説明

難燃性樹脂組成物及びそれからなる成形体

【課題】難燃性樹脂組成物及び繊維や薄物成形体の提供。
【解決手段】下記の成分(A)〜(C)を含む難燃性樹脂組成物。(A)ポリオレフィン系樹脂:90〜99.6質量%(B)リン酸エステルアミド:0.2〜8質量%(C)下記式(1)で示されるNOR型ヒンダードアミン系安定剤:0.2〜2.0質量%


[式中、R〜Rはそれぞれ水素原子又は下記式(2)の有機基を表す。R〜Rの少なくとも1つはトリアジン環を介してNOR型ヒンダードアミンの基を2ヶ有する基である。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性樹脂組成物及びそれからなる成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン樹脂は、優れた化学的特性及び機械的特性により、建材、自動車部品、包装用資材、農業用資材、家電製品のハウジング材、玩具等に広く使用されている。しかし、ポリオレフィン樹脂は可燃性物質であり、用途によっては難燃化が不可欠である。
難燃化の方法としては、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、金属水酸化物や窒素化合物を単独で又は組み合わせて使用することが広く知られている。
【0003】
近年、燃焼時に有毒なガスを発生するハロゲン系難燃剤を使用することなく、優れた難燃性を有する非ハロゲン系の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物が求められている。
【0004】
例えば、フィルム、シート、パイプ、容器、電線、ケーブル等の成形品の用途では、ポリオレフィン系樹脂に難燃剤と赤リンとが配合された架橋性難燃組成物が開示されている(特許文献1参照)。この文献では難燃剤として、リン系難燃剤、無機系難燃剤等の添加型難燃剤が挙げられている。
【0005】
しかし、これらの難燃剤を使用した樹脂材料はいずれも、難燃剤が極めて高濃度で配合されているため、厚手のシートや各種の成形品に用いる場合は問題ないが、繊維用途や薄層フィルムに用いる場合には、物性的に低強度の繊維やフィルムしか得られない。また、製糸又は製膜時の製造安定性も問題となる。さらに、繊維や、フィルム等の薄物成形体では、その厚み又は直径が0.3mm未満になると難燃性が著しく低下する問題がある。
【0006】
薄物難燃性繊維の技術として、熱可塑性樹脂、特にエンジニアリングプラスチックにリン酸エステルアミドを配合した例がある(特許文献2参照)。その実施例では、ポリエチレンテレフタレート及びポリアミド等のエンジニアリングプラスチック100重量部に、リン酸エステルアミドを10重量部以上配合し、難燃性繊維を作製している。
しかしながら、ポリオレフィンにリン酸エステルアミドを10重量部以上配合すると、混練時及び成形時にリン酸エステルアミドが著しくブリードアウトするため、混練及び成形は不可能である。一方、ポリオレフィンにリン酸エステルアミドを通常の添加剤配合量程度(1質量%)添加しても、難燃性は十分に発現しない。
【0007】
ところで、耐光安定剤として知られているヒンダードアミン化合物のうち、特に、NOR型ヒンダードアミン化合物が繊維やフィルム等の薄物成形体の厚みの領域で、添加剤配合量程度で難燃性能を示すことが開示されている(特許文献3参照)。このNOR型ヒンダードアミン化合物は、多様な樹脂材料に添加でき、また、配合量が添加剤程度であるので、製糸及び製膜時の安定性は問題ない。しかしながら、難燃性能は必ずしも十分とはいえない。
【0008】
また、難燃性を改善するため、NOR型ヒンダードアミン化合物とリン酸エステル系難燃剤との併用(添加剤配合量程度)も提案されている(特許文献4参照)。しかしながら、難燃性は十分ではなかった。
【特許文献1】特開平7−102128号公報
【特許文献2】特開2004−59843号公報
【特許文献3】国際公開第99/00450パンフレット
【特許文献4】特開2001−348724号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上述の問題に鑑みなされたものであり、繊維や薄物成形体であっても、高い難燃性を有する成形品が得られる難燃性樹脂組成物及びそれからなる成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究したところ、ポリオレフィン/NOR型ヒンダードアミン化合物からなる難燃性樹脂組成物に、リン酸エステルアミド系難燃剤を少量添加することにより、繊維や薄物成形体の難燃性を向上できることを見出した。また、この難燃性樹脂組成物に、無機系難燃剤を添加することにより、さらに、難燃性を向上できることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
本発明によれば、以下の難燃性樹脂組成物及び成形体が提供される。
1.下記の成分(A)〜(C)を含む難燃性樹脂組成物。
(A)ポリオレフィン系樹脂:90〜99.6質量%
(B)リン酸エステルアミド:0.2〜8質量%
(C)下記式(1)で示されるNOR型ヒンダードアミン系安定剤:0.2〜2質量%
【化5】

