説明

難燃性性能を有する赤外線減衰化ポリマーフォーム断熱材

3〜5重量パーセント(重量%)の二酸化炭素、5重量%以下の炭素数2〜3のアルコール、0.7重量%以下の水及び2.5重量%以下のイソブタンを含む発泡剤(ここで、この発泡剤は、少なくとも0.1重量%の、水及び/又は炭素数2〜3のアルコールを含む);2〜5重量%の、ペトコークス及び100〜700nmサイズのカーボンブラックから選択された赤外線減衰剤;2.5〜3.5重量%の臭素化難燃剤並びに少なくとも0.1重量%のエポキシ安定剤を使用して発泡性熱可塑性ポリマー組成物を押出成形することにより、ポリマーフォームを製造する(ここで、得られるポリマーフォームは、30〜37kg/m3の範囲内の密度、単峰性気泡サイズ分布、0.15〜0.4mmの平均気泡サイズ、28〜35ミリワット/メートル・ケルビンの範囲内の熱伝導率を有し、かつドイツB2防火試験に合格することによって特徴付けられる)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
クロスリファレンス記述
本件特許出願は、2009年6月4日に出願された米国仮特許出願第61/183,990号(その全内容を参照して本明細書に含める)の利益を請求する。
【0002】
本発明は断熱ポリマーフォーム及び赤外線減衰化断熱ポリマーフォームの製造プロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
断熱ポリマーフォームは、内部温度を、しばしば、外部温度とを異なる温度に維持するのが好ましい、建築及び建設用途のために望ましい。ますます、エネルギーを保存するために、建築物におけるより大きい断熱を、消費者は望み、政府法規が要求している。法規は、また、一定の難燃性性能を達成するための断熱も要求している。断熱材メーカー、建築業者及び消費者によって求められる、難燃性性能の特に挑戦的な規格は、DIN4102に従ったドイツB2防火試験(German B2 fire test)である。法規は、クロロフルオロ炭素のような材料から環境的に優しい発泡剤の方への移行も薦めている。特に望ましい環境的に優しい発泡剤は、水、炭素数2又は3のアルコール(C2-3ROH)及び二酸化炭素を含む。従って、理想的な断熱ポリマーフォームは、高い断熱能力を有し、ドイツB2防火試験に合格し、水、エタノール及び二酸化炭素の1種又はそれ以上を含む発泡剤によって製造される。しかしながら、この理想的なポリマーフォームを達成することは難しいことである。
【0004】
赤外線減衰剤は、ポリマーフォームを通る熱伝導率を低下させ、それによって、フォームの断熱特性を増強するのに有用である。カーボンブラックは、歴史的に、ポリマーフォーム中に使用する赤外線減衰剤として知られてきた。アセチレンブラックとしても知られているカーボンブラックの特別の形態であるサーマルブラックは、断熱ポリマーフォームを製造するための特に望ましい特性を提供する(例えば、その全部を参照して本明細書に含める特許文献1参照)。
【0005】
赤外線減衰剤のような微粒子は、特に、高度に核生成性の発泡剤、例えば二酸化炭素の存在下で、フォーム膨張(expansion)の間の核生成剤として機能する。核生成剤として、赤外線減衰剤は、得られるフォーム中の小さい気泡サイズ(0.10mmよりも小さい)の生成を、望ましくなく促進する。しかしながら、断熱材として最も有効であるために、ポリマーフォームは0.12mm又はそれ以上の平均気泡サイズを必要とする。
【0006】
カーボンブラックも、水性発泡剤と組合せると、双峰性(バイモダール)気泡サイズ分布を促進する。(例えば特許文献2及び特許文献3参照)。双峰性気泡サイズ分布は、これらは、報告によれば、鋸引き、ミリング(milling)、切断及びプレス成形の間のポリマーフォームの加工を困難にするので望ましくない(特許文献2の段落〔0004〕参照)。特許文献2は、断熱ポリマーフォームにおける双峰性気泡サイズ分布の問題を、カーボンブラックをグラファイトで置換することによって解決している。従って、水及びカーボンブラックの組合せによる双峰性気泡サイズ分布を如何にして回避するかは、未だに明らかではない。更に、グラファイトは、本明細書の比較例及び実施例に示されるように、核生成剤としてカーボンブラックよりも一層問題をはらむ傾向がある。
【0007】
発泡剤としての水の使用は、更に、断熱フォームの製造において難題を引き起こす。水は、発泡プロセスの間に、「ブローホール(blowhole)」を促進することが知られている。ブローホール又はピンホールは、フォーム全体に分布され得る複数の気泡直径のサイズの欠陥である。ブローホールは、特に、それらが表面欠陥として現れるフォーム表面で望ましくない。水は、また、臭素化難燃剤(これは、B2防火性能評価を達成するために必要である)と反応して、臭化水素酸(HBr)を生成する傾向がある。HBrは装置を腐食し、その腐食生成物は臭素化難燃剤の更なる分解を加速する。水は、また、不溶性塩(これはダイリップ上に蓄積し、フォーム表面の中に入り得る)の生成及び移動を促進することによって、劣ったフォームスキン品質の原因になり得る(例えば特許文献4参照)。
【0008】
2-3ROHは、臭素化難燃剤とも反応して、HBrを生成する。このような反応は、腐食性酸を生成するのみならず、前記のように、ポリマーフォーム中の難燃剤として使用するために利用可能な臭素を減少させる。所望のB2防火性能評価を達成するために、水及び/又はC2-3ROHとの反応により消費される臭素を考慮に入れて、超臭素化難燃剤が典型的に必要である。C2-3ROHは、C2-3ROHが可燃性であるという事実のために、B2防火性能評価を達成するポリマーフォームを製造する際に、更なる難題を示す。従って、ポリマーフォーム中のC2-3ROHの存在は、フォームの易燃性を増加させることができる。C2-3ROHは、次いで、フォームの易燃性を増加させること及びHBrを発生することで臭素化難燃剤を消費することにより、B2防火性能評価を達成することと競合する。
