説明

難黄変軟質ポリウレタンフォーム及びパット

【課題】イソシアネートとして高価な脂肪族イソシアネートを用いることなく、また、ポリオール成分として通常の汎用のポリオール成分を用いて、フォームの黄変及びこれに起因する移染変色が高度に抑制された難黄変軟質ポリウレタンフォームを提供する。
【解決手段】ポリオール成分とイソシアネートとを含むポリウレタン原料を発泡させてなるポリウレタンフォームにおいて、該ポリウレタン原料が尿素を含むことを特徴とする難黄変軟質ポリウレタンフォーム。更に、ポリオール成分としてポリオール骨格内にエステル結合を有し、かつポリオール構造内にベンゼン環を複数個有するポリエーテルポリオールを用いることにより、より一層優れた変色防止効果が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は難黄変軟質ポリウレタンフォームに係り、特に、ブラジャーパット、肩パット、ハンガーパット等の衣料関係用パット、紙おむつ、ナプキン等のサニタリー周辺材料、医療関連用品、その他各種雑貨素材等として有用な難黄変軟質ポリウレタンフォームに関する。また、本発明は、この難黄変軟質ポリウレタンフォームよりなるパット及びブラジャーパットに関する。
【背景技術】
【0002】
軟質ポリウレタンフォームは良好なクッション性を有し、綿のように長期ないし繰り返し使用時にヘタることがなく、柔らかく良好な感触を有することから、ブラジャーパット材、肩パット材、ハンガーパット材等の衣料関係用パット材、紙おむつ、ナプキン等のサニタリー周辺材料、医療関連用品、その他各種雑貨素材等として広く使用されている。
【0003】
従来の軟質ポリウレタンフォームは、製造時のポリオール原料中に酸化防止剤としてのBHT(ジブチルクレゾール)が含まれており、このBHTによるフォーム自体の変色(黄変)及び移染変色(軟質ポリウレタンフォームと接触する布地などを染色汚染する。)の問題があった。即ち、ポリウレタン原料としてBHTを含む配合で発泡を行った場合、発泡後のフォーム中にもBHTが残存することとなり、このBHTが大気中に含有される窒素酸化物(NO)と反応してウレタンフォーム自体を黄変させる。また、BHTは昇華性があるため、揮散して近傍の生地に付着し同様に生地を変色させる。
【0004】
また、軟質ポリウレタンフォーム自体も窒素酸化物(NO)により黄変し、更に紫外線の影響によっても黄変する。
【0005】
このようなフォームの黄変及びこれに起因する移染変色は、衣料や医療、その他雑貨のような日用品用途の軟質ポリウレタンフォームとしては重大な欠陥となる。
【0006】
従来、このようなフォームの黄変を防止するために、ポリウレタン原料として、ポリプロピレングリコール(PPG)を主成分とするポリオール成分を用い、紫外線吸収剤、耐NO化剤(NOとの反応を抑制する薬剤)を添加することにより、紫外線による変色、NO化による変色等を遅らせることが行われている。更に、BHTのような揮散性の高い酸化防止剤の使用量を低減したり、或いはこのような酸化防止剤を不使用としたりすることで変色を防止することが行われている。
【0007】
また、別の方法として、ポリウレタン原料のイソシアネート成分として、耐黄変性に有効な脂肪族イソシアネートを使用することも行われている。
【0008】
しかしながら、ポリウレタン原料に紫外線吸収剤や耐NO化剤を添加したり、BHT等の揮発性の高い酸化防止剤の使用量を制限したりしても、黄変を十分に抑制することはできなかった。また、フォームの黄変防止効果を高めるべく、紫外線吸収剤や耐NO化剤の配合量を増やそうとすると、
(1)反応をコントロールすることが困難になる。
(2)紫外線吸収剤や耐NO化剤は非常に高価であるため、製品のコストアップにつながる。
といった問題があった。
【0009】
脂肪族イソシアネートを用いることにより黄変の抑制効果は得られるが、脂肪族イソシアネートは高価であるためフォームのコストアップを招く上に、湿熱耐久性に劣るフォームとなるという問題点があった。しかも、脂肪族イソシアネートを用いた難黄変軟質ポリウレタンフォームでは、洗剤液による劣化が激しく、洗濯が必要な衣料品や寝具用途には使用できないといった問題もあった。
【0010】
本出願人は、イソシアネート成分として高価な脂肪族イソシアネートを用いることなく、フォームの黄変及びこれに起因する移染変色が抑制された難黄変軟質ポリウレタンフォームを提供するべく検討した結果、ポリオール成分として、特定の構造を有するポリエーテルポリオールを用いたポリウレタンフォームは、イソシアネートが安価なトリレンジイソシアネートである場合であっても、フォームの黄変及びそれに起因する移染変色が防止されることを見出し、先に特許出願を行った(WO2002/053618号公報)。
【特許文献1】WO2002/053618号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
