説明

難燃性粘着テープ

【課題】 ハロゲン系難燃剤と含アンチモン化合物を使用することなく、高度の難燃性を有すると共に、炭化絶縁破壊を良好に抑える耐トラッキング性難燃性粘着テープの提供。
【解決手段】 基材の少なくとも片面に、粘着剤ベースポリマー100質量部に対して、ハロゲン及びアンチモンいずれをも意図的に添加せず、リン酸エステルアミド系難燃剤20〜300質量部を添加した、又は粘着剤ベースポリマー100質量部に対してリン酸エステルアミド系難燃剤を含み,かつリン酸エステルアミド系難燃剤以外のハロゲン及びアンチモンいずれをも含まない難燃剤20〜300質量部を難燃性粘着剤組成物からなる粘着剤層を設けてなる難燃性粘着テープ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼時に有毒な含ハロゲン系ガスを発生するハロゲン系難燃剤と人体への影響があると指摘されている酸化アンチモンを使用することなく、優れた難燃性と粘着特性並びに炭化絶縁破壊を良好に抑制できる耐トラッキング性等の電気特性を有する電気絶縁用難燃性粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気・電子分野の各業界では、それを構成する電気部品等で、高い難燃性が求められるようになっている。それに伴って、電気・電子部品、特にトランスの絶縁用途等に用いられる電気絶縁用粘着テープにおいても、UL510燃焼試験等の各種試験に合格する高い難燃性が求められている。又、電気絶縁用粘着テープには、高い難燃性の他に、耐トラッキング性、絶縁破壊電圧、耐電圧等の電気特性に優れていることや、耐電解腐食性や、当該用途に必要な高い粘着力等が必要であり、これらの条件を満たす為に、通常高い難燃効果を有するハロゲン系難燃剤と酸化アンチモンとを粘着剤中に配合して、粘着テープを難燃化するのが一般的であった。
【0003】
しかし、ハロゲン系難燃剤は、焼却時に有毒な含ハロゲン系ガスを発生したり、金属を腐食させたりする問題があり、又、酸化アンチモンは、人体に対して影響があると指摘されている等の問題があることから、ハロゲン系難燃剤と酸化アンチモンを使用していない電気絶縁用難燃性粘着テープが求められている。
【0004】
ハロゲン系難燃剤以外の難燃剤としては、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウム等の金属水酸化物系難燃剤を用いる方法が知られているが、金属水酸化物系難燃剤は、ハロゲン系難燃剤よりも難燃効果が遙かに劣っている為、粘着剤中に大量に配合しなければならず、粘着力を低下させると言う問題があった。粘着特性を損なわない範囲内の金属水酸化物配合量で目的の難燃効果を得る為には、燃焼しにくい芳香族ポリアミド基材を積層したり(特許文献1)、難燃付与を目的とした下塗り層を別途設けたりする必要があり(特許文献2)、高価な基材を用いるか、又は粘着剤塗布工程を2工程必要とする等の理由から、汎用性に欠ける面があった。
【0005】
又、ハロゲン系難燃剤、金属水酸化物系難燃剤以外の難燃剤としては、メラミンシアヌレート、トリアジン化合物、グアニジン化合物、グアニル尿素化合物、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂等の含窒素化合物が知られているが、金属水酸化物系難燃剤と同様に、ハロゲン系難燃剤に比べて難燃効果が遙かに劣っている為に,大量に添加する必要があり、ポリエステルフィルム等の汎用基材を用いた一般的なテープ構成では、難燃性、粘着特性、電気特性等を全て満足することは、困難であった。
【0006】
又、ハロゲン系難燃剤程ではないが、比較的難燃効果が高いリン系化合物を用いることが行われている。中でも、難燃効果が高いポリリン酸アンモニウム等の窒素元素を含有したリン系難燃剤と赤リンとの組み合わせが提案されている(特許文献3)が、赤リンを使用している為、焼却時に有害なホスフィンガスを発生すると言う問題があった。又、ポリリン酸アンモニウムやポリリン酸メラミン等のイオン性化合物は、場合によっては電気絶縁用粘着テープとして必要な耐トラッキング性や電食係数を低下せしめる原因となる為(非特許文献1)、電気絶縁用途に用いる場合には、限られた範囲内の量しか用いることが出来なかった。
【0007】
前記含窒素リン系化合物以外の難燃剤としては、リン酸エステル系難燃剤があるが、リン酸エステル系化合物の性状が液状の場合には、粘着剤を可塑化して凝集力を低下させたり,粘着剤層表面に該難燃剤がブリードしたりすると言う問題があり、又、リン酸エステル系難燃剤の性状が固体の場合には、粘着剤層表面に該難燃剤粒子が析出して、粘着特性や粘着テープの風合いを損ねると言う問題があった。
そこで、芳香族リン酸エステルとリン酸エステル系難燃剤をマイクロカプセル化して難燃剤の析出を防ぐ工夫や(特許文献4)、リン酸エステル系難燃剤とメラミン系樹脂粒子を併用して(特許文献5)、又は芳香族縮合リン酸エステルとリン酸エステルとを併用して(特許文献6)、赤リンを使用しなくても十分な難燃性を得る工夫等がなされているが、電気絶縁用途に不可欠な電気特性の耐トラッキング性や電食係数等については、特に言及されていない。
