説明

難燃性樹脂組成物およびそれからの成形品

【課題】高度な難燃性、良好な耐熱性および物性を有する植物由来原料を用いた難燃性樹脂組成物およびそれからの成形品を提供する。
【解決手段】(A)ステレオコンプレックスポリ乳酸(A−1成分)を少なくとも50重量%含有する樹脂成分(A成分)100重量部に対して、(B)下記式(1)で表される有機リン化合物(B成分)1〜100重量部を含有する難燃性樹脂組成物。


(式中、X、Xは同一もしくは異なり、下記式(2)で表される芳香族置換アルキル基である。)


(式中、ALは炭素数1〜5の分岐状または直鎖状の脂肪族炭化水素基であり、Arは置換基を有しても良いフェニル基、ナフチル基、またはアントリル基である。nは1〜3の整数を示し、ArはAL中の任意の炭素原子に結合することができる。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高度な難燃性、良好な耐熱性および物性を有する植物由来原料を用いた難燃性樹脂組成物およびそれからの成形品に関する。さらに詳しくは特定の有機リン化合物を含有しかつ実質的にハロゲンフリーの難燃性樹脂組成物およびそれからの成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂製の成形品を得るための原料として、一般的にポリプロピレン(PP)、アクリロニトリル―ブタジエン―スチレン(ABS)、ポリアミド(PA6、PA66)、ポリエステル(PET、PBT)、ポリカーボネート(PC)等の樹脂が使用されている。しかしながら、これらの樹脂は石油資源から得られる原料を用いて製造されており、近年、石油資源の枯渇や地球環境等の問題が懸念されており、植物などの生物起源物質から得られる原料を用いた樹脂の製造が求められている。特に地球環境の問題を考えるとき、植物由来原料を用いた樹脂は、使用後に焼却されても植物の生育時に吸収した二酸化炭素量を考慮すると、炭素の収支として中立であるというカーボンニュートラルという考えから、地球環境への負荷の低い樹脂であると考えられる。
【0003】
一方、これらの植物由来原料を用いた樹脂を工業材料、特に電気/電子関係用部品、OA関連用部品または自動車部品に利用する場合、安全上の問題から難燃性の付与が必要である。
これまでにも、植物由来原料を用いた樹脂、特にポリ乳酸樹脂の難燃化に関しては種々の試みがなされており、ある程度の難燃化は達成されている。しかしながら、これらの難燃化処方は多量の難燃剤を用いたものであり、さらに難燃剤の特性から樹脂本来の物性や耐熱性を損なうものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−164014号公報
【特許文献2】特開2004−277552号公報
【特許文献3】特開2005−023260号公報
【特許文献4】特開2005−139441号公報
【特許文献5】特開2007−246730号公報
【特許文献6】特開2008−019294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の第1の目的は、高度な難燃性、良好な耐熱性および物性を有する植物由来原料を用いた難燃性樹脂組成物およびそれからの成形品を提供することにある。
本発明の第2の目的は、特定の有機リン化合物を含有し、かつ実質的にハロゲンフリーの難燃性樹脂組成物およびそれからの成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らの研究によれば、前記本発明の目的は、(A)ステレオコンプレックスポリ乳酸(A−1成分)を少なくとも50重量%含有する樹脂成分(A成分)100重量部に対して、(B)下記式(1)で表される有機リン化合物(B成分)1〜100重量部を含有する難燃性樹脂組成物およびそれからの成形品により達成される。
【0007】
すなわち、本発明によれば、
1.(A)ステレオコンプレックスポリ乳酸(A−1成分)を少なくとも50重量%含有する樹脂成分(A成分)100重量部に対して、(B)下記式(1)で表される有機リン化合物(B成分)1〜100重量部を含有する難燃性樹脂組成物、
【化1】

(式中、X、Xは同一もしくは異なり、下記式(2)で表される芳香族置換アルキル基である。)
【化2】

(式中、ALは炭素数1〜5の分岐状または直鎖状の脂肪族炭化水素基であり、Arは置換基を有しても良いフェニル基、ナフチル基、またはアントリル基である。nは1〜3の整数を示し、ArはAL中の任意の炭素原子に結合することができる。)
2.A−1成分のステレオコンプレックスポリ乳酸が、L−乳酸単位を90モル%以上含有するポリL−乳酸(α−1成分)とD−乳酸単位を90モル%以上含有するポリD−乳酸(β−1成分)を含有しα−1成分とβ−1成分の重量比が10:90〜90:10の範囲にある前項1記載の難燃性樹脂組成物、
3.A−1成分のステレオコンプレックスポリ乳酸は、示差走査熱量計(DSC)測定の昇温過程における融解ピークのうち195℃以上の割合が80%以上である前項1記載の難燃性樹脂組成物、
4.樹脂成分(A成分)中のステレオコンプレックスポリ乳酸(A−1成分)以外の樹脂成分(A−2成分)がA−1成分以外のポリエステル樹脂(PEst)、ポリフェニレンエーテル樹脂(PPE)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリアミド樹脂(PA)、ポリオレフィン樹脂(PO)、スチレン系樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)およびポリエーテルイミド樹脂(PEI)からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂成分である前項1記載の難燃性樹脂組成物、
5.さらに、(C)充填剤(C成分)1〜200重量部を含有する前項1記載の難燃性樹脂組成物、
6.さらに、(D)耐衝撃改質剤(D成分)1〜100重量部を含有する前項1記載の難燃性樹脂組成物、
7.有機リン化合物(B成分)は、下記式(3)および下記式(4)で表される有機リン化合物よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物である前項1記載の難燃性樹脂組成物、
【化3】

(式中、R、Rは同一または異なっていてもよく、置換基を有しても良いフェニル基、ナフチル基、またはアントリル基である。R、R、R、Rは同一または異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜4の分岐状または直鎖状のアルキル基、置換基を有しても良いフェニル基、ナフチル基、またはアントリル基から選択される置換基である。)
【化4】

(式中、ArおよびArは、同一又は異なっていても良く、フェニル基、ナフチル基またはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。R11、R12、R13およびR14は、同一又は異なっていても良く、水素原子、炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基またはフェニル基、ナフチル基もしくはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。ALおよびALは、同一又は異なっていても良く、炭素数1〜4の分岐状または直鎖状の脂肪族炭化水素基である。ArおよびArは、同一又は異なっていても良く、フェニル基、ナフチル基またはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。pおよびqは0〜3の整数を示し、ArおよびArはそれぞれALおよびALの任意の炭素原子に結合することができる。)
8.有機リン化合物(B成分)が、下記式(5)で表される前項1記載の難燃性樹脂組成物、
【化5】

(式中、R21、R22は同一もしくは異なり、フェニル基、ナフチル基またはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。)
9.有機リン化合物(B成分)が、下記式(1−a)で示される化合物である前項1記載の難燃性樹脂組成物、
【化6】

10.有機リン化合物(B成分)が、下記式(6)で表される前項1記載の難燃性樹脂組成物、
【化7】

(式中、R31およびR34は、同一又は異なっていても良く、水素原子または炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基である。R33およびR36は、同一または異なっていても良く、炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基である。R32およびR35は、同一または異なっていてもよく、フェニル基、ナフチル基またはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。)
11.有機リン化合物(B成分)が、下記式(1−b)で示される化合物である前項1記載の難燃性樹脂組成物、
【化8】

12.有機リン化合物(B成分)が、下記式(7)で表される前項1記載の難燃性樹脂組成物、
【化9】

(式中、ArおよびArは、同一又は異なっていても良く、フェニル基、ナフチル基またはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。R11、R12、R13およびR14は、同一又は異なっていても良く、水素原子、炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基またはフェニル基、ナフチル基もしくはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。ALおよびALは、同一又は異なっていても良く、炭素数1〜4の分岐状または直鎖状の脂肪族炭化水素基である。ArおよびArは、同一又は異なっていても良く、フェニル基、ナフチル基またはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。pおよびqは0〜3の整数を示し、ArおよびArはそれぞれALおよびALの任意の炭素原子に結合することができる。)
13.有機リン化合物(B成分)が、下記式(1−c)で示される化合物である前項1記載の難燃性樹脂組成物、
【化10】

14.有機リン化合物(B成分)が、下記式(8)で表される前項1記載の難燃性樹脂組成物、
【化11】

(式中、R41およびR44は、同一又は異なっていても良く、水素原子、炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基またはフェニル基、ナフチル基もしくはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。R42、R43、R45およびR46は、同一または異なっていても良く、フェニル基、ナフチル基またはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。)
15.有機リン化合物(B成分)が、下記式(1−d)で示される化合物である前項1記載の難燃性樹脂組成物、
【化12】