WO2002/053618号公報に記載される特定の構造を有するポリエーテルポリオールを用いたポリウレタンフォームであれば、高価な脂肪族イソシアネートを用いることなく、フォームの黄変及びこれに起因する移染変色を抑制することができるが、更により一層の改良が望まれている。また、ポリオール成分としても汎用のものを用いた材料設計も望まれている。
【0012】
本発明は、イソシアネートとして高価な脂肪族イソシアネートを用いることなく、また、ポリオール成分として通常の汎用のポリオール成分を用いて、フォームの黄変及びこれに起因する移染変色が高度に抑制された難黄変軟質ポリウレタンフォームを提供することを第1の目的とする。
【0013】
また、本発明は、この難黄変軟質ポリウレタンフォームよりなるパットを提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明(請求項1)の難黄変軟質ポリウレタンフォームは、ポリオール成分とイソシアネートとを含むポリウレタン原料を発泡させてなるポリウレタンフォームにおいて、該ポリウレタン原料が尿素を含むことを特徴とする。
【0015】
請求項2の難黄変軟質ポリウレタンフォームは、請求項1において、該ポリウレタン原料中の尿素の含有量がポリオール成分100重量部に対して0.1〜10重量部であることを特徴とする。
【0016】
請求項3の難黄変軟質ポリウレタンフォームは、請求項1又は2において、該ポリオール成分が、ポリオール骨格にエステル結合を有するポリエーテルポリオールを含むことを特徴とする。
【0017】
請求項4の難黄変軟質ポリウレタンフォームは、請求項1又は2において、ポリオール成分が、ポリオール構造内にベンゼン環を複数個有するポリエーテルポリオールを含むことを特徴とする。
【0018】
請求項5の難黄変軟質ポリウレタンフォームは、請求項1又は2において、該ポリオール成分が、ポリオール骨格内にエステル結合を有し、かつポリオール構造内にベンゼン環を複数個有するポリエーテルポリオールを含むことを特徴とする。
【0019】
請求項6の難黄変軟質ポリウレタンフォームは、請求項5において、該ポリエーテルポリオールがフタル酸系ポリエーテルポリオールであることを特徴とする。
【0020】
請求項7の難黄変軟質ポリウレタンフォームは、請求項1ないし6のいずれか1項において、該ポリオール成分が分子量300以上の難揮散性の酸化防止剤を含むことを特徴とする。
【0021】
請求項8の難黄変軟質ポリウレタンフォームは、請求項1ないし7のいずれか1項において、該ポリウレタン原料が紫外線吸収剤及び/又は耐NO化剤を含むことを特徴とする。
【0022】
請求項9の難黄変軟質ポリウレタンフォームは、請求項1ないし8のいずれか1項において、JIS L0855準拠のNO弱試験後のΔYI値が10以下であることを特徴とする。
なお、本発明において、YI値は後述の実施例の項に記載される方法で測定される。
【0023】
本発明(請求項10)のパットは、上記本発明の難黄変軟質ポリウレタンフォームよりなる。
【0024】
本発明(請求項11)のブラジャーパットは、上記本発明の難黄変軟質ポリウレタンフォームよりなる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、イソシアネートとして高価な脂肪族イソシアネートを用いることなく、また、ポリオール成分として通常の汎用のポリオール成分を用いて、フォームの黄変及びこれに起因する移染変色の問題のない難黄変軟質ポリウレタンフォームを安価に提供することができる(請求項1)。
【0026】
本発明において、尿素の配合量はポリウレタン原料中のポリオール成分100重量部に対して0.1〜10重量部であることが好ましい(請求項2)。
【0027】
また、ポリオール成分として、ポリオール骨格にエステル結合を有するポリエーテルポリオール、ポリオール構造内にベンゼン環を複数個有するポリエーテルポリオール、或いは、ポリオール骨格内にエステル結合を有し、かつポリオール構造内にベンゼン環を複数個有するポリエーテルポリオールを用いることにより、より一層優れた変色防止効果を得ることができる(請求項3〜5)。このポリエーテルポリオールはフタル酸系ポリエーテルポリオールであることが好ましい(請求項6)。
【0028】
本発明で用いるポリエーテルポリオールには、ポリオール成分中に分子量300以上の難揮発性の酸化防止剤を含んでいても良い(請求項7)。
【0029】
また、ポリウレタン原料中に紫外線吸収剤及び/又は耐NO化剤を含んでいても良い(請求項8)。
【0030】
本発明の難黄変軟質ポリウレタンフォームは、好ましくは、JIS L0855準拠のNO弱試験後のΔYI値が10以下である(請求項9)。
【0031】
このような本発明の難黄変軟質ポリウレタンフォームは、ブラジャーパットなどの各種衣料関係用パット、紙おむつ、ナプキン等のサニタリー周辺材料、医療関連用品、その他各種雑貨素材等として有用であり、黄変による劣化や外観の悪化の問題のない高品質で商品価値の高い製品を安価に提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0033】