【0008】
赤リン系、ポリリン酸アンモニウム、リン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン等のリン酸塩系、リン酸エステル系難燃剤以外のリン系難燃剤としては、リン酸エステルアミド系難燃剤が知られている(特許文献7)。
特許文献7では、エンジニアリングプラスチックに適用した場合に耐熱性低下防止等を可能にすることが利点として述べられている。また、この難燃剤を用いる具体例には、以下の場合が知られている。
該リン酸エステルアミド系難燃剤は、少量で高い難燃効果を示し、且つ成型品の表面への析出が発生しにくいことから、各種樹脂類(特許文献8)、繊維類(特許文献9)、プリント配線板用プリプレグ並びに積層板(特許文献10)、多層回路基板(特許文献11)等である。しかしながら、粘着テープに使用すること、具体的には粘着テープの粘着剤層に添加して用いることについては言及されておらず、其の適用例もない状態にある。すなわち、リン酸エステルアミド系難燃剤を粘着テープに粘着層に添加して用いる場合に、粘着層の粘着剤は、リン酸エステルアミド系難燃剤を添加しても依然として粘着剤としての機能を十分に果たすことができるかどうかということが明らかでなく、又粘着剤は一般に他の物質を混在させれば粘着剤としての作用は弱められると考えるのが通常であるから、単に前記の添加例が知られていたとしても、其の記載をもって粘着テープの粘着層への適用可能性を論ずることはできないし、さらに、粘着テープにおいてリン酸エステルアミド系難燃剤を使用した場合の優れた難燃性と粘着特性並びに炭化絶縁破壊を良好に抑制できる耐トラッキング性等の電気特性等を優位に保つことについては、知られていない。
【0009】
【特許文献1】特開2002−121508号公報
【特許文献2】特開2003−96417号公報
【特許文献3】特開平8−193187号公報
【特許文献4】特開2000−169811号公報
【特許文献5】特開平11−323268号公報
【特許文献6】特開平11−323269号公報
【特許文献7】特開2003−238580号公報
【特許文献8】特開2001−139823号公報
【特許文献9】特開2004−59843号公報
【特許文献10】特開2004−189970号公報
【特許文献11】特開2001−279087号公報
【非特許文献1】西沢仁著,プラスチックス,Vol.54,No3(2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、焼却時に有毒な含ハロゲン系ガスを発生するハロゲン系難燃剤や人体への影響があると指摘されている酸化アンチモンを使用することなく、優れた難燃性と粘着特性並びに炭化絶縁破壊を良好に抑制できる耐トラッキング性等の電気特性を全て併せ持つ電気絶縁用難燃性粘着テープを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、かかる課題を解決する為に鋭意検討を行った結果、リン酸エステルアミド系難燃剤を単独、又はリン酸エステルアミド系難燃剤に、リン酸エステルアミド系難燃剤を含まないで、かつリン酸エステルアミド系難燃剤以外のハロゲン及びアンチモンいずれをも含まない難燃剤を組み合わせて、電気絶縁用難燃性粘着テープの粘着剤中に含有させることにより、粘着層は十分に粘着力を有する状態を保ち、当該用途に問題ないレベルの粘着特性や炭化絶縁破壊を良好に抑制できる耐トラッキング性等の電気特性が得られ、而も難燃剤の粘着剤層表面への析出が生じない電気絶縁用難燃性粘着テープが得られること、燃焼処理にあたり、有害な含ハロゲンガスやホスフィンガスを発生することなく、UL510燃焼試験に合格する高レベルの難燃性が得られることを見出して、本発明の完成に至ったものである。そして、リン酸エステルアミド系難燃剤を含み,かつリン酸エステルアミド系難燃剤以外のハロゲン及びアンチモンいずれをも含まない難燃剤を含んだ状態で用いても前記のリン酸エステルアミド系難燃剤を単独で用いた場合と同様の結果が得られることを見いだした。
【0012】
本発明には以下の発明が包含される。
(1)基材の少なくとも片面に、粘着剤ベースポリマー100質量部に対してリン酸エステルアミド系難燃剤20〜300質量部を添加した難燃性粘着剤組成物からなる粘着剤層を設けてなることを特徴とする難燃性粘着テープ。
(2)基材の少なくとも片面に、粘着剤ベースポリマー100質量部に対してリン酸エステルアミド系難燃剤を含み,かつリン酸エステルアミド系難燃剤以外のハロゲン及びアンチモンいずれをも含まない難燃剤を含み、両者併せて20〜300質量部を添加した難燃性粘着剤組成物からなる粘着剤層を設けてなることを特徴とする難燃性粘着テープ。
(3)前記リン酸エステルアミド系難燃剤がリン酸エステルとリン酸アミドの構造を有し、下記一般式(1)から(4)で表される化合物から選ばれることを特徴とする(1)又は(2)記載の難燃性粘着テープ。
【化1】