16.耐衝撃性改質剤(D成分)の少なくとも50重量%が水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーである前項1記載の難燃性樹脂組成物、
17.耐衝撃性改質剤(D成分)の少なくとも50重量%が、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン三元共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン三元共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン三元共重合体(SEEPS)から選択される少なくとも1種の水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーである前項1記載の難燃性樹脂組成物、
18.有機リン化合物(B成分)の酸価が0.7mgKOH/g以下である前項1記載の難燃性樹脂組成物、
19.樹脂成分(A成分)100重量部に対して、結晶化促進剤0.01〜30重量部を含む前項1記載の難燃性樹脂組成物、
20.UL−94規格の難燃レベルにおいて、少なくともV−2を達成する前項1記載の難燃性樹脂組成物、
21.前項1記載の難燃性樹脂組成物より形成された成形品、
が提供される。
【0008】
本発明によれば、樹脂本来の特性を損なうことなく、高い難燃性を達成する植物由来原料を用いた難燃性樹脂組成物が得られる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の難燃性樹脂組成物およびそれから形成された成形品は、従来の植物由来原料を用いた樹脂組成物に比べて下記の利点が得られる。
(i)実質的にハロゲン含有難燃剤を使用することなく高度な難燃性を有する植物由来原料を用いた樹脂組成物が得られる。
(ii)難燃剤としての有機リン化合物は、植物由来原料を用いた樹脂に対して優れた難燃効果を有するので、比較的少ない使用量でもV−2レベル、特に好ましくはV−0レベルが達成される。
(iii)難燃剤として使用する有機リン化合物の構造並びに特性に起因して、植物由来原料を用いた樹脂の成形時または成形品の使用時に、植物由来原料を用いた樹脂の熱劣化をほとんど起さず、耐熱性に優れた樹脂組成物が得られる。従って難燃性、機械的強度および耐熱性がいずれもバランスよく優れた組成物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明の難燃性樹脂組成物についてさらに詳細に説明する。
本発明における樹脂成分(A成分)中、少なくとも50重量%の含有率であるステレオコンプレックスポリ乳酸(A−1成分)は、特開昭63−241024号公報およびMacromolecules,24,5651(1991)に記載のとおり、L−乳酸単位からなるポリL−乳酸(α−1成分)とD−乳酸単位からなるポリD−乳酸(β−1成分)を溶液あるいは溶融状態で混合することにより、ステレオコンプレックスポリ乳酸が形成されることが知られている。
【0011】
α−1成分であるポリL−乳酸は、好ましくは90〜100モル%のL−乳酸単位、および0〜10モル%のL−乳酸以外の共重合単位からなる。
β−1成分であるポリD−乳酸は、好ましくは90〜100モル%のD−乳酸単位、および0〜10モル%のD−乳酸以外の共重合単位からなる。すなわち、α−1成分もしくはβ−1成分の光学純度は90〜100モル%であることが好ましく、光学純度が90モル%より低い場合は、結晶性や融点が低下し、ステレオコンプレックスの形成が困難となる。よって、α−1成分もしくはβ−1成分の融点は、好ましくは160℃以上、より好ましくは170℃以上、さらに好ましくは175℃以上である。
【0012】
かかる観点から、ポリマー原料である乳酸、ラクチドの光学純度は、好ましくは96〜100モル%、より好ましくは97.5〜100モル%、さらに好ましくは98.5〜100モル%、最も好ましくは99〜100モル%の範囲である。
共重合単位としては、α−1成分であればD−乳酸単位、β−1成分であればL−乳酸単位であり、乳酸以外の単位も挙げられる。
【0013】
乳酸単位以外の共重合単位は、0〜10モル%、好ましくは0〜5モル%、より好ましくは0〜2モル%、さらに好ましくは0〜1モル%の範囲である。共重合単位は、2個以上のエステル結合形成可能な官能基を持つジカルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトン等由来の単位およびこれら種々の構成成分からなる各種ポリエステル、各種ポリエーテル、各種ポリカーボネート等由来の単位が例示される。
【0014】
ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等が挙げられる。多価アルコールとしてはエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、グリセリン、ソルビタン、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の脂肪族多価アルコール類あるいはビスフェノールにエチレンオキシドが付加させたもの等の芳香族多価アルコール等が挙げられる。ヒドロキシカルボン酸として、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸等が挙げられる。ラクトンとしては、グリコリド、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、δ−ブチロラクトン、β−またはγ−ブチロラクトン、ピバロラクトン、δ−バレロラクトン等が挙げられる。
【0015】
α−1成分およびβ−1成分の重量平均分子量は、本発明の組成物の機械物性および成形性を両立させるため、好ましくは8万〜30万、より好ましくは10万〜25万、さらに好ましくは12〜23万の範囲である。
ポリ乳酸の重量平均分子量および数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定し標準ポリスチレンに換算した値である。
【0016】
α−1成分およびβ−1成分の製造方法は、とりわけ限定はなく、従来公知の方法で製造することができ、例えば、L−またはD−ラクチドの溶融開環重合法、低分子量のポリ乳酸の固相重合法、さらに、乳酸を脱水縮合させる直接重合法等を例示することができる。
【0017】
重合反応は、従来公知の反応装置で実施可能であり、例えばヘリカルリボン翼等高粘度用攪拌翼を備えた縦型反応器あるいは横型反応器を単独、または並列にて使用することができる。また、回分式あるいは連続式あるいは半回分式のいずれでも良いし、これらを組み合わせてもよい。
【0018】
固相重合法では、プレポリマーは予め結晶化させることが、ペレットの融着防止、生産効率の面から好ましく、固定された縦型或いは横型反応容器、またはタンブラーやキルンの様に容器自身が回転する反応容器(ロータリーキルン等)中、プレポリマーのガラス転移温度以上融点未満の温度範囲の一定温度あるいは重合の進行に伴い次第に昇温させ重合を行う。生成する水を効率的に除去する目的で前記反応容器類の内部を減圧することや、加熱された不活性ガス気流を流通する方法も好適に併用される。
【0019】
本発明の組成物は、ポリ乳酸を製造する際に用いる金属触媒を含有する。金属触媒は、アルカリ土類金属、希土類金属、第三周期の遷移金属、アルミニウム、ゲルマニウム、スズ、およびアンチモンからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属元素を含む化合物である。アルカリ土類金属として、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム等が挙げられる。希土類元素として、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム等が挙げられる。第三周期の遷移金属として、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛が挙げられる。金属触媒は、例えばこれらの金属のカルボン酸塩、アルコキシド、アリールオキシド、或いはβ−ジケトンのエノラート等として組成物に添加される。重合活性や色相を考慮した場合、オクチル酸スズ、チタンテトライソプロポキシド、アルミニウムトリイソプロポキシドが特に好ましい。
【0020】
金属触媒の含有量は、100重量部のポリ乳酸に対して、好ましくは0.001〜1重量部、より好ましくは、0.005〜0.1重量部である。金属触媒の含有量が少なすぎると重合速度が著しく低化する。逆に多すぎると反応熱による着色、或いは解重合やエステル交換反応が加速されるため、得られる組成物の色相と熱安定性が悪化する。
【0021】
重合開始剤としてアルコールを用いてもよい。かかるアルコールとしては、ポリ乳酸の重合を阻害せず不揮発性であることが好ましく、例えばデカノール、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール等を好適に用いることができる。
【0022】
ステレオコンプレックス結晶は、α−1成分とβ−1成分を混合することにより形成される。この場合、α−1成分とβ−1成分との重量比は、好ましくは90:10〜10:90、より好ましくは75:25〜25:75、さらに好ましくは60:40〜40:60である。
【0023】
高度にステレオコンプレックス化されたステレオコンプレックスポリ乳酸(A−1成分)は、示差走査熱量計(DSC)測定の昇温過程における融解ピークのうち195℃以上の割合が80%以上となる。A−1成分の融解ピークのうち195℃以上の割合は、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましいのは100%である。195℃以上の融解ピークの割合が80%より低いとポリL−乳酸(α−1成分)やポリD−乳酸(β−1成分)に由来するホモ結晶の特徴が表れてしまい、耐熱性が不十分となる。
【0024】
A−1成分の融解ピークは、好ましくは200℃以上、より好ましくは205℃以上、さらに好ましくは210℃以上である。A−1成分の融解ピークが195℃より低いと、その結晶性や融点の低さから耐熱性が不十分である。
【0025】
かかる高度にステレオコンプレックス化されたA−1成分は、ポリL−乳酸(α−1成分とポリD‐乳酸(β−1成分)とが、かかる量比で存在することにより、13C−NMRで求めたエナンチオマー平均連鎖長を好適に10から40の範囲とすることができ、ホモ相ポリ乳酸の結晶融解ピークが存在しないで、ステレオコンプレックス相ポリ乳酸の結晶融解ピークのみが観測されるようになる。
【0026】
ここにおいて13C−NMRで求めたエナンチオマー平均連鎖長(Li)は、ポリ乳酸のCH炭素の4連子構造のピークをMakromol.Chem.,191,2287(1990)したがい帰属、その面積比(Iiii,Iisi,Isii,Iiis,Isis,Issi,Iiss,Iss)により式(IV)で定義される値である。iはアイソタクチック(LL、DD)、sはシンジオタクチック(LD、DL)連結を表す。
Li=(3Iiii+2Iisi+2Isii+2Iiis+Isis+Issi+Iiss)/(Iisi+Iiis+Isii+2Isis+2Issi+2Iiss+3Isss)+1 (IV)
【0027】
本発明においては、エナンチオマー平均連鎖長(Li)が、10から40の範囲にあることが好ましく、かかる条件を満たすことにより、組成物の耐熱性、とりわけ好適な離型性を達成することができる。
【0028】
エナンチオマー平均連鎖長が10に満たないと、DSC測定において、ステレオコンプレックス相ポリ乳酸が高度に形成されていても、組成物の耐熱性に劣ることがあり、40を超えていると、ステレオコンプレックスポリ乳酸の形成性に劣りさらに耐熱性が劣ることがあるためである。かかる観点に加え、さらに組成物の離型性の観点よりエナンチオマー平均連鎖長は好ましくは15から40、より好ましくは18から39の範囲が好適に選択される。
【0029】
本発明における樹脂成分(A成分)中、ステレオコンプレックスポリ乳酸(A−1成分)以外の樹脂成分(A−2成分)の好適例としては、A−1成分以外のポリエステル樹脂(PEst)、ポリフェニレンエーテル樹脂(PPE)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリアミド樹脂(PA)、ポリオレフィン樹脂(PO)、スチレン系樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)およびポリエーテルイミド樹脂(PEI)からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂成分が挙げられる。これらA−2成分のうち、好ましいのはポリエステル樹脂(PEst)、ポリフェニレンエーテル樹脂(PPE)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリアミド樹脂(PA)、ポリオレフィン樹脂(PO)およびスチレン系樹脂である。
【0030】
次にこのA−2成分としての熱可塑性樹脂について具体的に説明する。
A−2成分としてのポリエステル樹脂(PEst)としては、A−1成分以外のポリ乳酸および/または乳酸共重合体、芳香族ポリエステル樹脂、あるいは脂肪族ポリエステル樹脂から選択される1種または2種以上の混合物が挙げられる。
【0031】
かかるA−1成分以外のポリ乳酸および/または乳酸共重合体のうち、ポリ乳酸はL−乳酸、D−乳酸、DL−乳酸またはそれらの混合物、またはL−乳酸の環状2量体であるL−ラクタイド、D−乳酸の環状2量体であるD−ラクタイド、L−乳酸とD−乳酸からの環状2量体であるメソ−ラクタイドまたはそれらの混合物を用いた重合体を挙げることができる。
【0032】
本発明に使用するポリ乳酸の製造方法としては、特に限定されるものではないが、一般に公知の溶融重合法、或いは、更に固相重合法を併用して製造される。具体例としては、米国特許第1,995,970号、米国特許第2,362,511号、米国特許第2,683,136号に開示されており、通常ラクタイドと呼ばれる乳酸の環状二量体から開環重合により合成される。米国特許第2,758,987号では、乳酸の環状2量体(ラクタイド)を溶融重合する開環重合法が開示されている。
【0033】
また、A−2成分であるポリ乳酸および/または乳酸共重合体の中で、乳酸共重合体は、乳酸類を主原料とする共重合体であり、例えば、乳酸―ヒドロキシカルボン酸共重合体や乳酸―脂肪族多価アルコール―脂肪族多塩基酸共重合体などを挙げることができる。
【0034】
本発明で使用される乳酸共重合体に用いられるヒドロキシカルボン酸の具体例としては、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、5−ヒドロキシ吉草酸、4−ヒドロキシ青草酸、6−ヒドロキシカプロン酸等が挙げられ、単独或いは2種以上の混合物として使用することができる。さらにヒドロキシカルボン酸の環状エステル中間体、例えばグリコール酸の二量体であるグリコライドや6−ヒドロキシカプロン酸の環状エステルであるε−カプロラクトンを使用することもできる。
【0035】
脂肪族多価アルコールの具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、
ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂肪族ジオールが挙げられ、単独或いは2種以上の混合物として使用することができる。
【0036】
脂肪族多塩基酸の具体例としては、コハク酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等の脂肪族二塩基酸が挙げられ、単独或いは2種以上の混合物として使用することができる。
【0037】
乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体は通常ラクタイドとヒドロキシカルボン酸の環状エステル中間体から開環重合により合成され、その製造法に関しては米国特許第3,635,956号、米国特許第3,797,499号に開示されている。米国特許第5,310,865号には、乳酸とヒドロキシカルボン酸の混合物を原料として、直接脱水重縮合を行う方法が開示されている。また、米国特許第4,057,537号には、乳酸と脂肪族ヒドロキシカルボン酸の環状2量体、例えばラクタイドやグリコライドとε−カプロラクトンを触媒の存在下、溶融重合する開環重合法が開示されている。開環重合によらず直接脱水重縮合により乳酸共重合体を製造する場合には、乳酸類と必要に応じて他のヒドロキシカルボン酸を好ましくは有機溶媒、特にフェニルエーテル系溶媒の存在下で共沸脱水縮合し、特に好ましくは共沸により留出した溶媒から水を除き実質的に無水の状態にした溶媒を反応系に戻す方法によって重合することにより、本発明に適した重合度の乳酸共重合体が得られる。
【0038】
また、米国特許第5,428,126号には、乳酸、脂肪族二価アルコールと脂肪族二塩基酸の混合物を直接脱水縮合する方法が開示されている。また、欧州特許公報第0712880A2号には、ポリ乳酸と脂肪族二価アルコールと脂肪族二塩基酸とのポリマーを有機溶媒存在下で縮合する方法が開示されている。
本発明において、ポリ乳酸や乳酸共重合体の製造に際し、適当な分子量調節剤、分岐剤、その他の改質剤などの添加は差し支えない。
【0039】
A−2成分としての芳香族ポリエステル樹脂としては、芳香族ジカルボン酸を主たるジカルボン酸成分とし、炭素数2〜10の脂肪族ジオールを主たるグリコール成分とするポリエステルである。好ましくはジカルボン酸成分の80モル%以上、より好ましくは90モル%以上が芳香族ジカルボン酸成分からなる。一方、グリコール成分は好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上が炭素数2〜10の脂肪族ジオール成分からなる。