本発明の難黄変軟質ポリウレタンフォームは、尿素を含むポリウレタン原料を発泡させてなるものである。ポリウレタン原料中の尿素の含有量が少な過ぎると、尿素を配合したことによる本発明の効果を十分に得ることができず、多過ぎると反応制御が困難になる。ポリウレタン原料中の尿素の割合は、ポリオール成分100重量部に対して0.1〜10重量部、特に0.5〜3重量部とすることが好ましい。
【0034】
本発明のポリウレタン原料のポリオール成分としては、汎用のポリオール成分を用いることができる。この場合、ポリオール成分としては、特に制限はなく、分子量500〜8000程度の幅広い範囲のものを用いることができるが、例えば、分子量2500〜5000、OH価40〜60程度のポリエーテルポリオール、例えばグリセリン、トリメチロールプロパン又はジエチレングリコールにプロピレンオキサイド、エチレンオキサイドを付加重合したポリエーテルポリオール、ジエチレングリコール、トリメチロールプロパン又はグリセリン等にアジピン酸を付加重合したポリエーテルポリオール等を用いることができる。
【0035】
ただし、ポリオール成分として下記の(i)〜(iii)のいずれかを用いることにより、より一層の変色防止効果を得ることができるため、好ましい。
【0036】
(i) ポリオール骨格にエステル結合を有するポリエーテルポリオール、
(ii) ポリオール構造内にベンゼン環を複数個有するポリエーテルポリオール
或いは、
(iii) ポリオール骨格内にエステル結合を有し、かつポリオール構造内にベンゼン環を複数個有するポリエーテルポリオール
【0037】
このポリエーテルポリオールとしては、フタル酸系ポリエーテルポリオール、マレイン酸系ポリエーテルポリオール等が例示される。このフタル酸系ポリエーテルポリオールとしては、例えば、グリセリンにプロピレンオキサイドと無水フタル酸を交互に付加し、末端をプロピレンオキサイドとしたポリエーテルポリオールが挙げられる。
【0038】
本発明においては、ポリオール成分は、前述の汎用のポリオール成分と、上記(i),(ii),(iii)との混合物であっても良い。即ち、本発明においては、尿素を含むことにより、前述の汎用のポリオール成分のみでも十分に優れた変色防止効果を得ることができるが、上記(i),(ii),(iii)を用いることにより一層良好な変色防止効果を得ることができる。
【0039】
ポリオール成分は、難揮散性の高分子量酸化防止剤が添加されていても良い。この酸化防止剤としては、分子量300以上の高分子フェノール系酸化防止剤が好適である。このフェノール系酸化防止剤の分子量が300未満では、フェノール系酸化防止剤の揮散が生じ、移染変色が生じる。フェノール系酸化防止剤の分子量は特に400以上、とりわけ600以上であることが好ましい。このようなフェノール系酸化防止剤としては、ユニロイヤル社製「ナウガード445」や旭電化工業(株)製「AO80」等のフェノール系酸化防止剤を用いることができる。
【0040】
このフェノール系酸化防止剤の配合量は、少な過ぎると酸化防止性能が弱く、多過ぎるとフォームの外観の乱れが生じるおそれがある。従って、フェノール系酸化防止剤の配合量はポリオール成分100重量部に対して0.05〜2.0重量部程度であることが好ましい。
【0041】
また、ポリオール成分は、BHTを実質的に含有しないことが好ましい。
【0042】
本発明の難黄変軟質ポリウレタンフォームは、ポリウレタン原料に尿素を配合し、好ましくはポリオール成分として上記(i),(ii),(iii)のポリエーテルポリオールを用いること以外は、下記のような通常のポリウレタン原料配合とすることができ、このような原料を用いて常法に従って発泡を行えば良い。ポリウレタン原料のNCOインデックスは90〜120が好適である。
<ポリウレタン原料配合(重量部)>
ポリオール成分 :100
イソシアネート成分:90〜120(NCOインデックス)
尿素 :0.1〜10
触媒 :0.01〜2.0
発泡剤 :1.0〜25.0
整泡剤 :0.1〜3.0
【0043】
イソシアネート成分としては、一分子中に2個以上のイソシアネート基を有する有機ポリイソシアネートであって、脂肪族系及び芳香族ポリイソシアネート化合物、これらの変性物を用いることができるが、これに限定されるものではない。脂肪族系ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート等が例示される。芳香族ポリイソシアネートとしては、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート等が例示される。これらの変性物としては、カルボジイミド変性物、プレポリマー変性物が例示される。本発明において好ましいポリイソシアネートは、芳香族系ポリイソシアネート又は芳香族系ポリイソシアネートの変性物であり、特に好ましくはトルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートである。