[式中、R〜Rはそれぞれ水素原子又は下記式(2)の有機基を表す。R〜Rの少なくとも1つは下記式(2)の有機基である。
【化6】

(式中、Rは炭素数1〜17のアルキル基、炭素数5〜10のシクロアルキル基、フェニル基又は炭素数7〜15のフェニルアルキル基を表し、R、R、R及びRはそれぞれ炭素数1〜4からなるアルキル基を表す。R10は水素原子、又は炭素数1〜12の直鎖あるいは分岐鎖のアルキル基を表す。)]
【0012】
2.さらに、(D)無機系難燃剤を、前記成分(A)〜(D)の合計量に対して、0.2〜5質量%含む1記載の難燃性樹脂組成物。
【0013】
3.前記(B)成分のリン酸エステルアミドが、下記式(3)で表される化合物である1又は2記載の難燃性樹脂組成物。
【化7】

[式中、A〜Aは、それぞれ−OR11(R11はアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を示し、これらの基は置換基を有していてもよい)又は−NR1213(R12及びR13は、それぞれ水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を示す。これらは置換基を有していてもよく、また、R12及びR13は互いに結合して環を形成していてもよい。)を示す。Aはジアミン残基又はアリーレンジオキシ基を示し、nは0〜20の整数を示す。Aがジアミン残基でない場合、A〜Aの少なくとも1つは、−NR1213で示される基である。]
【0014】
4.前記式(3)のAが、下記式(4)又は(5)で表される有機基である3項記載の難燃性樹脂組成物。
【化8】

(式中、R14及びR15は、それぞれ水素原子、アルキル基、又はシクロアルキル基を示し、R14及びR15は互いに結合して環を形成してもよい。Zはアルキレン基、シクロアルキレン基又は二価の芳香族性基を示す。Zは二価の芳香族性基を示す。)
【0015】
5.前記成分(D)の無機系難燃剤が、ハイドロタルサイト、ドロマイト系化合物、酸化マグネシウム、硼酸亜鉛及び錫酸亜鉛の中から選択される少なくとも1種の難燃剤である1〜4のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物。
6.上記1〜5のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物からなる厚さ0.3mm未満の薄物成形体。
7.上記1〜5のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物からなる繊維。
【発明の効果】
【0016】
本発明の難燃性樹脂組成物では、繊維や、厚さが0.3mm未満の薄物成形品であっても高い難燃性を有する成形品が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の難燃性樹脂組成物を具体的に説明する。
本発明の難燃性樹脂組成物は、下記の成分(A)〜(C)を含む。
(A)ポリオレフィン系樹脂:90〜99.6質量%
(B)リン酸エステルアミド:0.2〜8質量%
(C)後述する式(1)で示されるNOR型ヒンダードアミン系安定剤:0.2〜2.0質量%
尚、質量分率は上記(A)〜(C)成分の合計質量に対する値を意味する。
さらに、(D)無機系難燃剤を、成分(A)〜(D)の合計量に対して、0.2〜5質量%含むことが好ましい。尚、組成物に成分(D)を添加した分、成分(A)の混合比率を低減すればよい。即ち、成分(A)のポリオレフィン系樹脂の混合比率は85〜99.4質量%となる。
以下、成分(A)〜(D)について説明する。
【0018】
(A)ポリオレフィン系樹脂
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂及びオレフィン系合成ゴム等が挙げられる。
【0019】
ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体(ポリプロピレン)、プロピレンを主成分とする共重合体が挙げられる。この共重合体としては、例えば、プロピレン/α−オレフィン共重合体が挙げられ、α−オレフィンとしては、例えば、エチレン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−ブテン、1−ペンテン等が挙げられる。
【0020】
ポリエチレン系樹脂としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレン等が挙げられる。
【0021】
オレフィン系合成ゴムとしては、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、エチレン−1−ブテンゴム、エチレン−酢酸ビニルゴム等があげられる。
【0022】
この中で、延伸効果に優れるプロピレン単独重合体、低密度ポリエチレンが好ましい。
尚、ポリオレフィン系樹脂のメルトインデックス(MI)は高いほうがより難燃性が高くなる。
具体的には、温度230℃、荷重2.16kg/10分の条件で測定したMIが3(g/10分)以上であるポリオレフィン系樹脂が好ましく、特にMIが10(g/10分)以上あるポリオレフィン系樹脂が難燃性の点から好ましい。但し、MIが30(g/10分)を超えるとフィルムの成形が困難であり、また、MIが50(g/10分)を超えると繊維の成形は可能であるが、低強度の繊維しか得られない。
【0023】
成分(A)〜(C)の合計質量に占める(A)成分の配合量は、後述する(B)〜(C)成分の配合量との関連から、90〜99.6質量%、好ましくは96.2〜99.4質量%、特に好ましくは96.7〜99.0質量%である。
また、成分(D)を配合したときの、成分(A)〜(D)の合計質量に占める(A)成分の配合量は、85〜99.4質量%、好ましくは94.2〜99.1質量%、特に好ましくは94.9〜98.5質量%である。
【0024】
(B)リン酸エステルアミド
リン酸エステルアミドは、リン酸エステル及びリン酸アミドの結合を有する化合物であればよい。
例えば、下記式(3)で表わされる化合物が好ましい。
【化9】