【0040】
芳香族ジカルボン酸成分としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、メチルテレフタル酸、メチルイソフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸等を好ましい例として挙げることができる。これらは1種または2種以上を用いることができる。芳香族ジカルボン酸以外の従たるジカルボン酸としては例えばアジピン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、アゼライン酸、ドデカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸または脂環族ジカルボン酸などを挙げることができる。
【0041】
炭素数2〜10の脂肪族ジオールとしては、例えばエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族ジオールおよび1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環族ジオールを挙げることができる。炭素数2〜10の脂肪族ジオール以外のグリコールとしては例えばp,p’−ジヒドロキシエトキシビスフェノールA、ポリオキシエチレングリコール等を挙げることができる。
【0042】
芳香族ポリエステル樹脂の好ましい例としては、主たるジカルボン酸成分がテレフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸から選ばれる少なくとも1種のジカルボン酸と、主たるジオール成分がエチレングリコール、トリメチレングリコール、およびテトラメチレングリコールから選ばれる少なくとも1種のジオールからなるエステル単位を有するポリエステルである。
【0043】
具体的な芳香族ポリエステル樹脂は、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂、ポリシクロヘキサンジメチルテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂およびポリトリメチレンナフタレート樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種であるのが好ましい。
【0044】
特に好ましくは、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂およびポリエチレンナフタレート樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種である。とりわけポリブチレンテレフタレート樹脂が特に好ましい。
また、本発明の芳香族ポリエステル樹脂として、上記繰り返し単位をハードセグメントの主たる繰り返し単位とするポリエステルエラストマーを用いることもできる。
【0045】
テトラメチレンテレフタレートまたはテトラメチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートをハードセグメントの主たる繰り返し単位とするポリエステルエラストマーのソフトセグメントとしては、例えばジカルボン酸がテレフタル酸、イソフタル酸、セバシン酸およびアジピン酸より選ばれる少なくとも1種のジカルボン酸からなり、ジオール成分が炭素数5〜10の長鎖ジオールおよびH(OCHCHOH(i=2〜5)よりなる群から選ばれる少なくとも1種のジオールからなり、さらに融点が100℃以下または非晶性であるポリエステルまたはポリカプロラクトンからなるものを用いることができる。
【0046】
なお、主たる成分とは、全ジカルボン酸成分または全グリコール成分の80モル%以上、好ましくは90モル%以上の成分であり、主たる繰り返し単位とは、全繰り返し単位の80モル%以上、好ましくは90モル%以上の繰り返し単位である。
【0047】
本発明における芳香族ポリエステル樹脂の分子量は、通常成形品として使用しうる固有粘度を有していればよく、35℃、オルトクロロフェノール中で測定した固有粘度が好ましくは0.5〜1.6dl/g、さらに好ましくは0.6〜1.5dl/gである。
【0048】
また芳香族ポリエステル樹脂は、末端カルボキシル基(−COOH)量が1〜60当量/T(ポリマー1トン)であるのが有利である。この末端カルボキシル基量は、例えばm−クレゾール溶液をアルカリ溶液で電位差滴定法により求めることができる。
【0049】
A−2成分としてのポリフェニレンエーテル樹脂としては、通常PPE樹脂として知られたものが使用できる。かかるPPEの具体例としては、(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、(2,6−ジエチル−1,4−フェニレン)エーテル、(2,6−ジプロピル−1,4−フェニレン)エーテル、(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレン)エーテル、(2−メチル−6−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、(2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレン)エーテル等の単独重合体および/あるいは共重合体が挙げられ、特に好ましくはポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルが挙げられる。また、これらのPPEにスチレン化合物がグラフト重合した共重合体であっても良い。かかるPPEの製造法は特に限定されるものではなく、例えば、米国特許第3,306,874号記載の方法による第一銅塩とアミン類の錯体を触媒として用い、2,6−キシレノールを酸化重合することにより容易に製造できる。
【0050】
PPE樹脂の分子量の尺度である還元粘度ηsp/C(0.5g/dl、トルエン溶液、30℃測定)は、0.2〜0.7dl/gであり、好ましくは0.3〜0.6dl/gである。還元粘度がこの範囲のPPE樹脂は成形加工性、機械物性のバランスがよく、PPE製造時の触媒量等を調整する事により、容易に還元粘度を調整することが可能である。
【0051】
A−2成分としてのポリカーボネート系樹脂(PC)とは、塩化メチレン等の溶媒を用いて種々のジヒドロキシアリール化合物とホスゲンとの界面重合反応によって得られるもの、またはジヒドロキシアリール化合物とジフェニルカーボネートとのエステル交換反応により得られるものが挙げられる。代表的なものとしては、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンとホスゲンの反応で得られるポリカーボネートである。
【0052】
ポリカーボネートの原料となるジヒドロキシアリール化合物としては、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)プロパン、2,2’−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシ−3−シクロヘキシルフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロパン、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、4,4’−ジヒドロキシフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトンなどがある。これらのジヒドロキシアリール化合物は単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。
【0053】
好ましいジヒドロキシアリール化合物には、耐熱性の高い芳香族ポリカーボネートを形成するビスフェノール類、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンなどのビス(ヒドロキシフェニル)アルカン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンなどのビス(ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ジヒドロキシジフェニルスルフィド、ジヒドロキシジフェニルスルホン、ジヒドロキシジフェニルケトンなどである。特に好ましいジヒドロキシアリール化合物には、ビスフェノールA型芳香族ポリカーボネートを形成する2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンである。
【0054】
なお、耐熱性、機械的強度などを損なわない範囲であれば、ビスフェノールA型芳香族ポリカーボネートを製造する際、ビスフェノールAの一部を、他のジヒドロキシアリール化合物で置換してもよい。
【0055】
ポリカーボネート樹脂の分子量は特に制限する必要はないが、あまりに低いと強度が十分でなく、あまりに高いと溶融粘度が高くなり成形し難くなるので、粘度平均分子量で表して通常10,000〜50,000、好ましくは、15,000〜30,000である。ここでいう粘度平均分子量(M)は塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを20℃で溶解した溶液から求めた比粘度(ηsp)を次式に挿入して求めたものである。
ηsp/C=[η]+0.45×[η]
[η]=1.23×10−40.83
(但し[η]は極限粘度、Cはポリマー濃度で0.7)
【0056】
ポリカーボネート樹脂を製造する基本的な手段を簡単に説明する。カーボネート前駆物質としてホスゲンを用いる界面重合法(溶液重合法)では、通常酸結合剤および有機溶媒の存在下に反応を行う。酸結合剤としては例えば水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、またはピリジン等のアミン化合物が用いられる。有機溶媒としては例えば塩化メチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられる。また反応促進のために例えば第三級アミンや第四級アンモニウム塩等の触媒を用いることができ、分子量調節剤として例えばフェノールやp−tert−ブチルフェノールのようなアルキル置換フェノール等の末端停止剤を用いることが望ましい。反応温度は通常0〜40℃、反応時間は数分〜5時間、反応中のpHは10以上に保つのが好ましい。尚結果として得られた分子鎖末端の全てが末端停止剤に由来の構造を有する必要はない。
【0057】
カーボネート前駆物質として炭酸ジエステルを用いるエステル交換反応(溶融重合法)では、不活性ガスの存在下に所定割合の二価フェノールを炭酸ジエステルと加熱しながら攪拌し、生成するアルコールまたはフェノール類を留出させる方法により行う。反応温度は生成するアルコールまたはフェノール類の沸点等により異なるが、通常120〜350℃の範囲である。反応はその初期から減圧にして生成するアルコールまたはフェノール類を留出させながら反応を完結させる。かかる反応の初期段階で二価フェノール等と同時にまたは反応の途中段階で末端停止剤を添加させる。また反応を促進するために現在公知のエステル交換反応に用いられる触媒を用いることができる。このエステル交換反応に用いられる炭酸ジエステルとしては、例えばジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート等が挙げられる。これらのうち特にジフェニルカーボネートが好ましい。
【0058】
A−2成分としてのポリアミド樹脂(PA)としては、例えば、環状ラクタムの開環重合物、アミノカルボン酸の重合物、二塩基酸とジアミンとの重縮合物などが挙げられ、具体的にはナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12などの脂肪族ポリアミドおよびポリ(メタキシレンアジパミド)、ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)、ポリ(ノナメチレンテレフタルアミド)、ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド)、ポリ(テトラメチレンイソフタルアミド)などの脂肪族−芳香族ポリアミド、およびこれらの共重合体や混合物を挙げることができる。本発明に使用できるポリアミドとしては特に限定されるものではない。
【0059】
このようなポリアミド樹脂の分子量としては特に限定されるものではないが、98%硫酸中、濃度1%、25℃で測定する相対粘度が1.7〜4.5を使用することができ、好ましくは、2.0〜4.0、特に好ましくは2.0〜3.5である。
【0060】
A−2成分としてのポリオレフィン樹脂とは、エチレン、プロピレン、ブテン等のオレフィン類の単重合体もしくは共重合体、あるいはこれらのオレフィン類と共重合可能な単量体成分との共重合体である。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体等が挙げられる。これらポリオレフィン樹脂の分子量に関しては特に限定されるものではないが、高分子量のものほど難燃性が良好となる。
【0061】
A−2成分としてのスチレン系樹脂とは、スチレン、α−メチルスチレンまたはビニルトルエン等の芳香族ビニル単量体の単独重合体または共重合体、これらの単量体とアクリロニトリル、メチルメタクリレート等のビニル単量体との共重合体、ポリブタジエン等のジエン系ゴム、エチレン・プロピレン系ゴム、アクリル系ゴムなどにスチレンおよび/またはスチレン誘導体、またはスチレンおよび/またはスチレン誘導体と他のビニルモノマーをグラフト重合させたものである。スチレン系樹脂の具体例としては、例えばポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS樹脂)、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体(MBS樹脂)、メチルメタクリレート・アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(MABS樹脂)、アクリロニトリル・アクリルゴム・スチレン共重合体(AAS樹脂)、アクリロニトリル・エチレンプロピレン系ゴム・スチレン共重合体(AES樹脂)等の樹脂、またはこれらの混合物が挙げられる。耐衝撃性の観点からは、ゴム変性スチレン系樹脂が好ましく、ゴム変性スチレン系樹脂はビニル芳香族系重合体よりなるマトリックス中にゴム状重合体が粒子状に分散してなる重合体をいい、ゴム状重合体の存在下に芳香族ビニル単量体、必要に応じてビニル単量体を加えて単量体混合物を公知の塊状重合、塊状懸濁重合、溶液重合または乳化重合することにより得られる。
【0062】
前記ゴム状重合体の例としては、ポリブタジエン、ポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(アクリロニトリル−ブタジエン)等のジエン系ゴムおよび上記ジエンゴムを水素添加した飽和ゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系ゴム、およびエチレン−プロピレン−ジエンモノマー三元共重合体(EPDM)等を挙げることができ、特にジエン系ゴムが好ましい。
【0063】
上記のゴム状重合体の存在下に重合させるグラフト共重合可能な単量体混合物中の必須成分の芳香族ビニル単量体は、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン等であり、スチレンが最も好ましい。
【0064】
必要に応じて添加することが可能な、ビニル単量体としては、アクリロニトリル、メチルメタクリレート等が挙げられる。
ゴム変性スチレン樹脂におけるゴム状重合体は、1〜80重量%、好ましくは2〜70重量%である。グラフト重合可能な単量体混合物は、99〜20重量%、好ましくは98〜30重量%である。
【0065】
本発明のA−2成分として使用するスチレン系樹脂、特に耐衝撃性ポリスチレンは、そのJIS−K−7210−1999に従って、200℃、5kg荷重の条件で測定したMVR値が1〜100cm/10minの範囲が好ましく、2〜80cm/10minの範囲がより好ましく、3〜60cm/10minの範囲がさらに好ましく、5〜50cm/10minの範囲が特に好ましい。
【0066】
また、本発明のA−2成分として使用するスチレン系樹脂、特にAS樹脂やABS樹脂は、そのJIS−K−7210−1999に従って、220℃、10kg荷重の条件で測定したMVR値が1〜100cm/10minの範囲が好ましく、2〜80cm/10minの範囲がより好ましく、3〜60cm/10minの範囲がさらに好ましく、5〜50cm/10minの範囲が特に好ましい。
【0067】
スチレン系樹脂のMVR値が1cm/10min未満では樹脂組成物の押出時や成形時等の加工性が低下することとなり、100cm/10minを超えると樹脂組成物の耐熱性や機械物性が低下することとなる。
【0068】
本発明のA−2成分として使用するスチレン系樹脂は、その分子量の尺度である還元粘度ηsp/Cが好ましくは0.2〜1.5dl/gであり、より好ましくは0.3〜1.4dl/gである。ここで、還元粘度ηsp/Cとは、溶液濃度0.5g/100mlのトルエン溶液を30℃で測定して求めた値である。
【0069】
スチレン系樹脂の還元粘度ηsp/Cが0.2dl/gより低い場合は、得られる樹脂組成物の耐熱性や機械物性が低下する。また、1.5dl/gよりも高い場合は、樹脂組成物の押出時や成形時等の加工性が低下することとなる。
スチレン系樹脂のMVR値や還元粘度ηsp/Cに関する上記条件を満たすための手段としては、重合開始剤量、重合温度、連鎖移動剤量の調整等を挙げることができる。
【0070】
A−2成分としてのポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)は下記式で表される繰返し単位を有する。
【化13】