【0044】
発泡剤としては、ポリウレタンフォームの製造に使用される全ての発泡剤が使用できる。例えば、低沸点不活性溶剤としてトリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン等のフロン系化合物等、メチレンクロライド、液化炭酸ガス反応によってガスを発生するものとして水、酸アミド、ニトロアルカン等、熱分解してガスを発生するものとして重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム等がある。これらのうち、好ましい発泡剤としては、メチレンクロライド、水等が挙げられる。
【0045】
触媒としては、通常のウレタンフォームの製造に使用される全ての触媒が使用できる。例えば、ジブチルチンジラウレート、スタナスオクトエート等の錫系触媒、トリエチルアミン、テトラメチルヘキサンメチレンジアミン等の3級アミン類等が挙げられる。
【0046】
本発明においては、ポリウレタン原料中に、更に必要に応じて界面活性剤や、難燃剤、その他の助剤が配合されても良い。界面活性剤としてはシリコーン系界面活性剤が例示される。難燃剤としては、トリス(2−クロロエチル)フォスフェート、トリス(2,3−ジブロモプロピル)フォスフェート等のような従来公知の難燃剤の他、尿素、チオ尿素のような有機質粉末あるいは金属水酸化物、三酸化アンチモン等の無機質粉末を用いることができる。
【0047】
また、その他の助剤としては、顔料、染料などの着色粉末、タルク、グラファイトなどの粉末、ガラス短繊維、その他の無機増量剤や有機溶媒などが挙げられる。
【0048】
本発明においては、ポリウレタン原料か、紫外線吸収剤及び耐NO化剤の少なくとも一方を含有することにより、製造されたポリウレタンフォームの黄変が一層確実に防止される。
【0049】
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好適であり、これは紫外線によるポリウレタンフォーム黄変を防止する。このベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製「T−213」、旭電化工業(株)社製「LA−31」等を用いることができる。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の配合量が多過ぎると得られるフォームの外観の乱れが生じるおそれがあるので、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の配合量はポリウレタン原料中のポリオール成分100重量部に対して0.1〜3.0重量部とするのが好ましい。
【0050】
耐NO化剤としては、リン系酸化防止剤が好適であり、これは、ポリウレタンフォームのNO変色、熱プレス時の変色を防止する。このリン系酸化防止剤としては、旭電化工業(株)社製「3010」、「1178」等を用いることができる。リン系酸化防止剤の配合量が多過ぎると得られるフォームの外観の乱れが生じるおそれがあるので、リン系酸化防止剤の配合量はポリウレタン原料中のポリオール成分100重量部に対して0.5〜6.0重量部とするのが好ましい。
【0051】
本発明の難黄変軟質ポリウレタンフォームは、密度12〜80kg/m程度に発泡成形されることが好ましい。
【0052】
本発明の難黄変軟質ポリウレタンフォームは、比較的低温でそして比較的短時間で熱プレスしても目的形状の成形体を成形することができる。この成形体としては、ブラジャーパット、肩パット、ハンガーパット等の衣料関係用パットが例示される。中でも、この難黄変軟質ポリウレタンフォームはブラジャーパットに適用するのに好適である。本発明の難黄変軟質ポリウレタンフォームを用いてパットを成形するには、所定の大きさの発泡成形体を熱プレス用の金型の上型と下型との間に挟んで熱プレスすればよい。
【0053】
このパットは、そのままブラジャーパット、肩パット、ハンガーパット等として用いられてもよく、布で被包されて用いられてもよい。布としては、織布、不織布のいずれでもよいが、織布が好適である。布の材質としては、綿などの天然繊維、ナイロン、ポリエステルなどの化学繊維のいずれでもよい。
【0054】
本発明の難黄変軟質ポリウレタンフォームは変色しにくいので、この布の厚さが薄く、布を通して内部の難黄変軟質ポリウレタンフォームが透視される場合でも、布で被包されたパット製品は長期にわたり変色が見られない。
【0055】
また、耐湿性、耐洗剤液性にも優れるため、繰り返し洗濯を行っても劣化することもない。
【実施例】
【0056】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0057】
実施例1〜4、比較例1,2
