説明

難燃性軟質成形ポリウレタンフォームの製造方法

本発明は、難燃性固体を含有する成形ポリウレタンフォーム物品、その製造方法、および難燃性が要求される部材へのその使用に関する。前記成形ポリウレタンフォーム物品は、成形ポリウレタンフォームから製造され、前記難燃性固体の割合が成形ポリウレタンフォーム物品の内部領域より表面領域において高いことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性固体(例えば、ポリリン酸アンモニウム、メラミンまたは膨張性黒鉛)を含有するポリウレタン成形フォーム、その製造方法、および難燃性が要求される構成要素へのそのようなポリウレタン成形フォームの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
フォームは長い間知られており、低密度およびそれに関連する材料の節約、優れた断熱性および遮音性、機械的制動性、および特に電気的性質の故に広く使用されている。従って、フォームは、包装、家具およびマットレスにおいて、一般に遮音材および断熱材において、水上乗物における揚力体として、様々な工業分野におけるフィルター材料および支持材として、並びに層状材料、ラミネート、複合材またはフォーム複合材の製造における構造要素として見られる。
【0003】
多くの用途にとって、特に、飛行体、鉄道車両および水上乗物の構成において、法的指令および複数の他の規制で要求されているように、フォームの十分な耐火が必要である。フォームが耐火特性に関して要求を満たすという証拠は、多数の様々な耐火試験によって示され、通常、フォームまたはフォームを含む複合材の適用によって適応させる。そのような耐火試験に合格するためには、一般に、フォームをいわゆる難燃剤で処理しなければならない。
【0004】
更に、難燃剤として、塩素または臭素を含有する化合物を使用することが知られており、該化合物はしばしば酸化アンチモンと組み合わせて使用される。しかしながら、不都合なことに、例えばハロ炭化水素はポリマーからほとんど分離できないので、該化合物によって燃えやすさを低減したプラスチック材料およびプラスチックフォームをリサイクルすることは極めて困難であり、廃棄物焼却プラントでは、そのような化合物からダイオキシンが発生し得る。加えて、火災が起きた場合に、HClおよびHBrのような有毒ガスおよび腐食性ガスが生じる。
【0005】
リン化合物は、フォームを処理する難燃性物質の別の種類である。その特定の欠点は、ハロゲン含有難燃剤と同様、火災が起きた場合に、極めて高密度の煙道ガスが生じることである。煙道ガスの有毒性と煙のせいで悪くなった視界とが原因で、ヒトは、火災の状況において、特に閉鎖された室内で危険にさらされ、救助活動はより困難になる。
【0006】
前記欠点を解消するため、WO 2004/056920 A2は、(無機)難燃剤として、硫酸アンモニウムを使用することを記載している。
【0007】
もう1つの重要な無機難燃剤として、膨張性黒鉛が挙げられる。膨張性黒鉛は、黒鉛の炭素層の間に分子が挿入されている、いわゆる内位添加化合物である。該分子は多くの場合、硫黄化合物または窒素化合物である。
【0008】
メラミンもまた、例えばGB 2 369 825 Aから知られているように、PUR成形フォーム製造の分野で極めて頻繁に使用されている。
【0009】
膨張性黒鉛もまた、PURフォーム製造の分野で難燃剤として昔から知られてきた。熱の作用下、黒鉛の層は熱分解によってアコーディオンのように離れ、片状黒鉛は膨張する。膨張性黒鉛の種類に応じて、膨張は、150℃程度の低い温度で開始することもあり、ほとんど急激に起こることもある。膨張が自由な場合、最終体積は、初期体積の数百倍に達し得る。
【0010】
膨張性黒鉛の難燃効果は、表面におけるそのような膨張層の形成に基づく。これは、炎の拡大を遅らせ、ヒトにとって最も危険である火災の結果、即ち有毒ガスおよび煙の発生に対して作用する。
【0011】
膨張性黒鉛の特性、即ち開始温度および膨張性は、主に、挿入性(即ち、ベースと平行に挿入された層の数)および挿入剤によって決まる。
【0012】
