説明

難燃性ポリ(アリーレンエーテル)組成物とその被覆線用被覆材としての使用

難燃性ポリ(アリーレンエーテル)組成物が記載される。該組成物はポリ(アリーレンエーテル)に加えて、ポリオレフィン組成物と、金属ジアルキルホスフィン酸塩を含む難燃性組成物と、を含む。該ポリオレフィン組成物は、ポリオレフィンポリマーおよびまたはポリ(アルケニル芳香族)−ポリオレフィンブロック共重合体のポリオレフィンブロックであり得る。該組成物はワイヤーやケーブル用絶縁体におけるポリ(塩化ビニル)の置換材料として特に好適である。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ポリ(アリーレンエーテル)樹脂は、優れた耐水性、寸法安定性および固有の難燃性で知られるプラスチックの一種である。ポリ(アリーレンエーテル)樹脂を種々の他のプラスチックと混合して強度、剛性、耐薬品性および耐熱性などの特性を調整し、例えば衛生器具、電気ボックス、自動車部品、ワイヤーやケーブルの絶縁体などの様々な消費財製品の要件を満たすことができる。
【0002】
ポリ(塩化ビニル)は、ワイヤーやケーブルの難燃性絶縁体用として現在有力な市販材料である。しかしながら、ポリ(塩化ビニル)はハロゲン化材料である。ハロゲン化材料が環境に与える影響に対して益々懸念が高まっており、非ハロゲン化代替材料が求められている。したがって、ポリ(塩化ビニル)の非ハロゲン化ポリマー組成物による置換が強く求められており、法律で定めている地域もある。
【0003】
最近の研究によると、ハロゲンを含まないあるポリ(アリーレンエーテル)組成物類が、ワイヤーやケーブルの絶縁体用に必要な物性および難燃性を有していることが明らかになってきた。例えば、Kosakaらの米国特許出願公開第2006/0106139A1号および同第2006/0182967A1号参照のこと。これらの引例で開示されている組成物は、良好な難燃性と、柔軟性や引張強度などにおいて良好な物性を示すことができる。しかしながら、要求される難燃剤が比較的大量になると、そのトレードオフとして物性が低下する場合もある。例えば、難燃性組成物が水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物を相当量含む場合、柔軟性、加工性および耐摩耗性が低下する。別の例として、難燃性組成物が液状の有機リン系難燃剤を相当量含む場合には、該難燃剤が絶縁体表面に移動して外観上の問題が生じる可能性があり、さらに重要なことは、熱可塑性組成物の難燃性が低下する。難燃性、物性および外観特性におけるバランスが向上した難燃性ポリ(アリーレンエーテル)組成物が求められている。
【発明の開示】
【0004】
上記およびその他の欠点は、20〜50重量パーセントのポリ(アリーレンエーテル)と、ポリオレフィン類と、ポリ(アルケニル芳香族)ブロックおよびポリオレフィンブロックを含むブロック共重合体類のポリオレフィン含量と、から構成される25〜57重量パーセントの全ポリオレフィンと、金属ジアルキルホスフィン酸塩を含む3〜30重量パーセントの難燃性組成物と、を含む熱可塑性組成物であって、前記すべての重量パーセントは前記熱可塑性組成物の全重量に対するものであり、前記ポリ(アリーレンエーテル)と全ポリオレフィンの重量比は0.53:1〜1.2:1であり、公称断面積が0.205mmのAWG24導線と、前記の熱可塑性組成物を含み公称外径が2mmのチューブ状被覆材とから構成される被覆線試験サンプルの破断引張応力は、UL1581、セクション470に準拠して温度23℃で測定して少なくとも10Mpaであり、破断引張伸び率は、同規格に準拠して同温度で測定して少なくとも100パーセントであり、UL1581、セクション1080に準拠した燃焼試験グレードに合格する、ことを特徴とする熱可塑性組成物によって緩和される。
【0005】
別の実施形態は、前記熱可塑性組成物を含む押出成形物品である。
【0006】
別の実施形態は、導線と前記導線上に配置された被覆材とを備え、前記被覆材は前記熱可塑性組成物を含む被覆線である。
【0007】
これらの実施形態およびその他の実施形態の詳細について以下に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明者らは、ワイヤーやケーブルの絶縁体用ポリ(アリーレンエーテル)組成物についての研究を行なってきた。その研究の中で本発明者らは、非常に特定的な成分量を含むポリ(アリーレンエーテル)組成物が存在する場合、難燃性、物性および外観特性において、特に望ましく改良されたバランスが得られることを見出した。この発見における1つの驚くべき特徴は、全オレフィン量を調節することによって、改良された物性バランスがある程度得られるということである。用語「全ポリオレフィン」には、オレフィンホモポリマー類(ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリ(1−ブテン)など)やオレフィン共重合体類(直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン−プロピレン−ジエンモノマ共重合体類(EPDM)およびポリブテン類として既知のブテン異性体類の共重合体類など)ばかりではなく、ブロック共重合体類のポリオレフィン部分(ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレンブロック共重合体のポリ(エチレン−ブチレン)部分など)も含まれる。言いかえれば、以前の特許文献では、別個の量のポリオレフィン類とスチレンブロック共重合体でポリ(アリーレンエーテル)−ポリオレフィン組成物を説明しているのに対して、本発明者らは、上記のように定義した全ポリオレフィン含量が、難燃性、物性および外観特性の予測と調節において、以前には認識されていなかった有効変数であることを見出した。
【0009】
ある実施形態は、20〜50重量パーセントのポリ(アリーレンエーテル)と、ポリオレフィン類と、ポリ(アルケニル芳香族)ブロックおよびポリオレフィンブロックを含むブロック共重合体類のポリオレフィン含量と、から構成される25〜57重量パーセントの全ポリオレフィンと、金属ジアルキルホスフィン酸塩を含む3〜30重量パーセントの難燃性組成物と、を含む熱可塑性組成物であって、前記すべての重量パーセントは前記熱可塑性組成物の全重量に対するものであり、前記ポリ(アリーレンエーテル)と全ポリオレフィンの重量比は0.53:1〜1.2:1であり、公称断面積が0.205mmのAWG24導線(UL1581第4版、2001年10月31日、セクション20、表20.1に準拠)と、前記熱可塑性組成物を含み公称外径が2mmのチューブ状被覆材と、から構成される被覆線試験サンプルの破断引張応力は、UL1581、セクション470に準拠して温度23℃で測定して少なくとも10Mpaであり、破断引張伸び率は、同規格に準拠して同温度で測定して少なくとも100パーセントであり、UL1581、セクション1080に準拠した燃焼試験グレードに合格する、ことを特徴とする熱可塑性組成物である。該銅導線は、それぞれの直径が0.12mmの銅糸を20本ねじり合わせたものである。一部の実施形態では、前記被覆線試験サンプルはUL1581、セクション1080に準拠した燃焼試験グレードに合格する。UL1581、セクション1080に準拠した燃焼試験グレードの合格については、セクション1080.14に準拠して評価される。具体的には、(1)5回の燃焼の内いずれも、インジケータが25パーセント以上燃焼または炭化しないこと、(2)燃焼粒子、赤熱粒子または発泡滴を放出して綿を発火させないこと、あるいはいずれのガス燃焼後も残炎が60秒を超えないこと、(3)燃焼粒子、赤熱粒子または燃焼滴が、綿で被覆された試験表面の領域外およびまたはくさびあるいはバーナー上に落下した場合は、セクション1080.14に準じて繰り返し試験を行い、面がまったく発火せず、またいずれのガス燃焼後も残炎が60秒を超えないこと、が満たされれば該被覆線は合格となる。
【0010】
一部の実施形態では、前記熱可塑性組成物は、20〜44重量パーセントのポリ(アリーレンエーテル)と、ポリオレフィン類と、ポリ(アルケニル芳香族)ブロックおよびポリオレフィンブロックを含むブロック共重合体類のポリオレフィン含量と、から構成される29〜57重量パーセントの全ポリオレフィンと、1〜10重量パーセントの金属ジアルキルホスフィン酸塩と、リン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミンおよびこれらの混合物から構成される群から選択される1〜17重量パーセントの窒素含有難燃剤と、1気圧下で25〜50℃の少なくとも1つの温度において液体である1〜10重量パーセントのリン酸トリアリールと、を含む10〜25重量パーセントの難燃性組成物と、を含み、前記すべての重量パーセントは前記熱可塑性組成物の全重量に対するものであり、前記ポリ(アリーレンエーテル)と全ポリオレフィンの重量比は0.53:1〜1.2:1であることを特徴とする熱可塑性組成物である。これらの実施形態では、被覆線(具体的にはその被覆材)試験サンプルの破断引張応力は、UL1581、セクション470に準拠して温度23℃で測定して10〜30MPaであり、具体的には10〜27MPa、より具体的には14〜27MPa、さらにより具体的には17〜27MPaであり、破断引張伸び率は、同規格に準拠して同温度で測定して100〜240パーセントであり、具体的には150〜240パーセント、より具体的には170〜240パーセント、さらにより具体的には190〜240パーセントである。一部の実施形態では、さらに前記被覆線試験サンプルの熱変形は、UL1581に準拠して温度121℃、負荷250gの条件で測定して5〜40パーセントであり、具体的には5〜30パーセント、より具体的には5〜25パーセント、さらにより具体的には5〜15パーセント、さらにより具体的には5〜10パーセントである。一部の実施形態では、該被覆線試験サンプルのリン酸トリアリール移動グレードは、作業実施例で説明する方法で測定して0、1または2である。
【0011】
一部の実施形態では、前記熱可塑性組成物は、20〜50重量パーセントのポリ(アリーレンエーテル)と、ポリオレフィン類と、ポリ(アルケニル芳香族)ブロックおよびポリオレフィンブロックを含むブロック共重合体類のポリオレフィン含量と、から構成される25〜57重量パーセントの全ポリオレフィンと、1〜15重量パーセントの金属ジアルキルホスフィン酸塩と、リン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミンおよびこれらの混合物から構成される群から選択される1〜20重量パーセントの窒素含有難燃剤と、を含む3〜25重量パーセントの難燃性組成物と、を含み、前記難燃性組成物は、1気圧下で25〜50℃の少なくとも1つの温度において液体であるリン酸トリアリールを含んでおらず、前記すべての重量パーセントは前記熱可塑性組成物の全重量に対するものであり、前記ポリ(アリーレンエーテル)と全ポリオレフィンとの重量比は0.56:1〜1.2:1であり、前記窒素含有難燃剤と金属ジアルキルホスフィン酸塩の比は0.2:1〜5:1であることを特徴とする。これらの実施形態では、該被覆線(具体的にはその被覆材)試験サンプルの破断引張応力は、UL1581、セクション470に準拠して温度23℃で測定して10〜30MPaであり、具体的には15〜25MPa、より具体的には19〜23MPaであり、破断引張伸び率は、同規格に準拠して同温度で測定して100〜350パーセントであり、具体的には150〜300パーセント、より具体的には200〜240パーセントであることを特徴とする。一部の実施形態では、さらに、該被覆線試験サンプルの熱変形は、UL1580に準拠して温度121℃、負荷250gの条件で測定して5〜50パーセントであり、具体的には10〜30パーセント、より具体的には10〜15パーセントである。一部の実施形態では、該被覆線(具体的にはその被覆材)試験サンプルの破断引張応力は、UL1581、セクション470に準拠して温度23℃で測定して10〜30MPaであり、具体的には15〜25MPa、より具体的には19〜23MPaであり、破断引張伸び率は、同規格に準拠して同温度で測定して100〜350パーセントであり、具体的には150〜300パーセント、より具体的には200〜240パーセントである。一部の実施形態では、さらに、該被覆線試験サンプルの熱変形は、UL1580に準拠して温度121℃、負荷250gの条件で測定して5〜50パーセントであり、具体的には10〜30パーセント、より具体的には10〜15パーセントである。
【0012】
一部の実施形態では、前記熱可塑性組成物は、20〜50重量パーセントのポリ(アリーレンエーテル)と、ポリオレフィン類と、ポリ(アルケニル芳香族)ブロックおよびポリオレフィンブロックを含むブロック共重合体類のポリオレフィン含量と、から構成される25〜57重量パーセントの全ポリオレフィンと、金属ジアルキルホスフィン酸塩は含むが、リン酸メラミン、ピロリン酸メラミンおよびポリリン酸メラミンは含まない、3〜30重量パーセントの難燃性組成物と、を含み、前記すべての重量パーセントは前記熱可塑性組成物の全重量に対するものであり、前記ポリ(アリーレンエーテル)と全ポリオレフィンの重量比は0.55:1〜1.2:1であることを特徴とする。これらの実施形態では、公称断面積が0.205mmのAWG24導線(UL1581第4版、2001年10月31日、セクション20、表20.1に準拠)と、前記の熱可塑性組成物を含み公称外径が2mmのチューブ状被覆材と、から構成される被覆線試験サンプルの破断引張応力は、UL1581、セクション470に準拠して温度23℃で測定して少なくとも10Mpaであり、破断引張伸び率は、同規格に準拠して同温度で測定して少なくとも100パーセントであり、UL1581、セクション1080に準拠した燃焼試験グレードに合格する、ことを特徴とする熱可塑性組成物である。一部の実施形態では、該被覆線(具体的にはその被覆材)試験サンプルの破断引張応力は、UL1581、セクション470に準拠して温度23℃で測定して10〜25MPaであり、具体的には15〜25MPa、より具体的には20〜25MPaであり、破断引張伸び率は、同規格に準拠して同温度で測定して100〜360パーセントであり、具体的には150〜300パーセント、より具体的には200〜250パーセントであることを特徴とする。一部の実施形態では、さらに、該試験サンプルの熱変形は、UL1580に準拠して温度121℃、負荷250gの条件で測定して5〜20パーセントであり、具体的には10〜15パーセントである。
【0013】
前記熱可塑性組成物はポリ(アリーレンエーテル)を含む。好適なポリ(アリーレンエーテル)類には、下記式の繰り返し構造単位を含有するものが含まれる。
【0014】
【化1】