(1)

【化2】

(2)

【化3】

(3)

【化4】

(4)
(式中、R1、R2、R3及びR4は、同一又は異なる、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基から選ばれる基を示す。R5は、アルキレン基、シクロアルキレン基又は二価の芳香族炭化水素基を示す。又、R5は、窒素原子を含む複素環化合物を形成してよい。)
(4)前記リン酸エステルアミド系難燃剤が、芳香族リン酸エステルアミド系難燃剤であることを特徴とする、(3)に記載の難燃性粘着テープ。
(5)(1)に記載の基材が電気絶縁性基材であり、該基材を少なくとも1層設けてなることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の難燃性粘着テープ。
(6) UL510〔電気絶縁テープ規格〕燃焼試験において、合格することを特徴とする、(1)〜(5)のいずれか記載の難燃性粘着テープ。
(7) JIS C 2134(IEC112)規格に記載された測定方法で測定された比較トラッキング指数(CTI値)が、600V以上であることを特徴とする、(1)〜(6)のいずれか記載の難燃性粘着テープ。
(8) 前記難燃性粘着テープが、電気絶縁用途に用いられることを特徴とする、(1)〜(7)のいずれか記載の難燃性粘着テープ。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電気絶縁用難燃性粘着テープは、粘着層にリン酸エステルアミド系難燃剤を単独で、若しくは、リン酸エステルアミド系難燃剤を含み,かつリン酸エステルアミド系難燃剤以外のハロゲン及びアンチモンいずれをも含まない難燃剤を含んだ状態としたことにより、粘着層は十分に粘着力を有する状態を保ち、当該用途に問題ないレベルの粘着特性や炭化絶縁破壊を良好に抑制できる耐トラッキング性等の電気特性が得られ、而も難燃剤の粘着剤層表面への析出が生じない電気絶縁用難燃性粘着テープが得られること、燃焼処理にあたり、有害な含ハロゲンガスやホスフィンガスを発生することなく、UL510燃焼試験に合格する高レベルの難燃性が得られることが可能な電気絶縁用難燃性粘着テープを得ることができる。
そして、リン酸エステルアミド系難燃剤を含み,かつリン酸エステルアミド系難燃剤以外のハロゲン及びアンチモンいずれをも含まない難燃剤を含んだ状態で用いても前記のリン酸エステルアミド系難燃剤を単独で用いた場合と同様の結果が得られる。この場合に、リン酸エステルアミド系難燃剤以外のハロゲン及びアンチモンいずれをも含まない難燃剤を単独で含んだ状態で用いた場合の弊害も生ずることはない。
金属水酸化物系難燃剤や窒素含有化合物系難燃剤の単独又は、それらの組み合わせによるものでないので、該難燃剤を大量配合する必要がなく、粘着力を低下せしめることがない。ポリリン酸アンモニウム等のイオン性が強い難燃剤を使用していないので、比較トラッキング指数等の電気特性に問題をきたすことがなく、リン酸エステル系難燃剤を使用するわけではないので、粘着剤層を可塑化したり、難燃剤が粘着剤層表面に析出したりすることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、基材の少なくとも片面に、粘着剤ベースポリマー100質量部に対してリン酸エステルアミド系難燃剤20〜300質量部を添加した難燃性粘着剤組成物からなる粘着剤層を設けてなる難燃性粘着テープである(以下、一の発明という)。
この発明の特徴は、粘着剤組成物として、粘着剤ベースポリマー100質量部に対してリン酸エステルアミド系難燃剤20〜300質量部を添加した難燃性粘着剤組成物を用いる点にある。
この特徴点であるリン酸エステルアミド系難燃剤を用いることにより、粘着テープは難燃化され、併せて難燃性を付与するとともに、粘着特性も十分に有するものとなる。粘着剤層中の難燃剤は長時間経過しても粘着剤層表面へ析出する弊害をおこすことはない。
【0015】
もう一つの発明は、基材の少なくとも片面に、粘着剤ベースポリマー100質量部に対して、リン酸エステルアミド系難燃剤を含み,かつリン酸エステルアミド系難燃剤以外のハロゲン及びアンチモンいずれをも含まない難燃剤を含み、両者併せて20〜300質量部を添加した難燃性粘着剤組成物からなる粘着剤層を設けてなる難燃性粘着テープである(以下、二の発明という。)。
この特徴点は、「粘着剤ベースポリマー100質量部に対して、リン酸エステルアミド系難燃剤を含み,同時にリン酸エステルアミド系難燃剤以外のハロゲン及びアンチモンいずれをも含まない難燃剤を含み、両者併せて20〜300質量部を添加した難燃性粘着剤組成物」を用いる点にある。
この特徴点であるリン酸エステルアミド系難燃剤を用いることにより、粘着テープは難燃化され、併せて難燃性を付与するとともに、粘着特性も十分に有するものとなり、粘着剤層中の難燃剤は長時間経過しても粘着剤層表面へ析出する弊害をおこすことはない。
そして、リン酸エステルアミド系難燃剤を含み,かつリン酸エステルアミド系難燃剤以外のハロゲン及びアンチモンいずれをも含まない難燃剤を含んだ状態で用いても前記のリン酸エステルアミド系難燃剤を単独で用いた場合と同様の結果が得られる。この場合に、リン酸エステルアミド系難燃剤以外のハロゲン及びアンチモンいずれをも含まない難燃剤を単独で含んだ状態で用いた場合の弊害も生ずることはない。
金属水酸化物系難燃剤や窒素含有化合物系難燃剤の単独又は、それらの組み合わせによるものでないので、該難燃剤を大量配合する必要がなく、粘着力を低下せしめることがない。ポリリン酸アンモニウム等のイオン性が強い難燃剤を使用していないので、比較トラッキング指数等の電気特性に問題をきたすことがなく、リン酸エステル系難燃剤を使用するわけではないので、粘着剤層を可塑化したり、難燃剤が粘着剤層表面に析出したりすることがない
【0016】
以下に、上記一の発明に用いる組成物について具体的に説明する。
本発明の難燃性粘着テープにおける難燃性粘着剤層へのリン酸エステルアミド系難燃剤の配合量は、粘着剤ベースポリマー100質量部に対して、20〜300質量部の範囲である。各特性の良好なバランスを得る点からは、粘着剤100質量部当たりの難燃剤量を40〜200質量部とするのが好ましい。
この難燃剤配合量が300質量部を越えると、難燃性付与には有利となるが、粘着剤層の凝集力の低下、更には粘着テープとしての粘着力不足等を生じる恐れがある。又、配合量が20質量部未満では、粘着特性等は良くなるが、難燃特性が低くなり、UL510燃焼試験において、合格レベルの難燃性能を達成することができない場合がある。
【0017】
本発明に用いられるリン酸エステルアミド系難燃剤は、リン酸エステルアミド系難燃剤といわれるものであれば、使用することができる。具体的に、リン酸エステルアミド系難燃剤を挙げると、以下の一般式(1)〜(4)の化合物が用いられる。これらのリン酸エステルアミド系難燃剤は、1種単独、又は2種以上を組み合わせて用いても構わない。
【化5】

