説明

難燃性合成繊維、それを用いた炎遮蔽性生地及び難燃性布張り製品

【課題】 高度な難燃性が必要とされる寝具や家具等に好適に使用が可能である高度な難燃性を有する難燃性合成繊維、それを用いた特に高度な炎遮蔽性を有する炎遮蔽性生地及び当該生地を用いた難燃性布張り製品を提供する。
【解決手段】 塩素原子含有重合体(A)100重量部、硬化した状態で分子中に、芳香族環、又は、窒素原子を少なくとも含むヘテロ環、を少なくとも有する熱硬化性樹脂(B)が重合体(A)100重量部に対し0.5〜50重量部、無機化合物(C)が重合体(A)100重量部に対し0〜50重量部からなる塩素原子含有繊維であって、前記熱硬化性樹脂(B)は、前記塩素原子含有繊維中で硬化率50%以上に硬化した状態である塩素原子含有繊維(I)20〜80重量%と、ポリエステル系繊維(II)20〜80重量%で構成される炎遮蔽性生地及びそれを用いた難燃性布張り製品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼時に極めて高い形態保持性を発現することで、寝具や家具等に用いられる高度な難燃性を必要とする製品に好適に使用できる高度な難燃性を有する難燃性合成繊維、それを用いた炎遮蔽性生地及び更にはその生地を用いた難燃性布張り製品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、衣食住の安全性確保の要求が強まり、防炎の観点より難燃素材の必要性が高まってきている。そのような中で、特に人的被害が大きい就寝中の火災を防止するため、寝具や家具等に使用される素材への難燃性付与の必要性が高まってきている。
【0003】
これら寝具や家具等の布張り製品においては、使用時の快適さや触感、色調を良好に保つために綿やポリエステル、ウレタンフォームなどの易燃性素材がその内部や表面に用いられる事が多い。それらの難燃性の確保には、適切な難燃素材をこれら製品中に使用することで、その易燃性素材への着炎を長時間にわたり防止する高度な難燃性を具備させることが重要である。また、その難燃素材は、これら寝具や家具等の製品の快適性や触感、良好な色調を損なわないものでなければならない。
【0004】
この難燃素材として、繊維を使用する難燃繊維素材としては、過去様々な難燃性繊維や防炎薬剤の使用が検討されてきたが、この高度な難燃性と寝具や家具等の製品に求められる快適性や触感、良好な色調といった要件を充分に兼ね合わせたものは未だ現れていない。
【0005】
例えば綿布には、防炎薬剤を塗布する、いわゆる後加工防炎という手法があるが、防炎薬剤の付着の均一化、付着による布の硬化、洗濯による脱離、人体に対する安全性などの問題があった。
【0006】
また、安価な素材であるポリエステル系繊維は、燃焼時に溶融するため、布帛にした際、穴が空き、布帛形態を維持することが出来ず、前述の寝具や家具等に用いられる詰め綿やウレタンフォームへ着炎してしまい、性能としては全く不充分であった。リン原子等を含有させた難燃ポリエステル繊維もあるが、燃焼時の挙動は前述と同様に最終的には溶融してしまい、性能としては全く不充分であった。
【0007】
また、三酸化アンチモンや五酸化アンチモン、酸化錫、酸化マグネシウムなどを紡糸原液に添加して高難燃モダクリル繊維を得る方法があるが、難燃性を付与することは出来るが、炎や熱に対しての遮蔽性は満足するに至らない問題があった。
【0008】
これらの家具、寝具に使用される難燃繊維素材の欠点を改良し、一般的な特性として要求される優れた風合、吸湿性、触感を有し、かつ、安定した難燃性を有する繊維素材として、難燃剤を大量に添加した高度に難燃化した含ハロゲン繊維と非難燃繊維とを組み合わせた難燃繊維複合体(特許文献1)、耐熱性繊維を少量混ぜることで作業服用途に使用可能な高度難燃繊維複合体(特許文献2)、更に本質的に難燃性である繊維と含ハロゲン繊維等から構成される嵩高さを有する難燃性不織布(特許文献3)、また更には難燃剤を大量に添加した高度に難燃化した含ハロゲン繊維とポリエステル系繊維、セルロース系繊維の特定の組合せからなる難燃性織物(特許文献4)やカバー用難燃布帛(特許文献5)等が提案されている。
【0009】
しかしこれらの方法では、燃焼時に布帛や織物といった燃焼前の形態が保持出来ず所望の難燃性、特に炎遮蔽性を確保出来ないこと、複数かつ限定された種類の繊維で、更に限定された繊維混率でなければ高度な難燃性が得られず製品の触感や色調の点や製造工程上支障があること、一般的に耐熱性繊維や本質的に難燃性である繊維は所望の難燃性を得やすいが、繊維自体が硬く脆い場合が多く生地製造加工時の取扱が極めて難しい上にコストが高いこと、更には耐熱性繊維は一般に着色しているため布帛の白度が不十分であり、また染色による発色にも問題があり十分な触感、色調を確保出来ないこと、等々実用上種々問題のある難燃繊維素材しか得られなかった。
【0010】
さらに熱硬化性樹脂と水溶性高分子化合物の混合物からなる耐熱、難燃性に優れた熱硬化性樹脂繊維を得る製造方法も提案されている(特許文献6)。しかしこの方法では、熱硬化性樹脂と混合する化合物が水溶性高分子化合物に限定され、かつ高度な難燃性を所望する場合にはその水溶性高分子化合物は繊維中から除去する必要がある等、工業的にも課題の残る方法であった。
【0011】
また更にグリシジルメタクリレート重合体を添加した高難燃性アクリル系繊維及び高難燃性複合体も提案されている(特許文献7)。この方法では、燃焼中に架橋構造を繊維中に形成させることで高度な難燃性を確保出来るとの記述があるが、添加するグリシジルメタクリレート共重合体は易燃性化合物であることや燃焼中に架橋を形成せしめるという不安定な難燃機構のため、その難燃性、炎遮蔽性にはおのずと限界があること、また酸化アンチモンが必須の構成要件となっており昨今の環境問題には十分対応可能であるとは言えない方法であった。
【特許文献1】特開昭61−89339号公報
【特許文献2】特開平8−218259号公報
【特許文献3】WO03/023108号パンフレット
【特許文献4】特開平9−324330号公報
【特許文献5】特開2003−201642号公報
【特許文献6】特開2004−43996号公報
【特許文献7】特開2005−179876号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、従来の難燃繊維素材では解決が困難であった課題、すなわち難燃性を確保しつつ加工性や風合い、触感、色調が良好でこれらの特性が良好なことが求められる家具、寝具等に用いられる難燃性合成繊維、それを用いた炎遮蔽性生地、更にはその生地を用いた家具、寝具等の難燃性布張り製品を安価に提供することを可能とするものである。
【0013】