一方、膨張性黒鉛について、多くの応用分野が見出されてきた。例えば、膨張性黒鉛は、断熱フォーム(例えばPU硬質フォームシート)、軟質フォーム(例えば家具におけるマットレスなど)、カーペット、布地、人工樹脂被膜、プラスチックシート、プラスチック被膜、ゴム材料(例えばコンベヤーベルト)およびパイプシールに使用される。
【0013】
膨張性黒鉛が少ない量でさえ高い難燃効果を示し、安価であり、かつ少ない煙を発生させるという事実は、特に有利であると考えられる。加えて、膨張性黒鉛はハロゲンおよび重金属を含有しない。
【0014】
これらの利点を考慮すると、様々なフォーム材料に膨張性黒鉛を使用する多くの試みがなされてきたことは、驚くに値しない。
【0015】
例えば、DE 103 02 198 A1は、ポリウレタンフォームへの難燃剤としての膨張性黒鉛の代替使用を記載している。
【0016】
DE 39 09 017 C1は、ポリオールおよびポリイソシアネート並びに難燃剤としてのある割合の小板形状の膨張性黒鉛を含んでなるフォーム反応混合物からの、難燃性弾性ポリウレタン軟質フォームの製造方法であって、該小板の寸法が、生じるフォーム気泡壁の寸法と同じ桁であり、膨張性黒鉛が、反応成分であるポリオールとまず混合され、発泡時にフォームにある程度組み込まれ、気泡壁の少なくとも一部を形成する方法を記載している。
【0017】
更に、DE 40 10 752 A1は、ポリウレタンフォームに、膨張性黒鉛に加えてメラミンを付加的に使用することを記載している。
【0018】
膨張性黒鉛のような多くの固体状難燃剤の一般的問題は、そのような固体がポリオール成分に溶解しないといった事実に起因する。このことは、貯蔵容器内に難燃剤が沈降するのを防ぎ、かつフォーム内における難燃剤の均一な分布を確実にするために、ポリオール成分および難燃剤の分散体を連続して撹拌しなければならないといった結果をもたらす。加えて、メラミンは、沈降すると極めて迅速に固まる望ましくない特性を有する。この特性は、固体ケーキの再分散を実質的により困難にする。
【0019】
ポリオール成分に溶解しない難燃剤の別の欠点は、それらがミキシングヘッドの有意な摩耗をもたらし、それによって、その中に含まれている要素をより頻繁に取り替えなければならず、製造コストがより高くなるといった事実に見られる。加えて、ポリウレタン原料の配合に高圧ミキシングヘッドを使用する場合は、そのようなミキシングヘッド内で極めて高い剪断力が生じる。そこでは膨張性黒鉛のような固体粒子は著しく影響を受け、それによってその難燃性が悪化し得る。
【0020】
前記文献で記載されている方法の更なる欠点は、特に、難燃剤が、フォーム材料全体に(均一に)分布し、従って難燃剤が全くまたはそれほど緊急に必要とされていない場所(例えば、ポリウレタン成形フォームの内部)に見られ得るといった事実に見られる。このことは、そのような難燃剤の不相応に高い消費を招く。加えて、ポリウレタン成形フォーム全体に分布する固体状難燃剤の存在によって、ポリウレタン成形フォームの機械的性質の望ましくない変化が起こり得る。
【0021】
そのような問題を回避するため、従来技術は、固体含有PUR成形品として、膨張性黒鉛に加えて別のフォーム材料、例えばEP 1 867 455 A2の場合はメラミン樹脂フォーム(例えばBASF AGのBasotect(登録商標))を含有する複合材を記載している。しかしながら、そのような試みもまた幾つかの欠点を有する。
【0022】
例えば、メラミン硬質フォームは、メラミンおよびホルムアルデヒドの縮合によって製造される。これは、この材料の最終用途において、上昇したホルムアルデヒド値をもたらす。このことは、例えば、自動車分野においても家具分野においても望ましくない。
【0023】
加えて、前記メラミン硬質フォーム(Basotect(登録商標))は、スラブ材としてしか購入できず(BASF AG(ドイツ国ルートヴィヒスハーフェンおよびシュヴァルツハイデ在のメーカー)によって供給)、従って、それぞれの用途に合わせて切断しなければならない。このため、この製造段階で既に、設計自由度が極度に制限される。
【0024】
2つの材料であるPURとメラミン硬質フォームとを比べると、メラミン硬質フォームは、高さおよび支持性の低減に関する低い圧縮永久歪、および引張強さ試験における低い性能を示す(ドイツ国バーデンバーデンで2005年1月26日〜27日に開催されたVDIシンポジウム"Polyurethan 2005"の要旨集より)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】WO 2004/056920 A2