(5)

【化6】

(6)

【化7】

(7)

【化8】

(8)
上記一般式中に含まれる、R1、R2、R3及びR4は、同一又は異なる、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基から選ばれる基を示す。R5は、アルキレン基、シクロアルキレン基又は二価の芳香族炭化水素基を示す。また、R5は窒素原子を含む複素環化合物を形成してよい。
【0018】
アルキル基は、炭素数1から20、好ましくは、炭素数1から12、さらに好ましくは、炭素数1から6の直鎖又は分枝状の基を表す。具体的には、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、i−ペンチル、t−ペンチル、n−ヘキシル、i−ヘキシル、t−ヘキシル、n−ヘキシル、i−ヘキシル、t−ヘキシル、n−オクチル、i−オクチル、t−オクチル、n−ノニル、i−ノニル、t−ノニル、n−ドデシル、i−ドデシル、t−ドデシルなどの基である。
シクロアルキル基は、炭素数5から12の環状アルキルである。具体的には、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニルなどである。
アリール基は、炭素数6から20の芳香族炭化水素基を表す。具体的には、フェニル、ナフチル基であり、これらの基がアルキル基やヒドロキシ基で置換されている基であるメチルフェニル基、エチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基などを挙げることができる。
アルキレン基は、アルキレン基、シクロアルキレン基又は二価の芳香族炭化水素基を示す。
アルキレン基は、メチレン基、ジメチレン基、トリメチレン基、2,2−ジメチル−1,3−トリメチレン基、2−エチル−2−メチル−1,3−トリメチレン基、2,2−ジエチル−1,3−トリメチレン基などを挙げることができる。
シクロアルキレン基には、シクロブチレン基、シクロヘペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロオクチレン基を挙げることができる。
場合によっては、炭素原子と二つの窒素原子は環を形成していてもよい(化合物(2)の場合。)。
二価の芳香族性炭化水素基としては、アリーレン基、複数の前記アリーレン基を有する基である。
アリーレン基は、炭素数が6から20のアリーレン基又はアルキル基で置換されていてもよいアリーレン基であり、フェニレン、ナフチレン、メチルフェニレン、エチルフェニレン、メチルナフチレン、エチルナフチレンをあげることができる。
複数の前記アリーレン基を有する基では、[ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールD、ビスフェノールAD、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタンなどのジヒドロキシジアリールアルカン類;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンなどのジヒドロキシジアリールシクロアルカン類;1,4−ビス(4−ヒドロキシフェニルイソプロピル)ベンゼンなどのジヒドロキシアリールアルキルベンゼン類;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホンなどのジヒドロキシジアリールスルホン類;ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エーテルなどのジヒドロキシジアリールエーテル類;4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノンなどのジヒドロキシジアリールケトン類;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3−メチル−4−ヒドロキルフェニル)スルフィドなどのジヒドロキシジアリールスルフィド類;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシドなどのジヒドロキシジアリールスルホキシド類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルなどのジヒドロキシジフェニル類など)のビスフェノール類からヒドロキシル基が除かれた基、ビフェニレン基など]であってもよい。
【0019】
本発明に使用されるリン酸エステルアミドの製造方法は、従来から知られている方法を用いることができ、特に制限されない。リン酸エステルアミドの製造方法は以下の刊行物に記載されており、これらの方法により製造することができる。
特開平10−175985号公報、Jornal of Chem.Soc.C、3614(1971)、特開平8−59888号公報、特開昭63−235363号公報などを参考に製造することができる。
例えば、(1)オキシハロゲン化リンにフェノール類を反応させた後、アミン類を反応させる方法、(2)オキシハロゲン化リンにアミン類を反応させた後フェノール類を反応させる方法、(3)ジハロリン酸フェニルエステルに、アミン類を反応させる方法、(4)ハロリン酸ジフェニルエステルに、アミン類を反応させる方法、(5)ジフェニルホスファイトにアミン類を反応させる方法等により、アミン触媒あるいは金属塩化物の存在下、得ることができる。
【0020】
リン酸エステルアミド系難燃剤は、例えば、商品名「リン酸エステルアミド系難燃剤SPシリーズ(例えば、SP−601、SP−703など)」(四国化成工業(株)製)として入手できる。
【0021】
前記二の発明では、粘着剤ベースポリマー100質量部に対してリン酸エステルアミド系難燃剤を含み,かつリン酸エステルアミド系難燃剤以外のハロゲン及びアンチモンいずれをも含まない難燃剤を含み、両者併せて20〜300質量部を添加するものである。ここで、ハロゲン及びアンチモンいずれをも含まない難燃剤ということは、ハロゲン及びアンチモンを元素として含有しないということであり、含有することを意図して使用していない難燃剤であることを意味する。
リン酸エステルアミド系難燃剤の含有量とリン酸エステルアミド系難燃剤以外のハロゲン及びアンチモンいずれをも含まない難燃剤の含有量の割合は、30〜70質量部対70〜30質量部である。
その結果、主に難燃剤としてのハロゲン及びアンチモンを含有する場合に知られている弊害を防止することができることを意味する。ハロゲン及びアンチモンを含有する難燃剤としては、以下の難燃剤を挙げることができる。
テトラブロモビスフェノールA、ポリ臭素化ビフェニル、ポリ臭素化ジフェニルエーテル、三酸化アンチモンのようなハロゲン・アンチモンを含んだ難燃剤・難燃助剤である。
【0022】