[式中、A〜Aは、それぞれ−OR11(R11はアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を示し、これらの基は置換基を有していてもよい)又は−NR1213(R12及びR13は、それぞれ水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を示す。これらは置換基を有していてもよく、また、R12及びR13は互いに結合して環を形成していてもよい。)を示す。Aはジアミン残基又はアリーレンジオキシ基を示し、nは0〜20の整数を示す。Aがジアミン残基でない場合、A〜Aの少なくとも1つは、−NR1213で示される基である。]
【0025】
式(3)において、R11、R12及びR13で表されるアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、ノニル、ドデシル等のC1−20アルキル基、好ましくはC1−12アルキル基、さらに好ましくはC1−6アルキル基が挙げられる。
シクロアルキル基としては、シクロペンチル、シクロヘキシル等のC5−20シクロアルキル基、好ましくはC6−12シクロアルキル基等が挙げられる。
アリール基としては、フェニル、ナフチル等のC6−20アリール基、置換アリール基(メチルフェニル基、エチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基等)が挙げられる。
また、R12及びR13は互いに結合して環(例えば、隣接する窒素原子をヘテロ原子とする4〜10員の複素環等)を形成してもよい。尚、これらの基は、置換基(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル等のC1−4アルキル基、特にC1−3アルキル基;ヒドロキシル基等)を有していてもよい。
【0026】
−OR11基としては、一価の有機基、例えば、フェニルオキシ、トリルオキシ、キシリルオキシ、トリメチルフェニルオキシ、エチルフェニルオキシ、メチルエチルフェニルオキシ、ジエチルフェニルオキシ、トリエチルフェニルオキシ、プロピルフェニルオキシ、イソプロピルフェニルオキシ、ジイソプロピルフェニルオキシ、ヒドロキシフェニルオキシ等の置換基(C1−3アルキル基等)を有していてもよいフェニルオキシ基が挙げられる。
【0027】
−NR1213基としては、1価アミノ基、例えば、メチルアミノ、ブチルアミノ、ジメチルアミノ、ジブチルアミノ等のモノ又はジC−Cアルキルアミノ基;シクロヘキシルアミノ等のモノ又はジC−C12シクロアルキル置換アミノ基;フェニルアミノ、ジフェニルアミノ等のモノ又はジC−C20アリールアミノ基;メチルフェニルアミノ等のC−CアルキルC20アリールアミノ基;ピロリジノ、2−メチルピロリジノ、ピペリジノ、2−メチルピペリジノ(ピペコリノ)、3−メチルピペリジノ、4−メチルピペリジノ、ピペラジノ等の少なくとも1つの窒素原子をヘテロ原子とする4〜10員(好ましくは5〜8員)の複素環基等が挙げられる。
【0028】
また、互いに隣接するAとA、及びAとAは、それぞれ互いに結合して環を形成してもよい。例えば、アルキレンジオキシ基(例えば、メチレンジオキシ、ジメチレンジオキシ、トリメチレンジオキシ、2,2−ジメチル−1,3−トリメチレンジオキシ、2−エチル−2−メチル−1,3−トリメチレンジオキシ、2,2−ジエチル−1,3−トリメチレンジオキシ等のC−C10アルキレンジオキシ)等を形成してもよい。
【0029】
式(3)において、Aは、下記式(4)又は(5)で表される2価の基であってもよい。
【化10】

