説明

雨水流出抑制施設

【課題】交差する2本の道路R1,R2に沿って貯留浸透槽1(貯留浸透槽群)・・を配置していく雨水流出抑制施設Aにおいて、道路に沿って配置された3個以上の貯留浸透槽群同士を道路の交差部において相互に通水可能な状態で接続することで、雨水流出抑制施設全体の貯水効率を向上させる。
【解決手段】雨水流出抑制施設Aの施工に当たり、交差する2本の道路R1,R2に沿って、3個以上の貯留浸透槽群1A〜1Dを地中に配置する。道路の交差部に通水孔を備えた縦穴構造体10を配置し、貯留浸透槽群1A〜1Dの前記交差部に近接して位置する貯留浸透槽1a・・・を前記通水孔を備えた縦穴構造体10を介して相互に接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路側溝を流れる雨水を地中に配置した貯留浸透槽に流入させることで、道路側溝から雨水が道路などに流出するのを抑制できるようにした雨水流出抑制施設に関する。
【背景技術】
【0002】
道路側溝を流れる雨水の一部を、道路側溝から直接または流入桝を介して、地中に埋設されている貯留浸透槽に一時的に流入させることで、降雨量が多いときなどに道路側溝から雨水が道路に流出するのを抑制できるようにした雨水流出抑制施設は、例えば特許文献1に記載されるように、知られている。
【0003】
また、地中に設置する貯留浸透槽として、樹脂材料からなる貯水空間形成部材を多段に積み上げ、その周囲を透水シートで覆って浸透槽とすることも知られている(例えば、特許文献2、3等)。
【0004】
従来知られた雨水流出抑制施設において、雨水とともに流れ込む砂やゴミ等が貯留浸透槽の内部全体に沈殿物として堆積してしまうのを防ぐために、雨水の流入口を貯留浸透槽の下部に設け、貯留浸透槽内には、沈殿物を下部に落とした後の上澄み水が貯留されるようにしているのが普通である。そして、貯留浸透槽の下部に沈殿し堆積した砂などは、定期的に高圧水やバキュームを用いて除去するようにしている。
【0005】
そのような貯留浸透槽において、下部から雨水が槽内に入り込んできたときに、槽の上部に空気溜まりが生じないように、対応する量の空気を槽外に排出させることが必要であり、そのために、槽の上部から地表面へ通気孔を設置することも行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−2160号公報
【特許文献2】特開2008−8075号公報
【特許文献3】特開2009−24447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1にも記載されるように、これまで提案されている上記形態の雨水流出抑制施設は、道路に沿ってのみ施工することを前提としており、道路同士が十字状またはT字状に交差する場所についての施工には、格別の考慮されていない。今後、都市部等において浸水による不慮の事態を未然に防止するために、より多くの道路に沿って雨水流出抑制施設に設置することが予測されるが、前記のように、これまでの雨水流出抑制施設は、1本の道路に沿って複数個の貯留浸透槽を埋設していく形態であり、交差する道路のそれぞれに沿って雨水流出抑制施設を施工していった場合、道路の交差部においてそれらは連続性のないものとなる。
【0008】
ごく近接した位置に複数個の貯留浸透槽が有りながら、道路の交差部においてそれらが連続性を持たないことは、雨水流出抑制施設全体としての雨水の貯留効率を低下させることとなり、予期しない大量の降雨により、1つの道路に沿って施工されている雨水流出抑制施設ではすべての貯留浸透槽が満水状態となり道路側溝から雨水が溢流する危機が起こっているのに、交差する道路に沿って形成されている他の雨水流出抑制施設ではその時点でまだ貯水能力に余裕がある、というような事態が起こりかねない。
【0009】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、十字状またはT字状に交差する道路のそれぞれに沿って雨水流出抑制施設を設置したときに、道路の交差部において対向して位置する複数の貯留浸透槽同士を容易に接続できるようにし、それにより、複数の雨水流出抑制施設全体の雨水貯留効率をさらに向上できるようにした雨水流出抑制施設を開示することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による雨水流出抑制施設は、雨水が流入する貯留浸透槽を地中に備えた雨水流出抑制施設であって、3個以上の貯留浸透槽が通水孔を備えた1つの縦穴構造体を介して相互に接続されていることを特徴とする。
【0011】