本発明は、繊維素材として優れたコストや触感、色調の面から汎用的には使用されるが、易燃性繊維であるため難燃性を要求される分野ではその使用が制限されたものとなっていたポリエステル繊維をこれまで難燃性にとっては不利と考えられていた高率で含有する布帛とした場合でも高度な難燃性、特に高度な炎遮蔽性を付与させることができ、コストと触感、色調、加工性を十分満足する難燃性合成繊維、当該難燃性合成繊維を用いたポリエステル繊維を含む炎遮蔽性生地、及びこの生地を用いた家具、寝具等の難燃性布張り製品を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、前記問題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、特定の熱硬化性樹脂を添加した塩素原子含有重合体からなる塩素原子含有繊維であって、前記熱硬化性樹脂が、前記塩素原子含有繊維中で硬化率50%以上に硬化した状態である塩素原子含有繊維、また該繊維とポリエステル系繊維とを含む繊維からなる生地が、優れた炎遮蔽性を有する難燃性を得ることは勿論、これまでの難燃繊維素材の実用上の問題点であるコストや触感、色調、加工性等を満足することを見出し本発明に到達した。
【0015】
すなわち、本発明は次のものである。
【0016】
(1) 塩素原子含有重合体(A)100重量部、
硬化した状態で分子中に、芳香族環、又は、窒素原子を少なくとも含むヘテロ環、を少なくとも有する熱硬化性樹脂(B)が重合体(A)100重量部に対し0.5〜50重量部、
無機化合物(C)が重合体(A)100重量部に対し0〜50重量部からなる塩素原子含有繊維であって、
前記熱硬化性樹脂(B)は、前記塩素原子含有繊維中で硬化率50%以上に硬化した状態である塩素原子含有繊維。
【0017】
(2) 熱硬化性樹脂(B)が、フェノール樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリイミド樹脂からなる群より選択される少なくとも一種以上である前記(1)項記載の塩素原子含有繊維。
【0018】
(3) 塩素原子含有重合体(A)が、アクリロニトリル30〜85重量%、塩化ビニルもしくは/及び塩化ビニリデン10〜70重量%、その他の共重合可能な単量体0〜15重量%から構成される前記(1)又は(2)項に記載の塩素原子含有繊維。
【0019】
(4) 塩素原子含有重合体(A)が、前記熱硬化性樹脂(B)を硬化させる効果を有する成分を共重合している重合体である前記(1)〜(3)項のいずれか1項に記載の塩素原子含有繊維。
【0020】
(5) 無機化合物(C)が、アンチモン化合物、亜鉛化合物、錫化合物、アルミニウム化合物、珪素化合物、硼素化合物からなる群より選択される一種以上の化合物である前記(1)〜(4)項のいずれか1項に記載の塩素原子含有繊維。
【0021】
(6) 塩素原子含有重合体(A)100重量部、
硬化した状態で分子中に、芳香族環、又は、窒素原子を少なくとも含むヘテロ環、を少なくとも有する熱硬化性樹脂(B)が重合体(A)100重量部に対し0.5〜50重量部、
無機化合物(C)が重合体(A)100重量部に対し0〜50重量部からなる塩素原子含有繊維であって、
前記熱硬化性樹脂(B)は、前記塩素原子含有繊維中で硬化率50%以上に硬化した状態である塩素原子含有繊維(I)20〜80重量%と、ポリエステル系繊維(II)20〜80重量%で構成される炎遮蔽性生地。
【0022】
(7) 前記熱硬化性樹脂(B)が、フェノール樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリイミド樹脂からなる群より選択される少なくとも一種以上である前記(6)項記載の炎遮蔽性生地。
【0023】
(8) 塩素原子含有重合体(A)が、アクリロニトリル30〜85重量%、塩化ビニルもしくは/及び塩化ビニリデン10〜70重量%、その他の共重合可能な単量体0〜15重量%から構成される前記(6)又は(7)項に記載の炎遮蔽性生地。
【0024】
(9) 塩素原子含有重合体(A)が、前記熱硬化性樹脂(B)を硬化させる効果を有する成分を共重合している重合体である前記(6)〜(8)項のいずれか1項に記載の炎遮蔽性生地。
【0025】
(10) 無機化合物(C)が、アンチモン化合物、亜鉛化合物、錫化合物、アルミニウム化合物、珪素化合物、硼素化合物からなる群より選択される一種以上の化合物である前記(6)〜(9)項のいずれか1項に記載の炎遮蔽性生地。
【0026】
(11) 炎遮蔽性生地が、前記塩素原子含有繊維(I)及び前記ポリエステル系繊維(II)以外の熱可塑性合成繊維、再生繊維、及び天然繊維から選ばれた少なくとも一種の繊維(III)を50重量%以下含む前記(6)〜(10)項のいずれか1項に記載の炎遮蔽性生地。
【0027】
(12) 炎遮蔽性生地が、織物、編物、不織布のいずれかの形態である前記(6)〜(11)項のいずれか1項に記載の炎遮蔽性生地。
【0028】
(13) 前記(12)項記載の炎遮蔽性生地を用いた寝具又は家具から選ばれた難燃性布張り製品。
【発明の効果】
【0029】
本発明の難燃性合成繊維は、優れた炎遮蔽性を有する生地を製造するのに好適な繊維であり、それを用いた炎遮蔽性生地、更にはその生地を用いた難燃性布張り製品は、長時間の炎にも耐え得る高度な難燃性、特には炎遮蔽性を有する。
【0030】
しかも、安価なポリエステル系繊維を20〜80重量%と高率で含有する布帛にした場合でも高度な難燃性、特に高度な炎遮蔽性を具備させることができる難燃性合成繊維を提供できる。また、当該難燃性合成繊維をポリエステル系繊維と併用した炎遮蔽性生地、更にはその生地を用いた難燃性布張り製品は、風合い、触感、視感(色調)などが良好で、加工性に優れ、長時間の炎にも耐え得る高度な難燃性、特には炎遮蔽性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明の塩素原子含有重合体(A)は、燃焼時に不燃性ガスである塩素、塩化水素を発生することや、また添加した無機化合物(C)との反応により生成した不燃性ガス、例えば無機化合物(C)としてアンチモン化合物を選択した場合には不燃性である塩化アンチモンやオキシ塩化アンチモンにより、炎遮蔽性生地に消火性能を付与する。更にはそれら塩素、塩酸発生過程で重合体中の炭素が選択的に残存し炭化物を形成することで炎遮蔽性を向上させる。
【0032】
塩素原子含有重合体(A)としては、たとえば塩素原子含有単量体の重合体、塩素原子含有単量体と塩素原子を含有しない単量体との共重合体、塩素原子含有重合体と塩素原子を含有しない重合体とを混合したもの、または塩素原子を含有しない単量体もしくは重合体を重合中もしくは重合後に塩素原子を導入した重合体などがあげられるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