ハロゲン及びアンチモンいずれをも含まない難燃剤ということは、主に難燃剤としての役割を持つポリリン酸アンモニウム、リン酸メラミン、リン酸ジメラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸メラム、ポリリン酸メレム、ポリリン酸メロン、リン酸エステル、リン酸グアニジン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硼酸亜鉛、硫酸メラミン、硝酸メラミン、硼酸メラミン、フタル酸メラミン、スルファミン酸メラミン、ジシアンジアミド、メラミンシアヌレート、トリアジン化合物、グアニジン化合物、グアニル尿素化合物等が挙げられ、又、相乗効果や難燃助剤としての効果を示す化合物としては、酸化亜鉛、硫化鉛、酸化錫、錫酸亜鉛等を挙げることができる。これらの併用に関しては特に限定されるものではない。
【0023】
本発明に用いられるリン酸エステルアミド系難燃剤、又はリン酸エステルアミド系難燃剤と他の難燃剤、又は難燃助剤を用いるときの性状は、その平均粒径は、0.5〜25μm、好ましくは1〜10μmである。0.5μmより小さい場合は、粉体としての取扱いが不便となり、25μmより大きい場合は、粘着剤中に分散した後の安定性の問題や粘着剤層表面への露出で面荒れを招きやすく、粘着力の低下原因となる場合がある。
【0024】
本発明の難燃性粘着テープとしての機能は、電気、電子、OA機器、家電、航空機、船舶、車両等の各分野で使用されており、各種機器内部が高温化され、蓄熱した場合でも、難燃性粘着テープ自体は発火する危険性がなく、又もし発火した場合でも速やかに消火する機能を有すると共に、経時変化が少なく、更に熱等に耐える粘着力を十分に有している。又、汚染や湿潤の環境下、600Vの高い印加電圧においても表面に沿っての炭化絶縁破壊並びに厚み方向への炭化絶縁破壊を共に良好に抑制できる。
【0025】
又、その役目を終えて各種機器部品のリサイクル処理を行う場合には、廃棄物として燃焼させても熱分解により環境や人体に好ましくない有毒な塩素、臭素等を含む含ハロゲンガスやホスフィンガス等を発生しない特徴を備えている。
【0026】
本発明の難燃性粘着テープに用いられるリン酸エステルアミド系難燃剤の難燃化機構は、(1)該リン酸エステルアミド系難燃剤の熱分解により生成したラジカルが、基材、及び粘着剤組成物の燃焼時に発生した反応性の高い活性ラジカルをトラップして燃焼を阻止する効果、(2)該リン酸エステルアミド系難燃剤の熱分解によるリン酸、ポリリン酸の生成による脱水炭化反応から、該粘着テープ表面に溶融ガラス状表層や緻密な炭化膜層(チャー)を生成して、熱や酸素から遮断して拡炎を防止する効果、(3)更に、本発明におけるリン酸エステルアミド系難燃剤分子は、分子構造上に窒素元素を含有することから、不活性の窒素ガス等の発生により熱膨張型炭化膜を生成し、多孔質断熱層をつくり、難燃効果を更に向上させる効果等による難燃化機構である。
【0027】
本発明に用いられる粘着剤は、特に限定されないが、一般的に用いられる公知のアクリル系粘着剤やゴム系粘着剤を、粘着剤ベースポリマーとして用いる。例えば、アクリル系粘着剤としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル等の(メタ)アクリル酸エステルモノマーを主成分とし、これに(メタ)アクリル酸、クロトン酸、フマル酸、イタコン酸、(無水)マレイン酸等の官能基を含むモノマーや酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、2−メチロールエチルアクリルアミド等を必要に応じて共重合させることにより得られる公知のアクリル系粘着剤である。
【0028】
本発明のゴム系粘着剤としては、特に限定されないが、例えば、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム及びスチレン・イソプレンブロックコポリマー等のエラストマー成分を1種、又は2種以上の組み合わせに対して、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、共重合系石油樹脂、脂環属系石油樹脂、クマロン・インデン樹脂、ピュア・モノマー系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン樹脂等の粘着付与樹脂を1種、又は2種以上組み合わせて混合することによりなる、公知のゴム系粘着剤である。
【0029】
上記粘着剤ベースポリマーは、アクリル系粘着剤の場合には、イソシアネート化合物、酸無水物、アミン化合物、エポキシ化合物、金属キレート類、アジリジン化合物等の架橋剤を用いて、又、ゴム系粘着剤の場合には、反応性フェノール樹脂、硫黄、チウラム類等の硫黄化合物、過酸化物、マレイミド等の加硫剤を用いて、架橋乃至加硫して用いた方が、粘着剤層の高い凝集力を得ることができるので好ましい。
【0030】
又、前記粘着剤中には、本発明の難燃効果を損なわない範囲で、必要に応じて、酸化防止剤、耐候剤、軟化剤、安定剤、充填剤、増量剤、補強剤等の各種添加剤を1種、又は2種以上を組み合わせて加えることができる。
【0031】
本発明の難燃性粘着テープに用いられる基材は、電気絶縁用途に使用可能な基材で有れば、特に限定されるものではない。例えば、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリイミド、ポリアミド、ポリアセテート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリオレフィン等のフィルム基材や、ガラスクロス、アセテートクロス等の布基材、芳香族ポリアミド不織布乃至ペーパー等が好ましく、これらの単体、又は2種以上を組み合わせたものが挙げられる。又、前記基材に対して、必要に応じて、紙、布、不織布等を粘着剤や接着剤等で積層した複合基材が用いられる。
【0032】
本発明に用いられる難燃性粘着剤組成物の作製方法は、特に限定されるものではないが、難燃剤の粘着剤ベースポリマーへの分散方法としては、一般に知られる機械的混練分散法の他に、必要に応じて溶剤分散法、超音波分散法等の公知の方法を用いることができる。このようにして製造された難燃性粘着剤組成物の塗工方法は、特に限定されるものではないが、例えば、ロールコーターやリバースコーター等で上記基材の少なくとも片面に1層、又は2層以上塗布され、必要に応じ加熱することにより本発明の難燃性粘着テープが得られる。本発明の難燃性粘着テープの粘着剤層の厚みは、通常5〜100μmであり、好ましくは10〜60μm程度である。
【0033】
本発明の難燃性粘着テープは、高い難燃性、粘着特性、絶縁破壊電圧、耐電圧、耐トラッキング性等の電気特性を全て併せ持つことから、電気・電子部品類の絶縁用、特にトランス類の絶縁用に用いることが好ましいが、その他の難燃性が要求される用途、例えば、電気製品の外装用、建築材料、自動車部品、火気取り扱い現場での養生用等にも用いることができる。
【0034】
以下、本発明を実施例で更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。尚、実施例中において「部」及び「%」は、「質量部」及び「質量%」を示すものである。
【0035】
〈粘着剤の調製〉
