説明

難燃性熱硬化性樹脂および同樹脂を製造する方法

合成樹脂、特に硬化型熱硬化性樹脂中に難燃性SAP粒子が組み込まれる物品およびプロセスが提供される。最も好ましくは、SAP粒子は難燃剤水溶液で水和される。この場合、難燃剤溶液は基本的に水だけ、または一つ以上の水溶性無機難燃剤を含有する水溶液からなる。SAP粒子が無機難燃剤水溶液で水和したら、実質的に水成分を除去するために、SAP粒子はそれから乾燥される。このようにして、SAP粒子の内部に物理的に閉じ込められた乾燥した残留物として無機難燃剤が残る。こうして、SAP粒子は無機難燃剤を内部に均一に分散させる物理的なマトリックスとして働く。次に、SAP粒子をそのまま合成樹脂とブレンドし、あるいは無機難燃剤水溶液の乾燥残留物を含有するさらに細かく粉砕した粒子に粉砕し、それから適当な合成樹脂とブレンドする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体として、難燃材料および方法に関する。特に好ましい実施態様においては、本発明は、難燃性超吸水性ポリマー(SAP)を使用する難燃材料および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス繊維強化プラスチック(FRP)コンポジットは、さまざまな最終使用用途において拡大した用途を見いだしつつある。例えば、FRPコンポジットは船、特に海軍軍艦において、軽量基体、甲板室およびマストなどの重量保持構造体として、ますます使用されている。FRPコンポジットの産業用途は、配管、バルブ、遠心分離ポンプ、熱交換器ならびに格子、スクリーンおよび換気ダクトを含む。このような拡大した用途は、例えばメンテナンスを減らし、重量を軽くし、目立ち難さを高め(特に海軍軍艦の場合)、コストを下げようという多数の市場のニーズに後押しされている。しかし、FRPコンポジットは、コンポジットが自然発火源とならないよう、火災の迅速な広がりを助けないように十分に難燃性でなければならない。一般に、所望の防火性を実現するため、FRP中に難燃剤が組み込まれる。
【0003】
難燃剤は、気相または凝縮相のどちらかを経て、化学的および/または物理的機構により作用することによって、燃焼を妨害する。いくつかの通常の種類の難燃剤および作用機構には以下が含まれる。
充填剤−ポリマーを希釈し、分解気体の濃度を下げる、
水和した充填剤−不燃性ガスを放出するか、または吸熱分解して燃焼面の熱分解ゾーンを冷却する、
ハロゲン、リンおよびアンチモン−気相でラジカル機構によって作用し、発熱過程に割り込み、燃焼を阻止する、
リン−凝縮相でも作用し、ガス生成物が火炎に拡散することを抑制するバリヤーとして作用する炭化物の生成を促進し、ポリマーを熱および空気から遮断する、
膨張材料−火または熱に曝されると材料は膨潤し、熱、空気および熱分解生成物に対するバリヤーとして作用する多孔質の発泡体を形成する。
【0004】
FRPコンポジット材料では、充填剤およびハロゲン化樹脂が防火性を実現するために用いられる最も普通の方法である。アルミニウム三水和物などの充填剤は、加熱すると水を放出する。しかし、そのような充填剤は大量に組み込まなければならず、機械的性質に負の効果を有する。特に、ハロゲン化樹脂は、燃焼時に生成するハロゲン化水素の毒性という明らかな不利を有する。ハロゲン化樹脂の燃焼時に放出される有毒な煙は、航空機の胴体または船舶の船体仕切りなどの狭い空間では致命的になり得る。
【0005】
難燃剤は、ポリマー材料中に添加剤または反応性材料のどちらかとして組み込むことができる。添加剤型の難燃剤はポリマー材料とブレンドすることによって広く使われている。FRP樹脂では、難燃性添加剤は繊維含浸に先立って樹脂に添加される。添加剤には、適合性の悪さ、浸出および機械的性質の低下を含む問題がある。反応性の難燃剤は、難燃剤とポリマーとの共重合によって添加剤の問題を克服する試みである。共重合型の難燃剤は、浸出したり機械的性質を低下させたりしないように設計される。この時、ほとんどの共重合型難燃剤は、先に述べた毒性の問題を有するハロゲン化モノマーをもとにする。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
最近、シュー(Sheu)らの米国特許第6,290,887号明細書(参照によって本明細書に内容全体を明示的に組み込む)において、所望の形状(例えば、遠距離通信ケーブルの外装ジャケットとして)に押し出しできる超吸水性ポリマー(SAP)粒子に富むプラスチック材料を得るために、予め水分を含ませたSAPが熱硬化性ポリマー(例えばポリエチレン)中に組み込まれた。
【0007】
従って、樹脂硬化プロセスに悪影響を及ぼすことなく、難燃性SAPが硬化型熱硬化性樹脂に取り込まれれば望ましいと考えられる。硬化したときに、得られた硬化した熱硬化性樹脂のポリマー鎖にSAPが化学結合(連結)するように、そのような難燃性SAPが硬化プロセスの間に硬化型熱硬化性樹脂と反応できたら特に望ましいと考えられる。それができれば、そのような熱硬化性樹脂で作製したFRPコンポジット中に、難燃性への改善ならびにその他の機械的/物理的性質(例えば衝撃抵抗性)への改善を組み込むことができるであろう。本発明が目的とするところは、そのような必要を満たすことである。
【0008】
広義には、本発明は、それによって合成樹脂、特に硬化型熱硬化性樹脂中に難燃性SAP粒子が取り込まれる製品およびプロセスに実体化される。最も好ましくは、SAP粒子は難燃剤水溶液で水和される。この点について、難燃剤溶液は基本的に水だけからなることも、あるいは一つ以上の水溶性無機難燃剤を含む水溶液からなることもある。
【0009】
SAP粒子が無機難燃剤水溶液で水和すると、その後SAP粒子は、実質的に水成分を除去するために乾燥されることがある。そのような方法で、無機難燃剤は乾燥した残留物として物理的にSAP粒子の内部に束縛されて残るであろう。このように、SAP粒子は、無機難燃剤が均一に分散する物理的なマトリックスとして働く。次に、SAP粒子はそのまま合成樹脂とブレンドされるか、または乾燥した無機難燃剤水溶液の残留物を含むさらに細かく分割された粒子に粉砕され、それから適当な合成樹脂とブレンドされる。
【0010】
硬化型熱硬化性樹脂中に取り込まれて硬化すると、難燃性SAP粒子は熱硬化性樹脂の硬化プロセスに影響を及ぼさないことが見いだされた。SAP粒子は、熱硬化性樹脂に化学結合(連結)するように、硬化プロセスの間に熱硬化性樹脂と反応するよう働く一つ以上のペンダント反応基を含むように修飾されることもある。
【0011】
これらの様相およびその他の様相ならびに利点は、以下の好ましい実施態様例の詳細な説明を注意深く考察した後、さらに明らかになろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