【特許文献2】GB 2 369 825 A
【特許文献3】DE 103 02 198 A1
【特許文献4】DE 39 09 017 C1
【特許文献5】DE 40 10 752 A1
【特許文献6】EP 1 867 455 A2
【非特許文献】
【0026】
【非特許文献1】ドイツ国バーデンバーデンで2005年1月26日〜27日に開催されたVDIシンポジウム"Polyurethan 2005"の要旨集
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
従って、本発明の目的は、前記したような従来技術の欠点を解消した、ポリウレタン成形フォームとそのようなポリウレタン成形フォームの製造方法の両方を提供することである。特に、本発明の目的は、難燃剤としての難燃性固体(例えば、ポリリン酸アンモニウム、メラミンまたは膨張性黒鉛であって、以下、「固体」と称する)の使用を、難燃剤が必要とされているポリウレタン成形フォームの部位で特に難燃効果が達成されるように、量に関して最適化することである。これによって、固体の必要量を低減する。
【0028】
また、本発明の目的は、難燃剤の範囲を選択的かつ可変的に調節できるように、ポリウレタン成形フォームとその製造方法の両方を考案することである。
【課題を解決するための手段】
【0029】
第一の態様では、本発明の目的は、ポリウレタン成形フォームの表面領域における難燃性固体の割合が、ポリウレタン成形フォームの内部領域における難燃性固体の割合より高いことを特徴とする、ポリウレタン成形フォームによって達成される。
【発明を実施するための形態】
【0030】
好ましい態様では、本発明のポリウレタン成形フォームは、1種またはそれ以上の異なったポリウレタンおよび少なくとも1種の難燃性固体を含有する。
【0031】
加えて、本発明のポリウレタン成形フォームは、好ましくは軟質フォーム、即ち、硬化後に可撓性物質をもたらす成形用フォームを用いて製造されるフォームである。
【0032】
本明細書で使用する場合、「難燃性固体」とは、火災が起きた場合に炎の拡大を抑えるための物質およびそれらとポリマーマトリックスとの混合物を意味する。単独の、リン酸アンモニウム、メラミンまたは膨張性黒鉛、或いはそれらの互いの混合物が、特に好ましい。
【0033】
これは、遅延された着火、より緩慢な燃焼、低減された発熱速度、抑制された(燃焼中の)材料の滴りによって、或いは自己消化性効果によって達成することができる。
【0034】
本発明に関する難燃性固体の様々な活性を、例えば以下の燃焼試験で試験する。
・FMVSS 302:特に燃焼速度
・コーン熱量計:特に発熱速度
・NF P 92-501(Epiradiateur試験):特に、着火までの時間
・UL 94:特に(燃焼中の)滴り
・BS 5852 Part 2("Crib 5"):特に自己消火性
【0035】
「ポリウレタン成形フォームの表面領域/内部領域における固体の割合」とは、所定のしかしながら可変の体積における固体の質量割合および/または体積割合を意味する。ここで、その比較は、同様に寸法決めされているが空間的に重なっていない2つの体積、即ち、ポリウレタン成形フォームの表面に近い体積と内部体積における割合を比較することを含む。
【0036】
本発明の固体含有ポリウレタン成形フォームのそのような構造は、ポリウレタン成形フォームの表面領域、即ち、火源に曝される領域に、固体が多く含まれることを必要とする。従って、難燃剤は、それが必要とされているフォーム体に主にまたはもっぱら配合される。これは、固体の必要量に関する有意な節約を意味する。
【0037】
本発明の2つの体積における比較に関して「より多い」とは、表面領域の体積における固体の割合が、フォーム体の内部領域の体積における固体の割合より好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%多いことを意味する。
【0038】