より具体的な形態では、本発明による雨水流出抑制施設は、十字状またはT字状に交差するそれぞれの道路に沿うようにして雨水が流入する貯留浸透槽が地中に配置されており、前記道路の交差部には通水孔を備えた縦穴構造体が形成されており、前記交差部に近接して位置する3個以上の貯留浸透槽は、前記通水孔を備えた縦穴構造体を介して相互に接続されていることを特徴とする。
【0012】
本発明による雨水流出抑制施設では、3個以上の貯留浸透槽を、通水孔を備えた縦穴構造体によって通水可能に接続することで、各貯留浸透槽の貯水量の均平化を図ることができる。それぞれの道路に沿って1個または複数個の貯留浸透槽を配置し、それらの道路の交差部において、各道路における交差部に近接する貯留浸透槽同士を前記縦穴構造体により通水可能に接続することで、複数の道路に沿って埋設した複数個の貯留浸透槽全体を1つの雨水流出抑制施設として管理することが可能となり、前記したように、交差する道路の1つに沿って形成されている雨水流出抑制施設ではまだ貯水能力に余裕があるにもかかわらず、交差する他の道路に沿って施工されている雨水流出抑制施設ではすべての貯留浸透槽が満水状態となり道路側溝から雨水が溢流するというような事態が生じるのを確実に回避することができる。
【0013】
縦穴構造体それ自体は、従来のマンホール等の場合と同じように、その内部をバキューム等の手段で容易に清掃することができる。また縦穴構造体の通水孔からバキューム等の清掃手段をそこに接続する貯留浸透槽を送り込むことで、雨水流出抑制施設のメンテナンスも容易となる。
【0014】
本発明において、「通水孔を備えた縦穴構造体」は、そこを介してそこに接続する3個以上の貯留浸透槽に雨水を送り込むことができる、または3個以上の貯留浸透槽の雨水を排出することができることを条件に任意の構造物であってよい。具体的には、従来の雨水流出抑制施設で用いられている、流入桝、流出桝、流入流出桝、あるいは管理桝などが例示される。
【0015】
本発明による雨水流出抑制施設の一態様では、前記縦穴構造体と貯留浸透槽とは通水パイプを介して接続されていている。この態様では、従来から使用されている円筒状あるいは角筒状の流入桝、流出桝、流入流出桝あるいは管理桝をそのまま用いることができ、また、通水パイプを介して接続することで、隣接して位置する貯留浸透槽同士が干渉するのを阻止することができる。さらに、施工時に縦穴構造体とそこに接続する3個以上の貯留浸透槽との間に生じるわずかな位置ずれ等も吸収することができる。
【0016】
本発明による雨水流出抑制施設の一態様では、前記3つ以上の貯留浸透槽は各槽の上部と下部が連通するようにして前記縦穴構造体によって相互に接続されている。
【0017】
この態様では、下部に形成した連通部が雨水流入口として機能し、そこから縦穴構造体からの雨水が貯留浸透槽内に流入したときに、当該槽から押し出される空気は、上部に形成した連通部から縦穴構造体を通って、地上面に排出される。そのために、従来の雨水流出抑制施設のように、貯留浸透槽内の空気を逃がすための通気孔を地上に立設する必要がなく、貯留浸透槽を地中に埋設する作業は容易となる。また、地上への通気孔が存在しないことから、道路の舗装も転圧不良がない状態で容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、十字状またはT字状に交差する道路のそれぞれに沿って雨水流出抑制施設を設置したときに、道路の交差部において対向して位置する複数の貯留浸透槽同士を通水孔を備えた縦穴構造体で接続することで、複数の道路に沿って地中に配置した複数個の貯留浸透槽全体を1つの雨水流出抑制施設として管理することが可能となり、雨水流出抑制施設全体の雨水貯留効率をさらに向上させることができる。それにより、道路側溝からの溢流により被害が生じるのを一層確実に回避することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明による雨水流出抑制施設の一例を示す側面から見た概略図。
【図2】本発明による雨水流出抑制施設の3つの例を示す上方から見た概略図。
【図3】本発明による雨水流出抑制施設で用いる通水孔を備えた縦穴構造体の一例を説明する概略図。
【図4】貯留浸透槽を形成する貯水空間形成部材の一例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0021】
本発明による雨水流出抑制施設Aは、交差する道路に沿って地中に配置される3個以上の貯留浸透槽群1A、1B、1C・・と、通水孔を備えた縦穴構造体10とを備える。図1は、1つの貯留浸透槽群1Aと前記縦穴構造体10の一例を示しており、図1には示されないが、縦穴構造体10には貯留浸透槽群1B、1C・・も接続している。なお、各貯留浸透槽群1A、1B、1C・・は同じ構成のものでもよく、異なった構成のものであってもよい。
