレート共重合体(住友化学社製アクリフトWD301)38g、臭素系難燃剤18g、三酸化アンチモン7g、炭酸カルシウム37gを2軸ルーダーを用いて140℃で混練してホットメルト型難燃性接着剤を調製した。厚さ25μmのPETフィルムにプライマーを塗布しこの接着剤とラミ加工等行い各種試験を実施した。得られた試験結果は表2に示すように、接着性、耐熱性、耐屈曲性、アンチブロッキング性、難燃性の少なくともいずれかが劣っていた。
【0058】
(比較例2)
エチレン含有量82%/メチルメタクリレート含有量18%で、MFRが7g/10min、ビカット軟化点が60℃であるエチレン/メチルメタクリレート共重合体(住友化学社製アクリフトWH303)38g、臭素系難燃剤18g、三酸化アンチモン7g、炭酸カルシウム37gを2軸ルーダーを用いて140℃で混練してホットメルト型難燃性接着剤を調製した。厚さ25μmのPETフィルムにプライマーを塗布しこの接着剤とラミ加工等行い各種試験を実施した。得られた試験結果は表2に示すように、接着性、耐熱性、耐屈曲性、アンチブロッキング性、難燃性の少なくともいずれかが劣っていた。
【0059】
(比較例3〜4)
以下に示す共重合体およびその他の成分等の配合を表2の配合に変えて行った以外は実施例1と同様にしてホットメルト型難燃性接着剤を調製し、試験片を作製して、各種試験を行った。
比較例3;ボンダインHX8140(住化アトケム社製;エチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸三元共重合体、MFR20g/10min、ビカット軟化点48℃)38重量%
比較例4;ボンドファースト7B(住友化学社製;エチレン−グリシジルメタクリレート−酢酸ビニル三元共重合体、MFR7g/10min、ビカット軟化点66℃)38重量%。
【0060】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の難燃性ホットメルト接着剤は、電子機器および自動車等の電気配線部分又は家庭用または業務用の屋内および屋外の電気配線部分等で使用される接着剤として大いに有用である。特にフラットケーブルの製造に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともアルケンモノマーおよび(メタ)アクリル酸をモノマー成分として含むアルケン/(メタ)アクリル酸共重合体および難燃剤を含有することを特徴とする難燃性ホットメルト接着剤。
【請求項2】
アルケン/(メタ)アクリル酸共重合体が(メタ)アクリル酸モノマー成分を5〜15重量%含むことを特徴とする請求項1に記載の難燃性ホットメルト接着剤。
【請求項3】
アルケン/(メタ)アクリル酸共重合体の含有量が接着剤全量に対して30〜80重量%であることを特徴とする請求項1または2に記載の難燃性ホットメルト接着剤。
【請求項4】
難燃剤が臭素系難燃剤であり、さらに三酸化アンチモンを含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の難燃性ホットメルト接着剤。
【請求項5】
難燃剤がメラミンシアヌレートであり、さらに赤燐を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の難燃性ホットメルト接着剤。
【請求項6】
導体が2枚の絶縁基材で被覆・挟持されてなり、2枚の絶縁基材の間および絶縁基材と導体との間に請求項1〜5のいずれかに記載の難燃性ホットメルト接着剤からなる接着層を有することを特徴とするフラットケーブル。

【公開番号】特開2008−24786(P2008−24786A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−197006(P2006−197006)
【出願日】平成18年7月19日(2006.7.19)
【出願人】(591158690)ダイアボンド工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】