より詳細に以下に記載するポリウレタン成形フォームの製造方法によって、固体の割合がポリウレタン成形フォームの内部領域からその表面まで連続的または不連続的に増加するように、ポリウレタン成形フォームを設計できる。「不連続な増加」とは、異なった割合の固体を含有する領域を区別できる、急激な増加などを意味する(ただし、これらの領域自体を不連続的に製造する必要はない)。逆に、固体の割合が連続的に増加する場合、異なった領域または層を不連続的に製造することも可能である。この場合、そのような領域または層の境界は、(例えば視覚的に)互いに特に設定されない。
【0039】
本発明のポリウレタン成形フォームが、少なくとも固体の割合で区別される、同じまたは異なったフォーム組成からなる少なくとも2つの全面積層または部分面積層を含んでなることが更に好ましい。
【0040】
実際の危険な状況への良好な適応が、そのような勾配構造によって達成され得ることは、容易に理解できる。例えば、本発明のポリウレタン成形フォームをシート外殻として使用するならば、実際の座面として設計されている上面が、床に面する下面と比べてより曝されると当然考えられる。従って、上層は下層と比べてより高い割合の固体を含有すべきであろう。
【0041】
更に、ポリウレタン成形フォームが、少なくとも1種の難燃性固体を含有する少なくとも1つの表面層および難燃性固体を含有しない少なくとも1つの層を含んでなることも可能である。
【0042】
その利点は、必要とされる固体量の更なる節約にある。従って、例えば、前記したシート外殻の更なる発展形は、難燃性固体含量の高いフォーム層、難燃性固体を含有しないフォーム層および難燃性固体含量のより低いフォーム層を含んでなる三層構造を選択することによって可能となる。
【0043】
本発明によれば、ポリウレタン成形フォームの表面全体が「固体を多く含有する」材料からなる必要はない。むしろ、本発明の意味では、表面の所定の領域のみ、即ち火災が起きた場合に高温に特に曝される領域のみが、しかるべく処理されていることが好ましい。
【0044】
更に、難燃性固体を多く含有する表面領域が0.2mm〜シートクッションの最大厚の範囲、特に1mm〜2cmの範囲の層厚さを有することが好ましい。
【0045】
別または追加の態様として、表面領域における難燃性固体の割合は、1〜80重量%の範囲、特に5〜30重量%の範囲であってよい。
【0046】
これらの2つの可変量、即ち、一方においては難燃性固体含有表面領域の層厚さおよび他方においてはこの層における難燃性固体の割合を用いて、難燃性を(ほぼ)自在に調節できることは容易に理解できる。従って、層が厚いほどかつ難燃性固体の割合が多いほど、難燃性は高くなる。しかしながら、層が厚すぎることおよび/または難燃性固体の割合が多すぎることは、相応じて多量の難燃性固体を必要とするので好ましくない。これら2つの相反する傾向の故に、好ましいと前記した上限および下限が得られる。
【0047】
更に、難燃性固体含有表面領域の密度は、10〜800kg/mの範囲、特に2000kg/mまで、とりわけ30〜200kg/mの範囲、特に900kg/mまでである。そのような低密度によって、得られるポリウレタン成形フォームにおける有意な重量の節約が実現され、これは多くの用途にとって同様に有利である(例えば、乗物のシートとしての使用では、相応じてより少ない燃料しか乗物を動かすために必要とされない)。
【0048】
固体に加えて、本発明のポリウレタン成形フォームは、別の固体状および/または液体状難燃性添加剤を少なくとも1種含有することもできる。即ち、ポリウレタン成形フォームに1種だけではない難燃性物質を配合することによって、難燃効果を高めるだけでなく、実際の要求に対してより意図的に適応させることもできる。
【0049】
本発明のポリウレタン成形フォームはまた、全面積または部分面積の(装飾)層を含んでなることもできる。この(装飾)層は、例えば、以下に記載する方法において金型に好ましく予め挿入されている、PUR成形フォームまたはPURエラストマーであってもよい。他の装飾材料(布地、不織布など)も考えられる。
【0050】