【0015】
式中、Zはそれぞれ独立に、ハロゲン、第三級ヒドロカルビルではない未置換または置換C−C12ヒドロカルビル、C−C12ヒドロカルビルチオ、C−C12ヒドロカルビルオキシ、あるいは少なくとも2つの炭素原子がハロゲン原子と酸素原子とを分離しているC−C12ハロヒドロカルビルオキシであり、Zはそれぞれ独立に、水素、ハロゲン、第三級ヒドロカルビルではない未置換または置換C−C12ヒドロカルビル、C−C12ヒドロカルビルチオ、C−C12ヒドロカルビルオキシ、あるいは少なくとも2つの炭素原子がハロゲン原子と酸素原子とを分離しているC−C12ハロヒドロカルビルオキシボキシである。本明細書で用いる用語「ヒドロカルビル」は、単独あるいは接頭辞、接尾辞または別の用語の一部として用いられる場合であっても、炭素と水素だけを含む残基を指す。該残基は、脂肪族または芳香族、直鎖、環式、二環式、分枝鎖、あるいは飽和または不飽和であり得る。また、脂肪族、芳香族、直鎖、環式、二環式、分枝鎖、飽和および不飽和の炭化水素部分の組み合わせも含み得る。しかしながら、該ヒドロカルビル残基が置換されていると説明した場合には、置換残基の炭素および水素員上にヘテロ原子が選択的に含まれてもよい。したがって、置換されていると明確に記載した場合には、該ヒドロカルビル残基には、1つあるいは複数のカルボニル基、アミノ基、水酸基などが含まれていてもよく、あるいはヒドロカルビル残基の骨格内にヘテロ原子類が含まれていてもよい。一例としてZは、末端3,5−ジメチル−1,4−フェニル基と酸化重合触媒であるジ−n−ブチルアミン成分との反応により形成されるジ−n−ブチルアミノメチル基であってもよい。
【0016】
一部の実施形態では、前記ポリ(アリーレンエーテル)は、2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル単位、2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレンエーテル単位またはこれらの組み合わせを含む。一部の実施形態では、該ポリ(アリーレンエーテル)はポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)である。
【0017】
前記ポリ(アリーレンエーテル)は、典型的にはヒドロキシ基のオルト位置に存在するアミノアルキル−含有末端基を有する分子を含むことができる。テトラメチルジフェノキノン副生物が存在する2,6−ジメチルフェノール−含有反応混合物から典型的に得られるテトラメチルジフェノキノン(TMDQ)末端基も含まれることが多い。前記ポリ(アリーレンエーテル)は、ホモポリマー、共重合体、グラフト共重合体、イオノマー、ブロック共重合体およびこれらのものの少なくとも1つを含む組み合わせの形態で存在できる。
【0018】
一部の実施形態では、前記ポリ(アリーレンエーテル)の固有粘度は、温度25℃のクロロホルム中で測定して0.1〜1dL/gである。具体的には、該ポリ(アリーレンエーテル)の固有粘度は、0.2〜0.8dL/gであり、より具体的には0.3〜0.6dL/g、さらにより具体的には0.4〜0.5dL/gであってもよい。
【0019】
前記熱可塑性組成物は、熱可塑性組成物の全重量に対して、広くは20〜50重量パーセントのポリ(アリーレンエーテル)を含む。この範囲内で、該ポリ(アリーレンエーテル)の量は25〜45重量パーセント、具体的には30〜40重量パーセント、より具体的には35〜40重量パーセントにすることができる。前記難燃性組成物が金属ジアルキルホスフィン酸塩、窒素含有難燃剤およびリン酸トリアリールを含む実施形態では、該熱可塑性組成物は、熱可塑性組成物の全重量に対して20〜44重量パーセントのポリ(アリーレンエーテル)を含むことができる。この範囲内で、該ポリ(アリーレンエーテル)の量は28〜44重量パーセント、具体的には30〜42重量パーセント、より具体的には30〜36重量パーセントにできる。前記難燃性組成物が金属ジアルキルホスフィン酸塩と窒素含有難燃剤は含むがリン酸トリアリールは含まない実施形態では、該熱可塑性組成物は、その全重量に対して20〜50重量パーセントのポリ(アリーレンエーテル)を含むことができる。この範囲内で、該ポリ(アリーレンエーテル)の量は30〜47重量パーセント、具体的には37〜47重量パーセントにできる。前記難燃性組成物が金属ジアルキルホスフィン酸塩は含むが窒素含有難燃剤を含まない実施形態では、該熱可塑性組成物は、その全重量に対して20〜50重量パーセントのポリ(アリーレンエーテル)を含むことができる。この範囲内で、該ポリ(アリーレンエーテル)の量は30〜47重量パーセント、具体的には39〜47重量パーセントにできる。
【0020】
前記熱可塑性組成物は、ポリ(アリーレンエーテル)に加えて、25〜57重量パーセントの全ポリオレフィンを含む。上記のとおり、該全ポリオレフィンは、ポリオレフィン類と、ポリ(アルケニル芳香族)ブロックおよびポリオレフィンブロックを含むブロック共重合体類のポリオレフィン含量と、から構成される。用語「ポリオレフィン類」にはオレフィンホモポリマー類が含まれる。ホモポリマー類には、ポリエチレン、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)およびアイソタクチックポリプロピレンなどが含まれる。ポリオレフィンにはオレフィン共重合体類も含まれる。こうした共重合体類としては、エチレンと、1−オクテン、プロピレンおよび4−メチル−1−ペンテンなどのαオレフィン類との共重合体類や、エチレンと1つまたは複数のゴムとの共重合体類やプロピレンと1つまたは複数のゴム類との共重合体類などがある。本明細書ではEPDM共重合体と呼ぶ、エチレンとC−C10モノオレフィン類および非共役ジエン類との共重合体類も全ポリオレフィンに含まれる。EPDM共重合体用の好適なC−C10モノオレフィン類には、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、3−ヘキセンなどがある。好適なジエン類には、1,4−ヘキサジエンおよび単環式または多環式ジエン類が含まれる。エチレンと他のC−C10モノオレフィンモノマー類とのモル比は、ジエン単位の量を0.1〜10モルパーセントとして、95:5〜5:95の範囲とすることができる。EPDM共重合体類は、Laughnerらの米国特許第5,258,455号に開示されているように、ポリフェニレンエーテルにグラフトするためのアシル基や求電子基で官能基化することができる。オレフィン共重合体類にはさらに、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)が含まれる。全ポリオレフィンにはさらに、ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレンブロック共重合体のポリ(エチレン−ブチレン)部分や、ポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)ジブロック共重合体のポリ(エチレン−プロピレン)部分などの、ブロック共重合体類のポリオレフィン部分が含まれる。
【0021】
一部の実施形態では、前記全ポリオレフィンは、エチレン−オクテン共重合体類、エチレン−ブテン共重合体類、エチレン−プロピレン共重合体類、ポリプロピレン類、ポリブテン類、ポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)−ポリスチレントリブロック共重合体類のポリ(エチレン−プロピレン)ブロック類、ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロック共重合体類のポリ(エチレン−ブチレン)ブロック類およびこれらの混合物から構成される群から選択される。一部の実施形態では、該全ポリオレフィンは、ポリプロピレン類、ポリブテン類、ポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)−ポリスチレントリブロック共重合体類のポリ(エチレン−プロピレン)ブロック類、ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロック共重合体類のポリ(エチレン−ブチレン)ブロック類およびこれらの混合物から構成される群から選択される。
【0022】
前記全ポリオレフィンの量は前記組成物の全重量に対して、広くは25〜57重量パーセントであり、具体的には30〜52重量パーセント、より具体的には35〜47重量パーセントである。前記難燃性組成物が金属ジアルキルホスフィン酸塩、窒素含有難燃剤およびリン酸トリアリールを含む実施形態では、該全ポリオレフィンの量は前記熱可塑性組成物の全重量に対して、29〜57重量パーセント、具体的には34〜51重量パーセント、より具体的には38〜46重量パーセントとすることができる。前記難燃性組成物が金属ジアルキルホスフィン酸塩および窒素含有難燃剤は含むがリン酸トリアリールは含まない実施形態では、前記全ポリオレフィンの量は熱可塑性組成物の全重量に対して25〜50重量パーセント、具体的には30〜50重量パーセント、より具体的には34〜43重量パーセントとすることができる。前記難燃性組成物が金属ジアルキルホスフィン酸塩は含むが窒素含有難燃剤は含まない実施形態では、前記全ポリオレフィンの量は熱可塑性組成物の全重量に対して25〜57重量パーセント、具体的には30〜50重量パーセント、より具体的には35〜42重量パーセントとすることができる。
【0023】
所望の特性を得るために重要なのは、ポリ(アリーレンエーテル)と全ポリオレフィンの特定量だけではない。これらの成分の比率も重要である。該ポリ(アリーレンエーテル)と全ポリオレフィンの重量比は、広くは0.53:1〜1.2:1であり、具体的には0.55:1〜1.1:1、より具体的には0.56:1〜1:1、さらにより具体的には0.7:1〜1:1である。難燃性組成物が金属ジアルキルホスフィン酸塩、窒素含有難燃剤およびリン酸トリアリールを含む実施形態では、該ポリ(アリーレンエーテル)と全ポリオレフィンの重量比は0.53:1〜1.2:1であり、具体的には0.6:1〜1:1、より具体的には0.6:1〜0.9:1、さらにより具体的には0.7:1〜0.9:1とすることができる。前記難燃性組成物が金属ジアルキルホスフィン酸塩と窒素含有難燃剤は含むがリン酸トリアリールは含まない実施形態では、該ポリ(アリーレンエーテル)と全ポリオレフィンの重量比は0.56:1〜1.2:1であり、具体的には0.7:1〜1.2:1、より具体的には0.9:1〜1.2:1とすることができる。該難燃性組成物が金属ジアルキルホスフィン酸塩は含むが窒素含有難燃剤は含まない実施形態では、該ポリ(アリーレンエーテル)と全ポリオレフィンの重量比は0.55:1〜1.2:1であり、具体的には0.8:1〜1.2:1、より具体的には1.1:1〜1.2:1とすることができる。
【0024】
上記のとおり、全ポリオレフィンの文脈中では、前記熱可塑性組成物は、ポリ(アルケニル芳香族)ブロックおよびポリオレフィンブロックを含むブロック共重合体を含むことができる。一部の実施形態では、該ポリオレフィンブロックはポリ(共役ジエン)または水素化ポリ(共役ジエン)である。該ブロック共重合体には、約15〜約80重量パーセントのポリ(アルケニル芳香族)含量と約20〜約85重量パーセントの未水素化または水素化ポリ(共役ジエン)含量とが含まれてもよい。一部の実施形態では、前記ブロック共重合体のポリ(アルケニル芳香族)含量は約20〜40重量パーセントである。他の実施形態では、該ブロック共重合体のポリ(アルケニル芳香族)含量は40超重量パーセント〜約90重量パーセントであり、具体的には約55〜約80重量パーセントである。
【0025】
一部の実施形態では、前記ブロック共重合体の重量平均分子量は約3,000〜約400,000原子質量単位である。数平均分子量と重量平均分子量は、ゲルパーミエションクロマトグラフを用い、ポリスチレン標準と比較することによって求められる。一部の実施形態では、前記ブロック共重合体の重量平均分子量は40,000〜400,000原子質量単位であり、具体的には200,000〜400,000原子質量単位、より具体的には220,000〜350,000原子質量単位である。他の実施形態では、前記ブロック共重合体の重量平均分子量は40,000〜200,000未満原子質量単位であり、具体的には40,000〜180,000原子質量単位、より具体的には40,000〜150,000原子質量単位である。
【0026】
前記ブロック共重合体の調製に用いられるアルケニル芳香族モノマーは下記式の構造を有することができる。
【0027】
【化2】