(式中、R14及びR15は、それぞれ水素原子、アルキル基、又はシクロアルキル基を示し、R14及びR15は互いに結合して環を形成してもよい。Zはアルキレン基、シクロアルキレン基又は二価の芳香族性基を示す。Zは二価の芳香族性基を示す。)
【0030】
14及びR15で表されるアルキル基、シクロアルキル基としては、上記例示のアルキル基(メチル、エチル等のC1−6アルキル基等)、シクロアルキル基(シクロヘキシル等のC4−10シクロアルキル基等)が挙げられる。また、R14及びR15は互いに結合して、メチレン、エチレン、プロピレン、テトラメチレン、ヘキサメチレン等のC1−6アルキレン基等を形成してもよい。
【0031】
で表されるアルキレン基としては、メチレン、エチレン、プロピレン、テトラメチレン、ヘキサメチレン等のC1−6アルキレン基、好ましくはC1−4アルキレン基が挙げられ、シクロアルキレン基としては、シクロヘキシレン等のC4−20シクロアルキレン基、好ましくはC6−12シクロアルキレン基が挙げられる。
及びZで表される二価の芳香族性基としては、アリーレン基(例えば、フェニレン、ナフチレン基等のC6−20アリーレン基等)、複数の前記アリーレン基を有する基[例えば、ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールD、ビスフェノールAD、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン等のジヒドロキシジアリールアルカン類;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等のジヒドロキシジアリールシクロアルカン類;1,4−ビス(4−ヒドロキシフェニルイソプロピル)ベンゼン等のジヒドロキシアリールアルキルベンゼン類;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類;ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エーテル等のジヒドロキシジアリールエーテル類;4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン等のジヒドロキシジアリールケトン類;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3−メチル−4−ヒドロキルフェニル)スルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類;4,4’−ジヒドロキシジフェニル等のジヒドロキシジフェニル類等)のビスフェノール類からヒドロキシル基が除かれた基、ビフェニレン基等]であってもよい。
【0032】
で表わされるジアミン残基としては、例えば、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、プロピレンジアミン等のC2−4アルキレンジアミン;1,3−ピペラジン、1,4−ピペラジン、2−メチル−1,4−ピペラジン、2,5−ジメチル−1,4−ピペラジン、2,6−ジメチル−1,4−ピペラジン等のピペラジン類;1,3−シクロヘキサンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン等のC4−8シクロアルキルジアミン;フェニレンジアミン(例えば、1,3−フェニレンジアミン、1,4−フェニレンジアミン等);トルエンジアミン(例えば、2,4−ジアミノトルエン、2,5−ジアミノトルエン、3,5−ジエチル−2,4−ジアミノトルエン、3,5−ジエチル−2,4−ジアミノトルエン等);キシリレンジアミン(例えば、1,3−キシリレンジアミン、1,4−キシリレンジアミン等);ジアミノジフェニルメタン(例えば、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン等);ジアミノジフェニルエーテル(例えば、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル等);ジアミノジフェニルスルホン(例えば、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルスルホン等);ジアミノジフェニルスルフィド(例えば、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド等の残基が挙げられる。
【0033】
また、Aで表わされるアリーレンジオキシ基としては、ハイドロキノン残基、レゾルシノール残基等のフェニレンジオキシ基、ビスフェノール類(例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノール−AD、2,2’−ジヒドロキシジフェニルメタン、2,2’−ジエチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン等のジヒドロキシジアリールアルカン類;ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル等のジヒドロキシジアリールエーテル類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類:4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類;上記例示のビスフェノール類)残基等が挙げられる。
【0034】
好ましいリン酸エステルアミドには、式(3)においてnが0又は1、特にnが1である化合物が含まれる。nが1である化合物は、下記式(6)で表わされる。
【化11】

(式中、A〜Aは、上記式(3)と同じである。)
【0035】
リン酸エステルアミドの具体例としては、1,4−ピペラジンジイルテトラフェニルホスフェート、1,4−ピペラジンジイルテトラクレジルホスフェート、1,4−ピペラジンジイルテトラキシリルホスフェート等のピペラジンジイルホスフェート;エチレンジアミンジイルテトラフェニルホスフェート、N,N’−ジメチルエチレンジアミンジイルテトラフェニルホスフェート等のC2−6アルキレンジアミンジイルホスフェート;1,3−フェニレンジアミンジイルテトラフェニルホスフェート、1,3−キシリレンジアミンジイルテトラフェニルホスフェート、レゾルシノールトリフェニルホスフェートジフェニルアミド、ハイドロキノントリフェニルホスフェートジフェニルアミド等の置換基を有していてもよいC6−10アリーレンジアミンジイルホスフェート;ビスフェノールAトリフェニルホスフェートジブチルアミド、ビスフェノールAトリフェニルホスフェートジフェニルアミド等のビスフェノールホスフェートC6−10アリールアミド;ジフェニルホスフェートジブチルアミド、ジフェニルホスフェートメチルフェニルアミド、ジフェニルホスフェートジフェニルアミド等のジフェニルホスフェートC6−10アリールアミド;ピペリジノジフェニルホスフェート、ピペリジノジクレジルホスフェート、ピペリジノジキシリルホスフェート等のピペリジノホスフェート;ピペコリノジフェニルホスフェート、ピペコリノジクレジルホスフェート、ピペコリノジキシリルホスフェート等のピペコリノホスフェート等が挙げられる。
これらのリン酸エステルアミドは単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0036】
本発明に使用されるリン酸エステルアミドの製造方法は、特に制限されないが、特開平10−175985号公報、Jornal of Chem.Soc.C,3614(1971)、特開平8−59888号公報、特開昭63−235363号公報等を参考に製造することができる。
市販のリン酸エステルアミドは、商品名「リン酸エステルアミド系難燃剤SPシリーズ(例えば、SP−601、SP−703等)」(四国化成工業(株)製)として入手できる。
【0037】
成分(A)〜(C)又は成分(A)〜(D)の合計質量に占める成分(B)の質量比は0.2〜8質量%である。0.2質量%未満では、難燃性が低下する。一方、8質量%を超えると、難燃性が向上せず、リン酸エステルアミドがブリードする。好ましくは、0.3〜2質量%。さらに好ましくは、0.5〜1.8質量%である。
本発明の組成物では、リン酸エステルアミドの添加量が少ないので、本成分のブリードアウトを抑制することができる。
【0038】
(C)NOR型ヒンダードアミン系安定剤
下記式(1)で表されるNOR型ヒンダードアミン系安定剤を使用する。
【化12】