【0009】
発泡剤としての二酸化炭素の使用は難題ももたらす。二酸化炭素は、小さい気泡サイズを促進する、強く核生成する発泡剤である。小さい気泡サイズの形成は、既に前述した通り、断熱ポリマーフォームを製造するときに望ましくない。二酸化炭素は、ポリスチレンのようなポリマー中で低い溶解度を有する傾向があり、その結果、発泡プロセスの間に急速に逃げる傾向がある。二酸化炭素の急速な逃避は、二酸化炭素が表面を通して急速に破裂するので、フォーム表面上に欠陥を起こし得る。
【0010】
これらの難題にもかかわらず、水、C2-3ROH及び二酸化炭素の環境的に許容できる発泡剤を使用して、赤外線減衰剤、例えばカーボンブラック及びグラファイトを含有する、断熱ポリマーフォームを製造するための手段を見出すことが望ましく、断熱ポリマーフォームの技術を進歩させるであろう。更に、ドイツB2防火性能評価を達成し、単峰性(モノモダール)気泡サイズ分布及び0.12mm又はそれ以上の平均気泡サイズを有する、このようなフォームを製造できることが望ましい。なお更に、このフォームが良好な表面品質を有すれば望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際特許出願公開第WO94/13721号明細書
【特許文献2】欧州特許(EP)第1196486B号明細書
【特許文献3】米国特許(USP)第5,210,105号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第20080293839号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、二酸化炭素と組合せて、水及び/又はC2-3ROHを含む発泡剤を使用して、赤外線減衰剤を含有し、単峰性気泡サイズ分布、0.12mm又はそれ以上の平均気泡サイズ、高い断熱能力を有し、ドイツB2防火試験に合格し、そして良好な表面品質を有し得る押出ポリマーフォームの形成を可能にする、成分の特定の組合せを見出すという問題を解決する。本発明は、驚くべきことに、赤外線減衰剤としてカーボンブラック、サーマルブラックも使用することができ、得られるポリマーフォームへ前記の有害な影響を与えることなく、赤外線減衰剤を含むことの問題点を解決する。なお更に驚くべきことには、本発明の態様は、天然に産生するグラファイトの代わりに、石油コークス(ペトコークス)を使用することにより、グラファイトに付随する核生成問題を解決する。ペトコークスは、天然のグラファイトと同様の特性を示す、焼成された石油コークス製品である。ペトコークスは、例えば製油所コーキングプロセスから誘導される。本発明のために適切なペトコークスは、20ミクロン又はそれ以下である粒子サイズ、好ましくは端点を含む2〜4ミクロンの範囲内の粒子サイズを有する。ペトコークス粒子は、典型的には、形状が小板であり、一般的に小板の平均直径に相当するサイズを有する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第一の面において、本発明は、押出機内で初期圧力及び温度で発泡性ポリマー組成物を用意し、次いで、この発泡性ポリマー組成物を、初期圧力よりも低い圧力の雰囲気中に押出し、この発泡性ポリマー組成物をポリマーフォームに膨張させることを含んでなる、押出ポリマーフォームの製造方法であって、この発泡性ポリマー組成物が、(a)熱可塑性ポリマーマトリックス中の全てのポリマーを含むポリマー成分を含んでなる熱可塑性ポリマーマトリックス、(b)熱可塑性ポリマーマトリックス中に分散された発泡剤組成物(この発泡剤組成物は、3〜5重量%の二酸化炭素、5重量%以下の炭素数2〜3のアルコール、0.7重量%以下の水及び2.5重量%以下のイソブタンを含む)(ここで、前記発泡剤は、少なくとも0.1重量%の、水及び/又は炭素数2〜3のアルコールを含む)、(c)2重量%又はそれ以上で5重量%又はそれ以下の、熱可塑性ポリマーマトリックス中に分散された赤外線減衰剤(この赤外線減衰剤は100〜700nmの平均粒子サイズを有するカーボンブラック及びペトコークスからなる群から選択される)、(d)2.5〜3.5重量%の、熱可塑性ポリマーマトリックス中に分散された臭素化難燃剤並びに(e)少なくとも0.1重量%の、ポリマーマトリックス中に分散されたエポキシ安定剤(ここで、全ての重量%は全ポリマー成分重量に対するものである)を含んでなり、得られるポリマーフォームが、30〜37kg/m3の範囲内の密度、0.15mmよりも大きく0.4mm又はそれ以下の範囲内の平均気泡サイズを有する単峰性気泡サイズ分布、28〜35ミリワット/メートル・ケルビンの範囲内の熱伝導率を有しかつドイツB2防火試験に合格することによって特徴付けられるプロセスである。
【0014】
第二の面において、本発明は、(a)熱可塑性ポリマーマトリックス中の全てのポリマーを含むポリマー成分を含み、その中に分散された気泡を有する熱可塑性ポリマーマトリックス、(b)2重量%又はそれ以上で5重量%又はそれ以下の、熱可塑性ポリマーマトリックス中に分散された赤外線減衰剤(この赤外線減衰剤は、100〜700nmの平均粒子サイズを有するカーボンブラック及びペトコークスからなる群から選択される)、(c)2.5〜3.5重量%の、熱可塑性ポリマーマトリックス中に分散された臭素化難燃剤並びに(d)少なくとも0.1重量%の、ポリマーマトリックス中に分散されたエポキシ安定剤(ここで、重量部は全ポリマー成分重量に対するものである)を含んでなるポリマーフォームであって、30〜37kg/m3の範囲内の密度、0.1〜0.4mmの範囲内の平均気泡サイズを有する単峰性(モノモダール)気泡サイズ分布、28〜35ミリワット/メートル・ケルビンの範囲内の熱伝導率を有しかつドイツB2防火試験に合格することによって特徴付けられるポリマーフォームである。
【0015】