超吸水性ポリマー(SAP)は、それ自体公知であり、自身の重さの何倍もの水を吸収する能力を有する。本発明の実施においては、事実上任意のSAPが使用されることがある。例えば、米国特許第5,461,085号、第5,525,703号、第5,612,384号および/または5,669,894号明細書(参照によって本明細書にそれぞれの特許の内容全体を明示的に組み込む)に開示されているSAPが使用されることがある。SAPは、澱粉アクリロニトリルグラフトポリマー類の加水分解生成物、カルボキシメチルセルロース、架橋したポリアクリレート類、スルホン化ポリスチレン類、加水分解したポリアクリルアミド類、ポリビニルアルコール類、ポリエチレンオキシド類、ポリビニルピロリドン類、ポリアクリロニトリル類および類似物など、置換および非置換の天然および合成ポリマーを含むさまざまな化学的な形で市販されている。
【0013】
一般に、SAPは粒子の形で供給される。本明細書で用いられる用語「SAP粒子」および類似の用語は、粒状体、繊維、フレーク、球状体、粉末、小板体および/またはSAP当業者に既知のその他の固体形状および形式を意味する。本発明の実施においては、約100ミクロン未満(例えば約0.20ミクロンから約50ミクロンの間、より好ましくは約0.50ミクロンから約10ミクロンの間)から約500ミクロン(例えば約100から約500ミクロンの間)までの名目粒子サイズを有するSAP粒子が使用されることがある。本明細書で用いられる用語「名目粒子サイズ」は、記された数字のメッシュサイズのスクリーンを通り抜けることができる粒子のサイズを意味する。SAP粒子は、所望の名目粒子サイズを実現するために、さらに細かく分割された微粒子形に粉砕されることがある。例えば、水溶性無機難燃剤の残留物を含有する乾燥したSAP粒子は、難燃剤として有効な量で熱硬化性樹脂とブレンドされる前に、まず約300ミクロン以下の名目粒子サイズに粉砕されることがある。
【0014】
本発明の実施において使用されるSAP粒子は、最も好ましくは水和される。用語「水和したSAP粒子」によって、SAP粒子は少なくとも自重の5%の水、通常は自重の数倍の水を吸収し、SAP粒子は水和した状態にあることを意味する。逆に、用語「乾燥したSAP粒子」によって、以前は水和していたが、その後自重の5%未満、一般に3%未満の水吸収含有量に乾燥されたSAP粒子を指すものとする。
【0015】
SAP粒子は、一つ以上の無機難燃剤を含有する水溶液で水和されることがある。最も好ましくは、無機難燃剤は、水に溶けて無機難燃剤水溶液を形成するように、水溶性である。水溶液はSAP粒子によって吸収される。吸収されたら、SAP粒子を乾燥して水を除去し、それによって無機難燃剤を無機難燃剤水溶液の乾燥残留物として、物理的にSAP粒子の内部に残す。用語「乾燥残留物」によって、水の蒸発または除去の後に、溶質(例えば無機難燃剤)が物理的に残ることを意味する。用語「水溶性」によって、100ccの水あたり少なくとも1gの溶質、より好ましくは100ccの水あたり少なくとも10gの溶質が溶解することを意味する。
【0016】
本発明の実施において使用されることがある水溶性無機難燃剤の特定の例は、ホウ酸(オルトおよびテトラ)、テトラホウ酸ナトリウムおよび水和物、メタホウ酸ナトリウムおよび水和物、ホウ酸亜鉛、リン酸およびそのナトリウム塩誘導体、亜リン酸およびそのナトリウム塩誘導体、オルトリン酸アンモニウム、次リン酸アンモニウム、リン酸水素アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、次亜リン酸アンモニウム、オルトリン酸二水素アンモニウム、スルファミン酸アンモニウム、臭化アンモニウム、硫酸アンモニウムおよびタングステン酸ナトリウムを含む。最も好ましくは、無機難燃剤は、難燃性SAP粒子の全重量を基準として、SAP粒子中に約1から約500重量%、より好ましくは約25重量%から約200重量%存在する。
【0017】
SAPは、硬化プロセスの間に、硬化型熱硬化性樹脂と反応し、硬化型熱硬化性樹脂と化学結合(連結)する部位として働く一つ以上のペンダント反応基を含むように修飾されることがある。修飾SAPのペンダント反応基は、事実上、熱硬化性樹脂中に存在する官能基と反応できる任意の基(単数または複数)であってよい。本発明によって修飾SAPに提供される反応基の例は、例えば、アクリル類、メタクリル類、スチリル類、エポキシ類(オキシラン)、イソシアネート類、芳香族アルコール類、チオール類、カルボン酸類、ヒドロキシル類、アミン類および類似物を含む。
【0018】
熱硬化性樹脂の例は、アクリル類、ウレタン類、不飽和ポリエステル類、ビニルエステル類、エポキシ類、フェノール/ホルムアルデヒド樹脂類、尿素/ホルムアルデヒド樹脂類およびメラミン/ホルムアルデヒド樹脂類;エポキシアクリレート類、ヒドロキシアクリレート類、イソシアナートアクリレート類、ウレタンアクリレート類またはポリエステルアクリレート類などの置換アクリレート類から誘導される架橋型アクリル樹脂類;メラミン樹脂類、尿素樹脂類、イソシアネート類、イソシアヌレート類、カーバメート類またはエポキシ樹脂類で架橋したアルキド樹脂類、ポリエステル樹脂類およびアクリレート樹脂類を含む。
【0019】
適当な不飽和ポリエステル樹脂は、事実上、有機多塩基酸または無水物と多価アルコールとの任意のエステル化生成物を含み、酸またはアルコールのどちらか、または両方が反応性エチレン性の不飽和部位を提供する。一般的な不飽和ポリエステル類は、多価アルコールとエチレン性ポリカルボン酸とのエステル化から作られる熱硬化性樹脂である。有用なエチレン性不飽和ポリカルボン酸の例は、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、ジヒドロムコン酸ならびにそのような酸および無水物のハロおよびアルキル誘導体、およびそれらの混合物を含む。多価アルコールの例は、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−エチルブタン−1,4−ジオール、オクタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−ジメチロールシクロヘキサン、2,2−ジエチルプロパン−1,3−ジオール、2,2−ジエチルブタン−1,3−ジオール、3−メチルペンタン−1,4−ジオール、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール、4,5−ノナンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセロール、ペンタエリスリトール、エリスリトール、ソルビトール、マンニトール、1,1,1−トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、水素化ビスフェノール−Aおよびビスフェノール−Aとエチレンまたはプロピレンオキシドとの反応生成物を含む。