[式中、R〜Rはそれぞれ水素原子又は下記式(2)の有機基を表す。R〜Rの少なくとも1つは下記式(2)の有機基である。
【化13】

(式中、Rは炭素数1〜17のアルキル基、炭素数5〜10のシクロアルキル基、フェニル基又は炭素数7〜15のフェニルアルキル基を表し、R、R、R及びRはそれぞれ炭素数1〜4からなるアルキル基を表す。R10は水素原子、又は炭素数1〜12の直鎖あるいは分岐鎖のアルキル基を表す。)]
【0039】
である炭素数1〜17のアルキル基のうち、メチル基又はオクチル基が好ましい。
また、炭素数5〜10のシクロアルキル基のうち、シクロヘキシル基が好ましい。
また、フェニル基又は炭素数7〜15のフェニルアルキル基のうち、フェニル基が好ましい。
【0040】
〜Rである炭素数1〜4からなるアルキル基うち、メチル基が好ましい。
10である炭素数1〜12の直鎖又は分岐鎖のアルキル基のうち、n−ブチル基が好ましい。
【0041】
式(1)中、R、R、及びRが式(2)の有機基であるもの、又はR、R、及びRが式(2)の有機基であるものが望ましい。
具体的には、N,N’,N”−トリス{2,4−ビス[(1−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)n−ブチルアミノ]−sym−トリアジン−6−イル}−3,3’−エチレンジイミノジプロピルアミン、N,N’,N”−トリス{2,4−ビス[(1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)n−ブチルアミノ]−sym−トリアジン−6−イル}−3,3’−エチレンジイミノジプロピルアミン、N,N’,N”−トリス{2,4−ビス[(1−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)n−ブチルアミノ]−sym−トリアジン−6−イル}−3,3’−エチレンジイミノジプロピルアミン等を例示することができる。
【0042】
本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物に用いられるNOR型ヒンダードアミン系安定剤は、1種を単独で用いても、2種以上を混合体として用いても良い。
【0043】
成分(A)〜(C)又は成分(A)〜(D)の合計質量に占める成分(C)の質量比は0.2〜2.0質量%である。0.2質量%未満では、難燃性が低下する。一方、2.0質量%を超えると、難燃性はあまり向上せず、ブリードする。好ましくは、0.3〜1.8質量%。さらに好ましくは、0.5〜1.5質量%である。
【0044】
(D)無機系難燃剤
無機系難燃剤としては、シリカ(二酸化ケイ素)、合成非晶質シリカ(二酸化ケイ素)、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、ケイ藻土等のケイ素化合物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化ジルコニウム、塩基性炭酸マグネシウム、ドロマイト、ヒドロキシスズ酸亜鉛、酸化スズ水和物、ホウ砂等の金属水酸化物;酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化バリウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化モリブデン、酸化アンチモン、ジルコニウム−アンチモン複合酸化物等の金属酸化物;炭酸亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸マグネシウム−カルシウム等の金属炭酸塩化合物;硫酸アルミニウム、硫酸バリウム等の金属硫酸塩化合物;ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム等のホウ酸化合物;錫酸亜鉛、ヒドロキシ錫酸亜鉛等の錫酸化合物;アルミナ水和物、ゼオライト、セピオライト、ハイドロタルサイト、ヒドロキシアパタイト、ケイ藻土等の無機系化合物複合体が挙げられる。
【0045】
この中で、ハイドロタルサイト、ドロマイト系化合物、酸化マグネシウム、硼酸亜鉛及び錫酸亜鉛が好ましい。特に、ハイドロタルサイト、ドロマイト系化合物が特に好ましい。
【0046】
ハイドロタルサイトは、マグネシウム及びアルミニウムからなる化合物であって、例えば、下記式で表される化合物を挙げることができる。
Mg1−XAl(OH)(Aq−X/q・aH
(式中、qは1又は2であり、Aq−はq価のアニオン、即ち(CO2−又は(ClOであり、Xは0<X≦0.5、aは0<a≦1を満足する実数である。)
【0047】
ハイドロタルサイトの代表例としては、下記のものが挙げられる。
Mg0.750Al0.250(OH)(CO0.125・0.5H
Mg0.692Al0.308(OH)(CO0.154・0.1H
Mg0.683Al0.317(OH)(CO0.159・0.5H
Mg0.667Al0.333(OH)(CO0.167・0.1H
Mg0.750Al0.250(OH)(ClO0.250・0.5H
Mg0.692Al0.308(OH)(ClO0.308・0.1H
Mg0.667Al0.333(OH)(ClO0.333・0.1H
ハイドロタルサイトは、市販されているものが使用できる。
【0048】
ドロマイト系化合物として、特別の制限はなく、天然に広く産出し、壁材料、製鉄用耐火物等に用いられているドロマイトを用いることができる。さらに、ドロマイト系化合物は、その化学組成が炭酸カルシウムと炭酸マグネシウムとの複塩からなる合成ドロマイトを用いることもできる。
【0049】
本発明で用いられる天然ドロマイト及び/又は合成ドロマイトの組成は、カルシウムとマグネシウムがある比率で混在していればよく、そのカルシウムとマグネシウムの重量比率はCaO対MgO換算で5対95〜95対5であることが好ましい。この比率範囲を外れた天然ドロマイト及び/又は合成ドロマイトを用いた場合には、十分な難燃性が得られないおそれがある。
