説明

難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物

【課題】 難燃性、柔軟性、耐トラッキング性に優れた難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 (A) ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対し、(B) ハロゲン含有化合物からなる難燃剤15〜50重量部、(C) アンチモン化合物1〜20重量部、(D) オレフィン系ポリマー10〜50重量部、(E) 特定のエポキシ変性ブロック共重合体5〜15重量部を配合してなり、(E) 成分に対する(D) 成分の重量比率が1〜5である難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性、柔軟性、耐トラッキング性に優れた難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリアルキレンテレフタレートなどの熱可塑性ポリエステル樹脂は、優れた機械的特性、電気的特性、耐熱性、耐候性、耐水性、耐薬品性及び耐溶剤性を有するため、エンジニアリングプラスチックとして、自動車部品、電気・電子部品などの種々の用途に広く利用されている。一方、利用分野が拡大するにつれて、その要求性能は次第に高度化し、例えば、電気・電子部品においては、難燃性や電気的特性(例えば、耐トラッキング性など)と共に、機械的特性および流動性、成形性などを一層向上させることが望まれている。
【0003】
機械的特性等の向上には、ガラス繊維強化系が一般的に使用されるが、靱性、良外観性の要求から非強化材料が求められることも多い。従来、難燃性ポリエステル樹脂の耐トラッキング性などの電気的特性を改良するため、ポリエステル、タルク、慣用の難燃剤(ハロゲン化ジフェニルエーテル、ハロゲン化ポリカーボネート、ハロゲン化ポリスチレンなど)で構成された樹脂組成物が提案されている。例えば、特許文献1には、ポリエステル樹脂、タルク、ハロゲン化フェニル−アルキル(メタ)アクリレート難燃剤、オレフィン系エラストマーで構成された樹脂組成物が開示されている。この樹脂組成物は耐トラッキング性には優れるが、タルクが配合されているため、良外観性には劣る。特許文献2には、ポリエステル樹脂、α−オレフィンとα,β−不飽和酸のグリシシジルエステルの共重合体からなる樹脂組成物が開示されている。但し、一般には難燃剤を添加することで耐トラッキング性は低下する傾向にあり、特許文献2では難燃剤が必須成分となっておらず、難燃剤を付与した場合の効果は不明である。
【0004】
更に、特許文献3には、ポリエステル樹脂と、同一分子内にビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックと未水素化および/または水素化した共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックとからなるブロック共重合体の、共役ジエン成分の一部又は全部をエポキシ化した変性ブロック共重合体、およびハロゲン含有化合物からなる難燃剤を含有する、耐衝撃性、流動性に優れた難燃性樹脂組成物が開示されている。特許文献3の樹脂組成物は、難燃性、機械的物性に優れているが、耐トラッキング性については言及されておらず、本発明者の追試によると特許文献3の樹脂組成物では耐トラッキング性が十分ではなかった。
【特許文献1】特開平10−158487号公報
【特許文献2】特開平7−196859号公報
【特許文献3】特開平10−1597号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、優れた難燃性を有すると共に、靱性に優れ、耐トラッキング性に優れた難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、ポリブチレンテレフタレート樹脂に対し、オレフィン系ポリマーと特定の変性ブロック共重合体を特定比率で併用配合し、且つ難燃成分としてハロゲン含有化合物とアンチモン化合物を組み合わせて配合することにより、上記目的を達成し得る難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち本発明は、
(A) ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対し、
(B) ハロゲン含有化合物からなる難燃剤15〜50重量部、
(C) アンチモン化合物1〜20重量部、
(D) オレフィン系ポリマー10〜50重量部、
(E) 同一分子内にビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックと未水素化および/または水素化した共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックとからなるブロック共重合体の、共役ジエン成分の一部又は全部をエポキシ化した変性ブロック共重合体5〜15重量部