【0028】
式中、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、C−Cアルキル基あるいはC−Cアルケニル基を表わし、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子またはC−Cアルキル基を表わし、R、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、C−Cアルキル基あるいはC−Cアルケニル基を表わし、あるいはRとRは、ナフチル基を形成するものとして中央の芳香族環と共に取り上げられ、RとRは、ナフチル基を形成するものとして中央の芳香族環と共に取り上げられる。具体的なアルケニル芳香族モノマー類には、例えば、スチレン、およびα−メチルスチレンやp−メチルスチレンなどのメチルスチレン類が含まれる。一部の実施形態では、該アルケニル芳香族モノマーはスチレンである。
【0029】
前記ブロック共重合体の調製に用いる共役ジエンはC−C20共役ジエンとすることができる。好適な共役ジエン類には、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどやこれらの組み合わせが含まれる。一部の実施形態では、該共役ジエンは、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエンあるいはこれらの組み合わせである。一部の実施形態では、該共役ジエンは1,3−ブタジエンから構成される。
【0030】
前記ブロック共重合体は、(A)アルケニル芳香族化合物から誘導される少なくとも1つのブロックと、(B)共役ジエンから誘導される少なくとも1つのブロックと、を含む共重合体である。一部の実施形態では、(B)ブロックの脂肪族不飽和度は水素化によって、少なくとも50パーセント、具体的には少なくとも70パーセントは低減される。ブロック(A)と(B)の配置には、リニア構造、グラフト構造、および分枝鎖があってもなくてもよいラジアルテレブロック構造がある。リニアブロック共重合体類には、テーパー型リニア構造と非テーパー型リニア構造とがある。一部の実施形態では、前記ブロック共重合体はテーパー型リニア構造を有している。一部の実施形態では、該ブロック共重合体は非テーパー型リニア構造を有している。一部の実施形態では、該ブロック共重合体は、アルケニル芳香族モノマーがランダムに組み込まれたBブロックを含む。リニアブロック共重合体構造には、ジブロック(A−Bブロック)、トリブロック(A−B−AブロックあるいはB−A−Bブロック)、テトラブロック(A−B−A−Bブロック)、ペンタブロック(A−B−A−B−AブロックあるいはB−A−B−A−Bブロック)、およびAとBが合計で6個以上含まれるリニア構造などがあり、各Aブロックの分子量は他のAブロックの分子量と同じであっても違っていてもよく、また、各Bブロックの分子量は他のBブロックの分子量と同じであっても違っていてもよい。一部の実施形態では、該ブロック共重合体は、ジブロック共重合体、トリブロック共重合体あるいはこれらの組み合わせである。一部の実施形態では、該ブロック共重合体はポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリグロック共重合体である。
【0031】
一部の実施形態では、前記ブロック共重合体には、前記アルケニル芳香族化合物および共役ジエン以外のモノマー類の残基は含まれない。一部の実施形態では、該ブロック共重合体は、該アルケニル芳香族化合物と共役ジエンとから誘導されるブロック類から構成される。これらの実施形態では、これらのモノマーまたはそれ以外のモノマーから形成されるグラフトは含まれず、また、炭素原子と水素原子とから構成されるためにヘテロ原子は含まれない。
【0032】
他の実施形態では、前記ブロック共重合体は、無水マレイン酸などの1つあるいは複数の酸性官能化剤の残基を含む。
【0033】
ブロック共重合体類の調製方法は当分野では既知であり、多くの水素化ブロック共重合体類が市販されている。市販の水素化ブロック共重合体類には、Kraton Polymers社からKraton G1701およびG1702として市販されているポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)ジブロック共重合体類、Kraton Polymers社からKraton G1641、G1650、G1651、G1654、G1657、G1726、G4609、G4610、GRP−6598、RP−6924、MD−6932M、MD−6933およびMD−6939として市販されているポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレトリブロック共重合体類、Kraton Polymers社からKraton RP−6935およびRP−6936として市販されているポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン−スチレン)−ポリスチレン(S−EB/S−S)トリブロック共重合体類、Kraton Polymers社からKraton G1730として市販されているポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)−ポリスチレントリブロック共重合体類、Kraton Polymers社からKraton G1901、G1924およびMD−6684として市販されている無水マレイン酸−グラフトポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロック共重合体類、Kraton Polymers社からKraton MD−6670として市販されている無水マレイン酸−グラフトポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン−スチレン)−ポリスチレントリブロック共重合体、旭化成ケミカルズ社からTUFTEC H1043として市販されている、67重量パーセントのポリスチレンを含むポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロック共重合体、旭化成ケミカルズ社からTUFTEC H1051として市販されている、42重量パーセントのポリスチレンを含むポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロック共重合体、旭化成ケミカルズ社からTUFTEC P1000およびP2000として市販されているポリスチレン−ポリ(ブタジエン−ブチレン)−ポリスチレントリブロック共重合体類、旭化成ケミカルズ社からS.O.E.−SS L601として市販されているポリスチレン−ポリブタジエン−ポリ(スチレン−ブタジエン)−ポリブタジエンブロック共重合体、Chevron Phillips Chemical社からK−Resin KK38、KR01、KR03およびKR05として市販されている水素化ラジアルブロックブロック共重合体類、クラレ社からSEPTON S8104として市販されている、約60重量パーセントのポリスチレンを含むポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロック共重合体、クラレ社からSEPTON S4044、S4055、S4077およびS4099として市販されているポリスチレン−ポリ(エチレン−エチレン/プロピレン)−ポリスチレントリブロック共重合体類、クラレ社からSEPTON S2104として市販されている、約65重量パーセントのポリスチレンを含むポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)−ポリスチレントリブロック共重合体が含まれる。複数のブロック共重合体類の混合物も使用できる。市販の未水素化ブロック共重合体としては、Kraton Polymers社のKRATON(登録商標) D1101およびD1102などのKRATON(登録商標) Dシリーズポリマー類や、例えばChevron Phillips Chemical社から販売されているK−RESIN KR01、KR03、KR05およびKR10などの市販スチレン−ブタジエンラジアルテレブロック共重合体類などがある。
【0034】
前記熱可塑性組成物は、その全重量に対して15〜50重量パーセントの、具体的には22〜43重量パーセントの、より具体的には30〜40重量パーセントの前記ブロック共重合体を含むことができる。
【0035】
前記熱可塑性組成物は、前記ブロック共重合体中のポリ(アルケニル芳香族)ブロック類に加えて、アルケニル芳香族モノマー類のホモポリマー類や共重合体類を含むことができる。本明細書で用いる用語「アルケニル芳香族モノマー類の共重合体」は、2つ以上の異なるアルケニル芳香族モノマー類から構成されるモノマー類の共重合体を指す。アルケニル芳香族モノマー類のホモポリマー類には、アタクチックおよびシンジオタクチックのポリスチレンを始めとするポリスチレン類が含まれる。アルケニル芳香族モノマーの共重合体類には、スチレン、メチルスチレン類およびt−ブチルスチレン類から構成される群から選択される2つ以上のモノマー類の共重合体類が含まれる。アルケニル芳香族モノマー類のホモポリマー類および共重合体類が存在する場合、それらの量は、該熱可塑性組成物の全重量に対して2〜20重量パーセント、具体的には5〜15重量パーセントとすることができる。
【0036】
前記熱可塑性組成物の全ポリ(アルケニル芳香族)含量は、ポリ(アルケニル芳香族)類(すなわちアルケニル芳香族モノマー類のホモポリマー類および共重合体類)と、ポリ(アルケニル芳香族)ブロックおよびポリオレフィンブロックを含むブロック共重合体類のポリ(アルケニル芳香族)含量と、から構成される。この全ポリ(アルケニル芳香族)含量は、熱可塑性組成物の全重量に対して広くは3〜20重量パーセントであり、具体的には5〜18重量パーセント、より具体的には7〜16重量パーセントである。前記難燃性組成物が金属ジアルキルホスフィン酸塩、窒素含有難燃剤およびリン酸トリアリールを含む実施形態では、全ポリ(アルケニル芳香族)含量は、熱可塑性組成物の全重量に対して8〜20重量パーセントであり、具体的には9〜18重量パーセント、より具体的には11〜16重量パーセントである。該難燃性組成物が金属ジアルキルホスフィン酸塩と窒素含有難燃剤は含むがリン酸トリアリールは含まない実施形態では、全ポリ(アルケニル芳香族)含量は、熱可塑性組成物の全重量に対して3〜20重量パーセントであり、具体的には8〜16重量パーセント、より具体的には11〜16重量パーセントである。該難燃性組成物が金属ジアルキルホスフィン酸塩は含むが窒素含有難燃剤は含まない実施形態では、該全ポリ(アルケニル芳香族)含量は、熱可塑性組成物の全重量に対して3〜20重量パーセントであり、具体的には8〜20重量パーセント、より具体的には9〜18重量パーセント、さらにより具体的には11〜16重量パーセントである。
【0037】
前記熱可塑性組成物は、前記ポリ(アリーレンエーテル)と全ポリオレフィンに加えて難燃性組成物を含む。該難燃性組成物は、金属ジアルキルホスフィン酸塩を含む。一部の実施形態では、該難燃性組成物は、金属ジアルキルホスフィン酸塩と、窒素含有難燃剤(以下で定義する)と、1気圧下で温度25〜50℃の少なくとも1つの温度において液体であるリン酸トリアリールと、を含む。一部の実施形態では、該難燃性組成物は、金属ジアルキルホスフィン酸塩と窒素含有難燃剤は含むが、1気圧下で温度25〜50℃の少なくとも1つの温度において液体であるリン酸トリアリールは含まない。一部の実施形態では、該難燃性組成物は、金属ジアルキルホスフィン酸塩は含むが、窒素含有難燃剤は含まない。
【0038】
本明細書で用いる用語「金属ジアルキルホスフィン酸塩」とは、少なくとも1つの金属カチオンと少なくとも1つのジアルキルホスフィン酸アニオンとを含む塩である。一部の実施形態では、該金属ジアルキルホスフィン酸塩は下記式を有する。
【0039】
【化3】