本発明におけるコンポーネントのこの特別の組合せは、二酸化炭素と組合せて、赤外線減衰剤、水及び/又はC2-3ROHを使用して、所望の断熱ポリマーフォーム、特にポリスチレンポリマーを含むこのようなポリマーフォームを達成するために必須であると思われる。
【0016】
本発明プロセスは本発明のフォームを製造するのに有用である。本発明のフォームは、例えば建築及び建設用途において、断熱材として特に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
全ての範囲は他の方法で示されない限り端点を含む。
【0018】
ASTMは米国材料試験協会を指す。ISOは国際標準化機構を指す。ENは欧州標準を指す。DINはDeutsches Institute fuer Normung e.V.を指す。ASTM、ISO、EN及びDIN試験方法は、試験方法番号中のハイフンでつながれた添数中の年の方法又はハイフンでつながれた添数が存在しない場合には、本件明細書の優先日前に公開された最近の方法を指す。
【0019】
ポリマー成分として、1種のみ又は1種より多い半結晶性ポリマーを有するポリマー又はポリマー組成物についての「軟化温度」(Ts)は、このポリマー組成物についての溶融温度である。
【0020】
半結晶性ポリマーについての「溶融温度」(Tm)は、特定の加熱速度で結晶化ポリマーを加熱する際の、示差走査熱量測定(DSC)によって決定されたときの、結晶相から溶融相への変化の経過の中間の(half-way)温度である。ASTM方法E794−06におけるDSC手順に従って、半結晶性ポリマーについてのTmを決定する。ポリマーの組合せについての及び充填ポリマー組成物についてのTmもASTM方法E794−06における同じ試験条件下でDSCにより決定する。ポリマーの組合せ又は充填ポリマー組成物が混和性ポリマーを含有するのみであり、そのDSC曲線において、唯一の結晶相から溶融相への変化が明白である場合、ポリマー組合せ又は充填ポリマー組成物についてのTmは、相変化の経過の中間の温度である。非混和性ポリマーの存在のために、DSC曲線において、複数の結晶相から溶融相への変化が明白である場合、ポリマー組合せ又は充填ポリマー組成物についてのTmは連続相ポリマーのTmである。1種より多いポリマーが連続的であり、これらが混和性でない場合、ポリマー組合せ又は充填ポリマー組成物についてのTmは連続相ポリマーの最低Tmである。
【0021】
ポリマー成分として、1種のみ又は1種より多い無定形ポリマーを有するポリマー又はポリマー組成物についての「軟化温度」(Ts)はこのポリマー組成物についてのガラス転移温度である。
【0022】
ポリマー又はポリマー組成物についての「ガラス転移温度」(Tg)は、ASTM方法E1356−03における手順に従って、DSCにより決定される。ポリマーの組合せについての及び充填ポリマー組成物についてのTgも、ASTM方法E1356−03中の同じ試験条件下でDSCにより決定する。ポリマーの組合せ又は充填ポリマー組成物が、混和性ポリマーを含有するのみであり、DSC曲線において、唯一のガラス転移相変化が明白である場合、ポリマー組合せ又は充填ポリマー組成物についてのTgは相変化の経過の中途の温度である。非混和性無定形ポリマーの存在のために、DSC曲線において、複数のガラス転移相変化が明白である場合、ポリマー組合せ又は充填ポリマー組成物についてのTgは、連続相ポリマーのTgである。1種より多い無定形ポリマーが連続的であり、これらが混和性でない場合、ポリマー組合せ又は充填ポリマー組成物についてのTgは、連続相ポリマーの最低Tgである。
【0023】
ポリマー組成物が、半結晶性ポリマーと無定形ポリマーとの組合せを含む場合、ポリマー組成物の軟化温度は連続相ポリマー又はポリマー組成物の軟化温度である。半結晶性ポリマー相と無定形ポリマー相とが共連続的である場合、この組合せの軟化温度は二つの相のより低い軟化温度である。
【0024】
押出ポリマーフォームに対して参照するとき、厚さ、幅及び長さは、押出ポリマーフォームの3個の相互に直交する寸法を指す。押出ポリマーフォームは、押出方向内で、押出機から押し出される。長さは、フォームの押出方向に対して平行に伸びている押出ポリマーフォームの寸法である。幅は、一般的に、大きさが厚さ寸法よりも大きく、共に長さに対して相互に直交している。フォームの厚さは、フォームの主表面(primary surface)に対して垂直に伸びている。
【0025】
ポリマーフォームは少なくとも1個の主表面を有する。押出ポリマーフォームの主表面は、ポリマーフォームの任意の表面の最高平面表面積に等しい平面表面積を有する、押出ポリマーフォームの表面である。平面表面積は、表面内の頂及び谷を無視するように、平面上に投影されたときの表面積である。ポリマーフォームは1個より多い主表面を有することができる。円形又は楕円形断面を有するポリマーフォームは、1個のみの表面を有し、これはフォームの主表面の欠陥(default)による。
【0026】
ポリマーフォームは、望ましくは断熱特性を最適化するために、単峰性気泡サイズ分布を有する。気泡サイズ(最も近い0.02mmまで丸められる)対気泡の数のプロットが単一のピークを示す場合、ポリマーフォームは単峰性気泡サイズ分布を有する。「ピーク」は、その前及び後の両方で、より低いy軸値を有する少なくとも3個の点を有し、プロットのx軸に沿って進み、その後、より高いy軸値を有する点が存在する、プロット上の点である。(プロットのx軸に沿って進む)プラトーの何れかの側上の点が、プラトーを構成する点よりも低いy軸値を有するとの条件で、ピークは、等しいy軸値の1つより多い点(プラトー)を含んでいてよい。プロットは、押出ポリマーフォームの完全な断面からランダムに選択された少なくとも100個の気泡のキャラクタリゼーションを含有していなくてはならない。与えられた気泡について、気泡サイズとして、最大気泡直径と最小気泡直径との平均を使用する。
【0027】