【0022】
最初に、1つの貯留浸透槽群1Aについて説明する。なお、図1に示す例では、貯留浸透槽群1Aは、3個の貯留浸透槽1a,1b,1cが直列に接続して構成されているが、貯留浸透槽1の個数は任意であり、1個でもよく、2個あるいは4個以上であってもよい。図示の例において、各貯留浸透槽1は、同じ形状のものであり、雨水を一時的に貯留し地中に浸透させる機能を備える。なお、貯留浸透槽1は、前記した特許文献2または3に記載されるような、従来知られたものであってよい。一例として、貯留浸透槽1は、図4に示す樹脂製の貯水空間形成部材31を、90度方向を変えながら多段に積み上げて形成されている。
【0023】
この貯水空間形成部材31は、前記した特許文献3に記載されるものであり、下端が開放された箱状部32aの複数個が間隔を空けながらX方向に配列した箱列32が、X方向に直交するY方向に間隔を空けながら必要列数だけ配列した構成を基本的に備えている。必要な場合には、異なった大きさの複数個の貯水空間形成部材31を箱列(凸部からなる列)32の方向が同じ方向となるように寄せ集めて貯水空間形成部材31とすることもできる。
【0024】
そして、貯水空間形成部材31の多数枚を、前記箱列(凸部からなる列)32の方向が交互に90度に交差した姿勢で上下方向に積み上げることで、貯留浸透槽1とされている。図示の例では、貯留浸透槽1は、掘削した支持地盤に砕石のような基礎材を敷き詰めて均平化し、その上に配置されており、全体が不織布のような透水性シートにより覆われることで、貯留浸透槽1とされている。
【0025】
3つの貯留浸透槽1は、この例で、最上位に積み上げられた貯水空間形成部材31における前記した箱列(凸部からなる列)32、32の間のX方向に延びる空間領域の向きが同じ方向となるようにして、地中に埋設されている。そして、隣接する各貯留浸透槽1、1同士は、双方の前記X方向に延びる空間領域のいずれかに接続する上位連通管4および下部連通管5によって、互いの内部の空間が連通状態となるようにして接続されている。
【0026】
次に、本発明による雨水流出抑制施設のいくつかの例を、図1〜図3を参照して説明する。図2(a)は第1の態様であり、ここでは、2本の道路R1と道路R2とが、90度でない角度(図示のものでは鋭角α)でT字状に交差している箇所に雨水流出抑制施設Aが施工されている。道路R1には、前記した貯留浸透槽群1Aが道路に沿って地中に埋設されており、その一方端は道路の交差部近傍に達している。さらに、貯留浸透槽群1Aと同じ構成である貯留浸透槽群1Bと貯留浸透槽群1Cが、他方の道路R2に沿って、直線状に地中に埋設されており、双方の一方端も道路の交差部近傍に達している。
【0027】
そして、3つの貯留浸透槽群1A、1B,1Cの前記交差部に最も近接している貯留浸透槽1a、1a、1aは、道路R1,R2の交差部に埋め込まれた前記した縦穴構造体10によって、相互に通水可能に接続されている。以下、その接続状態を説明する。
【0028】
図3に示すように、縦穴構造体10は、コンクリート造の円筒状部材であり、地上に開放するマンホール口11を有する。上下方向の長さは、縦穴構造体10を垂直姿勢で道路の交差部に配置したときに、その底面12が、地中に埋設された前記貯留浸透槽1の底面よりも下方位置となるような長さとされる。
【0029】
縦穴構造体10の上部領域には、3つの上部開口13a,13b、13cが形成されており、そのうち、上部開口13aと13bは、前記道路R1,R2の交差角αとほぼ同じ角度で周方向に離間して形成されており、上部開口13aと13cは周方向に180度離間した位置に形成されている。さらに、下部領域にも、前記上部開口13a,13b、13cから軸方向に所定距離下方に離れた位置に、3つの下部開口14a,14b,14cが形成されている。また、前記上部開口13a,13b,13cより上位の位置には、雨水流入口15aが形成されている。前記上部開口13a,13b,13cと下部開口14a,14b,14cの上下方向の離間距離は、前記した貯留浸透槽1における上位連通管4と下部連通管5との上下方向の離間距離とほぼ同じとされている。
【0030】
施工時に、前記のようにして貯留浸透槽群1A、1B,1Cを、道路R1,R2に沿って、それぞれ地中に埋設する。その作業と平行して、前記縦穴構造体10を、前記道路の交差部における前記貯留浸透槽群1A、1B,1Cの仮想延長線が交差する部位に、マンホール口11を地表面とした状態で、地中に埋設する。そのときに、前記した上部開口13a,13b,13cと下部開口14a,14b,14cとが、貯留浸透槽群1A,1B,1Cの端面に面するように、縦穴構造体10の向きを調整する。