【0020】
この樹脂は、重合に先立つ基材樹脂へのソーダ瓶からなどのリサイクルされたポリエチレンテレフタレート(PET)の添加によって製造してもよい。PET瓶は粉砕され、グリコールの存在下に解重合され、それによってオリゴマを生成することができる。次に、ポリエステルモノマーを含む重合混合物にオリゴマを加え、そのようなモノマーと重合させて不飽和ポリエステルを得ることができる。
【0021】
不飽和ポリエステル樹脂は、飽和ポリカルボン酸または無水物と不飽和多価アルコールとのエステル化から誘導することもできる。飽和ポリカルボン酸の例は、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、2,2−ジメチルコハク酸、2,3−ジメチルコハク酸、ヒドロキシコハク酸、グルタル酸、2−メチルグルタル酸、3−メチルグルタル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、3,3−ジメチルグルタル酸、3,3−ジエチルグルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラクロロフタル酸、テトラブロモフタル酸、テトラヒドロフタル酸、1,2−ヘキサヒドロフタル酸、1,3−ヘキサヒドロフタル酸、1,4−ヘキサヒドロフタル酸、1,1−シクロブタンジカルボン酸およびtrans−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を含む。
【0022】
飽和ポリカルボン酸と反応させるに適する不飽和多価アルコールは、上記の飽和アルコール類のエチレン性不飽和含有類似体(例えば、2−ブテン−1,4−ジオール)を含む。
【0023】
適当なビニルエステル樹脂類は、事実上、不飽和ポリカルボン酸または無水物とエポキシ樹脂との任意の反応生成物を含む。酸および無水物の例は、(メタ)アクリル酸または無水物、α−フェニルアクリル酸、α−クロロアクリル酸、クロトン酸、マレイン酸またはフマル酸のモノメチルおよびモノエチルエステル、ビニル酢酸、桂皮酸および類似物を含む。ポリビニルエステルの合成に有用なエポキシ樹脂は公知であり、市販されている。エポキシドの例は、エピクロロヒドリンなどの多官能ハロヒドリンとフェノールまたは多価フェノールとのほとんど任意の反応生成物を含む。適当なフェノールまたは多価フェノールは、例えばレゾルシノール、テトラフェノールエタン、およびビスフェノール−A、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′−ジヒドロキシビフェニル、4,4′−ジヒドロキシジ−フェニルメタン、2,2′−ジヒドロキシジフェニルオキシドおよび類似物などのさまざまなビスフェノール類を含む。
【0024】
一般に、不飽和ポリエステルまたはビニルエステル樹脂材料は、熱硬化性樹脂が可溶化されるビニルモノマーも含む。適当なビニルモノマーは、スチレン、ビニルトルエン、メタクリル酸メチル、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、フタル酸ジアリルおよび類似物を含む。スチレンは不飽和ポリエステルまたはビニルエステル樹脂を可溶化するための好ましいビニルモノマーである。
【0025】
適当なフェノール樹脂は、事実上、芳香族アルコールとアルデヒドとの任意の反応生成物を含む。芳香族アルコールの例は、フェノール、オルトクレゾール、メタクレゾール、パラクレゾール、ビスフェノールA、p−フェニルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−tert−アミルフェノール、p−tert−オクチルフェノールおよびp−ノニルフェノールを含む。アルデヒドの例は、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、フェニルアセトアルデヒドおよびベンズアルデヒドを含む。特に好ましいのは、フェノールとホルムアルデヒドとの反応によって合成されるフェノール樹脂類である。
【0026】
樹脂は、エポキシ樹脂、すなわち、分子内に少なくとも一つのオキシラン基を含む樹脂である。ヒドロキシル置換基も存在してよく、ならびにしばしばエーテル基も存在してよい。ハロゲン置換基も存在してよい。一般に、エポキシ樹脂は、脂肪族、芳香族、環状、非環状、脂環式または複素環として大きく分類される。好ましくは、芳香族エポキシド樹脂が用いられる。特に好ましい芳香族エポキシ樹脂の一つの群は、例えば二価フェノールなどの多価芳香族アルコール類のポリグリシジルエーテル類である。二価フェノール類の適当な例は、レゾルシノール、カテコール、ハイドロキノン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−イソブテン、4,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−エタン、ビス(2−ヒドロキシナフェニル)メタン、1,5−ヒドロキシナフタレンおよび4,4′−イソプロピリデンジフェノールすなわちビスフェノールAを含む。エピブロモヒドリンも有用ではあるが、エポキシ樹脂を合成するために利用されることがある多数のエポキシ化合物の中で、最も多く利用されるものはエピクロロヒドリンである。水酸化ナトリウムまたはカリウムなどのアルカリの存在下で、エピクロロヒドリンとビスフェノールAとを反応させることによって、ポリグリシジルエーテル類が得られる。商標イーポン(EPON)の名でシェル・ケミカル・カンパニー(Shell Chemical Company)が販売している一連のエポキシ樹脂は有用である。有用なエポキシ樹脂の別の群は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、グリセロールおよびトリメチロールプロパンなどの多価アルコールから誘導されるポリグリシジルエーテル類である。ポリカルボン酸のポリグリシジルエーテルであるエポキシド樹脂類も有用である。これらの材料は、エピクロロヒドリンなどのエポキシ化合物と、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸および二量化したリノール酸などの脂肪族または芳香族ポリカルボン酸との反応によって製造される。オレフィン性の不飽和脂環式材料のエポキシ化から、エポキシド樹脂のさらに別の群が誘導される。これらの中には当分野で公知のエポキシ脂環式エーテルおよびエステルがある。
【0027】
エポキシ樹脂は、オキシアルキレン基を含む樹脂も含む。そのような基は、エポキシド樹脂の主鎖からのペンダントであってもよく、または主鎖の一部として含まれてもよい。エポキシ樹脂中のオキシアルキレン基の比率は、オキシアルキレン基のサイズおよびエポキシ樹脂の性質などの多数の因子に依存する。