【0040】
式中、RとRはそれぞれ独立にC−Cアルキルであり、Mはカルシウム、マグネシウム、アルミニウムあるいは亜鉛であり、dは2または3である。RとRとしては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチルおよびフェニルなどがある。一部の実施形態では、RとRはエチルであり、Mはアルミニウムであり、dは3(すなわち、該金属ジアルキルホスフィン酸塩はアルミニウムトリス(ホスフィン酸ジエチル))である。
【0041】
一部の実施形態では、前記金属ジアルキルホスフィン酸塩は微粒子形状である。該金属ジアルキルホスフィン酸塩粒子の中央粒径(D50)は、40μm以下であり、より具体的には30μm以下、さらにより具体的には25μm以下であってもよい。さらに、該金属ジアルキルホスフィン酸塩を、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリオレフィン、ポリアミド、ブロック共重合体あるいはこれらの組み合わせなどのポリマーと混合してマスターバッチとしてもよい。該金属ジアルキルホスフィン酸塩マスターバッチにおける金属ジアルキルホスフィン酸塩の量は、前記熱可塑性組成物中の量より多い。金属ジアルキルホスフィン酸塩を熱可塑性組成物の他の成分に添加するためにマスターバッチを用いると添加が容易になり、金属ジアルキルホスフィン酸塩の分布性を向上できる。
【0042】
本明細書では、前記窒素含有難燃剤を、窒素含有複素環塩基と、リン酸、ピロリン酸またはポリリン酸と、を含むものと定義する。一部の実施形態では、該窒素含有難燃剤は下記式を有する。
【0043】
【化4】