式中、nは1以上の整数であり、50〜500の整数が好ましく100〜400の整数がより好ましく、直鎖状、架橋状いずれであってもよい。
【0071】
ポリフェニレンサルファイド樹脂の製造方法の例としてはジクロロベンゼンと二硫化ナトリウムとを反応させる方法が挙げられる。架橋状のものは低重合度のポリマーを重合ののち、空気の存在下で加熱し、部分架橋を行い高分子量化する方法で製造することができ、直鎖状のものは重合時に高分子量化する方法で製造することができる。
【0072】
A−2成分としてのポリエーテルイミド樹脂(PEI)は、下記式で表される繰返し単位を有する。
【化14】

【0073】
式中のArは芳香族ジヒドロキシ化合物残基を示し、Arは芳香族ジアミン残基を示す。芳香族ジヒドロキシ化合物としては、前述したポリカーボネート樹脂の説明で示した芳香族ジヒドロキシ化合物が挙げられ、特にビスフェノールAが好ましい。芳香族ジアミンとしてはm−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニル、3,4’−ジアミノジフェニル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホンおよびジアミノジフェニルスルフィド等が挙げられる。
前記式中のnは5〜1,000の整数を示し、10〜500の整数が好ましい。
【0074】
また、ポリエーテルイミド樹脂の製造方法の例は、米国特許第3,847,867号、米国特許第3,847,869号、米国特許第3,850,885号、米国特許第3,852,242号および米国特許第3,855,178号などに記載されている。
【0075】
前述した種々のA−2成分のうち、A−1成分以外のポリエステル樹脂(PEst)、ポリフェニレンエーテル樹脂(PPE)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリアミド樹脂(PA)、ポリオレフィン樹脂(PO)およびスチレン系樹脂が好ましい。
【0076】
本発明において、B成分として使用する有機リン化合物は、下記式(1)で表される。
【化15】

(式中、X、Xは同一もしくは異なり、下記式(2)で表される芳香族置換アルキル基である。)
【化16】

(式中、ALは炭素数1〜5の分岐状または直鎖状の脂肪族炭化水素基であり、Arは置換基を有しても良いフェニル基、ナフチル基、またはアントリル基である。nは1〜3の整数を示し、ArはAL中の任意の炭素原子に結合することができる。)
【0077】
有機リン化合物は、好ましくは下記式(3)および下記式(4)で表される有機リン化合物よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物である。
【0078】
【化17】

(式中、R、Rは同一または異なっていてもよく、置換基を有しても良いフェニル基、ナフチル基、またはアントリル基である。R、R、R、Rは同一または異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜4の分岐状または直鎖状のアルキル基、置換基を有しても良いフェニル基、ナフチル基、またはアントリル基から選択される置換基である。)
【0079】
【化18】

(式中、ArおよびArは、同一又は異なっていても良く、フェニル基、ナフチル基またはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。R11、R12、R13およびR14は、同一又は異なっていても良く、水素原子、炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基またはフェニル基、ナフチル基もしくはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。ALおよびALは、同一又は異なっていても良く、炭素数1〜4の分岐状または直鎖状の脂肪族炭化水素基である。ArおよびArは、同一又は異なっていても良く、フェニル基、ナフチル基またはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。pおよびqは0〜3の整数を示し、ArおよびArはそれぞれALおよびALの任意の炭素原子に結合することができる。)
【0080】
有機リン化合物は、より好ましくは下記式(5)、(6)、(7)または(8)で表される有機リン化合物である。
【0081】
【化19】

【0082】
上記式(5)において、R21、R22は同一もしくは異なり、その芳香環に置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基またはアントリル基であり、そのうちフェニル基が好ましい。R21およびR22のフェニル基、ナフチル基またはアントリル基は、その芳香環の水素原子が置換されていてもよく、置換基としてはメチル、エチル、プロピル、ブチルもしくはその芳香環の結合基が、酸素原子、イオウ原子または炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基を介する炭素数6〜14のアリール基が挙げられる。
【0083】
【化20】

【0084】
上記式(6)において、R31およびR34は、同一又は異なっていても良く、水素原子または炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基である。好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基であり、特に好ましくは水素原子である。R33およびR36は、同一または異なっていても良く、炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基であり、好ましくはメチル基またはエチル基である。R32およびR35は、同一または異なっていてもよく、フェニル基、ナフチル基またはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。好ましくはフェニル基を表し、芳香族環上の炭素原子を介してリンに結合している部分以外のどの部分に置換基を有していてもよく、メチル、エチル、プロピル(異性体を含む)、ブチル(異性体を含む)もしくはその芳香族環への結合基が、酸素、イオウまたは炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基を介する炭素数6〜14のアリール基である。
【0085】
上記式(6)中、R32およびR35の好ましい具体例としては、フェニル基、クレジル基、キシリル基、トリメチルフェニル基、4−フェノキシフェニル基、クミル基、ナフチル基、4−ベンジルフェニル基等を挙げられ、特にフェニル基が好ましい。
【0086】
【化21】

【0087】
上記式(7)において、ArおよびArは、同一又は異なっていても良く、フェニル基、ナフチル基またはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。ArおよびArの好ましい具体例としては、フェニル基、クレジル基、キシリル基、トリメチルフェニル基、4−フェノキシフェニル基、クミル基、ナフチル基、4−ベンジルフェニル基等が挙げられ、特にフェニル基が好ましい。
【0088】
11、R12、R13およびR14は、同一又は異なっていても良く、水素原子、炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基またはフェニル基、ナフチル基もしくはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。好ましくはフェニル基を表し、芳香族環上の炭素原子を介してリンに結合している部分以外のどの部分に置換基を有していてもよく、メチル、エチル、プロピル(異性体を含む)、ブチル(異性体を含む)もしくはその芳香族環への結合基が、酸素、イオウまたは炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基を介する炭素数6〜14のアリール基である。
【0089】
上記式(7)中、ALおよびALは、同一又は異なっていても良く、炭素数1〜4の分岐状または直鎖状の脂肪族炭化水素基である。好ましくは炭素数1〜3の分岐状または直鎖状の脂肪族炭化水素基であり、特に好ましくは炭素数1〜2の分岐状または直鎖状の脂肪族炭化水素基である。
【0090】
上記式(7)中、ALおよびALの好ましい具体例としては、メチレン基、エチレン基、エチリデン基、トリメチレン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基等が挙げられ、特にメチレン基、エチレン基、およびエチリデン基が好ましい。
【0091】
上記式(7)中、ArおよびArは、同一又は異なっていても良く、フェニル基、ナフチル基またはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。好ましくはフェニル基を表し、芳香族環上の炭素原子を介してリンに結合している部分以外のどの部分に置換基を有していてもよく、メチル、エチル、プロピル(異性体を含む)、ブチル(異性体を含む)もしくはその芳香族環への結合基が、酸素、イオウまたは炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基を介する炭素数6〜14のアリール基である。
【0092】
上記式(7)中、pおよびqは0〜3の整数を示し、ArおよびArはそれぞれALおよびALの任意の炭素原子に結合することができる。pおよびqは、好ましくは0または1であり、特に好ましくは0である。
【0093】
【化22】

【0094】
上記式(8)において、R41およびR44は、同一又は異なっていても良く、水素原子、炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基またはフェニル基、ナフチル基もしくはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。好ましくは水素原子、炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基、または置換基を有しても良いフェニル基である。R41およびR44がフェニル基の場合、芳香族環上の炭素原子を介してリンに結合している部分以外のどの部分に置換基を有していてもよく、メチル、エチル、プロピル(異性体を含む)、ブチル(異性体を含む)もしくはその芳香族環への結合基が、酸素、イオウまたは炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基を介する炭素数6〜14のアリール基である。
【0095】
上記式(8)中、R41およびR44の好ましい具体例としては、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基(異性体を含む)、フェニル基、クレジル基、キシリル基、トリメチルフェニル基、4−フェノキシフェニル基、クミル基、ナフチル基、4−ベンジルフェニル基等が挙げられ、特に水素原子、メチル基、またはフェニル基が好ましい。
【0096】
42、R43、R45およびR46は、同一または異なっていても良く、フェニル基、ナフチル基またはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。好ましくは、フェニル基を表し、芳香族環上の炭素原子を介してリンに結合している部分以外のどの部分に置換基を有していてもよく、メチル、エチル、プロピル(異性体を含む)、ブチル(異性体を含む)もしくはその芳香族環への結合基が、酸素、イオウまたは炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基を介する炭素数6〜14のアリール基である。
【0097】
上記式(8)中、R42、R43、R45およびR46の好ましい具体例としては、フェニル基、クレジル基、キシリル基、トリメチルフェニル基、4−フェノキシフェニル基、クミル基、ナフチル基、4−ベンジルフェニル基等が挙げられ、特にフェニル基が好ましい。
【0098】
前記式(1)で表される有機リン化合物(B成分)は、当該樹脂に対して極めて優れた難燃効果を発現する。本発明者らが知る限り、従来当該樹脂のハロゲンフリーによる難燃化において、少量の難燃剤での難燃化は困難であり、実用上多くの問題点があった。
【0099】
ところが本発明によれば、前記有機リン化合物(B成分)は驚くべきことにそれ自体単独の少量使用により当該樹脂の難燃化が容易に達成され、樹脂本来の特性、特に耐熱性を損なうことが無い。
【0100】
しかしながら、本発明ではB成分の他に、B成分以外の難燃剤、難燃助剤、フッ素含有樹脂または他の添加剤を、B成分の使用割合の低減、成形品の難燃性の改善、成形品の物理的性質の改良、成形品の化学的性質の向上またはその他の目的のために当然配合することができる。
【0101】
本発明の難燃性樹脂組成物における難燃剤としての有機リン化合物(B成分)は、前記式(1)で表されるが、最も好ましい代表的化合物は下記式(1−a)、(1−b)、(1−c)または(1−d)で示される有機リン化合物である。
【0102】
【化23】