第二の態様では、本発明の目的は、液体状および/または固体状難燃性物質をポリオール成分およびイソシアネート成分の反応混合物に配合し、このようにして得られた混合物を用いてポリウレタン成形フォームを形成する、前記ポリウレタン成形フォームの製造方法であって、配合する難燃性物質の量の、反応混合物の量に対する比Rが、所定の時間間隔内では一定であるが、続く第二の時間間隔ではこの比と異なることを特徴とする方法によって達成される。
【0051】
これに関しても、用語「量」は、質量によって決められた量と体積によって決められた量のいずれかに関係し得る。
【0052】
ポリウレタン成形フォームにおける難燃性固体の勾配を形成するための2つの時間間隔(比較はこれに基づく)は、等しい長さである。対照的に、2つの(等しい長さの)時間間隔の長さは、本発明において如何なる制限も受けず、即ち、自由に選択することができる。
【0053】
「2つの時間間隔の比較」とは、比較のための繰り返される時間間隔がフォーム形成の同じ過程(例えばPUR原料の適用)内でなければならないことを必ずしも意味しない。それは、ポリウレタン成形フォームの異なった適用過程(例えば、一方においては固体含有PURの流れの適用、次いで、他方においては固体不含有PURの流れの適用)内における(等しい長さの)時間間隔を意味することもある。
【0054】
配合する固体の量の、フォーム原料の量に対する比Rは自在に(或いはある限度内で)調節できるので、ポリウレタン成形フォーム内で、難燃性固体の極めて異なった分布を有するポリウレタン成形フォームを実現することができる。
【0055】
そのような方法は、異なった量の難燃性物質を含有する異なった領域のポリウレタン成形フォームを提供するのに極めて適している。
【0056】
固体状難燃性物質(即ち本発明の意味における固体)に加えて液体状難燃性物質を付加的に使用する場合、フォーム原料よりも、フォーム原料を調製するために使用する成分(即ち、ポリオールまたはイソシアネート成分)に、液体状難燃性物質を配合することが好ましいことが見出された。別のまたは追加の態様として、液体状難燃性物質を、成分貯蔵容器に、または混合室へと流通する成分流れに添加してもよい。混合室へと流通する成分流れに添加する方が、液体状難燃性物質の、成分への、従ってフォーム原料への時間的または量的に可変の添加を確実にすることがはるかに簡単である。
【0057】
本発明の方法を用いて、(難燃性層を均一に適用すると同時に)ほとんど全ての形状を形成できる。即ち、材料をはるかに効率的に使用できる。加えて、外層および内部PURコアの両方において挿入物を使用できる。
【0058】
更に、ポリウレタン成形フォームの製造方法は、「ウェット・イン・ウェット」適用によって実施できる。これは、層を数段階で適用する場合、先の段階で適用したPUR材料が完全に硬化するまで待つ必要がないことを意味する。従って、(完成された)内部コアを製造するための付加的工程は不要であり、(対応する技術を用いた)PUR処方を一工程で処理できる。
【0059】
層厚さおよび層に含有される難燃性固体の割合の変更に加えて、ポリウレタン層の組成を変えることもできる。例えば、配合における異なった量の水は、異なった程度の気泡ガスを生成し、従って、層厚さを厳密に調節できる。しかしながら、これは、別の(化学的または物理的)発泡剤の添加によって実施することもできる。更に、ポリオールとイソシアネートの混合比を変えることもできる。
【0060】
PUR成形フォームを製造するための成分として、従来技術から十分知られているポリオールおよびイソシアネートを使用する。ポリオール成分の一部を再生可能原料(例えば、ひまし油または他の既知の植物油、それらの化学反応生成物または誘導体)に置き換え可能であることが見出された。そのような置き換えは、最終ポリウレタン成形フォームの特性を低下させず、かつそのようなフォーム体が再生の可能性に大いに寄与するので有利である。
【0061】
本発明の方法では、難燃性固体を含有する流れをフォーム原料の流れに注ぐか、またはフォーム原料の流れを固体含有流れに注ぐことが好ましい。2つの原料のこの相互混合によって、前記利点を有する固体の最適な架橋が実現する。また、液体状フォーム原料に固体を混合することは排除されており、これにより前記欠点は解消される。
【0062】
特に、難燃性固体とフォーム原料とのより良好な架橋のために、難燃性固体およびフォーム原料を噴霧してポリウレタン成形フォームを形成することが好ましい。