【0044】
式中、gは1〜約10,000であり、fとgの比率は約0.5:1〜約1.7:1であり、具体的には0.7:1〜1.3:1、より具体的には0.9:1〜1.1:1である。この式には、1つまたは複数のプロトンがポリリン酸基からメラミン基に移動する種が含まれることは理解されるであろう。gが1の場合、該窒素含有難燃剤はリン酸メラミン(CAS登録No.20208−95−1)である。gが2の場合、該窒素含有難燃剤はピロリン酸メラミン(CAS登録No.15541−60−3)である。gが平均で2を超える場合、該窒素含有難燃剤はポリリン酸メラミン(CAS登録No.56386−64−2)である。一部の実施形態では、該窒素含有難燃剤はピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミンあるいはこれらの混合物である。該窒素含有難燃剤がポリリン酸メラミンである実施形態では、gの平均値は2超〜約10,000であり、具体的には約5〜約1,000、より具体的には約10〜約500である。該窒素含有難燃剤がポリリン酸メラミンである実施形態では、gの平均値は2超〜約500である。リン酸メラミン、ピロリン酸メラミンおよびポリリン酸メラミンの調製方法は当分野で既知であり、またそれらはすべて市販されている。例えばkasowskiらの米国特許第6,025,419号に記載されているように、例えばポリリン酸とメラミンとを反応させて調製しても、あるいはJacobsonらの国際特許出願第WO98/08898A1号に記載されているように、窒素雰囲気下、温度290℃でピロリン酸メラミンを一定重量になるまで加熱させて調製してもよい。
【0045】
前記窒素含有難燃剤の揮発度は、硬化型組成物を熱的に硬化させる温度に対して低いものとすることができる。例えば、一部の実施形態では、該窒素含有難燃剤を昇温速度20℃/分で25℃から280℃に、具体的には25℃から300℃に、より具体的には25℃から320℃に加熱した場合の該窒素含有難燃剤の重量損失は、熱重量分析を行って1パーセント未満である。
【0046】
一部の実施形態では、前記難燃性組成物は、1気圧下で25〜50℃の少なくとも1つの温度において液体であるリン酸トリアリールを含む。1気圧下で25〜50℃の少なくとも1つの温度において液体であるリン酸トリアリールには、例えば、レゾルシノールビス(リン酸ジフェニル)、レゾルシノールビス(リン酸ジ−2,6−ジメチルフェニル)、ビスフェノールAビス(リン酸ジフェニル)、レゾルシノールビス(リン酸ジ−2,6−ジメチルフェニル)、アルキル化リン酸トリフェニル(メチル化リン酸トリフェニルおよびブチル化リン酸トリフェニルなど)など、およびこれらの混合物が含まれる。
【0047】
前記難燃性組成物がリン酸トリアリールを含む場合、該リン酸トリアリールは、実質的に難燃性と反可塑化効果を発揮するのに十分な量用いることができるが、押出成形した電線絶縁体などの成形品表面への移動は、同様な難燃性を単にリン酸トリアリールだけで達成しているポリ(アリーレンエーテル)組成物と比較して、著しく低減できる。したがって、一部の実施形態では、上記被覆線試験サンプルのリン酸トリアリール移動グレードは、作業実施例で説明する方法で測定して0、1または2である。
【0048】
前記熱可塑性組成物は、その全重量に対して該難燃性組成物を広くは3〜30重量パーセント、具体的には4〜20重量パーセント、より具体的には5〜15重量パーセント含む。
【0049】
前記難燃性組成物が金属ジアルキルホスフィン酸塩、窒素含有難燃剤およびリン酸トリアリールを含む実施形態では、前記熱可塑性組成物は、その全重量に対して前記難燃性組成物を10〜25重量パーセント、具体的には11〜20重量パーセント、より具体的には11〜14重量パーセント含むことができる。これらの範囲には、1〜10重量パーセントの、具体的には1〜7重量パーセントの、より具体的には1〜6重量パーセントの、さらにより具体的には1〜5重量パーセントの、さらにより具体的には1〜4重量パーセントの、さらにより具体的には1〜3重量パーセントの金属ジアルキルホスフィン酸塩と、1〜17重量パーセントの、具体的には1〜12重量パーセントの、より具体的には1〜7重量パーセントの、さらにより具体的には1〜4重量パーセントのさらにより具体的には1〜3重量パーセントの窒素含有難燃剤と、1〜10重量パーセントの、具体的には3〜10重量パーセントの、より具体的には4〜9重量パーセントの、さらにより具体的には6〜9重量パーセントのリン酸トリアリールと、が含まれる。
【0050】
前記難燃性組成物が金属ジアルキルホスフィン酸塩と窒素含有難燃剤は含むがリン酸トリアリールは含まない実施形態では、該熱可塑性組成物はその全重量に対して、3〜25重量パーセントの、具体的には4〜20重量パーセントの、より具体的には4〜15の重量パーセントの、さらにより具体的には4〜10重量パーセントの、さらにより具体的には4〜8重量パーセントの前記難燃性組成物を含むことができる。これらの範囲には、1〜15重量パーセントの、具体的には2〜10重量パーセントの、より具体的には2〜7重量パーセントの、さらにより具体的には2〜4重量パーセントの金属ジアルキルホスフィン酸塩と、1〜20重量パーセントの、具体的には2〜15重量パーセントの、より具体的には2〜10重量パーセントの、さらにより具体的には2〜7重量パーセントの、さらにより具体的には2〜4重量パーセントの窒素含有難燃剤と、が含まれる。
【0051】
前記難燃性組成物が金属ジアルキルホスフィン酸塩は含むが窒素含有難燃剤は含まない実施形態では、該組成物には、その全重量に対して3〜30重量パーセントの、具体的には4〜20重量パーセントの、より具体的には4〜10重量パーセントの、さらにより具体的には4〜8重量パーセントの、さらにより具体的には4〜6重量パーセントの該難燃性組成物が含まれる。
【0052】
一部の実施形態では、前記熱可塑性組成物における前記窒素含有難燃剤と金属ジアルキルホスフィン酸塩の重量比は1:9、具体的には2:8、より具体的には2:7、さらにより具体的には2:6、さらにより具体的には2:5である。一部の実施形態では、該熱可塑性組成物におけるリン酸トリアリールと金属ジアルキルホスフィン酸塩の重量比は0.6:7、具体的には特に0.8:3、より具体的には1:2である。一部の実施形態では、該熱可塑性組成物におけるリン酸トリアリールと窒素含有難燃剤の重量比は0.2:4、具体的には0.3:1.5、より具体的には0.3:1である。
【0053】
前記液体リン酸トリアリールが存在する実施形態では、該リン酸トリアリールの量は前記難燃性組成物の全重量の10〜70パーセントに相当する。該難燃性組成物の全重量に対する該液体リン酸トリアリールの重量パーセントは、具体的には10〜60パーセントであり、より具体的には20〜60パーセントである。
【0054】
前記窒素含有難燃剤が存在する一部の実施形態では、該窒素含有難燃剤と金属ジアルキルホスフィン酸塩の重量比は0.5:8(つまり重量比範囲は0.5:1〜8:1)であり、具体的には0.5:4、より具体的には0.5:2である。
【0055】
一部の実施形態では、前記難燃性組成物は、前記金属ジアルキルホスフィン酸塩、窒素含有難燃剤およびリン酸トリアリールから構成される。
【0056】
一部の実施形態では、前記難燃性組成物は、前記金属ジアルキルホスフィン酸塩と窒素含有難燃剤から構成される。
【0057】
一部の実施形態では、前記難燃性組成物は、前記金属ジアルキルホスフィン酸塩とリン酸トリアリールから構成される。
【0058】
一部の実施形態では、前記難燃性組成物は前記金属ジアルキルホスフィン酸塩から構成される。
【0059】
一部の実施形態では、難燃剤成分を追加することができる。例えば、前記難燃性組成物はさらに、前記熱可塑性組成物の全重量に対して0.05〜2.5重量パーセントのホウ酸亜鉛を含むことができる。ホウ酸亜鉛の量は具体的には0.1〜5重量パーセント、より具体的には0.2〜5重量パーセントとすることができる。
【0060】
一部の実施形態では、前記熱可塑性組成物はさらに、熱可塑性組成物の加工特性を向上させるための流動促進樹脂を含むことができる。該流動促進樹脂のガラス転移温度または融点は30〜175℃であり、具体的には50〜170℃、より具体的には70〜165℃、さらにより具体的には100〜160℃、さらにより具体的には100〜155℃である。好適なポリマー樹脂類には、例えば、ポリスチレン類、炭化水素ワックス類、炭化水素樹脂類、脂肪酸類、ポリオレフィン類、ポリエステル類、フッ素ポリマー類、エポキシ樹脂類、フェノール樹脂類、ロジン類とロジン誘導体類、テルペン樹脂類、アクリル樹脂類およびこれらの組み合わせが含まれる。該流動促進樹脂がポリオレフィンの場合、前記熱可塑性組成物は少なくとも1つの他のポリオレフィン成分を含む。
【0061】
前記熱可塑性組成物にはさらに、熱可塑性材の分野で既知の種々の添加剤が選択的に含まれていてもよい。例えば、熱可塑性組成物にはさらに、安定剤、離型剤、加工助剤、液滴抑制剤、成核剤、UVカット剤、染料、顔料、酸化防止剤、静電防止剤、発泡剤、鉱油、金属活性低下剤、ブロッキング防止剤、ナノ粘土などおよびこれらの組み合わせから選択される添加剤が選択的に含まれていてもよい。
【0062】
一部の実施形態では、前記熱可塑性組成物は、必要なものあるいは選択的に用いられるものとして本明細書で記載していないポリマーは含まない。一部の実施形態では、該熱可塑性組成物は、必要なものあるいは選択的に用いられるものとして本明細書で記載していない難燃剤は含まない。一部の実施形態では、該熱可塑性組成物は充填材を含まない。
【0063】
ある実施形態では、前記熱可塑性組成物は、25℃のクロロホルム中で測定した固有粘度が0.3〜0.6dL/gであるポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)である、30〜36重量パーセントのポリ(アリーレンエーテル)と、ポリプロピレンと、エチレン−プロピレン共重合体と、ポリスチレンブロックおよびポリ(エチレン−co−ブチレン)ブロックを含むブロック共重合体のポリ(エチレン−co−ブチレン)ブロックと、を含む、38〜46重量パーセントの全ポリオレフィンと、1〜3重量パーセントのアルミニウムトリス(ホスフィン酸ジエチル)と、1〜3重量パーセントのポリリン酸メラミンと、6〜10重量パーセントのビスフェノールAビス(リン酸ジフェニル)とから構成される、10〜14重量パーセントの難燃性組成物と、を含み、前記ポリ(アリーレンエーテル)と全ポリオレフィンの重量比は、0.6:0.9であり、公称断面積が0.205mmのAWG24導線と、前記の熱可塑性組成物を含み公称外径が2mmのチューブ状被覆材と、から構成される被覆線試験サンプルの破断引張応力は、UL1581、セクション470に準拠して温度23℃で測定して10〜30Mpaであり、破断引張伸び率は、同規格に準拠して同温度で測定して100〜240パーセントであり、UL1581、セクション1080に準拠した燃焼試験グレードに合格する。
【0064】
ある実施形態では、前記熱可塑性組成物は、温度25℃のクロロホルム中で測定した固有粘度が0.3〜0.6dL/gのポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)である、37〜47重量パーセントのポリ(アリーレンエーテル)と、ポリプロピレンと、ポリブテンと、エチレン−プロピレン共重合体と、ポリスチレンブロックおよびポリ(エチレン−co−プロピレン)ブロックを含むブロック共重合体のポリ(エチレン−co−プロピレン)ブロックと、ポリスチレンブロックおよびポリ(エチレン−co−ブチレン)ブロックを含むブロック共重合体のポリ(エチレン−co−ブチレン)ブロックと、を含む、34〜43重量パーセントの全ポリオレフィンと、2〜6重量パーセントのアルムニウムトリス(ホスフィン酸ジエチル)と、2〜6重量パーセントのポリリン酸メラミンとから構成される、4〜12重量パーセントの難燃性組成物と、を含み、前記ポリ(アリーレンエーテル)と全ポリオレフィンの重量比は0.8:1.2であり、公称断面積が0.205mmのAWG24導線と、前記の熱可塑性組成物を含み公称外径が2mmのチューブ状被覆材と、から構成される被覆線試験サンプルの破断引張応力は、UL1581、セクション470に準拠して温度23℃で測定して10〜25Mpaであり、破断引張伸び率は、同規格に準拠して同温度で測定して200〜300パーセントであり、UL1581、セクション1080に準拠した燃焼試験グレードに合格する。
【0065】
ある実施形態では、前記熱可塑性組成物は、温度25℃のクロロホルム中で測定した固有粘度が0.3〜0.6dL/gのポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)である、39〜47重量パーセントのポリ(アリーレンエーテル)と、ポリプロピレンと、ポリブテンと、エチレン−プロピレン共重合体と、ポリスチレンブロックおよびポリ(エチレン−co−プロピレン)ブロックを含むブロック共重合体のポリ(エチレン−co−プロピレン)と、ポリスチレンブロックおよびポリ(エチレン−co−ブチレン)ブロックを含むブロック共重合体のポリ(エチレン−co−ブチレン)ブロックと、を含む、35〜42重量パーセントの全ポリオレフィンと、アルムニウムトリス(ホスフィン酸ジエチル)から構成される4〜10重量パーセントの難燃性組成物と、を含み、前記ポリ(アリーレンエーテル)と全ポリオレフィンの重量比は0.9:1.2であり、公称断面積が0.205mmのAWG24導線と、前記の熱可塑性組成物を含み公称外径が2mmのチューブ状被覆材と、から構成される被覆線試験サンプルの破断引張応力は、UL1581、セクション470に準拠して温度23℃で測定して10〜25Mpaであり、破断引張伸び率は、同規格に準拠して同温度で測定して150〜300パーセントであり、UL1581、セクション1080に準拠した燃焼試験グレードに合格する。