ブチルアクリレート75部、2−エチルヘキシルアクリレート20部、アクリル酸4.5部、2−ヒドロキシエチルアクリレート0.5部、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.15部を酢酸エチルに溶解し、窒素雰囲気下、67℃で5時間反応させ、固形分を40%に希釈し、重量平均分子量約60万のアクリル酸エステル共重合体溶液(以下アクリル系粘着剤と言う)を調製した。
【実施例1】
【0036】
上記調製したアクリル系粘着剤の固形分100部に対して、リン酸エステルアミド系難燃剤(商品名:SP−703 四国化成工業社製)70部を添加し、混合・混練機(HM−3D−5 特殊機化工業社製)で練り込み、充分に分散させて得た粘着剤組成物にポリイソシアネート系架橋剤(商品名:コロネートL 日本ポリウレタン社製)を3.5部、35部のトルエンを配合し、均一になるまで充分に撹拌して得られた難燃性粘着剤組成物を、予め易接着処理及び背面離型処理が処されたポリエステルフィルム25μmの易接着面に乾燥後の粘着剤層の厚みが25〜35μmになるように塗布・乾燥して、本発明の難燃性粘着テープを得た。
【実施例2】
【0037】
上記調製したアクリル系粘着剤の固形分100部に対して、リン酸エステルアミド系難燃剤(商品名:SP−670 四国化成工業社製)30部、水酸化アルミニウム(商品名:ハイジライトH−32 昭和電工社製)35部を添加し、混合・混練機(HM−3D−5 特殊機化工業社製)で練り込み、ポリイソシアネート系架橋剤(商品名:コロネートL 日本ポリウレタン社製)を3.5部、及び15部のトルエンを加えて均一になるまで充分に撹拌して得られた難燃性粘着剤組成物を、予め易接着処理及び背面離型処理が処されたポリエステルフィルム25μmの易接着面に乾燥後の粘着剤層の厚みが25〜35μmになるように塗布・乾燥して、本発明の難燃性粘着テープを得た。
【0038】
比較例1
上記調製したアクリル系粘着剤の固形分100部に対して、臭素系難燃剤〔テトラブロモ・ビスフェノールA誘導体〕(商品名:商品名:ファイヤガード3000 帝人化成社製)を40部、三酸化アンチモン25部を添加し、混合・混練機(HM−3D−5 特殊機化工業社製)で練り込み、充分に分散させて得た粘着剤組成物にポリイソシアネート系架橋剤(コロネートL 日本ポリウレタン社製)を3.5部、及び15部のトルエンを加えて均一になるまで充分に撹拌して得られた難燃性粘着剤組成物を、予め易接着処理及び背面離型処理が処されたポリエステルフィルム25μmの易接着面に乾燥後の粘着剤層の厚みが25〜35μmになるように塗布・乾燥して、難燃性粘着テープを得た。
【0039】
比較例2
上記調製したアクリル系粘着剤の固形分100部に対して、芳香族縮合型リン酸エステル系難燃剤(商品名:アデカスタブFP−500 旭電化工業社製)65部、ポリイソシアネート系架橋剤(コロネートL 日本ポリウレタン社製)を3.5部、及び15部のトルエンを配合し、均一になるまで充分に撹拌して得られた難燃性粘着剤組成物を、予め易接着処理及び背面離型処理が処されたポリエステルフィルム25μmの易接着面に乾燥後の粘着剤層の厚みが25〜35μmになるように塗布・乾燥して、難燃性粘着テープを得た。
【0040】
比較例3
上記調製したアクリル系粘着剤の固形分100部に対して、芳香族縮合型リン酸エステル系難燃剤(商品名:レオフォスBAPP 味の素ファインテクノ社製)65部、ポリイソシアネート系架橋剤(商品名:コロネートL 日本ポリウレタン社製)を3.5部、及び15部のトルエンを配合し、均一になるまで充分に撹拌して得られた難燃性粘着剤組成物を、予め易接着処理及び背面離型処理が処されたポリエステルフィルム25μmの易接着面に乾燥後の粘着剤層の厚みが25〜35μmになるように塗布・乾燥して、難燃性粘着テープを得た。
【0041】
比較例4
上記調製したアクリル系粘着剤の固形分100部に対して、ポリリン酸アンモニウム(商品名:Exolit AP423 クラリアントジャパン社製)65部を添加し、混合・混練機(HM−3D−5 特殊機化工業社製)で練り込み、充分に分散させて得た粘着剤組成物にポリイソシアネート系架橋剤(商品名:コロネートL 日本ポリウレタン社製)を3.5部、15部のトルエンを配合し、均一になるまで充分に撹拌して得られた難燃性粘着剤組成物を、予め易接着処理及び背面離型処理が処されたポリエステルフィルム25μmの易接着面に乾燥後の粘着剤層の厚みが25〜35μmになるように塗布・乾燥して、難燃性粘着テープを得た。
【0042】
比較例5
上記調製したアクリル系粘着剤の固形分100部に対して、ポリリン酸メラミン(商品名:MPP−A 三和ケミカル社製)65部を添加し、混合・混練機(HM−3D−5 特殊機化工業社製)で練り込み、充分に分散させて得た粘着剤組成物にポリイソシアネート系架橋剤(商品名:コロネートL 日本ポリウレタン社製)を3.5部、15部のトルエンを配合し、均一になるまで充分に撹拌して得られた難燃性粘着剤組成物を、予め易接着処理及び背面離型処理が処されたポリエステルフィルム25μmの易接着面に乾燥後の粘着剤層の厚みが25〜35μmになるように塗布・乾燥して、難燃性粘着テープを得た。
【0043】
比較例6
上記調製したアクリル系粘着剤の固形分100部に対して、水酸化アルミニウム(商品名:ハイジライトH−32 昭和電工社製)83部を添加し、混合・混練機(HM−3D−5 特殊機化工業社製)で練り込み、充分に分散させて得た粘着剤組成物にポリイソシアネート系架橋剤(商品名:コロネートL 日本ポリウレタン社製)を3.5部、35部のトルエンを配合し、均一になるまで充分に撹拌して得られた難燃性粘着剤組成物を、予め易接着処理及び背面離型処理が処されたポリエステルフィルム25μmの易接着面に乾燥後の粘着剤層の厚みが25〜35μmになるように塗布・乾燥して、難燃性粘着テープを得た。
【0044】
〔試験方法〕
以上、各実施例及び比較例として得られたテープサンプルの諸特性を以下の方法で試験し、評価を行った。その結果を〔表1〕に記載した。
【0045】
〔粘着力〕JIS Z 0237に準じて、粘着力を測定した。
【0046】
〔保持力〕JIS Z 0237に準じて測定を行った。但し、被着体への貼着面積を10mm×20mmとし、荷重300g、温度120℃の条件下で、30分間で、テープがずれた距離を測定し、テープのずれた距離が20mm以上となり、試料が落下した場合を『落下』と記録した。
【0047】
〔燃焼試験〕UL510〔電気絶縁用テープ〕燃焼試験に準じて、難燃性試験を行って判定した。
【0048】
〔絶縁破壊電圧〕JIS C 2107に準じて測定した。
【0049】
〔比較トラッキング指数〕JIS C 2134(IEC112)に準じて測定した。
【0050】
〔電食系数〕JIS C 2107〔電線引張強さ法による電解腐食〕に準じて測定した。
【0051】
〔外観〕目視で、粘着剤層表面への難燃剤の析出の有無を観察して、評価した。
【0052】
〔ハロゲンガスの発生〕JIS K 2541(酸素フラスコ法)に準じて,イオンクロマトグラフ法により測定し、ハロゲンイオンの検出量が100ppmを越えた場合にはハロゲンガスが発生するものと見なした。
【0053】
【表1】