本発明プロセスは本発明のポリマーフォームを製造する押出プロセスである。本発明プロセスは、一般的な押出プロセスの下記の工程、即ち(1)ポリマーマトリックス及び発泡剤を含む発泡性ポリマー組成物を、押出機内で、初期圧力及び温度で用意する工程、(2)この発泡性ポリマー組成物を、初期圧力よりも低い圧力の雰囲気の中に押出す工程並びに(3)この発泡性ポリマー組成物をポリマーフォームに膨張させる工程を含む。
【0028】
前記発泡性ポリマー組成物のポリマーマトリックスは、少なくとも1種のポリマーを含み、1種より多いポリマーと1種より多い種類のポリマーとの組合せを含むことができる。ポリマーマトリックス中のポリマーは、発泡性ポリマー組成物のポリマー成分を構成する。望ましくは、アルケニル芳香族ポリマーが、ポリマー成分の合計重量の、50重量パーセント(重量%)又はそれ以上を占め、80重量%又はそれ以上、90重量%又はそれ以上、そして100重量%をも占めることができる。好ましくはアルケニル芳香族ポリマーは、スチレンホモポリマー及びコポリマーからなる群から選択される。特に望ましいスチレンコポリマーには、スチレン−アクリロニトリルコポリマーが含まれる。一つの特に望ましい態様において、スチレンホモポリマーは、ポリマーマトリックス中のポリマー(即ちポリマー成分)の合計重量の、50重量%又はそれ以上、好ましくは75重量%又はそれ以上、なお更に好ましくは85重量%又はそれ以上を占め、100重量%又はそれ以下(100重量%を含む)を占めることができる。
【0029】
ポリマーマトリックスは赤外線減衰剤も含有する。この赤外線減衰剤はカーボンブラック及びペトコークスから選択される。望ましくは、カーボンブラックは、使用されるとき2重量%よりも高い濃度で存在するが、ペトコークスが2重量%又はそれ以上でなお望ましいであろう。赤外線減衰剤は、3重量%又はそれ以上、4重量%又はそれ以上の濃度でも存在し得る。赤外線減衰剤は、典型的には、5重量%又はそれ以下の濃度で存在する。2重量%よりも低い濃度で、この添加剤は、一般的に、注目すべき熱伝導率への効果を殆ど提供しない。5重量%よりも高い濃度で、この添加剤は、熱伝導率に一層多く影響せず、増加した濃度は、フォームのコスト並びにフォーム製造及び物理的特性での難題を更に増加させる。
【0030】
特に望ましいカーボンブラック赤外線減衰剤はサーマルブラックである。サーマルブラックは、空気の非存在下でのチャンバー内での、気相炭化水素熱分解の生成物である。サーマルブラック粒子は、(例えば板状形状を有するグラファイトとは対照的に)球状又は近似球状である傾向がある。この赤外線減衰剤は本発明のフォームを通過する熱伝導率を低下させる。
【0031】
赤外線減衰剤は、100ナノメートル(nm)又はそれ以上で、50,000nm又はそれ以下、典型的には10,000nm又はそれ以下、1,000nm又はそれ以下、700nm又はそれ以下であってよい範囲内の平均粒子サイズを有する。100nmよりも小さい平均粒子サイズを有する赤外線減衰剤は、塊になり、ポリマーマトリックス中の有効な分散を妨害する傾向がある。50,000nmよりも大きい粒子サイズは、得られるポリマーフォーム中の連続気泡構造の形成を、望ましくなく誘発する傾向がある。
【0032】
ポリマーマトリックスは、更に、臭素化難燃剤を含む。この臭素化難燃剤は、公知であるか又は押出ポリマーフォーム中に使用するために公知である、任意の臭素化難燃剤であってもよい。適切な臭素化難燃剤の例には、普通に使用される化合物、例えばヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)並びに臭素化ポリマー化合物、例えば臭素化ポリスチレン、臭素化ブタジエン及び臭素化スチレン−ブタジエンコポリマーが含まれる。臭素化難燃剤は、ポリマーマトリックス中に、全ポリマー成分重量基準で、2.5重量%又はそれ以上、好ましくは3重量%又はそれ以上の濃度で存在し、望ましくは、3.5重量%又はそれ以下の濃度で存在する。ドイツ防火試験においてB2評価を達成するために、2.5重量%又はそれ以上の濃度が必須である。製造コストを妥当に維持するために、3.5重量%又はそれ以下の濃度が望ましい。
【0033】
ポリマーマトリックスは、なお更に、ポリマーマトリックス中に分散された、全ポリマー成分重量基準の有機エポキシ安定剤を含有する。殆どのエポキシ含有有機化合物は、適切な有機エポキシ安定剤である。臭素化芳香族エポキシ樹脂は、有機エポキシ安定剤以外のポリマー成分をあまり可塑化しないと思われるので、これらが好ましい。臭素化芳香族エポキシ樹脂の例には、これらに限定するものではないが、テトラブロモビスフェノールAをベースにするエポキシ樹脂、例えばF2200HM(ICL Industrial Products)及びDEN439(The Dow Chemical Co.)が含まれる。非臭素化ノボラック系エポキシ樹脂も適しており、これには、Araldite(登録商標)ECN−1273及びECN−1280が含まれる(Aralditeは、Huntsman Advance Materials America,Inc.の商標である)。有用な脂肪族エポキシ物質には、プロピレンオキシド及び脂肪族系エポキシ樹脂、例えばPlas−chek(登録商標)775脂肪族エポキシ樹脂(Plas−chekは、Ferro Chemical Co.の商標である)が含まれる。望ましくは有機エポキシ安定剤はエポキシクレゾールノボラックである。
【0034】
有機エポキシ安定剤は、全ポリマー成分重量基準で、少なくとも0.1重量%の濃度で存在する。一般的に、有機エポキシ安定剤の濃度は、全ポリマー成分重量基準で、0.3重量%又はそれ以下である。それは、この濃度よりも上では、改良を殆ど示さないからである。
【0035】
ポリマーマトリックスは、更に、追加の添加剤、例えばポリマーフォーム中で一般的なものを含有していてよい。適切な添加剤の例には、下記のもの、即ちクレー、例えば天然吸収クレー(例えばカオリナイト及びモンモリロナイト)及び合成クレー;核生成剤(例えばタルク及びケイ酸マグネシウム);滑剤(例えばステアリン酸カルシウム及びステアリン酸バリウム)並びに気泡サイズ増大剤、例えば低密度ポリエチレンの、何れか1種又はそれ以上の任意の組合せが含まれる。