【0028】
さらに別の種類のエポキシ樹脂は、エポキシノボラック樹脂類に及ぶ。これらの樹脂は、エピハロヒドリンを、アルデヒドと一価または多価フェノールとの縮合生成物と反応させることによって合成される。一つの例は、エピクロロヒドリンとフェノールホルムアルデヒド縮合物との反応生成物である。本発明では、エポキシ樹脂類の混合物も使用できる。
【0029】
エポキシ樹脂を熱硬化性材料に変換するために、エポキシ樹脂には硬化剤の添加が必要である。一般に本発明において利用できる硬化剤は、さまざまな従来既知の材料、例えば脂肪族および芳香族アミン類およびポリ(アミン−アミド)を含むアミン型から選ぶことができる。これらのアミンの例は、ジエチレントリアミン、3,3−アミノビスプロピルアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミン、m−キシリレンジアミン、およびヘンケル・コーポレーション(Henkel Corporation)がバーサミド(VERSAMID)という名称で販売している一連の材料など、アミンと脂肪酸との反応生成物を含む。好ましくは、バーサミドまたはその等価物などのポリ(アミン−アミド)材料が利用される。
【0030】
ポリカルボン酸およびポリカルボン酸無水物も、エポキシド用の硬化剤として適している。ポリカルボン酸の例は、例えばシュウ酸、フタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アルキルおよびアルケニルで置換したコハク酸、酒石酸および重合した脂肪酸などのジ−、トリ−およびそれより多いカルボン酸を含む。適当なポリカルボン酸無水物の例は、とりわけ、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水フタル酸、無水コハク酸および無水マレイン酸を含む。さらに、尿素−、メラミン−、またはフェノール−ホルムアルデヒドなどのアルデヒド縮合生成物は有用な硬化剤である。その他の適当な硬化剤は、三ハロゲン化ホウ素および三ハロゲン化ホウ素とアミン類、エーテル類、フェノール類および類似物との錯体;ポリメルカプタン類;ポリフェノール類;塩化アルミニウム、塩化亜鉛および過塩素酸マグネシウムなどの金属塩類;リン酸およびオルト亜リン酸n−ブチルなどの無機酸および部分エステル類を含む。望むなら、ブロックされた硬化剤または潜在的な硬化剤、例えばポリアミンとケトンとから合成されるケチミンも利用できると理解するべきである。
【0031】
利用されるエポキシ樹脂および硬化剤の量はさまざまであるが、一般にエポキシのアミンに対する当量比は、0.05:1から10:1の範囲内である。好ましくは、エポキシ対アミン当量比は0.1:1から1:1の範囲内、より好ましくは0.3:1から0.9:1の範囲内である。
【0032】
修飾SAPのペンダント反応基は、事実上、熱硬化性樹脂中に存在する官能基と反応できる任意の基(単数または複数)であってよい。本発明によって修飾SAPに提供される反応基の例は、例えばアクリル類、メタクリル類、スチリル類、エポキシ類(オキシラン)、イソシアネート類、芳香族アルコール類、チオール類、カルボン酸類、ヒドロキシル利、アミン類および類似の基を含む。
【0033】
熱硬化性樹脂の例は、アクリル類、ウレタン類、不飽和ポリエステル類、ビニルエステル類、エポキシ類、フェノール/ホルムアルデヒド樹脂類、尿素/ホルムアルデヒド樹脂類およびメラミン/ホルムアルデヒド樹脂類;エポキシアクリレート類、ヒドロキシアクリレート類、イソシアナートアクリレート類、ウレタンアクリレート類またはポリエステルアクリレート類などの置換アクリレート類から誘導される架橋型アクリル樹脂類;メラミン樹脂類、尿素樹脂、イソシアネート類、イソシアヌレート類、カーバメート類またはエポキシ樹脂類で架橋したアルキド樹脂類、ポリエステル樹脂類およびアクリレート樹脂類を含む。
【0034】
適当な不飽和ポリエステル樹脂は、事実上、有機多塩基酸または無水物と多価アルコールとの任意のエステル化生成物を含み、酸またはアルコールのどちらか、または両方が反応性エチレン性の不飽和部位を提供する。一般的な不飽和ポリエステル類は、多価アルコールとエチレン性ポリカルボン酸とのエステル化から作られる熱硬化性樹脂である。有用なエチレン性不飽和ポリカルボン酸の例は、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、ジヒドロムコン酸ならびにそのような酸および無水物のハロおよびアルキル誘導体、およびそれらの混合物を含む。多価アルコールの例は、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−エチルブタン−1,4−ジオール、オクタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−ジメチロールシクロヘキサン、2,2−ジエチルプロパン−1,3−ジオール、2,2−ジエチルブタン−1,3−ジオール、3−メチルペンタン−1,4−ジオール、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール、4,5−ノナンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセロール、ペンタエリスリトール、エリスリトール、ソルビトール、マンニトール、1,1,1−トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、水素化ビスフェノール−Aおよびビスフェノール−Aとエチレンまたはプロピレンオキシドとの反応生成物を含む。
【0035】
この樹脂は、重合に先立つ基材樹脂へのソーダ瓶からなどのリサイクルされたポリエチレンテレフタレート(PET)の添加によって製造してもよい。PET瓶は粉砕され、グリコールの存在下に解重合され、それによってオリゴマを生成することができる。次に、ポリエステルモノマーを含む重合混合物にオリゴマを加え、そのようなモノマーと重合させて不飽和ポリエステルを得ることができる。
【0036】
不飽和ポリエステル樹脂は、飽和ポリカルボン酸または無水物と不飽和多価アルコールとのエステル化から誘導することもできる。飽和ポリカルボン酸の例は、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、2,2−ジメチルコハク酸、2,3−ジメチルコハク酸、ヒドロキシコハク酸、グルタル酸、2−メチルグルタル酸、3−メチルグルタル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、3,3−ジメチルグルタル酸、3,3−ジエチルグルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラクロロフタル酸、テトラブロモフタル酸、テトラヒドロフタル酸、1,2−ヘキサヒドロフタル酸、1,3−ヘキサヒドロフタル酸、1,4−ヘキサヒドロフタル酸、1,1−シクロブタンジカルボン酸およびtrans−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を含む。