【0050】
また、本発明では、これらの天然及び/又は合成ドロマイトについて焼成、消和等を行い、金属元素組成を大きく変更させることなく変成したドロマイトの誘導体を用いることもできる。その具体例としては、ドロマイトを700〜800℃で加熱して得られるドロマイトセメント、900〜1000℃で加熱して得られる軽焼ドロマイト、さらに1600〜1800℃の高温で硬焼した死焼ドロマイト、軽焼ドロマイトに水を加えて消化した苦土消石灰、合成マグドロクリンカー等が挙げられる。
【0051】
さらに、アケルマナイト(CaMgSi)や透輝石〔CaMg(SiO〕、各種スラグのように、カルシウムとマグネシウムの比率が前記の合成ドロマイトと同じ範囲にある天然鉱物や合成の複塩を同様に変成した誘導体も用いることができる。さらに、これらの任意の混合物であってもよい。
これらのドロマイト系化合物は工業的に幅広く、大量に産出されており、製鋼から陶器、建材、農業等極めて幅広い産業で使用されているため、安定な品質で、安易かつ安価に入手可能なものである。
【0052】
酸化マグネシウム、硼酸亜鉛、錫酸亜鉛については、特別の制限はなく、市販品を使用することができる。
【0053】
成分(D)の平均粒子径(D50)は、20μm以下、好ましくは10μm以下、特に好ましくは1μm以下が好ましい。
尚、平均粒子径(D50)は、メジアン径ともいい、累積50%に相当する粒子径の値である。
また、ポリオレフィン系樹脂との相溶性、分散性等を向上させるために、成分(D)を表面処理剤で表面処理したものも使用することができる。表面処理剤としては、有機酸及び有機酸金属塩が挙げられる。これらの化合物は各々単独で用いてもよく、任意の混合物として用いてもよい。
【0054】
成分(A)〜(D)の合計質量に占める成分(D)の質量比は0.2〜5質量%である。0.2質量%未満では、難燃性が低下する。5質量%を超えると、難燃性が低下する。好ましくは、0.3〜2質量%。さらに好ましくは、0.5〜1.8質量%である。
【0055】
本発明においては、上記成分の他に、本発明の目的を損わない範囲で、必要に応じて従来公知の添加剤、その他配合物を添加又は配合することができる。
例えば、酸化防止剤として、リン系化合物、フェノール系化合物、イオウ系化合物等を、耐候剤として、ベンゾフェノン系、サリチレート系、ベンゾトリアゾール系、ヒンダードアミン系等の各種耐候剤を、帯電防止剤として、アニオン系、カチオン系、ノニオン系、両性系等の各種帯電防止剤を、滑剤として、脂肪酸、脂肪酸アミド、脂肪酸金属塩、脂肪酸エステル、炭化水素系等を、核剤として、金属塩系、ソルビトール系等の各種核剤を、充填剤として、タルク、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、ガラス繊維、マイカ、ワラストナイト等を使用できる。さらに、金属不活性化剤、着色剤、ブルーミング防止剤、表面処理剤等も使用できる。
【0056】
本発明の樹脂組成物は、上記各成分を任意の方法で溶融混練することによって製造することができる。その一例を挙げれば、ヘンシェルミキサーに代表される高速攪拌機、単軸又は二軸の連続混練機、バンバリーミキサー、ロールミキサー等を単独で又は組み合わせて用いる方法がある。
【0057】
本発明の薄物成形体は、公知の成形方法、例えば、押出成形や射出成形によって、上述した樹脂組成物を成形することにより得られる。
例えば、フィルムの場合、上記難燃性樹脂組成物を一般に用いられるインフレーション、Tダイ法等により均一にフィルム状に押出して、通常のチルロールで冷却した後、巻き取ることにより成形することができる。フィルムは1軸、2軸延伸しても良い。また、簡易的に熱プレスによりフィルムを成形することもできる。
【0058】
繊維の場合は、上記難燃性樹脂組成物を公知の溶融紡糸方法により繊維化して得ることができる。モノフィラメントを一例にして以下に説明すると、モノフィラメント成形ダイスを用い、溶融押出し、次いで冷却固化した後、所定温度で延伸し、弛緩熱処理を施してモノフィラメントを形成することができる。延伸方法は一段延伸又は二段延伸以上の多段延伸が可能である。
【0059】
本発明の難燃性樹脂組成物からなる薄物成形体は、厚さが0.3mm未満の薄物であっても優れた難燃性を有する。また、繊維に加工しても十分な難燃性を付与できる。
また、十分な強度を有し、さらに燃焼時に有毒ガスを発生しない。
尚、薄物成形体には、フィルム(シート)状、チューブ状等、各種形態を含む。
【実施例】
【0060】
実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれによって制限されるものではない。
尚、下記の実施例及び比較例に用いた物質は、下記のとおりである。
・成分(A)ポリオレフィン
ポリプロピレン(プライムポリマー(株)製 F−300SP ホモポリプロピレン MI=3(g/10分))
・成分(B)リン酸エステルアミド
式(3)において、n=1の化合物(四国化成工業(株)製 SP−703)
・成分(C)NOR型ヒンダードアミン系安定剤
チバ・スペシャルティー・ケミカルズ(株)製 FlameStab NOR116FF
・成分(D)無機系難燃剤
ハイドロタルサイト:協和化学工業(株)製 DHT−4A
ドロマイト系化合物:三共有機合成(株)製 MC−100B
酸化マグネシウム:協和化学工業(株)製 キョウワマグ3−150
硼酸亜鉛:水澤化学(株)製 ALCANEX FRC−150
錫酸亜鉛:水澤化学(株)製 ALCANEX ZHS
・比較物(リン酸エステル)
特開2001−348724号で使用されている下記式で示されるリン酸エステル(旭電化工業(株)製、FP−500)
【化14】