このような塩素原子含有重合体(A)としては、たとえば塩化ビニル、塩化ビニリデンなどの塩素原子含有ビニル系またはビニリデン系単量体の単独重合体または2種以上の重合体;アクリロニトリル−塩化ビニル、アクリロニトリル−塩化ビニリデン、アクリロニトリル−塩化ビニル−塩化ビニリデン、アクリロニトリル−塩化ビニル−臭化ビニル、アクリロニトリル−塩化ビニリデン−臭化ビニル、アクリロニトリル−塩化ビニリデン−フッ化ビニリデンなどの塩素原子含有ビニル系またはビニリデン系単量体とアクリロニトリルとの共重合体;塩化ビニル、塩化ビニリデンなどの塩素原子含有ビニル系またはビニリデン系単量体の1種以上とアクリロニトリルおよびこれらと共重合可能なビニル系単量体との重合体;アクリロニトリル単独重合体に塩素原子含有化合物を添加・重合させた重合体;塩素原子含有ポリエステル;ビニルアルコールと塩化ビニルの共重合体;ポリエチレンやポリ塩化ビニルなどを塩素付加処理した重合体などがあげられるが、これらに限定されるものではない。また、前記単独重合体や重合体を適宜混合して使用してもよい。
【0034】
好ましくはアクリロニトリル30〜85重量%、塩化ビニルもしくは/及び塩化ビニリデン10〜70重量%、スルホン酸基含有単量体0〜5重量%、その他の共重合可能なアクリル酸またはそのエステル、メタクリル酸またはそのエステル、酢酸ビニル、アクリルアミド、メタクリルアミド、無水マレイン酸からなる群より選択される少なくとも一種以上の単量体0〜15重量%から構成される共重合体などが挙げられる。
【0035】
このような塩素原子含有重合体の具体例としては、たとえばアクリロニトリル−塩化ビニル、アクリロニトリル−塩化ビニリデン、アクリロニトリル−塩化ビニル−塩化ビニリデン等の塩素原子含有ビニル系またはビニリデン系単量体とアクリロニトリルとの共重合体;アクリロニトリル単独重合体に塩素含有化合物を添加・重合させた重合体等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、前記重合体を適宜混合して使用してもよい。
【0036】
前記塩素原子含有重合体(A)は、アクリロニトリル30〜85重量%、塩化ビニルもしくは/及び塩化ビニリデン10〜70重量%、その他の共重合可能な単量体0〜15重量%から構成されるのが好ましい。前記塩素原子含有重合体(A)におけるアクリロニトリルは30〜85重量%、好ましくは35〜65重量%、更に好ましくは45〜60重量%である。アクリロニトリルの含有量を30重量%以上とすることにより、得られる繊維の風合いが低下するのを防止でき好ましい。また、85重量%以下とすることにより所望の難燃性を保持でき好ましい。前記好ましい塩素原子含有重合体(A)における塩化ビニルもしくは/及び塩化ビニリデン成分は、燃焼時に発生する塩素もしくは塩化水素ガス自体、あるいは添加した無機化合物(C)と反応により生成した窒息性ガスにより消火効果を発現させることで、難燃性、炎遮蔽性を付与する。塩化ビニルもしくは/及び塩化ビニリデンの含有量は10〜70重量%、好ましくは20〜65重量%、更に好ましくは30〜60重量%である。塩化ビニルもしくは/及び塩化ビニリデンを10重量%以上とすることにより、所望の難燃性が得られるので好ましい。また、70重量%以下とすることにより繊維の耐熱性が低下することがなく好ましい。
【0037】
前記その他の共重合可能な単量体としては、たとえばアクリル酸;メチルアクリル酸、エチルアクリル酸、ブチルアクリル酸等のアクリル酸エステル;メタクリル酸;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のメタクリル酸エステル;ギ酸ビニル、酢酸ビニル、酪酸ビニル等のカルボン酸ビニル;アクリルアミド、メタクリルアミド等のビニルアミド;無水マレイン酸等が挙げられる。これらの単量体の塩素原子含有重合体(A)中の含有量は0〜15重量%、好ましくは0〜10重量%、更に好ましくは0〜5重量%である。前記その他の共重合可能な単量体の含有量を15重量%以下とすることにより、得られる繊維の耐熱性や難燃性が低下することがなく好ましい。
【0038】
また前記その他の共重合可能な単量体としては、スルホン酸基含有ビニル系単量体でもよく、その例としては、ビニルスルホン酸またはその塩、メタリルスルホン酸またはその塩、スチレンスルホン酸またはその塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸またはその塩、イソプレンスルホン酸またはその塩等が挙げられ、それらの1種または2種以上が用いられる。これらスルホン酸基含有ビニル系単量体は、塩素原子含有重合体からなる繊維において、色調で重要な因子である染色性や、繊維製造時の曳糸性を確保するために用いられる。これらスルホン酸基含有ビニル単量体の塩素原子含有重合体(A)中の含有量は0〜5重量%、好ましくは0.2〜4重量%、更に好ましくは0.5〜3重量%である。これらスルホン酸基含有ビニル系単量体の含有量が5重量%を超えると染色性の効果が飽和する他、繊維製造時の曳糸性が確保しにくくなる傾向が出てくるので製造コストアップ等の要因になるため5重量%以下とすることが好ましい。
【0039】
本発明に用いる前記熱硬化性樹脂(B)がフェノール樹脂の場合、塩素原子含有重合体(A)中に樹脂を硬化させる酸触媒として機能するアクリル酸やメタクリル酸、塩基性触媒として機能するアクリルアミドを共重合させることも可能である。
【0040】
前記塩素原子含有重合体(A)の具体例としては、例えばアクリロニトリル49重量%、塩化ビニル50重量%、スチレンスルホン酸ナトリウム1重量%よりなる重合体;アクリロニトリル40重量%、塩化ビニリデン59重量%、スチレンスルホン酸ナトリウム1重量%よりなる重合体;アクリロニトリル51重量%、塩化ビニリデン48重量%、スチレンスルホン酸ナトリウム1重量%よりなる重合体;アクリロニトリル56重量%、塩化ビニリデン41重量%、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム3重量%からなる重合体;アクリロニトリル49重量%、塩化ビニリデン47重量%、アクリル酸3重量%、スチレンスルホン酸ナトリウム1重量%からなる重合体;アクリロニトリル50重量%、塩化ビニリデン40重量%、メタクリル酸メチル10重量%からなる重合体;アクリロニトリル45重量%、塩化ビニル30重量%、塩化ビニリデン24重量%、スチレンスルホン酸ナトリウム1重量%からなる重合体等が挙げられる。これらの重合体は、塊状重合、懸濁重合、溶液重合、乳化重合等既知の重合方法で得る事が出来る。