【0066】
前記組成物は複数の成分を含むとして定義したので、各成分は化学的に異なっており、特に単一の化合物が複数の成分の定義を満たす場合には異なることは理解されるであろう。
【0067】
本発明の組成物の調製は、通常、緊密混合を形成する条件下で成分を溶融混合することによって達成される。こうした条件には、しばしば、成分にせん断を加えることができる一軸スクリュまたは二軸スクリュ型押出機や同様の混合装置での混合が含まれる。
【0068】
前記熱可塑性組成物は、押出成形による物品製造での利用に好適である。したがって、ある実施形態は、上記の任意の熱可塑性組成物を含む押出成形物品である。一部の実施形態では、該押出成形物品は中空チューブ形状である。一部の実施形態では、該押出成形物品は、芯となる導電性媒体または光伝送媒体を囲むチューブ状被覆材の形状である。
【0069】
前記熱可塑性組成物は、ワイヤーやケーブルの絶縁体の製造での利用に特に好適である。被覆線の製造方法は当分野では既知であり、また、例えばMhetarらの米国特許出願公開第2006/0131052A1号に記載されている。したがって、ある実施形態は、導線と、前記導線上に配置された被覆材とを備え、前記被覆材は上記の任意の熱可塑性組成物を含む被覆線である。特許請求された被覆線の構成や寸法は、特性値が明記された被覆線試験サンプルでのそれらに限定されるものではないことは理解されるであろう。例えば、該被覆線は、AWG35〜AWG10用のUL1581、セクション20表20.1に特定された寸法の導線を有することができる。別の例として、該導線上に配置された被覆材の厚みは0.2〜1mmである。
【0070】
前記難燃性組成物が前記金属ジアルキルホスフィン酸塩、窒素含有難燃剤およびリン酸トリアリールを含む一部の実施形態では、前記被覆線試験サンプルの破断引張応力は、UL1581、セクション470に準拠して温度23℃で測定して10〜30MPaであり、破断引張伸び率は、同規格に準拠して同温度で測定して100〜240パーセントである。さらに一部の実施形態では、該被覆線試験サンプルの平均消炎時間は、UL1581、セクション1080(VW−1垂直試験)に準拠して測定して9〜60秒であり、具体的には9〜50秒、より具体的には9〜40秒、さらにより具体的には9〜30秒である。さらに一部の実施形態では、該被覆線試験サンプルのリン酸トリアリール移動グレードは、作業実施例で説明する方法で測定して0、1または2である。一部の実施形態では、該被覆線試験サンプルの熱変形は、UL1581に準拠して温度121℃、負荷250gの条件で測定して5〜40パーセントであり、具体的には5〜30パーセント、より具体的には5〜25パーセント、さらにより具体的には5〜20パーセント、さらにより具体的には5〜15パーセント、さらにより具体的には5〜10パーセントである。
【0071】
前記難燃性組成物が金属ジアルキルホスフィン酸塩と窒素含有難燃剤は含むがリン酸トリアリールは含まない一部の実施形態では、前記被覆線試験サンプルの破断引張応力は、UL1581、セクション470に準拠して温度23℃で測定して10〜30MPaであり、具体的には15〜25MPa、より具体的には19〜23MPaであり、破断引張伸び率は、同規格に準拠して同温度で測定して100〜350パーセントであり、具体的には150〜300パーセント、より具体的には200〜240パーセントである。
【0072】
前記難燃性組成物が前記金属ジアルキルホスフィン酸塩は含むが窒素含有難燃剤は含まない一部の実施形態では、前記被覆線試験サンプルの破断引張応力は、UL1581、セクション470に準拠して温度23℃で測定して10〜25MPaであり、具体的には15〜25MPa、より具体的には20〜25MPaであり、破断引張伸び率は、同規格に準拠して同温度で測定して100〜360パーセントであり、具体的には150〜300パーセント、より具体的には200〜250パーセントである。
【0073】
前記被覆線の一部の実施形態では、前記熱可塑性組成物は、25℃のクロロホルム中で測定した固有粘度が0.3〜0.6dL/gであるポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)である、30〜36重量パーセントのポリ(アリーレンエーテル)と、ポリプロピレンと、エチレン−プロピレン共重合体と、ポリスチレンブロックおよびポリ(エチレン−co−ブチレン)ブロックを含むブロック共重合体のポリ(エチレン−co−ブチレン)ブロックと、を含む、38〜46重量パーセントの全ポリオレフィンと、1〜3重量パーセントのアルミニウムトリス(ホスフィン酸ジエチル)と、1〜3重量パーセントのポリリン酸メラミンと、6〜10重量パーセントのビスフェノールAビス(リン酸ジフェニル)と、から構成される、10〜14重量パーセントの難燃性組成物と、を含み、前記ポリ(アリーレンエーテル)と全ポリオレフィンの重量比は、0.6:0.9であり、前記被覆線の破断引張応力は、UL1581、セクション470に準拠して温度23℃で測定して10〜30Mpaであり、破断引張伸び率は、同規格に準拠して同温度で測定して100〜240パーセントであり、UL1581、セクション1080に準拠した燃焼試験グレードに合格する。
【0074】
前記被覆線の一部の実施形態では、前記熱可塑性組成物は、25℃のクロロホルム中で測定した固有粘度が0.3〜0.6dL/gであるポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)である、37〜47重量パーセントのポリ(アリーレンエーテル)と、ポリプロピレンと、ポリブテンと、エチレン−プロピレン共重合体と、ポリスチレンブロックおよびポリ(エチレン−co−プロピレン)ブロックを含むブロック共重合体のポリ(エチレン−co−プロピレン)ブロックと、ポリスチレンブロックおよびポリ(エチレン−co−ブチレン)ブロックを含むブロック共重合体のポリ(エチレン−co−ブチレン)ブロックと、を含む、34〜43重量パーセントの全ポリオレフィンと、2〜6重量パーセントのアルムニウムトリス(ホスフィン酸ジエチル)と、2〜6重量パーセントのポリリン酸メラミンと、から構成される、4〜12重量パーセントの難燃性組成物と、を含み、前記ポリ(アリーレンエーテル)と全ポリオレフィンの重量比は0.8:1.2であり、前記被覆線試験サンプルの破断引張応力は、UL1581、セクション470に準拠して温度23℃で測定して10〜25Mpaであり、破断引張伸び率は、同規格に準拠して同温度で測定して200〜300パーセントである。
【0075】
前記被覆線の一部の実施形態では、前記熱可塑性組成物は、25℃のクロロホルム中で測定した固有粘度が0.3〜0.6dL/gであるポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)である、39〜47重量パーセントのポリ(アリーレンエーテル)と、ポリプロピレンと、ポリブテンと、エチレン−プロピレン共重合体と、ポリスチレンブロックおよびポリ(エチレン−co−プロピレン)ブロックを含むブロック共重合体のポリ(エチレン−co−プロピレン)ブロックと、ポリスチレンブロックおよびポリ(エチレン−co−ブチレン)ブロックを含むブロック共重合体のポリ(エチレン−co−ブチレン)ブロックと、を含む、35〜42重量パーセントの全ポリオレフィンと、アルムニウムトリス(ホスフィン酸ジエチル)から構成される4〜10重量パーセントの難燃性組成物と、を含み、前記ポリ(アリーレンエーテル)と全ポリオレフィンの重量比は0.9:1.2であり、前記被覆線試験サンプルの破断引張応力は、UL1581、セクション470に準拠して温度23℃で測定して10〜25Mpaであり、破断引張伸び率は、同規格に準拠して同温度で測定して150〜300パーセントである。特許請求された被覆線の構成や寸法は、特性値が明記された被覆線試験サンプルでのそれらに限定されるものではないことは理解されるであろう。例えば、該被覆線は、AWG35〜AWG10用のUL1581、セクション20表20.1に特定された寸法の導線を有することができる。別の例として、該導線上に配置された被覆材の厚みは0.2〜1mmである。
【0076】
ある実施形態は、20〜44重量パーセントのポリ(アリーレンエーテル)と、ポリオレフィン類と、ポリ(アルケニル芳香族)ブロックおよびポリオレフィンブロックを含むブロック共重合体類のポリオレフィン含量と、から構成される29〜57重量パーセントの全ポリオレフィンと、1〜10重量パーセントの金属ジアルキルホスフィン酸塩と、リン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミンおよびこれらの混合物から構成される群から選択される1〜17重量パーセントの窒素含有難燃剤と、1気圧下で25〜50℃の少なくとも1つの温度において液体である1〜10重量パーセントのリン酸トリアリールと、を含む10〜25重量パーセントの難燃性組成物と、を含む熱可塑性組成物であって、前記すべての重量パーセントは前記熱可塑性組成物の全重量に対するものであり、前記ポリ(アリーレンエーテル)と全ポリオレフィンの重量比は0.53:1〜1.2:1であり、前記熱可塑性組成物のUL94垂直燃焼試験グレードは、厚みが6.4mm以下のサンプルでV−0またはV−1であり、破断引張応力は、ASTM D638に準拠して温度23℃で測定して少なくとも5MPaであり、曲げ弾性率は、ASTM D790に準拠して温度23℃で測定して10〜1,000MPaであることを特徴とする。
【0077】
ある実施形態は、20〜50重量パーセントのポリ(アリーレンエーテル)と、ポリオレフィン類と、ポリ(アルケニル芳香族)ブロックおよびポリオレフィンブロックを含むブロック共重合体類のポリオレフィン含量と、から構成される25〜57重量パーセントの全ポリオレフィンと、1〜15重量パーセントの金属ジアルキルホスフィン酸塩と、リン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミンおよびこれらの混合物から構成される群から選択される1〜20重量パーセントの窒素含有難燃剤と、を含む6〜25重量パーセントの難燃性組成物と、を含む熱可塑性組成物であって、前記難燃性組成物は、1気圧下で25〜50℃の少なくとも1つの温度において液体であるリン酸トリアリール類は含まず、前記すべての重量パーセントは前記熱可塑性組成物の全重量に対するものであり、前記ポリ(アリーレンエーテル)と全ポリオレフィンの重量比は0.68:1〜1.2:1であり、金属ジアルキルホスフィン酸塩と窒素含有難燃剤の重量比は少なくとも5:1であり、前記熱可塑性組成物のUL94垂直燃焼試験グレードは、厚みが6.4mm以下のサンプルでV−0またはV−1であり、破断引張応力は、ASTM D638に準拠して温度23℃で測定して少なくとも5MPaであり、曲げ弾性率は、ASTM D790に準拠して温度23℃で測定して10〜1,000MPaであることを特徴とする。
【0078】
一部の実施形態では、前記UL94垂直燃焼試験を厚みが3.0〜6.4mmのサンプルで行い、破断引張応力は5〜21MPaであり、具体的には8〜20MPa、より具体的には10〜20MPa、さらにより具体的には12〜20MPaである。一部の実施形態では、前記熱可塑性組成物のUL94垂直燃焼グレードは、厚みが3.0mmのサンプルでV−0またはV−1である。一部の実施形態では、該熱可塑性組成物のUL94垂直燃焼試験グレードは、厚みが3.0mmのサンプルでV−0である。一部の実施形態では、該熱可塑性組成物の平均消炎時間は20秒以下であり、具体的には4〜20秒、より具体的には5〜20秒である。一部の実施形態では、該熱可塑性組成物の破断引張伸び率は、ASTM D638に準拠して温度23℃で測定して少なくとも50パーセントであり、具体的には50〜200パーセント、より具体的には100〜200パーセント、さらにより具体的には150〜200パーセントである。一部の実施形態では、該熱可塑性組成物のショアA硬度は、OS−2H操作スタンド付き硬度計Rex Model DD−3−Aデジタルデュロメータを用い、ASTM D2240に準拠して温度25℃で測定して70〜95であり、具体的には75〜95である。
【0079】
一部の実施形態では、前記熱可塑性組成物は、25℃のクロロホルム中で測定した固有粘度が0.3〜0.6dL/gであるポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)である、30〜36重量パーセントのポリ(アリーレンエーテル)と、ポリプロピレンと、エチレン−プロピレン共重合体と、ポリスチレンブロックおよびポリ(エチレン−co−ブチレン)ブロックを含むブロック共重合体のポリ(エチレン−co−ブチレン)ブロックと、を含む、38〜46重量パーセントの全ポリオレフィンと、1〜3重量パーセントのアルミニウムトリス(ホスフィン酸ジエチル)と、1〜3重量パーセントのポリリン酸メラミンと、6〜10重量パーセントのビスフェノールAビス(リン酸ジフェニル)と、から構成される、10〜14重量パーセントの難燃性組成物と、を含み、前記ポリ(アリーレンエーテル)と全ポリオレフィンの重量比は、0.6:0.9であり、前記熱可塑性組成物のUL94垂直燃焼試験グレードは、厚みが6.4mmのサンプルで測定してV−0またはV−1であり、破断引張応力は、ASTM D638に準拠して温度23℃で測定して12〜21MPaであり、曲げ弾性率は、ASTM D790に準拠して温度23℃で測定して50〜310MPaであることを特徴とする。
【0080】
本発明についてさらに以下の限定しない実施例で説明する。
【0081】
(実施例1〜30、比較実施例1〜3)
これらの実施例は、前記難燃性組成物が金属ジアルキルホスフィン酸塩、窒素含有難燃剤およびリン酸トリアリールを含む組成物の調製および試験について示している。前記溶融混合熱可塑性組成物の製造に用いた成分を表1に示す。
【0082】
【表1−1】