【0054】
表1から明らかなように、本発明の電気絶縁用難燃性粘着テープは、当該用途に必要な難燃性、粘着特性、電気特性を全て満足し、難燃剤粒子が粘着剤層表面に析出したり、粘着剤の凝集力を低下させたりすることもない。又、ハロゲン系難燃剤や赤燐を用いていないので、有害な含ハロゲンガスやホスフィンガスを発生することがない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の少なくとも片面に、粘着剤ベースポリマー100質量部に対してリン酸エステルアミド系難燃剤20〜300質量部を添加した難燃性粘着剤組成物からなる粘着剤層を設けてなることを特徴とする難燃性粘着テープ。
【請求項2】
基材の少なくとも片面に、粘着剤ベースポリマー100質量部に対してリン酸エステルアミド系難燃剤を含み、かつリン酸エステルアミド系難燃剤以外のハロゲン及びアンチモンいずれをも含まない難燃剤を含み、両者併せて20〜300質量部を添加した難燃性粘着剤組成物からなる粘着剤層を設けてなることを特徴とする難燃性粘着テープ。
【請求項3】
前記リン酸エステルアミド系難燃剤がリン酸エステルとリン酸アミドの構造を有し、下記一般式(1)から(4)で表される化合物から選ばれることを特徴とする請求項1又は2に記載の難燃性粘着テープ。
【化1】