【0036】
発泡性ポリマー組成物の発泡剤は、二酸化炭素並びに水及びC2-3ROHの一方又は両方を含有しており、これらを含んでいてよい。二酸化炭素及び水は、環境的に許容される発泡剤であり、これらの発泡剤の使用は、押出ポリマーフォームを製造する際に環境的影響を最小にする。驚くべきことに、二酸化炭素、水及びC2-3ROHが、歴史的に、押出ポリマーフォーム上に有していた有害な影響は、発泡性ポリマー組成物中に、本願の特許請求の範囲に記載された成分の組合せを使用する結果として、本発明のプロセスによって製造されたフォームにおいて明らかではない。
【0037】
二酸化炭素は、発泡性ポリマー組成物中に、全ポリマー成分重量基準で、3重量%又はそれ以上で、5重量%又はそれ以下、好ましくは4重量%又はそれ以下の範囲内の濃度で存在する。二酸化炭素に加えて、この発泡剤は、水及びC2-3ROHから選択された少なくとも1種の成分を含む。C2-3ROHの中で、エタノールが最も好ましく、イソプロパノールも典型的である。
【0038】
水は、典型的には、発泡性ポリマー組成物中に、全ポリマー成分重量基準で、0.1重量%又はそれ以上、好ましくは0.3重量%又はそれ以上で、0.7重量%又はそれ以下、典型的には0.5重量%又はそれ以下の範囲内の濃度で存在する。1種又はそれ以上のC2-3ROHが存在する場合、水は存在しなくてよい。
【0039】
1種又は1種より多いC2-3ROHが、水に加えて又は水の代わりに存在することができる。C2-3ROHの濃度は、全ポリマー成分重量基準で、一般的に0.1重量%又はそれ以上、好ましくは0.3重量%又はそれ以上で、典型的には5重量%又はそれ以下、一般的に3重量%又はそれ以下、1重量%又はそれ以下、0.7重量%又はそれ以下又は0.5重量%又はそれ以下である。水が存在する場合、C2-3ROHは存在しなくてよい。
【0040】
望ましくは、発泡剤は、更にイソブタンを含む。イソブタンはポリマーフォームの熱伝導率及び密度を低下させるために望ましい。しかしながら、発泡剤としてイソブタンを含有させると、得られるポリマーフォームの難燃性が低下する(即ちフォームを一層可燃性にする)。それにもかかわらず、本発明の発泡性ポリマー組成物及び得られるポリマーフォーム中の成分の発明的選択は、なお、得られるポリマーフォームを、ドイツ防火試験におけるB2評価を達成できるようにする。この発泡性ポリマー組成物は、イソブタンを含まなくてよく又は全ポリマー成分重量基準で0.5重量%又はそれ以上で、2.5重量%又はそれ以下、好ましくは1.8重量%又はそれ以下のイソブタンを含むことができる。
【0041】
前記発泡剤は、更に、水、C2-3ROH、二酸化炭素及びイソブタンと並んで、追加の発泡剤を含むことができる。追加の発泡剤には、ケトン及びエーテル並びに飽和及び不飽和ヒドロフルオロカーボン、特に150よりも小さい、好ましくは75又はそれ以下、更に好ましくは50又はそれ以下、なお更に好ましくは25又はそれ以下の地球温暖化ポテンシャル(global warming potential)を有するヒドロフルオロカーボンが含まれる。この発泡剤は水、C2-3ROH、二酸化炭素及びイソブタン以外の発泡剤を含有していなくてもよい。
【0042】
本発明プロセスは、その最も広い面において、押出機から発泡性ポリマー組成物を、製造し、押出すために使用される押出プロセスに独立である。当業者は、プランク押出方法、ストランド化フォーム方法、連続押出方法及びアキュームレーター−押出機方法を含む、ポリマーフォームを製造するための多数の適切な押出プロセスが存在することを認識している。これらの方法の全部が、本発明の押出プロセスを形成するために、前記の発泡性ポリマー組成物で使用するために適している。
【0043】
押出機内で発泡性ポリマー組成物を用意するための一つの一般的な方法は下記の通りである。ペレット化した形態のポリマーを、ポリマーペレット中のポリマー組成物の軟化温度よりも高い温度で、押出機バレルを有する押出機の中に供給する。赤外線減衰剤、安定剤及び難燃剤の任意の1種又は1種より多い組合せを含む添加剤を、ポリマーペレットの中に含有させることができ、ペレットと共に押出機の中に添加することができ又はポリマーペレットの添加から下流で押出機に添加することができる。望ましくは、発泡剤を添加する前に、ポリマー、赤外線減衰剤、安定剤、難燃剤及び任意の他の添加剤を混合して、均質に混合された組成物を形成する。押出機内で、1種又は1種より多い発泡剤を、軟化したポリマーの中に、初期圧力で又は初期圧力を超える圧力で注入することによって、ポリマーの添加から下流で、発泡剤を軟化したポリマーに添加することが一般的である。次いで、押出機は、発泡剤(単数又は複数)を軟化したポリマーの中に混合することができる。典型的には化学的発泡剤の形態で、発泡剤は、ペレットを押出機に添加する前に、ポリマーペレット中に存在していてもよい。
【0044】
本発明のプロセスは、発泡性ポリマー組成物を、押出機から、初期圧力よりも低い圧力の環境の中に押出し、次いで、発泡性ポリマー組成物を、ポリマーフォームに膨張させることを必要とする。発泡性ポリマー組成物は、それが、発泡性組成物の軟化温度よりも低くまで、好ましくは、発泡性組成物中のポリマー組成物の軟化温度よりも低くまで冷却されないという条件で、押出す前に加熱又は冷却することができる。発泡性ポリマー組成物を、押出機から発泡ダイに通して大気圧力の中に押出すことが一般的である。この発泡ダイは、得られるポリマーフォームの全体形状を規定する、それを通ってフォームが通過する開口を有する。ダイ開口は長方形、正方形、円形、長円形又は非対称形状を含む、どのような形状も有することができる。発泡ダイは、発泡性ポリマー組成物が複数のストランド、複数のシート又は形状の任意の組合せとして発泡ダイを出るように、複数の開口を有することができる。