【0061】
実施例1 比較例1−3
(1)予備混合
表1に示す配合組成で成分(A)〜(C)を配合し、これらの合計量100重量部に対して、0.2重量部のグリセリンモノステアレート(ライオン(株)製、GS95P)、0.2重量部のトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(旭電化工業(株)製、MARK2112)、0.1重量部のペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(旭電化工業(株)製、AO−60)を配合し、ヘンシェルミキサー又はタンブラーで予備混合した。
【0062】
【表1】

【0063】
(2)溶融混練
得られた予備混合物を、二軸混練機(池貝鉄鋼(株)製、PCM45)を用いて、以下の条件にて溶融混練して組成物を製造し、ストランドカットを用いてペレット化した。
・混練温度 210〜230℃
・スクリュー回転数 150rpm
・メッシュ 40と60の組み合わせ
・ベント 2箇所(常圧ベント一箇所、真空ベント一箇所)
・吐出量 40kg/h
【0064】
(3)フィルムの作製
得られた組成物ペレット3gを鏡面加工した300×300mmのアルミ板にはさみ、熱プレス機で230℃、30トンの条件で加圧し、厚み100μmのフィルムを得た。
【0065】
(4)繊維の作製
得られた組成物ペレットを、バレル径9.55mmのキャピラリーメーター(東洋精機製キャピログラフ1D)を用いて230℃で溶融し、内径1mm、長さ10mmのキャピラリーより、押出速度5mm/分、引取速度5m/分で紡糸し、巻き取り延伸を行うことで繊維(平均直径:0.25mm)を作製した。
【0066】
(5)難燃性評価
作製したフィルム及び繊維について、以下の方法により評価した。
・フィルムの酸素指数
JIS−K−7201−2に示されるV型試験片試験法に従って酸素指数試験を行った。
簡略に説明すると、指定のU字型保持具に試験片を挟み固定した後、各種酸素濃度の雰囲気下に置き、その上端に点火器を近づけ、着火後に連続燃焼する際の酸素濃度を求めた。酸素指数値の決定は、燃焼時間が上部標線から3分以上継続して燃焼するか、又は燃焼長さが上部標線から80mm以上燃え続けるのに必要な酸素濃度である。
・繊維の酸素指数
JIS−L−1091に示された試験方法のE−1号試験片試験に従って酸素指数を測定した。
簡略に説明すると、直径0.8mmの針金を芯にして繊維をコイル状に密に巻き上げ、その長さを100mmにした後針金を抜き取る。各種酸素濃度の雰囲気下に置き、その上端に点火器を近づけ、着火後に連続燃焼する際の酸素濃度を求めた。酸素指数値の決定は、燃焼時間が3分以上継続して燃焼するか、又は着火後の燃焼長さが50mm以上燃え続けるのに必要な酸素濃度である。
評価結果を表1に示す。
【0067】
実施例1は、成分(A)/成分(B)/成分(C)系の組成物である。成分(B)と成分(C)を併用することにより、成分(B)の使用量を添加物程度としても、高い難燃性を示している。
比較例1及び2は、成分(B)又は成分(C)が配合されていない場合であり、実施例1に比較して難燃性が低下している。
比較例3は、成分(B)の代わりにリン酸エステルを使用した場合であり、成分(B)リン酸エステルアミドを使用した実施例1に比較して難燃性が低下している。
【0068】
実施例2−6
表2に示す配合組成で成分(A)〜(D)を配合した他は、実施例1と同様にして、樹脂組成物ペレット、フィルム及び繊維を作製し、評価した。
評価結果を表2に示す。
【0069】
【表2】