【0083】
【表1−2】

【0084】
具体的な組成を表4に列挙しており、それらの成分量は、重量パーセントであることが明記されている場合を除き重量部で表した。重量パーセントの場合、その数値は該熱可塑性組成物の全重量に対するものである。表4の「wt% PO」は、全ポリオレフィン等価物の重量パーセントを指す。全ポリオレフィン等価物は、エチレンと1−オクテンの共重合体類、ポリプロピレン、ポリブテン、熱可塑性エラストマーとして与えられるエチレン/ブチレンブロック類とエチレン/プロピレンブロック類とプロピレンホモポリマーおよびエチレン−プロピレン共重合体、およびポリ(スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン)トリブロック共重合体類として与えられるエチレン−ブチレンブロック類の合計である。また表4の「PPE:PO」は、ポリ(アリーレンエーテル)と全ポリオレフィン等価物との重量比を指し、「%液体FR」は、難燃剤の全重量に対する液体リン酸トリアリールの重量パーセントを指し、「NFR:MDAP」は、窒素含有難燃剤と金属ジアルキルホスフィン酸塩との重量比を指す。
【0085】
組成物を、12ゾーンを有する内径37mmの2軸スクリュ押出機で混合した。スクリュ回転速度450rpm、ゾーン1の温度225℃、ゾーン2〜12の温度245℃、口金温度255℃の条件で該押出機を操作した。液体リン酸トリアリール難燃剤を除くすべての成分を投入口に供給し、該リン酸トリアリールはゾーン2で射出により添加した。
【0086】
表4の「組成物特性」は以下の方法で求めた。バレル温度250℃、型温度40℃の条件で射出成形を行って試験体を成形した。厚みが3.0mmまたは6.4mmのサンプルを用いたUL94垂直燃焼試験により燃焼性を求めた。ASTM D638に準拠して温度23℃で測定して破断引張応力と引張伸び率を求めた。ASTM D790に準拠して温度23℃で測定して曲げ弾性率を求めた。
【0087】
表4の「ワイヤー特性」は以下の方法で求めた。被覆試験サンプルは、表2の押出被覆パラメータを用いて調製した。
【0088】
【表2】

【0089】
難燃性グレード「UL1581 VW−1グレード」と消炎時間「VW1、FOT(秒)」は、UL1581、セクション1080(VW−1 垂直試料)に準拠して測定した。MPaで表した破断引張応力およびパーセントで表した破断引張伸び率は、UL1581、セクション470に準拠して温度23℃で測定した。
【0090】
リン酸トリアリール難燃剤のワイヤー試験サンプル表面への移動と、該表面からポリ(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)への移動である「ABSへの移動」は、温度60℃、負荷500gの条件下で、ワイヤー試験サンプルをABS板に48時間接触させた後、ABS板からワイヤー試験サンプルを取り外し、該ワイヤーによって出来たマークを目視確認した。目視確認に基づいてグレード0〜5を評価し、マークが全くないものをグレード0、極めてわずかなマークの場合はグレード1、わずかなマークの場合はグレード2、中程度のマークの場合はグレード3とし、この時の組成を表3に参照1として示す。大きなマークの場合にはグレード4、激しいマークの場合はグレード5とし、この時の組成を表3に参照2として示す。
【0091】
表3のすべての成分量は重量部であり、「RDP」はレゾルシノールビス(リン酸ジフェニル)を指し、「MP」はリン酸メラミンを指す。
【0092】
【表3】

【0093】
【表4−1】

【0094】
【表4−2】

【0095】
【表4−3】

【0096】
【表4−4】

【0097】
【表4−5】

【0098】
(実施例31〜50、比較実施例4〜10)
これらの実施例は、前記難燃性組成物が金属ジアルキルホスフィン酸塩と窒素含有難燃剤は含むがリン酸トリアリール難燃剤は含まない組成物の調製と試験について示している。調製と試験手順は上記のものと同じである。
【0099】
具体的な成分は表5に列挙しており、それらの成分量は、重量パーセントであることが明記されている場合を除き重量部で表した。重量パーセントの場合、その数値は該熱可塑性組成物の全重量に対するものである。
【0100】
【表5−1】

【0101】
【表5−2】

【0102】
【表5−3】

【0103】
【表5−4】

【0104】
(実施例51〜58、比較実施例11および12)
これらの実施例は、前記難燃性組成物が金属ジアルキルホスフィン酸塩は含むが窒素含有難燃剤は含まない組成物の調製と試験について示している。調製と試験手順は上記と同じである。
【0105】
具体的な成分を表6に列挙しており、それらの成分量は、重量パーセントであることが明記されている場合を除き重量部で表した。重量パーセントの場合、その数値は該熱可塑性組成物の全重量に対するものである。
【0106】
【表6】