を配合してなり、(E) 成分に対する(D) 成分の重量比率が1〜5である難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、エポキシ変性ブロック共重合体を用いているためオレフィン系ポリマーとの相溶性に優れ、その相溶性により押出混練性、造粒性、成形性、靱性に優れており、高い耐トラッキング性を有する。更に適切な難燃剤を用いていることにより、高い耐トラッキング性を有しつつ、優れた難燃性を発現する樹脂組成物である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、順次本発明の樹脂材料の構成成分について詳しく説明する。本発明に使用される(A) ポリブチレンテレフタレート樹脂とは、一方の主成分であるジカルボン酸としてテレフタル酸あるいはテレフタル酸ジメチル、他方の主成分であるジヒドロキシ化合物として1,4−ブタンジオールを使用してなる縮合重合体である。本発明で使用するポリブチレンテレフタレート樹脂は、他のコモノマーユニットを含有してもよく、具体的には、テレフタル酸以外のジカルボン酸化合物、又はブタンジオール以外のヒドロキシ化合物の重縮合、あるいは三成分化合物の重縮合等によって得られるポリエステルであり、ホモポリエステル、コポリエステルのいずれであってもよい。
【0010】
テレフタル酸以外のジカルボン酸化合物としては、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルエタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸の如き公知のジカルボン酸及びこれらのアルキル、アルコキシ又はハロゲン置換体等が挙げられる。また、これらのジカルボン酸化合物は、エステル形成可能な誘導体、たとえばジメチルエステルのごとき低級アルコールエステルの形で重合に使用する事も可能である。これは二種以上が使用されることもある。
【0011】
1,4−ブタンジオール以外のジヒドロキシ化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ハイドロキノン、レゾルシン、ジヒドロキシフェニル、ナフタレンジオール、ジヒドロキシジフェニルエーテル、シクロヘキサンジオール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ジエトキシ化ビスフェノールAのごときジヒドロキシ化合物、ポリオキシアルキレングリコールおよびこれらのアルキル、アルコキシ又はハロゲン置換体等であり、一種又は二種以上を混合使用することができる。また、その他にもオキシ安息香酸、オキシナフトエ酸、ジフェニレンオキシカルボン酸等のオキシカルボン酸及びこれらのアルキル、アルコキシ又はハロゲン置換体が挙げられる。また、これら化合物のエステル形成可能な誘導体も使用できる。本発明においてはこれら化合物の一種又は二種以上が用いられる。また、これらの他に三官能性モノマー、即ちトリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等を少量併用した分岐又は架橋構造を有するポリエステルであっても良い。また、ジブロモテレフタル酸、テトラブロモテレフタル酸、テトラクロロテレフタル酸、1,4−ジメチロールテトラブロモベンゼン、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールAのエチレンまたはプロピレンオキサイド付加物のような芳香族核にハロゲン化合物を置換基として有し、かつエステル形成基を有する化合物を用いたハロゲンを有するポリエステルコポリマーも含まれる。また、高融点ハードセグメントと低融点ハードセグメントのブロック共重合体を構成するポリエステル系エラストマーも使用することができる。
【0012】
本発明で用いられるポリブチレンテレフタレート樹脂は、溶剤としてO−クロロフェノールを用い30℃で測定した固有粘度が0.55g/dl以上のものが好ましく、更には0.55〜1.2 g/dl、特に0.55〜1.0 g/dlのものが好ましい。
【0013】
次に本発明で使用される(B) ハロゲン含有化合物からなる難燃剤について述べる。ハロゲン含有化合物としては、臭素化アクリル重合体、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ化合物、臭素化芳香族ビスイミド、臭素化ジフェニルエーテル等、公知のハロゲン含有化合物系難燃剤が使用できるが、好ましくは臭素化アクリル重合体、臭素化ポリスチレンである。
【0014】
臭素化アクリル重合体とは下記一般式(1) で示される繰り返し単位を有する化合物である。
【0015】
【化1】

【0016】
(1) 式中、Brは臭素原子を示し、mはベンゼン環に付加している個数を表しており、1〜5の範囲である。臭素化アクリル重合体としては、ペンタブロムベンジルアクリレート、テトラブロムベンジルアクリレート、トリブロムベンジルアクリレート等が挙げられる。
【0017】
臭素化ポリスチレンとは下記一般式(2) で示される繰り返し単位を有する化合物である。
【0018】
【化2】

【0019】
(2) 式中、Brは臭素原子を示し、qはベンゼン環に付加している個数を表しており、1〜3の範囲である。
【0020】
ハロゲン含有化合物としては、平均分子量100000以下のものが好ましい。平均分子量100000以上では樹脂組成物の溶融粘度が高くなり成形性が悪化する。
【0021】
また、本発明においては、難燃助剤として(C) アンチモン化合物が用いられる。アンチモン化合物としては、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン、ハロゲン化アンチモン、アンチモン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0022】
本発明で用いられる(B) ハロゲン含有化合物からなる難燃剤、(C) アンチモン化合物の配合量は、それぞれ(A) ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対し(B) 15〜50重量部、(C) 1〜20重量部である。
【0023】