【0037】
飽和ポリカルボン酸と反応させるに適する不飽和多価アルコールは、上記の飽和アルコール類のエチレン性不飽和含有類似体(例えば、2−ブテン−1,4−ジオール)を含む。
【0038】
適当なビニルエステル樹脂類は、事実上、不飽和ポリカルボン酸または無水物とエポキシ樹脂との任意の反応生成物を含む。酸および無水物の例は、(メタ)アクリル酸または無水物、α−フェニルアクリル酸、α−クロロアクリル酸、クロトン酸、マレイン酸またはフマル酸のモノメチルおよびモノエチルエステル、ビニル酢酸、桂皮酸および類似物を含む。ポリビニルエステルの合成に有用なエポキシ樹脂は公知であり、市販されている。エポキシドの例は、エピクロロヒドリンなどの多官能ハロヒドリンとフェノールまたは多価フェノールとのほとんど任意の反応生成物を含む。適当なフェノールまたは多価フェノールは、例えばレゾルシノール、テトラフェノールエタン、およびビスフェノール−A、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′−ジヒドロキシビフェニル、4,4′−ジヒドロキシジ−フェニルメタン、2,2′−ジヒドロキシジフェニルオキシドおよび類似物などのさまざまなビスフェノール類を含む。
【0039】
一般に、不飽和ポリエステルまたはビニルエステル樹脂材料は、熱硬化性樹脂が可溶化されるビニルモノマーも含む。適当なビニルモノマーは、スチレン、ビニルトルエン、メタクリル酸メチル、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、フタル酸ジアリルおよび類似物を含む。スチレンは不飽和ポリエステルまたはビニルエステル樹脂を可溶化するための好ましいビニルモノマーである。
【0040】
適当なフェノール樹脂は、事実上、芳香族アルコールとアルデヒドとの任意の反応生成物を含む。芳香族アルコールの例は、フェノール、オルトクレゾール、メタクレゾール、パラクレゾール、ビスフェノールA、p−フェニルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−tert−アミルフェノール、p−tert−オクチルフェノールおよびp−ノニルフェノールを含む。アルデヒドの例は、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、およびベンズアルデヒドを含む。特に好ましいのは、フェノールとホルムアルデヒドとの反応によって合成されるフェノール樹脂類である。
【0041】
樹脂は、エポキシ樹脂、すなわち、分子内に少なくとも一つのオキシラン基を含む樹脂である。ヒドロキシル置換基も存在してよく、ならびにしばしばエーテル基も存在してよい。ハロゲン置換基も存在してよい。一般に、エポキシ樹脂は、脂肪族、芳香族、環状、非環状、脂環式または複素環として大きく分類される。好ましくは、芳香族エポキシド樹脂が用いられる。特に好ましい芳香族エポキシ樹脂の一つの群は、例えば二価フェノールなどの多価芳香族アルコール類のポリグリシジルエーテル類である。二価フェノール類の適当な例は、レゾルシノール、カテコール、ハイドロキノン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−イソブテン、4,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−エタン、ビス(2−ヒドロキシナフェニル)メタン、1,5−ヒドロキシナフタレンおよび4,4′−イソプロピリデンジフェノールすなわちビスフェノールAを含む。エピブロモヒドリンも有用ではあるが、エポキシ樹脂を合成するために利用されることがある多数のエポキシ化合物の中で、最も多く利用されるものはエピクロロヒドリンである。水酸化ナトリウムまたはカリウムなどのアルカリの存在下で、エピクロロヒドリンとビスフェノールAとを反応させることによって、ポリグリシジルエーテル類が得られる。商標イーポンの名でシェル・ケミカル・カンパニーが販売している一連のエポキシ樹脂は有用である。有用なエポキシ樹脂の別の群は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、グリセロールおよびトリメチロールプロパンなどの多価アルコールから誘導されるポリグリシジルエーテル類である。ポリカルボン酸のポリグリシジルエーテルであるエポキシド樹脂類も有用である。これらの材料は、エピクロロヒドリンなどのエポキシ化合物と、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸および二量化したリノール酸などの脂肪族または芳香族ポリカルボン酸との反応によって製造される。オレフィン性の不飽和脂環式材料のエポキシ化から、エポキシド樹脂のさらに別の群が誘導される。これらの中には当分野で公知のエポキシ脂環式エーテルおよびエステルがある。
【0042】
エポキシ樹脂は、オキシアルキレン基を含むものを含む。そのような基は、エポキシド樹脂の主鎖からのペンダントであってもよく、または主鎖の一部として含まれてもよい。エポキシ樹脂中のオキシアルキレン基の比率は、オキシアルキレン基のサイズおよびエポキシ樹脂の性質などの多数の因子に依存する。
【0043】
さらに別の種類のエポキシ樹脂は、エポキシノボラック樹脂類に及ぶ。これらの樹脂は、エピハロヒドリンを、アルデヒドと一価または多価フェノールとの縮合生成物と反応させることによって合成される。一つの例は、エピクロロヒドリンとフェノールホルムアルデヒド縮合物との反応生成物である。本発明では、エポキシ樹脂類の混合物も使用できる。
【0044】
エポキシ樹脂を熱硬化性材料に変換するために、エポキシ樹脂には硬化剤の添加が必要である。一般に本発明において利用できる硬化剤は、さまざまな従来既知の材料、例えば、脂肪族および芳香族アミン類およびポリ(アミン−アミド)を含むアミン型から選ぶことができる。これらのアミンの例は、ジエチレントリアミン、3,3−アミノビスプロピルアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミン、m−キシリレンジアミン、およびヘンケル・コーポレーションがバーサミド(R)硬化剤という登録商標の下で販売している一連の材料など、アミンと脂肪酸との反応生成物を含む。好ましくは、バーサミド(R)硬化剤またはその等価物などのポリ(アミン−アミド)材料が利用される。
【0045】