【0107】
本明細書では実施例を用いて最良の実施形態を含めて本発明を開示しており、当業者によって本発明をなし使用することを可能にしている。本発明の特許範囲は請求項によって定義され、当業者がもたらすその他の実施例も包含し得る。こうしたその他の実施例は、請求項の文字どおりの解釈と違わない構成要素を有する場合、あるいは請求項の文字どおりの解釈とごくわずかな違いしかない等価な構成要素を含んでいる場合には、請求項の範囲内であると意図される。
【0108】
引用された特許、特許出願および他の参考文献はすべて、参照により本明細書に援用される。しかしながら、本出願中の用語が援用された参考文献の用語と矛盾するか対立する場合、本出願の用語が援用された参考文献の矛盾する用語に優先する。
【0109】
本明細書で開示された範囲はすべて、終点を含むものであり、該終点は互いに独立に組み合わせできる。
【0110】
本発明の記述文脈(特に以下の請求項の文脈)における単数表現は、本明細書で別途明示がある場合または文脈上明らかに矛盾する場合を除き、単数および複数を含むものと解釈される。また、本明細書で用いられる、「第1の」「第2の」などの用語は、いかなる順序や量あるいは重要度を表すものではなく、ある成分と他の成分とを区別するために用いるものである。量に関連して用いられる修飾語「約」は、述べられた数値を含んでおり、文脈で指図された意味(例えば、特定の量の測定に付随する誤差の程度を含むなど)を有している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
20〜50重量パーセントのポリ(アリーレンエーテル)と、
ポリオレフィン類と、ポリ(アルケニル芳香族)ブロックおよびポリオレフィンブロックを含むブロック共重合体類のポリオレフィン含量と、から構成される25〜57重量パーセントの全ポリオレフィンと、
金属ジアルキルホスフィン酸塩を含む3〜30重量パーセントの難燃性組成物と、を含む熱可塑性組成物であって、
すべての重量パーセントは前記熱可塑性組成物の全重量に対するものであり、
前記ポリ(アリーレンエーテル)と全ポリオレフィンの重量比は0.53:1〜1.2:1であり、
公称断面積が0.205mmのAWG24導線と、前記熱可塑性組成物を含み公称外径が2mmのチューブ状被覆材と、から構成される被覆線試験サンプルの、
破断引張応力は、UL1581、セクション470に準拠して温度23℃で測定して少なくとも10Mpaであり、
破断引張伸び率は、同規格に準拠して同温度で測定して少なくとも100パーセントであり、
UL1581、セクション1080に準拠した燃焼試験グレードに合格する
ことを特徴とする熱可塑性組成物。
【請求項2】
前記熱可塑性組成物は20〜44重量パーセントのポリ(アリーレンエーテル)を含み、
前記熱可塑性組成物は29〜57重量パーセントの全ポリオレフィンを含み、
前記熱可塑性組成物は10〜25重量パーセントの前記難燃性組成物を含み、
前記難燃性組成物は1〜10重量パーセントの金属ジアルキルホスフィン酸塩を含み、
前記難燃性組成物はさらに、リン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミンおよびこれらの混合物から構成される群から選択される1〜17重量パーセントの窒素含有難燃剤と、
1気圧下で25〜50℃の少なくとも1つの温度において液体である1〜10重量パーセントのリン酸トリアリールと、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項3】
前記被覆線試験サンプルの、
破断引張応力は、UL1581、セクション470に準拠して温度23℃で測定して10〜30MPaであり、
破断引張伸び率は、同規格に準拠して同温度で測定して100〜240パーセントであることを特徴とする請求項2に記載の熱可塑性組成物。
【請求項4】
さらに、前記被覆線試験サンプルのリン酸トリアリール移動グレードは0、1または2であることを特徴とする請求項2または3に記載の熱可塑性組成物。
【請求項5】
さらに、前記被覆線試験サンプルの熱変形は、UL1581に準拠して温度121℃、負荷250gの条件で測定して5〜40パーセントであることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の熱可塑性組成物。
【請求項6】
前記液体リン酸トリアリールは、前記難燃性組成物の全重量の10〜70パーセントに相当することを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載の熱可塑性組成物。
【請求項7】
前記窒素含有難燃剤と金属ジアルキルホスフィン酸塩の重量比は0.5:8であることを特徴とする請求項2乃至6のいずれか1項に記載の熱可塑性組成物。
【請求項8】
前記難燃性組成物は、前記金属ジアルキルホスフィン酸塩、前記窒素含有難燃剤および液体リン酸トリアリールとから構成されることを特徴とする請求項2乃至7のいずれか1項に記載の熱可塑性組成物。
【請求項9】
前記難燃性組成物はさらに、0.05〜2.5重量パーセントのホウ酸亜鉛を含むことを特徴とする請求項2乃至7のいずれか1項に記載の熱可塑性組成物。
【請求項10】
ポリ(アルケニル芳香族)類と、ポリ(アルケニル芳香族)ブロックおよびポリオレフィンブロックを含むブロック共重合体類のポリ(アルケニル芳香族)含量と、から構成される、8〜20重量パーセントの全ポリ(アルケニル芳香族)をさらに含むことを特徴とする請求項2乃至9のいずれか1項に記載の熱可塑性組成物。
【請求項11】
前記熱可塑性組成物は30〜36重量パーセントのポリ(アリーレンエーテル)を含み、
前記ポリ(アリーレンエーテル)は、温度25℃のクロロホルム中で測定した固有粘度が0.3〜0.6dL/gのポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)であり、
前記熱可塑性組成物は38〜46重量パーセントの全ポリオレフィンを含み、
前記全ポリオレフィンは、ポリプロピレンと、エチレン−プロピレン共重合体と、ポリスチレンブロックおよびポリ(エチレン−co−プロピレン)ブロックを含むブロック共重合体のポリ(エチレン−co−プロピレン)ブロックと、ポリスチレンブロックおよびポリ(エチレン−co−ブチレン)ブロックを含むブロック共重合体のポリ(エチレン−co−ブチレン)ブロックと、を含み、
前記熱可塑性組成物は、
1〜3重量パーセントのアルミニウムトリス(ホスフィン酸ジエチル)と、
1〜3重量パーセントのポリリン酸メラミンと、
6〜10重量パーセントのビスフェノールAビス(リン酸ジフェニル)と、から構成される、10〜14重量パーセントの難燃性組成物を含み、
前記ポリ(アリーレンエーテル)と全ポリオレフィンの重量比は0.6:0.9であり、
前記被覆線試験サンプルの、
破断引張応力は、UL1581、セクション470に準拠して温度23℃で測定して10〜30MPaであり、
破断引張伸び率は、同規格に準拠して同温度で測定して100〜240パーセントであることを特徴とする請求項2に記載の熱可塑性組成物。
【請求項12】
前記熱可塑性組成物の、
UL94垂直燃焼試験グレードは、厚みが6.4mm以下のサンプルでV−0またはV−1であり、
破断引張応力は、ASTM D638に準拠して温度23℃で測定して少なくとも5MPaであり、
曲げ弾性率は、ASTM D790に準拠して温度23℃で測定して10〜1,000MPaであることを特徴とする請求項2に記載の熱可塑性組成物。
【請求項13】
前記UL94垂直燃焼試験を厚みが3.0〜6.4mmのサンプルで行い、
前記破断引張応力は5〜21MPaであることを特徴とする請求項12に記載の熱可塑性組成物。
【請求項14】
前記熱可塑性組成物は30〜36重量パーセントのポリ(アリーレンエーテル)を含み、
前記ポリ(アリーレンエーテル)は、温度25℃のクロロホルム中で測定した固有粘度が0.3〜0.6dL/gのポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)であり、
前記熱可塑性組成物は38〜46重量パーセントの全ポリオレフィンを含み、
前記全ポリオレフィンは、ポリプロピレンと、エチレン−プロピレン共重合体と、ポリスチレンブロックおよびポリ(エチレン−co−ブチレン)ブロックを含むブロック共重合体のポリ(エチレン−co−ブチレン)ブロックと、を含み、
前記熱可塑性組成物は、
1〜3重量パーセントのアルミニウムトリス(ホスフィン酸ジエチル)と、
1〜3重量パーセントのポリリン酸メラミンと、
6〜10重量パーセントのビスフェノールAビス(リン酸ジフェニル)と、
から構成される、10〜14重量パーセントの難燃性組成物を含み、
前記ポリ(アリーレンエーテル)と全ポリオレフィンの重量比は0.6:0.9であり、
前記熱可塑性組成物の、
UL94垂直燃焼試験グレードは、厚みが6.4mmのサンプルでV−0またはV−1であり、
破断引張応力は、ASTM D638に準拠して温度23℃で測定して12〜21MPaであり、
曲げ弾性率は、ASTM D790に準拠して温度23℃で測定して50〜310MPaであることを特徴とする請求項2に記載の熱可塑性組成物。
【請求項15】
前記熱可塑性組成物は3〜25重量パーセントの難燃性組成物を含み、
前記難燃性組成物は1〜15重量パーセントの金属ジアルキルホスフィン酸塩を含み、
前記難燃性組成物は、リン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミンおよびこれらの混合物から構成される群から選択される、1〜20重量パーセントの窒素含有難燃剤をさらに含み、
前記難燃性組成物は、1気圧下で25〜50℃の少なくとも1つの温度において液体であるリン酸トリアリールを含まず、
前記ポリ(アリーレンエーテル)と全ポリオレフィンの重量比は0.56:1〜1.2:1であり、
前記窒素含有難燃剤と金属ジアルキルホスフィン酸塩との重量比は0.2:1〜5:1であることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項16】
前記被覆線試験サンプルの、
破断引張応力は、UL1581、セクション470に準拠して温度23℃で測定して10〜30MPaであり、
破断引張伸び率は、同規格に準拠して同温度で測定して100〜350パーセントであることを特徴とする請求項15に記載の熱可塑性組成物。
【請求項17】
さらに、前記被覆線試験サンプルの熱変形は、UL1580に準拠して温度121℃、負荷250gの条件で測定して5〜50パーセントであることを特徴とする請求項15または請求項16に記載の熱可塑性組成物。
【請求項18】
前記難燃性組成物は、前記金属ジアルキルホスフィン酸塩と前記窒素含有難燃剤とから構成されることを特徴とする請求項15乃至17のいずれか1項に記載の熱可塑性組成物。
【請求項19】
前記難燃性組成物は、0.05〜2.5重量パーセントのホウ酸亜鉛をさらに含むことを特徴とする請求項15乃至17のいずれか1項に記載の熱可塑性組成物。
【請求項20】
ポリ(アルケニル芳香族)類と、ポリ(アルケニル芳香族)ブロックおよびポリオレフィンブロックを含むブロック共重合体類のポリ(アルケニル芳香族)含量と、から構成される、3〜20重量パーセントの全ポリ(アルケニル芳香族)をさらに含むことを特徴とする請求項15乃至19のいずれか1項に記載の熱可塑性組成物。
【請求項21】
前記熱可塑性組成物は37〜47重量パーセントのポリ(アリーレンエーテル)を含み、
前記ポリ(アリーレンエーテル)は、温度25℃のクロロホルム中で測定した固有粘度が0.3〜0.6dL/gのポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)であり、
前記熱可塑性組成物は34〜43重量パーセントの全ポリオレフィンを含み、
前記全ポリオレフィンは、ポリプロピレンと、ポリブテンと、エチレン−プロピレン共重合体と、ポリスチレンブロックおよびポリ(エチレン−co−プロピレン)ブロックを含むブロック共重合体のポリ(エチレン−co−プロピレン)ブロックと、ポリスチレンブロックおよびポリ(エチレン−co−ブチレン)ブロックを含むブロック共重合体のポリ(エチレン−co−ブチレン)ブロックと、を含み、
前記熱可塑性組成物は、
2〜6重量パーセントのアルミニウムトリス(ホスフィン酸ジエチル)と、
2〜6重量パーセントのポリリン酸メラミンと、から構成される、4〜12重量パーセントの難燃性組成物を含み、
前記ポリ(アリーレンエーテル)と全ポリオレフィンの重量比は0.8:1.2であり、
前記被覆線試験サンプルの、
破断引張応力は、UL1581、セクション470に準拠して温度23℃で測定して10〜25MPaであり、
破断引張伸び率は、同規格に準拠して同温度で測定して200〜300パーセントであることを特徴とする請求項15に記載の熱可塑性組成物。
【請求項22】
前記熱可塑性組成物は6〜25重量パーセントの前記難燃性組成物を含み、
前記ポリ(アリーレンエーテル)と全ポリオレフィンの重量比は0.68:1〜1.2:1であり、
前記金属ジアルキルホスフィン酸塩と前記窒素含有難燃剤の重量比は少なくとも5:1であり、
前記熱可塑性組成物の、
UL94垂直燃焼試験グレードは、厚みが6.4mm以下のサンプルでV−0またはV−1であり、
破断引張応力は、ASTM D638に準拠して温度23℃で測定して少なくとも5MPaであり、
曲げ弾性率は、ASTM D790に準拠して温度23℃で測定して10〜1,000MPaであることを特徴とする請求項15に記載の熱可塑性組成物。
【請求項23】
前記難燃性組成物は、リン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミンを含まず、
前記ポリ(アリーレンエーテル)と全ポリオレフィンの重量比は0.55:1〜1.2:1であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項24】
前記被覆線試験サンプルの、
破断引張応力は、UL1581、セクション470に準拠して温度23℃で測定して10〜25MPaであり、
破断引張伸び率は、同規格に準拠して同温度で測定して100〜360パーセントであることを特徴とする請求項23に記載の熱可塑性組成物。
【請求項25】
さらに、前記被覆線試験サンプルの熱変形は、UL1580に準拠して温度121℃、負荷250gの条件で測定して5〜20パーセントであることを特徴とする請求項23または24に記載の熱可塑性組成物。
【請求項26】
前記難燃性組成物は、金属ジアルキルホスフィン酸塩から構成されることを特徴とする請求項23乃至25のいずれか1項に記載の熱可塑性組成物。
【請求項27】
ポリ(アルケニル芳香族)類と、ポリ(アルケニル芳香族)ブロックおよびポリオレフィンブロックを含むブロック共重合体類のポリ(アルケニル芳香族)含量と、から構成される、3〜20重量パーセントの全ポリ(アルケニル芳香族)をさらに含むことを特徴とする請求項23乃至26のいずれか1項に記載の熱可塑性組成物。
【請求項28】
前記熱可塑性組成物は、39〜47重量パーセントのポリ(アリーレンエーテル)を含み、
前記ポリ(アリーレンエーテル)は、温度25℃のクロロホルム中で測定した固有粘度が0.3〜0.6dL/gのポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)であり、
前記熱可塑性組成物は、35〜42重量パーセントの全ポリオレフィンを含み、
前記全ポリオレフィンは、ポリプロピレンと、エチレン−プロピレン共重合体と、ポリスチレンブロックおよびポリ(エチレン−co−プロピレン)ブロックを含むブロック共重合体のポリ(エチレン−co−プロピレン)ブロックと、ポリスチレンブロックおよびポリ(エチレン−co−ブチレン)ブロックを含むブロック共重合体のポリ(エチレン−co−ブチレン)ブロックと、を含み、
前記熱可塑性組成物は、アルミニウムトリス(ホスフィン酸ジエチル)から構成される、4〜10重量パーセントの難燃性組成物を含み、
前記ポリ(アリーレンエーテル)と全ポリオレフィンの重量比は0.9:1.2であり。
前記被覆線試験サンプルの、
破断引張応力は、UL1581、セクション470に準拠して温度23℃で測定して10〜25MPaであり、
破断引張伸び率は、同規格に準拠して同温度で測定して150〜300パーセントであることを特徴とする請求項23に記載の熱可塑性組成物。
【請求項29】
請求項1乃至28のいずれか1項に記載の熱可塑性組成物を押出成形した生成物を含む押出成形物品。
【請求項30】
導線と、
前記導線上に配置された被覆材と、
を備え、
請求項1乃至28のいずれか1項に記載の熱可塑性組成物を含むことを特徴とする被覆線。

【公表番号】特表2010−540716(P2010−540716A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−527000(P2010−527000)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【国際出願番号】PCT/US2008/075335
【国際公開番号】WO2009/042369
【国際公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(508171804)サビック・イノベーティブ・プラスチックス・アイピー・ベスローテン・フェンノートシャップ (86)
【Fターム(参考)】