(B) ハロゲン含有化合物からなる難燃剤が15重量部未満、または(C) アンチモン化合物が1重量部未満では、組成物の難燃性が劣る。また、一方で(B) ハロゲン含有化合物からなる難燃剤が50重量部を超えたり、または(C) アンチモン化合物が20重量部を超えると、組成物の強度低下、耐トラッキング性の低下が起こり、好ましくない。
【0024】
尚、本発明においては、難燃性を付与する難燃剤として上記(B) ハロゲン含有化合物以外のもの、あるいは難燃助剤として(C) アンチモン化合物以外のものを、耐トラッキング性、靱性を損なわない範囲で併用してもかまわない。
【0025】
また、ドリッピング防止のために、アスベストやフッ素樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン等)などを併用すると好適である。
【0026】
次に、本発明においては、(D) 成分としてオレフィン系ポリマーが使用される。(D) オレフィン系ポリマーとしては、エチレン系、プロピレン系ポリマーが好ましい。具体的には、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、一般ポリプロピレン、超高分子量ポリプロピレン、シンジオタクチック、アイソタクチック等の高立体規則性ポリプロピレン、およびエチレンとプロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキサン、シクロヘキサン等の公知の共重合体が挙げられる。また、カルボン酸や無水カルボン酸、グリシジルエステル等の官能基を含有する変性体、さらにはアルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、ポリスチレン等のオレフィン系以外の共重合体、グラフト変性体でもかまわない。これらのオレフィン系ポリマーの分子量としては特に限定されることなく、一般的に使用されている程度のものが問題なく使用できる。
【0027】
(D) オレフィン系ポリマーの配合量は、(A) ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対し10〜50重量部である。
【0028】
(D) オレフィン系ポリマーの配合量が10重量部未満の場合は、組成物の耐トラッキング性の低下がみられる。また、一方で(D) オレフィン系ポリマーの配合量が50重量部を超えると剥離等が発生し成形が困難であったり、また溶融混練、造粒化が困難である場合がある。
【0029】
次に本発明で(E) 成分として使用される、同一分子内にビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックと未水素化および/または水素化した共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックとからなるブロック共重合体の、共役ジエン成分の一部又は全部をエポキシ化した変性ブロック共重合体について説明する。
【0030】
ブロック共重合体を構成するビニル芳香族化合物としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−第三ブチルスチレン、ジビニルベンゼン、p−メチルスチレン、1,1 −ジフェニルスチレンなどのうちから一種または二種以上が選択でき、中でもスチレンが好ましい。また、共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3 −ペンタジエン、2,3 −ジメチル−1,3 −ブタジエン、ピペリレン、3−ブチル−1,3 −オクタジエン、フェニル−1,3 −ブタジエン等のうちから一種、または二種以上から選ばれ、中でもブタジエン、イソプレンおよびこれらの組み合わせが好ましい。ここでいうブロック共重合体とは、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックAと、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBとからなるブロック共重合体であり、ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物の共重合比は5/95〜70/30であり、特に10/90〜60/40の重合比が好ましい。また、本発明に供するブロック共重合体の数平均分子量は5000〜600000、好ましくは10000〜500000の範囲であり、分子量分布〔重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)〕は10以下である。また、ブロック重合体の分子構造は、直鎖状、分岐状、放射状、あるいはこれらの任意の組み合わせのいずれであってもよい。例えば、A-B-A 、B-A-B-A 、(A-B-)4Si 、A-B-A-B-A 等の構造を有するビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物ブロック重合体である。さらにブロック共重合体の共役ジエン化合物の不飽和結合は部分的に水素添加したものでもよい。
【0031】
本発明に供するブロック重合体の製造方法としては、上記した構造を有するものが得られるのであればどのような製造方法もとることができる。例えば、特公昭40−23798 号、特公昭43−17979 号、特公昭46−32415 号、特公昭56−28925号公報に記載された方法により、リチウム触媒などを用いて不活性溶媒中でビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体を合成することができる。さらに、特公昭42−8704号、特公昭43−6636号公報、あるいは特公昭59−133203号公報に記載された方法により不活性溶媒中で水素添加触媒の存在下に水素添加して、本発明に供する部分的に水添したブロック共重合体を合成することができる。本発明では上記したブロック共重合体をエポキシ化することにより本発明で使用されるエポキシ変性ブロック共重合体が得られる。