【0031】
次に、貯留浸透槽群1Aの交差部に最も近接して位置する貯留浸透槽1aにおける上位連通管4と縦穴構造体10の上部開口13aとを適宜の通水パイプ13で接続し、下位連通管5と縦穴構造体10の下部開口14aとを適宜の通水パイプ14で接続する。同じ作業を、貯留浸透槽群1Bと上部開口13bおよび下部開口14bの間、および貯留浸透槽群1Cと上部開口13cおよび下部開口14cの間で、通水パイプ13,14を用いて行う。なお、通水パイプ13,14としては、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエチレン系樹脂のような材料からなるものを用いることが好適であり、それにより多少の施工誤差が生じてもそれを吸収することができる。
【0032】
さらに、図2(a)に示すように、道路側溝20からの溢流水が縦穴構造体10に流入するように、適宜の通水管22を介して、道路側溝20の取水堰21と縦穴構造体10の前記雨水流入口15aとを適宜の通水パイプ15で接続する。その後、埋め戻すことで本発明による雨水流出抑制施設Aの施工は終了する。なお、通水パイプ15としては、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエチレン系樹脂のような材料からなるものを用いることが好適である。
【0033】
上記の雨水流出抑制施設の雨水貯留時での状態を説明する。一時的に降雨量が多くなると、道路側溝20からの雨水が通水管22および通水パイプ15を通り前記雨水流入口15aから縦穴構造体10内に流入する。縦穴構造体10内の水面レベルが下部開口14a,14b,14cの位置に達すると、雨水は通水パイプ14と下位連通管5を通って、貯留浸透槽群1A,1B,1Cの交差部に最も近い貯留浸透槽1a,1a,1aの内に入り込む。入り込んだ雨水は、すべての貯留浸透槽群1A,1B,1Cにおいて、隣接する貯留浸透槽1b,1cへと流れ込んでいく。
【0034】
さらに雨水の流入量が増え続けると、各貯留浸透槽1内での雨水のレベルは、積層された貯水空間形成部材31で形成される空間を下方からに上方に向けて次第に上昇していく。それに応じて、各貯留浸透槽1の空気は、上位連通管4および通水パイプ13を通って、縦穴構造体10のマンホール口11から大気に開放される。そのために、脱気のために貯留浸透槽の上部から地表面へ通気孔を設置することが不要となる。
【0035】
各貯留浸透槽群1A,1B,1Cの貯留浸透槽1に貯留されて雨水は、不織布のような透水性シートを通って、徐々に地中に含浸していく。それにより、下流での急激な増水による河川の氾濫も防止することができる。また、各貯留浸透槽群1A,1B,1Cは、縦穴構造体10を介して相互に連通した状態となっているので、十分な貯水量を確保することもできる。図示されないが、道路R1に沿って道路側溝を設けることもでき、その場合には、その道路側溝からの溢流水が縦穴構造体10内に流入するように、通水管22の設置などの作業を行う。
【0036】
図示しないが、変形例として、各貯留浸透槽群1A、1B,1Cにおいて、それを構成する各貯留浸透槽1を、前記した下位連通管5を省略して、上位連通管4のみで連通するように接続してもよい。この場合には、縦穴構造体10においても、下部開口14a、14b,14cは省略される。この形態の貯留浸透槽1を用いる場合には、縦穴構造体10に流入した雨水は、雨水に混入した土砂などを縦穴構造体10内に沈下させた後の上澄み液のみが、通水パイプ13および上位連通管4を通って貯留浸透槽1内に入り込むようになり、貯留浸透槽1内に土砂等が堆積するのを回避することができる。
【0037】
さらに、図示しないが、各貯留浸透槽群1A、1B,1Cにおいて、それを構成する各貯留浸透槽1を、前記した上位連通管4を省略して、下位連通管5のみで連通するように接続してもよい。この場合には、縦穴構造体10においても、上部開口13a、13b,13cは省略され、下部開口14a、14b,14cのみが形成される。この形態の貯留浸透槽1を用いる場合には、貯留浸透槽の上部に空気溜まりが生じないように、貯留浸透槽の上部から地表面へ通気孔を設置することが必要となる。
【0038】
図2(b)は、本発明による雨水流出抑制施設Aの他の例を示している。ここでは、2つの道路R1,R2は、90度の角度でT字状に交差している。他の構成は、図2(a)に示したものと同じであり、同じ符号を付している。この態様において、使用する通水パイプ13,14が可撓性を備える場合には、図2(a)に示した雨水流出抑制施設Aで使用した縦穴構造体10(すなわち、図3に示したもの)をそのまま用いることもできる。施工をより安全にかつ容易に行うためには、上部開口13a、13b,13cおよび下部開口14a、14b,14cにおいて、各開口がそれぞれ周方向に90度の角度で離間して形成されていることが好ましい。