【0041】
本発明に用いる硬化した状態で分子中に、芳香族環、又は、窒素原子を少なくとも含むヘテロ環、を少なくとも有する熱硬化性樹脂(B)は、添加した一部量または全量が繊維中にて硬化されていることが必要であり、その硬化率を50%以上とすることにより、燃焼時の塩素含有繊維(I)の収縮を抑制するとともに、熱硬化性樹脂(B)の硬化物自体が保有する高度な耐熱性により塩素含有繊維(I)が焼損するのを抑制することで、塩素原子含有重合体(A)との組合せでこれを用いた炎遮蔽性生地に高度な難燃性、特に炎遮蔽性を付与する。
【0042】
本発明に用いる硬化した状態で分子中に、芳香族環、又は、窒素原子を少なくとも含むヘテロ環、を少なくとも有する熱硬化性樹脂(B)としては、レゾール型、ノボラック型のフェノール樹脂;メラミン樹脂;不飽和ポリエステル樹脂;アルキド樹脂;ポリイミド樹脂からなる群より選択される少なくとも一種以上の樹脂が好ましい。これら熱硬化性樹脂(B)の含有量は、塩素原子含有重合体(A)100重量部に対し0.5〜50重量部、好ましくは0.6〜30重量部、更に好ましくは0.6〜20重量部である。熱硬化性樹脂(B)の含有量を上記範囲とすることにより、所望の難燃性、炎遮蔽性を確保出来、不必要に多量に添加することによるコストアップもなく好ましい。また、得られた繊維の風合も低下することがなく好ましい。
【0043】
前記熱硬化性樹脂(B)は、紡糸原液添加時に硬化している必要は必ずしもなく、むしろ未硬化状態の方が添加に際しての操作性に優れる場合が多いが、製品繊維時点では添加した熱硬化性樹脂の硬化率が50%以上、好ましくは80%以上の割合で硬化していることが必須である。熱硬化性樹脂が繊維中において未硬化のままの場合や、硬化率が50%未満の場合には、所望の難燃性、特に炎遮蔽性が得られない。
【0044】
前記熱硬化性樹脂(B)の硬化方法としては、繊維製造時の加熱、硬化剤の紡糸原液への添加或いは繊維への塗布や浸漬、熱硬化性樹脂(B)を硬化させる成分を塩素原子含有重合体(A)に含有させる等の方法が用いられる。本発明でいう硬化とは、熱硬化性樹脂(B)単独、若しくは熱硬化性樹脂(B)と塩素原子含有重合体(A)間で開環、閉環、重合や縮合等の化学反応を生じることで、これらの分子量が増加又は減少することで実質的に不融性かつ不溶性に変化することを指す。
【0045】
無機化合物(C)は、燃焼時、塩素原子含有重合体(A)から発生する塩素、塩化水素と反応し消火効果を発現する、あるいは塩素原子含有重合体(A)からの塩化水素発生反応を促進する、さらには不燃性である場合燃焼後に残渣となるといった効果を示す。無機化合物(C)は、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ナトリウム、硫化アンチモン等のアンチモン化合物;酸化亜鉛、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛等の亜鉛化合物;四塩化錫、錫酸亜鉛、酸化第2錫、メタ錫酸、オキシハロゲン化第2錫、水酸化第1錫等の錫化合物;水酸化アルミニウム、等のアルミニウム化合物;二酸化珪素等の珪素化合物;硼砂、硼酸亜鉛等の硼素化合物からなる群より選択される一種以上の化合物が好ましい。これら塩素原子含有重合体(A)100重量部に対し0〜50重量部、好ましくは0.3〜30重量部、更に好ましくは0.5〜20重量部である。50重量部以下とすることにより、難燃性の効果を十分発揮でき、良好な風合を保持でき、不必要なコストアップもなく好ましい。無機化合物(C)は、上述の様に本発明においては使用しなくてもよいし、使用する場合には上記の範囲で使用することが好ましい。
【0046】
本発明の塩素原子含有繊維(I)には、その他の添加剤、例えば帯電防止剤、熱着色防止剤、耐光性向上剤、白度向上剤、失透性防止剤、着色剤、難燃剤といったその他添加剤を含有せしめても良い。例えば、難燃剤としては、ヘキサブロモベンゼン、ヘキサブロモシクロドデカン、塩化パラフィンなどのハロゲン化合物、トリス(2,3−ジクロロプロピル)ホスフェートなどの含ハロゲンリン化合物、ポリリン酸アンモニウム、ジブチルアミノホスフェートなどのリン系化合物等が挙げられる。
【0047】
本発明の塩素原子含有繊維(I)は、塩素原子含有重合体(A)を用い、湿式紡糸法、乾式紡糸法、半乾半湿式法等の公知の製造方法で製造される。例えば湿式紡糸法では、上記塩素原子含有重合体(A)をN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトン、ロダン塩水溶液等の溶媒に溶解させることで紡糸原液を作成後、この紡糸原液をノズルを通じて凝固浴に押出すことで凝固させ、次いで水洗、乾燥、延伸、熱処理し、必要であれば捲縮を付与し切断することで製品を得る。前記熱硬化性樹脂(B)、無機化合物(C)は、紡糸原液への添加、製品繊維表面への塗布、何れの方法も用いることができる。前記熱硬化性樹脂(B)、無機化合物(C)の紡糸原液への添加時の形態は、液状、粉体何れでも構わないが、繊維製造時の曳糸性の観点から液状若しくは10μm以下の粒径を有する粉体が好ましい。特に前記熱硬化性樹脂(B)は未硬化の状態で繊維製造用原液に添加し、紡糸後、熱硬化性樹脂(B)を硬化させることが好ましい。
【0048】
本発明の塩素原子含有繊維(I)は短繊維でも長繊維でも良く、使用方法において適宜選択することが可能である。炎遮蔽性生地製造の観点から、組合せるポリエステル系繊維(II)や、前記塩素原子含有繊維(I)及び前記ポリエステル系繊維(II)以外の熱可塑性合成繊維、再生繊維、及び天然繊維から選ばれた少なくとも一種の繊維(III)の性状に合わせて、1.7〜20dtex程度、カット長38〜128mm程度の短繊維が好ましい。
【0049】
本発明の炎遮蔽性生地において、塩素原子含有繊維(I)の含有量は、炎遮蔽生地中に20〜80重量%、好ましくは30〜70重量%、更に好ましくは40〜60重量%含まれていることが必要である。塩素原子含有繊維(I)の含有量を上記範囲とすることにより、十分な炎遮蔽性を生地に付与でき、かつ、繊維素材としての特性、例えば、織物や編物であれば良好な風合、不織布であれば嵩高性(反発性)を付与できるので好ましい。
【0050】
本発明の炎遮蔽性生地に用いられる前記ポリエステル系繊維(II)は、本発明の炎遮蔽性生地、それを用いた難燃性布張り製品に優れた風合、触感、色調、製品強力、耐洗濯性、耐久性、価格競争力を与えるための成分であるだけでなく、炎遮蔽性生地が不織布の場合には嵩高性や簡便な不織布製造方法である繊維間の交点の少なくとも一部を熱融着する熱融着式製法を採用する上で重要となる。
【0051】