ポリカルボン酸およびポリカルボン酸無水物も、エポキシド用の硬化剤として適している。ポリカルボン酸の例は、例えばシュウ酸、フタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アルキルおよびアルケニルで置換したコハク酸、酒石酸および重合した脂肪酸などのジ−、トリ−およびそれより多いカルボン酸を含む。適当なポリカルボン酸無水物の例は、とりわけ、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水フタル酸、無水コハク酸および無水マレイン酸を含む。さらに、尿素−、メラミン−、またはフェノール−ホルムアルデヒドなどのアルデヒド縮合生成物は有用な硬化剤である。その他の適当な硬化剤は、三ハロゲン化ホウ素および三ハロゲン化ホウ素とアミン類、エーテル類、フェノール類および類似物との錯体;ポリメルカプタン類;ポリフェノール類;塩化アルミニウム、塩化亜鉛および過塩素酸マグネシウムなどの金属塩類;リン酸およびオルト亜リン酸n−ブチルなどの無機酸および部分エステル類を含む。望むなら、ブロックされた硬化剤または潜在的な硬化剤、例えばポリアミンとケトンとから合成されるケチミンも利用できると理解するべきである。
【0046】
利用されるエポキシ樹脂および硬化剤の量はさまざまであるが、一般にエポキシのアミンに対する当量比は、0.05:1から10:1の範囲内である。好ましくは、エポキシ対アミン当量比は0.1:1から1:1の範囲内、より好ましくは0.3:1から0.9:1の範囲内である。
【0047】
SAP粒子は、硬化した樹脂に難燃特性を付与するために十分な量で、硬化型熱硬化性樹脂中に取り込まれる。一般に、SAP粒子は、最高で樹脂の約50重量%まで、通常は約1から約15重量%の間、最も好ましくは約10重量%を構成する。用語「難燃特性」によって、硬化したSAP粒子含有熱硬化性樹脂で構成される成型物品は、火炎によって発火しないか、または火炎によって発火するとしても、少なくとも約60秒間の内に火炎を自己消火するかのどちらかであることを意味する。
【0048】
本発明は、以下の非限定的な実施例によって、より深く理解されるであろう。
【実施例1】
【0049】
水和したSAPをコンポジット樹脂中に組み込む際に未知の一つのことは、樹脂硬化に対する水の効果である。水は硬化およびその後の樹脂の性質に有害である。この効果を探索するために、脱イオン水(樹脂の5重量パーセント)を汎用不飽和ポリエステル樹脂と混合した。次に、樹脂用の硬化剤(メチルエチルケトンペルオキシド開始剤)を加えた。樹脂は、硬質の透明なキャストに硬化せず、最終的に不透明なペーストに変った。別の試験では、SAP(樹脂の10重量パーセント)および水(樹脂の8.5重量パーセント)を不飽和ポリエステルおよび硬化剤と混合した。樹脂は32分間でゲル化し、その後硬質な透明キャストに硬化した。従って、硬化プロセスを乱すことなく、硬化した熱硬化性樹脂マトリックス中に、水和したSAP粒子を組み込むことができることが観測された。
【実施例2】
【0050】
水和したSAPを含有する硬化した樹脂(試料B)の耐火性を、SAPを含有しない同様に硬化した樹脂(試料A)と比較した。両方の試料をそれぞれ銅ワイヤに並べて吊るし、下からプロパントーチで点火した。SAPを含有しない試料Aへの火炎は、バーを燃え上がらせ、試料を完全に焼き尽くして、耐火性の無さを証明した。本発明によって水和したSAPを含有する試料Bは、5秒以内に火炎を自己消火し、ほとんど損傷を受けなかった。
【実施例3】
【0051】
ポリアクリルアミド微小球体(11グラム)を、85%リン酸(17.85グラム)と混合し、次に真空加熱庫中110℃で4時間および130℃で20時間乾燥した。ポリアクリルアミド/リン酸微小球体を粉砕し、300ミクロンスクリーンを通して篩分した。次に、高速ミキサーを用いて、微小球体(13グラム)を28.69グラムのD.E.R.(TM)331エポキシ樹脂(ダウ・ケミカル(Dow Chemical)および10.32グラムのエピクア(TM)(EPIKURE(TM))9551硬化剤(レゾルーション・パフォーマンス・プロダクツLLC(Resolution Performance Products LLC)と混合し、直径7cmのアルミニウムのパンの中に注いだ。樹脂を真空加熱庫に入れて排気した。次に、樹脂を120℃で2時間硬化させた。硬化した樹脂ディスクをワイヤに吊り、樹脂ディスクの底面をプロパントーチの火炎に60秒間曝露した。トーチの火炎を取り去ると、ディスクは発火していなかった。ディスクをトーチの火炎にさらに150秒間曝露した。トーチの火炎を取り去ると、火炎は6秒間で消火した。試料は重量の91%を保持していた。対照的に、この微小球体を含有しないエポキシ参照試料は、30秒間のトーチ火炎暴露によって点火された後、完全に燃え尽きた。
【実施例4】
【0052】
ポリアクリルアミド微小球体(7グラム)を、水(15.9グラム)に溶解したリン酸ジアンモニウム(13.0グラム)と混合し、真空加熱庫中120℃で20時間乾燥した。ポリアクリルアミド/リン酸ジアンモニウム微小球体を粉砕し、300ミクロンスクリーンを通して篩分した。次に、高速ミキサーを用いて、粉砕した微小球体(18グラム)を、38.5グラムのD.E.R.(TM)331エポキシ樹脂(ダウ・ケミカル)および14.2グラムのエピクア(TM)9551硬化剤(レゾルーション・パフォーマンス・プロダクツLLC)と混合し、直径7cmのアルミニウムのパンの中に注いだ。樹脂を真空加熱庫に入れて排気した。次に、樹脂を120℃で2時間硬化させた。硬化した樹脂ディスクをワイヤに吊り、樹脂ディスクの底面をプロパントーチの火炎に60秒間曝露した。トーチの火炎を取り去ると、ディスクは発火していなかった。ディスクをトーチの火炎にさらに120秒間曝露した。トーチの火炎を取り去ると、火炎は5秒間で消火した。対照的に、微小球体を含有しないエポキシ参照試料は、30秒間のトーチ火炎暴露によって点火された後、完全に燃え尽きた。
【0053】
現時点で最も実際的で好ましい実施態様と考えられる実施態様によって本発明を説明したが、本発明は、開示した実施態様に限定されるものではなく、それとは逆に本発明の技術思想および範囲に含まれるさまざまな変化形および均等構成物に及ぶものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超吸水性ポリマー粒子(SAP)と、無機難燃剤水溶液の乾燥残留物とを含む、難燃性超吸水性ポリマー粒子。
【請求項2】
前記無機難燃剤は、少なくとも一つの含リン難燃剤を含む、請求項1に記載のSAP粒子。
【請求項3】
前記無機難燃剤は、リン酸およびそのナトリウム塩誘導体、亜リン酸およびそのナトリウム塩誘導体、オルトリン酸アンモニウム、次リン酸アンモニウム、リン酸水素アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、次亜リン酸アンモニウムおよびオルトリン酸二水素アンモニウムからなる群から選ばれた少なくとも一つの無機難燃剤である、請求項2に記載のSAP粒子。