【0103】
【化24】

【0104】
【化25】

【0105】
【化26】

【0106】
次に本発明における前記有機リン化合物(B成分)の合成法について説明する。B成分は、以下に説明する方法以外の方法によって製造されたものであってもよい。
B成分は例えばペンタエリスリトールに三塩化リンを反応させ、続いて酸化させた反応物を、ナトリウムメトキシド等のアルカリ金属化合物により処理し、次いでアラルキルハライドを反応させることにより得られる。
【0107】
また、ペンタエリスリトールにアラルキルホスホン酸ジクロリドを反応させる方法や、ペンタエリスリトールに三塩化リンを反応させることによって得られた化合物にアラルキルアルコールを反応させ、次いで高温でArbuzov転移を行う方法により得ることもできる。後者の反応は、例えば米国特許第3,141,032号明細書、特開昭54−157156号公報、特開昭53−39698号公報に開示されている。
【0108】
B成分の具体的合成法を以下説明するが、この合成法は単に説明のためであって、本発明において使用されるB成分は、これら合成法のみならず、その改変およびその他の合成法で合成されたものであってもよい。より具体的な合成法は後述する調製例に説明される。
(I)B成分中の前記(1−a)の有機リン化合物;
ペンタエリスリトールに三塩化リンを反応させ、次いでターシャリーブタノールにより酸化させた反応物を、ナトリウムメトキシドにより処理し、ベンジルブロマイドを反応させることにより得ることができる。
(II)B成分中の前記(1−b)の有機リン化合物;
ペンタエリスリトールに三塩化リンを反応させ、次いでターシャリーブタノールにより酸化させた反応物を、ナトリウムメトキシドにより処理し、1−フェニルエチルブロマイドを反応させることにより得ることができる。
(III)B成分中の前記(1−c)の有機リン化合物;
ペンタエリスリトールに三塩化リンを反応させ、次いでターシャリーブタノールにより酸化させた反応物を、ナトリウムメトキシドにより処理し、2−フェニルエチルブロマイドを反応させることにより得ることができる。
(IV)B成分中の前記(1−d)の有機リン化合物;
ペンタエリスリトールにジフェニルメチルホスホン酸ジクロリドを反応させることにより得ることができる。
【0109】
また別法としては、ペンタエリスリトールに三塩化リンを反応させ、得られた生成物とジフェニルメチルアルコールの反応生成物を触媒共存下で加熱処理する事により得られる。
【0110】
前述したB成分は、その酸価が0.7mgKOH/g以下、好ましくは0.5mgKOH/g以下であるものが使用される。酸価がこの範囲のB成分を使用することにより、難燃性および色相に優れた成形品が得られ、かつ熱安定性の良好な成形品が得られる。B成分は、その酸価が0.4mgKOH/g以下のものが最も好ましい。ここで酸価とは、サンプル(B成分)1g中の酸成分を中和するのに必要なKOHの量(mg)を意味する。
【0111】
さらに、B成分は、そのHPLC純度が、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%であるものが使用される。かかる高純度のものは成形品の難燃性、色相、および熱安定性に優れ好ましい。ここでB成分のHPLC純度の測定は、以下の方法を用いることにより効果的に測定が可能となる。
【0112】
カラムは野村化学(株)製Develosil ODS−7 300mm×4mmφを用い、カラム温度は40℃とした。溶媒としてはアセトニトリルと水の6:4(容量比)の混合溶液を用い、5μlを注入した。検出器はUV−260nmを用いた。
【0113】
B成分中の不純物を除去する方法としては、特に限定されるものではないが、水、メタノール等の溶剤でリパルプ洗浄(溶剤で洗浄、ろ過を数回繰り返す)を行う方法が最も効果的で、且つコスト的にも有利である。
【0114】
前記B成分は、ステレオコンプレックスポリ乳酸(A−1成分)を少なくとも50重量%含有する樹脂成分(A成分)100重量部に対して1〜100重量部であり、好ましくは5〜90重量部、より好ましくは10〜70重量部、特に好ましくは15〜50重量部の範囲で配合される。B成分の配合割合は、所望する難燃性レベル、樹脂成分(A成分)の種類、添加量などによりその好適範囲が決定される。これら組成物を構成するA成分、B成分、C成分、およびD成分以外であっても必要に応じて他の成分を本発明の目的を損なわない限り使用することができ、他の難燃剤、難燃助剤、フッ素含有樹脂の使用によってもB成分の配合量を変えることができ、多くの場合、これらの使用によりB成分の配合割合を低減することができる。
【0115】
本発明において、C成分として使用する充填剤は、成形品の物性、殊に機械的特性を改良する目的で配合されるものであればよく、無機あるいは有機の充填剤いずれであってもよい。好ましくは繊維状の充填剤である。
【0116】
無機充填剤としては、例えばガラスチョップドファイバー、ガラスミルドファイバー、ガラスロービングストランド、ガラスフレーク、ガラスビーズ、ガラス粉末等のガラス系充填剤;カーボンファイバー、カーボンミルドファイバー、カーボンロービングストランド、カーボンフレーク等のカーボン系充填剤;タルク、マイカ、ワラストナイト、カオリン、モンモリロナイト、ベントナイト、セピオライト、ゾノトライト、クレー、シリカ等の無機充填剤;酸化チタン等の無機顔料、カーボンブラック等が挙げられ、これらのなかから選択するか、またはこれらの組み合わせとすることができる。また、樹脂組成物を補強する目的では、繊維状の充填剤を配合することが好ましく、ガラス繊維、または炭素繊維、もしくはこれらの混合物を配合することが好ましい。
【0117】
有機充填剤としては、籾殻、木材チップ、おから、古紙粉砕材、衣料粉砕材等のチップ状のもの、綿繊維、麻繊維、竹繊維、木材繊維、ケナフ繊維、ジュート繊維、バナナ繊維、ココナツ繊維等の植物繊維もしくはこれらの植物繊維から加工されたパルプやセルロース繊維および絹、羊毛、アンゴラ、カシミヤ、ラクダ等の動物繊維等の繊維状のもの、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維等の合成繊維、紙粉、木粉、セルロース粉末、籾殻粉末、果実殻粉末、キチン粉末、キトサン粉末、タンパク質、澱粉等の粉末状のものが挙げられる。成形性の観点から紙粉、木粉、竹粉、セルロース粉末、ケナフ粉末、籾殻粉末、果実殻粉末、キチン粉末、キトサン粉末、タンパク質粉末、澱粉等の粉末状のものが好ましく、紙粉、木粉、竹粉、セルロース粉末、ケナフ粉末が好ましい。紙粉、木粉がより好ましい。特に紙粉が好ましい。
【0118】
これら有機充填剤は天然物から直接採取したものを使用してもよいが、古紙、廃材木および古衣等の廃材をリサイクルしたものを使用してもよい。また木材として、松、杉、檜、もみ等の針葉樹材、ブナ、シイ、ユーカリ等の広葉樹材等が好ましい。
【0119】
紙粉は成形性の観点から接着剤、取り分け紙を加工する際に通常使用される酢酸ビニル樹脂系エマルジョンやアクリル樹脂系エマルジョン等のエマルジョン系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ポリアミド系接着剤等のホットメルト接着剤等を含むものが好ましく例示される。
【0120】
これらの充填剤は必要に応じて収束剤または表面処理剤を用いることができる。収束剤または表面処理剤の種類としては特に限定はされないが、一般に官能性化合物、例えばエポキシ系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物等が挙げられ、樹脂に適したものを選択することが好ましい。好ましくはエポキシ系化合物、より好ましくはビスフェノールA型または/およびノボラック型エポキシ樹脂である。
【0121】
前記充填剤(C成分)を配合する場合、その割合は前記樹脂成分(A成分)100重量部に対して、好ましくは1〜200重量部、より好ましくは5〜150重量部、さらに好ましくは10〜100重量部である。200重量部より多く配合すると樹脂組成物の難燃性および物性低下の原因となり、また操作性、成形性についても困難となる場合があり、表面外観悪化の原因となる場合がある。
【0122】
本発明において、D成分として使用する耐衝撃性改質剤としては、(i)その内部に1種以上のゴム層を有し、その成分がアクリル系成分、シリコン系成分、スチレン系成分、ニトリル系成分、共役ジエン系成分、ウレタン系成分、エチレンプロピレン系成分から選ばれる1種以上であり、ゴム層以外の成分がビニル単量体である耐衝撃性改質剤、および(ii)共重合ポリエチレン、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー等の実質的にゴム成分を含有しない耐衝撃性改質剤が挙げられる。
好ましくは、(i)その内部に1種以上のゴム層を含有する耐衝撃改質剤であり、特に好ましくは、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーである。
【0123】
上記水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーは、芳香族ビニル単量体と共役ジエン単量体との共重合体を水素添加することによって得られる。当該水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーは、共役ジエンを繰り返し単位に含む重合体を水素化した三元共重合体である。本発明で好適に使用でされる共役ジエンを繰り返し単位に含む重合体の具体例としては、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−イソペンタジエン共重合体等であり、水素添加方法は特に限定されることはなく、具体例としては、特開2007−301449号公報に開示されるような先行技術に基づいて実施することができる。水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーの具体例としては、スチレン−ブタジエン共重合体を水素化したスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン三元共重合体(SEBS)、スチレン−イソプレン共重合体を水素化したスチレン−エチレン−プロピレン−スチレン三元共重合体(SEPS)、スチレン−イソペンタジエン共重合体を水素化したスチレン−エチレン−プロピレン−スチレン三元共重合体(SEEPS)等が挙げられる。
【0124】
前記耐衝撃改質剤(D成分)を配合する場合、その割合は前記樹脂成分(A成分)100重量部に対して、好ましくは1〜100重量部、より好ましくは2〜80重量部、さらに好ましくは3〜50重量部である。100重量部より多く配合すると樹脂組成物の耐熱性の低下、離型性の低下、寸法安定性の低下の原因となり、1重量部より少ない場合は十分な耐衝撃性が得られない。
【0125】
上記C成分以外に添加することができる難燃剤、難燃助剤等は特に限定されるものではないが、本発明の性質上、ノンハロゲン化合物が好ましい。好適例としては、赤リン、下記一般式(E−1)で表されるトリアリールホスフェート、下記一般式(E−2)で表される縮合リン酸エステル、下記一般式(E−3)で表される縮合リン酸エステル、下記一般式(E−4)で表される有機リン化合物、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸メラミン、ホスファゼン化合物、ホスフィン酸金属塩、メラミンシアヌレート等が挙げられる。
【0126】
【化27】