ポリエステル系繊維(II)の具体例としては、汎用的な融点が200℃を超えるポリエステル繊維、融点が200℃以下の低融点ポリエステル繊維、更には難燃性ポリエステル繊維があげられ、これらは単独使用しても良く、2種類以上組み合わせて使用しても良い。低融点ポリエステル繊維としては、低融点ポリエステル単一成分よりなる繊維、通常のポリエステルと低融点ポリエステルの複合よりなる繊維、通常のポリエステルと低融点ポリオレフィンの複合よりなる繊維、からなる群から選ばれた少なくとも1つの繊維であるのが好ましい。
【0052】
一般的に低融点ポリエステルの融点は、概ね110〜200℃、低融点ポリプロピレンの融点は概ね140〜160℃、低融点ポリエチレンの融点は概ね95〜130℃であり、概ね110〜200℃程度で融解接着能力を有するものであれば特に限定はない。低融点バインダー繊維としては、例えば(株)東レ製の“サフメット”(登録商標)(溶融温度110℃)があげられるがこれに限定されるものではない。
【0053】
前記ポリエステル系繊維(II)は、炎遮蔽生地中に20〜80重量%、好ましくは30〜70重量%、更に好ましくは40〜60重量%の割合で使用されることが必要である。上記の使用割合とすることにより、得られる生地の繊維素材としての特性、例えば、織物や編物であれば風合、不織布であれば嵩高性(反発性)に優れ、しかも燃焼時に生地が溶融、焼損してしまうことがなく、所望とする炎遮蔽性を得ることができ好ましい。
【0054】
必要に応じて用いられる前記塩素原子含有繊維(I)及び前記ポリエステル系繊維(II)以外の熱可塑性合成繊維、再生繊維、及び天然繊維からなる群から選ばれた繊維(III)は、本発明の炎遮蔽性生地、それを用いた難燃性布張り製品に優れた風合、触感、色調、製品強力、耐洗濯性、耐久性、炎遮蔽性を更に付与するための成分として用いられる。前記繊維(III)の具体例としては、例えば次のような繊維が挙げれ、これらは、1種類用いてもよいが、2種類以上を併用して用いてもよい。
【0055】
天然繊維としては、例えば綿、麻、などの植物性繊維や、羊毛、らくだ毛、山羊毛、絹などの動物性繊維などが挙げられる。また再生繊維の具体例としては、たとえばビスコースレーヨン繊維、キュプラ繊維、アセテート繊維などの再生繊維、レーヨン繊維に水ガラスを含有せしめた特殊レーヨン繊維(サテリ社製“Visil”(登録商標)、ダイワボウレーヨン社製“FRコロナ”(登録商標))、レーヨン繊維にリン系や硼素系難燃剤を含浸せしめた後加工レーヨン繊維、などの変性した再生繊維も含まれる。
【0056】
前記塩素原子含有繊維(I)及び前記ポリエステル系繊維(II)以外の熱可塑性合成繊維としては、例えばナイロン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリビニルアルコール繊維、アクリル繊維、アクリル繊維をヒドラジン等で架橋し加水分解した変性アクリル繊維等の合成繊維が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0057】
なかでも、耐熱性、風合いの点からは綿、レーヨン、ビスコースレーヨン繊維が、耐磨耗性の点からはナイロン繊維、ポリビニルアルコール繊維が、更に炎遮蔽性を向上させるためには再生繊維に水ガラスを含有せしめた特殊再生繊維やアクリル繊維をヒドラジン等で架橋し加水分解した変性アクリル繊維がそれぞれ好ましい。
【0058】
前記繊維(III)は、炎遮蔽性生地の構成繊維として使用しなくてもよいが、使用する場合には、炎遮蔽性生地中に50重量%以下、好ましくは、30重量%以下、更に好ましくは20重量%以下の割合で使用されることが好ましい。50重量%以下とすることにより、所望とする難燃性を確保でき、得られた生地の特性の低下もなく好ましい。
【0059】
本発明の炎遮蔽性生地は、前述の繊維(I)、(II)および必要に応じて(III)をさまざまな方法で混ぜ合わせて所定の比率で含有した生地であり、混綿、紡績、撚糸、織り、編みの段階でそれぞれの繊維や糸を組み合わせ、最終的に織物、編物、不織布の形態にせしめたものである。
【0060】
織物の製造方法としては、混紡、交織の何れも用いることが可能であり、その際の織組織としては、平織、綾織、朱子織等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0061】
編物の製造方法としては、緯編、経編、横編、丸編の何れも用いることが可能であり、その際の編組織としては、平編、レース編、ゴム編、パール編、シングルトリコット編、プレーントリコット編等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0062】
不織布の製造方法としては、一般的な熱溶融接着法、ケミカルボンド法、ウォータージェット法、ニードルパンチ法、ステッチボンド法等の不織布作成方法が用いることが可能であり、複数の種類の繊維を混綿した後にカードにより開繊、ウェブ作成を行い、このウェブを不織布製造装置にかけることにより作成される。装置の簡便さからはニードルパンチ方式、ポリエステル系低融点バインダー繊維を用いる熱溶融接着方式による製造が一般的で生産性が高いため好ましいがこれらに限定されるものではない。
【0063】
本発明の炎遮蔽性生地を用いて寝具又は家具、例えば、ベッドマットレス、ピロー、コンフォーター、ベッドスプレッド、マットレスパッド、フトン、クッション、椅子等の難燃性布張り製品を製造すると、本発明の炎遮蔽性生地が有する優れた難燃性を有しつつ、風合い、触感、色調、吸湿性などの優れた特性を有する布張り製品を得ることが出来る。
【0064】
ベッドマットレスとしては、例えば、金属製のコイルが内部に用いられたポケットコイルマットレス、ボックスコイルマットレス、あるいはスチレンやウレタン樹脂などを発泡させたインシュレーターや低反発ウレタンが内部に使用されたマットレス等がある。本発明に使用される炎遮蔽性生地による炎遮蔽性が発揮されることにより、前記マットレス内部の構造体への延焼が防止出来るため、何れの構造のマットレスにおいても、難燃性と同時に優れた風合いや触感に優れたマットレスを得ることができる。
【0065】
椅子としては、屋内にて使用される、ストゥール、ベンチ、サイドチェア、アームチェア、ラウンジチェア・ソファー、シートユニット(セクショナルチェア、セパレートチェア)、ロッキングチェア、フォールディングチェア、スタッキングチェア、スィーブルチェア、あるいは屋外で車両用座席等に使用される、自動車シート、船舶用座席、航空機用座席、列車用座席などが挙げられるが、これらにおいても通常の家具として要求される外観や触感と同時に内部の延焼を防止する機能を有する難燃性布張り製品を得ることができる。なお、車両用座席等は、通常、家具には分類されないかもしれないが、本発明においては、車両用座席等も家具に含めている。