【請求項4】
前記無機難燃剤は、前記難燃性SAP粒子の総重量を基準として、約1から約100重量%の間の量存在する、請求項1に記載のSAP粒子。
【請求項5】
硬化した熱硬化性樹脂と、難燃剤として有効な量の請求項1〜4の任意の一つに記載のSAP粒子とを含む、難燃性物品。
【請求項6】
硬化した熱硬化性樹脂と、水和した超吸水性ポリマー(SAP)粒子の難燃剤として有効な量とを含む、難燃性物品。
【請求項7】
前記水和したSAP粒子は、基本的に難燃剤水溶液で水和したSAP粒子からなる、請求項6に記載の難燃性物品。
【請求項8】
前記難燃剤溶液は、基本的に水と、任意の無機難燃剤とからなる、請求項7に記載の難燃性物品。
【請求項9】
前記難燃剤溶液は、基本的に水と、少なくとも一つの含リン難燃剤を含む無機難燃剤とからなる、請求項7に記載の難燃性物品。
【請求項10】
前記無機難燃剤は、リン酸およびそのナトリウム塩誘導体、亜リン酸およびそのナトリウム塩誘導体、オルトリン酸アンモニウム、次リン酸アンモニウム、リン酸水素アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、次亜リン酸アンモニウムおよびオルトリン酸二水素アンモニウムからなる群から選ばれた少なくとも一つの無機難燃剤である、請求項9に記載の難燃性物品。
【請求項11】
前記無機難燃剤は、前記難燃性SAP粒子の総重量を基準として、約1から約500重量%の間の量存在する、請求項9または10に記載の難燃性物品。
【請求項12】
無機難燃剤水溶液で難燃性超給水性ポリマー(SAP)粒子を水和させる工程を含む、SAP粒子を製造する方法。
【請求項13】
水を除去し、前記SAP粒子の内部に前記無機難燃剤溶液の乾燥した残留物を物理的に残すために、前記水和したSAP粒子を乾燥させる工程をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記無機難燃剤は、少なくとも一つの含リン難燃剤を含む、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記無機難燃剤は、リン酸およびそのナトリウム塩誘導体、亜リン酸およびそのナトリウム塩誘導体、オルトリン酸アンモニウム、次リン酸アンモニウム、リン酸水素アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、次亜リン酸アンモニウムおよびオルトリン酸二水素アンモニウムからなる群から選ばれた少なくとも一つの無機難燃剤である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記無機難燃剤は、前記難燃性SAP粒子の総重量を基準として、約1から約500重量%の間の量存在する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
(a)難燃剤として有効な量の水和した難燃性超吸水性ポリマー(SAP)粒子と、未硬化の熱硬化性樹脂とをブレンドする工程、
(b)硬化した難燃性熱硬化性樹脂物品を製造するために、未硬化の熱硬化性樹脂と難燃性SAP粒子との前記ブレンドを硬化させる工程
を含む、硬化した難燃性熱硬化性樹脂物品を製造する方法。
【請求項18】
工程(a)より以前に、SAP粒子を無機難燃剤水溶液で水和する工程が実施されるものとする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
水を除去し、前記SAP粒子の内部に前記無機難燃剤溶液の乾燥した残留物を物理的に残すために、水和したSAP粒子を乾燥する工程をさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記無機難燃剤は、少なくとも一つの含リン難燃剤を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記無機難燃剤は、リン酸およびそのナトリウム塩誘導体、亜リン酸およびそのナトリウム塩誘導体、オルトリン酸アンモニウム、次リン酸アンモニウム、リン酸水素アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、次亜リン酸アンモニウムおよびオルトリン酸二水素アンモニウムからなる群から選ばれた少なくとも一つの無機難燃剤である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記無機難燃剤は、前記難燃性SAP粒子の総重量を基準として、約1から約500重量%の間の量存在する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
請求項17〜22の任意の一つに記載の方法によって製造される難燃性熱硬化性物品。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超吸水性ポリマー粒子(SAP)と、無機難燃剤水溶液の乾燥残留物とを含む、難燃性超吸水性ポリマー粒子。
【請求項2】
前記無機難燃剤は、少なくとも一つの含リン難燃剤を含む、請求項1に記載のSAP粒子。
【請求項3】
前記無機難燃剤は、リン酸およびそのナトリウム塩誘導体、亜リン酸およびそのナトリウム塩誘導体、オルトリン酸アンモニウム、次リン酸アンモニウム、リン酸水素アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、次亜リン酸アンモニウムおよびオルトリン酸二水素アンモニウムからなる群から選ばれた少なくとも一つの無機難燃剤である、請求項2に記載のSAP粒子。
【請求項4】
前記無機難燃剤は、前記難燃性SAP粒子の総重量を基準として、約1から約100重量%の間の量存在する、請求項1に記載のSAP粒子。
【請求項5】
硬化した熱硬化性樹脂と、難燃剤として有効な量の請求項1〜4の任意の一つに記載のSAP粒子とを含む、難燃性物品。
【請求項6】
硬化した熱硬化性樹脂と、水和した超吸水性ポリマー(SAP)粒子の難燃剤として有効な量とを含む、難燃性物品。
【請求項7】
前記水和したSAP粒子は、基本的に難燃剤水溶液で水和したSAP粒子からなる、請求項6に記載の難燃性物品。
【請求項8】
前記難燃剤溶液は、基本的に水と、任意の無機難燃剤とからなる、請求項7に記載の難燃性物品。
【請求項9】
前記難燃剤溶液は、基本的に水と、少なくとも一つの含リン難燃剤を含む無機難燃剤とからなる、請求項7に記載の難燃性物品。
【請求項10】
前記無機難燃剤は、リン酸およびそのナトリウム塩誘導体、亜リン酸およびそのナトリウム塩誘導体、オルトリン酸アンモニウム、次リン酸アンモニウム、リン酸水素アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、次亜リン酸アンモニウムおよびオルトリン酸二水素アンモニウムからなる群から選ばれた少なくとも一つの無機難燃剤である、請求項9に記載の難燃性物品。