(1)
【化2】

(2)

【化3】

(3)

【化4】

(4)

(式中、R1、R2、R3及びR4は、同一又は異なる、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基から選ばれる基を示す。R5は、アルキレン基、シクロアルキレン基又は二価の芳香族炭化水素基を示す。また、R5は窒素原子を含む複素環化合物を形成してよい。)
【請求項4】
前記リン酸エステルアミド系難燃剤が、芳香族リン酸エステルアミド系難燃剤であることを特徴とする、請求項3に記載の難燃性粘着テープ。
【請求項5】
請求項1に記載の基材が電気絶縁性基材であり、該基材を少なくとも1層設けてなることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の難燃性粘着テープ。
【請求項6】
UL510〔電気絶縁テープ規格〕燃焼試験において、合格することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の難燃性粘着テープ。
【請求項7】
JISC 2134(IEC112)規格に記載された測定方法で測定された比較トラッキング指数(CTI値)が、600V以上であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の難燃性粘着テープ。
【請求項8】
前記難燃性粘着テープが、電気絶縁用途に用いられることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の難燃性粘着テープ。

【公開番号】特開2008−24827(P2008−24827A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−199146(P2006−199146)
【出願日】平成18年7月21日(2006.7.21)
【出願人】(000145079)株式会社寺岡製作所 (23)
【Fターム(参考)】