【0127】
【化28】

【0128】
【化29】

【0129】
【化30】

【0130】
前記式(E−1)〜(E−3)中Q〜Qは、それぞれ同一もしくは異なっていてもよく、炭素数6〜15のアリール基、好ましくは炭素数6〜10のアリール基である。このアリール基の具体例としてはフェニル基、ナフチル基、またはアントリル基が挙げられる。これらアリール基は1〜5個、好ましくは1〜3個の置換基を有していてもよく、その置換基としては、(i)メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ネオペンチル基およびノニル基の如き炭素数1〜12のアルキル基、好ましくは炭素数1〜9のアルキル基、(ii)メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基およびペントキシ基の如き炭素数1〜12のアルキルオキシ基、好ましくは炭素数1〜9のアルキルオキシ基、(iii)メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基およびペンチルチオ基の如き炭素数1〜12のアルキルチオ基、好ましくは炭素数1〜9のアルキルチオ基および(iv)Ar−W−式で表される基(ここでWは−O−、−S−または炭素数1〜8、好ましくは炭素数1〜4のアルキレン基を示し、Arは炭素数6〜15、好ましくは炭素数6〜10のアリール基を示す)が挙げられる。
【0131】
式(E−2)および(E−3)において、ArおよびArは、両者が存在する場合(E−3の場合)には同一または異なっていてもよく、炭素数6〜15のアリーレン基、好ましくは炭素数6〜10のアリーレン基を示す。具体例としては、フェニレン基またはナフチレン基が挙げられる。このアリーレン基は1〜4個、好ましくは1〜2個の置換基を有していてもよい。かかる置換基としては、(i)メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基およびtert−ブチル基の如き炭素数1〜4のアルキル基、(ii)ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基およびクミル基の如き炭素数7〜20のアラルキル基、(iii)Q−W−式で示される基(ここでWは−O−または−S−を示し、Qは炭素数1〜4、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基または炭素数6〜15、好ましくは6〜10のアリール基を示す)および(iv)フェニル基の如き炭素数6〜15のアリール基が挙げられる。
【0132】
式(E−2)および(E−3)において、mは1〜5の整数、好ましくは1〜3の整数を示し、特に好ましくは1である。
式(E−3)においてZはArおよびArを結合する単結合もしくは基であり、−Ar−Z−Ar−は通常ビスフェノールから誘導される残基である。かくしてZは単結合、−O−、−CO−、−S−、−SO−または炭素数1〜3のアルキレン基を示し、好ましくは単結合、−O−、またはイソプロピリデンである。
【0133】
さらに、本発明で使用できるフッ素含有樹脂としては、フィブリル形成能を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えばテトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、ビニルフルオライド、ビニリデンフルオライド、ヘキサフルオロプロピレン等のフッ素含有モノマーの単独または共重合体が挙げられる。特にフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンが好ましい。フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンとしてはテトラフルオロエチレンを乳化重合して得られるラテックスを凝析および乾燥した粉末(いわゆるポリテトラフルオロエチレンのファインパウダーであり、ASTM規格においてタイプ3に分類されるもの)が挙げられる。あるいはそのラテックスに界面活性剤を加え濃縮および安定化して製造される水性分散体(いわゆるポリテトラフルオロエチレンのディスパージョン)が挙げられる。
【0134】
かかるフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンの分子量は、標準比重から求められる数平均分子量において100万〜1,000万、より好ましく200万〜900万である。
さらにかかるフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンは、1次粒子径が0.05〜1.0μmの範囲のものが好ましく、より好ましくは0.1〜0.5μmである。ファインパウダーを使用する場合の2次粒子径としては1〜1,000μmのものが使用可能であり、さらに好ましくは10〜500μmのものを用いることができる。
【0135】
かかるポリテトラフルオロエチレンはUL規格の垂直燃焼テストにおいて試験片の燃焼テスト時に溶融滴下防止性能を有しており、かかるフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンとしては具体的には、例えば三井・デュポンフロロケミカル(株)製のテフロン(登録商標)6Jおよびテフロン(登録商標)30J、ダイキン化学工業(株)製のポリフロンMPA FA−500、ポリフロンF−201LおよびポリフロンD−1、および旭アイシーアイフロロポリマーズ(株)製のCD076などを挙げることができる。
【0136】
かかるポリテトラフルオロエチレンはファィンパウダーにおいて、2次凝集を防止するために各種の処理を施したものがより好ましく使用される。かかる処理としては、ポリテトラフルオロエチレンの表面を焼成処理することが挙げられる。またかかる処理としては、フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンの表面を非フィブリル形成能のポリテトラフルオロエチレンで被覆することが挙げられる。本発明においてより好ましいのは後者の処理を行ったポリテトラフルオロエチレンである。前者の場合には、目的とするフィブリル形成能が低下しやすいためである。かかる場合フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンが全体量の70〜95重量%の範囲であることが好ましい。またフィブリル非形成能ポリテトラフルオロエチレンとしては、その分子量が標準比重から求められる数平均分子量において1万〜100万、より好ましく1万〜80万である。
【0137】
かかるポリテトラフルオロエチレン(以下PTFEと称することがある)は、上記の通り固体形状の他、水性分散液形態のものも使用可能である。
かかるポリテトラフルオロエチレンは、通常の固体形状の他、水性エマルジョン、およびディスパージョン形態のものも使用可能であるが、分散剤成分が耐湿熱性に悪影響を与えやすいため、特に固体状態のものが好ましく使用できる。
【0138】
またかかるフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンは樹脂中での分散性を向上させ、さらに良好な外観および機械的特性を得るために、ポリテトラフルオロエチレンのエマルジョンとビニル系重合体のエマルジョンとの凝集混合物も好ましい形態として挙げることができる。
【0139】
ここでビニル系重合体としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、HIPS、AS樹脂、ABS樹脂、MBS樹脂、MABS樹脂、AAS樹脂、ポリメチル(メタ)アクリレート、スチレンおよびブタジエンからなるブロック共重合体およびその水添共重合体、スチレンおよびイソプレンからなるブロック共重合体、およびその水添共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレンのランダム共重合体およびブロック共重合体、エチレン−ブテンのランダム共重合体およびブロック共重合体、エチレンとα−オレフィンの共重合体、エチレン−ブチルアクリレート等のエチレン−不飽和カルボン酸エステルとの共重合体、ブチルアクリレート−ブタジエン等のアクリル酸エステル−ブタジエン共重合体、ポリアルキル(メタ)アクリレート等のゴム質重合体、ポリオルガノシロキサンおよびポリアルキル(メタ)アクリレートを含む複合ゴム、さらにかかる複合ゴムにスチレン、アクリロニトリル、ポリアルキルメタクリレート等のビニル系単量体をグラフトした共重合体等を挙げることができる。
【0140】
かかる凝集混合物を調製するためには、平均粒子径0.01〜1μm、特に0.05〜0.5μmを有する上記ビニル系重合体の水性エマルジョンを、平均粒子径0.05〜10μm、特に0.05〜1.0μmを有するポリテトラフルオロエチレンの水性エマルジョンと混合する。かかるポリテトラフルオロエチレンのエマルジョンは、含フッ素界面活性剤を用いる乳化重合でポリテトラフルオロエチレンを重合させることにより得られる。なお、かかる乳化重合の際、ヘキサフルオロプロピレン等の他の共重合体成分をポリテトラフルオロエチレン全体の10重量%以下で共重合させることも可能である。
【0141】
なお、かかる凝集混合物を得る際には、適当なポリテトラフルオロエチレンのエマルジョンは通常40〜70重量%、特に50〜65重量%の固形分含量を有し、ビニル系重合体のエマルジョンは25〜60重量%、特に30〜45重量%の固形分を有するものが使用される。さらに凝集混合物中のポリテトラフルオロエチレンの割合は、凝集混合物に使用されるビニル系重合体との合計100重量%中、1〜80重量%、特に1〜60重量%のものが好ましく使用できる。上記のエマルジョンを混合後、攪拌混合し塩化カルシウム、硫酸マグネシウム等の金属塩を溶解した熱水中に投入し、塩析、凝固させることにより分離回収する製造方法を好ましく挙げることができる。他に攪拌した混合エマルジョンをスプレー乾燥、凍結乾燥等の方法により回収する方法も挙げることができる。
【0142】
また、フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンのエマルジョンとビニル系重合体のエマルジョンとの凝集混合物の形態は種々のものが使用可能であり、例えばポリテトラフルオロエチレン粒子の周りをビニル系重合体が取り囲んだ形態、ビニル系重合体の周りをポリテトラフルオロエチレンが取り囲んだ形態、1つの粒子に対して、数個の粒子が凝集した形態などを挙げることができる。
【0143】
さらに、凝集混合体のさらに外層に、同じまたは別の種類のビニル系重合体がグラフト重合したものも使用可能である。かかるビニル系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、メタクリル酸メチル、アクリル酸シクロへキシル、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸ドデシル、アクリロニトリル、アクリル酸−2−エチルヘキシルを好ましく挙げることができ、これらは単独でもまた共重合することも可能である。
【0144】
上記のフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンのエマルジョンとビニル系重合体のエマルジョンとの凝集混合物の市販品としては、三菱レイヨン(株)よりメタブレン「A3000」、およびGEスペシャリティーケミカルズ社より「BLENDEX449」を代表例として挙げることができる。
【0145】
さらに、本発明の組成物は結晶化促進剤を含有していてもよい。結晶化促進剤を含有することで、機械的特性、耐熱性、および成形性に優れた成形品を得ることができる。
即ち結晶化促進剤の適用により、樹脂成分(A成分)の成形性、結晶性が向上し、通常の射出成形においても十分に結晶化し耐熱性、耐湿熱安定性に優れた成形品を得ることができる。加えて、成形品を製造する製造時間を大幅に短縮でき、その経済的効果は大きい。
【0146】
結晶化促進剤として、無機系の結晶化核剤および有機系の結晶化核剤のいずれをも使用することができる。
無機系の結晶化核剤として、タルク、カオリン、シリカ、合成マイカ、クレイ、ゼオライト、グラファイト、カーボンブラック、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫化カルシウム、窒化ホウ素、モンモリロナイト、酸化ネオジム、酸化アルミニウム、フェニルフォスフォネート金属塩等が挙げられる。これらの無機系の結晶化核剤は組成物中での分散性およびその効果を高めるために、各種分散助剤で処理され、一次粒子径が0.01〜0.5μm程度の高度に分散状態にあるものが好ましい。
【0147】
有機系の結晶化核剤としては、安息香酸カルシウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸リチウム、安息香酸カリウム、安息香酸マグネシウム、安息香酸バリウム、蓚酸カルシウム、テレフタル酸ジナトリウム、テレフタル酸ジリチウム、テレフタル酸ジカリウム、ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム、ミリスチン酸ナトリウム、ミリスチン酸カリウム、ミリスチン酸カルシウム、ミリスチン酸バリウム、オクタコ酸ナトリウム、オクタコ酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウム、モンタン酸ナトリウム、モンタン酸カルシウム、トルイル酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸カリウム、サリチル酸亜鉛、アルミニウムジベンゾエート、β−ナフトエ酸ナトリウム、β−ナフトエ酸カリウム、シクロヘキサンカルボン酸ナトリウム等の有機カルボン酸金属塩、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、スルホイソフタル酸ナトリウム等の有機スルホン酸金属塩が挙げられる。
【0148】
また、ステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、トリメシン酸トリス(t−ブチルアミド)等の有機カルボン酸アミド、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリイソプロピレン、ポリブテン、ポリ−4−メチルペンテン、ポリ−3−メチルブテン−1、ポリビニルシクロアルカン、ポリビニルトリアルキルシラン、高融点ポリ乳酸、エチレン−アクリル酸コポマーのナトリウム塩、スチレン−無水マレイン酸コポリマーのナトリウム塩(いわゆるアイオノマー)、ベンジリデンソルビトールおよびその誘導体、例えばジベンジリデンソルビトール等が挙げられる。
【0149】
これらのなかでタルク、および有機カルボン酸金属塩から選択された少なくとも1種が好ましく使用される。本発明で使用する結晶化核剤は1種のみでもよく、2種以上を併用しても良い。
結晶化促進剤の含有量は、樹脂成分(A成分)100重量部当たり、好ましくは0.01〜30重量部、より好ましくは0.05〜20重量部である。
【0150】
本発明の難燃性樹脂組成物の調製は、樹脂成分(A成分)、有機リン化合物(B成分)、充填剤(C成分)、耐衝撃改質剤(D成分)、および必要に応じてその他成分を、V型ブレンダー、スーパーミキサー、スーパーフローター、ヘンシェルミキサーなどの混合機を用いて予備混合し、かかる予備混合物は混練機に供給し、溶融混合する方法が好ましく採用される。混練機としては、種々の溶融混合機、例えばニーダー、単軸または二軸押出機などが使用でき、なかでも二軸押出機を用いて樹脂組成物を200〜300℃、好ましくは210〜280℃の温度で溶融して、サイドフィーダーにより液体成分を注入し、押出し、ペレタイザーによりペレット化する方法が好ましく使用される。
【0151】
また、C成分の充填剤種、殊にアスペクト比率の高い充填剤種によっては、プレブレンドによる溶融混合法でアスペクト比率の低下が起こり、得られる樹脂組成物の機械特性が低下する可能性があり、サイドフィーダーによる添加方法が好ましく使用される。
【0152】
本発明の難燃性樹脂組成物は、実質的にハロゲンを含有せず、非常に高い難燃性能を有し、家電製品部品、電気・電子部品、自動車部品、機械・機構部品、化粧品容器などの種々の成形品を成形する材料として有用である。具体的には、ブレーカー部品、スイッチ部品、モーター部品、イグニッションコイルケース、電源プラグ、電源コンセント、コイルボビン、コネクター、リレーケース、ヒューズケース、フライバクトランス部品、フォーカスブロック部品、ディストリビューターキャップ、ハーネスコネクターなどに好適に用いることができる。さらに、薄肉化の進むハウジング、ケーシングまたはシャーシ、例えば、電子・電気製品(例えば電話機、パソコン、プリンター、ファックス、コピー機、テレビ、ビデオデッキ、オーディオ機器などの家電・OA機器またはそれらの部品など)のハウジング、ケーシングまたはシャーシに有用である。特に優れた耐熱性、難燃性が要求されるプリンターの筐体、定着ユニット部品、ファックスなど家電・OA製品の機械・機構部品などとしても有用である。
【0153】
成形方法としては射出成形、ブロー成形、プレス成形等、特に限定されるものではないが、好ましくはペレット状の樹脂組成物を射出成形機を用いて、射出成形することにより製造される。
【実施例】
【0154】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、評価は下記の方法で行った。
【0155】
1.ステレオコンプレックスポリ乳酸(A−1成分)の製造
下記の製造例に示す方法により、ステレオコンプレックスポリ乳酸(A−1成分)の製造を行った。また製造例中における各値は下記の方法で求めた。
【0156】
(1)ポリマーの重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn):
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定、標準ポリスチレンに換算した。GPC測定機器は、検出器として、示差屈折計島津RID−6Aを用い、カラムとして東ソ−TSKgelG3000HXLを使用した。測定は、クロロホルムを溶離液とし温度40℃、流速1.0ml/minにて、濃度1mg/ml(1%ヘキサフルオロイソプロパノールを含むクロロホルム)の試料を10μl注入することにより行った。
【0157】
(2)カルボキシル基濃度
試料を精製o−クレゾールに窒素気流下で溶解した後、ブロモクレゾールブルーを指示薬とし、0.05規定水酸化カリウムのエタノール溶液で滴定した。
【0158】
(3)示差走査熱量計(DSC)の測定
DSC(TAインストルメント社製 TA−2920)を用いて試料の一回目の昇温過程において、190℃以上の融解ピークをステレオ結晶由来の融解ピークとし、その融解温度をTms、融解エンタルピーをHmsとした。また、190℃以下の融解ピークをホモ結晶由来の融解ピークとし、その融解温度をTmh、融解エンタルピーをHmhとして、下記式より、ステレオコンプレックス形成度のパラメーターを評価した。
ステレオ化度=△Hms/(△Hms+△Hmh)×100
【0159】
(4)エナンチオマー平均連鎖長
試料をHFIP/クロロホルム=1/1混合溶媒に溶解した後、メタノールで再沈させた。この再沈ポリマー成分をメタノールで超音波洗浄し、遠心分離を10回繰り返して不純物や溶媒成分を除去した後、真空乾燥機で1日乾燥し、測定サンプルとなり得るポリ乳酸成分を抽出した。
このようにして抽出した試料を用い、エナンチオマー平均連鎖長を以下のように測定した。
13−CNMR装置:日本ブルカー製 BURKER ARX−500
サンプル:50mg/0.7ml
測定溶媒:10% HFIP含有重水素化クロロホルム
内部標準:テトラメチルシラン(TMS)1%(v/v)
測定温度:27℃(300K)
測定周波数:125MHz
13C−NMR測定により、カルボニル炭素(C=O)に帰属される炭素のピークのうち、ピーク(a)(170.1−170.3MHz辺り)はホモ配列(LLLLLLまたはDDDDDD)に、ピーク(b)(170.0−169.8MHz辺り)はラセミ鎖(LLLDDD…)に帰属し、これらのピークの積分値から、下記の式により平均連鎖長を算出した。
v=ピーク(a)の積分値/ピーク(b)の積分値
【0160】
本発明の実施例、比較例においては、以下の材料を使用した。
[参考例:ジ−n−ヘキシルホスホノ酢酸エチル(DHPA)の合成]
亜リン酸トリヘキシル100重量部とブロモ酢酸エチル100重量部とを反応容器に入れ、内部を窒素置換した。つづいて反応容器を170℃に昇温して、加熱還流させながら3時間反応を実施した。反応混合物を80℃で過剰のブロモ酢酸エチルを減圧留去した後、190℃で減圧蒸留を行い、無色透明な液体を得た(収率84%、沸点146℃/0.5mmHg)。
【0161】
[α−1成分:ポリL−乳酸の製造(PLLA)]
[製造例1]
冷却留出管を備えた重合反応容器の原料仕込み口から、窒素気流下でL−ラクチド(株式会社武蔵野化学研究所製、光学純度100%)100重量部およびステアリルアルコール0.15重量部を仕込んだ。続いて反応容器内を5回窒素置換し、L−ラクチドを190℃にて融解させた。L−ラクチドが完全に融解した時点で、オクチル酸スズを0.005重量部のトルエン500μL溶液を添加し、190℃で1時間重合した。重合終了後、ジ−n−ヘキシルホスホノ酢酸エチル0.082重量部を原料仕込み口から添加し、15分間混練した。最後に余剰のL−ラクチドを脱揮して、反応容器内から重合物を吐出し、チップ化し、ポリL−乳酸(PLLA)を得た。