【請求項11】
前記無機難燃剤は、前記難燃性SAP粒子の総重量を基準として、約1から約500重量%の間の量存在する、請求項9または10に記載の難燃性物品。
【請求項12】
無機難燃剤水溶液で難燃性超給水性ポリマー(SAP)粒子を水和させる工程を含む、SAP粒子を製造する方法。
【請求項13】
水を除去し、前記SAP粒子の内部に前記無機難燃剤溶液の乾燥した残留物を物理的に残すために、前記水和したSAP粒子を乾燥させる工程をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記無機難燃剤は、少なくとも一つの含リン難燃剤を含む、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記無機難燃剤は、リン酸およびそのナトリウム塩誘導体、亜リン酸およびそのナトリウム塩誘導体、オルトリン酸アンモニウム、次リン酸アンモニウム、リン酸水素アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、次亜リン酸アンモニウムおよびオルトリン酸二水素アンモニウムからなる群から選ばれた少なくとも一つの無機難燃剤である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記無機難燃剤は、前記難燃性SAP粒子の総重量を基準として、約1から約500重量%の間の量存在する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
(a)難燃剤として有効な量の水和した難燃性超吸水性ポリマー(SAP)粒子と、未硬化の熱硬化性樹脂とをブレンドする工程、
(b)硬化した難燃性熱硬化性樹脂物品を製造するために、未硬化の熱硬化性樹脂と難燃性SAP粒子との前記ブレンドを硬化させる工程
を含む、硬化した難燃性熱硬化性樹脂物品を製造する方法。
【請求項18】
工程(a)より以前に、SAP粒子を無機難燃剤水溶液で水和する工程が実施されるものとする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
水を除去し、前記SAP粒子の内部に前記無機難燃剤溶液の乾燥した残留物を物理的に残すために、水和したSAP粒子を乾燥する工程をさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記無機難燃剤は、少なくとも一つの含リン難燃剤を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記無機難燃剤は、リン酸およびそのナトリウム塩誘導体、亜リン酸およびそのナトリウム塩誘導体、オルトリン酸アンモニウム、次リン酸アンモニウム、リン酸水素アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、次亜リン酸アンモニウムおよびオルトリン酸二水素アンモニウムからなる群から選ばれた少なくとも一つの無機難燃剤である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記無機難燃剤は、前記難燃性SAP粒子の総重量を基準として、約1から約500重量%の間の量存在する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
請求項17〜22の任意の一つに記載の方法によって製造される難燃性熱硬化性物品。
【請求項24】
合成樹脂と、難燃剤として有効な量の請求項1〜4の任意の一つに記載のSAP粒子とを含む、難燃性物品。
【請求項25】
前記合成樹脂は、アクリル樹脂類、ウレタン樹脂類、ポリエステル樹脂類、ビニルエステル類、エポキシ樹脂類、フェノール/ホルムアルデヒド樹脂類、尿素/ホルムアルデヒド樹脂類、メラミン/ホルムアルデヒド樹脂類、アルキド樹脂類およびアクリレート樹脂類からなる群から選ばれる少なくとも一つである、請求項24に記載の難燃性物品。
【請求項26】
前記合成樹脂は、置換アクリレート類から誘導される架橋したアクリル樹脂を含む、請求項24に記載の難燃性物品。
【請求項27】
前記置換アクリレート類は、エポキシアクリレート類、ヒドロキシアクリレート類、イソシアナートアクリレート類、ウレタンアクリレート類またはポリエステルアクリレート類を含む、請求項26に記載の難燃性物品。
【請求項28】
前記合成樹脂は、メラミン樹脂、尿素樹脂、イソシアネート樹脂、イソシアヌレート樹脂、カーバメート樹脂またはエポキシ樹脂の少なくとも一つで架橋したアクリレート樹脂を含む、請求項24に記載の難燃性物品。
【請求項29】
難燃剤として有効な量の請求項1〜4の任意の一つに記載のSAP粒子を、合成樹脂に組み込む工程を含む、難燃性物品を製造する方法。
【請求項30】
前記合成樹脂は、アクリル樹脂類、ウレタン樹脂類、ポリエステル樹脂類、ビニルエステル類、エポキシ樹脂類、フェノール/ホルムアルデヒド樹脂類、尿素/ホルムアルデヒド樹脂類、メラミン/ホルムアルデヒド樹脂類、アルキド樹脂類およびアクリレート樹脂類からなる群から選ばれる少なくとも一つである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記合成樹脂は、置換アクリレート類から誘導される架橋したアクリル樹脂を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記置換アクリレート類は、エポキシアクリレート類、ヒドロキシアクリレート類、イソシアナートアクリレート類、ウレタンアクリレート類またはポリエステルアクリレート類を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記合成樹脂は、メラミン樹脂、尿素樹脂、イソシアネート樹脂、イソシアヌレート樹脂、カーバメート樹脂またはエポキシ樹脂の少なくとも一つで架橋したアクリレート樹脂を含む、請求項29に記載の難燃性物品。

【公表番号】特表2006−525419(P2006−525419A)
【公表日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−513281(P2006−513281)
【出願日】平成16年4月22日(2004.4.22)
【国際出願番号】PCT/US2004/012657
【国際公開番号】WO2004/099293
【国際公開日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(505365389)ルナ イノベイションズ インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】