【0063】
加えて、難燃性固体をより後期に反応流れに計量供給するので、固体の摩耗性によってポンプ、ミキシングヘッドおよびノズルが損傷を受ける危険性がない。
【0064】
更に好ましい変法は、難燃性固体を含有するフォーム層を型、特に金型に導入し、そこに、難燃性固体を含有しないかまたは固体の割合が低い別のフォーム材料を適用することを特徴とする。異なった割合の固体を含有する異なった層のこのような不連続適用は、工程を簡素化する。
【0065】
難燃性固体含有フォーム層は好ましくは、開放式金型に完全にまたは部分的に噴霧することによって導入される。次いで、より低い割合の難燃性固体を含有するフォーム層を噴霧適用または(場合により金型を閉じた後に)注型することによって、先に導入した層に適用できる。
【0066】
本発明の1つの変法は、難燃化されていない軟質フォームをまず製造し、次いでそれに難燃化層を噴霧することからなる。
【0067】
本発明の方法では、適用に使用するフォーム原料と難燃性物質の混合物の嵩密度は、好ましくは10〜800kg/mの範囲、特に2000kg/mまで、とりわけ30〜200kg/mの範囲、特に900kg/mまでに調節する。
【0068】
本発明の方法により、難燃性固体含有ポリウレタンを用いて、傾斜しているかまたは垂直の表面を噴霧することもできるので、増加したチキソトロピーは適切であり得る。この増加したチキソトロピーは、反応混合物の粘度を選択的に調節するために、使用する物質(例えば、アミン、ポリエーテル、アミノ変性ポリエーテル、様々な触媒など)の異なった反応性を利用することによって達成できる。チキソトロピーを選択的に調節するためのそのような変性は、文献から知られている。例えば、Guether、MarkuschおよびClineは、Polyurethanes Conference 2000(2000年10月8日〜11日)で「垂れのないポリウレタン組成物」の使用を記載した。
【0069】
第三の態様では、本発明の目的は、難燃性遮音材および/または難燃性断熱材、難燃性充填材または難燃性シーリング材としての、本発明のポリウレタン成形フォームの使用によって達成される。
【実施例】
【0070】
本発明のポリウレタン成形フォーム、特に軟質成形フォームは、多種多様な形状を有する成形品として製造できる。
【0071】
第一工程段階では、ポリオール/イソシアネート混合物を1つの金型表面に噴霧した。あらゆる面から均一に該混合物を噴霧できるように、金型を置いた。ポリオールとイソシアネートの混合はミキシングヘッド(混合要素)で実施した。
【0072】
本発明の実施例(1〜4)では、1秒あたり1.5〜4.5gで固体を反応混合物に吹き込みながら、ポリオール/イソシアネート混合物を約600gの量(約45秒の噴霧時間に相当する)で噴霧した。
【0073】
本発明の実施例(5〜12)では、1秒あたり2.0〜8.2gで固体を反応混合物に吹き込みながら、ポリオール/イソシアネート混合物を約37g/秒の生産速度で噴霧した。
【0074】
第二工程段階では、60〜65g/lの嵩密度(実施例1〜4)または55g/lの嵩密度(実施例5〜12)での開放式または密閉式金型充填法で、反応射出成形機を用いて、金型をフォームで満たした。噴霧したポリマー混合物の反応が完了するのを待つ必要はなく、より効率のよい工程のために、裏打ち発泡(back-foaming)を直ちに実施することができた(即ちウェット・イン・ウェット)。
【0075】
場合により、この実施例に示されているように、スプレー式スキンとは異なる水量を有する配合物を使用できた。本発明の配合物は、実施例の最後に記載する。
【0076】
脱型時間の後、噴霧した外層と裏打ち発泡した成形品の複合材を金型から取り出すことができた。
【0077】
以下の表1は、本発明の実施例の異なった様々なパラメーターを示す。
【表1】

このように製造した本発明のフォームを、British Standard 5852, Part 2, Crib 5に従った燃焼試験で試験した。以下の表は燃焼試験の結果を示す。
【0078】
【表2】

British Standard 5852, Part 2, Crib 5に従った燃焼試験は、重量損失が60g以下であり、かつ自己消火時間が10分以下であればパスしたものとみなす。