得られたポリL−乳酸樹脂の重量平均分子量は15.1万、ガラス転移点(Tg)55℃、融解ピーク温度(Tmh)は177℃、カルボキシル基含有量は15eq/ton、エナンチオマー平均連鎖長はシンジオタクチック連結部が測定できず、算出不可であった。
【0162】
[β−1成分:ポリD−乳酸の製造(PDLA)]
[製造例2]
製造例1のL−ラクチドのかわりにD−ラクチド(株式会社武蔵野化学研究所製、光学純度100%)を使用する以外は製造例1と同様の操作を行い、ポリD−乳酸(PDLA)を得た。得られたポリD−乳酸樹脂の重量平均分子量は15.2万、ガラス転移点(Tg)55℃、融解ピーク温度(Tmh)は177℃、カルボキシル基含有量は14eq/ton、エナンチオマー平均連鎖長はシンジオタクチック連結部が測定できず、算出不可であった。
【0163】
[A−1成分:ステレオコンプレックスポリ乳酸の製造(scPLA)]
[製造例3]
製造例1および2で得られたPLLA,PDLAの各50重量部よりなるポリ乳酸樹脂計100重量部並びに燐酸−2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ナトリウム(アデカスタブNA−11:(株)ADEKA製)0.1重量部をブレンダーで混合後、110℃で5時間乾燥し、径30mmφのベント式二軸押出機[(株)日本製鋼所製TEX30XSST]に供給し、シリンダー温度250℃、スクリュー回転数250rpm、吐出量9kg/h、およびベント減圧度3kPaで溶融押出してペレット化し、ステレオコンプレックスポリ乳酸を得た。得られたステレオコンプレックスポリ乳酸の重量平均分子量は13万、ガラス転移点(Tg)58℃、コンプレックス相ポリ乳酸結晶融解ピーク温度(Tms)は220℃、カルボキシル基含有量は17eq/ton、エナンチオマー平均連鎖長は28、示差走査熱量計(DSC)測定の昇温過程における融解ピークのうち195℃以上の融解ピークの割合が100%であった。なおNA−11の添加量はPLLA,PDLAの合計100重量部あたりの重量部である。
【0164】
2.有機リン化合物(B成分)の製造
下記の製造例に示す方法により、有機リン化合物(B成分)の製造を行った。また製造例中における各値は下記の方法で求めた。
【0165】
(5)有機リン化合物の酸価
JIS−K−3504に準拠して測定を実施した。
【0166】
(6)有機リン化合物のHPLC純度
試料をアセトニトリルと水の6:4(容量比)の混合溶液に溶解し、その5μlをカラムに注入した。カラムは野村化学(株)製Develosil ODS−7 300mm×4mmφを用い、カラム温度は40℃とした。検出器はUV−260nmを用いた。
【0167】
(7)有機リン化合物の31PNMR純度
核磁気共鳴測定装置(JEOL製、JNM−AL400)により、リン原子の核磁気共鳴を測定し(DMSO−d、162MHz、積算回数3072回)、積分面積比をリン化合物の31PNMR純度とした。
【0168】
[調製例1]
2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジベンジル−3,9−ジオキサイド(FR−1)の調製
温度計、コンデンサー、滴下ロートを備えた反応容器にペンタエリスリトール816.9g(6.0モル)、ピリジン19.0g(0.24モル)、トルエン2250.4g(24.4モル)を仕込み、攪拌した。該反応容器に三塩化リン1651.8g(12.0モル)を該滴下ロートを用い添加し、添加終了後、60℃にて加熱攪拌を行った。反応後、室温まで冷却し、得られた反応物に塩化メチレン26.50部を添加し、氷冷しながらターシャリーブタノール889.4g(12.0モル)および塩化メチレン150.2g(1.77モル)を滴下した。得られた結晶をトルエンおよび塩化メチレンにて洗浄しろ過した。得られたろ取物を80℃、1.33×10Paで12時間乾燥し、白色の固体1341.1g(5.88モル)を得た。得られた固体は31P、HNMRスペクトルにより2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジヒドロ−3,9−ジオキサイドである事を確認した。
【0169】
温度計、コンデンサー、滴下ロートを備えた反応容器に得られた2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジヒドロ−3,9−ジオキサイド1341.0g(5.88モル)、DMF6534.2g(89.39モル)を仕込み、攪拌した。該反応容器に氷冷下ナトリウムメトキシド648.7g(12.01モル)を添加した。氷冷にて2時間攪拌した後に、室温にて5時間攪拌を行った。さらにDMFを留去した後に、DMF2613.7g(35.76モル)を添加し、該反応混合物に氷冷にてベンジルブロマイド2037.79g(11.91モル)滴下した。氷冷下3時間攪拌した後、DMFを留去し、水8Lを加え、析出した固体を濾取、水2Lで2回洗浄した。得られた粗精製物とメタノール4Lをコンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に入れ、約2時間還流した。室温まで冷却後、結晶をろ過により分離し、メタノール2Lで洗浄した後、得られたろ取物を120℃、1.33×10Paで19時間乾燥し、白色の鱗片状結晶1863.5g(4.56モル)を得た。得られた結晶は31P、HNMRスペクトルおよび元素分析により2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジベンジル−3,9−ジオキサイドである事を確認した。収率は76%、31PNMR純度は99%であった。また、本文記載の方法で測定したHPLC純度は99%であった。酸価は0.06mgKOH/gであった。
【0170】
H−NMR(DMSO−d,300MHz):δ7.2−7.4(m,10H),4.1−4.5(m,8H),3.5(d,4H)、31P−NMR(DMSO−d,120MHz):δ23.1(S)、融点:255−256℃、元素分析 計算値:C,55.89;H,5.43、測定値:C,56.24;H,5.35
【0171】
[調製例2]
2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジベンジル−3,9−ジオキサイド(FR−2)の調製
攪拌機、温度計、コンデンサーを有する反応容器に、3,9−ジベンジロキシ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン22.55g(0.055モル)、ベンジルブロマイド19.01g(0.11モル)およびキシレン33.54g(0.32モル)を充填し、室温下攪拌しながら、乾燥窒素をフローさせた。次いでオイルバスで加熱を開始し、還流温度(約130℃)で4時間加熱、攪拌した。加熱終了後、室温まで放冷し、キシレン20mLを加え、さらに30分攪拌した。析出した結晶をろ過により分離し、キシレン20mLで2回洗浄した。得られた粗精製物とメタノール40mLをコンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に入れ、約2時間還流した。室温まで冷却後、結晶をろ過により分離し、メタノール20mLで洗浄した後、得られたろ取物を120℃、1.33×10Paで19時間乾燥し、白色の鱗片状結晶を得た。生成物は質量スペクトル分析、H、31P核磁気共鳴スペクトル分析および元素分析でビスベンジルペンタエリスリトールジホスホネートであることを確認した。収量は20.60g、収率は91%、31PNMR純度は99%であった。また、本文記載の方法で測定したHPLC純度は99%であった。酸価は0.05mgKOH/gであった。
【0172】
H−NMR(DMSO−d,300MHz):δ7.2−7.4(m,10H),4.1−4.5(m,8H),3.5(d,4H)、31P−NMR(DMSO−d,120MHz):δ23.1(S)、融点:257℃
【0173】
[調製例3]
2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジα−メチルベンジル−3,9−ジオキサイド(FR−3)の調製
温度計、コンデンサー、滴下ロートを備えた反応容器にペンタエリスリトール816.9g(6.0モル)、ピリジン19.0g(0.24モル)、トルエン2250.4g(24.4モル)を仕込み、攪拌した。該反応容器に三塩化リン1651.8g(12.0モル)を該滴下ロートを用い添加し、添加終了後、60℃にて加熱攪拌を行った。反応後、室温まで冷却し、得られた反応物に塩化メチレン5180.7g(61.0モル)を添加し、氷冷しながらターシャリーブタノール889.4g(12.0モル)および塩化メチレン150.2g(1.77モル)を滴下した。得られた結晶をトルエンおよび塩化メチレンにて洗浄しろ過した。得られたろ取物を80℃、1.33×10Paで12時間乾燥し、白色の固体1341.1g(5.88モル)を得た。得られた固体は31P、HNMRスペクトルにより2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジヒドロ−3,9−ジオキサイドである事を確認した。
【0174】
温度計、コンデンサー、滴下ロートを備えた反応容器に得られた2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジヒドロ−3,9−ジオキサイド1341.0g(5.88モル)、DMF6534.2g(89.39モル)を仕込み、攪拌した。該反応容器に氷冷下ナトリウムメトキシド648.7g(12.01モル)を添加した。氷冷にて2時間攪拌した後に、室温にて5時間攪拌を行った。さらにDMFを留去した後に、DMF2613.7g(35.76モル)を添加し、該反応混合物に氷冷にて1−フェニルエチルブロマイド2204.06g(11.91モル)滴下した。氷冷下3時間攪拌した後、DMFを留去し、水8Lを加え、析出した固体を濾取、水2Lで2回洗浄した。得られた粗精製物とメタノール4Lをコンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に入れ、約2時間還流した。室温まで冷却後、結晶をろ過により分離し、メタノール2Lで洗浄した後、得られたろ取物を120℃、1.33×10Paで19時間乾燥し、白色の鱗片状結晶1845.9g(4.23モル)を得た。得られた固体は31PNMR、HNMRスペクトルおよび元素分析により2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9−ジα−メチルベンジル−3,9−ジオキサイドである事を確認した。31PNMR純度は99%であった。また、本文記載の方法で測定したHPLC純度は99%であった。酸価は0.03mgKOH/gであった。
【0175】
H−NMR(CDCl,300MHz):δ7.2−7.4(m,10H),4.0−4.2(m,4H),3.4−3.8(m,4H),3.3(qd,4H),1.6(ddd,6H)、31P−NMR(CDCl,120MHz):δ28.7(S)、融点:190−210℃、元素分析 計算値:C,57.80;H,6.01、測定値:C,57.83;H,5.96
【0176】
[調製例4]
2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジ(2−フェニルエチル)−3,9−ジオキサイド(FR−4)の調製
温度計、コンデンサー、滴下ロートを備えた反応容器にペンタエリスリトール816.9g(6.0モル)、ピリジン19.0g(0.24モル)、トルエン2250.4g(24.4モル)を仕込み、攪拌した。該反応容器に三塩化リン1651.8g(12.0モル)を該滴下ロートを用い添加し、添加終了後、60℃にて加熱攪拌を行った。反応後、室温まで冷却し、得られた反応物に塩化メチレン5180.7g(61.0モル)を添加し、氷冷しながらターシャリーブタノール889.4g(12.0モル)および塩化メチレン150.2g(1.77モル)を滴下した。得られた結晶をトルエンおよび塩化メチレンにて洗浄しろ過した。得られたろ取物を80℃、1.33×10Paで12時間乾燥し、白色の固体1341.1g(5.88モル)を得た。得られた固体は31P、HNMRスペクトルにより2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジヒドロ−3,9−ジオキサイドである事を確認した。
【0177】
温度計、コンデンサー、滴下ロートを備えた反応容器に得られた2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジヒドロ−3,9−ジオキサイド1341.0g(5.88モル)、DMF6534.2g(89.39モル)を仕込み、攪拌した。該反応容器に氷冷下ナトリウムメトキシド648.7g(12.01モル)を添加した。氷冷にて2時間攪拌した後に、室温にて5時間攪拌を行った。さらにDMFを留去した後に、DMF2613.7g(35.76モル)を添加し、該反応混合物に氷冷にて(2−ブロモエチル)ベンゼン2183.8g(11.8モル)滴下した。氷冷下3時間攪拌した後、DMFを留去し、水8Lを加え、析出した固体を濾取、水2Lで2回洗浄した。得られた粗精製物とメタノール4Lをコンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に入れ、約2時間還流した。室温まで冷却後、結晶をろ過により分離し、メタノール2Lで洗浄した後、得られたろ取物を120℃、1.33×10Paで19時間乾燥し、白色の粉末1924.4g(4.41モル)を得た。得られた固体は31PNMR、HNMRスペクトルおよび元素分析により2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9−ジ(2−フェニルエチル)−3,9−ジオキサイドである事を確認した。31PNMR純度は99%であった。また、本文記載の方法で測定したHPLC純度は99%であった。酸価は0.03mgKOH/gであった。
【0178】
H−NMR(CDCl,300MHz):δ7.1−7.4(m,10H),3.85−4.65(m,8H),2.90−3.05(m,4H),2.1−2.3(m,4H)、31P−NMR(CDCl,120MHz):δ31.5(S)、融点:245−246℃、元素分析 計算値:C,57.80;H,6.01、測定値:C,58.00;H,6.07
【0179】
[調製例5]
2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9−ビス(ジフェニルメチル)−3,9−ジオキサイド(FR−6)の調製
攪拌装置、攪拌翼、還流冷却管、温度計を備えた10リットル三つ口フラスコに、ジフェニルメチルホスホン酸ジクロリドを2058.5g(7.22モル)とペンタエリスリトール468.3g(3.44モル)、ピリジン1169.4g(14.8モル)、クロロホルム8200gを仕込み、窒素気流下、60℃まで加熱し、6時間攪拌させた。反応終了後、クロロホルムを塩化メチレンで置換し、当該反応混合物に蒸留水6Lを加え攪拌し、白色粉末を析出させた。これを吸引濾過により濾取し、得られた白色物をメタノールを用いて洗浄した後、100℃、1.33×10Paで10時間乾燥し、白色の固体1156.2gを得た。得られた固体は31P−NMR、H−NMRスペクトルおよび元素分析により2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9−ビス(ジフェニルメチル)−3,9−ジオキサイドである事を確認した。31P−NMR純度は99%であった。また、本文記載の方法で測定したHPLC純度は99%であった。酸価は0.3mgKOH/gであった。
【0180】
H−NMR(DMSO−d6,300MHz):δ7.20−7.60(m,20H),5.25(d,2H),4.15−4.55(m,8H)、31P−NMR(DMSO−d6,120MHz):δ20.9、融点:265℃、元素分析 計算値:C,66.43;H,5.39、測定値:C,66.14;H,5.41
【0181】
実施例、比較例で作成した樹脂組成物の評価は下記方法で行った。
(8)難燃性(UL−94評価)
難燃性は厚さ1/16インチ(1.6mm)のテストピースを用い、難燃性の評価尺度として、米国UL規格のUL−94に規定されている垂直燃焼試験に準じて評価を行った。
UL−94垂直燃焼試験は、試験片5本を一組の試験として行い、どの試験片も10秒間の着炎を2回繰り返す。但し、一度目の着炎で全焼する試験片に関しては、その限りではない。1回目の着炎後、炎を取り去った後の燃焼時間を測定し、消炎後、2回目の着炎を行う。2回目の着炎後、炎を取り去った後の燃焼時間を測定する。5本一組の試験で、計10回の燃焼時間が測定でき、いずれの燃焼時間も10秒以内で消火し、10回の燃焼時間の合計が50秒以内であり、且つ、滴下物が綿着火をおこさないものがV−0、いずれの燃焼時間も30秒以内で消火し、10回の燃焼時間の合計が250秒以内であり、且つ、滴下物が綿着火をおこさないものがV−1、いずれの燃焼時間も30秒以内で消火し、10回の燃焼時間の合計が250秒以内であり、且つ、滴下物が綿着火をおこすものがV−2、この評価基準以下のものをnotVとした。
【0182】
(9)耐熱性(荷重たわみ温度;HDT)
ISO75−2に従った方法により6.35mm(1/4インチ)試験片を用いて1.8MPaの荷重で荷重たわみ温度(HDT)を測定した。
【0183】
(10)耐衝撃性(ノッチ付きシャルピー衝撃強度)
ISO179に準拠し、ノッチ付きシャルピー衝撃強度を測定した。
【0184】
実施例、比較例で用いる各成分は以下のものを用いた。
(I)ステレオコンプレックスポリ乳酸樹脂(A−1成分)
(i)製造例3で製造したステレオコンプレックスPLAを用いた(以下scPLAと称する)。
(II)A−1成分以外の樹脂成分(A−2成分)
(i)市販のポリ乳酸(Nature Works製 4032D;ポリL−乳酸樹脂)を用いた(以下PLLAと称する)。
(ii)市販のポリブチレンテレフタレート樹脂(帝人(株)製 TRB−H)を用いた(以下PBTと称する)。230℃、3.8kg荷重で測定したMVR値は、9.5cm/10minであった。
(iii)市販のポリカーボネート樹脂(帝人化成(株)製 パンライトL−1225)を用いた(以下PCと称する)。末端OH基含有量=14eq/ton、300℃、1.2kg荷重で測定したMVR値は、10.1cm/10minであった。
(iv)市販の耐衝撃性ポリスチレン(PSジャパン(株)製 PSJポリスチレンH9152)を用いた(以下HIPSと称する)。200℃、5kg荷重におけるMVR値は、5.7cm/10minであった。
(v)市販のABS樹脂(日本エイアンドエル(株)製 サンタックUT−61)を用いた(以下ABSと称する)。220℃、10kg荷重におけるMVR値は、35cm/10minであった。
(vi)市販のポリフェニレンエーテル樹脂(旭化成工業(株)製 ザイロンP−402)を用いた(以下PPEと称する)。
(III)有機リン化合物(B成分)
(i)調製例1で合成した2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9−ジベンジル−3,9−ジオキサイド{前記式(1−a)の有機リン化合物}を用いた(以下FR−1と称する)。
(ii)調製例2で合成した2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9−ジベンジル−3,9−ジオキサイド{前記式(1−a)の有機リン化合物}を用いた(以下FR−2と称する)。
(iii)調製例3で合成した2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9−ジα−メチルベンジル−3,9−ジオキサイド{前記式(1−b)の有機リン化合物}を用いた(以下FR−3と称する)。
(iv)調製例4で合成した2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9−ジ(2−フェニルエチル)−3,9−ジオキサイド{前記式(1−c)の有機リン化合物}を用いた(以下FR−4と称する)。
(v)調製例5で合成した2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9−ビス(ジフェニルメチル)−3,9−ジオキサイド{前記式(1−d)の有機リン化合物}を用いた(以下FR−5と称する)。
(IV)充填剤(C成分)
(i)市販のミルドファイバー(日東紡(株)製 PFE−301)を用いた(以下MFと称する)。
(ii)市販のチョップドストランド(日東紡(株)製 CS3PE−455)を用いた(以下CSと称する)。
(V)耐衝撃改質材(D成分)
(i)市販の水素添加スチレン系熱可塑性エラストマー((株)クラレ製 セプトン8006)を用いた。
(VI)その他の有機リン化合物
(i)1,3−フェニレンビス[ジ(2,6−ジメチルフェニル)フォスフェート](大八化学工業(株)製PX−200)を用いた(以下PX−200と称する)
(VII)タルク
(i)市販のタルク(日本タルク(株)製P−3)を用いた。
【0185】
[実施例1〜46および比較例1〜29]
表1〜5記載の各成分を表1〜5記載の量(重量部)でタンブラーにて配合し、15mmφ二軸押出機(テクノベル製、KZW15)にてペレット化した。得られたペレットを100℃の熱風乾燥機にて24時間乾燥を行った。乾燥したペレットを射出成形機((株)日本製鋼所製 J75EIII)にて成形した。成形板を用いて評価した結果を表1〜5に示した。
【0186】
【表1】