表1に示す配合のポリウレタン原料を常法に従って25℃で発泡させて軟質ポリウレタンフォームを製造した。
【0058】
この軟質ポリウレタンフォームにつき、下記方法により変色試験を行い、結果を表1に示した。
【0059】
<NO変色試験>
JIS L0855準拠のNO弱試験後のYI値を測定し、試験前のYI値との差を求めた。なお、YI値は、日本電色工業(株)製測色色差計「ZE2000」にて測定した。NO弱試験前のYI値と試験後のYI値との差(ΔYI)が大きいほど変色が大きいことを示し、試験前のYI値と試験後のYI値との差(ΔYI)は50以下、特に30以下、とりわけ20以下、更に10以下、最も好ましくは5以下であることが望まれる。
【0060】
【表1】

【0061】
なお、表1中の註1〜7は次の通りである。
【0062】
註1:三洋化成工業(株)製サンニックス「GS3000V」
グリセリンにプロピレンオキサイドとエチレンオキサイドを付加
OH価=56
分子量=3000
註2:三洋化成工業(株)製「FK134」
グリセリンにプロピレンオキサイドと無水フタル酸を交互に付加
OH価=56
分子量=3000
註3:三井化学ポリウレタン(株)製「コスモネートT−80」
トリレンジイソシアネート
註4:関東化学(株)製「尿素(特級)」
註5:東ソー(株)製「TOYOCAT−ET33B」
註6:東レ・ダウコーニング(株)製「L6202B」
シリコーン界面活性剤
註7:日本化学産業(株)製
【0063】
表1の通り、本発明によれば、ポリウレタン原料に尿素を添加することにより、汎用ポリエーテルポリオールを用いた場合であっても、また、特定のポリエーテルポリオールを用いた場合であっても、YI値の差は、尿素の添加により尿素を添加しない場合に比べて1/3〜1/5に低減されており、いずれの場合も、耐NO変色性は大幅に改善される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール成分とイソシアネートとを含むポリウレタン原料を発泡させてなるポリウレタンフォームにおいて、該ポリウレタン原料が尿素を含むことを特徴とする難黄変軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項2】
請求項1において、該ポリウレタン原料中の尿素の含有量がポリオール成分100重量部に対して0.1〜10重量部であることを特徴とする難黄変軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項3】
請求項1又は2において、該ポリオール成分が、ポリオール骨格にエステル結合を有するポリエーテルポリオールを含むことを特徴とする難黄変軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項4】
請求項1又は2において、ポリオール成分が、ポリオール構造内にベンゼン環を複数個有するポリエーテルポリオールを含むことを特徴とする難黄変軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項5】
請求項1又は2において、該ポリオール成分が、ポリオール骨格内にエステル結合を有し、かつポリオール構造内にベンゼン環を複数個有するポリエーテルポリオールを含むことを特徴とする難黄変軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項6】
請求項5において、該ポリエーテルポリオールがフタル酸系ポリエーテルポリオールであることを特徴とする難黄変軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項において、該ポリオール成分が分子量300以上の難揮散性の酸化防止剤を含むことを特徴とする難黄変軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項において、該ポリウレタン原料が紫外線吸収剤及び/又は耐NO化剤を含むことを特徴とする難黄変軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項において、JIS L0855準拠のNO弱試験後のΔYI値が10以下であることを特徴とする難黄変軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項に記載の難黄変軟質ポリウレタンフォームよりなるパット。
【請求項11】
請求項1ないし9のいずれか1項に記載の難黄変軟質ポリウレタンフォームよりなるブラジャーパット。

【公開番号】特開2008−7553(P2008−7553A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−176773(P2006−176773)
【出願日】平成18年6月27日(2006.6.27)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】