【0079】
【表3】

このように製造した本発明のフォームもまた、British Standard 5852, Part 2, Crib 5に従った燃焼試験で試験した。以下の表は燃焼試験の結果を示す。
【0080】
【表4】

British Standard 5852, Part 2, Crib 5に従った燃焼試験は、重量損失が60g以下であり、かつ自己消火時間が10分以下であればパスしたものとみなす。
【0081】
出発物質の記載:
ポリオール1:80〜85%の第一級OH基および28のOH価を有する市販の三官能性PO/EOポリエーテル。
ポリオール2:28のOH価を有する市販の三官能性PO/EO充填ポリエーテル(充填剤:ポリウレア分散体、約20%)。
ポリオール3:83%の第一級OH基および37のOH価を有する市販の三官能性PO/EOポリエーテル。
ポリオール4:80〜85%の第一級OH基および35のOH価を有する市販の三官能性PO/EOポリエーテル。
架橋剤1:モノエチレングリコール、例えばINEOSによって供給されているETHYLENGLYKOL。
架橋剤2:ジエチルトルエンジアミン(DETDA)、例えばAlbemarle Corporationによって供給されているETHACURE(登録商標) 100 Curative。
発泡剤:Bayer AGによって供給されているAdditive VP.PU 19IF00 A。
安定剤: Tegostab(登録商標) B 8629、Evonik Goldschmidt GmbHによって供給されているポリエーテルポリシロキサンコポリマー。
カラーペースト:iSL-Chemieによって供給されているblack paste N、例えばISOPUR Schwarzpaste N。
活性剤1:ジプロピレングリコールに溶解されているビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、例えばAir Productsによって供給されているNiax A 1。
活性剤2:テトラメチルイミノビス(プロピルアミン)、例えばHuntsmanによって供給されているJeffcat Z 130。
活性剤3:ジプロピレングリコール中トリエチレンジアミン、例えばAir Productsによって供給されているDABCO 33-LV(登録商標) Catalyst。
活性剤4:ジラウリン酸ジブチル錫(DBTDL)、例えばKever-Technologie GmbH & Co. KGによって供給されているKeverkat DBTL 162。
ポリイソシアネート:二核MDIおよびその高級同族体と、28.5のOH価および6の官能価を有するポリエーテルとに基づいて調製された、約30%のNCO含量を有するプレポリマー。
【0082】
発泡実施例:
【表5】

【0083】
実施例1〜4では、膨張性黒鉛として、Graftechからの「Grafguard(登録商標) Expand FL 160-50 N」を使用した。
実施例5〜12では、膨張性黒鉛として、「Expofoil PX 99」を使用した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
難燃性固体が、内部領域における難燃性固体の割合より高い割合で表面領域に存在することを特徴とする、ポリウレタン成形フォーム。
【請求項2】
難燃性固体の割合が、内部領域における一点から少なくとも一方向にフォーム表面まで連続的または不連続的に増加することを特徴とする、請求項1に記載のポリウレタン成形フォーム。
【請求項3】
難燃性固体の割合を少なくとも変えることによって区別される、同じまたは異なったフォーム組成からなる少なくとも2つの全面積層または部分面積層を含んでなることを特徴とする、請求項1または2に記載のポリウレタン成形フォーム。
【請求項4】
難燃性固体を含有する少なくとも1つの表面層および難燃性固体を本質的に含有しない少なくとも1つの層を含んでなることを特徴とする、請求項3に記載のポリウレタン成形フォーム。
【請求項5】
難燃性固体を多く含有する表面領域が0.2mm〜シートクッションの最大厚の範囲、特に1mm〜2cmの範囲の厚さを有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のポリウレタン成形フォーム。