【0045】
発泡性組成物はそれが膨張するとき冷却する。冷却は、冷却媒体(例えば急冷した空気若しくは冷却したプレートとの接触)又はアニール媒体(例えば暖めた空気若しくは暖めたプレートとの接触)の積極的な適用有り又は無しで起こり得る。しばしば、冷却は、例えば発泡剤が蒸発するとき、蒸発冷却により、冷却媒体の積極的な適用無しで起こる。発泡性ポリマー組成物が冷却するとき、それは、最終押出ポリマーフォームに寸法的に安定化する。
【0046】
本発明のプロセスは本発明の押出ポリマーフォームを製造する。押出ポリマーフォームは、本発明のプロセス面の発泡性ポリマー組成物から形成し、そうして、発泡性ポリマー組成物の特徴の多くは、また、押出ポリマーフォームの特徴である。押出ポリマーフォームは、その中に分散された気泡を有する熱可塑性ポリマーマトリックスを含む。この熱可塑性ポリマーマトリックスは、発泡性ポリマー組成物の熱可塑性ポリマーマトリックスについて記載された通りであり、また発泡性ポリマー組成物について記載されたような熱可塑性ポリマーマトリックス中のポリマー成分の全部を占めるポリマー成分を含有する。熱可塑性ポリマーマトリックスは、更に、発泡性ポリマー組成物について特徴付けられたような濃度で、赤外線減衰剤、臭素化難燃剤及びエポキシ安定剤を含む。
【0047】
得られる押出ポリマーフォームの特徴的特性は、押出ポリマーフォームを製造するために使用された成分の特定の組合せによって作られる驚くべき結果を示す。本明細書において分かり易さのために、「押出ポリマーフォーム」に対する参照は、本発明のプロセスから得られる押出ポリマーフォーム及び本発明のポリマーフォームを指す。
【0048】
押出ポリマーフォームは、望ましくは、37キログラム/立方メートル(kg/m3)又はそれ以下の密度を有する。より低いコストのフォーム及び取り扱いの容易性のために、より低い密度が望ましい。典型的には、押出ポリマーフォームは、30kg/m3又はそれ以上の密度を有し、32kg/m3又はそれ以上、33kg/m3又はそれ以上、34kg/m3又はそれ以上、35kg/m3又はそれ以上、36kg/m3又はそれ以上もの密度を有することができる。ISO845−95の方法に従って、押出ポリマーフォームの密度を測定する。30kg/m3よりも低い密度を有するポリマーフォームは、劣った寸法的及び機械的特性(例えば圧縮強度)を有する難点があるという傾向がある。
【0049】
押出ポリマーフォームは、単峰性気泡サイズ分布を有することができ、望ましくは有する。単峰性気泡サイズ分布を有するポリマーフォームは、典型的には、多峰性(マルチモダール)気泡サイズ分布を有するポリマーフォームよりも低い熱伝導率を有する。
【0050】
押出ポリマーフォームは、0.12ミリメートル(mm)又はそれ以上の平均気泡サイズを有し、0.2mm又はそれ以上、0.3mm又はそれ以上、0.4mm又はそれ以上もの平均気泡サイズを有することができる。ポリマーフォームは、0.5mm又はそれ以下の平均気泡サイズを有することができ、望ましくは有する。0.12mm〜0.5mmの範囲内の平均気泡サイズを有するポリマーフォームは、ポリマーフォームを通過する熱伝導率を最小にするために理想的である傾向がある。ASTM方法D−3576に従って、ポリマーフォームの平均気泡サイズを測定する。
【0051】
前記フォームは、望ましくは一般的に30%よりも少ない、好ましくは20%又はそれ以下、更に好ましくは10%又はそれ以下、なお更に好ましくは5%又はそれ以下、なお更に好ましくは2%又はそれ以下の連続気泡含有量を有する独立気泡フォームであり、0%の連続気泡含有量を有し得る。ASTM方法D6226−05に従って、連続気泡含有量を決定する。
【0052】
押出ポリマーフォームは、35ミリワット/メートル−ケルビン(mW/m・K)又はそれ以下、好ましくは33mW/m・K又はそれ以下、更に好ましくは31mW/m・K又はそれ以下、なお更に好ましくは30mW/m・K又はそれ以下、最も好ましくは29mW/m・K又はそれ以下の熱伝導率を有する。一般的に、押出ポリマーフォームは、28mW/m・K又はそれ以上の熱伝導率を有する。試験方法EN8301に従って、ポリマーフォームの熱伝導率を測定する。
【0053】
押出ポリマーフォームは、高品質表面外観を有し得、一般的に有する。フォームの主表面上に中心が置かれ、フォームの幅の80%まで伸びる、フォームの任意の主表面の任意の200平方センチメートル部分の、98%又はそれ以上、好ましくは99%又はそれ以上、最も好ましくは100%が、欠陥を有しない場合、フォームは、「高品質の表面外観」を有する。「欠陥(defect)」は、ポリマーフォームの主表面を通って、フォームの1個より多い気泡への接近を与える、ポリマー中の不連続性である。欠陥は、発泡ダイから直接的に現れ、発泡ダイの後でフォームの中に導入された、意図的に刻まれた溝(groove)又はスライスとは区別される。
【0054】
前記押出ポリマーフォームは、DIN4102に従ったドイツB2防火試験において十分に良く性能を発揮し、防火試験におけるB2評価を達成する。
【実施例】
【0055】
下記の実施例は本発明の態様を示す機能を果たす。
【0056】
比較例A及び実施例1
大きいグラファイト対小さいカーボンブラック