【0066】
難燃性布張り製品に対する本発明の難燃繊維複合体である炎遮蔽性生地の用い方としては、表面の布地に織物や編物の形態で用いてもよいし、表面の布地と内部構造物、例えばウレタンフォームや詰め綿の間に織物、編物、不織布の形態で挟み込んでも良い。表面の布地に用いる場合には、従来の表面の布地に替えて本発明の炎遮蔽性生地を用いればよい。また、表面生地と内部構造物の間に織物や編物を挟む場合には、表面生地を2枚重ねる要領で挟み込んでも良いし、内部構造物を本発明の炎遮蔽性生地で覆っても良い。表面生地と内部構造物の間に炎遮蔽性生地として挟む場合には、内部構造物全体に、少なくとも表面の布地と接する部分については、必ず内部構造物の外側に本発明の炎遮蔽性生地をかぶせ、その上から表面の布地を張ることになる。
【0067】
本発明でいう炎遮蔽とは、本炎遮蔽性生地が炎にさらされた際、炎遮蔽性生地が生地の形態を維持したまま炭化することで炎を遮蔽、遮断し、炎と反対側にあるウレタンフォーム等の易燃性素材に延焼するのを防ぐことである。その結果、本炎遮蔽性生地を用いた布張り製品は難燃性布張り製品となる。炎遮蔽性には、単に生地が燃焼しないことは必ずしも重要でなく、燃焼時に生地が炭化し、溶融や切断、破断等を来たさず、そのままの形態を保持することが重要である。従って、繊維素材の難燃性を示す指標の一つであるLOI(限界酸素指数)値の高いことが、必ずしも炎遮蔽性の必須要件とはならない。
【0068】
このようにして得られる本発明の炎遮蔽性生地は、所望の難燃性、特に炎遮蔽性を有し、更には風合い、触感、色調、吸湿性などに優れた特性を有する。また本発明の炎遮蔽性生地を用いて寝具又は家具などの難燃性布張り製品を製造すると、本発明の炎遮蔽性生地が有する優れた特性、すなわち高度に優れた難燃性、特に炎遮蔽性を有し、更には風合い、触感、色調、吸湿性など布張り製品に必須な商品性にも優れた特性を有する難燃性布張り製品が得られる。
【実施例】
【0069】
以下、実施をあげて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0070】
(硬化率測定法)[前記塩素原子含有繊維(I)中の熱硬化性樹脂(B)の硬化率]
秤量した繊維(a)0.2gをアセトン50gに投入し、55℃で2時間撹拌しながら溶解させた。未溶解物を取り出し、アセトン、次いで水で洗浄後、乾燥させた。乾燥物(b)の重量を秤量し、溶解前後の重量比(%)を硬化率とした。
【0071】
硬化率%={(b)の重量/(a)の重量}×100
【0072】
(難燃性評価法1(繊維の難燃性評価))
塩素原子含有繊維を2g取り、これを8等分して、それぞれ手で70回の撚りを付与し、長さ約6cmの撚糸を8本作成し、酸素指数測定器(スガ試験機製ON−1型)のホルダーに直立させ、この試料が5cm燃え続けるのに必要な最小酸素濃度を測定し、この平均値をLOI値とした。LOI値が大きいほど燃えにくいことを示す。この指標は、燃えにくさの指標にはなるが、直接、炎遮蔽性の比較指標にはならない。
【0073】
(難燃性評価法2(繊維の難燃性評価))
繊度7.8dtexの繊維1000本を束にした塩素原子含有繊維束を引張張力として3.9Nの張力がかかる緊張状態で50mmの長さになるように繊維束両端を固定後、繊維束の長さ方向の中央部にプロパンガス炎を接炎し、繊維束が切断するまでの所要時間を下記の基準で評価した。なお、プロパンガス炎の接炎は、ガスコンロ(株式会社パロマ製“PA−10H−2”)のバーナー面より40mmのところに前記試料繊維束の中心とコンロの中心が合うようにセットし、燃焼ガスは純度99%以上のプロパンを用い、炎の高さは25mmとした。
【0074】
評価基準:繊維が切断するまでの所要時間
◎:所要時間5秒以上
○:所要時間1秒以上5秒未満
×:所要時間1秒未満
【0075】
(難燃性評価法3(生地の炎遮蔽性評価))
生地の炎遮蔽性評価としては、不織布生地を使用する下記の方法にて評価した。
【0076】
所定の割合で混合した繊維をカードにより開繊した後、熱融着法により作成した目付け300g/m2の不織布を縦200mm×横200mm×厚さ10mmのパーライト板の中心に直径15cmの穴を開けた上部にセットし、加熱時に不織布が収縮しないよう4辺をクリップで固定した。この試料を不織布の面を上部にして、株式会社パロマ工業製ガスコンロ(PA−10H−2)にバーナー面より40mmの所に試料の中心とバーナーの中心が合うようにセットした。燃料ガスは純度99%以上のプロパンを用い、炎の高さは25mmとし、着炎時間は180秒とし、以下の評価基準により物性を評価した。なお、◎または○が合格である。
【0077】
◎:不織布の炭化膜に厚み斑がなく全く穴やひびもない
○:不織布の炭化膜に厚み斑はあるが穴やひびがない
×:不織布に穴やひびがある
【0078】
(難燃性評価法4(布張り製品での炎遮蔽性評価))
布張り製品の炎遮蔽性評価としては、布張り製品としてのベッドに対する米国連邦法ベッド燃焼試験方法(16CFR1633 Part3)に準拠し、不織布生地を使用した簡易ベッドマットレスを使用する下記の方法にて評価した。
【0079】
上記試験に使用する簡易ベッドマットレスの構造を図1および図2に示す。図1が簡易ベッドマットレスの全体斜視図の概略図、図2が図1の簡易ベッドマットレスの側面側から見た拡大部分側面図(下層側のポリウレタンフォームの一部は図示されていない)である。
【0080】
縦30cm×横45cm×厚さ1.9cm、密度22kg/m3のポリウレタンフォーム1(東洋ゴム工業(株)製タイプ360S)を2枚、縦30cm×横45cm×厚さ1.27cm、密度22kg/m3のポリウレタンフォーム2(東洋ゴム工業(株)製タイプ360S)を1枚、目付け300g/m2の不織布3(炎遮蔽性生地に該当)を1枚、外層の表面生地4としてポリエステル製織布(目付け120g/cm2)を1枚、図2のように重ねた構造物をナイロン糸5を用いキルティングした。キルティング間隔は20cmとした。この構造物を縦30cm×横45cm×厚さ75cm、密度22kg/m3のポリウレタンフォーム6(東洋ゴム工業(株)製タイプ360S)の上部に載せ、簡易ベッドマットレスを作成した。この簡易マットレスを米国連邦法ベッド燃焼試験方法CFR1633 Part3のうち、ベッド上面試験方法に準じて難燃性試験を実施した。すなわち試料の上面から39mmの所に水平にT字型のバーナーをセットし、プロパンガスを燃焼ガスとして、ガス圧力101KPa、ガス流量12.9L/分の条件にて、70秒間接炎し、以下の評価基準により物性を評価した。なお、◎または○が合格である。
【0081】
◎:不織布の炭化膜に厚み斑がなく全く穴やひびもない