【0032】
本発明におけるエポキシ変性ブロック共重合体は、上記のブロック共重合体を不活性溶媒中でハイドロパーオキサイド類、過酸類などのエポキシ化剤と反応させることにより得ることができる。過酸類としては過ギ酸、過酢酸、過安息香酸、トリフルオロ過酢酸などがある。このうち、過酢酸は工業的に大量に製造されており、安価に入手でき、安定度も高いので好ましいエポキシ化剤である。ハイドロパーオキサイド類としては過酸化水素、ターシャリーブチルハイドロパーオキサイド、クメンパーオキサイドなどがある。エポキシ化の際には必要に応じて触媒を用いることができる。例えば、過酸の場合、炭酸ソーダなどのアルカリや硫酸などの酸を触媒として用い得る。また、ハイドロパーオキサイド類の場合、タングステン酸と苛性ソーダの混合物を過酸化水素と、あるいは有機酸を過酸化水素と、あるいはモリブデンヘキサカルボニルをターシャリーブチルハイドロパーオキサイドと併用して触媒効果を得ることができる。エポキシ化剤の量に厳密な規制がなく、それぞれの場合における最適量は、使用する個々のエポキシ化剤、所望されるエポキシ化度、使用する個々のブロック共重合体の如き可変因子によって決まる。不活性溶媒としては、原料粘度の低下、エポキシ化剤の希釈による安定化などの目的で使用することができ、過酢酸の場合であれば芳香族化合物、エーテル類、エステル類などを用いることができる。特に好ましい溶媒は、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、ベンゼン、酢酸エチル、四塩化炭素、クロロホルムである。エポキシ化反応条件には厳密な規制はない。用いるエポキシ化剤の反応性によって使用できる反応温度領域は定まる。例えば、過酢酸についていえば0〜70℃が好ましく、0℃より低いと反応が遅く、70℃を越えると過酢酸の分解が起こる。また、ハイドロパーオキサイドの一例であるターシャリーブチルハイドロパーオキサイド/モリブデン二酸化物ジアセチルアセトナート系では同じ理由で20〜150℃が好ましい。反応混合物の特別な操作は必要なく、例えば混合物を2〜10時間攪拌すればよい。得られたエポキシ変性共重合体の単離は適当な方法、例えば貧溶媒で沈澱させる方法、重合体を熱水中に攪拌の下で投入し溶媒を蒸留留去する方法、直接脱溶媒法などで行うことができる。
【0033】
上記エポキシ変性ブロック共重合体のエポキシ当量は、200〜5000g/mol であることが好ましく、特に好ましくは300〜4000g/mol である。エポキシ当量が5000g/mol を越えると、相容性が改善されずに相分離が起こり、 200g/mol 未満でも期待される効果(相容性など)におよぼす以上の効果が得られず、特にゲル化物などの副反応を重合体の単離中に起こし易くなるので好ましくない。
【0034】
本発明で使用される(E) エポキシ変性ブロック共重合体の配合量は、(A) ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対し5〜15重量部であり、且つ(E) 成分に対する(D) 成分の重量比率が1〜5であることが必要である。(E) 成分に対する(D) 成分の好ましい重量比率は2〜4である。
【0035】
(E) 成分の配合量が、(A) ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対し5重量部未満、あるいは(E) 成分に対する(D) 成分の重量比率が5を超えると、相容化剤としての効果が不十分であり、溶融混練、造粒化が困難となり、また混練できた場合でも成形品の剥離等が発生する。また、(E) 成分の配合量が、(A) ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対し15重量部を超えたり、あるいは(E) 成分に対する(D) 成分の重量比率が1未満では、ゲル化物などの副反応を溶融混練中に生じやすく、成形品中の破壊起点や外観上の異物となる可能性が高い。
【0036】
本発明組成物には更にその目的に応じ所望の特性を付与するため、一般に熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂等に添加される公知の物質、すなわち酸化防止剤や耐熱安定剤、紫外線吸収剤等の安定剤、帯電防止剤、染料や顔料等の着色剤、潤滑剤、可塑剤及び結晶化促進剤、結晶核剤等を配合することも勿論可能である。
【0037】
又、本発明の組成物は目的に応じ、耐トラッキング性、靱性を損なわない範囲で無機又は有機の繊維状強化剤、無機充填剤を配合することが好ましい場合が多い。繊維状強化剤としては、ガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維、ボロン繊維、チタン酸カリウム繊維、アスベスト等の一般無機繊維やアラミド繊維の如き有機繊維が挙げられる。又、無機充填剤としては、炭酸カルシウム、高分散性珪酸塩、アルミナ、水酸化アルミニウム、タルク、クレー、マイカ、ガラスフレーク、ガラス粉、ガラスビーズ、石英粉、珪砂、ウォラストナイト、カーボンブラック、硫酸バリウム、焼石膏、炭化珪素、ボロンナイトライドや窒化珪素等の粉粒状物質、板状の無機化合物等が含まれる。これらの無機充填剤は、必要に応じ1種又は2種以上を併用混合使用できる。
【0038】