80pphの140,000g/モルMwのポリスチレンホモポリマー、20pphの200,000g/モルMwのポリスチレンホモポリマー、2pphの赤外線減衰剤(種類については下記を参照)及び0.4pphの低密度ポリエチレン(DOWLEX(登録商標)SC2107、DOWLEXは、The Dow Chemical Companyの商標である)、0.2pphのステアリン酸バリウム、0.25pphのエポキシクレゾールノボラック1280並びに2.5pphのヘキサブロモシクロドデカンを、単軸スクリュー押出機中で組合せ、そして加熱して、溶融物を形成し、次いで、3pphの二酸化炭素、0.63pphの水及び1.5pphのイソブタンを、180バール及び200℃で注入することによって、発泡性ポリマー組成物を製造する。実施例におけるpphに対する全ての参照は、総ポリマー重量基準で100当たりの重量部である。このポリマーを、60キログラム/時の速度で供給する。この発泡性ポリマー組成物を混合し、次いで、その温度を125℃に調節し、その圧力を約90バールに調節する。この発泡性ポリマー組成物を、50mmの幅及び前発泡を防止するのに充分な僅かに小さい厚さを有するスリットダイ(発泡ダイ)に通して、1気圧の圧力及び25℃の環境の中に押し出す。それがキャリブレーターを通過するとき、発泡性ポリマー組成物をポリマーフォームに膨張させて、13〜15cmの幅及び20〜35mmの厚さを有するポリマーフォームを形成する。
【0057】
比較例Aのための赤外線減衰剤は、実施例1のために使用したカーボンブラックよりも大きい平均粒子サイズを有する。比較例Aのために、Kropfmuel AGからのUF1グレード天然グラファイト(3000nmの平均粒子サイズ)を使用する。実施例1のために、280ナノメートルの平均粒子サイズを有するThermax(登録商標)NT−991(ThermaxはCancarbの商標である)を使用する。比較例Aは、37.3kg/m3の密度、0.1mmの平均気泡サイズ、28.9mW/m・Kの熱伝導率、13.2cmの幅及び23mmの厚さを有する。実施例1は、33.6kg/m3の密度、0.3mmの平均気泡サイズ、31.3mW/m・Kの熱伝導率、15cmの幅及び32ミリメートルの厚さを有する。比較例A及び実施例1の両方は、B2防火試験に合格し、単峰性気泡サイズ分布を有する。
【0058】
注目すべきことに、重量基準での等しい含有レベル(この場合は、2pph)で、より多数の、より小さい粒子サイズの赤外線減衰剤が発泡性組成物中に存在すると、発泡の間により多くの核生成部位をもたらす。より多くの核生成部位は、典型的には、核生成のより大きい範囲に至り、これは、フォームのつぶれのために、より高い密度及びより小さい気泡を生成する。しかしながら、予想外に、より小さいカーボンブラック(280nm)は、より大きい粒子サイズのグラファイト(3000nm)よりも、より低い密度及び大きい平均気泡サイズのフォームを作った。グラファイト含有フォームは、望ましいものよりも大きい(>37kg/m3)密度及び望ましいものよりも小さい(150nm及びそれ以下)平均気泡サイズを有する。比較例A及び実施例1は、カーボンブラックが、等しい含有レベルで、グラファイトが、一桁大きい粒子サイズを有し、より僅かな数で存在するときでも、グラファイトよりも少ない核生成であることを示している。
【0059】
比較例B〜F及び実施例2〜4
異なった発泡剤組成物での、大きいグラファイト対小さいカーボンブラック
比較例B〜F及び実施例2〜4を、表1において同定されたような発泡剤組成物及び赤外線減衰剤を使用する以外は、比較例Aと同様の方法で製造する。3000nmの赤外線減衰剤は、比較例Aにおけるのと同じグラファイトである。280nmの赤外線減衰剤は、実施例1におけるようなカーボンブラックである。得られるフォーム特性も、表1において同定される。表1において、CO2は二酸化炭素であり、iC4はイソブタンであり、EtOHはエタノールであり、H2Oは水であり、K−値は熱伝導率であり、Wはフォーム幅であり、そしてTはフォーム厚さである。ISO845−95に従って密度を測定し、ASTM方法D−3576に従って気泡サイズを測定し、EN8301に従って熱伝導率(k−値)を測定する。それぞれのフォームは、単峰性気泡サイズ分布を有し、B2防火試験に合格する。
【0060】
【表1】

【0061】
これらのフォームは、本発明の驚くべき結果の支持において、多数の面を示している。
【0062】
比較例B及びCは、二酸化炭素及びイソブタン(iC4)からなる発泡剤の使用が、大きいグラファイト又はより小さいカーボンブラック赤外線減衰剤の存在下で、望ましい密度又は気泡サイズを作るために不充分であることを示している。
【0063】
比較例D及び実施例2は、水と一緒の二酸化炭素の使用が、より大きいグラファイトで望ましい気泡サイズを有するフォームを作ることができないにもかかわらず、より小さいカーボンブラック添加剤を使用して望ましい密度及び気泡サイズを有するフォームを作ることができることを示している。実際に、より多量のカーボンブラック添加剤が存在するにもかかわらず、核生成は、より大きいグラファイトのようにフォームに負の影響を与えない。グラファイトフォームのより小さい厚さ(T)は、グラファイトがより大きい程度まで核生成し、最終フォームにおける、フォームつぶれ並びに随伴する密度上昇及び気泡サイズ減少になるという想定と一致する。
【0064】
同様の観察は、比較例Eと実施例3との間及び比較例Fと実施例4との間で明らかである。これらのフォームは、本発明のプロセスの範囲内の異なった発泡剤組成物を使用し、より大きいグラファイト添加剤ではなく、より小さいカーボンブラックで、望ましい特性を有するフォームを製造する。
【0065】
比較例G及び実施例5〜10
赤外線減衰剤としてのペトコークス
比較例G及び実施例5〜10を、表2において同定された発泡剤組成物を使用し、赤外線減衰添加剤として、3000nmのグラファイトの代わりに3000nmのペトコークス(ドイツ国のH.C.CarbonからのグレードHC59803)を使用する以外は、比較例A、B及びD〜Fと同様の方法で製造する。ペトコークスは、比較例A、B及びD〜Fにおいて使用された天然に産出するグラファイトとは反対に人工のグラファイトである。表2は、比較例G及び実施例5〜10について予想される、得られるポリマーフォーム特性を同定する。それぞれのフォームは、単峰性気泡サイズ分布を有し、B2防火試験に合格する。
【0066】
【表2】

【0067】