○:不織布の炭化膜に厚み斑があり穴やひびもあるが、下部のウレタンフォームには着炎せず
×:不織布に穴やひびがあり下部のウレタンフォームに着炎した
尚、以下の各表中において、難燃性評価法1、2、3、4を、それぞれ単に評価法1、2、3、4と略称した。
【0082】
(塩素原子含有繊維(I)の製造例1)
塩素原子含有重合体(A)として、アクリロニトリル51重量%、塩化ビニリデン48重量%、p−スチレンスルホン酸ソーダ1重量%よりなる重合体100重量部を、樹脂濃度が30重量%になるようアセトンに溶解させ、この溶液に表1に示す熱硬化性樹脂(B)(クレゾールノボラック樹脂“日本化薬製EOCN104S”、レゾールフェノール樹脂“大日本インキ製TD2040C”、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂“三和ケミカル社製MX−45”、ポリグリシジルメタクリレート)、無機化合物(C)を重合体(A)100重量部に対し添加し紡糸原液とした。紡糸原液をノズル孔径0.10mm及び孔数1000ホールのノズルを用い、25℃の30重量%アセトン水溶液中へ押し出し、水洗したのち140℃で乾燥し、さらに185℃で10分間熱処理(熱硬化性樹脂の硬化処理)を行い、切断することで繊度7.8dtex、カット長64mmの塩素原子含有繊維(I)を得た。
【0083】
(塩素原子含有繊維(I)の製造例2)
185℃10分間の熱処理を実施しない以外、製造例1と同様にして塩素原子含有繊維(I)を得た。
【0084】
(不織布の作成方法)
塩素原子含有繊維(I)として製造例1、2で作成した塩素原子含有繊維(実施例1〜8、比較例1〜4に示した塩素原子含有繊維:但し、比較例1及び2の塩素原子含有繊維は、熱硬化性樹脂(B)を含有しない繊維である)、ポリエステル繊維(II)としてレギュラーポリエステル繊維(帝人ファイバー(株)社製“テトロン”(登録商標)、6.6dtex、カット長51mm)及び低融点ポリエステル繊維(帝人ファイバー(株)社製“テトロン”(登録商標)、4.4dtex、カット長51mm、融点110℃)、前記塩素原子含有繊維(I)及び前記ポリエステル系繊維(II)以外の熱可塑性合成繊維、再生繊維、及び天然繊維から選ばれた少なくとも一種の繊維(III)としてレーヨン繊維(ダイワボウレーヨン(株)社製“コロナ”(登録商標)、1.5dtex、カット長38mm)を用い、表3、4に示す割合で混合した繊維をカードにより開繊した後、通常の熱融着方式により所定の目付の不織布を作成した。
【0085】
(実施例1〜7、比較例1〜3)
表1に示すように、製造例1に基づき製造した硬化された各種の熱硬化性樹脂を含有している又は含有していない塩素原子含有繊維(I)において、実施例1〜7の繊維は、難燃性評価法1においても優れているものが多く、難燃性評価法2に合格するが、比較例1〜3の繊維は、難燃性評価法2に不合格となった。
【0086】
【表1】

【0087】
(実施例8、比較例4)
製造例1または2に基づき製造した塩素原子含有繊維(I)を比較評価した。表2より実施例8の塩素原子含有繊維は、製造例1に従い、180℃10分の熱処理(熱硬化処理)を付与したことで繊維中で熱硬化性樹脂(B)が硬化しており難燃性評価法2に合格するが、比較例4の塩素原子含有繊維は製造例2に基づき製造したので、熱処理(熱硬化処理)を付与しておらず熱硬化性樹脂(B)が硬化していないため(硬化率50%未満)、難燃性評価法2において不合格となった。
【0088】
【表2】

【0089】
(実施例9〜15、比較例5〜8)
製造例1の方法で作成した硬化された各種の熱硬化性樹脂を含有している又は含有していない塩素原子含有繊維(実施例1〜7、比較例1〜3に示した塩素原子含有繊維(I))、上記不織布の作成方法の欄に示したポリエステル繊維(II)、並びに前記塩素原子含有繊維(I)及び前記ポリエステル系繊維(II)以外の熱可塑性合成繊維、再生繊維、及び天然繊維から選ばれた少なくとも一種の繊維(III)として上記不織布の作成方法の欄に示したレーヨン繊維を使用し、上記不織布の作成方法に従って表3に示す割合で塩素原子含有繊維(I)、ポリエステル繊維(II)、レーヨン繊維(III)からなる不織布を作成した。
【0090】
表3より実施例1〜7の塩素原子含有繊維(I)を用いた実施例9〜15の不織布は、難燃性評価法3及び4に合格するが、比較例1〜3の塩素原子含有繊維(I)を用いた比較例5〜8の不織布は、難燃性評価法3及び4に不合格となった。
【0091】
尚、触感と色調についての評価は、それぞれ基準品との触感と色調の差を官能的に評価した。パネラー3人にて、基準品と同等若しくは基準品より優れると判断した人数が3人の場合○、1〜2人の場合△、0人の場合×とした。
【0092】
触感は手で試験片を触った場合の柔らかさを、基準品との比較で評価したものであり、色調は、基準品に比べて白度が優れているか、同等か、劣っているかを、基準品と目視で比較し、評価したものである。また、触感と色調の評価は、不織布を構成する繊維種、混率によって触感、色調が異なることから、同一の繊維混率の例同士で比較した。
【0093】
【表3】

【0094】
(実施例16、比較例9)
実施例16として、製造例1の方法で作成した硬化された(硬化率90%)熱硬化性樹脂(レゾールフェノール樹脂)を含有している実施例8の塩素原子含有繊維(I)と上記不織布の作成方法の欄に示したポリエステル繊維(II)との組合せ、並びに比較例9として、製造例2の方法で作成した未硬化(硬化率30%)の熱硬化性樹脂(レゾールフェノール樹脂)を含有している比較例4の塩素原子含有繊維(I)と上記不織布の作成方法の欄に示したポリエステル繊維(II)との組合せからなる繊維をそれぞれ使用し、上記不織布の作成方法に従って表4に示す割合で塩素原子含有繊維(I)及びポリエステル繊維(II)とからなる不織布を作成した。
【0095】
表4から明らかな様に、硬化された熱硬化性樹脂を含有している塩素原子含有繊維(I)を用いた不織布(実施例16)は、難燃性評価法3及び4に合格するが、硬化率が50%未満の熱硬化性樹脂を含有している塩素原子含有繊維(I)を用いた不織布(比較例9)は、難燃性評価法3及び4に不合格となった。
【0096】
【表4】

【0097】
(実施例17、比較例10〜11)
炎遮蔽性生地(不織布)を構成する塩素原子含有繊維(I)とポリエステル繊維(II)の使用割合に応じて構成した炎遮蔽性生地(不織布)の難燃性を比較した。
【0098】
塩素原子含有繊維(I)としては、何れも実施例2で示した繊維を使用し、ポリエステル繊維(II)としては、上記不織布の作成方法の欄に示したポリエステル繊維(II)を使用し、上記不織布の作成方法に従って表5に示す割合で塩素原子含有繊維(I)及びポリエステル繊維(II)からなる不織布を作成した。