本発明の組成物の調製は、従来の樹脂組成物調製法として一般に用いられる公知の設備と方法により容易に調製される。例えば、i)各成分を混合した後、押出機により練込押出してペレットを調製し、しかる後成形する方法、ii)一旦組成の異なるペレットを調製し、そのペレットを所定量混合して成形に供し成形後に目的組成の成形品を得る方法、iii)成形機に各成分の1又は2以上を直接仕込む方法等、何れも使用できる。また、樹脂成分の一部を細かい粉体としてこれ以外の成分と混合し添加することは、これらの成分の均一配合を行う上で好ましい方法である。また、上述した充填剤等は、ポリエステル樹脂とエポキシ化合物の反応を阻害しないものであれば、これらを反応前、或いは反応中の任意の時期に添加し、所望の組成物を得ることも可能である。
【0039】
本発明の樹脂組成物は、成形加工性が良好である。そのため、前記樹脂組成物を溶融混練し、押出成形や射出成形等の慣用の成形方法により容易に成形でき、効率良く成形品を得ることができる。
【0040】
本発明の成形品は、前記樹脂組成物で形成されているため、耐トラッキング性が極めて高く、高電圧(例えば、400V)が印加されてもトラッキングを生じない。また、高い靱性があり(引張破断伸びが3%以上)、且つその難燃性も高い。そのため、電気・電子部品、例えば、照明用ソケットやスイッチ、電源ケース等の部品に有用である。
【実施例】
【0041】
以下実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1〜7、比較例1〜4
各樹脂組成物を表1に示す混合比率でドライブレンドし、30mmφのスクリューを有する2軸押出機を用いて、250℃で溶融混練したのちペレット化し、試験片を作成し、各評価を行った。結果を表1に示す。尚、比較例2においては溶融混練が困難であり、成形に足る樹脂組成物が得られなかったため、比較例4においては成形が困難であったため、評価を行っていない。
【0042】
また、使用した成分の詳細、物性評価の測定法は以下の通りである。
(A) ポリブチレンテレフタレート;固有粘度0.88g/dl
(B) ハロゲン含有化合物からなる難燃剤
(B-1) ブロムケムファーイースト社製FR1025
(B-2) 臭素化ポリスチレン;アルベール社製パイロチェック68PB
(C) アンチモン化合物
日本製鉱社製PATOX−M
(D) オレフィン系ポリマー
(D-1) 日本ユニカー社製エバフレックスEEA A713
(D-2) グランドポリマー社製J707ZB
(E) エポキシ変性ブロック共重合体
(E-1) ダイセル化学工業社製AT501
(E-2) ダイセル化学工業社製HT302
・PTFE;三井デュポンフロロケミカル社製800J
・酸化防止剤;日本チバガイギー社製イルガノックス1010
・滑剤;三洋化成工業社製サンワックス165P
<引張強さ、伸び>
得られたペレットを140℃で3時間乾燥後、成形温度250℃、金型温度80℃で、射出成形を行った。射出成形により得たISO3167引張試験片についてISO527−1、2に定められている評価基準に従い評価した。
<燃焼性>
アンダーライターラボラトリーズのサブジェクト94(UL−94)の方法に準じ、5本の試験片(厚み1/32インチ)を用いて燃焼性について評価を実施した。
<比較トラッキング指数>
厚さ4mmの角型成形品を用い、UL746Aに準じた試験を実施した。
【0043】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A) ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対し、
(B) ハロゲン含有化合物からなる難燃剤15〜50重量部、
(C) アンチモン化合物1〜20重量部、
(D) オレフィン系ポリマー10〜50重量部、
(E) 同一分子内にビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックと未水素化および/または水素化した共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックとからなるブロック共重合体の、共役ジエン成分の一部又は全部をエポキシ化した変性ブロック共重合体5〜15重量部
を配合してなり、(E) 成分に対する(D) 成分の重量比率が1〜5である難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項2】
(B) ハロゲン含有化合物からなる難燃剤が、臭素化アクリル重合体および/または臭素化ポリスチレンである請求項1記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項3】
(D) オレフィン系ポリマーが、ポリエチレンおよび/またはポリプロピレン系ポリマーである請求項1又は2記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項4】
比較トラッキング指数が400V以上である請求項1〜3の何れか1項記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項5】
引張破断伸びが3%以上である請求項1〜4の何れか1項記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。

【公開番号】特開2006−83282(P2006−83282A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−269216(P2004−269216)
【出願日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(501183161)ウィンテックポリマー株式会社 (54)
【Fターム(参考)】