比較例Gは、CO2及びイソブタン単独の使用が、2pphの3000nmのペトコークスの存在下で高密度及び小さい気泡サイズになるフォームのつぶれを排除するために不充分であることを示している。これは、2pphの3000nmの天然グラファイトを使用する比較例Bと同様である。しかしながら、天然グラファイトとは違って、3000nmのペトコークスは、CO2並びに水及びエタノールの一方又は両方によって、良好な品質のフォームを製造した。これを、3000nmの天然グラファイトを使用する比較例E及びFと対比されたい。特に、実施例7を比較例Fと、実施例9を比較例Eと比較されたい。このデータは、B2防火試験に合格する、低密度(37kg/m3又はそれ以下)及び小さい気泡サイズ(0.12mm又はそれ以下)のフォームを製造するための能力における、類似のサイズ及び含有量の天然グラファイトに対する、ペトコークスの驚くべき性能を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出機内で初期圧力及び温度で発泡性ポリマー組成物を用意し、次いで、該発泡性ポリマー組成物を、初期圧力よりも低い圧力の雰囲気中に押出し、そして該発泡性ポリマー組成物をポリマーフォームに膨張させることを含んでなる、押出されたポリマーフォームを製造する方法であって、前記発泡性ポリマー組成物が、
a.熱可塑性ポリマーマトリックス中の全てのポリマーを含むポリマー成分を含んでなる熱可塑性ポリマーマトリックス、
b.熱可塑性ポリマーマトリックス中に分散された、3〜5重量%の二酸化炭素、5重量%以下の炭素数2〜3のアルコール、0.7重量%以下の水及び2.5重量%以下のイソブタンを含む発泡剤組成物(ここで、該発泡剤は、少なくとも0.1重量%の、水及び/又は炭素数2〜3のアルコールを含む)、
c.2重量%又はそれ以上で5重量%又はそれ以下の、熱可塑性ポリマーマトリックス中に分散された、100〜700ナノメートルの平均粒子サイズを有するカーボンブラック及びペトコークスからなる群から選択される赤外線減衰剤、
d.2.5〜3.5重量%の、熱可塑性ポリマーマトリックス中に分散された臭素化難燃剤並びに
e.少なくとも0.1重量%の、ポリマーマトリックス中に分散されたエポキシ安定剤
(ここで、全ての重量%は、全ポリマー成分重量に対するものである)を含んでなり、
得られるポリマーフォームが30〜37kg/m3の範囲内の密度、0.15mmよりも大きく0.4mm又はそれ以下の範囲内の平均気泡サイズを有する単峰性気泡サイズ分布、28〜35ミリワット/メートル・ケルビンの範囲内の熱伝導率を有し、かつドイツB2防火試験に合格することによって特徴付けられる方法。
【請求項2】
前記赤外線減衰剤が少なくとも2重量%のペトコークス、2重量%よりも多いカーボンブラック又は両方を含む請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記ポリマー成分の少なくとも50重量%がアルケニル芳香族ポリマーである請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記アルケニル芳香族ポリマーがポリスチレンホモポリマーである請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
前記発泡剤組成物が、全ポリマー成分重量基準で、0.5〜1.5重量%の濃度範囲内のイソブタンを含む請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記エポキシ安定剤がエポキシクレゾールノボラックである請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
a.熱可塑性ポリマーマトリックス中の全てのポリマーを含むポリマー成分を含んでなり、その中に分散された気泡を有する熱可塑性ポリマーマトリックス、
b.2重量%又はそれ以上で5重量%又はそれ以下の、熱可塑性ポリマーマトリックス中に分散された、100〜700ナノメートルの平均粒子サイズを有するカーボンブラック及びペトコークスからなる群から選択される赤外線減衰剤、
c.2.5〜3.5重量%の、熱可塑性ポリマーマトリックス中に分散された臭素化難燃剤並びに
d.少なくとも0.1重量%の、ポリマーマトリックス中に分散されたエポキシ安定剤
(ここで、重量部は全ポリマー成分重量に対するものである)
を含んでなるポリマーフォームであって、
30〜37kg/m3の範囲内の密度、0.1〜0.4mmの範囲内の平均気泡サイズを有する単峰性気泡サイズ分布、28〜35ミリワット/メートル・ケルビンの範囲内の熱伝導率を有しかつドイツB2防火試験に合格することによって特徴付けられるポリマーフォーム。
【請求項8】
前記赤外線減衰剤が少なくとも2重量%のペトコークス、2重量%よりも多いカーボンブラック又は両方を含む請求項7に記載のポリマーフォーム。
【請求項9】
前記ポリマー成分が少なくとも50重量%のアルケニル芳香族ポリマーである請求項7に記載のポリマーフォーム。
【請求項10】
前記アルケニル芳香族ポリマーがポリスチレンホモポリマーである請求項7に記載のポリマーフォーム。
【請求項11】
前記エポキシ安定剤がエポキシクレゾールノボラックである請求項7に記載のポリマーフォーム。
【請求項12】
前記ポリマーフォームが主表面を有し、ポリマーフォームの主表面上に中心が置かれ、フォームの幅の80%まで伸びている、該主表面の任意の200cm2部分の98%又はそれ以上が欠陥を有しない請求項7に記載のポリマーフォーム。

【公表番号】特表2012−528921(P2012−528921A)
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−514027(P2012−514027)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【国際出願番号】PCT/US2010/036802
【国際公開番号】WO2010/141400
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】