【0099】
表5より塩素原子含有繊維(I)とポリエステル繊維(II)の使用割合が、本発明の炎遮蔽性生地で規定した範囲内の割合で構成された実施例17の不織布は、難燃性評価法3及び4に合格するが、本発明の炎遮蔽性生地で規定した(I)と(II)の使用割合の範囲から外れる割合で構成された比較例10〜11の不織布は、難燃性評価法3及び4に不合格となった。
【0100】
【表5】

【0101】
(実施例18、比較例12〜13)
実施例4の塩素原子含有繊維(I)と、上記不織布の作成方法の欄に示したポリエステル繊維(II)を用いて炎遮蔽性生地(不織布)を作成した(実施例18)。また比較のために、塩素原子含有繊維(I)の代わりに、比較的難燃性に優れている他の繊維(IV)(メラミン繊維、アラミド繊維)とポリエステル繊維(II)を用いて炎遮蔽性生地(不織布)を作成した(比較例12、13)。比較例12、13の不織布は、難燃性評価法3及び4に合格するが、触感が極めて悪く、到底実用に耐えないものであった。
【0102】
なお、比較例12で用いたメラミン繊維:バソフィルファイバーズ社製、“バソフィル”(登録商標)、1.0〜3.5dtex、カット長20〜200mm
比較例13で用いたアラミド繊維:帝人ファイバー社製、“テクノーラ”(登録商標)、1.7dtex、カット長38mm
【0103】
【表6】

【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明の難燃性合成繊維、それを用いた炎遮蔽性生地、更にはその生地を用いた難燃性布張り製品は、風合い、触感、色調、視感などや加工性に優れ、長時間の炎にも耐え得る高度な難燃性、特には炎遮蔽性を有することを可能とするものであるので、寝具や家具などの布張り製品などに有用に用いられる。
【0105】
特に本発明の難燃性合成繊維は、安価なポリエステル系繊維と併用してポリエステル系繊維を20〜80重量%と高率で含有する布帛にした場合でも高度な難燃性、特に高度な炎遮蔽性が賦与された炎遮蔽性生地とすることができる難燃性合成繊維を提供できるので炎遮蔽性生地製造用の難燃性合成繊維として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】燃焼試験に用いる簡易ベッドマットレスの全体斜視図の概略図。
【図2】図1の簡易ベッドマットレスの側面側から見た拡大部分側面図。
【符号の説明】
【0107】
1 ポリウレタンフォーム
2 ポリウレタンフォーム
3 不織布
4 外層の表面生地
5 ナイロン糸
6 ポリウレタンフォーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩素原子含有重合体(A)100重量部、
硬化した状態で分子中に、芳香族環、又は、窒素原子を少なくとも含むヘテロ環、を少なくとも有する熱硬化性樹脂(B)が重合体(A)100重量部に対し0.5〜50重量部、
無機化合物(C)が重合体(A)100重量部に対し0〜50重量部からなる塩素原子含有繊維であって、
前記熱硬化性樹脂(B)は、前記塩素原子含有繊維中で硬化率50%以上に硬化した状態である塩素原子含有繊維。
【請求項2】
前記熱硬化性樹脂(B)が、フェノール樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリイミド樹脂からなる群より選択される少なくとも一種以上である請求項1記載の塩素原子含有繊維。
【請求項3】
塩素原子含有重合体(A)が、アクリロニトリル30〜85重量%、塩化ビニルもしくは/及び塩化ビニリデン10〜70重量%、その他の共重合可能な単量体0〜15重量%から構成される請求項1又は2に記載の塩素原子含有繊維。
【請求項4】
塩素原子含有重合体(A)が、前記熱硬化性樹脂(B)を硬化させる効果を有する成分を共重合している重合体である請求項1〜3のいずれか1項に記載の塩素原子含有繊維。
【請求項5】
無機化合物(C)が、アンチモン化合物、亜鉛化合物、錫化合物、アルミニウム化合物、珪素化合物、硼素化合物からなる群より選択される一種以上の化合物である請求項1〜4のいずれか1項に記載の塩素原子含有繊維。
【請求項6】
塩素原子含有重合体(A)100重量部、
硬化した状態で分子中に、芳香族環、又は、窒素原子を少なくとも含むヘテロ環、を少なくとも有する熱硬化性樹脂(B)が重合体(A)100重量部に対し0.5〜50重量部、
無機化合物(C)が重合体(A)100重量部に対し0〜50重量部からなる塩素原子含有繊維であって、
前記熱硬化性樹脂(B)は、前記塩素原子含有繊維中で硬化率50%以上に硬化した状態である塩素原子含有繊維(I)20〜80重量%と、ポリエステル系繊維(II)20〜80重量%で構成される炎遮蔽性生地。
【請求項7】
前記熱硬化性樹脂(B)が、フェノール樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリイミド樹脂からなる群より選択される少なくとも一種以上である請求項6記載の炎遮蔽性生地。
【請求項8】
塩素原子含有重合体(A)が、アクリロニトリル30〜85重量%、塩化ビニルもしくは/及び塩化ビニリデン10〜70重量%、その他の共重合可能な単量体0〜15重量%から構成される請求項6又は7に記載の炎遮蔽性生地。
【請求項9】
塩素原子含有重合体(A)が、前記熱硬化性樹脂(B)を硬化させる効果を有する成分を共重合している重合体である請求項6〜8のいずれか1項に記載の炎遮蔽性生地。
【請求項10】
無機化合物(C)が、アンチモン化合物、亜鉛化合物、錫化合物、アルミニウム化合物、珪素化合物、硼素化合物からなる群より選択される一種以上の化合物である請求項6〜9のいずれか1項に記載の炎遮蔽性生地。
【請求項11】
炎遮蔽性生地が、前記塩素原子含有繊維(I)及び前記ポリエステル系繊維(II)以外の熱可塑性合成繊維、再生繊維、及び天然繊維から選ばれた少なくとも一種の繊維(III)を50重量%以下含む請求項6〜10のいずれか1項に記載の炎遮蔽性生地。
【請求項12】
炎遮蔽性生地が、織物、編物、不織布のいずれかの形態である請求項6〜11のいずれか1項に記載の炎遮蔽性生地。
【請求項13】
請求項12記載の炎遮蔽性生地を用いた寝具又は家具から選ばれた難燃性布張り製品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−242957(P2009−242957A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−87627(P2008−87627)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】