【0187】
【表2】

【0188】
【表3】

【0189】
【表4】

【0190】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0191】
本発明の難燃性樹脂組成物は、家電製品部品、電気・電子部品、自動車部品、機械・機構部品、化粧品容器などの種々の成形品を成形する材料として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ステレオコンプレックスポリ乳酸(A−1成分)を少なくとも50重量%含有する樹脂成分(A成分)100重量部に対して、(B)下記式(1)で表される有機リン化合物(B成分)1〜100重量部を含有する難燃性樹脂組成物。
【化1】

(式中、X、Xは同一もしくは異なり、下記式(2)で表される芳香族置換アルキル基である。)
【化2】

(式中、ALは炭素数1〜5の分岐状または直鎖状の脂肪族炭化水素基であり、Arは置換基を有しても良いフェニル基、ナフチル基、またはアントリル基である。nは1〜3の整数を示し、ArはAL中の任意の炭素原子に結合することができる。)
【請求項2】
A−1成分のステレオコンプレックスポリ乳酸が、L−乳酸単位を90モル%以上含有するポリL−乳酸(α−1成分)とD−乳酸単位を90モル%以上含有するポリD−乳酸(β−1成分)を含有しα−1成分とβ−1成分の重量比が10:90〜90:10の範囲にある請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項3】
A−1成分のステレオコンプレックスポリ乳酸は、示差走査熱量計(DSC)測定の昇温過程における融解ピークのうち195℃以上の割合が80%以上である請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項4】
樹脂成分(A成分)中のステレオコンプレックスポリ乳酸(A−1成分)以外の樹脂成分(A−2成分)がA−1成分以外のポリエステル樹脂(PEst)、ポリフェニレンエーテル樹脂(PPE)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリアミド樹脂(PA)、ポリオレフィン樹脂(PO)、スチレン系樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)およびポリエーテルイミド樹脂(PEI)からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂成分である請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項5】
さらに、(C)充填剤(C成分)1〜200重量部を含有する請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項6】
さらに、(D)耐衝撃改質剤(D成分)1〜100重量部を含有する請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項7】
有機リン化合物(B成分)は、下記式(3)および下記式(4)で表される有機リン化合物よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物である請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
【化3】

(式中、R、Rは同一または異なっていてもよく、置換基を有しても良いフェニル基、ナフチル基、またはアントリル基である。R、R、R、Rは同一または異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜4の分岐状または直鎖状のアルキル基、置換基を有しても良いフェニル基、ナフチル基、またはアントリル基から選択される置換基である。)
【化4】

(式中、ArおよびArは、同一又は異なっていても良く、フェニル基、ナフチル基またはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。R11、R12、R13およびR14は、同一又は異なっていても良く、水素原子、炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基またはフェニル基、ナフチル基もしくはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。ALおよびALは、同一又は異なっていても良く、炭素数1〜4の分岐状または直鎖状の脂肪族炭化水素基である。ArおよびArは、同一又は異なっていても良く、フェニル基、ナフチル基またはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。pおよびqは0〜3の整数を示し、ArおよびArはそれぞれALおよびALの任意の炭素原子に結合することができる。)
【請求項8】
有機リン化合物(B成分)が、下記式(5)で表される請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
【化5】

(式中、R21、R22は同一もしくは異なり、フェニル基、ナフチル基またはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。)
【請求項9】
有機リン化合物(B成分)が、下記式(1−a)で示される化合物である請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
【化6】

【請求項10】
有機リン化合物(B成分)が、下記式(6)で表される請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
【化7】

(式中、R31およびR34は、同一又は異なっていても良く、水素原子または炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基である。R33およびR36は、同一または異なっていても良く、炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基である。R32およびR35は、同一または異なっていてもよく、フェニル基、ナフチル基またはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。)
【請求項11】
有機リン化合物(B成分)が、下記式(1−b)で示される化合物である請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
【化8】

【請求項12】
有機リン化合物(B成分)が、下記式(7)で表される請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
【化9】

(式中、ArおよびArは、同一又は異なっていても良く、フェニル基、ナフチル基またはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。R11、R12、R13およびR14は、同一又は異なっていても良く、水素原子、炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基またはフェニル基、ナフチル基もしくはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。ALおよびALは、同一又は異なっていても良く、炭素数1〜4の分岐状または直鎖状の脂肪族炭化水素基である。ArおよびArは、同一又は異なっていても良く、フェニル基、ナフチル基またはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。pおよびqは0〜3の整数を示し、ArおよびArはそれぞれALおよびALの任意の炭素原子に結合することができる。)
【請求項13】
有機リン化合物(B成分)が、下記式(1−c)で示される化合物である請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
【化10】

【請求項14】
有機リン化合物(B成分)が、下記式(8)で表される請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
【化11】

(式中、R41およびR44は、同一又は異なっていても良く、水素原子、炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基またはフェニル基、ナフチル基もしくはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。R42、R43、R45およびR46は、同一または異なっていても良く、フェニル基、ナフチル基またはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。)
【請求項15】
有機リン化合物(B成分)が、下記式(1−d)で示される化合物である請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
【化12】

【請求項16】
耐衝撃性改質剤(D成分)の少なくとも50重量%が水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーである請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項17】
耐衝撃性改質剤(D成分)の少なくとも50重量%が、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン三元共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン三元共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン三元共重合体(SEEPS)から選択される少なくとも1種の水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーである請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項18】
有機リン化合物(B成分)の酸価が0.7mgKOH/g以下である請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項19】
樹脂成分(A成分)100重量部に対して、結晶化促進剤0.01〜30重量部を含む請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項20】
UL−94規格の難燃レベルにおいて、少なくともV−2を達成する請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項21】
請求項1記載の難燃性樹脂組成物より形成された成形品。

【公開番号】特開2012−92231(P2012−92231A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−241009(P2010−241009)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(000215888)帝人化成株式会社 (504)
【Fターム(参考)】