【0070】
実施例2〜6は、成分(A)〜成分(D)を配合した系で、成分(D)を各種無機化合物で実施した場合であり、それぞれ高い難燃性を示している。
成分(D)を配合することで、実施例1よりも、さらに難燃性が向上している。
例えば、薄物のコルゲートチューブの酸素指数合格値は23.5以上である。本発明の樹脂組成物のコルゲートチューブ成形体に近いフィルム成形体の酸素指数値は25以上で合格している。しかし、比較例では23であり不合格となる。従って、本発明の樹脂組成物は、薄物分野の成形体用途に十分な難燃性を有している。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の難燃性樹脂組成物からなる成形品は、ポリオレフィン繊維、ポリオレフィンフィルム、ポリオレフィンシートの使用分野、例えば、自動車用繊維、テント、キャンプ用品、壁材、日よけ、雨よけ、カーテン、ジュウタン、クッション、椅子、かけ布、建築用フィルム、養生シート、電材用部品、難燃テープ、コルゲートチューブ、チューブ、シース、電線被覆、光ファイバー用被覆材料、光ファイバーケーブル等で好適に使用できる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分(A)〜(C)を含む難燃性樹脂組成物。
(A)ポリオレフィン系樹脂:90〜99.6質量%
(B)リン酸エステルアミド:0.2〜8質量%
(C)下記式(1)で示されるNOR型ヒンダードアミン系安定剤:0.2〜2質量%
【化1】

[式中、R〜Rはそれぞれ水素原子又は下記式(2)の有機基を表す。R〜Rの少なくとも1つは下記式(2)の有機基である。
【化2】

(式中、Rは炭素数1〜17のアルキル基、炭素数5〜10のシクロアルキル基、フェニル基又は炭素数7〜15のフェニルアルキル基を表し、R、R、R及びRはそれぞれ炭素数1〜4からなるアルキル基を表す。R10は水素原子、又は炭素数1〜12の直鎖あるいは分岐鎖のアルキル基を表す。)]
【請求項2】
さらに、(D)無機系難燃剤を、前記成分(A)〜(D)の合計量に対して、0.2〜5質量%含む請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(B)成分のリン酸エステルアミドが、下記式(3)で表される化合物である請求項1又は2記載の難燃性樹脂組成物。
【化3】

[式中、A〜Aは、それぞれ−OR11(R11はアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を示し、これらの基は置換基を有していてもよい)又は−NR1213(R12及びR13は、それぞれ水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を示す。これらは置換基を有していてもよく、また、R12及びR13は互いに結合して環を形成していてもよい。)を示す。Aはジアミン残基又はアリーレンジオキシ基を示し、nは0〜20の整数を示す。Aがジアミン残基でない場合、A〜Aの少なくとも1つは、−NR1213で示される基である。]
【請求項4】
前記式(3)のAが、下記式(4)又は(5)で表される有機基である請求項3項記載の難燃性樹脂組成物。
【化4】

(式中、R14及びR15は、それぞれ水素原子、アルキル基、又はシクロアルキル基を示し、R14及びR15は互いに結合して環を形成してもよい。Zはアルキレン基、シクロアルキレン基又は二価の芳香族性基を示す。Zは二価の芳香族性基を示す。)
【請求項5】
前記成分(D)の無機系難燃剤が、ハイドロタルサイト、ドロマイト系化合物、酸化マグネシウム、硼酸亜鉛及び錫酸亜鉛の中から選択される少なくとも1種の難燃剤である請求項1〜4のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物からなる厚さ0.3mm未満の薄物成形体。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物からなる繊維。



【公開番号】特開2007−56090(P2007−56090A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−240883(P2005−240883)
【出願日】平成17年8月23日(2005.8.23)
【出願人】(000104364)カルプ工業株式会社 (23)
【Fターム(参考)】