【請求項6】
表面領域における難燃性固体の割合が1〜80重量%の範囲、特に5〜30重量%の範囲であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のポリウレタン成形フォーム。
【請求項7】
難燃性固体含有表面領域の密度が10〜800kg/mの範囲、特に2000kg/mまで、とりわけ30〜200kg/mの範囲、特に900kg/mまでであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載のポリウレタン成形フォーム。
【請求項8】
前記難燃性固体に加えて、付加的な固体状および/または液体状難燃性添加剤を少なくとも1種更に含んでなることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載のポリウレタン成形フォーム。
【請求項9】
全面積または部分面積のポリウレタンフォームカバー層を含んでなる、請求項1〜8のいずれかに記載のポリウレタン成形フォーム。
【請求項10】
液体状および/または固体状難燃性物質を、ポリオール成分およびイソシアネート成分の反応混合物に配合する工程、
このようにして得られた混合物を用いてポリウレタン成形フォームを形成する工程
を含む、請求項1〜9のいずれかに記載のポリウレタン成形フォームの製造方法であって、配合する難燃性物質の量の、反応混合物の量に対する比Rが、所定の時間間隔内では一定であるが、続く第二の時間間隔ではこの比と異なることを特徴とする方法。
【請求項11】
液体状および/または固体状難燃性物質とポリオール成分またはイソシアネート成分とを混合し、得られた混合物とそれぞれもう一方のポリオール成分またはイソシアネート成分とを反応させてフォーム原料を形成する工程、並びに
液体状および/または固体状難燃性物質を前記フォーム原料に配合する工程、
このようにして得られた混合物を用いてポリウレタン成形フォームを形成する工程
を含む、請求項1〜9のいずれかに記載のポリウレタン成形フォームの製造方法であって、配合する難燃性物質の量の、反応混合物の量に対する比Rが、所定の時間間隔内では一定であるが、続く第二の時間間隔ではこの比と異なることを特徴とする方法。
【請求項12】
前記難燃性物質を含有する流れを前記フォーム原料の流れに注ぐか、または前記フォーム原料の流れを前記難燃性物質を含有する流れに注ぐ、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
難燃性物質およびフォーム原料を開放式金型に噴霧することを特徴とする、請求項10〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記難燃性物質を含有するフォーム層を1つの金型に導入し、そこにフォーム原料を適用して難燃性物質の割合のより少ないポリウレタン成形フォームを形成することを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
適用に使用するフォーム原料および難燃性物質の混合物の嵩密度を、10〜800kg/mの範囲、特に2000kg/mまで、とりわけ30〜200kg/mの範囲、特に900kg/mまでに調節することを特徴とする、請求項10〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
請求項1〜9のいずれかに記載のポリウレタン成形フォームの、難燃性遮音材、難燃性断熱材、難燃性シート表面材、難燃性充填材、難燃性シーリング材としての使用。

【公表番号】特表2011−514921(P2011−514921A)
【公表日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−547987(P2010−547987)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【国際出願番号】PCT/EP2009/001007
【国際公開番号】WO2009/106236
【国際公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】