【0039】
図2(c)は、本発明による雨水流出抑制施設Aのさらに他の例を示している。ここでは、2本の道路R1,R2は十字状に交差しており、4つの貯留浸透槽群1A〜1Dが道路に沿って埋設されている。すなわち、交差部を挟んで、道路R1には貯留浸透槽群1Aと貯留浸透槽群1Dが一直線上に、また、道路R2には貯留浸透槽群1Bと貯留浸透槽群1Cが一直線埋設されている。
【0040】
そして、貯留浸透槽群1Aと貯留浸透槽群1Dを結ぶ直線と貯留浸透槽群1Bと貯留浸透槽群1Cを結ぶ直線の交点の位置に、縦穴構造体10が設置されている。さらに、交差している道路R1と道路R2に沿って道路側溝20が形成されており、その道路側溝20からの溢流水が、取水堰21および通水管22、通水パイプ15を介して、縦穴構造体10に流入するようになっている。
【0041】
この態様において、縦穴構造体10には、図示しないが、貯留浸透槽群1Dに対向する位置に4個目の上部開口および下部開口が形成され、それぞれが通水パイプ13,14を介して、貯留浸透槽群1Dを構成する貯留浸透槽1と連通した状態とされる。もし、5本以上の道路が交差する場合であって、それぞれの道路に沿って貯留浸透槽群が埋設される場合には、縦穴構造体10には、道路の数に対応した数の上部開口および下部開口が形成される。
【0042】
なお、図2に示される雨水流出抑制施設において、貯留浸透槽群1Cまたは貯留浸透槽群1Dはその一部が交差点を横断するようにして埋設されているが、車両の通過による上載荷重によってその部分の損壊が予測されるような場合には、貯留浸透槽群1Cまたは貯留浸透槽群1Dを交差点内に入り込まないようにして配置し、交差点内は前記した通水パイプ13,14で接続することが望ましい。
【0043】
なお、本発明による雨水流出抑制施設において、雨水流入口15aを備えない形状の縦穴構造体10を用いることもできる。ただし、その場合には、3個以上の貯留浸透槽群のいずれか1つまたは1つ以上に、何らかの雨水流入枡を備える必要がある。この態様でも、雨水流入枡を備えた雨水流出抑制施設に流入した雨水は、縦穴構造体10を介して他の貯留浸透槽群に貯留されるので、雨水流出抑制施設全体としての貯留効果は向上する。
【0044】
上記したいずれの形態の雨水流出抑制施設においても、縦穴構造体10を管理桝として使用することで、各貯留浸透槽群のメンテナンスも容易となる。
【符号の説明】
【0045】
A…雨水流出抑制施設、
R1,R2…交差する2本の道路、
1(1a〜1c)…貯留浸透槽、
4…上位連通管、
5…下部連通管、
10…縦穴構造体、
1A〜1D…貯留浸透槽群、
13a〜13c…縦穴構造体に形成した上部開口、
14a〜14c…縦穴構造体に形成した下部開口、
15a…縦穴構造体に形成した雨水流入口、
13,14,15…通水パイプ、
20…道路側溝、
21…取水堰、
22…通水管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雨水が流入する貯留浸透槽を地中に備えた雨水流出抑制施設であって、3個以上の貯留浸透槽が通水孔を備えた1つの縦穴構造体を介して相互に接続されていることを特徴とする雨水流出抑制施設。
【請求項2】
十字状またはT字状に交差するそれぞれの道路に沿うようにして雨水が流入する貯留浸透槽が地中に配置されており、前記道路の交差部には通水孔を備えた縦穴構造体が形成されており、前記交差部に近接して位置する3個以上の貯留浸透槽は、前記通水孔を備えた縦穴構造体を介して相互に接続されていることを特徴とする雨水流出抑制施設。
【請求項3】
前記縦穴構造体とそこに接続する各貯留浸透槽とは通水パイプを介して接続していることを特徴とする請求項1または2に記載の雨水流出抑制施設。
【請求項4】
前記3つ以上の貯留浸透槽は各槽の上部と下部が連通するようにして前記縦穴構造体によって相互に接続されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の雨水流出抑制施設。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−202468(P2011−202468A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−72771(P2010−72771)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】